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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2010800088 | 審決 | 特許 |
無効2014800135 | 審決 | 特許 |
無効2012800042 | 審決 | 特許 |
無効2011800071 | 審決 | 特許 |
無効2012800032 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部無効 特174条1項 A61K 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1270563 |
審判番号 | 無効2011-800244 |
総通号数 | 160 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-04-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-11-24 |
確定日 | 2013-03-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4659980号発明「二酸化炭素含有粘性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第4659980号の請求項1?13に係る発明は、1998年10月5日(優先権主張1997年11月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月7日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人は平成23年11月24日に本件特許に対して無効審判を請求し、被請求人は平成24年2月6日付けで審判事件答弁書を提出した。 そして、平成24年4月18日に第1回口頭審理が行われ、これに先立ち請求人は同年4月4日付けで口頭審理陳述要領書を、また被請求人も同日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。 第2 本件発明 本件特許第4659980号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?13に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。 「【請求項1】 部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、 1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ からなり、 含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、 含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 【請求項2】 得られる二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項1に記載のキット。 【請求項3】 含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項1又は2に記載のキット。 【請求項4】 含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。 【請求項5】 含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。 【請求項6】 請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする、水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。 【請求項7】 請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。 【請求項8】 顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、又は顎の部分肥満改善用である、請求項7に記載の化粧料。 【請求項9】 部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって、 1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物; を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、 含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。 【請求項10】 調製される二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項9に記載の調製方法。 【請求項11】 含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項9又は10に記載の調製方法。 【請求項12】 含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。 【請求項13】 含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。」 (上記請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、以下、請求項2?13に係る発明を、順次「本件特許発明2」、……、「本件特許発明13」という。なお、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。) 第3 請求人の主張 これに対して、請求人は、「特許第4659980号にかかる特許請求の範囲の請求項1乃至13の各請求項に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の書証を提出し、本件特許は、 (i)請求項1?13の各項は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないので特許法36条第6項第1号に規定の要件を満足せず、また、本件発明の詳細な説明はいわゆる当業者がその実施をできる程度に明確にかつ十分に記載されたものでないので特許法第36条第4項に規定の要件を満足せず、特許法第123条第1項第4号に該当し、 (ii)請求項1?13の各項は、平成22年9月6日付けの手続補正書において特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものに相当するため、特許法第123条第1項第1号に該当し、 無効とされるべき旨を主張している(なお、(i)及び(ii)の詳細は、後記参照。)。 (証拠方法) 甲第1号証 平成19年2月6日付けの手続補正書の写し 甲第2号証 平成22年9月6日付けの手続補正書の写し 甲第3号証 国際公開第99/24043号 甲第4号証 大阪地方裁判所平成23年(ワ)第4836号 原告第3準 備書面 甲第5号証 第十三改正日本薬局方 製剤総則 甲第6号証 「14906の化学薬品」(化学工業日報社)第1605頁 甲第7号証 DSM社 製品情報 (http://www.dsm.com/ja_JP/html/dnpjp/fo_citric_acid.h tm) 甲第8号証 扶桑化学工業株式会社 製品情報 (http://www.fusokk.co.jp/lifescience/food_01/001/inde x.html) 甲第9号証 特許第4653268号公報 第4 被請求人の主張 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。 (証拠方法) 乙第1号証 日置正人氏による実験成績証明書 乙第2号証 大阪地方裁判所平成23年(ヨ)第20014号特許権侵害 差止等仮処分命令申立事件 決定 第5 当審の判断 1 請求人が主張する無効理由 前記「第3 請求人の主張」で挙げたように、請求人は、本件特許発明1?13について、次の無効理由を主張している。 (1) 特許法第36条第4項違反(無効理由1A)及び特許法36条第6項第1号違反(無効理由1B) (2) 特許法第17条の2第3項違反(無効理由2) 以下、順次検討する。 2 無効理由1A及び1Bについて (1) 請求人は審判請求書で以下のように記載し、本件特許は特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定の要件を満足しない旨を主張する。 「本件請求項1又は9及びこれに従属する各項は、部分肥満改善用化粧料との関係において、3つの実施例8、実施例20、実施例18の記載を根拠にして、効果があると認められて特許に至ったところ、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤ではなく、実際は酸すなわちクエン酸であるから、酸を含む顆粒剤と、酸とは全く別物の成分である。 因って、本件請求項1又は9及びこれに従属する各項は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないので特許法第36条第6項第1号の規定に違反し、本件発明の詳細な説明はいわゆる当業者がその実施をできる程度に明確にかつ十分に記載したものでないので特許法第36条第4項(第1号)の規定に違反するものである。」(7頁下から5行?8頁5行) 上記請求人の主張は、要するに、発明の詳細な説明の記載をみても、「酸」単体を用いた組成物についてしか部分肥満改善効果が確認されていないところ、 (i)「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を用いる場合の部分肥満改善効果について、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである、すなわちサポートされたものである、とはいえないから、そのような発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえないこと、また、 (ii)「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を用いる場合に部分肥満改善効果を示すことについて、「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を生産、使用等をすることができたと当業者が解することができないから、発明の詳細な説明により、そのような発明について、当業者がその実施をできる程度に明確にかつ十分に記載したものとはいえないこと、 を述べたものといえる。 (2) 上記実施例で用いられる組成物として挙げられる、「酸」単体、及び「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」に関して、本件特許の発明の詳細な説明をみると、以下の記載がある。なお下線は当審で付した。 ア 「発明の開示 本発明者らは鋭意研究を行った結果、二酸化炭素含有粘性組成物が、外用の抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤、非ステロイド抗炎症剤、ステロイド剤などが無効な痒みにも有効であることを発見し、更に該組成物が抗炎症作用や創傷治癒促進作用、美肌作用、部分肥満解消作用、経皮吸収促進作用なども有することを発見して本発明を完成した。」(本件特許公報3頁32?36行) イ 「本発明でいう「含水粘性組成物」とは、水に溶解した、又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である。該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ、皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合、二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。該組成物は、二酸化炭素を気泡状で保持するためのものであれば特に限定されず、通常の医薬品、化粧品、食品等で使用される増粘剤を制限なく使用でき、剤形としてもジェル、クリーム、ペースト、ムースなど皮膚粘膜や損傷組織、毛髪などに一般的に適用される剤形が利用できる。 本発明には、例えば以下のキットが含まれる。 1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸とのキット; 2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩とのキット; 3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤とのキット; 4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒、粉末)剤とのキット; 5)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有含水粘性組成物のキット; 6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物のキット; 7)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有シートのキット; 8)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩含有シートのキット; 9)炭酸塩と酸と含水粘性組成物のキット; 10)含水粘性組成物と、炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤含有シートのキット;及び 11)炭酸塩と酸と水と増粘剤のキット。 気泡状の二酸化炭素を含む本発明の組成物は、これらキットの各成分を使用時に混合することにより製造できる。 増粘剤としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、無機物などがあげられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 天然高分子としては、例えば植物系高分子、微生物系高分子、蛋白系高分子があげられる。 半合成高分子としては、例えばセルロース系高分子、澱粉系高分子、アルギン酸系高分子、その他の多糖類系高分子があげられる。 ……(略)…… 本発明の増粘剤に用いる半合成高分子の中のアルギン酸系高分子としてはアルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどがあげられる。 ……(略)…… 本発明の含水粘性組成物に二酸化炭素を保持させる方法としては、該組成物に炭酸ガスボンベなどを用いて二酸化炭素を直接吹き込む方法がある。 また、反応により二酸化炭素を発生する物質を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させるか、又は含水粘性組成物を形成すると同時に二酸化炭素を発生させて二酸化炭素含有粘性組成物を得ることも可能である。二酸化炭素を発生する物質としては、例えば炭酸塩と酸の組み合わせがある。具体的には以下のような組み合わせにより二酸化炭素含有粘性組成物を得ることが可能であるが、本発明は二酸化炭素が気泡状で保持される二酸化炭素含有粘性組成物が形成される組み合わせであれば、これらの組み合わせに限定されるものではない。 1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ; 2)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の組み合わせ; 3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ; 4)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ; 5)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有含水粘性組成物の組み合わせ; 6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物の組み合わせ; 7)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸含有シートの組み合わせ; 8)酸含有含水粘性組成物と炭酸塩含有シートの組み合わせ; 9)炭酸塩と酸と含水粘性組成物の組み合わせ; 10)含水粘性組成物と、炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤含有シートの組み合わせ;及び 11)炭酸塩と酸と水と増粘剤の組み合わせ。」(本件特許公報6頁18行?7頁46行) ウ 「本発明の二酸化炭素含有粘性組成物を皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害の治療や予防目的、又は美容目的で使用する場合は、該組成物を直接使用部位に塗布するか、あるいはガーゼやスポンジ等の吸収性素材に含浸させるか、またはこれらの素材を袋状に成形してその中に該組成物を入れて使用部位に貼付してもよい。該組成物を塗布又は貼付した部位を通気性の乏しいフィルム、ドレッシング材などで覆う閉鎖療法を併用すれば更に高い効果が期待できる。該組成物を満たした容器に使用部位を浸すことも有効である。その場合、炭酸ガスボンベなどを用いて該組成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続する。」(本件特許公報10頁3?9行) エ 「実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、表中の数字は特にことわらない限り重量部を表す。 実施例1?84 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表1?表7に示す。 〔製造方法〕 増粘剤と精製水、炭酸塩を表1?表7のように組み合わせ、炭酸塩含有含水粘性組成物をあらかじめ調製する。酸は、固形の場合はそのまま、又は粉砕して、又は適当な溶媒に溶解又は分散させて、液体の場合はそのまま、又は適当な溶媒で希釈して用いる。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。」(本件特許公報11頁32?40行) オ 表1、2の実施例8、18、及び20(本件特許公報13?14頁。「炭酸塩含有含水粘性組成物」及び「酸」の組成が記載され、実施例8、18、20では、「炭酸塩含有含水粘性組成物」として炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤、及び精製水が挙げられ、「酸」としてクエン酸のみが挙げられている。そして、発泡性や気泡の持続性が確認されている。) カ 「実施例109?144 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤との組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表10?表12に示す。 〔製造方法〕 増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表10?表12のように組み合わせ、炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤をあらかじめ調製する。この顆粒剤は徐放性であってもよい。炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒剤を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。本発明でいうマトリックス基剤とは、溶媒による溶解や膨潤、加熱による溶融などにより流動化し、他の化合物を包含した後、溶媒除去又は冷却等により固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物、もしくは他の化合物と混合、圧縮して固化し、粉砕等により顆粒を形成する化合物で水により溶解もしくは崩壊するものすべてをいう。マトリックス基剤としては、エチルセルロース、……、メチルセルロースなどがあげられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 <炭酸塩含有含水粘性組成物の製造> 実施例1?84に記載の炭酸塩含有含水粘性組成物の製造方法に従い製造する。 <酸の顆粒剤の製造> マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に酸を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合は、ビーカー等の容器中でマトリックス基剤を水又はエタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、これに酸を溶解又は分散させて十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。 なお、本発明において上記の酸の顆粒剤の製造方法は本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や湿式破砕造粒法、流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。」(本件特許公報22頁下から2行?3頁33行) キ 表10?12(本件特許公報24?26頁。「炭酸塩含有含水粘性組成物」及び「酸の顆粒剤」の組成が記載され、「炭酸塩含有含水粘性組成物」として炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを含む増粘剤、及び精製水が、「酸の顆粒剤」として、クエン酸等の酸とエチルセルロース等のマトリックス基剤が挙げられている。そして、発泡性や気泡の持続性が確認されている。) 摘示事項アには、二酸化炭素含有粘性組成物が部分肥満解消作用すなわち部分肥満の改善作用を示すことが記載され、摘示事項ウには、二酸化炭素含有粘性組成物を美容目的で使用する場合、組成物を直接塗布する等の方法が記載されるとともに、該組成物に二酸化炭素を補給すればより効果が持続することも記載されている。そして、二酸化炭素が血行促進作用を示すこと、及び、血行が促進されることにより痩身作用を示すことは、いずれも当業者に周知の事項といえる(例えば、それぞれ、特開昭60-215606号公報、特開昭63-310807号公報、特開平3-161415号公報、及び、高島巌ら,皮膚,1990,32(6),pp.841-852、並びに、実用新案登録公報第2508351号、同公報第2537238号、及び、登録実用新案公報第3023646号参照。なお、これらはいずれも本件特許の審査及び拒絶査定不服審判の過程で、引用文献又は参考文献として挙げられたものである。)。これらの点から、部分肥満改善作用は、二酸化炭素含有粘性組成物のうち二酸化炭素に基づく作用であるといえ、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づき、当業者が当然に認識するものといえる。 また、摘示事項イ及びエ?キには、本件特許発明にある含水粘性組成物は二酸化炭素を気泡状で保持でき、二酸化炭素含有粘性組成物となること、及び、二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットや該組成物の調製方法に用いられる組み合わせについて、二酸化炭素を発生させる物質として炭酸塩と酸の組み合わせが例示されるとともに、炭酸塩含有含水粘性組成物、すなわち炭酸塩及び含水粘性組成物からなる組成物と、「酸」単独又は「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」とを組み合わせたものが記載されており、それらの組み合わせにより実際に二酸化炭素含有粘性組成物が得られたことも記載されている。 そうすると、本件特許発明において、酸は炭酸塩と反応させて二酸化炭素を発生させるために用いられるものであって、「酸」単独、「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」のいずれであっても、二酸化炭素を発生させる機能において差異を見いだせないものといえ、クエン酸そのものを用いた試験例8、9、及び13により、「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を用いた場合にも同様の部分肥満改善効果がサポートされているものといえるから、本件特許発明は発明の詳細な説明に記載したものといえる。 また、クエン酸そのものを用いた試験例8、9、及び13、並びに、上で挙げた摘示事項の記載をみた当業者であれば、「酸と他の成分を含む顆粒(細粒、粉末)剤」を製造し、これを用いて、クエン酸そのものを用いた場合と同様の部分肥満改善効果を発揮させることができたものといえるから、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。 この点について、請求人は本件特許発明における「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」について、酸を含む顆粒剤と、酸とは全く別物の成分であるから、本件特許は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、当業者がその実施をできる程度に明確にかつ十分に記載されたものでない旨を主張する。 しかし、「酸」単体を用いた態様について、サポート要件及び実施可能要件を満たすことが明らかであるから(当審注;この点は請求人も特に指摘していない。)、請求項1及び9の「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」に「酸」単独の粉末や顆粒が含まれるか否かは上で示した判断に影響を与えるものではない。 なお、「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」と記載された場合、酸が存在し、これが顆粒、細粒、又は粉末の性状であれば足りるものといえ、発明の詳細な説明でもクエン酸単独で用いられる場合があり、かつクエン酸が粉末等の性状を示す場合のあることは当業者に周知の事項といえるのだから、「酸」単独で顆粒、細粒、又は粉末の場合でも、「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」に含まれると解される。したがって、このような請求人の主張は採用することができない。 (2) ところで、請求人は、本件特許発明6、すなわち、部分肥満改善用化粧料以外の、水虫、アトピー性皮膚炎、又は褥創の治療用医薬組成物に関しても無効理由1A及び1Bを主張するものの、審判請求書及び口頭審理陳述要領書をみても、その具体的主張内容を明らかにしていない。 しかしながら、実施例8、18、及び20の「酸」のうち、クエン酸の顆粒、細粒、及び粉末にあたる場合が、本願特許発明の酸を含む顆粒剤、細粒剤、及び粉末剤にあたると解される点は上記(1)と同様であり、また、本件特許の発明の詳細な説明には、実施例8、18、及び20の組成物に加え、これらの実施例と同様、「酸」としてクエン酸のみを用いた実施例1の組成物や、クエン酸とマトリックス基剤を用いて顆粒剤とした実施例297の組成物を用いて、水虫、アトピー性皮膚炎、又は褥創の治療を行った試験例が記載されている(例えば、試験例1、2、4、7、16、18、及び22を参照。)。 したがって、具体的主張内容を問うまでもなく、本件特許発明6に関しても、発明の詳細な説明に開示されたもの、又は、出願時の技術常識に基づき、発明の詳細な説明に開示された内容から拡張ないし一般化できたものといえ、また、当業者であれば、発明の詳細な説明に開示された内容をもとにして、本件特許発明6を実施することができたものといえる。 3 無効理由2について (1) 請求人は審判請求書において以下のア及びイの点を挙げ、本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正がなされた旨を主張する。 ア 甲第1号証の請求項1及び12(当審注;甲第1号証の請求項12は、その記載からみて、甲第2号証及び本件特許の請求項9に対応する。)では、二酸化炭素含有粘性組成物の用途として部分肥満改善用化粧料が挙げられるように補正され、また、当該組成物を得るためのものとして、「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ」が記載されていた。 イ 一方、甲第2号証の請求項1及び9をみると、部分肥満改善用化粧料という記載はそのままであったが、二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものとして、「酸及び増粘剤を含む顆粒(細粒、粉末)剤」と記載され、「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ」が削除された。 ウ したがって、本件請求項1又は9は、部分肥満改善用化粧料との関係において、3つの実施例8、実施例20、実施例18の記載を根拠にして、効果があると認められて特許に至ったところ、これらの実施例における成分は酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤ではなく、実際は、酸すなわちクエン酸であるから、甲第2号証に記載された補正は、新規事項追加違反である。 ここで、本件特許の請求項1及び9をみると、その記載は、甲第2号証の請求項1及び9における、 (請求項1)「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸及び増粘剤を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は 2)炭酸塩、酸、及び増粘剤を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物の組み合わせ」、及び、 (請求項9)「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸及び増粘剤を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は 2)炭酸塩、酸、及び増粘剤を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、含水粘性組成物」という記載ではなく、その後、平成22年11月5日付け手続補正書により補正された、 (請求項1)「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ」、及び、 (請求項9)「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は 2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物」という記載である(いずれも下線は省略した。)。 したがって、無効理由2の当否は、本件特許の請求項における記載に基づき、これが特許法第17条の2第3項の規定を満足するか否かによって検討する必要がある。 なお、審判請求書の8頁9?10行には「同請求項1又は9には1)炭酸塩……」と記載されるが、甲第1号証の請求項9及び12の記載、並びに審判請求書の当該記載前後における記載からみて、これは「同請求項1又は12には1)炭酸塩……」の誤記であることが明らかであるから、このように記載されたものと解して判断を行う。 (2) 国際出願日における明細書、請求の範囲、及び図面(以下、「当初明細書等」という。)に相当する、甲第3号証に示される内容をみると、前記「2(1)」における摘示事項ア?キ(当審注;「2(1)」は引用箇所として本件特許公報の該当部分を示したが、発明の詳細な説明については補正が一度もなされていないから、上記ア?キは当初明細書等に記載された事項として、本項で援用する。)の記載に加え、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。 ク 「6. 炭酸塩と酸と増粘剤と水が実質的に二酸化炭素を発生しない状態でなるキットであって、炭酸塩と酸と増粘剤と水を混合することにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。 ……(略)…… 9. 炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤を含む請求項6記載のキット。 ……(略)…… 12. 炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物を含む請求項6記載のキット。 ……(略)…… 27. 請求項1?5のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物または請求項6?17のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む化粧料。 28. そばかすを減少ないし目立たなくさせる請求項27記載の化粧料。 29. 顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、顎などの部分肥満を改善できる請求項27記載の痩身化粧料。 ……(略)…… 32. 請求項1?5のいずれかに記載の二酸化炭素含有粘性組成物または請求項6?17のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物の有効量を患者に適用することを含む疾患もしくは障害の予防ないし治療方法。 33. 疾患もしくは障害がかゆみを伴う皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害である請求項32記載の予防ないし治療方法。 34. かゆみを伴う皮膚粘膜疾患もしくは皮膚粘膜障害が水虫、虫さされ、アトピー性皮膚炎、貨幣状湿疹、乾皮症、脂漏性湿疹、蕁麻疹、痒疹、主婦湿疹、尋常性ざ瘡、膿痂疹、毛包炎、癰、せつ、蜂窩織炎、膿皮症、乾癬、魚鱗癬、掌蹠角化症、苔癬、粃糠疹、創傷、熱傷、凍瘡、き裂、びらんである請求項33に記載の予防ないし治療方法。 35. 疾患もしくは障害が皮膚粘膜損傷である請求項32記載の予防ないし治療方法。 36. 皮膚粘膜損傷が褥創、創傷、熱傷、口角炎、口内炎、皮膚潰瘍、き裂、びらん、凍瘡、壊疽である請求項35記載の予防ないし治療方法。」(請求の範囲) ケ 「実施例227?249 炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物の組み合わせよりなる二酸化炭素含有粘性組成物を表20?表21に示す。 〔製造方法〕 増粘剤と精製水、炭酸塩と酸(有機酸及び/又は無機酸)、マトリックス基剤を表20?表21のように組み合わせ、炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物をあらかじめ調製する。炭酸塩と酸の複合顆粒剤と含水粘性組成物を混合し、二酸化炭素含有粘性組成物を得る。炭酸塩と酸の複合顆粒剤は炭酸塩と酸が徐放性であってもよい。 <炭酸塩と酸の複合顆粒剤の製造> マトリックス基剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点マトリックス基剤に炭酸塩と酸を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながら更に攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。マトリックス基剤に低融点化合物を用いない場合はビーカー等の容器中でマトリックス基剤を無水エタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、炭酸塩と酸を溶解又は分散させ、十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し、顆粒とする。このとき顆粒の大きさを揃えるために篩過してもよい。 <含水粘性組成物の製造> ビーカー等の容器中で増粘剤を精製水に溶解又は膨潤させる。このとき必要であれば精製水を加熱して増粘剤の溶解又は膨潤を促進してもよいし、増粘剤を適当な溶媒に溶解又は分散させておいて用いてもよい。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質等を加えてもよい。 なお、本発明において上記の炭酸塩と酸の複合顆粒の製造方法は本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法などの常法に従い製造できる。」(45頁1行?下から3行。本件特許公報の35頁40行?36頁143行に相当する。) コ 表20、21(47?48頁。本件特許公報の37?38頁に相当する。「炭酸塩と酸の複合顆粒剤」及び「含水粘性組成物」の組成が記載され、「炭酸塩と酸の複合顆粒剤」として炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、クエン酸等の酸、及びマトリックス基剤が、「含水粘性組成物」としてアルギン酸ナトリウムを含む増粘剤及び精製水が挙げられている。そして、発泡性や気泡の持続性が確認されている。) (2) 本件特許の請求項1及び9には、二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキットや二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法に関する発明が記載されているところ、当初明細書等をみると、 ア 二酸化炭素含有粘性組成物が「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物」として使用されることは、上記(1)の摘示事項ク中、請求項29、34、及び36に記載され、 イ 二酸化炭素含有粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有するものとして得ることは、上記(1)の摘示事項イに、「本発明の含水粘性組成物に二酸化炭素を保持させる方法としては、……反応により二酸化炭素を発生する物質を含水粘性組成物中で反応させて二酸化炭素を発生させ……て二酸化炭素含有粘性組成物を得ることも可能である。二酸化炭素を発生する物質としては、例えば炭酸塩と酸の組み合わせがある。」と記載され、そして、 ウ 含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることは、上記(1)の摘示事項イに、「本発明でいう「含水粘性組成物」とは、水に溶解した、又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である。該組成物に二酸化炭素を気泡状で保持させ、皮膚粘膜又は損傷皮膚組織等に適用した場合、二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。」と記載される。 一方、二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキットの構成、及び、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法に用いられる組み合わせについては、 エ 上記(1)の摘示事項イに、「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸とのキット」、「3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤とのキット」、「6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物のキット」、「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ」、「3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ」、及び「6)炭酸塩と酸の複合顆粒(細粒、粉末)剤と含水粘性組成物の組み合わせ」が記載され、 オ 上記(1)の摘示事項ク中、請求項9及び12に記載があるとともに、 カ 上記(1)の摘示事項イに、「本発明でいう「含水粘性組成物」とは、水に溶解した、又は水で膨潤させた増粘剤の1種又は2種以上を含む組成物である」こと、及び、「増粘剤としては、……アルギン酸ナトリウム……があげられる」ことが記載され、また、 キ 上記(1)の摘示事項エ?キ、ケ及びコには、炭酸塩含有含水粘性組成物や含水粘性組成物を用いて二酸化炭素含有粘性組成物を得た実施例が記載される。 ここで、上記エで挙げた記載には、本件特許の請求項1及び9の「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」という表記によるものがないが、この表記によれば、「酸を含む」こと、及び、「顆粒剤、細粒剤、又は粉末剤」であることが規定されたものと解されるところ、「酸を含む」という記載は、「酸」単独の場合と、「酸及びその他の成分」の場合の双方を包含するものと解され、「顆粒剤、細粒剤、又は粉末剤」のいずれであるかは、その粒度により決定されるものである。そうすると、本件特許の請求項1及び9の「酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤」とは、上記エの、「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸とのキット」及び「1)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の組み合わせ」の「酸」、並びに、「3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤とのキット」及び「3)炭酸塩含有含水粘性組成物と酸の顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ」の「酸の顆粒(細粒、粉末)剤」の双方を併せたものといえる。 そして、これは本件特許の請求項1及び9の「炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤」についても同様である。 したがって、本件特許発明の各請求項における記載はいずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内にあるものといえる。 4 小括 よって、請求人が提示した主張及び証拠方法によっては、本件特許発明に関する特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項及び第6項第1号に掲げる要件を満足しないものとすることはできず、また、本件特許発明は同法第17条の2第3項に掲げる要件を満足しない補正をした出願に対して特許されたものでもないから、本件特許は特許法第123条第1項第1号及び第4号に該当するものではない。 第6 むすび 以上のとおり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1?13に係る発明の特許を無効とすることができない。また、他にこれら発明の特許を無効にすべき理由を発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、審決のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-05-11 |
出願番号 | 特願2000-520135(P2000-520135) |
審決分類 |
P
1
113・
536-
Y
(A61K)
P 1 113・ 537- Y (A61K) P 1 113・ 55- Y (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩下 直人、守安 智 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
荒木 英則 内藤 伸一 |
登録日 | 2011-01-07 |
登録番号 | 特許第4659980号(P4659980) |
発明の名称 | 二酸化炭素含有粘性組成物 |
代理人 | 山田 威一郎 |
代理人 | 田中 順也 |
代理人 | 立花 顕治 |
代理人 | 的場 照久 |
代理人 | 宮崎 伊章 |