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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01J
管理番号 1268730
審判番号 不服2010-16309  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-20 
確定日 2013-01-09 
事件の表示 特願2004-532168「軽オレフィン生産のための触媒」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日国際公開、WO2004/020093、平成17年12月 2日国内公表、特表2005-536343〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年8月28日(パリ条約による優先権主張 2002年8月29日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成21年7月22日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月26日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成22年3月16日付けの拒絶査定に対して、同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに同日付けで手続補正がされ、同年10月28日付けで特許法第163条第2項で準用する同法第50条で規定する拒絶理由の通知がなされ、これに対して平成23年2月7日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、当審において、平成24年1月30日付けで同法第164条第3項で規定する報告書を引用した審尋を行ったところ、回答書の提出がなかったものである。

第2 本願発明
本願の発明は、平成23年2月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「 【請求項1】
ペンタシル型ゼオライト及び1以上の固体の酸性クラッキング促進剤を含む触媒組成物において、前記ペンタシル型ゼオライトが、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、希土類金属イオン、リン含有イオン、アルミニウムイオン、及びそれらの組合せからなる群から選択されたイオンを含む化合物でドープされており、かつ前記固体の酸性クラッキング促進剤が、希土類でドープされたアルミナ又は希土類でドープされたシリカ-アルミナであるところの前記触媒組成物。」

第3 原査定の理由の概要
原審における本願に対する拒絶査定の理由の1つは、本願発明は、本願出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

<引用刊行物>
刊行物 国際公開第01/38460号

第4 刊行物の記載事項
上記刊行物には、以下の記載がある。
(a)
「the present invention is directed to a catalyst composition comprising:
a) 10 to 40 wt% catalytic cracking component,
b) 0.1 to 85 wt% olefin-selective zeolite treated ex situ with phosphorus, wherein the olefin-selective zeolite is treated with at least 10 wt% phosphorus-containing compound, calculated as P_(2)O_(5) based on the total amount of olefin-selective zeolite,
c) binder,
d) 0-25 wt% silica.
wherein the total amount of amorphous alumina in the final catalyst composition is at least 10 wt%.」(第8頁第23行?第9頁第2行)
(翻訳文:本発明は、下記成分:
a)10?40重量%の接触クラッキング成分、
b)0.1?85重量%の、リンでエクスシチュー処理されたオレフィン選択性ゼオライト、ここでオレフィン選択性ゼオライトは、オレフィン選択性ゼオライトの総量に基づいてP_(2)O_(5)として計算して少なくとも10重量%のリン含有化合物で処理されている、
c)バインダー、
d)0?25重量%のシリカ、
ここで、最終触媒組成物中の無定形アルミナの総量は少なくとも10重量%である、
を含む触媒組成物に関する。)

(b)
「the ex situ activation comprises contacting the olefin-selective zeolite with a phosphorus-containing compound in solution or liquid. A suitable phosphorus-containing compound, i.e. any phosphorus-containing compound having a covalent or ionic constituent capable of reacting with hydrogen ion, may be employed」(第4頁第28行?第5頁第1行)
(翻訳文:エクスシチュー活性化は、オレフィン選択性ゼオライトをリン含有化合物と溶液又は液体中で接触させることを含む。適するリン含有化合物、すなわち水素イオンと反応可能な共有又はイオン構造を有するあらゆるリン含有化合物が使用され得る。)

(c)
「Examples of suitable olefin-selective zeolites are MFI-type zeolites ... .
...
MFI-type zeolites ... include ZSM-5 ... .」(第6頁第14行?第25行)
(翻訳文:好適なオレフィン選択性ゼオライトの例は、MFI型ゼオライト・・・である。
・・・
MFI型ゼオライトは・・・ZSM-5・・・を含む。)

(d)
「Catalytic cracking components are either crystalline, such as zeolite Y and zeolite X, or amorphous, such as silica-alumina. Suitable zeolites Y and zeolite X are all zeolites Y and zeolites X which are normally used in FCC catalyst compositions and which may be in the hydrogen form, the ammonium form, or in ion exchanged form, e.g. one or more rare earth metals.」(第7頁第15行?第20行)
(翻訳文:接触クラッキング成分は結晶性、例えばゼオライトY及びゼオライトX、又は無定形、例えばシリカ-アルミナのいずれかである。適するゼオライトY及びゼオライトXは、FCC触媒組成物において通常使用される全てのゼオライトY及びゼオライトXであり、水素形態、アンモニウム形態、又はイオン交換された形態(例えば1以上の希土類金属)であり得る。)

第5 当審の判断
1 刊行物に記載された発明
上記刊行物の(a)には、リンでエクスシチュー処理されたオレフィン選択性ゼオライト、及び接触クラッキング成分を含む触媒組成物が記載されており、(b)には、当該エクスシチュー処理が、オレフィン選択性ゼオライトをイオン構造を有するリン含有化合物と接触させるものであることが記載されている。また、(c)には当該オレフィン選択性ゼオライトの一つとしてZSM-5が挙げられており、(d)には当該接触クラッキング成分の一つとしてシリカ-アルミナが挙げられている。したがって、以上の記載を本願発明の記載ぶりに沿って整理すると、刊行物には以下の発明が記載されていると認める。

「ZSM-5及び接触クラッキング成分を含む触媒組成物において、前記ZSM-5が、イオン構造を有するリン含有化合物と接触させる処理がなされており、かつ前記接触クラッキング成分が、シリカ-アルミナであるところの前記触媒組成物。」(以下、「引用発明」という。)

2 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「ZSM-5」、「接触クラッキング成分」、及び「イオン構造を有するリン含有化合物と接触させる処理」は、それらの機能も考慮すれば、それぞれ本願発明の「ペンタシル型ゼオライト」、「クラッキング促進剤」、及び「リン含有イオン」「を含む化合物でドープされており」に相当する。
また、引用発明の接触クラッキング成分、すなわちクラッキング促進剤としてのシリカ-アルミナに関して、シリカ-アルミナ系は固体かつ酸性の触媒として広く一般的に知られているところである(要すれば、特開平3-52827号公報の第2頁左上欄第8行参照。)から、上記クラッキング促進剤としてのシリカ-アルミナは、固体の酸性クラッキング促進剤としてのシリカ-アルミナということができる。
そうすると、両者は、
「ペンタシル型ゼオライト及び1の固体の酸性クラッキング促進剤を含む触媒組成物において、前記ペンタシル型ゼオライトが、リン含有イオンを含む化合物でドープされている、前記触媒組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明は、固体の酸性クラッキング促進剤が、希土類でドープされたアルミナ又は希土類でドープされたシリカ-アルミナであるのに対して、引用発明は、シリカ-アルミナである点。

3 相違点についての判断
上記刊行物の(d)には、接触クラッキング成分として例示されるゼオライトが、ゼオライトそのものの形態のみならず、希土類金属等によってイオン交換された形態、すなわち希土類金属等がドープされた形態であってもよいことが記載されている。そうであれば、接触クラッキング成分として同様に例示されているシリカ-アルミナについても、そのイオン交換された形態にまで拡張して接触クラッキング成分としての適用を試みることは、当業者であれば、容易に想起し得るものである。そして、流動接触分解法に関する技術分野において、接触クラッキング成分としてのシリカ-アルミナに希土類元素をイオン交換することが、例えば米国特許第4867863号明細書の第11欄第53行?第65行の実施例10B、第14欄第31行?第35行の請求項18に記載されるように公知の技術である点も併せて考えれば、引用発明における接触クラッキング成分として、希土類でドープされたシリカ-アルミナを採用することにより、上記相違点に係る本願発明の特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものである。
また、上記相違点に基づく本願発明の奏する効果も、上記刊行物の記載事項と公知技術から予測できる範囲のものであり、格別なものではない。

4 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2?14に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-23 
結審通知日 2012-07-31 
審決日 2012-08-20 
出願番号 特願2004-532168(P2004-532168)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 哲  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 田中 則充
斉藤 信人
発明の名称 軽オレフィン生産のための触媒  
代理人 松井 光夫  

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