• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B42D
管理番号 1268583
審判番号 無効2011-800108  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-06-29 
確定日 2012-10-03 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4617510号発明「封筒作成用シート」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件の手続の経緯の概略は、以下のとおりである。

平成17年 1月 5日 本件特許出願(特願2005-988号)
(優先権主張平成16年1月8日)
平成22年11月 5日 本件設定登録(特許第4617510号)
平成23年 6月29日 審判請求書・甲第1?8号証提出
(ただし、甲第2号証は取り下げた。)
平成23年 9月26日 審判事件答弁書
平成23年11月 7日 弁駁書(以下「第1弁駁書」という。)
平成23年12月 1日 通知書
平成24年 1月27日 口頭審理陳述要領書(請求人)
甲第9号証提出
平成24年 1月27日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 2月10日 口頭審理・無効理由通知(以下「第1無効理由
通知」という。)
平成24年 3月12日 訂正請求書・意見書(以下、それぞれ「第1訂
正請求書」、「第1意見書」という。)
平成24年 4月20日 弁駁書(以下「第2弁駁書」という。)
平成24年 5月 8日 訂正拒絶理由通知・無効理由通知(以下「第2
無効理由通知」という。)
平成24年 6月 8日 訂正請求書・意見書(以下、それぞれ「第2訂
正請求書」、「第2意見書」という。)
平成24年 7月26日 弁駁書(以下「第3弁駁書」という。)

第2 審判請求の概要・被請求人の答弁等
1 請求人の主張の概要
請求人株式会社オービックビジネスコンサルタントが主張する無効理由は、概略、以下のとおりである。

(1)審判請求時の請求項1ないし5に係る発明について
請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3ないし8号証に記載された周知技術から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)第2弁駁書における主張
第1訂正請求書に係る訂正(以下「第1訂正」という。)は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、第1訂正は認められない。
第1訂正が認められるとしても、第1訂正後の請求項1ないし5に係る発明は、後記引用文献1及び2に記載された発明並びに甲第3?7号証記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とされるべきである。

(3)第3弁駁書における主張
第2訂正請求書に係る訂正(以下「第2訂正」という。)後の請求項1及び2に係る発明は、後記引用文献1ないし3に記載された発明、引用文献4に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、無効とされるべきである。

2 請求人提示の証拠方法
請求人が本件審判請求にあたり提示した証拠方法は、以下のとおりである。

平成23年7月4日付けの審判請求書に添付されたもの
甲第1号証:特開平11-70767号公報
甲第3号証:特開2000-119612号公報
甲第4号証:特開平9-327985号公報
甲第5号証:特開2002-337488号公報
甲第6号証:登録実用新案第3105591号公報
甲第7号証:実願昭62-48485号(実開昭63-154268号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平10-35146号公報

平成24年1月27日付け口頭審理陳述要領書に添付されたもの
甲第9号証:知財高裁判決(平成17年(行ケ)第10235号)

3 被請求人の主張の概要
被請求人株式会社KALBASは、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、概略、以下の主張をした。

(1)審判請求時の請求項1ないし5に係る発明について
請求人の主張は、理由がない旨の主張をした。

(2)第1意見書における主張
第1訂正後の請求項1ないし5に係る発明は、無効理由がない旨の主張をした。

(3)第2意見書における主張
第2訂正後の請求項1及び2に係る発明は、無効理由がない旨の主張をした。

第3 当審の無効理由通知の概要
(1)第1無効理由通知
口頭審理で通知した第1無効理由通知の概要は以下のとおりである。
本件特許発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。
本件特許発明3ないし本件発明5は、引用文献1及び2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明3ないし5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。

第1無効理由通知で提示した文献
引用文献1:特開平10-35146号公報(甲第8号証)
引用文献2:特開平11-105467号公報

なお、周知技術を示す文献として甲第3及び4号証を提示した。

(2)第2無効理由通知
第2無効理由通知の概要は以下のとおりである。
第1訂正後の請求項1に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明、引用文献4に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第1訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。
第1訂正後の請求項2ないし5に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明、引用文献4に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、第1訂正後の請求項2ないし5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。

第2無効理由通知で提示した文献
引用文献1:特開平10-35146号公報(甲第8号証)
引用文献2:特開平11-105467号公報
引用文献3:特開2002-337488号公報(甲第5号証)
引用文献4:特開2003-154772号公報

なお、周知技術を示す文献として以下の文献を提示した。
特開2001-271048号公報
特開2002-140003号公報
特開2001-146080号公報
特開2001-246877号公報
特開2000-119612号公報(甲第3号証)
特開平9-327985号公報(甲第4号証)

第4 訂正請求
1 訂正請求の内容
第2訂正がなされたから、特許法第134条の2第4項の規定により、第1訂正は取り下げたものとみなされる。よって、以下、第2訂正について検討する。

第2訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲(以下、それぞれ「訂正明細書」及び「訂正後の特許請求の範囲」という。)のとおりに訂正することを求めるものであって、その訂正内容は、次のとおりである(下線は審決で付した。以下同様。)。

訂正事項1:
特許請求の範囲について
「 【請求項1】
プリンタにより印刷可能かつ二つ折り可能であって、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、
前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の周縁部以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能としたことを特徴とする封筒作成用シート。
【請求項2】
前記基材シートのうち前記第1の領域と対応する部分には、前記切れ目に沿った部分を除いた三辺に前記粘着性領域が形成されて、その他の部分が非粘着性領域とされていることを特徴とする請求項1に記載の封筒作成用シート。
【請求項3】
前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の封筒作成用シート。
【請求項4】
前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの第1の領域に折り重ねた場合の周縁部に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の封筒作成用シート。
【請求項5】
前記切断可能線は、前記周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って形成されていると共に、前記印字用シートの前記3辺を除く残りの1辺には、前記粘着性領域が重ねられる領域の内側に位置する切断可能線が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の封筒作成用シート。」とあったものを
「 【請求項1】
プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、前記折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、
前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能とし、
前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されていることを特徴とする封筒作成用シート。
【請求項2】
前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封筒作成用シート。」に訂正する。

訂正事項2:
明細書の段落【0004】について、
「上記課題を解決するための請求項1の封筒作成用シートは、プリンタにより印刷可能かつ二つ折り可能であって、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の周縁部以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能としたところに特徴を有する。」とあったものを
「上記課題を解決するための請求項1の封筒作成用シートは、プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、前記折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能とし、前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されているところに特徴を有する。」に訂正する。

訂正事項3:
明細書の段落【0012】について、
「請求項2の発明は、請求項1に記載の封筒作成用シートであって、前記基材シートのうち前記第1の領域と対応する部分には、前記切れ目に沿った部分を除いた三辺に前記粘着性領域が形成されて、その他の部分が非粘着性領域とされているところに特徴を有する。このようにすると、基材シートと印字用シートの第1の領域とが重ね合わされている部分は、切れ目に沿った辺を除いた3つの周縁部だけが接着され、その他の部分は接着されていない状態となるから、袋状の収納部として利用することができる。すなわち、基材シートから印字用シートの第2の領域を引き剥がした後、例えば市県民税の決定通知書や源泉徴収票、あるいは現金等をこの袋状の収納部に収容することができる。」とあったところを削除する。

訂正事項4:
明細書の段落【0013】について、
「さらに請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の封筒作成用シートであって、前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されているところに特徴を有する。なお、粘着性を低下させる阻害物質としては、それを印刷する印刷機に適したインクなら一般的なものでよく、色付きのインクや、無色のメジウム、剥離ニス等が使用可能である。また、この場合、色付きのインクを使用すると、封筒内部を外から透かし見ることが困難になるため、より好ましい。」とあったものを
「さらに請求項2の発明は、請求項1に記載の封筒作成用シートであって、前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されているところに特徴を有する。なお、粘着性を低下させる阻害物質としては、それを印刷する印刷機に適したインクなら一般的なものでよく、色付きのインクや、無色のメジウム、剥離ニス等が使用可能である。また、この場合、色付きのインクを使用すると、封筒内部を外から透かし見ることが困難になるため、より好ましい。」に訂正する。

訂正事項5:
明細書の段落【0015】について、
「請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の封筒作成用シートであって、前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの第1の領域に折り重ねた場合の周縁部に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されているところに特徴を有する。」とあったものを削除する。

訂正事項6:
明細書の段落【0016】について、
「また、請求項5の発明は、請求項4に記載の封筒作成用シートであって、前記切断可能線は、前記周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って形成されていると共に、前記印字用シートの前記3辺を除く残りの1辺には、前記粘着性領域が重ねられる領域の内側に位置する切断可能線が形成されているところに特徴を有する。」とあったものを削除する。

訂正事項7:
明細書の段落【0017】について、
「上記請求項4および請求項5の発明によれば、切断可能線に沿って基材シート及び印字用シートを切断すれば、封筒を容易に開封することができる。特に、折り返し線およびその両側に位置する辺の3辺に切断可能線を設ける(請求項6の発明)と、封筒を確実に開封することが可能となる。また、印字用シートの上記3辺以外の1辺に、粘着性領域が重ねられる領域の内側に位置する切断可能線を形成することにより、その切断可能線に沿って印字用シートを切断することで、封筒内の印字用シートから特定の領域を切り離すことができるから、最小限の寸法・厚さになって保管に好都合となる。」とあったものを
「上記請求項1および請求項2の発明によれば、切断可能線に沿って基材シート及び印字用シートを切断すれば、封筒を容易に開封することができる。特に、折り返し線およびその両側に位置する辺の3辺に切断可能線を設けると、封筒を確実に開封することが可能となる。」

訂正事項8:
明細書の段落【0020】?【0053】について、
「第1実施形態」とあったものを「第1参考例」に訂正し、
「第2実施形態」とあったものを「実施形態」に訂正し、
「第3実施形態」とあったものを「第2参考例」に訂正し、
「第4実施形態」とあったものを「第3参考例」に訂正する。
明細書の段落【0038】について、
「図15は請求項2の発明を具体化した第2参考例を示す。」と訂正された記載をさらに「図15は本発明の第2参考例を示す。」に訂正する。
明細書の段落【0050】について、
「 (5)上記各実施形態では」とあったものを
「 (5)上記実施形態では」に訂正する。

訂正事項9:
明細書の段落【0045】について、
「本考案」とあったものを「本発明」に訂正する。

訂正事項10:
明細書の段落【0051】について、
「(6)上記各実施形態では、封筒の周縁部のうち3つの辺に沿ってマイクロミシン目を設け、容易に開封できるようにしたが、これに限らず、マイクロミシン目を折り目に沿う1辺だけに設けたり、互いに向き合う2辺に設けたり、あるいは全周に設けたりする構成としてもよい。」とあったものを削除する。

2 訂正の適否
(1)訂正目的
ア 訂正事項1について
(ア) 請求項1に「シート」という文言を加入した点については、訂正前の請求項1の記載では「プリンタにより印刷可能かつ二つ折り可能であって」が「基材シート」に係るのか「封筒作成用シート」に係るのかが明確ではなかったため、「封筒作成用シート」に係ることを明確にするべく、「シート」という文言を使用して表現したものであって、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。
(イ) 請求項1に「折り返し線で」という文言を加入した点については、訂正前の請求項1の「二つ折り可能」な位置について、「折り返し線で二つ折り可能」であることを限定したものであって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(ウ) 請求項1に「前記折り返し線に沿った」という文言を加入した点については、訂正前の請求項1の「切れ目」の位置について、「前記折り返し線に沿った切れ目」であることを限定したものであって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(エ) 請求項1の「前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされている」については、粘着性領域の位置として「前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部」が含まれることを限定したものであって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(オ) 請求項1の「前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域」については、第2の領域を剥離することで露出させた粘着性領域の位置を限定したものであって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(カ) 請求項1の「前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成され」については、訂正前の請求項4に記載された事項及び訂正前の請求項5に記載された事項の一部を取り込んだものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(キ) 請求項2に関する訂正は、訂正前の請求項2、4及び5を削除したことに伴い、訂正前の請求項3の項番を訂正し、引用する請求項を訂正するものであるから、当該訂正は、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

イ 訂正事項2、8及び10について
上記訂正事項1の訂正後の請求項1に対応させるものであり、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。

ウ 訂正事項3、5、6及び7について
上記訂正事項1の訂正前の請求項2、4及び5を削除したことに伴う対応であって、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。

エ 訂正事項4について
上記訂正事項1の訂正前の請求項3を請求項2に繰り上げたことに伴う対応であって、当該訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

オ 訂正事項9について
当該訂正は、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

(2)新規事項、実質変更の有無
上記各訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)まとめ
以上のとおり、第2訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き、及び同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第4 本件訂正発明
上記したように、第2訂正は認められるから、第2訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明2」という。)は、第2訂正後の特許請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認める。

「 【請求項1】
プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、前記折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、
前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能とし、
前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されていることを特徴とする封筒作成用シート。
【請求項2】
前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封筒作成用シート。」

第5 請求人の無効理由に関して
1 甲号証
(1)甲第1号証について
本件優先権主張日前に頒布され、請求人が提出した甲第1号証(特開平11-70767号公報)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】口座振替に必要な事項を記入するための事項記入欄を裏面に設けた口座振替申込書となる葉書片と、この葉書片の裏面に折り重ねて事項記入欄を隠蔽するための隠蔽片とを折り部を境に連接してなり、前記隠蔽片の重ね合わせ面全体に、剥離後再貼着可能な接着剤を設け、この接着剤にはこれを保護するための剥離可能な保護片が被覆されてなることを特徴とする口座振替申込用葉書用紙。
【請求項2】保護片の表出面には、事項記入欄に必要事項を記入する際に参照するための記入要領が表示されていることを特徴とする請求項1に記載の口座振替申込用葉書用紙。」

イ 「【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面の図1?図5に基づいて詳細に説明する。ここにおいて、図1は葉書用紙の裏面図、図2は葉書用紙の表面図、図3は葉書用紙の保護片を剥離する途中の状態を示す斜視図、図4は図1のA-A線断面図、図5は口座振替申込用葉書の縦断面図である。
【0009】図1?図5に示すように、口座振替申込用葉書1を作成するための葉書用紙1aは、口座振替に必要な事項を記入するための事項記入欄2を裏面に設けた、口座振替申込書となる葉書片3と、この葉書片3の裏面に折り重ねて前記事項記入欄2を隠蔽するための隠蔽片4とを、折り部たる折り兼切り用ミシン目5を境に連接してなる。また、前記隠蔽片4の重ね合わせ面全体には、剥離後再貼着可能な粘着剤6を形成し、この粘着剤6は、これを保護するための剥離可能な剥離紙で形成した保護片7で被覆する。そして図5に示すように、口座振替申込用葉書1は、前記葉書用紙1aを、事項記入欄2に必要事項を記入した後、前記保護片7を剥離し、葉書片3と隠蔽片4を折り兼切り用ミシン目5で折り畳んで重ね合わせ面を全体的に接着して構成するものである。
【0010】図1に明示したように、前述のように金融機関に提出する金融機関用口座振替依頼書を兼ねた口座振替申込書となる前記葉書片3の裏面には、日付欄8、契約申込者の住所、氏名を記入する申込者記入欄9、預金口座の名義人名を記入する名義人記入欄10、口座振替を行う金融機関である銀行等の名称、口座番号等を記入する預金口座記入欄11からなる前記事項記入欄2と、金融機関での事務処理に使用する金融機関使用欄12と、金融機関で口座振替申込を受け付けたことを証する受付印を押印するための受付印欄13とが印刷されている。
【0011】図2に明示したように、前記葉書片3の表面には、「郵便はがき」なる郵便物種類表示14、郵便番号15、郵送料表示16、宛先情報である契約会社の住所、名称17、預金口座振替規定18が印刷されている。
【0012】図3及び図4に明示したように、前記隠蔽片4の裏面には、剥離可能で剥離後に再貼着可能な接着剤6を形成し、この接着剤6は保護片7で被覆し保護されている。この接着剤6の接着力は、接着後は不用意には剥離しないが、所定以上の力で捲くると、接着面(前記葉書片3の裏面)を損傷せずに剥離する程度に設定されている。
【0013】図2に明示したように、前記隠蔽片4の表面には、契約会社からのメッセージ19と、申込書記入にあたっての注意文20とが印刷されている。
【0014】図1に明示したように、前記接着剤6を被覆する保護片7の表出面には、事項記入欄2に必要事項を記入する際に参照すると便利な記入例と、口座振替申込用葉書1として投函するまでの手順が印刷されている。すなわち、この保護片7の表出面には、「記入要領」という表題21、仮の日付欄22、契約申込者の氏名を印刷した仮の申込者記入欄23、預金口座名義人を印刷した仮の名義人記入欄24、口座振替を行う金融機関である銀行等の名称、口座番号等を印刷した仮の預金口座記入欄25、記入手順の説明文26が印刷されている。これらの欄は、前記葉書片3の裏面に設けた前記事項記入欄2における日付欄8、申込者記入欄9、名義人記入欄10、預金口座記入欄11にそれぞれ対応させてある。
【0015】そして、以上のように構成した葉書用紙1aを、保護片7の記入要領を参照しながら、事項記入欄2の各欄に必要事項を記入した後、前記保護片7を剥離し、葉書片3と隠蔽片4を折り兼切り用ミシン目5で折り畳み、両重ね合わせ面を接着剤6で剥離可能に接着して、投函可能な口座振替申込用葉書1とする。また、この口座振替申込用葉書1を受け取った契約会社は、葉書片3に対して隠蔽片4を所定以上の力で捲くり、接着面(前記葉書片3の裏面)を損傷せずに剥離して、事項記入欄2の記入事項を視認することができる。
【0016】なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、例えば、保護片7には、必ずしも記入要領を設けなくてもよい。」

ウ 上記ア及びイから、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「口座振替に必要な事項を記入するための事項記入欄を裏面に印刷された口座振替申込書となる葉書片と、この葉書片の裏面に折り重ねて事項記入欄を隠蔽するための隠蔽片とを折り部を境に連接してなり、前記隠蔽片の重ね合わせ面全体に、剥離後再貼着可能な接着剤を設け、この接着剤にはこれを保護するための剥離可能な剥離紙で形成した保護片が被覆されてなる口座振替申込用葉書用紙であって、
保護片の表出面には、事項記入欄に必要事項を記入する際に参照するための記入要領が印刷され、
事項記入欄に必要事項を記入した後、前記保護片を剥離し、葉書片と隠蔽片を折り畳んで重ね合わせ面を全体的に接着し、投函可能な口座振替申込用葉書とすることができる口座振替申込用葉書用紙。」

2 本件訂正発明1について
(1)対比
ア 本件訂正発明1と甲1発明とを比較する。
甲1発明の「口座振替申込用葉書用紙」は「葉書片と」「隠蔽片とを折り部を境に連接してなり」「葉書片と隠蔽片を折り畳」むものであるから、本件訂正発明1の「封筒作成用シート」とは、折り返し線で二つ折り可能とされたシートの点で共通する。
イ 甲1発明の「葉書片」及び「隠蔽片」が本件訂正発明1の「基材シート」に相当し、甲1発明は「隠蔽片の重ね合わせ面全体に、剥離後再貼着可能な接着剤」が設けられているから、甲1発明の「葉書片」及び「隠蔽片」と本件訂正発明1の「基材シート」とは、一方の面に粘着性領域が形成された点で共通する。
ウ 甲1発明の「保護片」は「隠蔽片の重ね合わせ面全体に」「被覆されてな」り「剥離紙で形成した」ものであるから、甲1発明の「保護片」と本件訂正発明1の「印字用シート」とは、基材シート(「葉書片」及び「隠蔽片」)の一方の面に重ね合わせてなり、剥離可能とする剥離層が形成されている他のシートの点で共通する。
エ 甲1発明は「事項記入欄に必要事項を記入した後、前記保護片を剥離し、葉書片と隠蔽片を折り畳んで重ね合わせ面を全体的に接着」するものであるから、本件訂正発明1の「封筒作成用シート」とは、基材シート(「葉書片」及び「隠蔽片」)から他のシートを剥離することで露出させた粘着性領域を折り重ね可能とした点で共通する。
オ 甲1発明の「口座振替申込用葉書用紙」の「事項記入欄に必要事項を記入した後」「投函可能な口座振替申込用葉書とすることができる」から、甲1発明の「口座振替申込用葉書用紙」と 本件訂正発明1の「封筒作成用シート」とは、情報を担持する物品作成用シートという点で共通する。
カ 以上のことから、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面に粘着性領域が形成された基材シートと、他のシートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記他のシートを重ね合わせてなる情報を担持する物品作成用シートであって、
前記他のシートの前記粘着性領域と対応する部分には前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記基材シートから剥離することで露出させた前記粘着性領域を折り重ね可能とした情報を担持する物品作成用シート。」
一方、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>本件訂正発明1は「封筒作成用シート」であるのに対して、甲1発明では「口座振替申込用葉書用紙」である点。
<相違点2>本件訂正発明1は「プリンタにより印刷可能」であるのに対し、甲1発明は、プリンタにより印刷可能であるか否か明らかでない点。
<相違点3>基材シートに関し、本件訂正発明1は「一方の面の周縁部に粘着性領域が形成され」、「基材シートの第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされ」ているに対して、甲1発明は「隠蔽片の重ね合わせ面全体」に「剥離後再貼着可能な接着剤」が設けられているものである点。
<相違点4>他のシートに関し、本件訂正発明1は「プリンタにより印刷可能で、かつ、折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シート」であって「印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており」「前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで」前記4つの周縁部に粘着性領域を露出させるのに対し、甲1発明は、プリンタにより印刷可能であるか否か明らかでなく、切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされておらず、第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して基材シートから剥離することで粘着性領域を露出させるものでない点。
<相違点5>粘着性領域を折り重ねる相手に関し、本件訂正発明1は「印字用シートの第1の領域」であるのに対して、甲1発明では「葉書片」である点。
<相違点6>本件訂正発明1は「前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されている」と特定されているのに対して、甲1発明は、切断可能線が形成されていない点。

(2)判断
ア <相違点1>について
甲1発明の解決課題は「従来技術は、封書として郵送するので葉書に比べて送料がかさむだけでなく、切り用ミシン目57,58を一体的に切るという開封作業がしにくく、面倒でもあるという不都合があった。本発明の目的は、これらの不都合を解消した口座振替申込用葉書を提供するところにある。」(段落【0005】)というものであって、内部に紙片を封入できるという封書の利点を諦めて、送料が安く、開封が簡単な葉書方式にしたものであるから、甲1発明の「口座振替申込用葉書用紙」を「封筒作成用シート」とする動機付けは全く存在しない。
したがって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

イ <相違点2>について
甲1発明の「事項記入欄」と「記入要領」は既に印刷されており、事項記入欄へは、ユーザが必要事項を記入することは明らかであるから、甲1発明の「口座振替申込用葉書用紙」をプリンタにより印刷可能とする動機付けは全く存在しない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

ウ <相違点3>について
甲1発明の解決課題は、上記(1)で述べたとおりであって、葉書は、重ね合わせた際に全面的に接着されることが要求されるものであるから、甲1発明において、全面的な接着を阻害する「非粘着性領域」を設けようとする動機付けは全く存在しない。
したがって、甲1発明において、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

エ <相違点4>及び<相違点5>について
甲1発明の「保護片」は、「隠蔽片」の接着剤を保護するためのものであり、「事項記入欄に必要事項を記入する際に参照するための記入要領が印刷され」、「事項記入欄に必要事項を記入した後、前記保護片を剥離」即ち、「保護片」は、全て剥離されることが予定されているから、甲1発明の「保護片」に切れ目を設け、第1および第2の2つの領域に切り離し可能とし、一方の領域を剥離して、他方の領域を残し、粘着性領域を折り重ねようとする動機付けは全く存在しない。
したがって、甲1発明において、上記相違点4及び相違点5に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

オ また、他の甲各号証にも、甲1発明において、上記相違点1ないし相違点5に係る本件訂正発明1の構成を採用することを示唆する記載はない。
よって、相違点6を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明を主引用例として、進歩性を否定する請求人の主張は採用することができない。

3 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を有しているから、本件訂正発明1と同様の理由により、請求人の主張は採用できない。

第6 第2無効理由通知に関して
1 引用文献
(1)引用文献1について
本件優先権主張日前に頒布され、第2無効理由通知で引用された特開平10-35146号公報(甲第8号証、以下「引用文献1」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【請求項1】 縦長単票用紙(1)の中央よりやや下方に折目線(2)を設け、さらに折目線(2)より下方の縁に糊代(3)を設け、さらに前記折目線(2)より印字面を内側にして上下二つ折りにしたときに突出する部分(7)に宛て名記入欄を設けたことを特徴とする封筒型伝票。
【請求項2】 縦長単票用紙(1)の中央よりやや上方に折目線(2)を設け、さらに折目線(2)より上方の縁に糊代(3)を設け、さらに前記折目線(2)より印字面を内側にして上下二つ折りにしたときに突出する部分(7)に宛て名記入欄を設けたことを特徴とする封筒型伝票。
【請求項3】 縦長単票用紙(1)が、裏面に剥離層(1c)を設けた表側紙(1a)の裏に糊付きの裏側紙(1b)を接着したものであり、表側紙(1a)の糊代部分を剥離可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載の封筒型伝票。
【請求項4】 縦長単票用紙(1)の左右の端に開封用のミシン目(4,5)を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の封筒型伝票。」

イ 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、コンピュータでアウトプットした伝票を二つ折りにして端部を接着することにより袋状にできるようにした封筒型伝票に関するものである。」

ウ 「【0010】
【発明の実施の形態】請求項1記載の発明の実施の形態を図1?図5の図面に従って説明する。
【0011】図1は、請求項1記載の発明の封筒型伝票(請求書)の正面図であり、A4の単票用紙1を縦長にして使用し、中央よりやや下方に折目線2を設け、さらに折目線2より下方の縁に糊代3を設けている。また、この用紙1の左右の端から約1センチメートルのところには、ミシン目4,5を設けており、開封するときに、このミシン目4,5より外側の部分を切り取るようになっている。
【0012】前記用紙1は、この実施例では、裏面に剥離層1cを設けた表側紙1aの裏に糊付きの裏側紙1bを接着した、いわばシール紙を裏返しにして剥離紙側を印字面としたものを使用しており、裏側紙1bの裏面には図示していないが伝票の印字内容が透けて見えないようにするために地紋を印刷してある。また、糊代3の部分と印字面との境目には表側紙1aのみを切断したスリッター6を入れてある。
【0013】この用紙1の表側紙1aに、レーザビームプリンタで印字される。用紙1を折目線2で上下に二つ折りにしたときに、上側に突出して表れる部分7には宛て名が印字される。その下の折目線2との間の部分8には、請求内容が印字される。折目線2より下の部分9には、挨拶文が印字される。
【0014】印字された用紙1の糊代3部分の表側紙1aを剥がすと、図2に示すように、裏側紙1bの糊1dの部分が表れる。
【0015】用紙1を折目線2で、印字面を内側にして二つに折ると、図3の状態になり、宛て名部分が表側に表れた封筒型伝票になる。宛て名を印字するときに同時に住所も印字するようにし、さらに切手を貼ればそのまま郵送できる状態となる。
【0016】この封筒型伝票を受け取った人は、図4に示すように、ミシン目4,5より外側の部分を切り取り、さらに折目線2部分を切り離すと、図5の状態となり、挨拶文及び請求内容を見ることができるようになる。」

エ 「【0023】以上がこの発明の実施の形態の説明であり、請求書の例を示したが、封筒型の伝票であればどのようなもの、例えば給料袋等、にも適用できる。」

オ 図1及び2より、縦長の用紙1の折目線2を境にして上側の領域(以下「上側領域」という。)と下側の領域(「下側領域」という。)に分かれていて、下側領域の折り目線2に沿った部分を除いた三辺に沿った部分が糊代3となっていることが看取できる。

カ 上記アないしオの記載からみて、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「縦長単票用紙の中央よりやや下方に折目線を設け、さらに折目線より下方の縁に糊代を設け、さらに前記折目線より印字面を内側にして上下二つ折りにしたときに突出する部分に宛て名記入欄を設け、
前記縦長単票用紙は、裏面に剥離層を設けた表側紙の裏に糊付きの裏側紙を接着したもの、いわばシール紙を裏返しにして剥離紙側を印字面としたものであり、表側紙の糊代部分を剥離可能とし、左右の端に開封用のミシン目を設けたものであり、
前記縦長の用紙の折目線を境にして上側領域と下側領域に分かれていて、下側領域の折り目線に沿った部分を除いた三辺に沿った部分が糊代となっており、
前記糊代の部分と印字面との境目には表側紙のみを切断したスリッターが設けられており、
前記用紙の表側紙に、レーザビームプリンタで印字し、印字面を内側にして二つ折りにして端部を接着することにより袋状にできるようにした封筒型伝票。」

(2)引用文献2について
本件優先権主張日前に頒布され、第2無効理由通知で引用された特開平11-105467号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 「【0010】図1?図6に示すように、口座振替申込封筒用シート1は、封筒となったとき内面となる表面2aに、口座振替申込に必要な事項を記入するための事項記入欄3を設けるとともに、裏面に、宛先情報である口座振替申込を行う契約会社の郵便番号、住所、名称、預金口座振替規定が印刷された封筒表紙片2と、前記表面2aに折り重ね合わせて、封筒となったとき裏側の紙片となる封筒裏紙片4と、を折り部たる折り兼切り用ミシン目5を境に連接し(図3参照)、前記封筒表紙片2の重ね合わせ面における折り部となる一辺を除いた三辺に剥離困難な接着力を有する粘着剤6(審決注:「接着剤6」は「粘着剤6」の誤記であることは明らかであるから訂正して摘記した。)を塗布する。この封筒表紙片2の表面2aには、表面7aに前記封筒表紙片2の事項記入欄3と同一の事項記入欄8を設けた控紙7を剥離可能に接着する。この控紙7の裏面7bの三辺には、前記粘着剤6に対して剥離可能な剥離手段である剥離剤9を塗布してある。」

イ 「【0015】以上のように構成した口座振替申込封筒用シート1は、図2に示すように、控紙7の事項記入欄8に、封筒裏紙片4の表面4aの「記入要領」の記入例を参照しながら必要事項を記入した後、前記控紙7を剥離、分離して手元に保管するとともに、封筒表紙片2と封筒裏紙片4を折り兼切り用ミシン目5で折り重ね合わせ、両重ね合わせ面における前記三辺を粘着剤6で剥離不能に封着し、投函可能な口座振替申込封筒1aとするものである。そして、前記封着時には他の通信用紙等を添付することも可能である。
【0016】一方、図5に示す口座振替申込封筒1aを受け取った契約会社は、折り部を除いた三辺の切り用ミシン目13を切り該三辺を開封して、事項記入欄3の記入事項(図3参照)を視認することができ、また、封筒裏紙片4に対して封筒表紙片2を折り兼切り用ミシン目5で切り離し、申込受付後に必要な事務処理を行うのである。」

ウ 図1より、控紙7は、封筒表紙片2とほぼ同じ大きさであることが看取できる。

エ 上記アないしウの記載からみて、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「封筒表紙片と、封筒表紙片の表面に折り重ね合わせて、封筒となったとき裏側の紙片となる封筒裏紙片と、を折り部たる折り兼切り用ミシン目を境に連接し、前記封筒表紙片の重ね合わせ面における折り部となる一辺を除いた三辺に剥離困難な接着力を有する粘着剤を塗布し、この封筒表紙片の表面に、裏面の三辺に、前記粘着剤に対して剥離可能な剥離手段である剥離剤を塗布してある封筒表紙片とほぼ同じ大きさの控紙を剥離可能に接着してある口座振替申込封筒用シートであって、
前記控紙を剥離、分離して手元に保管するとともに、封筒表紙片と封筒裏紙片を折り兼切り用ミシン目で折り重ね合わせ、両重ね合わせ面における前記三辺を粘着剤で剥離不能に封着し、投函可能な口座振替申込封筒とする口座振替申込封筒用シート。」

(3)引用文献4について
本件優先権主張日前に頒布され、第2無効理由通知で引用された特開2003-154772号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載が図とともにある。
ア 【0010】図において、1は適宜の形状に形成された透視可能な紙或いは樹脂フィルムからなるベースであり、該ベース1の片面の周囲に粘着剤層2が設けられている。更にベース1には前記粘着剤層2が設けられていない粘着剤層2の内側の部分に後述する伝票紙の投入用開口部3が形成されている。この投入用開口部3にあっては、本例ではスリットにより形成されているが、特に限定されるものではなく、切断開口可能なミシン目で形成されていてもよい。
【0011】4は独立した内容の、例えば荷札を兼ねた送り状、運賃請求票を兼ねた運送会社控え、配送先で荷受け人から荷物受け取りの際に受領印を貰うための受領票等の各伝票を構成する複数の伝票4a,4b,4cが切り離し可能に連接され、全体形状を前記ベース1の形状と同じくする一枚の伝票紙である。本例では、一枚の紙に前記複数の伝票4a,4b,4cが印刷されて伝票紙4が形成され、この伝票紙4には前記伝票4a,4b,4cをそれぞれ切り離すためのミシン目5が設けられている。
【0012】かかる伝票紙4の裏面にはフッソ樹脂やシリコーン樹脂など公知の離型剤層6が設けられ、該伝票紙4と前記ベース1とが、離型剤層6と粘着剤層2とを重合するようにして一体に接着されている。本例では、伝票紙4の裏面に設けられている離型剤層6は前記ベース1に設けられた粘着剤層2に対応するように設けられているが、伝票紙4の裏面に全面に離型剤層6が設けられていてもよい。
【0013】このように構成された配送伝票の使用にあっては、先ず配送伝票の伝票紙4の各伝票4a,4b,4cへの配送先その他の必要情報等の文字や数字等の書き込みに際し、一体に接着しているベース1と伝票紙4からなる配送伝票をそのままレーザープリンタにセットし各伝票4a,4b,4cに配送先その他の必要情報等の文字や数字等を書き込む。このとき、配送伝票は前記のようにベース1と伝票紙4を一体に接着したものからなっており厚さも薄いので、レーザープリンタに問題無くセットでき、各伝票4a,4b,4cに必要情報等の文字や数字等をプリント印刷により書き込みむことができる。

2 本件訂正発明1について
(1)対比
ア 本件訂正発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「レーザープリンタ」は、本件訂正発明1の「プリンタ」に相当し、同様に、
「折目線」は「折り返し線」に、
「二つ折り」は「二つ折り」に、
「『糊付き』の部分」は「粘着性領域」に、
「裏側紙」は「基材シート」に、
「表側紙」は「印字用シート」に、
「剥離層」は「剥離層」に、
「縦長単票用紙」あるいは「封筒型伝票」は「封筒作成用シート」に、それぞれ、相当する。
イ 引用発明1の「封筒型伝票」は「用紙の表側紙に、レーザビームプリンタで印字」するものであり、「折目線より印字面を内側にして上下二つ折りに」するものであるから、引用発明1の「封筒型伝票」と本件訂正発明1の「封筒作成用シート」とは「プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシート」である点で一致する。
ウ 口頭審理において、被請求人は、請求項1に記載の「一方の周縁部に」とは、「一方の面の少なくとも周縁部に」との意味であり、本件の【図11】に記載されたものは、本件の実施例である旨認めている。
引用発明1の「縦長単票用紙」は「裏面に剥離層を設けた表側紙の裏に糊付きの裏側紙を接着したもの、いわばシール紙を裏返しにして剥離紙側を印字面としたもの」であるから、「裏側紙」(基材シート)には、表面の周縁部を含めて全体に粘着性領域が形成されているものと認められるので、引用発明1の「裏側紙」(基材シート)は、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成されたものといえる。
エ 引用発明1は「表側紙に、レーザビームプリンタで印字」されるから、引用発明1の「表側紙」(印字用シート)は、プリンタにより印刷可能であるといえ、引用発明1の「表側紙」と本件訂正発明1の「印字用シート」とは「プリンタにより印刷可能とされた印字用シート」である点で一致する。
オ 引用発明1の「縦長単票用紙」(封筒作成用シート)は、「裏面に剥離層を設けた表側紙の裏に糊付きの裏側紙を接着したもの、いわばシール紙を裏返しにして剥離紙側を印字面としたもの」であるから、「裏側紙」(基材シート)の一方の面に「表側紙」(印字用シート)を重ね合わせてなるものといえ、「表側紙」(印字用シート)の裏面には剥離層が設けられているから、「裏側紙」(基材シート)から剥離可能とする剥離層が形成されているものといえる。
カ 引用発明1の「表側紙の糊代の部分」を剥離すると「裏側紙」(基材シート)の「『糊付き』の部分」(粘着性領域)が露出することは明らかであり、前記露出した「『糊付き』の部分」(粘着性領域)は、「縦長の用紙の折目線を境に」した「上側領域」の「表側紙」(印字用シート)に折り重ねられることは明らかであるから、引用発明1と本件訂正発明1とは、印字用シートの一部を基材シートから剥離することで露出させた粘着性領域を印字用シートに折り重ね可能とした点で一致する。
キ 引用発明1は「左右の端に開封用のミシン目を設けたものであ」り、前記開封用ミシン目は、引用発明1の「折目線」(折り返し線)より下側の領域を上側の領域に折り重ねた場合に、折り返し線の両側に位置する2辺に沿った切断可能線となることは明らかであるから、引用発明1と本件訂正発明1の「前記基材シートおよび印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されている」とは、基材シートおよび印字用シートには、折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの上側領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線の両側に位置する2辺に沿って、切断可能線が形成されている点で共通する。
ク してみると、本件訂正発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、
前記印字用シートには前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記印字用シートの一部を前記基材シートから剥離することで露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートに折り重ね可能とし、
前記基材シートおよび印字用シートには、前記折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの上側領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線の両側に位置する2辺に沿って、切断可能線が形成されている封筒作成用シート。」
一方、本件訂正発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
<相違点1>印字用シートに関し、本件訂正発明1は「折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた」と特定されているのに対し、引用発明1は、スリッターが設けられているものの、該スリッターは、下側領域の折り目線に沿った部分を除いた三辺に沿った糊代の部分と印字面との境目に設けられている点。
<相違点2>基材シートの粘着性領域及び非粘着性領域に関し、本件訂正発明1は、「前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされている」と特定されているのに対し、引用発明1は、裏側紙(基材シート)の一方の面全体が粘着性領域となっており、非粘着性領域を備えていない点。
<相違点3>切断可能線に関し、本件訂正発明1は「折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って」形成されているのに対し、引用発明1は、折り返し線の両側に位置する辺に沿って形成されているといえるものの、折り返し線に位置する辺に沿った位置には形成されていない点。

(2)判断
ア <相違点1>について検討する。
本件訂正発明1は、本件明細書の段落【0004】に記載のように、内部に情報を印刷した封筒を容易に作成可能で、かつ、内部印刷情報の控えを簡単に作成することができる封筒作成用シートを提供することを目的とするものであり、そのために、印字用シートを折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能としたものである。
引用発明1は、スリッターが設けられているものの、該スリッターは、下側領域の折り目線に沿った部分を除いた三辺に沿った糊代の部分と印字面との境目に設けられており、糊代の部分の表側紙(印字用シート)は、剥離された後は破棄されるもので、その部分に印字を設けることを想定していない。
よって、引用発明1のスリッター及びスリッターで分けられた表側紙(印字用シート)の2つの領域と本件訂正発明の切れ目及び第1および第2の2つの領域とは、用途及び機能が異なるものであり、引用発明1において、表側紙(印字用シート)を折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とする動機が見出せない。
また、第2無効理由通知で提示した各文献及び請求人が提出した甲各号証のいずれにも、印字用シートを折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とすることは記載されていない。
したがって、引用発明1において、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

イ <相違点2>について検討する。
引用発明1は、裏側紙(基材シート)の一方の面全体が粘着性領域となっており、非粘着性領域を備えていないものである。
引用発明1の「上側領域」と引用発明2の「封筒裏紙片」は、いずれも露出された粘着剤で封着される片で共通し、引用発明1の「下側領域」と引用発明2の「『封筒表紙片』及び『控紙』」は、いずれも粘着剤を露出し、封着する片で共通し、引用発明1の「表側紙の糊代部分」と引用発明2の「控紙」は、いずれも剥離される紙片で共通し、引用発明1の「下側領域」の「裏側紙」と引用発明2の「封筒表紙片」は、いずれも剥離される紙片を粘着剤で粘着している片で共通するものであるものの、引用発明2の「封筒表紙片」には「折り部となる一辺を除いた三辺に剥離困難な接着力を有する粘着剤を塗布」してあり、折り部となる一辺には、粘着剤が塗布されていないものである。
そうすると、引用発明1に引用発明2を適用したとしても、相違点2のような構成にはならない。
引用文献4には、伝票紙4のベース1(剥離される伝票紙4を支持している)の片面の周囲に粘着剤層2を設けることが記載されているが、ベース1の全面の周囲であって、ベース1は、封筒作成のために折り重なることを想定しておらず、折り重ね合わせる一方の片の周囲に粘着剤が設けられているものではない。
そうすると、引用発明1に引用文献4に記載の事項を適用することはできず、適用できたとしても、相違点2のような構成にはならない。
また、第2無効理由通知で提示した各文献及び請求人が提出した甲各号証のいずれにも、封筒作成用シートにおける折り重ね合わせる一方の片であって、4つの周縁部に粘着性領域が形成され、それ以外は非粘着性領域とされ、該粘着性領域で剥離される紙片を粘着している片については、記載されていない。
したがって、引用発明1において、上記相違点2に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

ウ <相違点3>について検討する。
第2無効理由通知で提示した各文献及び請求人が提出した甲各号証のいずれにも、封筒作成用シートにおいて、折り重ねた場合の周縁部のうち折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って切断可能線を設けることは記載されていない。
したがって、引用発明1において、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成を採用することが、当業者が容易になし得たとすることはできない。

(3)まとめ
以上のように、本件訂正発明1は、引用文献1に記載された発明を主引用例とする第2無効理由通知に記載の理由によって理由があるものとすることはできない。

3 本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1を更に限定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、引用文献1に記載された発明を主引用例とする第2無効理由通知に記載の理由によって理由があるものとすることはできない。

第7 第1無効理由通知に関して
第1無効理由通知に記載の理由も第2無効理由通知に記載の理由と同様、引用文献1に記載された発明を主引用例とするものであるから、第6で検討したのと同様、理由があるものとすることはできない。

第8 むすび
請求人の主張する無効理由、当審で通知した無効理由についての当審の判断は、以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法並びに当審で通知した無効理由によっては、本件特許を無効とすることができない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
封筒作成用シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、給与袋等の封筒或いは納品書等を収容した封筒を作成するための封筒作成用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、個人に手渡される給与明細の通知書は、一枚の用紙に印刷した給与明細書を封筒に収容した状態で配布するのが一般的である。このような形態のものは、給与明細書を封筒に収容する際に、明細書と封筒の氏名が間違わないように慎重な確認が必要であり、手間がかかる。或いは、給与明細書の氏名記載部分だけが窓枠状に開口された専用の封筒を利用する場合もあるが、専用の封筒を準備するのにコストがかかるという問題がある。また、給与明細書の会社側の控えも別途印刷しなければならず、面倒である。
【特許文献1】
実用新案登録第3084782号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記諸事情に鑑みてなされたものであって、内部に情報を印刷した封筒を容易に作成可能で、かつ、内部印刷情報の控えを簡単に作成することができる封筒作成用シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための請求項1の封筒作成用シートは、プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、前記折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能とし、前記基材シートおよび前記印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されているところに特徴を有する。
【0005】
このようにすると、1枚の封筒作成用シートから、内部に情報が印刷された封筒と、所望の情報が印刷されて分離された控え紙片とを同時に作成することができる。すなわち、まず封筒作成用シートに例えば氏名と給与明細書とをプリンタによって印刷する。この印刷は、印字用シートの第1および第2の領域の2箇所に行われる。次に、印字用シートの第2の領域を切れ目によって第1の領域と切り離しつつ、基材シートから引き剥がす。このようにして基材シートから分離された印字用シートの第2の領域、すなわち、一方の給与明細書は、会社側の控えとできる。
【0006】
一方、基材シートのうち印字用シートの第2の領域が剥がされた部分は、粘着性領域が露出された状態とされている。そこで、印字用シートの切れ目に沿って粘着性領域が印字用シートの第1の領域と向き合うように基材シートを折り曲げ、粘着性領域を印字用シートの第1の領域を覆うように重ね合わせて押し付けることにより、両者を接着する。これにより、基材シートが二つ折り状態の封筒となり、印字用シートの第1の領域に印刷された給与明細書部分は外部から見ることができなくなる。
【0007】
なお、この時、例えば市県民税の決定通知書や源泉徴収票、あるいは現金等、同封するものがある場合には、印字用シートの第1の領域とそれを覆う基材シートとの間に挟んでから接着すればよい。このようにして、個人配布用の給与袋兼給与明細書が作成される。また、以上のように作成された封筒は、3つの周縁部を切り取ることにより、開封することができる。開封された封筒の内側に、給与明細書部分が現れる。
【0010】
一方、印字用シートが剥がされた部分には粘着性領域が露出するから、その基材シートを二つ折りにして粘着性領域を他方の面に重ね合わせて押し付ければ、二つ折り状態の封筒となり、基材シートに印刷された給与明細書部分は外部から見ることができなくなる。
【0011】
このように、請求項1の発明によれば、1枚のシートに印刷を行い、印字用シートを引き剥がして残りを折り曲げるという簡単な作業により、表示情報が封印されて個人へ配布できる形態の封筒と、控え紙片とを同時に作成することができる。
【0013】
さらに請求項2の発明は、請求項1に記載の封筒作成用シートであって、前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されているところに特徴を有する。なお、粘着性を低下させる阻害物質としては、それを印刷する印刷機に適したインクなら一般的なものでよく、色付きのインクや、無色のメジウム、剥離ニス等が使用可能である。また、この場合、色付きのインクを使用すると、封筒内部を外から透かし見ることが困難になるため、より好ましい。
【0014】
このようにすると、封筒作成用シートの製造コストを安くすることができる。すなわち、部分的に粘着性領域を形成する場合には、一般的に、粘着剤をグラビア印刷により部分的に印刷せざるを得ないが、グラビア版は高価であるため、印刷コストが高くなる。これに対して、請求項3の発明のように、粘着剤を基材シートの一方の面の全面に印刷する場合にはグラビア印刷ではなく、凸版印刷、平版印刷、孔版印刷、フレキソ印刷等や、ロールコーター等の安価な塗布装置で印刷することができる。一方、阻害物質は、その塗液の粘性等から例えば、凸版印刷、平板式印刷、孔版印刷、フレキソ印刷等の安価で一般的な印刷方法によって印刷可能であり、2回の印刷工程が必要としても、総合的な印刷コストはグラビア印刷よりも安価にできる。
【0017】
上記請求項1および請求項2の発明によれば、切断可能線に沿って基材シート及び印字用シートを切断すれば、封筒を容易に開封することができる。特に、折り返し線およびその両側に位置する辺の3辺に切断可能線を設けると、封筒を確実に開封することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<第1参考例>
以下、本発明の第1参考例について図1ないし図10を参照して説明する。
本参考例の給与袋作成用シート10は、図3に示すように、基材シート11と印字用シート20とを重ね合わせてなる、A4版の大きさのシートである。
【0021】
基材シート11は例えば紙製であり、図1に示すように、一方の面の4つの周縁部に、幅約2cmの粘着性領域12が形成されている。この粘着性領域12は、例えば、基材シート11の片面の全面に平版式印刷等によって粘着剤を塗布して粘着性領域を形成した後、この粘着性領域のうち周縁部幅2cmを除いた内側領域に、平版用のUV硬化型の色付きインクを平板印刷によって印刷することで形成したものである。全面に形成した粘着性領域のうち、周縁部を除いた内側領域に粘着性阻害物質に相当する平版用インクが印刷されることにより、その内側領域の粘着性が消失し、周縁部だけが粘着性を維持している。
【0022】
また、基材シート11の左右の二長辺に沿って、かつ各長辺の端縁から約2.5cmだけ内側に入った位置には、基材シート11の両側部を中央側の領域から切り離すための2本の第1のマイクロミシン目13が形成されている。また、基材シート11の長辺の長さ方向の中央より図1中やや下部には、短辺に沿った折り目14(図中一点波線で表示)がミシン目によって形成されており、この折り目14により、基材シート11を粘着性領域12が内側になる方向に折り曲げ可能とされている。さらに、この折り目14に沿って、上下両側に1cm離れた位置に、2本の第2のマイクロミシン目15,15が左右方向に延びるように形成されている。
【0023】
一方、上記印字用シート20も、例えばプリンタによって印刷可能な紙製である。この印字用シート20には、図2に示すように、基材シート11とぴったり重ね合わせた際に基材シート11の折り目14に対応する位置に、ハーフカットの切れ目24が形成されており、この切れ目24により印字用シート20は第1の領域21および第2の領域22の2つの領域に区分され、この切れ目24により互いに分離可能とされている。また、印字用シート20の第1の領域21のうち、基材シート11の第1および第2のマイクロミシン目13,15に対応する位置に、同じく第1および第2のマイクロミシン目23,25が前記マイクロミシン目13,15と同時に形成されている。さらに、印字用シート20の第2の領域22の基材シート11に向き合う面側には、粘着剤によって粘着した状態でもそこから容易に剥離できる剥離層26が形成されており(図9および図10参照)、印字用シート20を基材シート11に重ねた状態から、印字用シート20の第2の領域22を基材シート11から引き剥がし可能となっている。
【0024】
次に、上述した本参考例の給与袋作成用シート10の使用方法について説明する。
給与袋作成用シート10を使用する場合には、図4に示すように、まず印字用シート20の第1の領域21および第2の領域22の2箇所に、それぞれ個人の給与明細書をプリンタによって印刷する。第1の領域21は、給与の受取人のための領域であり、第2の領域22は給与の支払者(会社)側のための領域である。なお、折り目14は基材シート11の縦方向の中央よりも下部寄りに形成されているから、印字用シート20の第1の領域21は第2の領域22に比べて広くなり、折り目14で折って二重に折り重ねると、第1の領域21の一部が折り重なり部分から余剰部21Aとして、はみ出ることになる。したがって、その余剰部21Aに「給与明細書」と記載した表題等を印字することが好ましい。
【0025】
印刷された給与袋作成用シート10によって給与袋を作成するには、まず印字用シート20の第2の領域22の例えば角部を基材シート11からつまみ上げ、切れ目24に沿って第1の領域21から切り離しつつ基材シート11から引き剥がす(図5参照)。引き剥がされた第2の領域22は、会社側の給与明細書の控えとして保管する。
【0026】
基材シート11は、この第2の領域22が引き剥がされたことにより、その粘着性領域12の一部(印字用シート20の第2の領域22に対応する部分)が露出される。
【0027】
またこの時、基材シート11と、印字用シート20の第1の領域21とは、3つの周縁部が粘着性領域12により閉じられている一方、折り部14に沿った部分は開いた状態とされているため、袋状の収納部16として利用することもできる(図6参照)。すなわち、例えば、住民税額の通知書等の書類や給与(現金)等、給与明細書に同封するものがある場合には、この収納部16に収容することができる。
【0028】
次に、基材シート11を露出された粘着性領域12が内側となるように折り部14に沿って折り曲げ、粘着性領域12を印字用シート20の第1の領域21に重ね合わせるとともに押し付けることにより、基材シート11と印字用シート20とを接着させる(図7参照)。これにより、印字用シート20の第1の領域21に印刷された個人情報(給与明細書)は外部から見えないように保護される。また、印字用シート11の第1の領域21の上端部付近に印刷された部署や氏名等は、外部から目視可能である。
【0029】
このような給与袋作成用シート10によって作成された封筒を受取り、開封する場合には、封筒の3つの周縁部を第1のマイクロミシン目13および第2のマイクロミシン目15に沿って他の領域から切り離せばよい(図8参照)。
【0030】
このように、本参考例の給与袋作成用シート10によれば、1枚のシートに印刷を行い、印字用シート20の一部(第2の領域22)を基材シート11から剥ぎ取って、残存したシートを折り曲げるという簡単な作業により、個人に配布用の給与袋兼給与明細書と会社側の給与明細書の控えとを作成することが可能である。また、住民税額等の通知がある場合や、給与(現金)を直接渡す場合には、収納部16に収納することが可能であり、別個の封筒が不要である。なお、それらの通知書や現金等を収納するには、必ずしも収納部16内に納めなくとも、印字用シート20の上に基材シート11を折り返すときに、両者間に納めることもできる。
【0031】
<実施形態>
次に、本発明の実施形態について図11ないし図14を参照して説明する。上記第1参考例と同様の部分は、説明を省略する。
【0032】
本実施形態の給与袋作成用シート30も上記第1参考例と同様に、基材シート31と印字用シート40とを重ね合わせてなるA4版のシートである。
【0033】
基材シート31は、図11に示すように、後述する印字用シート40の第1の領域41に対応する部分の全体と、印字用シート41の第2の領域42に対応する部分の周縁部に粘着剤を印刷して粘着性領域32が形成されている点が、上記第1参考例の基材シート11とは異なる。この粘着性領域32は、グラビア印刷によって粘着剤を部分的に印刷してもよいし、前記第1参考例と同様に全面に粘着剤を印刷した後、第2の領域42の周縁部を残して粘着性阻害物質を印刷してもよい。
【0034】
また、印字用シート40は、図12に示すように、上記第1参考例の印字用シート20と概ね同様であるが、基材シート31と向きあう面側に形成されている剥離層46が、印字用シート40の第2の領域42のうち、基材シート31の粘着性領域32と対応する部分(第2の領域42の周縁部)だけに形成されているところが、上記第1参考例とは異なる。その他の構造は、前記第1参考例と同様であり、重複する説明を省略する。
【0035】
さて、本実施形態の給与袋作成用シート30を使用する場合も、上記第1参考例と同様に、印字用シート40の第1の領域41および第2の領域42の2箇所に、給与明細書をプリンタによって印刷し、印字用シート40の第2の領域42を基材シート31から引き剥がす。引き剥がされた第2の領域42は、会社側の給与明細書の控えとして保管する。一方、基材シート31のうち第2の領域42に対応する部分は、4つの周縁部に粘着性領域32が露出された状態となる。
【0036】
次に、基材シート31を露出された粘着性領域32が内側となるように折り部34に沿って折り曲げ、粘着性領域32を印字用シート40の第1の領域41に重ね合わせて接着させる。なおこの時、住民税額の通知書等の書類や給与(現金)等、給与明細書に同封するものがある場合には、印字用シート40の第1の領域41とそれを覆う基材シート31との間に挟むことができる。
【0037】
また、本実施形態の給与袋作成用シート30によって作成された封筒を開封する場合にも、上記第1参考例と同様に、封筒の3つの周縁部を第1のマイクロミシン目33および第2のマイクロミシン目35に沿って他の領域から切り離せばよい(図14参照)。
【0038】
<第2参考例>
図15は本発明の第2参考例を示す。ここでは、印字用シート60が、基材シート51の約半分程度の大きさとされている点が前記第1実施形態と相違する。基材シート51のうち二つ折りするための折り目54の下半分の面に、その周縁部に粘着性領域52が形成され、ここに印字用シート60が貼り付けられている。封筒作成用シート50に印刷する際には、基材シート51の上半分の領域と印字用シート60との2カ所に例えば給与明細等が印字される。その後、印字用シート60を剥がせば、粘着性領域52が露出し、基材シート51を二つ折りにして封筒にすることができる。
【0039】
<第3参考例>
本発明の第3参考例について図16ないし図19を参照して説明する。本実施形態の封筒作成用シート70は、封筒入りの納品書に適用させたものであり、図16に示すように、基材シート71と印字用シート80とを重ね合わせてなるA4版のシートである。
【0040】
この封筒作成用シート70においては、印字用シート80に、第3のマイクロミシン目87が形成されており、この点が上記第1参考例とは異なる。この第3のマイクロミシン目87は、印字用シート80の第1の領域81のうち、基材シート71の露出された粘着性領域72が折り重ねられる領域の内側約0.5mmの位置に、図中左右に延びるように形成されている。
【0041】
なお、本参考例においても、折り目74は印字用シート80の縦方向の中央よりも下部寄りに形成されているから、第1の領域81は第2の領域82に比べて広くなり、折り目74で折って二重に折り重ねると、第1の領域81の一部が折り重なり部分から余剰部81Aとして、はみ出ることになる。そこで、その余剰部81Aに例えば「納品書」等の表題や日付、宛先等を印字することが好ましい。
【0042】
本参考例の封筒作成用シート70を使用する場合には、印字用シート80の第1の領域81に納品書の内容を、第2の領域82には例えば売上伝票の内容をプリンタによって印刷する。印字用シート80の第2の領域82に印刷した売上伝票は、封筒として閉じる前に基材シート71から引き剥がして控えとすることができる(図17参照)。売上伝票を剥がした後、露出された粘着性領域72が内側となるように折り目74に沿って折り曲げ、粘着性領域72を印字用シート80の第1の領域81に重ね合わせて接着させる。この時、例えば営業日案内等の同封すべき他の書類がある場合には、印字用シート80の第1の領域81と基材シート71との間に挿入することができる。
【0043】
このような封筒を開封する場合には、上記第1参考例と同様に、封筒の3つの周縁部を、第1のマイクロミシン目73(83)および第2のマイクロミシン目75(85)に沿って他の領域から切り離す(図18参照)。これにより、基材シート71により覆われた印字用シート80の第1の領域81に印刷された情報(納品書)を見ることができる。さらに、第3のマイクロミシン目87により納品書を他の部分から切り離すことにより、不要部分を簡単に除去することができ(図19参照)、納品書を保管する場合に好都合である。
【0044】
このように、本参考例の封筒作成用シート70によれば、必要部分を不要部分から容易に切り離すことができるため、印刷された情報を保管したい場合に便利である。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)上記実施形態では、給与袋作成用紙をA4サイズとしたが、サイズは特に限定されず、例えば、A3、A5、A6、B4、B5等の用紙であってもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、各切断可能線をマイクロミシン目としたが、切断可能であればマイクロミシン目に限定されない。
【0048】
(3)基材シートおよび印字用シートの材質は、特に限定されない。例えば、印字用シートには、コ-ト紙、上質紙、クラフト紙、微塗工紙、サ-マル紙その他の紙類が使用できる。
【0049】
(4)上記実施形態では、給与袋の作成用シートを例に取って説明したが、これに限らず、基材シートの裏側に印刷、手書き、タック貼着等によって宛先を記載して一般の通信用の封筒として利用してもよいことはもちろんである。
【0050】
(5)上記実施形態では、印字用シート20,40,80の第1の領域21,41,81は第2の領域22,42,82よりも広くなるようにして余剰部21A,41A,81Aが形成されるようにしたが、これに限らず、折り目14,34,74を縦方向の中央に形成して両領域を同一の大きさにしてもよい。また、余剰部21A,41A,81Aが形成されるとしても、その部分を折り返した印字用シート20,40,80の上に更に折り重ねて接着したり、切り離したりしてもよい。このようにすれば、封書サイズを定型サイズとすることもでき、有利に郵送することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】
本発明の第1参考例の給与袋作成用シートの基材シートの平面図
【図2】
同じく印字用シートの平面図
【図3】
同じく給与袋作成用シートの分解平面図
【図4】
同じく印字用シートに印刷を行った場合を示す平面図
【図5】
同じく基材シートから印字用シートの第2の領域を引き剥がした場合を示す平面図
【図6】
同じく収納部に書類を入れる場合を示す斜視図
【図7】
同じく給与袋が完成した状態を示す平面図
【図8】
同じく給与袋を開封した状態を示す斜視図
【図9】
同じく給与袋作成用シートを使用する場合を示す断面工程図
【図10】
同じく給与袋作成用シートを使用する場合を示す断面工程図
【図11】
本発明の実施形態の給与袋作成シートの基材シートの平面図
【図12】
同じく印字用シートの平面図
【図13】
同じく基材シートから印字用シートの第2の領域を引き剥がした場合を示す平面図
【図14】
同じく給与袋を開封した状態を示す斜視図
【図15】
本発明の第2参考例を示す平面図
【図16】
本発明の第3参考例の封筒作成用シートの分解平面図
【図17】
同じく基材シートから印字用シートの第2の領域を引き剥がした場合を示す平面図
【図18】
同じく封筒を開封した状態を示す斜視図
【図19】
同じく納品書を切り取った状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0053】
10,30,50…給与袋作成用シート
11,31、51,71…基材シート
12,32,52,72…粘着性領域
13,33,53,73…第1のマイクロミシン目
14,34,54,74…折り目
15,35,55,75…第2のマイクロミシン目
16…収納部
20,40、50,70…印字用シート
21,41,71…第1の領域
22,42,72…第2の領域
23,43,83…第1のマイクロミシン目
24,44,84…切れ目
25,45,85…第2のマイクロミシン目
26,46…剥離層
70…封筒作成用シート
87…第3のマイクロミシン目
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタにより印刷可能かつ折り返し線で二つ折り可能とされたシートであって、このシートは、一方の面の周縁部に粘着性領域が形成された基材シートと、プリンタにより印刷可能で、かつ、前記折り返し線に沿った切れ目によって第1および第2の2つの領域に切り離し可能とされた印字用シートとからなり、前記基材シートの前記一方の面に前記印字用シートを重ね合わせてなる封筒作成用シートであって、
前記基材シートの前記第2の領域と対応する部分の4つの周縁部に形成された粘着性領域以外は非粘着性領域とされているとともに、前記印字用シートの前記第2の領域のうち少なくとも前記粘着性領域と対応する部分には前記第2の領域を前記基材シートから剥離可能とする剥離層が形成されており、
前記第2の領域を前記切れ目により前記第1の領域と切り離して前記基材シートから剥離することで前記4つの周縁部に露出させた前記粘着性領域を前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ね可能とし、
前記基材シートおよび前記印字用シートには、前記切れ目に沿った折り返し線により前記基材シートを前記印字用シートの前記第1の領域に折り重ねた場合の周縁部のうち前記折り返し線およびその両側に位置する3辺に沿って、前記粘着性領域の内側に位置する切断可能線が形成されていることを特徴とする封筒作成用シート。
【請求項2】
前記非粘着性領域は、前記基材シートの一方の面の全面に粘着性領域を形成した後、その粘着性領域の粘着性を低下させる阻害物質を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の封筒作成用シート。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-08-06 
結審通知日 2012-08-08 
審決日 2012-08-21 
出願番号 特願2005-988(P2005-988)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 砂川 充  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 鈴木 秀幹
東 治企
登録日 2010-11-05 
登録番号 特許第4617510号(P4617510)
発明の名称 封筒作成用シート  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ