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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1269183
審判番号 不服2010-11299  
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-26 
確定日 2013-01-23 
事件の表示 特願2006-530323「メディア項目のクラスタリングとクエリとを行う方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日国際公開、WO2005/031601、平成19年 3月29日国内公表、特表2007-507775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 その1.手続の経緯
本願は,2004年9月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年10月2日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,
平成18年5月30日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,請求の範囲,及び,図面(図面の中の説明に限る)並びに特許法第184条の8第1項の規定による条約第34条(2)(b)の日本語による翻訳文が提出されると共に審査請求がなされ,平成21年5月1日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して同年11月17日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成22年1月21日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して同年5月26日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,同年6月18日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成23年11月11日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋がなされたが,回答書の提出がなかったものである。

その2.平成22年5月26日付けの手続補正の却下の決定

補正却下の決定の結論

平成22年 5月26日付け手続補正を却下する。

理由

1.補正の内容
平成22年5月26日付けの手続補正(以下,「本件手続補正」という)により,平成21年11月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲,
「 【請求項1】
電子装置においてメディア項目を管理する方法であって,
少なくとも第1と第2の記述情報を含むメタデータを個々のメディア項目に提供するステップであって,1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られる,ステップと,
1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを形成するステップと,
2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを形成するステップであって,当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,自動的にメディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタ化する,ステップと,
少なくとも前記第1および第2のクラスタおよびいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を提供するステップと,
各クラスタといずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,電子装置のユーザ・インタフェースに提示するステップと,を含む,方法。
【請求項2】
前記個々のメディア項目の前記記述情報を,前記個々のメディア項目をクラスタすべきかどうかを判定するために,別の個々のメディア項目又は前記クラスタの記述情報にマッチングするステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記述情報に従って前記クラスタを命名するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個々のメディア項目間に前記クラスタを表示するが,該個々のメディア項目から前記クラスタを視覚的に区別するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つの記述情報に従ってメディア項目のクエリを行うステップと,
1つの他の記述情報に従って,前記1つの記述情報を満たすメディア項目のクエリをさらに行うステップと,をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メディア項目を,メディア項目とクラスタのアレイとして表示するステップと,
該当クラスタが前記ユーザ・インターフェース上で活性化された後に,前記メディア項目を,クラスタ内に表示するステップと,をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
別の記述情報が,前記メディア項目を取得した時刻である,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クラスタを手動で命名するステップであって,
前記格納システムに対応しても上記名称が更新される,ステップを含む,請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記クエリのプロセスを保存するステップと,
前記保存されたクエリのプロセスに従って,自動的に,前記メディア項目の後続のクエリを適合させるステップと,を含む,請求項5に記載の方法。
【請求項10】
測位システムから自動的に,又は,ユーザが手動で定義して,所在位置情報を取得するステップを含む,請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記メディア項目が画像である,請求項1に記載の方法。
【請求項12】
装置内に格納され少なくとも第1と第2の記述情報を含むメタデータを提供されたメディア項目を管理する装置であって,
1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られ,
前記装置は,1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを形成し,2つの記述情報を共通に有するような個々のメディア項目の第2のクラスタを形成するように構成されたグループ化手段を備え,
各クラスタといずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,前記装置のユーザ・インタフェースに提示するように構成される,装置。
【請求項13】
前記個々のメディア項目の前記記述情報を,前記個々のメディア項目をクラスタすべきかどうかを判定するために,別の個々のメディア項目又は前記クラスタの記述情報にマッチングするように構成された比較手段をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記記述情報に従って前記クラスタを命名する手段をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記個々のメディア項目間に前記クラスタを表示するが,該個々のメディア項目から視覚的に区別するようにさらに構成された請求項12に記載の装置。
【請求項16】
1つの記述情報に従ってメディア項目のクエリを行い,1つの他の記述情報に従って,前記1つの記述情報を満たす前記メディア項目のクエリをさらに行うように構成されたクエリ手段をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記メディア項目を個々に,又は,アレイとしてクラスタ化して表示するように構成された表示手段をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記表示手段が,クラスタの前記メディア項目を個々に,又は,別々のアレイとしてクラスタ化して表示するように構成されている,請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記アレイがユーザ・インタフェースの1つのビューである,請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記装置を測位するための手段をさらに含む,請求項12に記載の装置。
【請求項21】
移動体通信のための手段を更に含む,請求項12に記載の装置。
【請求項22】
写真撮影の手段を更に含む,請求項12に記載の装置。
【請求項23】
電子装置におけるメディア項目を管理するコンピュータ・プログラムであって,
該コンピュータ・プログラムが,
少なくとも第1と第2の記述情報を含むメタデータが個々のメディア項目に与えられ,
1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,
前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られ,
1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目から第1のクラスタが形成され,
2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目から第2のクラスタが形成され,
当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,当該クラスタ内のメディア項目が,自動的に,まとめてサブクラスタ化され,
少なくとも前記第1および第2のクラスタおよびいずれかのサブクラスタを含んで,クラスタの階層が提供され,
各クラスタといずれかのサブクラスタとが,個々のメディア項目として,前記装置のユーザインタフェースに提示される方法を実現する命令を具備するコンピュータ・プログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正前の請求項」という)は,

「 【請求項1】
CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える電子装置においてメディア項目を管理する方法であって,
少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが,個々のメディア項目に提供するステップであって,該2つの記述情報のうちの1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られる,ステップと,
前記1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップと,
前記2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップであって,当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成する,ステップと,
前記少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップと,
各クラスタと,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,前記CPUが前記表示装置に表示するするステップと,を含む,方法。
【請求項2】
前記個々のメディア項目の前記記述情報を,前記個々のメディア項目をクラスタとすべきかどうかを判定するために,別の個々のメディア項目又は前記クラスタの記述情報にマッチングするステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記記述情報に従って前記クラスタを前記CPUに制御された前記メディア項目マネージャが命名するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個々のメディア項目間に前記クラスタを表示するが,該個々のメディア項目から前記クラスタを,前記CPUに制御された前記表示装置が,視覚的に区別して表示するステップを含む,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つの記述情報に従ってメディア項目のクエリを,前記CPUに制御された前記メディア項目マネージャが行うステップと,
他の1つの記述情報に従って,前記1つの記述情報を満たすメディア項目のクエリを,前記CPUに制御された前記メディア項目マネージャがさらに行うステップと,をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メディア項目を,メディア項目とクラスタのアレイとして,前記CPUに制御された前記表示装置が,表示するステップと,
前記クラスタが前記表示装置上に表示された後に,前記メディア項目を,前記クラスタ内に,前記CPUに制御された前記表示装置が表示するステップと,をさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つの記述情報が,前記メディア項目を取得した時刻である,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザ・インタフェースを介したユーザの入力に基づいて,前記クラスタを,前記CPUに制御された前記メディア項目マネージャが命名するステップであって,
前記メモリ内のクラスタに対しても命名が行われる,ステップを含む,請求項3に記載の方法。
【請求項9】
測位システムから前記電子装置の所在位置情報を前記CPUに制御された前記メディア項目マネージャが取得するステップを含む,請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記メディア項目が画像である,請求項1に記載の方法。
【請求項11】
CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える電子装置であって,該電子装置は,該メモリ内に格納された少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを提供されたメディア項目を管理し,
前記2つの記述情報のうち1つの記述情報が,個々の前記メディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られ,
前記電子装置は,前記1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを形成し,前記2つの記述情報を共通に有するような個々のメディア項目の第2のクラスタを形成し,当該クラスタ中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成するように構成されたグループ化手段を備え,
各クラスタと,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,前記表示装置に表示するように構成される,電子装置。
【請求項12】
前記個々のメディア項目の前記記述情報を,前記個々のメディア項目をクラスタとすべきかどうかを判定するために,別の個々のメディア項目又は前記クラスタの記述情報にマッチングするように構成された比較手段をさらに含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項13】
前記記述情報に従って前記クラスタを命名する手段をさらに含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項14】
前記個々のメディア項目間に前記クラスタを表示するが,該個々のメディア項目が視覚的に区別できるように表示するようにさらに構成された請求項11に記載の電子装置。
【請求項15】
1つの記述情報に従ってメディア項目のクエリを行い,他の1つの記述情報に従って,前記1つの記述情報を満たす前記メディア項目のクエリをさらに行うように構成されたクエリ手段をさらに含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項16】
前記メディア項目を個々に,又は,アレイとしてクラスタ化して表示するように構成された表示手段をさらに含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項17】
前記表示手段が,クラスタの前記メディア項目を個々に,又は,別々のアレイとしてクラスタ化して表示するように構成されている,請求項16に記載の電子装置。
【請求項18】
前記アレイがユーザ・インタフェースの1つのビューである,請求項17に記載の電子装置。
【請求項19】
前記装置を測位するための手段をさらに含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項20】
移動体通信のための手段を更に含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項21】
写真撮影の手段を更に含む,請求項11に記載の電子装置。
【請求項22】
CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える電子装置におけるメディア項目を管理するコンピュータ・プログラムであって,
該コンピュータ・プログラムが,請求項1に記載の方法を実現する命令を含むコンピュータ・プログラム。」(以下,上記引用の請求項各項を,「補正後の請求項」という)に補正された。

2.補正の適否
2-1.新規事項
(1)当審の判断
本件手続補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か,即ち,本件手続補正が,平成18年5月30日付けで提出された明細書,請求の範囲の日本語による翻訳文,及び,国際出願の願書に添付された図面(以下,これを「当初明細書等」という)の範囲内でなされたものであるかについて,以下に検討する。

補正後の請求項1,請求項3,請求項5,請求項8,及び,請求項9に,
「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」と記載されているが,当初明細書等には,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」という記載は存在しない。
そこで,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」という記載が,当初明細書等の記載から読み取れるかについて,更に検討すると,
当初明細書等には,
「【0050】
実施構成
図3は本発明に準拠する電子装置MSの1例を示す図である。電子装置MS内のデータ処理ユニットCPUの一部として本発明に準拠するメディア項目マネージャMMを実装することができる。メディアマネージャMMはいわゆるメディアアルバムサーバのサーバ側の範囲内にあるものであってもよく,さらに,ネットワークを介して電子装置MSによって着信するものであってもよい。しかし,例えばプライバシ上の理由などのために,個人用装置で利用可能な全メタデータを格納する方が役に立つ場合が時としてあり,その際にはメディア項目マネージャMMのクライアント側実施構成の方が望ましいものとなる。電子装置が何らかの別アプリケーションAPPも同様に備えることが可能であることは言うまでもない。」
という記載が存在し(下線は当審にて説明の都合上附加したものである。以下,同じ),「メディア項目マネージャMM」という記載が存在することは明らかである。
しかしながら,当該「メディア項目マネージャMM」は,上記下線を附した「データ処理ユニットCPUの一部として本発明に準拠するメディア項目マネージャMMを実装することができる」という記載からも明らかなように,「CPUの一部」,即ち,「CPU」自身であるから,「CPUに制御された」ものでないことも明らかである。また,上記下線を附した記載中には,「メディア項目マネージャMM」の他の構成として,「メディアマネージャMMはいわゆるメディアアルバムサーバのサーバ側の範囲内にあるもの」,或いは,「ネットワークを介して電子装置MSによって着信するもの」,または,「メディア項目マネージャMMのクライアント側実施構成の方が望ましい」という構成が示されているが,これらの何れの構成においても,「電子装置MS内のデータ処理ユニットCPU」との関係は述べられておらず,上記引用の何れの構成からも,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」という構成が,当業者にとって自明の事項とも認められない。そして,当初明細書等の上記引用箇所以外の記載においても,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」を示唆する内容は存在しない。
また,当初明細書等の請求項16に,
「メディア項目を管理する装置であり,少なくとも2つの記述情報を有するメタデータを個々のメディア項目に与える定義装置を具備する装置であって,少なくとも一方の記述情報を共有する個々のメディア項目をまとめてクラスタするグループ分け装置(grouper)をさらに具備する装置において,メディア項目を含む前記クラスタを前記個々のメディア項目と同様に管理するように構成される装置。」
という記載が存在するが,上記引用の請求項16に記載の装置は,同請求項1?請求項15に記載の“方法”を“装置”として表現したものであるから,「メディア項目を管理する装置」の全体構成を指すものであって,構成の一部である「メディア項目マネージャ」を示すものとは認められず,また,仮に「メディア項目マネージャ」を示すものであったとしても,当初明細書等の請求項16?請求項27には,当該「装置」と「CPU」との関係は言及されていない。
以上のとおりであるから,補正後の請求項1,請求項3,請求項5,請求項8,及び,請求項9に記載された「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」は,当初明細書等に記載されたものでなく,
本件手続補正は,当初明細書等の記載の範囲内でなされたものではない。

(2)新規事項むすび
したがって,本件手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

2-2.独立特許要件
本件手続補正は,上記において検討したとおり,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが,
以下では,本件手続補正が,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであると仮定して,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすものであるか否か,即ち,補正後の請求項に係る発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(1)36条6項1号について
補正後の請求項1,請求項3,請求項5,請求項8,及び,請求項9に,
「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」と記載されているが,本願明細書の発明の詳細な説明には,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」という記載は存在しない。

(2)36条6項2号について
ア.補正後の請求項1に,
「前記1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップと,
前記2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップであって,当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成する,ステップと,
前記少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップ」
と記載されているが,
“1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,形成するステップ”
“2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを,形成するステップであって,当該クラスタの中のメディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成する,ステップ”
“少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,形成するステップ”
の各ステップを,「メディア項目マネージャ」が,「CPU」のどのような「制御」のもと,どのようにして実現しているのか,補正後の請求項1に記載された内容,及び,他の請求項の記載を加味しても不明である。
よって,補正後の請求項1に係る発明は,明確でない。

イ.補正後の請求項2乃至請求項10,及び,請求項22は,補正後の請求項1を直接・間接に引用するものであるから,上記アで指摘の,補正後の請求項1における明確でない構成を内包し,かつ,補正後の請求項2乃至請求項10,及び,請求項22の記載を加味しても,その点が明確になるものでもない。
よって,補正後の請求項2乃至請求項10,及び,請求項22に係る発明は,明確でない。

ウ.補正後の請求項11は,補正後の請求項1に係る「方法の発明」を,「電子装置」として表現したものであるから,上記アで指摘の明確でない構成を内包し,かつ,補正後の請求項11に記載の内容を加味しても,その点が明確になるものではない。
よって,補正後の請求項11に係る発明は,明確でない。

エ.補正後の請求項12乃至請求項21は,補正後の請求項11を直接・間接に引用するものであるから,上記ウで指摘の明確でない構成を内包し,かつ,補正後の請求項12乃至請求項21に記載の内容を加味しても,その点が明確になるものでもない。
よって,補正後の請求項12乃至請求項21に係る発明は,明確でない。

(3)36条4項1号について
ア.補正後の請求項1,請求項3,請求項5,請求項8,及び,請求項9に,
「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」と記載されている点に関して,
当初明細書等には,その段落【0050】に,
「図3は本発明に準拠する電子装置MSの1例を示す図である。電子装置MS内のデータ処理ユニットCPUの一部として本発明に準拠するメディア項目マネージャMMを実装することができる。メディアマネージャMMはいわゆるメディアアルバムサーバのサーバ側の範囲内にあるものであってもよく,さらに,ネットワークを介して電子装置MSによって着信するものであってもよい。しかし,例えばプライバシ上の理由などのために,個人用装置で利用可能な全メタデータを格納する方が役に立つ場合が時としてあり,その際にはメディア項目マネージャMMのクライアント側実施構成の方が望ましいものとなる。」
と記載されるに止まり,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」がどのように構成されているか不明である。

イ.同じく,補正後の請求項1に,
「前記1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップと,
前記2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップであって,当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成する,ステップと,
前記少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップ」と記載されている点に関して,
上記引用の記載中の「メディア項目マネージャ」に関しては,当初明細書等には,上記で引用の段落【0050】に記載された程度の内容しか存在しないので,上記引用の,補正後の請求項1に記載の各ステップを,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」が,どのように実現しているか不明である。
よって,本願明細書の発明の詳細な説明は,経済産業省で定めるところにより,その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記述したものでない。

(4)29条2項について
ア.補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という)は,上記で指摘したように明りょうではないが,一応,上記で補正後の請求項1として引用した記載のとおりのものであるとして,以下の検討を行う。

イ.引用刊行物に記載の発明
一方,原審が拒絶理由に引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-271617号公報(2003年9月26日公開,以下,これを「引用刊行物1」という)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0008】ここで,画像情報とは,例えばデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の画像撮影装置,パソコンや携帯情報端末(PDA)に付属する画像撮影装置,携帯電話のような移動通信体に付属する画像撮影装置等で撮影された静止画像や動画に対応して形成されたものや,例えばスキャナ等の画像読取装置によって作成されたもののことである。また,付帯情報とは,例えば,画像に関する情報や,画像ファイルに関する情報等のことである。このうち,画像に関する情報には,例えばテーマタイトル,撮影日時,撮影コマ数,カメラの機種名(名称),撮影者名,GPS情報から得られた撮影地点情報等,画像に関するあらゆる情報が含まれる。また,近年,画像撮像装置により撮影された写真の画像情報を記憶手段に記憶させる際の形式(ファイルフォーマット)として用いられているExif(Exchangeable Image File Format)と呼ばれる画像ファイルフォーマットのタグ情報を用いても良い。一方,画像ファイルに関する情報には,例えば画像ファイルの作成日時,更新日時,属性等が含まれる。さらに,関連情報には,撮影日時,撮影地もしくはその周辺の位置情報,高さ情報等から導出される,撮影地もしくはその周辺の地名等の情報,天候や温度や気温等の天気情報,地形や施設や周辺環境等の地域情報,撮影時の季節等の暦情報,流行やニュース等の社会情報等が含まれる。また,分類基準情報を構成する分類基準及び分類項目は,具体的には,例えば分類基準が「天気」の場合には,「快晴」,「晴れ」,「曇り」,「雨」,「雪」,「霧」といった分類項目が含まれ,また分類基準が「撮影年」の場合には,「2000年」,「2001年」,「2002年」といった分類項目が含まれる。」

B.「【0043】[第1の実施の形態]第1の実施の形態で例示される画像分類装置(画像分類システム)100は,例えば図1に示すように,コンピュータ本体1と,画像記録媒体(第1の記憶手段)2と,表示部3と,入力インターフェース部(入力手段)4とを備えて構成されている。
【0044】コンピュータ本体1は,例えばパーソナルコンピュータ等から構成されており,画像分類処理(詳細後述)が施され分類された画像ファイルを記憶するための例えばハードディスク(第2の記憶手段)11と,画像分類装置100の各構成要素を制御するための制御部12とを備えている。
【0045】このうち,制御部12は,例えばCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),インターフェース等を備えて構成されている。
【0046】CPUは,ハードディスク11に記憶されているシステムプログラム等に規定されている手順に従ってインターフェースに接続されている各構成要素を統一的に制御することにより,画像分類装置100としての様々な機能を実現する。特に,CPUは,画像記録媒体2に記憶されている画像ファイルに付加されている(に関する)付帯情報及び付帯情報に関連した関連情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて,画像ファイルを複数の分類項目に分類するための分類基準と複数の分類項目とからなる分類基準情報を作成し,分類基準に基づいて画像ファイルをハードディスク11に分類する画像分類処理を行う。
【0047】ここで,付帯情報とは,画像ファイルの画像データ(情報)に付帯する情報のことであり,具体的には,画像データに付加されているタグ情報(後述)や,入力インターフェース部4を介して入力された入力情報(例えば,撮影者名やテーマタイトル等)や,例えばls機能を用いることで検出される画像ファイルのファイル属性に関する情報や,撮影された画像の内容に関する情報等のことである。なお,付帯情報として記憶されている内容は,画像撮影装置の機能や撮影時のモード設定などで異なるが,本発明の性質上,少なくとも1種類の付帯情報が画像ファイルに記憶されていることとする。・・・」

C.「【0053】ここで,画像ファイルは,そのデータ構造が,画像分類処理が行われた場合に,画像ファイルが格納されるフォルダのフォルダ名で,かつ,分類項目に対応したフォルダ名が,付帯情報として記憶されるデータ構造となっている。また,この画像ファイルの形式は,例えばTIFF REV.6.0の付属情報として分類先情報等を記録させる場合には,例えば図13に示すようなタグが考えられ,TIFFの付属情報の仕様に準拠した形式で本発明の情報を記録しておくことにより,画像分類装置で容易に参照することができる。なお,この場合,分類先のフォルダを3カ所指定しているが,これに限られるものではなく任意に設定することができ,同様にタイプやカウント数も任意に設定することができる。また,画像ファイルの形式は,TIFFに限られるものではなく,例えばExifIFD等であっても良い。なお,画像ファイルには,タグ情報として,例えば,時間情報(例えば,撮影日時,ファイル作成日時,ファイル更新日時等),GPS情報(例えば,緯度,経度,高度等;後述),画像撮影装置の機種名,画像ファイルの記憶に用いられたソフトウェア名,音声情報等が付加されている。
【0054】なお,画像撮影装置は,例えば撮影された画像にタグ情報として付加されるGPS(Global Positioning System)情報を取得するためのGPS受信機(図示略)を備えている。
【0055】表示部3は,例えばLCD(Liquid Crystal Display)等から構成されており,制御部12から出力され入力された表示制御信号に従って,例えば画像及びフォルダ等を表示するための表示手段や,画像分類処理を行う際のGUI(Graphical User Interface)として機能する。
【0056】入力インターフェース部4は,フォルダ名や例えば撮影者名や画像のテーマタイトル等を入力するためのものであり,例えばキーボードやマウスやゲーム機のコントローラ等から構成されている。」

D.「【0061】そして,制御部12は,付帯情報取得プログラムを実行して,画像ファイル格納領域に格納されている画像ファイルに付加されている付帯情報を画像ファイル毎に複数種類取得して(ステップS3),取得された付帯情報を例えば画像ファイル情報記憶領域に記憶する。この実施の形態では,付帯情報として,例えば,画像ファイルのタグ情報から「撮影日時情報」や「GPS情報」を取得する(図4?図6参照)。
・・・・(中略)・・・・
【0063】次に,制御部12は,分類基準作成プログラムを実行して,分類対象となる全ての画像ファイルに対応する付帯情報及び関連情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて,画像ファイルを複数の分類項目に分類するための分類基準と複数の分類項目とからなる分類基準情報を画像ファイル毎に作成して(ステップS4),作成された分類基準情報を例えば分類基準記憶領域に記憶する。
・・・・(中略)・・・・
【0064】その後,制御部12は,例えば作成された各分類基準情報に基づいて分類基準及び分類項目を例えば表示部3等に表示して,これら分類基準情報の中からいずれか一つの分類基準及びその分類基準に対応する分類項目が例えば入力インターフェース部4等の操作によりそれぞれ選択されると,第1フォルダ名作成プログラムを実行して,選択された分類基準情報に基づいて各分類項目に対応するフォルダ名を作成する(ステップS5)。なお,作成されたフォルダ名は,例えば第1フォルダ名記憶領域に一旦記憶される。
【0065】なお,フォルダ名は,そのフォルダに格納される画像ファイルの共通点を表す文字列,すなわち分類基準情報を判別できるものが作成される。・・・・(中略)・・・・
ハードディスク11等の記憶手段内に,DCFルートディレクトリとしてフォルダ名「DCIM」のフォルダ(ディレクトリ)を作成し,その下にDCFディレクトリの命名法に準拠したフォルダ名のフォルダを作成することになる。
・・・・(中略)・・・・
その上限より多くなる(を越える)フォルダの作成が禁止されることになる。なお,使用される文字には半角英数大文字であるという制限もある。」

E.「【0070】[パターン2A]次に,パターン2Aについて図5を参照して説明する。このパターン2Aでは,分類基準である「撮影日時」に基づいて分類項目である画像の「撮影年月日」が同じ画像ファイルをまとめて一つのフォルダに格納するようになっている。
【0071】具体的には,分類される前の画像ファイルとして,作成された分類項目である「撮影年月日」が「2001.01.18」である5つの画像ファイルと,分類項目である「撮影年月日」が「2002.01.18」である6つの画像ファイルとが抽出されている。ここで,これら画像ファイルをハードディスク11内に分類して保存する場合には,ルートディレクトリであるフォルダ名「DCIM」のフォルダの下位のフォルダとして,「撮影年月日」が「2001.01.18」に対応するフォルダ名「10001A18」のフォルダ,「撮影年月日」が「2002.01.18」に対応するフォルダ名「10102A18」のフォルダを作成して,それぞれのフォルダの中に対応する画像ファイルを格納し保存する。なお,フォルダ名「10101A18」及び「10102A18」の下5桁の英数字は,「撮影年月日」に対応して形成されており,この場合,英字「A」は一月「01」に対応している。また,作成されるフォルダは,分類項目が選択された画像ファイルに対応するフォルダのみ作成されるようになっている。」

F.「【0084】上記第1の実施の形態の画像分類装置では,画像ファイルの分類を選択された1つの分類基準情報に基づいて行うようにしたが,この第2の実施の形態の画像分類装置は,複数の分類基準情報(例えば,「撮影日時情報」及び「撮影者情報」)に基づいて行うようになっている。なお,分類基準情報が複数である場合,画像ファイルの分類に使用した分類基準情報を表す文字列を含ませることが不可能であったり,フォルダ名だけでは分類基準情報を判別するのに不十分であったりする虞がある。この場合には,各フォルダ内に格納される画像ファイルの「分類基準に関する情報」(例えば,「撮影年月日」及び「撮影者名」が記されている文書ファイル等の情報)を作成し,前記「分類基準に関する情報」を特定できる文字列(例えば,前記文書ファイルのファイル名例えば「INFO100.DAT」等)からなるフォルダ名を作成するとともに,そのフォルダ名を有するフォルダ内に前記「分類基準に関する情報」を格納するようになっている。これにより,画像ファイルの分類に使用された分類基準情報を簡単に特定することができる。
【0085】具体的には,分類される前の画像ファイルとして,分類項目である「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「太郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「次郎」に対応する1つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2001.01.18」と「次郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「太郎」に対応する3つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「花子」に対応する2つの画像ファイルとが抽出されている。」

G.「【0089】なお,分類基準情報が複数ある場合の画像ファイルの分類パターンは,上記実施の形態で例示されたものに限られるものではなく,例えば,先ず,分類基準情報を「撮影日付情報」として画像ファイルの分類を行った後,さらに,作成された分類基準情報が「撮影日付情報」に対応するフォルダ毎に,分類基準情報を「撮影者」とする画像ファイルの分類を行うことにより,これらフォルダが階層構造となるような画像ファイルの分類を行うようにしても良い。」

H.「【0108】なお、上記実施の形態において、画像ファイルを複数の分類基準情報を用いて分類する際に、付帯情報と関連情報とのそれぞれから作成された分類基準情報を複数用いるようにしても良い。また、画像分類装置を具備させうる装置としては、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションやゲーム機のコンピュータ、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の画像撮影装置、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の移動通信体、スキャナ等の画像読取装置等が挙げられる。さらに、第1及び第2の記憶手段をそれぞれ異ならせる構成としたが、これに限られるものではなく、第1及び第2の記憶手段が同じものからなる構成としても良く、例えば両記憶手段をハードディスクで構成して、ハードディスク11内に記憶されている画像ファイルの分類をハードディスク11内にて行うようにしても良い。加えて、関連情報をインターネット6上で検索を行うことにより取得するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば画像の内容に関するデータと比較可能な画像内容に関する各種テンプレート(テーブル)をハードディスク11等に設け、それらを比較することで取得するようにしても良い。具体的には、例えば「天気情報」を取得する際に、取得された画像の内容に関するデータと比較するための天気に関するテンプレートを例えばハードディスク11内に設けるようにしても良い。」

(あ)上記Bの「画像分類装置(画像分類システム)100は,・・・コンピュータ本体1と,画像記録媒体(第1の記憶手段)2と,表示部3と,入力インターフェース部(入力手段)4とを備えて構成されている」という記載,「制御部12は,例えばCPU(Central Processing Unit),ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),インターフェース等を備えて構成されている」という記載,「CPUは,・・・インターフェースに接続されている各構成要素を統一的に制御することにより,画像分類装置100としての様々な機能を実現する」という記載,及び,「CPUは,・・・画像ファイルに付加されている(に関する)付帯情報及び付帯情報に関連した関連情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて,画像ファイルを複数の分類項目に分類するための分類基準と複数の分類項目とからなる分類基準情報を作成し,分類基準に基づいて画像ファイルをハードディスク11に分類する画像分類処理を行う」という記載,並びに,
上記Cの「表示部3は,例えばLCD(Liquid Crystal Display)等から構成されており,制御部12から出力され入力された表示制御信号に従って,例えば画像及びフォルダ等を表示するための表示手段や,画像分類処理を行う際のGUI(Graphical User Interface)として機能する」という記載,及び,「入力インターフェース部4は,フォルダ名や例えば撮影者名や画像のテーマタイトル等を入力する」という記載から,
引用刊行物1に記載の「画像分類装置」は,“CPUと,ROM,及び,RAMを含む制御部と,画像ファイルを記憶するハードディスクとを備えるコンピュータと,表示部と,入力インターフェースとを備える”ことが読み取れ,
また,上記Hの「画像分類装置を具備させうる装置としては・・・デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の画像撮影装置、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の移動通信体・・・等が挙げられる」という記載から,引用刊行物1に記載の「コンピュータ」は,“デジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の画像撮影装置、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の移動通信体”に代替し得ることが読み取れ,
更に,前記「CPU」が,“画像ファイルに附加されている付帯情報及び付帯情報に関連した関連情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて,前記画像ファイルを複数の分類項目に分類するための分類基準と複数の分類項目とからなる分類基準情報を作成し,前記分類基準情報を用いて,前記画像ファイルを,ハードディスクに分類する”点が読み取れる。

(い)上記Aの「付帯情報とは,例えば,画像に関する情報や,画像ファイルに関する情報等のことである。このうち,画像に関する情報には,例えばテーマタイトル,撮影日時,撮影コマ数,カメラの機種名(名称),撮影者名,GPS情報から得られた撮影地点情報等,画像に関するあらゆる情報が含まれる」という記載,及び,
上記Cの「画像ファイルには,タグ情報として,例えば,時間情報(例えば,撮影日時,ファイル作成日時,ファイル更新日時等),GPS情報(例えば,緯度,経度,高度等;後述),画像撮影装置の機種名,画像ファイルの記憶に用いられたソフトウェア名,音声情報等が付加されている」という記載,並びに,
上記Dの「付帯情報として,例えば,画像ファイルのタグ情報から「撮影日時情報」や「GPS情報」を取得する」という記載から,
引用刊行物1に記載された「画像ファイル」には,“撮影日時などの時間情報,GPS情報から得られた撮影地点情報,撮影者などの,複数の付帯情報が附加されている”点が読み取れる。
また,上記Bの「付帯情報とは,画像ファイルの画像データ(情報)に付帯する情報のことであり,・・・画像データに付加されているタグ情報(後述)や,入力インターフェース部4を介して入力された入力情報(例えば,撮影者名やテーマタイトル等)や,・・・撮影された画像の内容に関する情報等のことである」という記載,及び,上記(あ)で検討した事項から,
引用刊行物1に記載の「付帯情報」は,“画像分類装置の入力インターフェースを介して入力された入力情報”を含むものであることが読み取れる。

(う)上記Dの「制御部12は,・・・全ての画像ファイルに対応する付帯情報及び関連情報のうちの少なくとも一方の情報に基づいて,・・・分類基準情報を画像ファイル毎に作成して」という記載,「制御部12は,・・・選択された分類基準情報に基づいて各分類項目に対応するフォルダ名を作成する」という記載,及び,
上記Eの「分類基準である「撮影日時」に基づいて分類項目である画像の「撮影年月日」が同じ画像ファイルをまとめて一つのフォルダに格納するようになっている」という記載,「分類される前の画像ファイルとして,作成された分類項目である「撮影年月日」・・・「2001.01.18」に対応するフォルダ名・・・のフォルダを作成して,それぞれのフォルダの中に対応する画像ファイルを格納し保存する」という記載,並びに,
上記Fの「画像ファイルの分類を選択された1つの分類基準情報に基づいて行う」という記載から,
引用刊行物1に記載の「制御部」は,“画像ファイルに対応する付帯情報に基づいて,画像ファイル毎に,分類基準情報を作成し,選択された前記分類基準情報に基づいて各分類項目に対応するフォルダ名を作成し,分類項目が選択された画像ファイルに対応するフォルダ名のフォルダを作成し,前記フォルダに対応する画像ファイルを分類する”ことが読み取れる。

(え)上記Fの「複数の分類基準情報(例えば,「撮影日時情報」及び「撮影者情報」)に基づいて行うようになっている」という記載,及び,「分類される前の画像ファイルとして,分類項目である「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「太郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「次郎」に対応する1つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2001.01.18」と「次郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「太郎」に対応する3つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「花子」に対応する2つの画像ファイルとが抽出されている」という記載から,
引用刊行物1には,“複数の「分類基準情報」が一致する「画像」を抽出する”ことが記載されていると読み取れる。

(お)上記Gの「先ず,分類基準情報を「撮影日付情報」として画像ファイルの分類を行った後,さらに,作成された分類基準情報が「撮影日付情報」に対応するフォルダ毎に,分類基準情報を「撮影者」とする画像ファイルの分類を行うことにより,これらフォルダが階層構造となるような画像ファイルの分類を行うようにしても良い」という記載から,
引用刊行物1には,「撮影日付情報」の一致する「画像」を分類した「フォルダ」の下に,「撮影者」の一致する「画像」を分類するフォルダを作成するという,“「階層構造」の「フォルダ」を用いて,「画像ファイルの分類を行う」”ことが記載されていると読み取れ,上記(う)で検討した事項と併せると,
引用刊行物1には,“第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したフォルダ名のフォルダを生成し,前記フォルダ内に分類されている画像のうち,更に,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類小目に対応したファイル名の下層のフォルダを生成し,前記下層のフォルダに,前記第1,及び,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する”ことが記載されていると読み取れる。
以上(あ)?(お)において検討した事項から,引用刊行物1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されていると認める。

CPUと,ROM,及び,RAMを含む制御部と,表示部と,入力インターフェースと,画像ファイルを記憶するハードディスクとを備えるデジタルカメラやデジタルビデオカメラ等の画像撮影装置、携帯情報端末(PDA)、携帯電話等の移動通信体が具備する画像分類装置において画像ファイルを,ハードディスクに分類する方法であって,
画像ファイルの画像データ(情報)に付帯する複数の付帯情報は,画像分類装置の入力インターフェースを介して入力されたものを含み,
前記付帯情報には,GPS情報から得られた撮影地点情報が含まれ,
画像ファイルに附加されている付帯情報に基づいて,前記制御部が,前記画像ファイルを複数の分類項目に分類するための分類基準と複数の分類項目とからなる分類基準情報を作成し,選択された前記分類基準情報に基づいて各分類項目に対応するフォルダ名を作成し,
第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したフォルダ名のフォルダを,制御部が,生成し,
前記フォルダ内に分類されている画像のうち,更に,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したファイル名の下層のフォルダを生成し,前記下層のフォルダに,前記第1,及び,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を,制御部が,分類する
画像分類装置において画像ファイルを,ハードディスクに分類する方法。

ウ.本件補正発明と引用発明との対比
次に,本件補正発明と引用発明との対比を行う。
a.引用発明における「ROM,及び,RAM」は「メモリ」であることは明らかであり,引用発明における「表示部と,入力インターフェース」が,「ユーザ・インタフェース」であることも明らかであるから,
引用発明における「CPUと,ROM,及び,RAMを含む制御部と,画像ファイルを記憶するハードディスクとを備えるコンピュータと,表示部と,入力インターフェースとを備える画像分類装置」が,
本件補正発明における「CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える電子装置」に相当し,
引用発明における「画像ファイルの画像データ(情報)」と,本件補正発明における「メディア項目」とは,「情報」である点で共通し,
引用発明において,「画像ファイルを,ハードディスクに分類する」ことは,結果として,「画像ファイル」を管理することに他ならないので,
引用発明における「画像ファイルを,ハードディスクに分類する方法」と,
本件補正発明における「メディア項目を管理する方法」とは,
“情報を管理する方法”である点で共通する。
b.引用発明において,「入力インターフェースを介して入力される」「情報」を,「付帯情報」として,「画像データ」に付帯するのは,“CPUを含む制御部”が行うものであり,
引用発明における「画像ファイルの画像データ(情報)に付帯する複数の付帯情報」が,
本件補正発明における「少なくとも2つの記述情報」に相当し,
引用発明における「複数の付帯情報」が,一種のメタデータを形成していることは明らかある。
そして,引用発明における“CPUを含む制御部”と,
本件補正発明における「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」とは,共に,“情報に複数のメタデータを提供する”,“データ処理部”である点で共通するので,
引用発明における「画像ファイルの画像データ(情報)に付帯する複数の付帯情報は,画像分類装置の入力インターフェースを介して入力され」ることと,
本件補正発明における「少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが,個々のメディア項目に提供するステップ」とは,
“少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,データ処理部が,個々の情報に提供するステップ”である点で共通する。
c.引用発明における「GPS情報から得られた撮影地点情報」と,
本件補正発明における「1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所」とは,
“記録時点の位置情報”である点で共通するので,
引用発明における「前記付帯情報には,GPS情報から得られた撮影地点情報が含まれ」ることと,
本件補正発明における「該2つの記述情報のうちの1つの記述情報が,前記個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られる」こととは,
“該2つの記述情報のうちの1つの記述情報が,情報の記録時点の位置情報である”点で共通する。
d.引用発明における「第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像」が,
本件補正発明における「1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目」に相当し,
引用発明において,「第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像」を「分類する分類項目に対応したフォルダ名のフォルダ」を生成することは,前記「分類項目」によって,クラスタリングすることに他ならないので,
引用発明における「第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したフォルダ名のフォルダを,制御部が,生成」することと,
本件補正発明における「1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップ」とは,
“1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,データ処理部が形成するステップ”である点で共通する。
e.引用発明における「フォルダ内に分類されている画像のうち,更に,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したファイル名の下層のフォルダを生成し,前記下層のフォルダに,前記第1,及び,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を,制御部が,分類する」ことは,
“第1の分類基準情報によってクラスタリングされた画像を,更に,第2の分類基準情報によってクラスタリングする”ことに他ならず,このことは,即ち,“第1の分類基準情報による画像のクラスタの下層に,第2の分類基準情報による画像のサブクラスタを形成する”ことであることは明らかであるから,
引用発明における「第1の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したフォルダ名のフォルダを,制御部が,生成し,
前記フォルダ内に分類されている画像のうち,更に,第2の分類基準情報に一致する付帯情報を有する画像を分類する分類項目に対応したファイル名の下層のフォルダを生成」することと,
本件補正発明における「当該クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成する,ステップと,
前記少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップ」とは,
“クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成し,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,データ処理部が形成するステップ”である点で共通する。
以上a?eにおいて検討した事項から,本件補正発明と引用発明との一致点,及び,相違点は次のとおりである。

[一致点]
CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える電子装置において情報を管理する方法であって,
少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,データ処理部が,個々の情報に提供するステップであって,該2つの記述情報のうちの1つの記述情報が,情報の記録時点の位置情報である,ステップと,
1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを,データ処理部が形成するステップと,
クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタを形成し,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を,データ処理部が形成するステップと,を含む,方法。

[相違点1]
“情報を管理する方法”に関して,
本件補正発明においては,
「メディア項目を管理する方法」であるのに対して,
引用発明においては,
「画像ファイルを,ハードディスクに分類する方法」である点。

[相違点2]
“少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,データ処理部が,個々の情報に提供するステップ”に関して,
本件補正発明においては,
“少なくとも2つの記述情報を含むメタデータを,CPUに制御されたメディア項目マネージャが,個々のメディア項目に提供する”ものである,即ち,“全ての記述情報を,CPUに制御されたメディア項目マネージャが,個々のメディア項目に提供する”ものであるのに対して,
引用発明においては,
「付帯情報」は,「画像分類装置」に含まれる「CPU」が,前記「画像分類装置」の有する「入力インターフェース」を介して入力することまでは読み取れるが,前記「CPU」に制御される何らかの手段が,前記入力の処理を行っていることまでは読み取れず,また,前記「付帯情報」が,前記「入力インターフェース」のみから入力されるものではない,即ち,「画像分類装置」が,「画像」に,全ての「付帯情報」を付帯するものではない点。

[相違点3]
“情報の記録時点の位置情報”に関して,
本件補正発明においては,
「個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られる」ものであるのに対して,
引用発明においては,
「GPS情報から得られた撮影地点情報」である点。

[相違点4]
本件補正発明においては,
「1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタ」を「形成するステップ」に加えて,
「2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを,前記CPUに制御されたメディア項目マネージャが形成するステップ」を有するのに対して,
引用発明においては,そのような構成を有しているか明確には示されていない点。

[相違点5]
“サブクラスタを形成し,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を形成する”点に関して,
本件補正発明においては,
“少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を形成する”ものであるのに対して,
引用発明においては,
“少なくとも2つのクラスタが形成された場合”という事例が示されていない点。

[相違点6]
本件補正発明においては,
「各クラスタと、サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,前記CPUが前記表示装置に表示するステップ」を有するのに対して,
引用発明においては,表示に関しては言及されていない点。

エ.当審の判断
上記相違点について,以下に検討する。

[相違点1]について,
引用発明においても「画像ファイル」を,「画像」に付帯する「付帯情報」を用いて,ハードディスク上に分類・格納するものであるから,該「付帯情報」が,該「画像」を管理するための情報といえ,管理に用いる情報が附加された「情報」であれば,「画像」と同様に管理可能であることは,当業者にとって自明の事項である。
したがって,引用発明においても,管理対象を広く「メディア項目」とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点1は,格別のものではない。

[相違点2]について,
引用発明においても,上記Bの「【0046】CPUは,ハードディスク11に記憶されているシステムプログラム等に規定されている手順に従ってインターフェースに接続されている各構成要素を統一的に制御することにより,画像分類装置100としての様々な機能を実現する」という記載から,「CPU」が各種「ハードウェア」を制御していることは明らかであるから,「付帯情報」の入力処理を行うため,「画像分類装置」に含まれる「CPU」によって制御される「ハードウェア」,或いは,「ソフトウェア」を用いるよう構成し得ることは,当業者に周知な技術手法に過ぎない。そして,「画像」に付帯された「付帯情報」は,「画像分類装置」が有する「入力インターフェース」から入力された「入力情報」を含むことは明らかであり,引用発明において,「画像」に「付帯情報」が予め付帯されていない場合には,必要となる「付帯情報」を,全て,「入力インターフェース」から入力し得ることは,当業者に自明の事項である。
したがって,引用発明においても,全ての「付帯情報」を,「画像分類装置」において付帯させるよう,前記「CPU」によって制御される「ハードウェア」,或いは,「ソフトウェア」を構成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点2は,格別のものではない。

[相違点3]について,
「電子装置の所在場所」を示す情報として,「電子装置を追跡することにより得られた情報」を用いる点は,例えば,原審が拒絶査定時に,参考文献として例示した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2002-342357号公報(2002年11月29日公開,以下,「周知文献1」という)に,

I.「【0033】また図1には示さないが、映像は、複数のチャンネル例えば2チャンネルで取得することで、ステレオ立体画像として記憶し再生することも可能である。位置情報は、GPSに限定せずPHS等により取得することも可能である。脳波情報に関しては、これに加えて心拍や発汗などの生体情報をさらに取得して、前述した生理的興味指数の算出に利用しても良い。」

と記載されているように,本願の第1国出願時点であっても,当業者には周知の技術事項であり,引用発明と,周知文献1に記載の技術とは,“移動体端末において位置情報を取得する”点で共通するので,引用発明において,“情報の記録時点の位置情報”を「GPS情報から得られた撮影地点情報」に代えて,周知文献1に記載の技術における「PHS等により取得する」“位置情報”,即ち,「電子装置を追跡することにより得られる」“位置情報”とすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点3は,格別のものではない。

[相違点4]について,
引用発明においても,上記Fに「分類される前の画像ファイルとして,分類項目である「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「太郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2000.01.18」と「次郎」に対応する1つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2001.01.18」と「次郎」に対応する2つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「太郎」に対応する3つの画像ファイルと,「撮影年月日」と「撮影者名」が各々「2002.01.18」と「花子」に対応する2つの画像ファイルとが抽出されている」との記載があるように,2つの「分類項目」に一致する「画像」を分類すること,即ち,“クラスタリング”が行えることは,明らかである。
したがって,引用発明においても,1つの「分類項目」によって,「画像」を分類する処理に加えて,2つの「分類項目」によって,「画像」を分類する処理を設けることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点4は,格別のものではない。

[相違点5]について,
上記“[相違点4]について”において指摘した事項,及び,上記Eの「分類基準である「撮影日時」に基づいて分類項目である画像の「撮影年月日」が同じ画像ファイルをまとめて一つのフォルダに格納するようになっている」という記載から,引用発明においても,“1つの「分類項目」による分類”と,“2つの「分類項目」による分類”が行い得ることは明らかであり,このとき,“1つの「分類項目」による分類”における「分類項目」と,“2つの「分類項目」による分類”における2つの「分類項目」の内の1つとが一致している。
そして,上記Gの「分類基準情報を「撮影日付情報」として画像ファイルの分類を行った後,さらに,作成された分類基準情報が「撮影日付情報」に対応するフォルダ毎に,分類基準情報を「撮影者」とする画像ファイルの分類を行うことにより,これらフォルダが階層構造となるような画像ファイルの分類を行うようにしても良い」という記載は,上記Eで分類された画像が,更に,上記Fの「分類項目」の内,上記Eの「分類項目」と一致しない方の「分類項目」によって分類することを意味するものであるから,上記Fの記載において分類された画像が,上記Eで分類された画像の“サブグループ”になっていることは明らかである。
即ち,引用発明において,上記Eの分類と,上記Fの分類とが存在すれば,そこから,上記Eの分類と,上記Fの分類との「階層構造」を構築し得ることは,当業者にとって自明の事項である。
また,上記Gの記載内容から,上記E,Fに記載の「分類項目」以外の,「分類項目」に対応する「付帯情報」が,各「画像」に付帯されていれば,該「分類項目」に基づいて更なる「階層構造」を構築し得ることも明らかである。
したがって,引用発明において,“1つの「分類項目」による分類”によって分類された「画像」と,“2つの「分類項目」による分類”された「画像」とが存在し,前記“2つの「分類項目」”のうちの1つが,前記“1つの「分類項目」”と一致し,更に,前記「画像」に,前記“2つの「分類項目」”以外の「分類項目」が付帯されている場合に,それらの「分類項目」に基づいて,前記「画像」の分類の「階層構造」を生成することは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点5は,格別のものではない。

[相違点6]について,
本件補正発明における「各クラスタと、サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として、前記CPUが前記表示装置に表示する」とは,平成22年5月26日付けの審判請求書における説明によれば,
「画像などのメディア項目がクループ化されたクラスタあるいはサブクラスタ自身が、独立して表示され得」ることを意味するものである。
しかしながら,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-242004号公報(2003年8月29日公開,以下,「周知文献2」という)に,

J.「【0032】CD-Rなどの外部記録装置22に多数の画像ファイルがフォルダ分けされて記録されているものとし、この外部記録装置22をパソコン10のメディア挿入口に挿入することにより、図3に示すような、フォルダ情報の一覧が表示される。同図によれば、外部記録装置22に記録されているフォルダがツリー構造で表示され、各フォルダについて、フォルダアイコン40、代表画像42、フォルダ名44、画像枚数46、及びフォルダ内画像の日付範囲48が表示される。代表画像42としては、例えば、フォルダ内の先頭画像(最も古い画像)が選択される。
【0033】アイコン内に「PHOTO 」という識別文字が付加されたフォルダアイコン40は、画像ファイルを含むフォルダであることを意味しており、かかるフォルダアイコン40をクリックすることにより、そのフォルダに含まれる画像の一覧表示画面に遷移する。」

と記載され,上記記載内容が【図3】に図として例示され,
また,同じく,本願の出願前に既に公知である,特開平05-128166号公報(1993年5月25日公開,以下,「周知文献3」という)に,

K.「【0025】また、前記マルチ画面検索は、本発明にかかる検索モードであり、このマルチ画面検索が選択されたときには、階層構造に振り分けられている画像群を上位から順次指定させるために、まず、最上位の分類メニューを表示させ、ユーザーに指定させる(S3)。例えば、図3に示すような階層構造であるときには、図4のフローチャート中に示すように、撮影年度(記録年度)の一覧を文字情報として表示させる。ここで、1991年度に撮影した画像群の中に所望画像が含まれると推定されるときには、キーボード操作によって「1991」を選択する。すると、1991年度に撮影された画像をイベント別に振り分けてある階層構造において、1991年度の各イベント(スキー,旅行,ヨット等)の代表画像が検索・再生され(S4)、図5に示すようにマルチ画面表示される(S5)。この部分が代表画像表示手段に相当する。
【0026】即ち、図3の階層構造においては、1991年の撮影年度には、スキー,旅行,ヨット等の各イベント別に画像が予め分けられているから、所望画像がどのイベント(画像群)に含まれるものであるかを選択させるために、イベント名を表示させるのではなく、各イベント(画像群)別に代表画像を選択して、これを一画面上に同時表示させ、視覚的なイメージでどのイベント(画像群)に所望画像が含まれるかを選択させるものである。」

と記載され,上記記載の説明図が,【図3】に例示されているように,分類された各画像の代表画像を表示することは,本件出願前において,当業者には周知の技術事項であり,これら周知技術において,分類された画像の代表画像を表示することは,即ち,個々のクラスタを個別に表示することに他ならない。
そして,これら周知技術は,共に,引用発明と,「画像」の分類に関する技術である点で共通するので,
引用発明において,「階層構造」に分類した「画像」を,周知技術のように,各「分類項目」毎,代表画像を用いて表示するようにすることは,即ち,クラスタ毎に,表示するようにすることは,当業者が適宜なし得る事項である。
よって,相違点6は,格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点1?6はいずれも格別のものではなく、そして、本件補正発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものに過ぎず格別なものとは認められない。

よって,本件補正発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際特許を受けることができない。

(5)独立特許要件むすび
上記(1)乃至(3)で検討したとおり,本件手続補正により補正された,明細書,請求の範囲は,特許法第36条第4項第1号,並びに,第6項,第1項,及び,第2号に規定する要件を満たしておらず,加えて,上記(4)で検討したとおり,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際特許を受けることができないものであるから,
本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下むすび
したがって,本件手続補正は,上記“2-1.新規事項”において検討したとおり,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第184条の12第2項により読み替える同法第17条の2第3項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,本件手続補正が,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものであると仮定しても,上記“2-2.独立特許要件”において検討したとおり,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,補正却下の決定の結論のとおり決定する。

その3.本願発明について
平成22年5月26日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,これを「本願発明」という)は,平成21年11月17日付けの手続補正により補正された,上記“1.補正の内容”において,補正前の請求項1として引用した記載のとおりのものである。

その4.引用刊行物に記載の発明
一方,原審が拒絶理由に引用した,本願の第1国出願前に既に公知である,特開2003-271617号公報には,上記“2-2.独立特許要件”の“(4)29条2項について”の“イ.引用刊行物に記載の発明”において認定したとおりの引用発明が記載されている。

その5.本願発明と引用発明との対比
本願発明は,本件補正発明における発明特定事項である「電子装置」についての,「CPUと,メモリと,表示装置を含むユーザ・インタフェースとを備える」という限定を外し,「CPUに制御されたメディア項目マネージャ」という構成要素を外し,「1つの記述情報」を限定する「2つの記述情報のうち」という条件を外し,本件補正発明における「さらなる記述情報を共有する場合には,メデイア項目をまとめて当該クラスタ中にサブクラスタを形成する」,「少なくとも2つのクラスタおよび,サブクラスタが形成された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタ階層を・・・形成する」,及び,「各クラスタと,サブクラスタが形成された場合には」を,「さらなる記述情報を共有する場合には,自動的にメディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタ化する」,「少なくとも第1および第2のクラスタおよびいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を提供する」,及び,「各クラスタといずれかのサブクラスタとを」としたものであって,引用発明においても,複数の「付帯情報」が個々の「画像」に付帯されていることは明らかであるから,本願発明と引用発明との一致点,及び,相違点は次のとおりである。

[一致点]
電子装置において情報を管理する方法であって,
少なくとも第1と第2の記述情報を含むメタデータを個々の情報に提供するステップであって,
1つの記述情報が,情報の記録時点の位置情報である,ステップと,
1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタを形成するステップと,
クラスタの中の前記メディア項目が,さらなる記述情報を共通に有する場合には,メディア項目をまとめて当該クラスタの中にサブクラスタ化し,サブクラスタ化された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を提供するステップと,を含む,方法。

[相違点1]
“情報を管理する方法”に関して,
本件補正発明においては,
「メディア項目を管理する方法」であるのに対して,
引用発明においては,
「画像ファイルを,ハードディスクに分類する方法」である点。

[相違点2]
“情報の記録時点の位置情報”に関して,
本件補正発明においては,
「個々のメディア項目の記録時における前記電子装置の所在場所であり,前記所在場所は前記電子装置を追跡することにより得られる」ものであるのに対して,
引用発明においては,
「GPS情報から得られた撮影地点情報」である点。

[相違点3]
本件補正発明においては,
「1つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第1のクラスタ」を「形成するステップ」に加えて,
「2つの記述情報を共通に有する個々のメディア項目の第2のクラスタを形成するステップ」を有するのに対して,
引用発明においては,そのような構成を有しているか明確には示されていない点。

[相違点4]
“サブクラスタ化し,サブクラスタ化された場合にはいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を提供する”点に関して,
本件補正発明においては,
“少なくとも第1および第2のクラスタおよびいずれかのサブクラスタを含むクラスタの階層を提供する”ものであるのに対して,
引用発明においては,
“第2のクラスタ”という事例が示されていない点。

[相違点5]
本件補正発明においては,
「各クラスタといずれかのサブクラスタとを個々のメディア項目として,電子装置のユーザ・インタフェース提示するステップ」を有するのに対して,
引用発明においては,“ユーザ・インタフェースに提示するステップ”に関しては言及されていない点。

その6.当審の判断
上記相違点1?相違点5は,上記項目“2-2.独立特許要件の“(4)29条2項について”における“エ.当審の判断”において検討した,本件補正発明と引用発明との間の相違点1,及び,相違点3乃至相違点6と同じものであるから,
上記相違点1?相違点5は,格別のものではない。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

その7.むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-08-22 
結審通知日 2012-08-28 
審決日 2012-09-10 
出願番号 特願2006-530323(P2006-530323)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹梅本 達雄  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
石井 茂和
発明の名称 メディア項目のクラスタリングとクエリとを行う方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 森 啓  
代理人 下道 晶久  
代理人 青木 篤  

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