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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A23L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1271343
審判番号 無効2011-800067  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-21 
確定日 2013-02-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4671663号発明「即席麺およびその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
平成16年11月 1日 :出願
平成23年 1月28日 :特許権の設定登録
平成23年 4月21日 :審判請求書及び
甲第1ないし12号証提出
平成23年 7月19日 :答弁書及び乙第1及び2号証提出
同日 :訂正請求書及び参考資料1,2提出
平成23年 8月30日 :口頭審理審理事項通知
平成23年 9月22日 :請求人口頭審理陳述要領書及び
甲第13ないし20号証提出
平成23年 9月22日 :被請求人口頭審理陳述要領書提出
平成23年10月 4日 :被請求人口頭審理陳述要領書,及び
乙第3及び4号証提出
平成23年10月 6日 :口頭審理
平成23年10月 6日 :被請求人上申書及び
乙第5及び6号証提出
平成23年10月11日 :被請求人上申書及び
乙第7ないし13号証提出
平成23年10月12日 :被請求人上申書提出
(乙第13号証の誤記を訂正したものを再提出)
平成23年11月 1日 :請求人上申書及び
甲第21ないし25号証提出

第2 訂正の適否
1 訂正事項
平成23年7月19日付け訂正請求は,本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって,その訂正の内容は次のとおりである。
本件特許明細書の段落【0113】の【表11】の標準偏差の欄に上から「0.19」,「0.103」,「0.055」,「0.005」及び「0.99」とあるのを,それぞれ「0.390」,「0.287」,「0.210」,「0.063」及び「0.890」と訂正する。

2 訂正の目的の適否,新規事項追加の有無,及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
(1)訂正の目的
【表11】について,本件特許明細書段落【0013】に,
「試験例11 (試験例のサンプル粉末油脂練りこみデータ)の麺について標準偏差データを取った。結果を下記の表11に示す。
【表11】



と記載されている。
そこで,上記「(試験例のサンプル粉末油脂練りこみデータ)の麺」について記載した,段落【0058】?【0070】の試験例をみると,
「【0058】
試験例1
(粉末油脂練りこみ試験)
【0059】
<麺線の製造>
処方:小麦粉(ASW,蛋白10%)7kg,タピオカ澱粉(松谷化学工業(株)桜)3kg,食塩100g,リン酸塩20g,水3500ml
【0060】
乾燥前の条件:切り刃 10番角,麺厚1.5mmの麺線を0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後,麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填し乾燥した。
【0061】
油脂添加の条件:以下の4種類の条件を用いた。
(1)粉末油脂無添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
【0062】
(2)粉末油脂添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
【0063】
(3)粉末油脂無添加(乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)
(4)粉末油脂添加 (乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)」,
「【0065】
<麺線の断面積測定>
上記により得た各麺線(長さは各20?30cm程度;1つの条件について,それぞれ(a)?(e)の5バッチ)の断面積を,マイクロスコープ(CCDカメラとパーソナルコンピュータがセットになった測定装置)により麺線表面を撮影し(倍率:70倍),それらの単純平均値を算出した。この際に使用した断面積測定条件は,以下の通りであった。」,
「【0068】
表1:麺線の断面積の測定結果(単位mm^(2))
【表1】



と記載されている。
上記【表1】の丸付き数字1ないし4(以下,「丸付1」ないし「丸付4」という。)は,上記の(1)?(4)の各条件で作成した麺線を示しているといえ,段落【0062】からみて,丸付2が本件発明の条件に合致するものである。
そして,段落【0065】には,麺線の断面積の単純平均値を算出することが記載されているものの,各麺線について複数箇所の断面積を測定したことが明記されていないが,麺線断面積の測定方法については,
「【0028】<麺線断面積の測定方法>
乾燥後得た各麺線(長さは各50cm程度の麺線を5cm間隔でサンプリングし10箇所を測定する)の断面積を,マイクロスコープ(CCDカメラとパーソナルコンピュータがセットになった測定装置)により麺線表面を撮影し(倍率:70倍),それらの単純平均値を算出した。」
と記載されていることから,試験例1においても,それぞれの麺線について5cm程度の間隔で測定して,それらの単純平均値を算出したとすることができる。
以上のことから,【表1】の「a」?「e」の欄及び「平均値」の欄にそれぞれ記載された数値は,a,b,c,d,eの5本の麺線を選んで,それぞれの麺線について5cm程度の間隔で測定した麺線の断面積の単純平均値,及びこの単純平均値の平均値といえる。
そして,【表11】の丸付1?丸付4の「a」?「e」の欄及び「平均」の欄の値は,その数値が表1に記載のものと同じであることからも,表1と同じ上記のような意味の数値が記載されているといえる。
一方,【表11】の「標準偏差」の欄の値については,「a」?「e」の値から計算された値を記載するのが相当といえる。しかしながら,標準偏差の計算式が本件特許明細書に明示されていない。
そこで,標準偏差の算出式について,甲第13ないし16号証(下記の「第5 1(13)?(16)」参照。)を参酌すると,甲第13号証には以下の記載がある。
「●標準偏差はnで割るのかn-1で割るのか
・・・
ところで,いただいたご質問の中でもっとも多かったのが標準偏差の計算法についてのものです。『統計のなはし』では標準偏差を


としているが,ほかの参考書やテキストでは


となっている,どこがちがうのか,どちらが正しいのか,というご質問です。そこで,このへんの事情についてご説明をしようと思います。
標準偏差は,26ページから数ページにわたってお話ししたように,バラツキの大きさを決める約束のひとつですから,どちらの式で約束をしてもかまわないのですが,しかし,相反するいくつかの約束が入り乱れているのは困ります。この本では,29ページ以降の思考過程に従って


(106ページ参照)
とし・・・この考え方の特徴は,第1に,29ページからの説明でもわかっていただけるように,なんでこういう式でばらつきの大きさを約束するのかという理由がわかりやすいこと,第2に,数学の他の分野や物理学で使われるモーメントの概念ときちんと合致していて理論的なことですが,欠点としては,標本から求めた標準偏差が母集団の標準偏差より小さくなる傾向があるため,不偏推定値というむつかしい言葉を覚えたり,母標準偏差を推定するには,n/(n-1)だけ修正するめんどうが必要になることです。
これに対して,統計の実用面に重きをおいた参考書やテキストでは,データを処理して母集団の様相を知ることが目的ですから,標本標準偏差をはじめから


(111ページの式と同じ)
で計算してやり,この値を母集団の標準偏差とみなしてしまいます。こうすると,たしかにnで割った式で求めた標本標準偏差を母標準偏差とみなすよりは誤差が小さくなります。けれども完全ではないことは111ページの説明のとおりです。このように,


とするやり方は,データの統計処理の実用面に重きをおいた便宜的な約束だということを理解しておく必要があります。そして,もしも,母標準偏差までn-1で割っているテキストがあるとしたら,これはちょっと問題です。そんな約束は世の中で通用しないのではないでしょうか。」
と記載されている。
この記載から,標準偏差の計算式には,分母が「n」のものと,「n-1」のものの2種類があり,標準偏差を求める場合,どちらの式に決めてもよく,両方使われているが,統計処理の実用面では,データを処理して母集団の様相を知ることが目的であるから,分母「n-1」の式を使い,この値を母集団の標準偏差とみなしていることが理解できる。
ところで,本件明細書の記載では,どちの式を使うか決めていないので,実用面のデーター処理として用いられ,甲第14?16号証にも標準偏差の式として記載されている,分母「n-1」の式で計算してみると,【表11】の標準偏差の欄は,上から,丸付1「0.44」,丸付2「0.32」,丸付3「0.23」,丸付4「0.071」,丸付5「0.99」となり,本件発明の製造条件と合致する丸付2が,本件発明の「標準偏差が0.3以下」という規定を満たさない。そして,この標準偏差0.3以下という規定は,出願当初明細書から,麺の断面積についての発明特定事項として記載されており,本件特許明細書の段落【0021】の「標準偏差が0.3以下であることを特徴とする。」,【0026】の「標準偏差が0.3以下である即席麺である。」という記載は,出願当初明細書から変わっていないことを考慮すると,標準偏差の算出式を分母「n-1」の式とすると,本件発明の製造条件のもののが「標準偏差が0.3以下」を満たさず矛盾が生じる。
そこで,分母「n」の式で標準偏差を計算してみると,上から,丸付1「0.390」,丸付2「0.287」,丸付3「0.210」,丸付4「0.063」,丸付5「0.890」となり,本件発明の製造条件と合致する丸付2が,本件発明の「標準偏差が0.3以下」という規定を満たす。
そして,本件特許明細書の【表11】の「標準偏差」の欄に記載された値は,どちらの式で計算した値とも異なっている。
そうすると,本件明細書では,どちの式を使うか決めていないが,甲第13号証の記載から理解できる,どちらの式を使うか決めれば,どちらの式も使いうるということ,そして,分母「n」の式で計算しないと上記のような矛盾が生じることを考慮すると,本件発明の「標準偏差」は,分母「n」の式で計算されるべきものであるとするのが相当といえる。
したがって,上記訂正事項は,本件特許明細書の「標準偏差」の欄に記載された値が,「a」?「e」の値に基づいて計算される標準偏差とは,明らかに異なる値であり,明りょうでなかった記載を,分母「n」の式で計算された標準偏差の値に訂正するものであり,明りょうでない記載の釈明を目的としたものといえる。

(2)新規事項追加の有無,及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更
本件訂正は,上記「(1)」に記載のとおり,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

3 訂正請求に対する結論
以上のとおり,本件訂正は特許法第134条の2第1項ただし書第3号,及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。

第3 請求人の主張の概要
請求人は,本件の請求項1ないし7に係る発明について特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,審判請求書と共に甲第1号証ないし甲第12号証を提出し,口頭審理陳述要領書と共に甲第13ないし20号証提出し,上申書と共に甲第21ないし25号証を提出し,本件請求項1ないし7に係る特許発明は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,及び甲第3ないし12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(無効理由1),さらに,本件特許明細書は,特許法第36条第4項(無効理由2),第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない(無効理由3)から,本件特許は同法第123条第1項第2号及び第4号に該当し,無効とすべきものであると主張している。
また,口頭審理陳述要領書において,本件訂正は,新たな技術事項を導入するものであるし,特許請求の範囲が変更されているから,本件訂正は認められるべきでないと主張している。
請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。

甲第1号証:特開平11-196799号公報
甲第2号証:特開昭59-63152号公報
甲第3号証:特開2000-93106号公報
甲第4号証:特開昭55-64773号公報
甲第5号証:特開2002-330716号公報
甲第6号証:特開平9-51773号公報
甲第7号証:特開平11-103804号公報
甲第8号証:特開昭52-125646号公報
甲第9号証:特開平9-51775号公報
甲第10号証:小泉袈裟勝監修,単位の辞典 改訂4版,
平成6年5月25日,ラテイス株式会社編集発行,第300頁
甲第11号証:リョートーシュガーエステル,
製品説明書,三菱化学フーズ株式会社
甲第12号証:広辞苑 第六版,2008年1月11日,岩波書店,
第710頁,第1881頁
甲第13号証:大村平著,統計のはなし,改訂版第12刷,
2011年5月24日,日科技連出版社,第289頁
甲第14号証:JIS 工業用語大辞典 第5版,2001年3月30日, 財団法人日本規格協会発行,第1911頁,第1914頁
甲第15号証:大木道則等編,化学大辞典,第1版第1刷,
1989年10月20日,東京化学同人発行,第1920頁
甲第16号証:東京理科大学理工学辞典編集委員会編,理工学辞典,
初版第1刷,1996年3月28日,日刊工業新聞社発行,第1234頁
甲第17号証:広辞苑 第六版,2008年1月11日,岩波書店,
第1722頁
甲第18号証:甲第1号証の図1?図6の原図(電子顕微鏡写真)
甲第19号証:特開昭53-107437号公報
甲第20号証:特開昭54-86642号公報
甲第21号証:実験成績証明書 2011年10月28日
日清食品ホールディング株式会社 食品開発部 山屋多津男
甲第22号証:甲第21号証の実験結果の写真
甲第23号証:甲第21号証の実験結果のデータと解析
甲第24号証:実験成績証明書 2011年10月28日
日清食品ホールディング株式会社 食品開発部 山屋多津男
甲第25号証:実験成績証明書 2011年10月28日
日清食品ホールディング株式会社 食品開発部 山屋多津男

第4 被請求人の主張の概要
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判の費用は請求人の負担とするとの審決を求め,答弁書と共に乙第1及び2号証を提出すると共に,訂正請求書及び参考資料1及び2を提出し,さらに,口頭審理陳述要領書と共に乙第3及び4号証を提出し,上申書と共に乙第5ないし13号証を提出し,本件訂正は認められるべきであり,請求人の主張する理由及び証拠によっては本件訂正発明を無効とすることはできないと主張している。
被請求人の提出した証拠方法は以下のとおりである。

乙第1号証:(社)日本即席食品工業協会監修,
食品知識ミニブックスシリーズ 新・即席めん入門,平成10年3月30日, 日本食糧新聞社発行,第56,69,71頁
乙第2号証:実験成績証明書 2011年7月15日
サンヨー食品株式会社 マーケティング本部・開発部 永山嘉昭
乙第3号証:特願2004-317997号の特許メモ
乙第4号証:特公昭54-44731号公報
乙第5号証:実験成績証明書 2011年10月4日
サンヨー食品株式会社 マーケティング本部・開発部 永山嘉昭
乙第6号証:実験成績証明書 2011年10月6日
サンヨー食品株式会社 マーケティング本部・開発部 永山嘉昭
乙第7号証:乙第6号証の「B1実験」及び「B3実験」の結果として記載 された断面積の平均値a?eを算出した基となるデータ
乙第8号証:乙第6号証の「B1実験」及び「B3実験」の実験条件の詳細
乙第9号証:日本が生んだ世界食 インスタントラーメンのすべて,
平成16年12月20日 初版,日本食糧新聞社,第70頁
乙第10号証:特公昭56-42257号公報
乙第11号証:特許第3009998号公報
乙第12号証:特公昭56-8567号公報
乙第13号証:乙第6号証の実験条件と結果のまとめと写真

第5 証拠の記載事項
1 請求人が提出した甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】即席麺の製造において,常法により製麺された生地麺を蒸煮した後,これを60以上?100℃未満の熱風で蒸煮麺の水分含有量を20?27%に一次乾燥し,その後該蒸煮麺を搬送用ネットコンベアーで移行する際,別に設けた高圧室より温度制御された空気,不活性ガス,又はこれらの混合ガスからなる120?160℃の高温熱風を該搬送用ネットコンベアーの上下に複数配設した噴射ノズルチューブより高速噴射して,麺類を二次膨化乾燥することを特徴とする即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項2】一次乾燥の熱風の風速が2?30m/secであることを特徴とする請求項1記載の即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項3】噴射ノズルチューブの風速が20?70m/secであることを特徴とする請求項1又は2記載の即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項4】膨化乾燥麺の膨化度が1.23?1.44であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の即席乾燥麺類の製造方法。」
(1b)「【0007】そこで,本発明者は,これらの問題点を解消する技術を既に特開平9-51773号公報に「即席乾燥麺類の製造方法」として開示した。その後更に研究を重ねたところ,この製造方法による麺は,膨化による多孔質化が大きく進み,部分的膨化過ぎを生じる傾向があって,その為生麺的なしっかりした歯ごたえのある食感に欠ける欠点があることを見出した。又,製麺原料としてかん水等のアルカリ剤を使用した即席中華麺類を製造する場合,生地のアルカリ性が強すぎると麺線の保水力が高まり,麺かい(麺線の塊)の芯部において膨化不足が生じ,膨化むらとなる問題も知見した。」
(1c)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,かかる問題点について鋭意研究した結果,60?100℃の熱風を用いる一次乾燥と120?160℃の高温熱風を用いる二次膨化乾燥を併用して,短時間で麺塊の表面のみならず内部までにおいても,麺線を均一に急速に膨化発泡させることを可能にし,しかも麺表面は,焦げることもなく,艶のある外観を呈し,アルカリ剤を使った場合においても生麺のような歯ごたえと風味のある復元容易な即席乾燥麺類の製造方法を提供することを目的とするものである。」
(1d)「【0009】
【発明が解決するための手段】本発明は,即席麺の製造において,常法により製麺された麺線を蒸煮した後,該蒸麺を搬送用ネットコンベアで移行する際,別に設けた高圧室より温度制御された60?100℃,風速2?30m/secの熱風を用いて該蒸煮麺の水分含有量を20?27%に一次乾燥し,次いで温度120?160℃の高温熱風を該搬送用ネットコンベアの上下に複数配設した噴射ノズルチューブより,風速20?70m/secで高速噴射することによりごく短時間で膨化乾燥することができる即席乾燥麺類の製造方法に関するものである。このような方法を取ることによって乾燥後の麺の膨化度が1.23?1.44倍となって膨化による多孔質化を調整することができる。」
(1e)「【0018】上記の様な一次乾燥方法が好ましいものであるが,通常の熱風乾燥その他の乾燥方法を選定してもよい。重要なことは,一次乾燥麺の水分が20%未満では後工程で二次膨化乾燥する場合,含有水分量が不足し膨化による麺組織の多孔質化が不充分となる。27%を超えると逆に膨化発泡が進み,麺組織の多孔質化が大きく部分的膨化むらを生じ,しっかりした歯ごたえのある麺をうることができない。
【0019】次に上記一次乾燥の装置及び方法において熱風の替わりに高温熱風を用いて二次膨化乾燥をする。高温熱風の温度は120?160℃の範囲が適当である。120℃未満では膨化が不充分であり,160℃を超えると膨化による多孔質がすすみ膨化むらを生じる。好ましくは130?150℃の範囲がよい。この時の高温熱風の風速は20?70m/secの範囲が効果的である。風速が20m/sec以下では膨化が不充分で,70m/secを超えると蒸麺の膨化による組織の多孔質化が進み部分的膨化むらができるからである。
【0020】上記の一次乾燥と二次膨化乾燥の併用によって二次乾燥後の麺の膨化度が1.23?1.44の所望の膨化麺をうることができる。膨化度が1.23未満の麺は調理復元不良となり,1.44を超える場合は復元後の状態が戻り過ぎ満足な食感を得ることが出来ない。」
(1f)「【0024】
【実施例1】(即席中華麺)常法により小麦粉19.5kg,でん粉5.5kg,小麦蛋白200gの原料粉にパーム食用油250gを添加混合し,これに水8.5kgにかん水100g,調味料100g,食塩800g及び着色料25gを溶解した練込液を添加し,混捏,複合圧延した後に切刃#18丸,麺厚0.90mmで切出し,蒸煮圧0.30kg/cm2で2分間蒸煮後,麺重82gのものをネット状のバケットに型詰めし,これに空気からなる温度80℃,風速20m/secの熱風を4分間当てることにより一次乾燥をし,その水分を24%程度に調整した後,これに空気からなる130℃の高温熱風を噴射ノズルチューブより風速55m/secで2分間噴射して二次膨化乾燥せしめ,最終水分10?11%の所望の即席中華麺を得た。」
(1g)「【0038】
【表1】


(1h)「【0041】
【発明の効果】以上の結果より,本発明は,蒸煮麺を温度60?100℃の熱風を用いて水分含有量を20?27%に一次乾燥するため,二次膨化乾燥の膨化度合をコントロールでき,又部分的膨化のむらをなくすることができ,しかも内部組織が多孔性になるために,喫食時にお湯が浸透しやすくなり,短時間で復元可能となる即席性を有する物であり,食感においても,麺表面が滑らかで,麺からの溶出がほとんどなく,しかも生麺的な歯ごたえや弾力性のある麺を得ることができるのである。」

(2)甲第2号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(2a)「(1)乾めん,即席めん等のめん類を製造するにあたり,原料粉に,常温で固型状をなしている食品用乳化剤および/または常温で固型状をなしている食品用油脂類を添加し,混合することを特徴とする早もどりめん類の製造方法。
・・・
(3)固型状食品用油脂類の添加量が0.2?15%である特許請求の範囲第1項に記載の方法。」(特許請求の範囲請求項1及び3)
(2b)「本発明は乾めん,即席めん,マカロニ,茹めん,皮類等のめん類の製造に際して常温で固型状をなしている食品用乳化剤および/または常温で固型状をなしている油脂類を添加,混合する製造法に係り,その目的とするところは,めんの食味を低下することなく,喫食時のめんのほぐれをよくし,復元性を極めて早く改善することにある。
めんの食味は従来から“あし”とか“こし”と表現されているようにその太さ,弾力性・・滑らかさ,もちもち性などの物理的な感触の占める割合が大きく,これは主にめんのつくり方とめんの太さ,または,厚みによるところが大である。そしてめんの復元時間はその太さと関係が深く,太いものほど復元時間が長くかかり,逆に細くすればそれだけ短かくなることはよく知られている。」(第1頁左下欄下から3行?右下欄12行)
(2c)「本発明はこのような欠点を解消し消費者のニーズに適したものを研究,開発中に製めん原料に常温で固型状をなしている乳化剤および/または常温で固型状をなしている油脂類を添加,混合して常法により製めんし,蒸煮後,熱風乾燥又は油揚乾燥して得られた即席めんのめん線に無数の微小孔が生じ,同時にめん線同志の付着が極めて少なく,喫食時にお湯を注ぐとほぐれが早く,復元時間が従来の1/2?1/3に短縮され,その食味も従来のものに比べ弾力性,滑らかさに富み,スープとの調和した商品価値の高いものが得られることを発見した。」(第2頁右上欄10行?左下欄1行)
(2d)「本発明の方法を実施する上で使用できる常温で固型状の食品用油脂は例えば,極度硬化牛脂または水添固型牛脂のような動物性油脂および極度硬化パーム油,水添固型大豆油または水添固型綿実油のような植物性油脂である。
本発明で使用する食品用乳化剤及び油脂は熱溶融性であり,粉末または粒状であることが好ましい。融点は40℃以上,好ましくは50℃以上であり,粒径は10メッシュ,好ましくは20メッシュであることが好ましい。融点を40℃以上としたのは製めん時の摩擦熱で溶融しないことが必要なためである。また,粒径が10メッシュより大きくなると短いめん線の場合,切れるおそれがある。
乳化剤の添加量が0.2%未満だとほぐれの効果が少なく,また3%より高いと乳化剤の油臭が残り食味をそこなう。また,油脂の場合,0.2%未満だと乳化剤と同様であるが,15%より高いとめん線のつながりが悪くなるので好ましくない。」(第2頁右下欄1?19行)
(2e)「得られた製めん生地を切刃等でめん線とし,0.5?2kg/cm^(2)の圧力の蒸気で1?4分間蒸煮する。この蒸煮工程は復元性の基本であるでん粉質の糊化及び使用した固型状をなしている乳化剤および/または油脂の熱溶融化を行ない,更にでん粉質と乳化剤および/または油脂の結着を促進する。蒸煮後のめん線は必要なら調味した後,個々に切断し,熱風乾燥もしくは油揚乾燥を行う。」(第2頁右下欄20行?第3頁左上欄7行)
(2f)「常温で固型状をなす食品用乳化剤および/または油脂は製めん工程でめんの表面及び内部に無数に点在するが,続く蒸煮工程に於てその部分が蒸気温度により溶融,液化し,めんの表面及び内部に無数の微小孔を生じ乾燥工程後もこれが残り多孔質めんとなる。このようにして得ためんにお湯を注ぐと,多孔質のため復元性は極めて早い。」(第3頁左上欄17行?右上欄3行)
(2g)「本発明によるめんの多孔質は従来からある膨化処理によるものではなく,又,混合工程を少なくしグルテン形成をおさえた形の多孔質ではなく,充分練り上げてあるため,めんの組織がしつかり形成されたものであり,めん本来の弾力性を主とする食味を保ったものである。」(第3頁右上欄9?14行)
(2h)「実施例1.
小麦粉1kgに固型状脂肪酸モノグリセライド20gを添加均一混合した後,水350ml,食塩20g,かんすい2gの混合液を加え,充分練り上げたのち,常法で製めんし,ロールで0.8m/mに圧延し,#18切刃でめん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮し,次いで150℃のラードで2分間油揚乾燥しめん製品を得た。」(第3頁左下欄19行?右下欄7行)
(2i)「実施例2.
小麦粉1kgに固型状脂肪酸モノグリセライド20gを添加し,均一に混合した後,水350ml,食塩15g,かんすい4gの混合液を加え,充分練り上げた後,常法で製めんしロールで1.0m/mに圧延し,#18切刃でめん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮し,型枠に入れ80℃の熱風で40分間乾燥し,めん製品を得た。」(第3頁右下欄8?15行)
(2j)「実施例5.
小麦粉1kgに粒径が60メッシュの固型状極度硬化パーム油を50g添加し,均一に混合した後,水350ml,食塩20g,かんすい2gの混合液を加え,充分練り上げた後,常法で製めんし,その後に実施例1と同様な操作によりめん製品を得た。」(第4頁左上欄11?17行)

(3)甲第3号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項1】融点45?75℃の粉末状の油脂を穀類粉または及び澱粉に対して0.2?10重量%配合することを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項2】粉末状の油脂の融点が50?65℃である請求項1記載の麺類の製造方法。
【請求項3】麺類がノンフライ麺である請求項1?2記載の麺類の製造方法。」
(3b)「【0011】この粉末状の高融点油脂を添加することによって,復元性やスープなじみ性が良好になる理由は,詳細には不明だが,添加された粉末状の高融点油脂がその乾燥工程中にごく一部しか溶解せずにノンフライ麺生地中に空隙を作り,ノンフライ麺生地中および表面に微細な穴を開け,その空隙に湯が浸透する事により,復元性が向上し,スープとのなじみ性も良好になると推測している。さらには,生じる空隙が微細であるために麺の艶が損なわれず,本来油脂のもつ離型効果も働いてほぐれ性も向上すると考えられる。」
(3c)「【0012】本発明で用いられる油脂は食用油脂であれば特に限定されるものではなく,パーム油,菜種油,大豆油,ひまわり油,コーン油,綿実油,サフラワー油,米ぬか油,やし油,パーム核油の硬化油およびエステル交換油等が例示できる。
【0013】本発明に用いる油脂の形状は粉末である必要がある。粉末状とは,リンペン状,球状,棒状等のものを指し,いわゆる粉体であればよい。液状またはペースト状の油脂を添加すると,麺ほぐれ性は改良できるが,復元性,スープなじみ性までは改良できない。粉末油脂の作成方法は特に限定されることはないが,溶解した油脂を冷却塔(チラー)の中へ噴霧して粉末化するスプレークーリング方式や溶解した油脂を冷却されたドラム上へ流し固化せしめてかきとるドラムフレーク方式等が挙げられる。
【0014】粉末状の油脂の粒子径は平均粒子径が0.1mm以上であれば特に限定されないが,使用する小麦粉や澱粉等の穀粉とうまく混合できることが好ましく,JIS規格篩大きさにおいて10#オールパス品くらいの大きさが好ましい。平均粒子径が0.1mm未満のもの,例えば,糖類,蛋白質,乳化剤を用いて油脂を乳化したものを噴霧乾燥などして得られる油脂組成物も「粉末油脂」と呼ばれているが,このものは多数の微細な油脂粒子と糖類,蛋白質などからなる集合体が粉末粒子を形成し,見かけ状の粒子径が大きくとも,油脂の実質的粒径は非常に小さな(10ミクロン程度)ものとなっている,そのため,上記空隙は明瞭には形成されず本発明の効果を奏さない。
【0015】本発明に用いる粉末状の高融点油脂の添加量は,小麦粉などの穀類粉または及び澱粉に対して0.2?10重量%であることが必要であり,好ましくは0.5?3重量%である。0.2%未満であると得られたノンフライ麺のほぐれ性が劣ってしまい,10%を超えると得られたノンフライ麺が粉っぽくなってしまい商品としての味に問題を生ずる。
【0016】また,これらの粉末状の高融点油脂の融点は45?75℃であることが必要であり好ましくは50?65℃である。粉末状の高融点油脂の融点が45℃未満であると,乾燥中に溶解してしまうために,ノンフライ麺表面に油脂が浮き出て,酸化劣化して変敗臭を生じ易くなってしまう。さらに融点が低く液状またはペースト状となると,すでに述べたごとく,復元性,なじみ性の改良は困難となる。麺生地に油脂が溶け込んで一体となるため生地中への微細な空隙の生成が困難となるためであろう。また75℃を超えると得られたノンフライ麺の復元性が逆に下がってしまうため好ましくない。」
(3d)「【0019】
【実施例】以下に本発明をよりわかりやすくするために,実施例を用いて述べる。
〔実施例1-3,比較例1-2〕精製パーム油を極度硬化して,完全に加熱溶融せしめた後,冷却されたドラム上に流し,固化した油脂をかきとり粉砕した後,10#の篩を通過させて粉末状の高融点油脂(粉末油脂A)を得た。この時の粉末状の高融点油脂の融点は58℃であり平均粒子径は0.35mmであった。粉末油脂Aを用い表1に示す配合にて混捏りし,麺生地を調製した。調製した生地を圧延,切出し(切刃 #16角,麺線厚み0.85mm)蒸し器で2分間蒸し,型枠にいれ90℃で10分間熱風乾燥を行ってノンフライ麺を得た。それぞれ作成したノンフライ麺100gに市販ラーメンスープを入れ熱湯を150ml注ぎ,4分後に試食して官能評価を行った。結果を表2に示す。」

(4)甲第4証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(4a)「(1) 小麦粉を主原料とし,これに水または食塩水およびかんすい等を加えて混練するに際し,デンプン類と融点30℃以上の油脂類とエチルアルコールとをあわせ加えて混練することを特徴とする即席洋風麺の製造方法。
・・・
(3) (i)小麦粉原料に,水または水と適当な添加物を加えて混練する場合に,デンプン類,油脂類およびアルコールを併せて混練する工程,
(ii)粗延を経た麺帯を巻取り後,適当時間のねかしを与えて切出しを行い,麺線相互に,間隔を保たせるようにする工程,
(iii)間隔を保持せしめたままの麺線を効率よく糊化する工程,
(iv)所望長さに切断した麺線について,仕上げ乾燥を行う工程,
の4工程からなる即席洋風麺の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1,3)
(4b)「次に融点30℃以上の油脂類としてパーム油・・・など一般に食品に用いられるものであればいずれでもよい。
油脂類の添加量は,小麦粉に対し0.4?10%,好ましくは1?5%である。
油脂類の添加量が低すぎると,スパゲツテイ様の外観が出にくく,多過ぎると麺帯や麺線が切れ易くなるとともに食感が悪くなる。
油脂類の添加方法としては,小麦粉とデンプン類がよくまざった中に,あらかじめ30℃以上,150℃以下に温めて溶かしておいたものを少しずつ撹拌をしながら添加する等の方法をとることができる。」(第3頁右下欄2?16行)
(4c)「エチルアルコールの添加量は,0.5?10.0%,好ましくは1?5%である。
エチルアルコールの添加量が低過ぎると,スパゲツテイ様の外観が出にくく,多過ぎると麺帯や麺線が切れ易くなる。」(第4頁左上欄5?9行)
(4d)「蒸煮糊化が終了し,α化した麺線を乾燥するに際し・・・乾燥機11中に導入されるが,この導入初期に30℃以下の冷風,好ましくは5?20℃程度の乾燥した冷風を用いて予備乾燥機9において予備乾燥を行なう。」(第6頁左上欄13?18行)
(4e)「予備乾燥を終り,適宜の長さに切断された麺線は,仕上げ乾燥工程11へ運ばれ,今度は加熱乾燥される。仕上げ乾燥の乾燥機11は通常,麺類やその他の食品の乾燥に用いられる60?100℃程度の温度の熱風を得られるものであればよく,構造等について特に制限はない。」(第6頁右上欄18行?左下欄3行)

(5)甲第5号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(5a)「【請求項1】 製麺された麺線を蒸煮する第1の工程と,前記麺線を裁断した麺塊を型枠に収納し予備乾燥を行う第2の工程と,前記麺線の表面に水又は水溶液を付着浸透させる第3の工程と,前記麺線に対し高温熱風による本乾燥を行う第4の工程とを有することを特徴とする即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項2】 前記第2の工程で,前記麺線の水分を予め15?25%に調整しておくことを特徴とする請求項1に記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項3】 前記第2の工程の予備乾燥温度は80?110℃で,熱風の風速は1?10m/秒の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項4】 前記第4の工程の熱風の温度は115?200℃であることを特徴とする請求項1に記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。
【請求項5】 前記第4の工程の熱風の風速は1?25m/秒であることを特徴とする請求項1に記載の即席熱風乾燥麺の製造方法。」
(5b)「【0003】油揚げ乾燥方法は,麺線を油熱処理することにより急激な脱水乾燥を行うことによって,乾燥された麺線は多孔質構造となり,熱湯を注いだり短時間煮込むことにより,ボリューム感のある食感になる。しかし,多孔質構造のため生麺のような粘弾性のある食感を実現することは難しく,また油で揚げているためにフライ臭があり,更に多量の油脂を麺線中に含んでいるために,酸化による風味低下が生じ易いという欠点もある。
【0004】このような油揚げ乾燥麺の欠点を解消し,生麺のような風味を有する即席麺を得るための乾燥方法として,前述の非油揚げ乾燥方法に用いられる熱風乾燥方法が有効である。
【0005】この熱風乾燥には,低温熱風乾燥方法,高温熱風乾燥方法がある。前者の低温熱風乾燥方法で得られる即席麺は,一般に100℃未満の熱風による長時間乾燥により,麺線の全体が収縮し硬化が生じているために麺線の内部は気泡が少ない。従って,熱湯注入又は茹で上げによって復元した場合に,表面部分が復元した段階では,中心部分は復元が不充分で収縮硬化した状態であるため,硬いゴム状の食感となってしまう。更に,中心部分まで充分に復元しようとすると,表面部分が水分過多となり,弾力のない所謂茹で伸び状態となり,生麺のような粘弾性のある食感は得られない。また,乾燥時間も長く,商業的規模で製造するためには,大型の乾燥装置が必要であり,設備費の負担も大きい。
【0006】後者の高温熱風乾燥方法は,低温熱風乾燥方法の欠点を解消するために考案された方法であり,短時間で非油揚げ麺を得るために100℃以上の高温熱風を用いて,油揚げ乾燥方法と同様に急速に脱水乾燥することを特徴とする。従って,得られる麺線は発泡して復元性が良く,更には乾燥設備を小型化することができる。
【0007】しかし,短時間で急速に乾燥させると,「麺線の割れ」が起こってしまい,乾燥時間の短縮には限度がある。「麺線の割れ」とは,短時間で麺線を乾燥させたときに麺線中心部分よりも麺線表面部分の乾燥が促進され,麺線の表面部分と中心部分の水分差から麺線内部の収縮の差が起こり,図3の写真に示すような麺線の中心部分に大きな空洞を生ずる現象であり,喫食時には麺線が真中から2つに分かれてしまう。麺線の割れが起きてしまうと食感のばらつきが生じたり,体裁が悪くなるなど著しく商品価値を損う。
【0008】高温熱風乾燥法としては,特公昭54-44731号公報が知られている。この方法は,蒸煮麺線の水分含量を約8?25%に水分調整して,約120?250℃の高温気流で約5?90秒間処理する方法である。これは,蒸煮麺線の水分含量を約8?25%に水分調整することで,高温気流で効率良く麺線を均一に発泡させることを目的とした方法であるが,単に水分調整を行うだけでは,水分調整後の麺線内部は表面部分と中心部分に水分差を生じているために,高温気流乾燥時に麺線内部の収縮の差が一気に起こり,上述の「麺線の割れ」が起きてしまう。特に,即席うどんのような太麺では顕著に現れる傾向がある。」
(5c)「【0013】上記の製造方法によって,麺線の太さに拘らず高温熱風乾燥の問題点である麺線の割れを防止することができ,かつ得られた麺線は微発泡状態に乾燥することができるため,生麺のような粘弾性を有する食感を合わせて得られる。
【0014】麺線の割れは前述したように,高温熱風により急激に麺線を発泡する状態で起こるものである。つまりは,高温熱風により麺線を発泡させる段階で,麺線表面部分と中心部分の水分差が無ければ,麺線の割れを起こさずに発泡乾燥できる。乾燥段階において麺線の表面部分と中心部分の水分差を少なくするように均一に乾燥することにより,麺線の割れを防止することができる。
【0015】このように,予め水分を例えば15?25%に調整した麺線に対して,麺線表面に水分を付着浸透させる工程を設けることで,麺線の表面部分と中心部分の水分差を少なくすることができ,結果として本乾燥時の麺線内部の収縮の差を減らすことにより,麺線の割れを防止することが確認された。」
(5d)「【0029】その結果,本乾燥時の麺線内部の収縮の差を減らすことで麺線の割れを防止することができる。更には,以上の工程により乾燥時の麺線の内部構造を微発泡状態にすることができるため,通常の高温熱風乾燥方法の食感よりも腰と粘りのある生麺のような食感を合わせて実現することができる。ここで,温度が110℃以下であると麺線の発泡が起こり難く,200℃以上であると麺線が焦げてしまう。また風速が10m/秒以下であると,中心部分まで速やかに乾燥することができず,25m/秒以上であると発泡度合いが高くなってしまう。」

(6)甲第6号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(6a)「【請求項1】常法により製麺された麺線を蒸煮した後,該蒸麺を搬送用ネットコンベアーで移行する際,別に設けた高圧室より温度制御された空気,不活性ガス,又はこれらの混合ガスからなる100?200℃の高温熱風を該搬送用ネットコンベアーの上下に複数配設した噴射ノズルチューブより高速噴射して,麺類を膨化乾燥することを特徴とする即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項2】噴射ノズルチューブの風速が10?35m/secである請求項1記載の即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項3】常法により製麺された麺線を蒸煮した後,噴射ノズルチューブより高温熱風を噴射して,予め水分を15?32%に調整しておくことを特徴とする請求項1記載の即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項4】高温熱風の温度が100?120℃である請求項3記載の即席乾燥麺類の製造方法。
【請求項5】高温熱風の風速が20?40m/secの範囲である請求項3記載の即席乾燥麺類の製造方法。」
(6b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,かかる問題点について鋭意研究した結果,高温熱風乾燥において,短時間で麺の表面のみならず内部までにおいても,均一に,急速に膨化発泡させることを可能にし,しかも麺表面は,焦げることもなく,艶のある外観を呈し,風味のある復元容易な即席乾燥麺類の製造方法を提供することを目的とするものである。」
(6c)「【0011】高温熱風の温度は100?200℃の範囲が適当である。100℃未満では,膨化せず,又,200℃以上になると麺が焦げる傾向があり,短時間で処理するため,該麺塊の中心部まで充分に膨化することができない。好ましくは135?155℃の範囲がよい。このときの高温熱風の風速は,10?35m/secの範囲が効果的である。風速10m/sec以下では膨化が不十分で,35m/sec以上では,該蒸麺が均一に膨化せず,膨化ムラができるからである。かかる条件により所望の膨化麺をえることができる。
【0012】一方該蒸麺に,高温熱風を噴射する前に,予め予備乾燥として温度100?120℃の熱風を,該噴射ノズルより風速20?40m/sec,好ましくは20?30m/secの範囲で噴射して,水分を15?32%に調整しておけば,急激に大きな空洞を生ずるような膨化現象を防止することができる。このため,特に麺線の太いものでは,概ね切刃#10以下のものが適する。予備乾燥の温度が100℃以下では麺全体が収縮する傾向があり,その後の工程,即ち膨化条件に悪影響を及ぼすことになる。又120℃以上では,その後の膨化条件が不均一になりやすく食感に及ぼす影響も大きい。このとき,風速も20m/sec以下では,乾燥速度が緩慢となり,前述の如く麺全体が収縮する傾向があり,40m/sec以上では,予備乾燥としての効果がなくなり,膨化度が大きく麺に空洞が出来る恐れがある。又,予備乾燥として水分調整が15%以下では,その後の膨化が起りにくくなり,逆に32%以上では均一な乾燥が困難になり,後工程の本膨化乾燥でも均一な乾燥ができにくくなる。」

(7)甲第7号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(7a)「【請求項1】常法により着色材料を添加した色調の異なった複数の麺帯を作り,この異色の麺帯を2層以上重ね合わせて麺線とし,次いで蒸煮した後麺線の膨化度が0.95?1.60倍と成るように油揚乾燥以外の方法で膨化乾燥することを特徴とする多色麺類の製造方法。
【請求項2】膨化乾燥の高温熱風の温度が100℃?200℃であって,風速が1?70m/secである請求項1記載の多色麺類の製造方法。」
(7b)「【0020】高温熱風の温度は100?200℃の範囲が適当である。100℃未満では,膨化せず,又,200℃以上になると麺が焦げる傾向があり,短時間で処理するため,該麺かいの中心部まで充分に膨化することができない。好ましくは135?155℃の範囲がよい。このときの高温熱風の風速は,1?70m/secの範囲が効果的である。風速1m/sec以下では膨化が不充分で,70m/sec以上では,膨化度合いが大きく成りすぎて,フカフカとした食感不良の麺となる。かかる条件により所望の膨化麺を得ることができる。
【0021】一方該蒸麺に,高温熱風を噴射する前に,予め予備乾燥として温度100?120℃の熱風を,該噴射ノズルより風速1?40m/sec,好ましくは10?30m/secの範囲で噴射して,水分を15?32%に調整しておけば,急激に大きな空洞を生じるような膨化現象を防止することができて,麺線の太い概ね切刃#10以下のものに特に効果がある。予備乾燥の温度が100℃以下では麺全体が収縮する傾向があり,その後の工程,即ち膨化条件に悪影響を及ぼすことになる。又120℃以上では,その後の膨化が不均一に成りやすく食感に及ぼす影響も大きい。このとき,風速も1m/sec以下では,乾燥速度が緩慢となり,前述の如く麺全体が収縮する傾向があり,40m/sec以上では,予備乾燥としての効果がなくなり,膨化度が大きく麺に空洞が出来る恐れがある。又,予備乾燥として水分調整が15%以下では,その後の膨化が起こりにくく後工程の本膨化乾燥での乾燥が不均一になり,逆に32%以上では大きな空洞を生じるような膨化現象を防止する効果が少なくなる。」

(8)甲第8号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(8a)「製麺工程中に蔗糖脂肪酸エステルおよび遅効性膨剤を添加し,茹でもしくは蒸煮後の乾燥が120?190℃で全水分の20?30%を乾燥する第一段階と,引続き70?100℃で全水分の30?45%を乾燥する第二段階とからなることを特徴とする即席麺類の製法。」

(9)甲第9号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(9a)「【請求項1】即席麺類の製造方法であって,
(a)麺類をα化処理する工程;
(b)α化処理した麺類を凍結処理する工程;
(c)凍結処理した麺類をその水分含量が30?55重量%になるまで凍結真空乾燥する工程;および
(d)前記の工程(c)で得られる麺類をその水分含量が3?30重量%になるまで加熱乾燥する工程;からなり,且つ工程(c)で得られる麺類の水分含量と工程(d)で得られる麺類の水分含量の差が8重量%以上となるように工程(c)および工程(d)を行うことを特徴とする即席麺類の製造方法。
・・・
【請求項3】工程(d)において,麺類の水分含量が20?30重量%になるまで40?100℃の温度で加熱乾燥することからなる請求項1または2の製造方法。
【請求項4】工程(d)において,麺類の水分含量が3?20重量%になるまで100?180℃の温度で加熱乾燥することからなる請求項1または2の製造方法。」
(9b)「【0023】そして,この工程(d)の加熱乾燥処理によって麺類の最終的な水分含量を20?30重量%の範囲にする場合は,この加熱乾燥工程を40?100℃の範囲の温度で行うのが好ましく,それによって最終的に得られる即席麺類は多孔質の構造となっていて,湯戻しなどによって喫食可能に復元した際に,その復元時間が短くて,しかも復元された麺類が滑らかさおよび弾力性に富む,口当たりおよび食感に優れたものとなる。また,この工程(d)によって麺類の最終的な水分含量を3?20重量%の範囲にする場合は,この工程(d)の加熱乾燥処理を100?180℃の範囲の温度で行うのが好ましく,それによって最終的に得られる即席麺類は多孔質で膨化した構造となっていて,やはり,湯戻しなどによって喫食可能に復元した際に,その復元時間が短くて,しかも復元された麺類が滑らかさおよび弾力性に富む,口当たりおよび食感に優れたものとなる。」

(10) 甲第10号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(10a)「表-1 JIS,ASTM,Tylerのふるいの対照表」に,
「Tyler」の「60メッシュ」,「20メッシュ」及び「10メッシュ」が,ふるいの目の開き「0.246mm」,「0.833mm」及び「1.651mm」であることが記載されている。(第300頁,表-1)

(11) 甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
(11a)食品用乳化剤「ショ糖脂肪酸エステル」が,慣用的にはシュガーエステルと呼ばれることが記載され,シュガーエステルの形状が,粉末,微粉末,粗粒,粘性液体等であることが記載されている。

(12) 甲第12号証には,以下の事項が記載されている。
(12a)「球」がまるいものを意味すること,「粒」がまるくて小さいものを意味することが記載されている。

(13) 甲第13号証は,本件特許出願前の2002年5月25日に改訂版第1刷が発行され,2011年5月24日に改訂版第12刷が発行されたものであって,以下の事項が記載されている。
(13a)「●標準偏差はnで割るのかn-1で割るのか
・・・
ところで,いただいたご質問の中でもっとも多かったのが標準偏差の計算法についてのものです。『統計のなはし』では標準偏差を


としているが,ほかの参考書やテキストでは


となっている,どこがちがうのか,どちらが正しいのか,というご質問です。そこで,このへんの事情についてご説明をしようと思います。
標準偏差は,26ページから数ページにわたってお話ししたように,バラツキの大きさを決める約束のひとつですから,どちらの式で約束をしてもかまわないのですが,しかし,相反するいくつかの約束が入り乱れているのは困ります。この本では,29ページ以降の思考過程に従って


(106ページ参照)
とし・・・この考え方の特徴は,第1に,29ページからの説明でもわかっていただけるように,なんでこういう式でばらつきの大きさを約束するのかという理由がわかりやすいこと,第2に,数学の他の分野や物理学で使われるモーメントの概念ときちんと合致していて理論的なことですが,欠点としては,標本から求めた標準偏差が母集団の標準偏差より小さくなる傾向があるため,不偏推定値というむつかしい言葉を覚えたり,母標準偏差を推定するには,n/(n-1)だけ修正するめんどうが必要になることです。
これに対して,統計の実用面に重きをおいた参考書やテキストでは,データを処理して母集団の様相を知ることが目的ですから,標本標準偏差をはじめから


(111ページの式と同じ)
で計算してやり,この値を母集団の標準偏差とみなしてしまいます。こうすると,たしかにnで割った式で求めた標本標準偏差を母標準偏差とみなすよりは誤差が小さくなります。けれども完全ではないことは111ページの説明のとおりです。このように,


とするやり方は,データの統計処理の実用面に重きをおいた便宜的な約束だということを理解しておく必要があります。そして,もしも,母標準偏差までn-1で割っているテキストがあるとしたら,これはちょっと問題です。そんな約束は世の中で通用しないのではないでしょうか。」(第288頁2行?第289頁下から7行)

(14) 甲第14号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(14a)「標本標準偏差」の項目に,「1.標本標準偏差は母標準偏差のかたよりのある推定量となる。2.混乱が生じなければ,標本標準偏差を標準偏差と呼んでもよい。」と記載され,
「標準偏差」の項目に,標準偏差の式として,以下の式が記載されている。



(15) 甲第15号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(15a)「標準偏差」の項目に,分散(variance)の平方根である標準偏差sが用いられることが記載され,分散の式として以下の式が記載されている。



(16) 甲第16号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(16a)「標準偏差」の項目に,n個の標本からの標準偏差の推定量sとして以下の式が用いられることが記載されている。



(17) 甲第17号証には,以下の事項が記載されている。
(17a)「多孔質」の項目に,「多数の微細な孔をもつ物質。」

(18) 甲第18号証は,甲第1号証の【図1】?【図6】の電子顕微鏡写真の原図が示されている。

(19) 甲第19号証は本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(19a)「1.生麺線の表面に食用油脂の水系乳化液を付着せしめて蒸煮し,次いで予備乾燥により水分含有率を20?35重量%に調整した後少なくとも115℃で乾燥膨化することを特徴とするノンフライ乾燥即席麺の製造方法。
・・・
8.予備乾燥は80?100℃の温度で行なう特許請求の範囲第1項記載の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1,8)
(19b)実施例1に「乾燥膨化して見掛け密度0.85g/cm^(2)の微細気孔を有する多孔質の即席麺(本発明品)を得た。」(第4頁左上欄14?16行)と記載され,第1図に,実施例1で得られたノンフライ乾燥即席麺の表面及び横断面を示す電子顕微鏡写真(倍率:50倍)が示されている(第6頁,第1図)。

(20) 甲第20号証は本件特許出願前に頒布され,本件特許明細書で特許文献1として引用された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(20a)「密封型の乾燥室内に蒸煮メン線を連続的に供給し,ここで105?180℃に加熱した高含水分熱風を再循環しつつ風速2?10m/secでメン線に吹き当てることにより膨化発泡せしめることを特徴とする発泡アルフア-メンの連続的製法。」(特許請求の範囲)
(20b)「得られたメン線は膨化発泡し,これをミクロ的にみると多孔質を形成して湯もどしに3?5分ときわめて短時間に出来,かつ,ふつくらとして歯ごたえもあつて食感も一段と向上したものとなる。」(第3頁左下欄下から5?1行)

(21) 甲第21号証は,実験成績証明書であって,被請求人が提出した乙第6号証の実験B1及び実験B3を追試した試験X1及びX2,並びに比較試験X3を行ったことと,その結果が記載され,結論として,「粉末粒状油脂を含有しても,しなくても,構成D(標準偏差0.3以下)は満たされる」,「粉末粒状油脂の添加により,ある程度麺線割れを抑える効果がある」,「粉末粒状油脂の添加により,膨化発泡によって生じる麺線断面積の増加を有意に抑える」と記載されている。

(22) 甲第22号証は,試験X1及びX2,並びに比較試験X3の麺線の断面の写真が示されている。

(23) 甲第23号証は,試験X1と比較試験X3の有意差検定の結果が示されている。

(24) 甲第24号証は,請求人が提出した乙第5号証の油熱乾燥の条件での実験A2を追試する試験Y1,これと対比する試験Y2(粉末粒状油脂有り)を行ったことと,その結果が記載されている。

(25) 甲第25号証は,甲第1号証に記載された条件と同じ条件で試験を行ったことと,その結果が記載され,構成D(標準偏差0.3以下)が満たされることが記載され,麺線断面写真が示されている。

2 被請求人が提出した乙各号証の記載事項
(1)乙第1号証は,本件特許出願前に頒布されたものであって,以下の事項が記載されている。
(乙1a)「7.乾燥
(1) 油熱乾燥
・・・
型詰めされためん線は,通常水分を30?50%含有するが,温度140?160℃の熱油の中を1?2分間通過させることにより,短時間で水分2?5%,油脂含量15?20%に脱水乾燥される・・・その際,めん線中の水分が存在した部分が微空洞化して多孔質になり,熱湯により数分間で復元するようになる。」(第69頁上欄11行?下欄8行)
(乙1b)「(2) 熱風乾燥
油熱乾燥に比べて復元性はやや劣るが・・・熱風乾燥方式がある。これは一般的に70?90℃の熱風により30?45分かけて,リテイナーに型詰めされためん線の水分を8?12%程度に乾燥し,保存性をあげる方法である。」(第71頁下欄2?8行)

(2)乙第2号証は,実験成績証明書であって,本件特許明細書の段落【0113】の条件(1),(2),(4)の麺線作成を追試したことが記載され,その結果の麺線断面及び表面の顕微鏡写真が示されている,

(3)乙第3号証は,本件特許の審査における「特許メモ」である。

(4)乙第4号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,以下の事項が記載されている。
(乙4a)「1 常法により製造した生麺線を約120?250℃の高温気流で約5?90秒間処理することを特徴とする高温気流乾燥麺の製造方法。
2 特許請求の範囲第1項の製造方法において予め,生麺線の水分含量を約8?25%に水分調整しておくこと。」(特許請求の範囲請求項1,2)

(5)乙第5号証は,実験成績証明書であって,本件特許明細書の段落【0113】の条件(1)?(4)に準じ,A1:粉末粒状油脂なし,予備乾燥あり,A2:粉末粒状油脂なし,油熱乾燥,B1:粉末粒状油脂有り,予備乾燥なし,B2:粉末粒状油脂有り,予備乾燥なし,C1:粉末粒状油脂なし,予備乾燥なしの条件で麺線を作製したことと,その結果が記載され麺線断面の写真が示されている。

(6)乙第6号証は,実験成績証明書であって,乙第5号証のB1条件,B3条件の麺線について,麺線の断面積の測定値と標準偏差が記載され,結論として,「予備乾燥を行うか否かに拘わらず,標準偏差が0.3以下の麺線を得ることができる」と記載されている。

(7)乙第7号証は,乙第6号証の実験成績証明書で標準偏差を計算した基となるデータである。

(8)乙第8号証は,甲第6号証の実験成績証明書の実験条件を詳細に記載したものである。

(9)乙第9号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,乙第8号証に記載した実験条件で,麺線を2つ折りにすること及びほぐし操作をすることが周知技術であることを示すためのものであり,以下の事項が記載されている。
(乙9a)「所定の長さに切断されためん線は,通常のスープ別添袋めんでは,2つ折り装置によりめん線の形状を整える。」(第70頁1?2行)
(乙9b)「1食分に切断されためん線は,型詰めの直前または型詰め後に「ほぐし」を施されることもある。乾燥工程でめん線同士が接着しないようにバラバラにするための操作である。水または油の噴霧をした,型詰め後のめん線間にほぐし装置を差し込んで機械的にほぐし作業を行ったりする。」(第70頁7?11行)

(10)乙第10号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,乙第8号証に記載した実験条件で,乳化油脂等のほぐし液を用いることが周知技術であることを示すためのものであり,以下の事項が記載されている。
(乙10a)「生麺線の表面に食用油脂の水中油滴型乳化液を付着した後,蒸熱し,その後乾燥する事を特徴とする即席麺の製造法。」(特許請求の範囲請求項1)

(11)乙第11号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,乙第8号証に記載した実験条件で,乳化油脂等のほぐし液を用いることが周知技術であることを示すためのものであり,以下の事項が記載されている。
(乙11a)「【請求項1】下記工程を順次備えてなるノンオイル乾燥即席麺の製法。
(A)減圧条件下で,小麦粉と澱粉とを含有する粉体原料を主体とするドウを調製する工程。
(B)上記ドウを麺線化して蒸煮する工程。
(C)上記蒸煮直後の麺線表面に親水性乳化剤溶液を付着させる工程。
(D)上記親水性乳化剤溶液が付着した麺線を乾燥する工程。」

(12)乙第12号証は,本件特許出願前に頒布された刊行物であって,乙第8号証に記載した実験条件で,乳化油脂等のほぐし液を用いることが周知技術であることを示すためのものであり,以下の事項が記載されている。
(乙12a)「1 生麺線の表面に水,水系乳化液,食塩水溶液及び食塩含有水系乳化液より選択された少なくとも一つを付着した後,蒸熱し,その後食塩水溶液又は食塩含有水系乳化液の中に浸漬し,脱液してから熱処理することを特徴とする即席麺の製造法。」(特許請求の範囲請求項1)

(13)乙第13号証は,実験条件と結果のまとめ及び麺線の断面積を測定する際の麺線の状態とサンプリングを行う様子の写真である。

第6 当審の判断
1 無効理由1(進歩性)について
(1)本件特許発明
本件明細書の請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」という。)は,本件特許明細書に記載された,以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
主原料と,粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤とを少なくとも含む麺原料と,水を混捏して得た混合物から麺線を作成し,
該麺線を蒸煮し,次いで,
熱風により,110℃以上の温度で膨化乾燥する即席麺の製造方法であって;且つ,
前記主原料が,小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ,
前記即席麺の同一製品中から任意の5本を選んで測定した際の,麺線断面積の長さ方向の標準偏差が0.3以下であり,且つ,
前記粉末粒状の油脂または乳化剤の添加量が,主原料に対して,0.5?5%であることを特徴とする即席麺の製造方法。
【請求項2】
前記油脂又は/および乳化剤が,球状又は/および粒状である請求項1に記載の即席麺の製造方法。
【請求項3】
前記主原料が小麦粉である請求項1または2に記載の即席麺の製造方法。
【請求項4】
前記麺原料が更にエチルアルコールを含む請求項1?3のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項5】
前記粉末粒状の油脂または乳化剤がスプレークーリング法により製造されたものである請求項1?4のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項6】
前記粉末粒状の油脂または乳化剤の融点が50℃?70℃である請求項1?5のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項7】
前記エチルアルコールの添加量が主原料に対して,0.3?5%である請求項4に記載の即席麺の製造方法。」

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の記載事項(特に上記(1f))からみて,甲第1号証には,以下の発明が記載されていると認められる。

「常法により小麦粉19.5kg,でん粉5.5kg,小麦蛋白200gの原料粉にパーム食用油250gを添加混合し,これに水8.5kgにかん水100g,調味料100g,食塩800g及び着色料25gを溶解した練込液を添加し,混捏,複合圧延した後に切刃#18丸,麺厚0.90mmで切出し麺線とし,蒸煮圧0.30kg/cm^(2)で2分間蒸煮後,麺重82gのものをネット状のバケットに型詰めし,これに空気からなる温度80℃,風速20m/secの熱風を4分間当てることにより一次乾燥をし,その水分を24%程度に調整した後,これに空気からなる130℃の高温熱風を噴射ノズルチューブより風速55m/secで2分間噴射して二次膨化乾燥させる即席中華麺の製造方法。」(以下,「甲1発明」という。)

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを比較する。
(ア)甲1発明の「小麦粉19.5kg,でん粉5.5kg,小麦蛋白200gの原料粉」は, 本件特許発明1の「主原料」であって,「小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ」るものに相当する。
(イ)甲1発明の「パーム食用油250g」は,主原料である「小麦粉19.5kg,でん粉5.5kg,小麦蛋白200gの原料粉」の合計重量25.2Kgに対して,0.25Kg/25.2Kg=0.0099であり約1%である。そして,本件特許発明の「粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤」であり「粉末粒状の油脂または乳化剤の添加量が,主原料に対して,0.5?5%である」ものとは,主原料に対して,0.5?5%の油脂類である点で共通する。
(ウ)甲1発明の「水8.5kgにかん水100g,調味料100g,食塩800g及び着色料25gを溶解した練込液」は,本件特許発明1の「粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤」以外の「麺原料」と「水」に相当する。
(エ)甲1発明の「混捏,複合圧延した後に切刃#18丸,麺厚0.90mmで切出して麺線」とすることは,本件特許発明1発明の「混捏して得た混合物から麺線を作成」することに相当する。
(オ)甲1発明の「空気からなる温度80℃,風速20m/secの熱風を4分間当てることにより一次乾燥をし,その水分を24%程度に調整した後,これに空気からなる130℃の高温熱風を噴射ノズルチューブより風速55m/secで2分間噴射して二次膨化乾燥させる」ことは,本特許発明1の「熱風により,110℃以上の温度で膨化乾燥する」ことに相当する。
(カ)甲1発明の「即席中華麺の製造方法」は,本特許発明1の「即席麺の製造方法」に相当する。

そうすると,両者の間には,以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
主原料と,油脂類とを少なくとも含む麺原料と,水を混捏して得た混合物から麺線を作成し,該麺線を蒸煮し,次いで,熱風により,110℃以上の温度で膨化乾燥する即席麺の製造方法であって;且つ,前記主原料が,小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ,且つ,前記油脂類が主原料に対して,0.5?5%である即席麺の製造方法である点。

(相違点1)
油脂類が,本件特許発明1では,粉末粒状で,粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤であるのに対して,甲1発明では,パーム食用油である点。

(相違点2)
本件発明1は,「即席麺の同一製品中から任意の5本を選んで測定した際の,麺線断面積の長さ方向の標準偏差が0.3以下」(以下,「標準偏差が0.3以下」と省略して記載する。)であるのに対して,甲1発明は,麺線断面積の標準偏差について規定していない点。

そこで,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
まず,甲1発明の「パーム食用油」について検討すると,甲第1号証には,「パーム食用油」が固型状であることも粉末粒状であることも記載がないし,一般に,即席麺に用いられる油脂は,甲第4号証(上記(4b))にも記載されるように,融点30℃以上の油脂類を予め温めて溶かしておいたものを原料粉に添加して用いることから,甲1発明の「パーム食用油」は,粒子径を有するような状態で添加混合されているとすることはできない。
さて,甲第1号証(上記(1c))には,発明の課題として,麺塊の内部まで,麺線を均一に膨化発泡させ,歯ごたえがあり,復元容易な即席麺を得ることが記載されている。
そして,甲第1号証(上記(1e))には,一次乾燥について,
「一次乾燥麺の水分が20%未満では後工程で二次膨化乾燥する場合,含有水分量が不足し膨化による麺組織の多孔質化が不充分となる。27%を超えると逆に膨化発泡が進み,麺組織の多孔質化が大きく部分的膨化むらを生じ,しっかりした歯ごたえのある麺をうることができない。」,
二次膨化乾燥について,
「高温熱風の温度は120?160℃の範囲が適当である。120℃未満では膨化が不充分であり,160℃を超えると膨化による多孔質がすすみ膨化むらを生じる。」,
一次乾燥と二次膨化乾燥を併用することにより,
「二次乾燥後の麺の膨化度が1.23?1.44の所望の膨化麺をうることができる。膨化度が1.23未満の麺は調理復元不良となり,1.44を超える場合は復元後の状態が戻り過ぎ満足な食感を得ることが出来ない。」
と記載され,乾燥を上記のような二段階で行うことにより,麺線の多孔質化の大きさとむらを適度に調整し,膨化度が1.23?1.44の膨化麺を得ることが記載されているといえる。ここで,膨化度とは,「最終乾燥麺の断面積/蒸煮麺の断面積」である(上記(1g))。
以上の記載から,甲1発明は,麺線を均一に膨化発泡させ,歯ごたえがあり,復元容易な即席麺を得るために,所定の二段階乾燥を行い膨化し過ぎないように調整を行うものであるといえる。
一方,甲第2号証(上記(2a)(2d))には,製麺原料に,融点40℃以上であり,常温で固型状の粉末または粒状の食品用油脂類を添加混合して製麺後,蒸煮し,熱風乾燥または油揚乾燥した即席の早もどり麺の製造方法が記載され,粉末または粒状の食品用油脂の粒子径については,「粒径は10メッシュ,好ましくは20メッシュ以上」(上記(2d))と記載され,実施例5では,「60メッシュ」のものを用いている(上記(2j))。そして,甲第10号証によると,「10メッシュ」及び「20メッシュ」はふるいの目の開きで「1.651mm」及び「0.833mm」で,実施例で用いられた最も粒径の小さいものである「60メッシュ」は「0.246mm」であるから,いずれも,本件発明1の0.15mm以上に包含される粒径のものである。
そして,甲第2号証(上記(2f))には,粉末粒状の食品用油脂類を用いる技術的意義について,
「常温で固型状をなす食品用乳化剤および/または油脂は製めん工程でめんの表面及び内部に無数に点在し,続く蒸煮工程に於てその部分が蒸気温度により溶融,液化し,めんの表面及び内部に無数の微小孔を生じ乾燥工程後もこれが残り多孔質めんとなる。このようにして得ためんにお湯を注ぐと,多孔質のため復元性は極めて早い。」
と記載され,粉末粒状の油脂により形成される多孔質により復元性を早くすることが記載されている。
また,甲第2号証(上記(2g))の
「本発明によるめんの多孔質は従来からある膨化処理によるものではなく,又,混合工程を少なくしグルテン形成をおさえた形の多孔質ではなく,充分練り上げてあるため,めんの組織がしつかり形成されたものであり,めん本来の弾力性を主とする食味を保ったものである。」
との記載から,甲第2号証に記載された麺の製造方法は,麺原料の練り上げを充分に行うことにより,麺の組織がしっかり形成され,食べた際に麺本来の弾力性を有する麺を得るものであるといえる。
麺の乾燥方法については,甲第2号証には,熱風乾燥,油揚乾燥の何れでも良いこと(上記(2e)),実施例1では150℃の油で揚げて乾燥すること(上記(2h)),実施例2では80℃の熱風で乾燥することが記載されている(上記(2i))。そして,実施例1のような油揚乾燥の場合は,蒸煮麺内部の水分が高温の油で急速に蒸発することから,膨化による多孔質化が,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化と併せて生じていると考えられ,実施例2のような80℃の熱風加熱では,麺線内部の水分が急速に蒸発することはないため,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化が生じるものの,膨化発泡はほとんど生じていないと考えられる。
しかしながら,甲第2号証には,粉末粒状の食品用油脂類の使用により,麺線を均一に膨化発泡させすることは記載されていないし,粉末粒状の食品用油脂類を用いた麺線の膨化の状態についての評価は何らなされていない。さらに,甲第2号証だけでなく,甲第1ないし9号証,甲第19,20号証の記載事項をみても,粉末粒状の食品用油脂類を用いた麺線が均一に膨化発泡するということが,本件特許出願前に知られていたとすることもできない。
そうすると,麺線を均一に膨化発泡させ,歯ごたえがあり,復元容易な即席麺を得るために,所定の二段階乾燥を行い膨化し過ぎないように調整を行う甲1発明において,さらに,甲第2号証に記載された粉末粒状の食品用油脂類により微小孔を形成させる多孔質化を採用しようとする動機付けを見出すことはできず,甲1発明において,「パーム食用油」に代えて或いは加えて,甲第2号証に記載された「粉末または粒状の食品用油脂類」を用いることを当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

(相違点2について)
まず,本件特許発明1において「標準偏差が0.3以下」であることの技術的意義について,本件特許明細書をみると,
「【0018】
本発明の他の目的は,麺線の太さにかかわらず高温熱風乾燥の問題点であった「麺線の割れ」を解決できる即席麺,およびその製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明の更に他の目的は,調理時の熱量の少ないスナック麺においても,「生麺のごとき粘弾性」を容易に実現できる即席麺,およびその製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明者は鋭意研究の結果,固形状の油脂又は/および固形状乳化剤を,麺の主原料に添加するのみならず,得られた即席麺の麺線断面積の標準偏差を特定の範囲にコントロールすることが,麺線の「割れ」防止と,「湯戻し後の食感」とを両立させることを可能とし,上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0021】
本発明の即席麺は上記知見に基づくものであり,より詳しくは,主原料と,固形状の油脂又は/および固形状乳化剤とを少なくとも含む即席麺であって;得られた乾燥後の麺線の断面積の標準偏差が0.3以下であることを特徴とするものである。」
と記載され,高温熱風乾燥において,粉末粒状の油脂類を添加すること,及び「標準偏差が0.3以下」とすることを組み合わせて,「麺線の割れ」防止と「湯戻し後の食感」とを両立させるという課題を解決するものであり,粉末粒状の油脂類を添加と切り離して「標準偏差が0.3以下」だけの技術的意義は明らかでない。
そして,本件特許明細書には,高温熱風乾燥に,粉末粒状の油脂類を添加することを組み合わせたメカニズムについて,
「【0023】
本発明者の知見によれば,上記構成を有する本発明においては,麺原料に球状又は/および粒状の,油脂又は/および乳化剤を添加することで,蒸し工程において,麺線内部の粉末粒状油脂または粉末粒状乳化剤が溶けることにより麺線内部および麺線表面に(適度なサイズの)穴を形成することにより,続く高温熱風乾燥工程において麺線内部の水分をスムーズに蒸発させて,麺線を乾燥することが出来るために,麺線の急激な発泡を防止することが可能となると推定される。この結果,麺線の割れ防止と,湯戻し後の良好な食感の両立(更には,生産性および経済性の両立)が可能となるものと推定される。」
と記載されており,粉末粒状油脂類による穴が,高温熱風乾燥工程での麺線内部の水分蒸発を調整して急激な膨化発泡を防止すると推定でき,その結果として麺線の割れ防止と湯戻し後の良好な食感を両立した麺,つまり,「標準偏差が0.3以下」である麺が得られると考えられる。
以上のことから,高温熱風乾燥における粉末粒状油脂類の使用(相違点1)及び「標準偏差が0.3以下」の麺線であること(相違点2)は,相互に関連したものであるから,上記(相違点1について)で記載したとおり,高温熱風乾燥を用いる甲1発明において,粉末粒状油脂を用いることが当業者が容易になし得たといえない以上,高温熱風乾燥であり且つ粉末粒状油脂を用いて製造した麺線の「標準偏差が0.3」以下とすることの容易想到性は判断するまでもない。

なお,甲1発明において,粉末粒状油脂を用いることとは別に,「標準偏差が0.3以下」にすることの容易性についても一応検討する。
上記相違点1についてで記載したとおり,甲第1号証には,所定の二段階乾燥を行うことにより,麺線の多孔質化の大きさを適度に調整し,膨化度が1.23?1.44の膨化麺を得ることができることが記載されているが,麺線の膨化の均一性を示す指標といえる,麺線断面積の標準偏差については記載されていない。
そこで,甲第1号証に記載された,「最終乾燥麺の断面積/蒸煮麺の断面積」である「膨化度」により,膨化の程度だけでなく,その標準偏差についても把握できるか,甲第1号証の記載を検討する。
まず,「膨化度が1.23?1.44」について,表1をみると,「膨化度」の欄に,最も小さい実施例2で「1.23」,最も大きい実施例6で「1.44」の値が記載されており,「膨化度が1.23?1.44」は,これらを下限及び上限として範囲をとったものと考えられるから,条件がそれぞれ異なる各実施例で製造した麺塊間のバラツキはこの範囲といえるが,各実施例における麺塊中から採取した複数の麺線の膨化度のバラツキがこの範囲であるとすることはできないから,ひとつの麺塊中の標準偏差は明らかでない。
また,表1に記載された各実施例に膨化度の値に幅がないが,各実施例で任意に選択した複数本の麺線が全て同じ膨化度を示すとは到底考えられないため,複数本の麺線の膨化度の平均値であると考えられる。しかしながら,平均値を算出した基のデータは記載されておらず,膨化度の標準偏差は明らかでない。
さらに,膨化度は,その定義が「最終乾燥麺の断面積/蒸煮麺の断面積」であることからみて,蒸煮麺と乾燥麺について,同じ条件の箇所で測定する必要があり,一本の麺線の端部でのみ測定可能であるから,本件特許発明1のように1本の麺線を切断して複数箇所の測定をして平均値をとることができるものではない。
一方,請求人が平成23年11月1日付けで提出した上申書に添付された,被請求人が行った本件特許明細書の実施例の追試実験である乙第5?8号証,請求人がこれをさらに追試した実験である甲第21?23号証,油揚麺について実験した甲第24号証,及び甲第1号証の実施例1に準じた実験である甲第25号証で甲第1号証の実施例1に準じた実験の結果が,予備乾燥の有無,粉末粒状油脂の有無にかかわりなく,いずれも「標準偏差が0.3以下」の麺線が得られることが示されている。
さらに,本件特許明細書の記載をみると,比較例1?3は,いずれも粉末粒状の油脂や乳化剤を不使用の例であるが,「標準偏差」について記載がなく,標準偏差の上限値に格別な臨界的意義があるとすることはできない。
そうすると,甲第1号証には,麺線を膨化発泡させる際に,所定の条件の二段階乾燥を行うことで,麺線を均一に膨化発泡できることが記載されていることから,甲1発明において,「標準偏差が0.3以下」の即席麺を製造することに,格別の困難性があるとはいえいない。

(本件特許発明1の効果について)
本件特許発明1は,その構成により,麺線の割れを防止しつつ,湯戻し後の食感を良好にするという,本件特許明細書記載の効果を奏するものである。

以上のとおり,本件特許発明1は,甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明,及びその他の証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は,本件特許発明1において,油脂又は/および乳化剤が,球状又は/および粒状であることを特定するものであるから,本件特許発明2から,上記限定を省いた本件特許発明1が,上記「ア」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は,本件特許発明1または2において,主原料が小麦粉であることを特定するものであるから,本件特許発明3から,上記限定を省いた本件特許発明1及び2が,上記「ア」,「イ」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

エ 本件特許発明4について
本件特許発明4は,本件特許発明1?3において,麺原料が,更にエチルアルコールを含むことを特定するものであるから,本件特許発明4から,上記限定を省いた本件特許発明1?3が,上記「ア」,「イ」,「ウ」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

オ 本件特許発明5について
本件特許発明5は,本件特許発明1?4において,粉末粒状の油脂または乳化剤が,スプレークーリング法により製造されたものであることを特定するものであるから,本件特許発明5から,上記限定を省いた本件特許発明1?4が,上記「ア」,「イ」,「ウ」,「エ」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は,本件特許発明1?5において,粉末粒状の油脂または乳化剤の融点が,50?70℃であることを特定するものであるから,本件特許発明6から,上記限定を省いた本件発明1?5が,上記「ア」,「イ」,「ウ」,「エ」,「オ」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

キ 本件特許発明7について
本件特許発明7は,本件特許発明4において,チルアルコールの添加量を0.3?5%と特定するものであるから, 本件特許発明7から,上記限定を省いた本件発明4が,上記「エ」に記載したとおり,甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできないから,同様の理由で特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり,本件請求項1ないし7に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから,特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものとすることはできない。

2 無効理由2(実施可能要件)について
(1)請求人の主張の概要
本件特許明細書の表11によれば,麺線の膨らんだ部分(割れた部分)と割れていない部分をランダムに測定したデータである丸付5の標準偏差が「0.99」である以外は,全て「標準偏差を0.3以下」であり,「標準偏差を0.3以下」とするために,どのように麺を製造すればよいか,本件特許明細書に明確かつ十分に記載されていない。

(2)当審の判断
上記第2で記載したとおり,本件訂正は認められることとなり,表11に標準偏差の欄は,本件特許発明の条件を満たす,「丸付2:粉末油脂添加,乾燥条件100℃4分,120℃4分 最終水分10%」で標準偏差「0.287」あり,その他の条件は段落【0058】?【0070】に記載されており,これらの記載に基づき「標準偏差を0.3以下」の麺を当業者が製造しうるといえる。
また,乾燥条件として,110℃以上で一段階乾燥した実験例や実施例の記載はないが,乙第6号証及び乙第6号証の実験条件及び標準偏差を計算した基となるデータを記載した,乙第7,8号証からみて,110℃以上の熱風を当て,風速や時間を変えて実験を行い,所望の麺が得られる条件を決めることが,当業者が実施しえない程の試行錯誤がいるとはいえない。
したがって,「標準偏差を0.3以下」とするための麺の製造方法が,当業者がその実施をし得る程度に明確かつ十分に記載されていないとすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件特許は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから,特許法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものとすることはできない。

3 無効理由3(サポート要件及び発明の明確性)について
(1)請求人の主張の概要
本件特許明細書の表11の「標準偏差」の欄には,「不偏分散」が記載されており,本件特許発明の「標準偏差を0.3以下」について,明細書の記載にサポートがない。また,本件特許発明の「標準偏差」が,表11に「標準偏差」として示された値でないので,明確でない。

(2)当審の判断
上記第2で記載したとおり,本件訂正は認められることとなるので,本件特許発明の「標準偏差を0.3以下」は,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるし,また,本件特許発明は明確である。
また,本件特許発明の「標準偏差を0.3以下」とするために,二段階乾燥を行うことを規定しない本件発明が,サポート要件を満たすかについては,上記「2(2)」にも記載したように,110℃以上で一段階乾燥して「標準偏差を0.3以下」の麺を製造することが,実施可能であるとすることができ,本件特許明細書段落【0048】に「製造の一態様を示すが,本発明の効果がその乾燥方法に基づいて限定的に解釈されるわけでない。」と記載され,予備乾燥を行うものに限定されないことが記載され,段落【0050】には,予備乾燥後の麺塊の水分が25%を越えると,均一な発泡が困難になり,麺線内部に空洞ができ,「麺線割れ」を起こす可能が高まることが記載され,予備乾燥しない場合に麺線割れの「可能性が高まる」ことが示唆されているものの,必ずしも麺線割れを起こすとしているわけでないことから,二段階乾燥を行うことを規定しない本件発明は,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものということができ,本件特許は,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

(3)まとめ
以上のとおり,本件特許は,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから,特許法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものとすることはできない。

第7 その他の理由(審判請求書で主張しない理由)
本件審判請求書に記載された無効理由ではなが,甲第2号証を主引例とした進歩性について検討する。

1 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載事項(上記(2h)(2i))から,甲第2号証には,以下の発明が記載されている。
「小麦粉1kgに粒径が60メッシュの固型状極度硬化パーム油50gを添加し,均一に混合した後,水350ml,食塩20g,かんすい2gの混合液を加え,充分練り上げた後,常法で製めんし,めん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮し,次いで150℃のラードで2分間油揚乾燥する早もどりめん製品の製造方法。」(以下,「甲2発明A」という。)

「小麦粉1kgに固型状脂肪酸モノグリセライド20gを添加し,均一に混合した後,水350ml,食塩15g,かんすい4gの混合液を加え,充分練り上げた後,常法で製めんし,めん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮し,型枠に入れ80℃の熱風で40分間乾燥する早もどりめん製品の製造方法。」(以下,「甲2発明B」という。)

2 甲2発明Aとの対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明Aとを比較する。
(ア)甲2発明Aの「小麦粉」は,本件特許発明1の「主原料」であって,「小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ」るものに相当する。
(イ)甲2発明Aの「粒径が60メッシュの固型状極度硬化パーム油50g」は,甲第10号証によると,60メッシュは,ふるいの目の開きで0.246mmであり,主原料である小麦粉1kgに対して50g添加しているから,50g/1000gで5%の添加量であるから,本件特許発明の「粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤」であって,「主原料に対して,0.5?5%である」ものに相当する。
(ウ)甲2発明Aの「水350ml,食塩20g,かんすい2gの混合液」は,本件特許発明1の油脂又は/および乳化剤以外の「麺原料と,水」に相当する。
(エ)甲2発明Aの「充分練り上げた後,常法で製めんし,めん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮」することは,本件特許発明1の「麺線を作成し,該麺線を蒸煮」することに相当する。
(オ)甲2発明Aの「150℃のラードで2分間油揚乾燥する」ことと,本件特許発明1の「熱風により,110℃以上の温度で膨化乾燥する」こととは,高温で乾燥する点で共通する。
(カ)甲2発明Aの「早もどりめん製品」は,本件特許発明の「即席麺」に相当する。

そうすると,両者の間には,以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
主原料と,粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤とを少なくとも含む麺原料と,水を混捏して得た混合物から麺線を作成し,該麺線を蒸煮し,次いで,110℃以上の温度で乾燥する即席麺の製造方法であって;且つ,前記主原料が,小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ,且つ,前記粉末粒状の油脂または乳化剤の添加量が,主原料に対して,0.5?5%である即席麺の製造方法

(相違点1)
高温乾燥が,本件特許発明1が,110℃以上の熱風で膨化乾燥するのに対して,甲2発明Aは,50℃のラードで2分間油揚乾燥する点。

(相違点2)
本件特許発明1が,即席麺の同一製品中から任意の5本を選んで測定した際の,麺線断面積の長さ方向の標準偏差が0.3以下であるのに対して,甲2発明Aは,麺線の断面積について規定していない点。

そこで,上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
甲第2号証(上記(2f))には,粉末粒状の食品用油脂類を用いる技術的意義について,
「常温で固型状をなす食品用乳化剤および/または油脂は製めん工程でめんの表面及び内部に無数に点在するが,続く蒸煮工程に於てその部分が蒸気温度により溶融,液化し,めんの表面及び内部に無数の微小孔を生じ乾燥工程後もこれが残り多孔質めんとなる。このようにして得ためんにお湯を注ぐと,多孔質のため復元性は極めて早い。」
と記載され,粉末粒状の油脂により形成される多孔質により復元性を早くすることが記載されている。
また,甲第2号証(上記(2g))の
「本発明によるめんの多孔質は従来からある膨化処理によるものではなく,又,混合工程を少なくしグルテン形成をおさえた形の多孔質ではなく,充分練り上げてあるため,めんの組織がしつかり形成されたものであり,めん本来の弾力性を主とする食味を保ったものである。」
との記載から,甲第2号証に記載された麺の製造方法は,麺原料の混捏を充分に行うことにより,麺の組織がしっかり形成され,食べた際に麺本来の弾力性を有する麺を得るものであるといえる。
麺の乾燥方法については,甲第2号証には,熱風乾燥,油揚乾燥の何れでも良いこと(上記(2e)),実施例1では150℃の油で揚げて乾燥すること(上記(2h)),実施例2では80℃の熱風で乾燥することが記載されている(上記(2i))。そして,実施例1のような油揚乾燥の場合は,蒸煮麺内部の水分が高温の油で急速に蒸発することから,膨化による多孔質化が,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化と併せて生じていると考えられ,実施例2のような80℃の熱風加熱では,麺線内部の水分が急速に蒸発することはないため,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化が生じるものの,膨化発泡はほとんど生じていないと考えられる。
このように,甲第2号証には,油揚乾燥及び熱風乾燥のいずれも採用できることが記載されているが,粉末粒状の食品用油脂類の使用について,膨化による多孔質化を伴うと考えられる油揚乾燥において,麺線を均一に膨化発泡させるという課題は記載されておらず,さらに,粉末粒状の食品用油脂類を用いた油揚麺の麺線の膨化の程度について何ら評価していない。
一方,甲第1号証には,110℃以上の熱風による乾燥を含む二段階乾燥により,麺線を均一に膨化発泡し,歯応えがあり,復元容易な即席麺を製造する方法が記載されているが,甲第2号証には,熱風乾燥の場合は,実施例2で,80℃の熱風で40分間乾燥という,麺線内部の水分が急速に蒸発することはないため,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化が生じるものの,膨化発泡はほとんど生じていないと考えられる熱風乾燥方法が記載されるだけであり,甲第1ないし9号証,甲第19,20号証の記載事項をみても,粉末または粒状の食品用油脂類を用いた麺について,110℃以上の高温乾燥することを示唆するものはなく,甲2発明の油揚乾燥に代えて,80℃の熱風による乾燥とは多孔質化の状況が異なる,甲第1号証に記載されるような110℃以上の高温熱風による乾燥を採用することを当業者が容易になし得たこととすることはできない。

(相違点2について)
甲第2号証には,麺線断面積を均一にしようという課題及び麺線の評価については何ら記載がないから,甲2発明Aの麺線の断面積の標準偏差が,実際に0.3以下であるかどうかは別として,これを「標準偏差が0.3以下」とすることを当業者が容易になし得たとすることはできない。

したがって,本件特許発明1は,甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明,及びその他の証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は,本件特許発明1にさらに限定を付加したもののであるから,本件発明1についてと同様の理由で,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

3 甲2発明Bとの対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)甲2発明Bの「小麦粉」は,本件特許発明1の「主原料」であって,「小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ」るものに相当する。
(イ)甲2発明Bの「固型状脂肪酸モノグリセライド20g」は,固型状の乳化剤であり,小麦粉1kgに対して20g添加しているから,20g/1000gで2%の添加量であるから,本件特許発明の「粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤」であって,「主原料に対して,0.5?5%である」ものとは,固型状乳化剤であって,主原料に対して,0.5?5%である点で共通する。
(ウ)甲2発明Bの「水350ml,食塩15g,かんすい4gの混合液」は,本件特許発明1の油脂又は/および乳化剤以外の「麺原料と,水」に相当する。
(エ)甲2発明Bの「充分練り上げた後,常法で製めんし,めん線とした後,0.8kg/cm^(2)の蒸気で2分間蒸煮」することは,本件特許発明1の「麺線を作成し,該麺線を蒸煮」することに相当する。
(オ)甲2発明Bの「80℃の熱風で40分間乾燥する」ことと,本件特許発明1の「熱風により,110℃以上の温度で膨化乾燥する」こととは,熱風で乾燥する点で共通する。
(カ)甲2発明Bの「早もどりめん製品」は,本件特許発明の「即席麺」に相当する。

そうすると,両者の間には,以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
主原料と,固型状乳化剤を少なくとも含む麺原料と,水を混捏して得た混合物から麺線を作成し,該麺線を蒸煮し,次いで,熱風で乾燥する即席麺の製造方法であって;且つ,前記主原料が,小麦粉,デュラム粉,そば粉,大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ,且つ,前記乳化剤の添加量が,主原料に対して,0.5?5%である即席麺の製造方法である点。

(相違点1)
固型状乳化剤が,本件特許発明1では,粒子径0.15mm以上の粉末粒状であるのに対して,甲2発明Bでは,固型状であるものの粉末粒状であることを規定していない点。

(相違点2)
熱風乾燥が,本件特許発明1が,110℃以上の熱風で膨化乾燥するのに対して,甲2発明Bでは,80℃の熱風で40分間乾燥する点。

(相違点3)
本件特許発明1が,即席麺の同一製品中から任意の5本を選んで測定した際の,麺線断面積の長さ方向の標準偏差が0.3以下であるのに対して,甲2B発明は,麺線の断面積について規定していない点。

そこで上記各相違点について検討する。
(相違点1について)
甲第2号証には,食品用乳化剤,粉末または粒状であることが好ましく,「粒径は10メッシュ,好ましくは20メッシュ以上」と記載され,実施例4では,「30メッシュ」,実施例5?7では,「60メッシュ」のものを用いている。そして,甲第10号証によると,「10メッシュ」及び「20メッシュ」はふるいの目の開きで「1.651mm」及び「0.833mm」で,実施例で用いられた最も粒径の小さいものである「60メッシュ」は「0.246mm」であるから,いずれも,本件発明1の0.15mm以上に包含される粒径のものであるから,甲2発明Bにおいて,固型状乳化剤を,粒子径0.15mm以上の粉末粒状のものとすることに格別の困難性があるとはいえいない。

(相違点2について)
甲第2号証(上記(2f))には,粉末粒状の食品用油脂類を用いる技術的意義について,
「常温で固型状をなす食品用乳化剤および/または油脂は製めん工程でめんの表面及び内部に無数に点在し,続く蒸煮工程に於てその部分が蒸気温度により溶融,液化し,めんの表面及び内部に無数の微小孔を生じ乾燥工程後もこれが残り多孔質めんとなる。このようにして得ためんにお湯を注ぐと,多孔質のため復元性は極めて早い。」
と記載され,粉末粒状の油脂により形成される多孔質により復元性を早くすることが記載されている。
また,甲第2号証(上記(2g))の
「本発明によるめんの多孔質は従来からある膨化処理によるものではなく,又,混合工程を少なくしグルテン形成をおさえた形の多孔質ではなく,充分練り上げてあるため,めんの組織がしつかり形成されたものであり,めん本来の弾力性を主とする食味を保ったものである。」
との記載から,甲第2号証に記載された麺の製造方法は,麺原料の混捏を充分に行うことにより,麺の組織がしっかり形成され,食べた際に麺本来の弾力性を有する麺を得るものであるといえる。
麺の乾燥方法については,甲第2号証には,熱風乾燥,油揚乾燥の何れでも良いこと(上記(2e)),実施例1では150℃の油で揚げて乾燥すること(上記(2h)),実施例2では80℃の熱風で乾燥することが記載されている(上記(2i))。そして,実施例1のような油揚乾燥の場合は,蒸煮麺内部の水分が高温の油で急速に蒸発することから,膨化による多孔質化が,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化と併せて生じていると考えられ,実施例2のような80℃の熱風加熱では,麺線内部の水分が急速に蒸発することはないため,粉末または粒状の食品用油脂類による多孔質化が生じるものの,膨化発泡はほとんど生じていないと考えられる。
しかしながら,甲第2号証には,粉末粒状の食品用油脂類の使用により,麺線を均一に膨化発泡させることは記載されていないし,粉末粒状の食品用油脂類を用いた麺線の膨化の程度についての評価は何らなされていない。さらに,甲第2号証だけでなく,甲第1ないし9号証,甲第19,20号証の記載事項をみても,粉末粒状の食品用油脂類を用いた麺線が均一に膨化発泡するということが,本件特許出願前に知られていたとすることもできない。
一方,甲第1号証には,110℃以上の熱風による乾燥を含む二段階乾燥により,麺線を均一に膨化発泡し,歯応えがあり,復元容易な即席麺を製造する方法が記載されているが,甲第2発明Bは80℃の熱風で40分間乾燥という麺線内部の水分が急速に蒸発することはないため,粉末粒状の食品用油脂類による多孔質化が生じるものの,膨化発泡はほとんど生じていないと考えられる熱風乾燥方法であり,甲第2号証には,これ以外の熱風乾燥の条件は記載されていない。そして,他の証拠をみても,粉末粒状の食品用油脂類を用いた麺について,110℃以上の高温乾燥することを示唆するものはなく,甲2発明Bの80℃の熱風による乾燥に代えて,甲第1号証に記載されるような110℃以上の高温熱風による乾燥を採用することを当業者が容易になし得たこととすることはできない。

(相違点3について)
甲第2号証には,麺線断面積を均一にしようという課題及び麺線の評価については何ら記載がないから,甲2発明Bの麺線の断面積の標準偏差が,実際に0.3以下であるかどうかは別として,これを「標準偏差が0.3以下」とすることを当業者が容易になし得たとすることはできない。

したがって,本件特許発明1は,甲第2号証及び甲第1号証に記載された発明,及びその他の証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は,本件特許発明1にさらに限定を付加したもののであるから,本件発明1についてと同様の理由で,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。

第8 むすび
以上のとおり,本件請求項1ないし7に係る発明についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,特許法第36条第4項,第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから,特許法第123条第1項第2号または第4号に該当し無効とすべきものとすることはできない。
また,審判に関する費用については,特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
即席麺およびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明は、従来には達成することが出来なかった特性を有する即席麺(例えば、生麺様の太麺、もしくはうどん)、およびその製造方法に関する。
【0002】
本発明によれば、例えば、麺線の太さには実質的に影響されず「麺線の割れ」を実質的に防ぐことが可能な即席麺を得ることができる。このような即席麺は、例えば、球状又は/および粒状の油脂又は/および乳化剤を麺の主原料に添加し、高温熱風乾燥することで、好適に製造することができる。
【背景技術】
【0003】
即席麺類は、熱湯を注ぐか、あるいは短時間加熱するだけで極めて簡単に喫食可能となるという優れた即席性を有し、更には主食性、良好な保存性等をも有する点から、消費者の幅広い支持を得ている。保存性を付与するために、通常、即席麺類は麺線をα化した後に麺線を乾燥させている。この際に使用される即席麺の乾燥方法は、油揚げ乾燥方法、および非油揚げ乾燥方法に大別される。
【0004】
上記の非油揚げ乾燥方法として、一般的には、熱風乾燥やマイクロ波乾燥、フリーズドライ、寒干し乾燥等の乾燥方法が行われる。即席麺原料として小麦粉、各種澱粉等を用い、その他の添加物として、例えば、中華麺においてはかんすいを、和風麺においてはかんすいに代えて重合リン酸塩等を使用し、必要に応じて他の添加物(例えば、食塩、粉末卵、増粘多糖類、油脂類、レシチン、その他)をも添加して混捏した後、常法にて製麺し、蒸煮後に所定の乾燥方法を施すことにより、油揚げ麺および非油揚げ麺(ノンフライ麺)を得ることができる。
【0005】
他方、これらの即席麺類の喫食方法としては、鍋で煮込み調理するタイプと、熱湯を注加して調理するタイプの2つに大別される。
【0006】
前者の鍋で煮込み調理するタイプは、調理時の熱量が大きいことから、麺線内部まで速やか熱湯がいきわたり充分に澱粉粒子を膨潤することができるため、比較的弾力のある食感を実現できる。しかしながら、この煮込み調理するタイプは、「手軽さ」ないしは「屋外」等における使用という点では、熱湯を注加して調理するタイプ(以下「スナック麺」と称する)に劣る。
【0007】
これに対して、熱湯を注加して調理するタイプ(以下「スナック麺」と称する)は、上記した「手軽さ」ないしは「屋外」等における使用という点では、上記した煮込み調理するタイプに勝る。しかしながら、上記した油揚げ麺および非油揚げ麺(ノンフライ麺)のいずれの場合でも、このスナック麺においては、調理時の熱量が明らかに少なくなる傾向が避けがたい。このため、麺線内部への熱湯到達時間が長くなってしまい、麺線内部の澱粉粒子がすみやかに膨潤することができないため、通常は、麺線を平麺にし且つ薄く加工しない場合には、戻り硬い食感になり易い傾向を有する。
【0008】
ところで、昨今の消費者は、本格派志向がその流れとなっているため、即席麺類、とりわけ非油揚げ乾燥麺のスナック麺について、「生麺のごとき粘弾性」を有し且つ「生麺のようなみずみずしい食感」を実現することが望まれている。
【0009】
上記した非油揚げ乾燥麺としては、一般的に、低温熱風乾燥麺と高温熱風乾燥麺とが知られている。この低温熱風乾燥方法は、乾燥温度が100℃未満の熱風を用いるため、じっくりと緩慢に麺線の水分を乾燥することができる。そのため、麺の構造は一般的に気泡の無い緻密なものとなり、比較的弾力のある食感を再現することができる。しかしながら、麺線の構造が緻密なために、喫食時に麺線内部まで水分が浸透しにくい欠点があった。
【0010】
そこで、従来より、低温熱風乾燥方法では、麺線の復元性を高めるために小麦粉に対し各種澱粉の割合を高める方法が採られている。しかしながら、澱粉の添加量が過度に多いと復元性は向上し、みずみずしさのある食感になるが、小麦本来の粘りのある食感がうすれて、澱粉食感が強くなり「生麺のごとき粘弾性」には程遠いものとなってしまう。
【0011】
このような低温熱風乾燥方法の欠点を解消すべく考案された高温熱風乾燥方法は、乾燥温度が100℃以上、熱風の風速も10m/秒前後のため、水の沸点より高い温度にて麺線を急速に脱水乾燥する。そのため、麺の外観は乾燥により発泡した状態となり、麺の構造は油揚げ麺と同様なポーラスなものとなり、低温熱風乾燥方法と比較すると復元性の良い麺線を得ることができる。しかしながら、スナック麺タイプにおいては、調理時の熱量不足のため、ポーラスな構造に基づき、食べ応えの無いスカスカとしたものとなる傾向が強く、「生麺のごとき粘弾性」を実現することはできなかった。
【0012】
更には、従来の高温熱風乾燥方法においては、「麺線の割れ」という特有の現象が起こるという問題があった。この「麺線の割れ」とは、短時間で麺線を乾燥させたときに麺線中心部分よりも麺線表面部分の乾燥が促進され、麺線の表面部分と中心部分の水分差から麺線内部の収縮の差が起こり、麺線の中心部分に大きな空洞を生じる現象である。この「麺線の割れ」が生じると、喫食時には麺線が真中から二つに分かれてしまう現象が生ずる。更には、「麺線の割れ」が起きてしまうと著しい食感の低下を招き、見た目が悪くなる等、即席麺の商品価値が著しく損される。この「麺線の割れ」は、麺線の太さが太くなればなるほど顕著に起こる傾向があるため、従来より、即席高温熱風膨化乾燥方法においては、得られる麺線の太さが事実上制限されてしまっていた。特に、即席ノンフライうどん等を即席高温熱風膨化乾燥方法により製造することは極めて困難であった。
【0013】
加えて、前述した「麺線の割れ」現象を抑制する観点から、高温熱風乾燥方法の利点である乾燥時間の短縮には限度があった。更には、低温熱風乾燥方法と比較すると復元性の良いはずのポーラスな構造の麺線も、熱量の少ないスナック麺においては、やはり「生麺のごとき粘弾性」を実現することはできなかった。
【0014】
高温熱風乾燥方法の「麺線の割れ」対策としては、過去にいくつかの方法が提案されている。しかしながら、従来のいずれの方法においても、麺線が太くなるに従い「麺線の割れ」は起きてしまうため、完全な防止策は未だ見出されていない。
【0015】
特開昭54-86642号公報(特許文献1)には、高含水分熱風乾燥法が開示されている。この方法においては、105?180℃、2?10m/秒の加熱水蒸気を用い麺線表面からの水分の蒸発速度を抑えることで麺線の中心部を直接乾燥する。しかしながら、加熱水蒸気では麺線表面の蒸発速度を落とすことに限界があり、麺線が太くなってしまうと麺線中心部まですみやかに加熱することができないため、麺線表面部分の乾燥が促進され、前述の理由から麺線の割れが起きてしまう。また、常時加熱水蒸気を吹き付けると、麺塊が収縮してしまい乾燥不良や、喫食時のほぐれ性が悪い等の問題が起こってしまう。
【0016】
【特許文献1】特開昭54-86642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、上記した従来技術の欠点を解消できる即席麺、およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、麺線の太さにかかわらず高温熱風乾燥の問題点であった「麺線の割れ」を解決できる即席麺、およびその製造方法を提供することにある。
【0019】
本発明の更に他の目的は、調理時の熱量の少ないスナック麺においても、「生麺のごとき粘弾性」を容易に実現できる即席麺、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は鋭意研究の結果、固形状の油脂又は/および固形状乳化剤を、麺の主原料に添加するのみならず、得られた即席麺の麺線断面積の標準偏差を特定の範囲にコントロールすることが、麺線の「割れ」防止と、「湯戻し後の食感」とを両立させることを可能とし、上記目的の達成のために極めて効果的なことを見出した。
【0021】
本発明の即席麺は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、主原料と、固形状の油脂又は/および固形状乳化剤とを少なくとも含む即席麺であって;得られた乾燥後の麺線の断面積の標準偏差が0.3以下であることを特徴とするものである。
【0022】
本発明によれば、更に、主原料と、粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤とを少なくとも含む麺原料と、水を混捏して得た混合物から麺線を作成し;該麺線を蒸煮し;次いで、熱風により膨化乾燥することを特徴とする即席麺の製造方法が提供される。
【0023】
本発明者の知見によれば、上記構成を有する本発明においては、麺原料に球状又は/および粒状の、油脂又は/および乳化剤を添加することで、蒸し工程において、麺線内部の粉末粒状油脂または粉末粒状乳化剤が溶けることにより麺線内部および麺線表面に(適度なサイズの)穴を形成することにより、続く高温熱風乾燥工程において麺線内部の水分をスムーズに蒸発させて、麺線を乾燥することが出来るために、麺線の急激な発泡を防止することが可能となると推定される。この結果、麺線の割れ防止と、湯戻し後の良好な食感の両立(更には、生産性および経済性の両立)が可能となるものと推定される。
【発明の効果】
【0024】
上記構成を有する本発明によれば、麺線の太さにかかわらず、従来の高温熱風乾燥の問題点であった「麺線の割れ」を効果的に防止しつつ、湯戻し後の食感を良好にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
【0026】
(即席麺)
本発明の即席麺は、主原料と、および固形状油脂又は/および固形状乳化剤とを少なくとも含み、且つ、得られた乾燥後の麺線断面積の標準偏差が0.3以下である即席麺である。この「麺線断面積の標準偏差」は、0.15以下であることが特に好ましい。
【0027】
麺線断面積の均一性:本発明においては、「麺線の割れ」を効果的に抑制することができるため、麺線の厚みが厚い場合においても麺線断面積を均一に膨化乾燥することができる。より具体的には、麺線サンプルを長さ50cmにわたって、5cm間隔ごとに10点断面積を測定した場合に、得られた麺線断面積の標準偏差が0.3以下であることが好ましく、更には0.15以下であることが好ましい。ここに、麺線断面積は、以下の方法で好適に測定することができる。
【0028】
<麺線断面積の測定方法>
乾燥後得た各麺線(長さは各50cm程度の麺線を5cm間隔でサンプリングし10箇所を測定する)の断面積を、マイクロスコープ(CCDカメラとパーソナルコンピュータがセットになった測定装置)により麺線表面を撮影し(倍率:70倍)、それらの単純平均値を算出した。
【0029】
(膨化率の測定方法)
本発明においては、即席麺を構成する麺線の膨化率が105?170%が好ましく、更には110?150%(特に110?140%)であることが好ましい。本発明においては、後述するような「基準の麺線」を用い、測定対象たる麺線の膨化率を、この「基準の麺線」に対する相対比で表す。この「膨化率」測定においては、後述する「試験例1」の条件を用いることが好ましい。
【0030】
(高温熱風乾燥麺)
本発明の即席麺は、湯戻りの点からは、高温熱風乾燥麺であることが好ましい。ここに、「高温熱風乾燥麺」とは、その種類および製品形態に特に限定されない。本発明における「種類および製品形態」としては、例えば、中華麺、うどん、そば、パスタ等の煮込みタイプ、熱湯を注加して調理するタイプが好適に使用可能である。本発明は、調理時の熱量の少ないスナック麺タイプのうどん等の、麺線が著しく太いタイプである即席高温熱風乾燥麺において、特に製造適性および食感改良が有効である。
【0031】
(麺のサイズ)
本発明の趣旨に反しない限り、本発明の即席麺のサイズは特に制限されない。上記した「麺線の割れ」抑制が更に効果的となる点からは、本発明の即席麺は、麺線が太いタイプであることが好ましい。より具体的には、本発明においては、以下のサイズが好適に使用可能である。
【0032】
麺線の太さ:厚みは1.00?3.00mmが好ましく、更には1.30?2.50mmが好ましい。
【0033】
麺線の断面形状:特に制限されない。すなわち、断面が円形でもよく、また楕円、偏平形、平麺等の他の形状でも構わない。本発明においては、平麺等の偏平な(すなわち、厚さが薄い)形状でない場合でも、「麺線の割れ」を効果的に抑制することができる。
【0034】
(麺の材料)
本発明においては、麺の材料は、特に制限されない。すなわち、従来より即席麺の製造に使用されている材料を特に制限無く使用することができる。より具体的には、例えば、社団法人 日本即席食品工業協会監修「新・即席めん入門」第52?62頁に記載されている主原料、副原料を、本発明において使用することができる。
【0035】
(主原料)
本発明において使用可能な主原料としては、例えば、小麦粉、デュラム粉、そば粉、大麦粉、澱粉等が挙げられる。中でも、好適な使用可能な主原料としては、例えば、
小麦粉ではASW(オーストラリア産白色中間質小麦、蛋白質10%前後)、HRW(アメリカ産赤色硬質小麦、蛋白質11%前後)、澱粉では、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、ワキシーコーンスターチ、コーンスターチ、小麦澱粉などで良く、また、これらを原料として得られるエーテル化工澱粉、エステル化工澱粉、架橋化工澱粉、酸化工澱粉等
が挙げられる。
【0036】
(副原料)
本発明において使用可能な副原料としては、例えば、かんすい、リン酸塩、塩、増粘多糖類、卵、グルテン等
が挙げられる。
【0037】
(油脂又は/および乳化剤)
次に、本発明に使用可能な油脂又は/および乳化剤について説明する。「麺線割れ」防止の効果の点からは、この油脂又は/および乳化剤は、球状又は/および粒状であることが好ましい。
【0038】
(球状又は/および粒状)
本発明に用いる油脂又は/および乳化剤において、「球状および粒状」とは、該油脂または乳化剤の粒子形状が、縦、横、厚みの大きさが比較的均等なことを言う。「麺線割れ」防止の効果の点からは、油脂または乳化剤の粒子径が0.15mm以上であることが好ましく、更には0.20mm以上(特に0.25mm以上)であることが好ましい。本発明において、油脂または乳化剤の粒子径は、下記の方法により好適に測定することができる。
【0039】
<粒子径の測定方法>
音波振動式全自動フルイ分け粒度分布測定器ロボットシフターRPS-85(株式会社セイシン企業)を使い、音波ふるい方式で粒子径を自動測定した。
【0040】
(油脂または乳化剤の具体例)
本発明に使用可能な油脂または乳化剤の種類は、特に限定されない。すなわち、従来より食品ないし即席麺一般に使用されている各種の油脂または乳化剤から、適宜選択して(必要に応じて、複数種類を組み合わせて)使用することができる。
【0041】
上記した油脂の種類としては、例えば、ラード、パーム油、大豆油、ヤシ油、ひまわり油、綿実油、コーン油、米ぬか油、菜種油、ごま油等を挙げることができる。それぞれ常法にしたがって水素添加を行うこと等により、油脂の融点を適宜コントロールすることが出来る。
【0042】
上記した乳化剤としては、モノグリ、シュガーエステル、有機酸モノグリ、ポリグリエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル等を挙げることができる。
【0043】
(油脂ないし乳化剤の製造方法)
本発明において使用可能な油脂ないし乳化剤の製造方法は特に制限されない。使用可能な方法としては、スプレークーリング方式、スプレードライ方式、ドラムドライ方式等が挙げられるが、本発明の効果の効率性の点からは、スプレークーリング方式がより好ましい。スプレークーリング方式は、油脂又は乳化剤を溶解し冷却塔(チラー)の中へ噴霧することで、粒子径が0.15mm以上の球状又は粒状の油脂又は乳化剤を比較的簡単に得ることが出来る。
【0044】
スプレードライ方式により得られる粉末油脂および粉末乳化剤は粒子径が小さく(通常得られる粒子径で0.03mm程度)であるため、粒子径0.15mm以上にすることは、上記のスプレークーリング方式と比較すれば、やや難しい可能性がある。
【0045】
また、ドラムドライ方式は、粒子径(厚み)が0.15mm以上のものを得ようとすると得られる形状が比較的大きなフレーク状になってしまう傾向がある。このため、球状又は粒状の油脂又は乳化剤を形成するためには、ミル等の粉砕機を使い2次加工が必要な場合があり、粒子の形状および大きさにバラツキが生じたり、歩留まりが悪くなる等、製造コストが高くなる可能性がある。
【0046】
(麺の製法)
本発明においては、上記した即席麺の製造方法は特に制限されない。例えば、主原料(例えば、小麦粉)と、粒子径0.15mm以上の球状又は/および粒状の、油脂又は/および乳化剤を少なくとも含む麺原料と、水とを混捏してドウを作成し、該ドウを製麺して麺線とし、該麺線を蒸煮した後、熱風により膨化乾燥することにより、即席麺を製造することが好ましい。
【0047】
(製造方法の一態様)
本発明の一態様においては、即席高温熱風乾燥麺は、主原料である小麦粉に配合し、必要により澱粉、食塩、かんすい、増粘多糖類の副原料を添加し、混捏して複合製麺した後、切刃にて麺線を切りだして生麺線とする。この生麺線を連続的に蒸しゃ又は茹で処理を行った後、乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、その後、高温熱風乾燥処理することにより麺線を膨化乾燥し目的とする麺線を得ることができる。
【0048】
(即席高温熱風乾燥麺の製造の一態様)
以下に、即席高温熱風乾燥麺の製造の一態様を示すが、本発明の効果がその乾燥方法に基づいて限定的に解釈されるわけではない。即席高温熱風乾燥麺は通常、麺線の急激な発泡を防ぐため麺線の水分を15%?25%に調整する予備乾燥と、予備乾燥された麺線を発泡乾燥させる本乾燥の2つの工程に大きく分けることができる。
【0049】
(予備乾燥工程)
本発明においては、麺線を好ましくは温度80?115℃(更に好ましくは95?105℃)、好ましくは風速1?10m/s(更に好ましくは3?5m/s)に調整された熱風により、麺塊の水分を好ましくは15%?25%に調整しておくことが好ましい。このような条件を採用することにより、高温高速熱風による本乾燥時に麺線中心部分をすみやかに効率良く乾燥することができ、急激な発泡を防ぐことができる。
【0050】
麺塊の水分が25%を越えると、本乾燥時に麺線の急激な発泡を防ぐことが難しくなって均一な発泡を行うことが困難となり、麺線内部において大きな空洞や麺線の割れを起こす可能性が高まる。他方、水分が15%未満であると、本乾燥において麺線の発泡が起こりにくい傾向が生ずる。
【0051】
乾燥温度が80℃未満であると乾燥効率が悪く、乾燥時間が長くなる傾向がある。他方、乾燥温度が115℃を越えると緩慢な乾燥が難しくなり、麺線の発泡が始まってしまって、均一な発泡麺を得ることが困難となる傾向がある。
【0052】
乾燥時の風速が1m/s未満であると麺塊中を良好に通気することが困難となって、予備乾燥にムラを生じてしまう傾向が生ずる。他方、該風速が10m/sを越えると麺塊が型枠の上部又は下部に押しつけられて、結果麺塊が粗の状態にならずに均一な予備乾燥が困難となる傾向を生ずる。このために、乾燥ムラを生じ、喫食時の麺線のほぐれも悪くなってしまう傾向を生ずる。
【0053】
(本乾燥段階)
本発明においては、好ましくは温度110?145℃(更に好ましくは115?135℃)、好ましくは風速5?25m/s(更に好ましくは8?20m/s)に調整された熱風により麺線を乾燥させることが好ましい。本乾燥段階の所要時間としては、2?4分間乾燥させ、麺中の水分を7?14%にしながら麺線を発泡乾燥することが好ましい。
【0054】
この乾燥工程は、高温、高速の熱風により一気に麺中の水分を蒸発する工程である。その急激な蒸発により、麺の発泡状態を形成させる。ここで、温度が110℃未満であると発泡が起こり難くなる。他方、温度が145℃を越えると部分的に麺線に焦げを生じて商品価値を損なう傾向がある。風速が5m/s未満であると乾燥効率が悪くなる傾向がある。他方、風速が25m/sを越えると、工業的観点からエネルギー消費が増大する傾向がある。
【0055】
(エチルアルコール添加)
本発明においては、必要に応じて、麺原料に対してエチルアルコールを添加してもよい。このようにエチルアルコールを添加した場合には、更に、調理時の熱量の少ないスナック麺においても、「生麺のごとき粘弾性」を有する食感をも合わせて得られるという効果を得ることができる。このような追加的な効果は、本発明者の知見によれば、エチルアルコールをあわせて添加することで、エチルアルコールがグルテンの生成を抑制し、熱湯注加時においてすみやかに熱湯が麺線内部に浸透することが出来、澱粉粒がすみやかに膨潤することができるために、調理時の熱量の少ないスナック麺においても、「生麺のごとき粘弾性」を有する食感を得ることが出来るものと推定される。
【0056】
本発明に使用可能なエチルアルコールの製造方法は、特に限定されず、またエチルアルコールの添加方法も特に制限されない。例えば、アルコール水溶液もしくは粉末アルコール等その形態において添加することができる。エチルアルコールの濃度も特に限定されないが、エチルアルコール添加効果の点からは、添加すべきエチルアルコール濃度を100%として換算した場合、麺原料に対して0.3%?5%の添加量が好ましく、麺原料に対して0.5%?3%の添加量が更に好ましい。
【0057】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0058】
試験例1
(粉末油脂練りこみ試験)
下記の試験により、粉末油脂練りこみによる効果を確認した。
【0059】
<麺線の製造>
処方:小麦粉(ASW、蛋白10%)7kg、タピオカ澱粉(松谷化学工業(株)桜)3kg、食塩100g、リン酸塩20g、水3500ml
【0060】
乾燥前の条件:切り刃 10番角、麺厚1.5mmの麺線を0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填し乾燥した。
【0061】
油脂添加の条件:以下の4種類の条件を用いた。
(1)粉末油脂無添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
【0062】
(2)粉末油脂添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
【0063】
(3)粉末油脂無添加(乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)
(4)粉末油脂添加(乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)
【0064】
<水分の測定>
水分の測定は、以下のようにして行った。
電気乾燥機:ヤマト科学(株) 商品名:DN?41
得られた麺線2gを電気乾燥機で105℃、2時間乾燥させ、乾燥前後の重量差により水分量を測定する。
【0065】
<麺線の断面積測定>
上記により得た各麺線(長さは各20?30cm程度;1つの条件について、それぞれ(a)?(e)の5バッチ)の断面積を、マイクロスコープ(CCDカメラとパーソナルコンピュータがセットになった測定装置)により麺線表面を撮影し(倍率:70倍)、それらの単純平均値を算出した。この際に使用した断面積測定条件は、以下の通りであった。
【0066】
<断面積測定条件>
マイクロスコープ:商品名デジタルHDマイクロスコープVH-7000、(株)キーエンス社製
CCDカメラの画像をPC(パーソナルコンピュータ)に取り込み、該PCのモニタ上で測定すべき麺線の画像の外周を20点程度プロットし、該PCにより自動的に断面積を計算させた。
【0067】
なお、条件(1)によるサンプルにおいては、麺線に「割れ」が入ったため、この断面積測定は、「割れている」箇所を選んで測定した。得られた測定結果を、以下の表1に示す。
【0068】
表1:麺線の断面積の測定結果(単位mm^(2))
【表1】

【0069】
上記表1に示すように、条件(1)(油脂無添加・高温乾燥)と、(2)(油脂添加・高温乾燥)との比較から、高温乾燥麺の麺の断面積は、粉末油脂添加によって低下することが理解されよう。すなわち条件(2)では、発泡が抑えられている。また、条件(1)は、急激な発泡を起こしているため、麺線中心部分から2つに割れた状態(商品的には、実質的に無価値である)になり、断面積もその分、大きな値となっている。
【0070】
他方、条件(3)(油脂無添加・低温乾燥)と、条件(4)(油脂添加・低温乾燥)を比較した場合、低温乾燥においては、麺線の断面積は粉末油脂の添加、無添加に実質的に関係無いことが理解されよう。
【0071】
試験例2
(膨化率の算出)
上記表1に示した麺線の断面積測定結果から、膨化率を算出した。条件(3)、(4)のサンプルは実質的に同一と見て、これら条件(3)、(4)のサンプルの算術平均値を基準とし、条件(1)および(2)のサンプルの膨化率を、基準に対する相対断面積で求めた。結果は、以下の通りであった。
【0072】
条件(1):181.5%
条件(2):123%
条件(3)ないし(4):100%
膨化率としては、110?150%程度が良好であった。条件(1)によるサンプル(従来品)の膨化率=181.5%という数字は、中身が「スカスカ」であって割れていることを示すものである。
【0073】
試験例3
(麺線の切断強度の測定)
喫水容量540mLのポリスチレンカップ(厚木プラスチック株式会社製)に、その切断強度を測定すべき麺線のサンプル60gを入れ、更に該ポリスチレンカップに100℃の温湯を喫水線まで入れて、素早くアルミ箔で蓋をして6分間そのまま放置した。蓋を取って麺線を割り箸を用いてほぐし、「湯戻し後の時間」の計測を開始した。この際、時間の計測手段としては、セイコーエスヤード社製、商品名セイコーストップウォッチS052のストップウオッチを用いた。
【0074】
該ストップウオッチにより正確に2分間(120秒間)カウントした後、素早く湯を麺線から分離して、該麺線の切断強度をレオメータで測定した。
【0075】
<切断強度の測定条件>
レオメータ:不動工業株式会社製、商品名NRM-2010J-CW
麺線4本をプレート上に乗せ、ピアノ線をもちいて切断強度を測定し、平均値を算出する。
【0076】
上記により得られた測定結果を、図1のグラフに示す。
上記の結果より、条件(1)によるサンプルにおいては、麺線が2つに割れてしまっているため湯戻りは非常に良い値になっていたが、非常に食感のバラツキがあった。すなわち、条件(1)によるサンプルにおける「切断強度」100g程度では、該サンプルが割れてしまって食感が悪く、また商品価値も無いものであった。
【0077】
条件(3)および条件(4)のサンプルによる結果を、条件(2)によるサンプルと比較すれば、粉末油脂を練りこむことで、湯戻りが良くなることが理解されよう。また、条件(2)は、条件(4)より更に湯戻りが良くなり、更には麺線の割れが抑えられているため食感のバラツキも無く、食べ応えのあるものとなっていた。
【0078】
上記により測定した切断強度は、100?140g程度が、即席麺として適当であった。該切断強度が150gを越えると、「硬い」感じがした(なお、上記の実験は、本発明の効果を明確にするために設定した条件下で行ったため、レオメーターの値は通常の値(既存製品では、約150前後)に比べ高い値となっている)。
【0079】
試験例4
(各種油脂の比較試験)
油脂または乳化剤の形状および大きさの違いによる効果を確認するために、下記の表2に示す(1)から(10)の各種油脂の比較試験を行った。油脂の原料としてはパーム油(融点50℃)に統一し、製造方法の違いによる油脂の形状および大きさの違いによる「麺線の割れ」に対する効果を確認した。
【0080】
ここで得られた結果を、以下に示す。
【0081】
表2:試験において使用した油脂の形状および大きさ
【表2】

【0082】
(試験方法A)
小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対し上記(1)から(10)の各種油脂15gをそれぞれ混合し、リン酸塩3g、食塩10gを320mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.60mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填した。その後温度100℃、風速1m/sに調整して、予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分9%の煮込みタイプの即席和風麺70gを得た。得られた結果(油脂形状および大きさの違いによる効果)を、下記の表3に示す。
【0083】
表3:油脂形状および大きさによる「麺線の割れ」に対する効果
【表3】

【0084】
なお、表中の記号「○」、「△」および「×」の判断基準は、以下の通りである。
○:無し(目視で麺線断面を観察した場合に、「麺線の割れ」が得られた麺70gに対して1箇所も認められない)
△:少しあり(目視で麺線断面を観察した場合に、「麺線の割れ」が得られた麺70gに対して1%から1割程度まで認められた)
×:あり(目視で麺線断面を観察した場合に、「麺線の割れ」が得られた麺70gに対して1割以上認められた)
【0085】
表3の結果より、本発明においては、粉末油脂の形状および大きさが本発明の効果に影響を与えることが理解できよう。粉末油脂の形状に関しては、棒状、フレーク状の形状よりも、球状の形状であることが好ましかった。球状の形状を有する粉末油脂においては、粒子径が0.15mm以上のもので本発明の効果が得られた。すなわち、この実験においては、スプレークーリング方式により得ることの出来る粒子径0.15mm以上の球状の油脂が、即席高温熱風膨化乾燥方法における「麺線の割れ」を完全に防止することができ、本発明において最も好ましいことが判明した。
【0086】
試験例5
(麺線の割れ)
油脂の添加量における「麺線の割れ」に対する発明の効果を示すべく上記の(10)の条件(スプレークーリング方式による粉末油脂、球状、粒子径 0.3mm)を用いて、添加量試験を行った。試験方法は、前記した「試験方法A」に基づいて行った。
【0087】
ここで得られた結果を、以下に示す。
【0088】
表4:油脂の添加量による「麺線の割れ」に対する効果
【表4】

【0089】
上記した表4中、表中の記号「○」、「△」および「×」の判断基準は、以下の通りである。
【0090】
<麺線の割れ>
前記した「表3」におけると同様である。
<製麺適性>
○:製麺適性良い。つながり良好。
△:製麺適性やや良い。麺帯が切れやすくなる。
×:製麺適性悪い。麺帯が切れる。
表4より、油脂の添加量に関して、0.6%以上の添加量で良好な「麺線の割れ」防止効果が得られる。他方、添加量が多くなりすぎると食感が粉っぽくなり、また麺線が切れ易くなる等、製麺適性が低下する傾向が生ずる。すなわち、この試験によれば、食味食感および製麺適性を考慮して効果を得るためには0.6%?5%の油脂の添加量が好ましく、1.5?3%の添加量が更に好ましかった。
【0091】
試験例6
油脂および乳化剤の融点の違いによる「麺線の割れ」に対する効果を確認するために、以下のA?Iの各種油脂および乳化剤を比較試験した。試験方法は、前記した「試験方法A」に基づき、各油脂又は乳化剤15gを以下のA?Iの各種油脂および乳化剤とし、それぞれ比較試験を行った。ここで得られた結果を、以下に示す。
【0092】
表5:A?Iの各種油脂および乳化剤
【表5】

【0093】
表6:油脂および乳化剤の融点の違いによる「麺線の割れ」に対する効果
【表6】

【0094】
上記した表4中、表中の記号「○」、「△」および「×」の判断基準は、以下の通りである。
【0095】
<麺線の割れ>
前記した「表3」におけると同様である。
上記の表6より、形状がペースト状および液体でなければ(換言すれば、球状であれば)融点の違いは「麺線の割れ」に対する効果に実質的に影響を与えないことが理解できよう。
【0096】
試験例7
粉末状の油脂又は乳化剤であるサンプルC、D、F、G、Hについて、融点の差における麺線に対する食感の差を確認すべく試験を行った。ここでは、食感の差が分り易い、調理時の熱量が少ないタイプ(熱湯を注加して調理するスナックタイプ)の即席高温熱風膨化乾燥麺において比較試験を行った。ここで用いた試験方法は、以下の通りである。
【0097】
小麦粉700g、タピオカ澱粉100g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られたC、D、F、G、Hの各種油脂又乳化剤それぞれ15gを混合し、リン酸塩3g、食塩10gに配合したドウを330mlの加水量で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.6mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填した。その後、温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て、最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0098】
ここで得られた結果を、以下に示す。
【0099】
表7:油脂の融点の差における麺線に対する食感の差
【表7】

【0100】
上記した表7の結果より、融点が70℃を超えてしまうと、食感が粉っぽくなる傾向があった。すなわち、融点が高すぎると澱粉の膨潤を阻害する働きが強くなり、調理時の熱量が少ない熱湯を注加して調理するタイプの即席高温熱風乾燥麺においては、戻りきっていない、粉っぽい食感になってしまうと推定される。
【0101】
すなわち、熱湯を注加して調理するタイプの即席高温熱風乾燥麺においては、油脂等の融点が高くなり過ぎないよう注意すべきである。
【0102】
試験例8
(エチルアルコールの添加)
小麦粉700g、タピオカ澱粉200g、馬鈴薯澱粉100gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点50度のパーム油18gを混合しリン酸塩3g、食塩10gに配合したドウを350mlおよびエチルアルコール(濃度70%)20gの加水量で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.6mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0103】
ここで得られた結果を、以下に示す。
【0104】
表8:エチルアルコールを併せて添加したときの食感の差
【表8】

【0105】
表8より、エチルアルコールを添加することにより、明らかに喫食事の食感が良くなっていることが理解できよう。
【0106】
試験例9
(エチルアルコールの添加量の差による効果)
エチルアルコールの添加量を変えて試験をした以外は、試験例8と同様に実験を行った。
【0107】
ここで得られた結果を、以下に示す。
【0108】
表9:エチルアルコールの添加量の差における食感の差
【表9】

【0109】
○:みずみずしく調理感有る
△:ややみずみずしく調理感有る
×:スカスカしてよくない
表9より、エチルアルコールの添加量は、0.3%以上で良好な効果が得られ、0.5%?3%が更に好ましかった。他方、添加量が3%を超えてしまうと、アルコール臭が強くなる傾向があった。
【0110】
試験例10
添加するエチルアルコール水溶液の種類の差を確認すべく、試験例9の試験方法において、エチルアルコール(濃度70%)20gを、以下の(1)から(4)の各種エチルアルコール水溶液もしくはエチルアルコール含有の発酵調味料もしくは日本酒に置き換えて比較試験を行った。エチルアルコールの濃度が共通になるように、添加量を変えて試験をした。
【0111】
ここで得られた結果を、以下に示す。
(1)コントロール(エチルアルコール無添加)
(2)エチルアルコール水溶液(濃度90%) 15.5g
(3)エチルアルコール水溶液(濃度70%) 20g
(4)発酵調味料(エチルアルコール50%) 28g
(5)日本酒(エチルアルコール15%) 93g
【0112】
表10:エチルアルコール水溶液のエチルアルコール濃度の差における優位差
【表10】

【0113】
○:みずみずしく調理感有る
△:ややみずみずしく調理感有る
×:スカスカしてよくない
表10より、エチルアルコール水溶液の種類の差は殆どなく、小麦粉に対するエチルアルコールの濃度が同じならば効果が充分に期待できることが判明した。すなわち、エチルアルコールを添加する原料としては、エチルアルコール水溶液の他、発酵調味料、酒精等その形態は特に限定されず、添加するエチルアルコールの添加量が重要であることが理解できよう。
試験例11
(試験例のサンプル粉末油脂練りこみデータ-)の麺について標準偏差データを取った。結果を下記の表11に示す。
【表11】

(1)粉末油脂無添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
(2)粉末油脂添加(乾燥条件100℃4分 120℃4分 最終水分10%前後)
(3)粉末油脂無添加(乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)
(4)粉末油脂添加(乾燥条件85℃50分 最終水分10%前後)(1):麺線の膨らんだ部分(割れている部分)のみを測定した場合のデータ(2):麺線の割れは無い(3):発泡は温度条件上起きないので割れも無い(4):発泡は温度条件上起きないので割れも無い(5):麺線の膨らんだ部分(割れている部分)と割れていない部分をランダムで測定した場合のデータ
【0114】
実施例1
小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点62度の粉末球状パーム油15g(粒子径0.3mm)を混合し、リン酸塩3g、食塩10gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.60mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分9%の煮込みタイプの即席和風麺70gを得た。
【0115】
ここで製造した麺の縦断面の組織的構造マイクロスコープ写真(倍率:70倍)を、図2に示す。
【0116】
実施例2
小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点62度の粉末球状パーム油15g(粒子径0.3mm)を混合し、リン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.60mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分9%の煮込みタイプの即席和風麺70gを得た。
【0117】
実施例3
小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点62度の粉末球状乳化剤(有機酸モノグリセリン)15g(粒子径0.3mm)を混合し、リン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.60mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分9%の煮込みタイプの即席和風麺70gを得た。
【0118】
実施例4
小麦粉700g、タピオカ澱粉100g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点55の粉末球状パーム油15g(粒子径0.2mm)を混合しリン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gに配合したドウを350mlの加水量で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.20mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0119】
実施例5
小麦粉700g、タピオカ澱粉100g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点60度の粉末球状菜種油15g(粒子径0.3mm)を混合しリン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.20mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0120】
実施例6
小麦粉700g、タピオカ澱粉100g、馬鈴薯澱粉200gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点58度の粉末球状乳化剤(モノグリセリン)15g(粒子径0.2mm)を混合しリン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.20mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0121】
実施例7
小麦粉650g、馬鈴薯澱粉350gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点70度の粉末球状乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)15g(粒子径0.3mm)および融点68度の粉末球状菜種油(粒子径0.2mm)を合わせて混合し、リン酸塩3g、食塩10g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを350mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:8角、麺厚:1.6mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分9%の煮込みタイプの即席和風麺70gを得た。
【0122】
実施例8
小麦粉700g、タピオカ澱粉300gの粉原料に対しスプレークーリング方式により得られた融点58度の粉末球状乳化剤(モノグリセリン)15g(粒子径0.2mm)を混合しリン酸塩3g、食塩10g、調味料(エチルアルコール50%配合品)25gを330mlの水に溶解したコネ水で混捏し、製麺した後、切刃:10角、麺厚:1.20mmで切りだし連続的に0.5kg/cm^(2)で3分間蒸煮した後、麺重100gに裁断した蒸し麺を乾燥用型枠に充填する。その後温度100℃、風速1m/sに調整してある予備乾燥段階を4分行い水分を24%に調整した後、温度120℃、風速12m/sに調整してある本乾燥段階2分を経て最終水分10%の熱湯注加タイプの即席和風麺70gを得た。
【0123】
比較例1
実施例1の配合成分である融点62度の粉末球状パーム油15gを不使用とした以外は、実施例1と同じ条件で即席麺を得た。
【0124】
ここで製造した麺の縦断面の組織的構造マイクロスコープ写真(倍率:70倍)を、図3に示す。
【0125】
比較例2
実施例2の配合成分である融点62度の粉末球状パーム油15g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用とした以外は、実施例2と同じ条件で即席麺を得た。
【0126】
比較例3
実施例3の配合成分である融点62度の粉末球状乳化剤(有機酸モノグリセリン)15g、エチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用とした以外は、実施例3と同じ条件で即席麺を得た。
【0127】
比較例4
実施例4の配合成分である融点55の粉末球状パーム油15gおよびエチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用としとした以外は、実施例4と同じ条件で即席麺を得た。
【0128】
比較例5
実施例5の配合成分である融点60度の粉末球状菜種油15gおよびエチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用とした以外は、実施例5と同じ条件で即席麺を得た。
【0129】
比較例6
実施例6の配合成分である融点58度の粉末球状乳化剤(モノグリセリン)15gおよびエチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用とした以外は、実施例6と同じ条件で即席麺を得た。
【0130】
比較例7
実施例7の配合成分である融点70度の粉末球状乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)15gおよび融点68度の粉末球状菜種油およびエチルアルコール水溶液(70%)20gを不使用とした以外は、実施例7と同じ条件で即席麺を得た。
【0131】
比較例8
実施例8の配合成分である融点58度の粉末球状乳化剤(モノグリセリン)15gおよび調味料(エチルアルコール50%配合品)25gを不使用とした以外は、実施例8と同じ条件で即席麺を得た。
【0132】
下記表11に、調理方法が煮込みタイプである実施例1から3の評価を示す。
表11:実施例の評価
【0133】
【表12】

【0134】
表11より、麺線の太さに関わらず、比較例と比べて、本発明による実施例が明らかに麺線の割れを無くすことができることが理解されよう。更に、エチルアルコールをあわせて添加した場合には、調理方法が煮込みタイプの麺においても、生麺のような粘弾性を有し、みずみずしさも付与した食感をも合わせて得られることが理解されよう。
【0135】
表12に調理方法が熱湯注加タイプである実施例4から8の評価を示す。
表12:実施例の評価
【0136】
【表13】

【0137】
表12より、麺線の太さに関わらず、比較例と比べて、本発明による実施例が明らかに麺線の割れを無くすことができることが理解されよう。更に、エチルアルコールをあわせて添加した場合には、調理方法が調理時の熱量が少ない熱湯注加タイプにおいても、生麺のような粘弾性を有し、みずみずしさも付与した食感をも合わせて得られることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】種々の麺線の「湯戻し」後の切断強度を示すグラフである。
【図2】実施例1により製造した麺の縦断面の組織的構造マイクロスコープ写真(倍率:70倍)である。
【図3】比較例1により製造した麺の縦断面の組織的構造マイクロスコープ写真(倍率:70倍)である。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主原料と、粒子径0.15mm以上の油脂又は/および乳化剤とを少なくとも含む麺原料と、水を混捏して得た混合物から麺線を作成し、
該麺線を蒸煮し、次いで、
熱風により、110℃以上の温度で膨化乾燥する即席麺の製造方法であって;且つ、
前記主原料が、小麦粉、デュラム粉、そば粉、大麦粉および澱粉からなる群から選ばれ、
前記即席麺の同一製品中から任意の5本を選んで測定した際の、麺線断面積の長さ方向の標準偏差が0.3以下であり、且つ、
前記粉末粒状の油脂または乳化剤の添加量が、主原料に対して、0.5?5%であることを特徴とする即席麺の製造方法。
【請求項2】
前記油脂又は/および乳化剤が、球状又は/および粒状である請求項1に記載の即席麺の製造方法。
【請求項3】
前記主原料が小麦粉である請求項1または2に記載の即席麺の製造方法。
【請求項4】
前記麺原料が更にエチルアルコールを含む請求項1?3のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項5】
前記粉末粒状の油脂または乳化剤がスプレークーリング法により製造されたものである請求項1?4のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項6】
前記粉末粒状の油脂または乳化剤の融点が50℃?70℃である請求項1?5のいずれかに記載の即席麺の製造方法。
【請求項7】
前記エチルアルコールの添加量が主原料に対して、0.3?5%である請求項4に記載の即席麺の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2011-12-01 
結審通知日 2011-12-05 
審決日 2011-12-16 
出願番号 特願2004-317997(P2004-317997)
審決分類 P 1 113・ 537- YA (A23L)
P 1 113・ 536- YA (A23L)
P 1 113・ 121- YA (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上條 肇  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 ▲高▼岡 裕美
齊藤 真由美
登録日 2011-01-28 
登録番号 特許第4671663号(P4671663)
発明の名称 即席麺およびその製造方法  
代理人 戸田 俊材  
代理人 永坂 友康  
代理人 小林 良博  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 胡田 尚則  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 古賀 哲次  
代理人 吉井 一男  
代理人 小谷 悦司  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 吉井 一男  
代理人 永坂 友康  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 小林 良博  
代理人 胡田 尚則  

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