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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01F
審判 全部無効 2項進歩性  B01F
管理番号 1271345
審判番号 無効2010-800234  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-16 
確定日 2013-02-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3682195号「ロータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置」の特許無効審判事件についてされた平成23年8月3日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成23年(行ケ)第10285号平成24年1月10日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3682195号特許(以下「本件特許」という)は、平成12年1月18日の出願(特願2000-8670号)であって、平成17年5月27日に特許権の設定登録があり、その後、請求人であるエス・イー・エンジニアリング株式会社より、その特許請求の範囲第1乃至3に係る発明について、特許無効審判が請求されたものである。
本件特許無効審判における経緯は次のとおりである。
平成22年12月16日 無効審判請求(請求人)
平成23年 3月30日 上申書の提出(被請求人)
同年 6月10日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同年 6月27日 同 (請求人)
同年 7月12日 口頭審理
同年 8月 3日 審決(請求成立)
同年 9月 6日 審決取消訴訟の提起
(平成23年(行ケ)第10285号)
同年10月31日 訂正審判の請求
(訂正2011-390121)
平成24年 1月10日 審決取消しの決定(差戻し決定)
平成24年 1月12日 訂正請求のための期間指定通知
平成24年 2月15日 上記訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書を援用するみなし訂正請求

第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
被請求人は平成24年1月12日付け期間指定通知(指定期間30日)に対して訂正請求をしなかったので、被請求人が行った平成23年10月31日付けの訂正審判請求(訂正2011-390121)は、特許法第134条の3第5項の規定により、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書を援用した、指定期間の末日になされた、訂正請求とみなし、特許第3682195号に係る明細書(以下「本件特許明細書という)を訂正するものである。
そして、その内容は以下のとおりである(以下「本件訂正」という)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、冒頭の「長杆の先端」の前に次の特定事項を加入するものである。
「有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、前記ロータリー式攪拌機用のパドルであって、」
なお、特定事項の冒頭部分の「有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に」については、みなし訂正請求書の「6.(3)訂正事項」に掲げられた訂正事項1からは欠落しているが、「(4)訂正の原因」及び添付された訂正明細書の記載から判断すると、誤記であると解されるので、上記のとおり判断する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、
最終行の「特徴とするオープン式発酵処理装置。」について、「特徴とし、しかもまた、次のX及びYの各特徴をさらに備えるオープン式発酵処理装置。」とするとともに、次の特定事項を加入するものである。
「X 大容積のオープン式発酵槽は、日を改めて投入する有機質廃物について、少なくとも複数日にわたるものをすでに投入したものとは別の空いた領域に経時的に投入することができるだけの面域を備えること。
Y 前記ロータリー式攪拌機及び前記長尺壁は、前記有機質廃物の堆積高さを高温発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、冒頭に次の特定事項を加入するものである。
「請求項2に記載のオープン式発酵処理装置において、」

2 本件訂正についての当審の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1の訂正内容は、「長杆の先端」の前に、特定構造のオープン式発酵処理装置のロータリー式攪拌機用のパドルである旨特定事項を加入するもので、これにより「パドル」の用途及びオープン式発酵処理装置への設置形態が特定された。このため、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2の訂正内容は、「オープン式発酵処理装置」について、「長尺広幅な面域」における長尺広幅の程度を特定し、「ロータリー式攪拌機及び長尺壁」の高さを特定するものである。このため、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3の訂正内容は、「オープン式発酵処理装置」について、請求項2に記載された特定事項により特定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本件訂正事項1?3は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、いずれの訂正事項も、願書に添付した本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1?3は、特許法第134条の2第1項ただし書き並びに同条第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2 2」で示したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?3に係る発明(以下全体として「本件発明」とし、それぞれ個別には「本件発明1?3」という)は、訂正明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、
前記ロータリー式攪拌機用のパドルであって、長杆の先端に、2枚の板状の掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し、その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とするパドル。
【請求項2】
有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置(当審注:以下では「前提オープン式発酵処理装置」という)において、
これらのパドルのうち、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、該長杆の先端に、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルから成り、その他の残る各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とし、しかもまた、次のX及びYの各特徴をさらに備えるオープン式発酵処理装置。
X 大容積のオープン式発酵槽は、日を改めて投入する有機質廃物について、少なくとも複数日にわたるものをすでに投入したものとは別の空いた領域に経時的に投入することができるだけの面域を備えること。
Y 前記ロータリー式攪拌機及び前記長尺壁は、前記有機質廃物の堆積高さを高温発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること。
【請求項3】
請求項2に記載のオープン式発酵処理装置において、該ロータリー式撹拌機の該回転軸の中間域部に配設された通常のパドルのうち、所定の間隔を存して配設された複数本を、請求項1に記載のパドルに代えたことを特徴とするオープン式発酵処理装置。」
第4 請求人の主張する無効理由と証拠方法
請求人は、本件発明1?3についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、次の1?3、及び6の無効理由を主張すると共に、甲第1?33号証、及び甲第44号証を提出した。
1 請求の理由
(1)無効理由1
本件発明1?3は、その出願前に日本国内で譲渡された日環エンジニアリング株式会社製の混合機(以下「本件混合機」という)に係る発明であるか、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?3についての特許は、特許法第29条第1項1号に規定する発明に該当し、または同条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当して無効である。
(2)無効理由2
本件発明1は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第44号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当して無効である。
(3)無効理由3
本件発明2、3は、その出願前に日本国内で譲渡された日環エンジニアリング株式会社製のオープン式発酵処理装置KS7-12型(以下「KS7-12」という)に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当して無効である。
(4)無効理由6
本件の請求項1?3に係る特許発明は明確ではないから、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1?3についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当して無効である。
なお、本件発明1に対する無効理由3の主張は、平成23年7月12日の口頭審理における陳述により取り下げられた(第1回口頭審理調書)。
また、無効理由4、5の主張、及び、これに関連する甲第34?43、45?52号証の証拠は、平成23年6月23日付けの口頭審理陳述要領書による陳述により取り下げられた。

2 証拠方法
(1)甲第1号証:平成21年7月8日付「訴状」
(2)甲第2号証:平成21年8月21日付「御依頼書」
(3)甲第3号証:平成21年11月16日付「文書送付嘱託申出書」
(4)甲第4号証:山梨県北杜市公式ホームページ
(5)甲第5号証:平成21年8月25日付「たかね有機センターオープン式発酵撹拌装置の納入について(回答)」
(6)甲第6号証:平成21年9月10日付「回答書」
(7)甲第7号証:写真撮影報告書(1)
(8)甲第8号証:写真撮影報告書(2)
(9)甲第9号証の1?3:日環エンジニアリング株式会社のホームページの印刷物
(10)甲第10号証:パンフレット「地域農業基盤確立農業構造改善事業」
(11)甲第11号証:堆肥センターに設置されたオープン式発酵装置の写真の拡大コピー
(12)甲第12号証:写真撮影報告書(3)
(13)甲第13号証:平成21年12月1日付「送付嘱託に係る書類の送付について}
(14)甲第14号証:平成22年1月18日付「調査嘱託の申立書」
(15)甲第15号証:平成22年1月18日付「調査嘱託の申立書」
(16)甲第16号証:平成22年1月18日付「文書送付嘱託申出書」
(17)甲第17号証:平成22年2月15日付「送付・調査嘱託について(回答)」
(18)甲第18号証:平成22年2月23日付「調査嘱託に係る書類の送付について」
(19)甲第19号証:平成22年4月22日付「調査嘱託の申立書」
(20)甲第20号証:平成22年4月22日付「調査嘱託の申立書」
(21)甲第21号証:平成22年4月22日付「調査嘱託の申立書」
(22)甲第22号証:平成22年5月14日付「調査嘱託書回答書」
(23)甲第23号証:平成22年6月15日付「調査嘱託の申立書」
(24)甲第24号証:平成22年8月13日付「準備書面(3)」
(25)甲第25号証:大辞林(第1版)
(26)甲第26号証:大辞林(第3版)
(27)甲第27号証:日本国語大辞典第2版第11巻
(28)甲第28号証の1?4:広辞苑第5版
(29)甲第29号証:平成22年5月14日付「回答について」
(30)甲第30号証:埼玉式KSコンポ取扱説明書
(31)甲第31号証:平成22年6月28日付「調査嘱託書回答書」
(32)甲第32号証:平成22年5月14日付「調査嘱託に係る書類の送付について」
(33)甲第33号証:平成22年10月5日付「原告ら準備書面(7)」
(34)甲第44号証:特開平7-222966号公報

第5 被請求人の主張と証拠方法
被請求人は、答弁書に代わる上申書を提出し、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、以下のように主張すると共に、乙第1号証の1?10、乙第2号証の1?4及び乙第3?5号証を提出した。
1 被請求人の主張
(1)無効理由1に対しては、本件混合機は本件特許の出願日以降に譲渡され、その後に撹拌爪が交換されたので、本件特許発明1?3は、その出願前に公然知られた発明ではない。
(2)無効理由2に対しては、本件発明1は、甲第44号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)無効理由3に対しては、KS7-12は本件発明2、3の特徴を有するものではないので、本件発明2、3は、KS7-12に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)無効理由6に対しては、本件特許の請求項1?3の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2項の要件を満たす。
2 証拠方法
(1)乙第1号証の1?10:現場作業日報等
(2)乙第2号証の1?4:平成12年1月27日付「明野村 工事工程の件」等
(3)乙第3号証:平成21年10月30日付「実施実験報告書」
(4)乙第4号証:平成21年10月30日付「実施実験報告書(DVD撮影の概説)-片道実験版」
(5)乙第5号証:平成21年12月11日付「実施実験報告書(DVD撮影の概説)-往復実験版」

第6 主な甲号証及び乙号証の記載事項
1 甲号証の記載事項
(1)甲第2号証(平成21年8月21日付「御依頼書」)
請求人代理人が北杜市役所高根総合支所へ送付した依頼書であり、日環エンジニアリングが高根有機センターに納入した「KS7-1200」に関し、納入時期、納入後の第三者に対する開示の有無に付いて回答依頼をしている。

(2)甲第4号証:山梨県北杜市公式ホームページの印刷物
山梨県北杜市公式ホームページ中の「施設紹介 たかね有機センター」のページであり、「たかね有機センター」が山梨県北杜市の施設であることが示されている。

(3)甲第5号証:平成21年8月25日付「たかね有機センターオープン式発酵撹拌装置の納入について(回答)」
甲第2号証の回答依頼についての回答である。平成8年6月25日以降、たかね有機センターの管理を梨北農業協同組合が行っており、日環エンジニアリングが製作したKS7-12は、梨北農業協同組合が購入した旨回答されている。

(4)甲第6号証:平成21年9月10日付「回答書」
梨北農業協同組合から東京地方裁判所への回答書である。同回答書に添付された写真に撮影されているKS7-12は、平成9年5月30日頃までには「たかね有機センター」に納入されており、平成9年9月には山梨県明野村関係者が視察をしている旨が回答されている。

(5)甲第20号証:平成22年4月22日付「調査嘱託の申立書」
請求人代理人が提出した、梨北農業協同組合を調査嘱託先とする調査嘱託の申出書である。梨北繞行協同組合が提出した「調査嘱託について(回答)」(甲17号証)で示された機械(KS7-12)について、納入時期、当該機械の第三者による見学の有無等の調査・回答が求められている。

(6)甲第29号証:平成22年5月14日付「回答について」
甲第20号証に対する回答書である。KS7-12は、平成9年9月に「たかね有機センター」に納入され、平成11年7月以前に山梨県明野村の職員が守秘義務を負うことなく、KS7-12を見学したことが回答されている。

(7)甲第31号証:平成22年6月28日付「調査嘱託書回答書」
荏原エンジニアリングサービス株式会社を調査嘱託先とする平成22年6月15日付「調査嘱託の申立書」(甲23号証)に対する回答書である。これには、平成12年2月29日付で荏原製作所が作成した「検査成績書」、平成12年2月7日付で日環エンジニアリング株式会社の長谷川俊夫、柴崎義則ら作成の「社内検査書」、及び、平成12年1月14日付で長谷川俊夫、柴崎義則が作成した「施行管理記録」が添付されている。

(8)甲第44号証:特開平7-222966号公報
ア 記載事項
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第44号証には、生ゴミ処理装置に関して、図面と共に、次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、生ごみの分解処理を行う生ごみ処理装置に関するものである。」(第2頁左欄50行?同頁右欄1行)
(イ)「・・・本発明の生ごみ処理装置は、生ごみが分解処理される処理槽1内に回転軸35を配設し、回転軸35の中央部に粗砕刃36を突設し、回転軸35の粗砕刃36の両側に攪拌部37を突設し、攪拌部37に処理槽1内に入れられた処理材と生ごみとの混合物を粗砕刃36側に移動させるための案内部38を設け、処理槽1内に回転する粗砕刃36に対応する位置に粗砕刃36との協同で生ごみを粗砕するための固定刃39を設けて成ることを特徴とするものである。」(第3頁左欄5?13行)
(ウ)「回転軸35を正回転と逆回転との切り換え自在とし、攪拌部37に回転軸35の正回転時に粗砕刃36側に処理槽1内に入れられた処理材と生ごみとの混合物を粗砕刃36側に移動させるための正回転時案内部38aと、攪拌部37に回転軸35の逆回転時に粗砕刃36側に処理槽1内に入れられた処理材と生ごみとの混合物を粗砕刃36側に移動させるための逆回転時案内部38bとを設けることも好ましい。(第3頁左欄14?21行)
(エ)「添付図面に示す実施例では回転軸35が正回転と逆回転との切り換え運転が自在となっており、このため、図6に示す実施例においては、案内部38として、正回転時に粗砕刃36側に処理槽1内に入れられた処理材と生ごみとの混合物を粗砕刃36側に移動させるための正回転時案内部38aと、攪拌部37に回転軸35の逆回転時に粗砕刃36側に処理槽1内に入れられた処理材と生ごみとの混合物を粗砕刃36側に移動させるための逆回転時案内部38bとが設けてある。」(第4頁右欄7?16行)
(オ)「上記運転中、回転軸35を回転すると、・・・攪拌部37による攪拌混合時に処理材と生ごみとの混合物は案内部38により粗砕刃36側に移動させられる。この場合、回転軸35の正回転状態では正回転用案内部38aの作用により両側から順次中央部側に処理材と生ごみとの混合物が移動させられ、中央部に位置する粗砕刃36により被粗砕物が掴まれて固定刃39との協同で野菜くずや魚の骨等の生ごみの塊を粗砕するのである。」(第5頁右欄43?第6頁左欄4行)
(カ)図6を参照すると、回転軸35に対して棒状の撹拌部37を介して、その先端部に案内部38が接続されており、当該案内部38はV字型をしており、正回転時案内部38aと逆回転時案内部38bからなっていることを確認することができる。
イ 記載された発明
記載事項(ア)によれば、本発明は生ゴミの処理装置であり、同(イ)より、処理槽内に回転軸35、粗砕刃36が設けられ、回転軸の両側に撹拌部37を突設し案内部38を設けることが記載されている
また、同(ウ)(エ)によれば、回転軸は正回転と逆回転の切り替えが可能であり、同(ウ)(オ)には、正回転時には正回転時案内部38aが作用して処理材と生ゴミの混合物を移動させ、逆回転時には逆回転時案内部38bの作用により該混合物を移動させる。
そして、同(カ)によれば、該案内部は、棒状の撹拌部37の先端に正回転時案内部38aと逆回転時案内部38bとがV字をなすように形成されている。
したがって、甲第44号証には、次の発明(以下「甲44発明」という)が記載されているとすることができる。
「生ゴミ処理装置の処理槽内に設けられた、生ゴミの撹拌・移動機構であり、正逆回転可能に設定された回転部と、これに固定された撹拌部と案内部からなり、棒状の撹拌部の先端に設置された案内部は、回転部の正回転時に生ゴミを撹拌・移動させる正回転時案内部と、逆回転時に同様の作用をする逆回転時案内部とが、V字状をなすように形成された生ゴミの撹拌・移動機構。」

(9)KS7-12について
ア KS7-12の公知性
「たかね有機センター」は山梨県北杜市に属する施設であり(甲第4号証)、北杜市と梨北農業協同組合が管理している(甲第2、5号証)。調査嘱託(甲第20号証)に対する梨北農業協同組合による回答(甲第29号証)によれば、日環エンジニアリング製のKS7-12は、たかね有機センターに平成9年3月に納入された。
そして、KS7-12の納入に当たり、梨北農業協同組合と日環エンジニアリングとの間で、KS7-12の内容を第三者に開示してはならない旨の合意はなされておらず(甲第20、29号証)、実際にも、平成9年9月には山梨県明野村の職員がKS7-12を見学している。
このため、本件特許の出願日は平成12年1月18日であるので、本件特許の出願日前にKS7-12の内容は公然と知られたものであったとすることができる。

イ KS7-12の特徴事項
KS7-12は、納入後今日までの間に仕様変更はなされていないので(甲第20、29号証)、その特徴事項の認定は、本件特許の無効請求人が無効審判請求書に添付した平成22年6月1日に撮影した写真1-1?1-22(70?89頁)によりおこなう。これによれば、KS7-12は、本件発明の特定事項の表現に合わせれば、次の(ア)?(オ)の特徴を有するものである。
(ア)「有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、」について(写真1-1?1-3)
KS7-12は長尺壁を有し、その長尺壁に沿って長尺広幅の面域を有することが確認できる。これは、有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理することができる面域であると認められる。
(イ)「その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、」について(写真1-4)
長尺壁の向かい側に当たる「その他側」は、壁のない長尺開放側面となっており、全体としてオープン式発酵槽を構成していることが確認できる。
(ウ)「該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に」について(写真1-5?1-17)
長尺壁の上端面にレールが敷設されており(写真1-5、1-6)、長尺壁上のレール上には車輪が配置され(写真1-7?1-11)、同様に長尺開放側面上に車輪が配置されていること(写真1-12?1-17)が確認できる。
(エ)「堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、」について(写真1-19?1-22)
写真1-19にはロータリー式攪拌機を横設した台車が示され、該ロータリー式攪拌機は正、逆回転自在であり(写真1-20,1-22)、台車はオープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設けられている(写真1-20、1-21)。
(オ)「更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とするオープン式発酵処理装置。」について
写真1-18により、「台車の幅方向に水平に延びる回転軸」と、該回転軸の周面・軸方向に配説された「多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドル」が備えられており、「各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドル」からなるオープン式発酵処理装置であることが確認できる。

ウ KS7-12発明
以上より、本件特許出願前にたかね有機センターに納入された日環エンジニアリング製のKS7-12により、次の発明が公然知られていたとすることができる(以下「KS7-12発明」という)。
「有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とするオープン式発酵処理装置。」

2 乙号証の記載事項
(1)乙第1号証の1?10:現場作業日報等
平成12年2月2日付から同年6月8日付までの現場作業日報である。これによれば、平成12年2月11日作成の日報には、作業内容欄に「レッカー作業、混合機据付」と記入され、また、6月8日作成のものには、「3角爪に交換」との記載がある。

(2)乙第2号証の1?4:平成12年1月27日付「明野村 工事工程の件」等
乙第2号証の2は、(株)荏原製作所作成の「週間工程表(平成12年2月7日?2月27日)」であり、これによれば、混合機及び撹拌装置の搬入・据付は、2月10日に作業が開始されるとされている。

第7 周知技術
本件特許出願前に次の技術が知られていた。
1 周知例1:特開平8-281241号公報
(ア)「本発明は、有機質材料を屋外などで列状に盛りこれを発酵させることによって、該有機質材料の大量発酵処理を可能とした発酵処理装置に関するものである。」(【0001】段落)
(イ)「しかし、上記方法では有機質材料を野積みするため、箱型発酵槽のように有機質材料を頻繁に撹拌することは材料の散乱等のため困難である。」(【0004】段落)
(ウ)「すなわち、本発明によれば、撹拌装置が移動して撹拌するときにのみ有機質材料の両側が整列板で拘束されており、撹拌時には有機質材料が散乱することなく良好に撹拌され、有機質材料の列が整然と維持される。そして、撹拌がなされていない箇所では、有機質材料の表面は全て露出した状態にあり、空気との良好な通気性が保たれている。」(【0011】段落)

2 周知例2:米国特許第5001894号明細書
(ア)「In FIG.2, a compost turner 10 is shown in use with a tractor 30 which propels compost turner 10 along windrows 」(第2欄15?17行)
(仮訳:図2において、堆肥攪拌機10を干草の列に沿って進ませるトラクタ30と共に堆肥攪拌機10が使用される状態が示されている。)
(イ)「Each portion 22, 24 includes a cyrindrical surface 26a, 26b and a multiplicity of turning tines 28, extending generally perpendicularly from surface 26a, 26b. Tines 28 are arranged in spiralig rows around the perimeter of surface 26a, 26b. The tines 28 are oriented on surface 26a,26b in a manner that will urge compost toward the longitudinal central plane of the mandrel, shown as A in FIG. 1. Thus, compost of the right of plane A, as viewed in FIG.1, is urged toward the left and compost to the left of plane A is urged toward the right. The purpose of this arrangement is to urge the compost material toward the center of the windrow and thus to maintain the integrity of the windrow.」(第2欄31?43行)
(仮訳:それぞれの部分22,24は、円筒状表面26a、26bと、通常、表面26a、26bから垂直な方向に延びた複数の回転歯28とを有している。複数の歯28は、表面26a、26bの周囲に沿って、らせん状の列をなすよう配置されている。図1においてAで示されるマンドレルにおける長手方向中央面に向かって堆肥を移動させるよう、複数の歯28は、表面26a、26bにおいて、傾いて配置されている。したがって、面Aの右側にある堆肥は左側に移動され、面Aの左側にある堆肥は右側に移動される。この構成の目的は、堆肥材料を干草の列の中央に移動させることであり、この移動によって干草の列の完全性を維持することである。)

3 周知例3:米国特許第4360065号明細書
(ア)「This invention relates generally to windrow cultivators, and particularly to a cultivator adapted to move along a windrow of material such as compost for circulating material between the inside and outside of the windrow to keep the material uniformly exposed to air for rapid humus-producing, aerobic action.」(第1欄7?12行)
(仮訳:本発明は、一般的には、干草の列の耕耘機に関するものであり、具体的には堆肥等の材料を有する干草の列に沿って移動し、干草の列における内外間で材料を撹拌し、当該材料全体を空気に触れさせることで、急速に腐植土生成及び好気性菌作用を起こさせるよう構成された耕耘機に関するものである。)
(イ)「A windrow disintegrator and aerator, generally designated 38, comprises a rotor or drum 40 with a pair of concentric end shafts 42 rotatably journaled in sidewalls 24. The drum is rotated in the direction of the tramming wheels, by power applied by the engine through chain 41 and sprocket 43 mounted on one end of the drum 40. A plurality of radial mounting posts 44 are fixed, as by welding, to the drum 40. These are arranged in two identical, helical arrays 44A and 44B on opposite sides of the central vertical plane of the cultivator indicated by the line V--V in FIG. 2.
The radial mounting posts 44 are arranged in diametrical pairs, preferably displaced about four inches apart along the length of the drum in a typical machine. These pairs are marked "a" through "n", in each array 44A and 44B, from the ends of the drum inwardly toward the central vertical plane V--V. Adjacent pairs are uniformly angularly offset about the drum 40, as indicated by identical angles "X" on FIG. 3. Each array 44A or 44B, in the example shown, has fourteen such diametrical pairs equally spaced and equally angularly arranged over a total of 180.degree., that is, one-half the circumference of the drum. Adjacent pairs n, n in the respective arrays 44A and 44B, preferably will likewise be angularly offset an angle X so there is a continuous helical progression of mounting posts 44 not only in the individual arrays 44A and 44B, but from one end of the drum to the other. Each pair of diametrically opposed posts 44 are in a common plane perpendicular to the axis of the drum. The two arrays meet at the central vertical plane V--V and comprise uninterrupted helical continuations of one another.」(第3欄7?38行)
(仮訳:通常、38で示される干草列分離通気装置は、側壁24によって回転可能に軸受された1組の同心端部シャフト42を有するロータ、すなわち、ドラム40を備えている。ドラム40の一端に搭載されたチェーン41とスプロケット43を通して付与されるエンジンからの動力によって、ドラムは、トラム車軸と同じ方向に回転される。複数の放射状取付けポスト44が、溶接によって、ドラム40に固定されている。これらの複数のポスト44は、図2において線V-Vによって示された耕耘機の中央円直面を挟んだ両側において、2つの同一のらせん形列44A、44Bに沿って、配置されている。
複数の放射状取付けポスト44は、通常の装置では、好ましくは、ドラムの長手方向に沿って約4インチの長さずつずれて配置された、複数の正反対の方向に延びるペアを有するように配置されている。これらのペアは、ドラムの端部から内側の中央円直面V-Vに向かうそれぞれの列44A、44Bにおいて、「a」から「n」という印がつけられている。隣り合って位置するペア間には、図3において一定角「X」として示されているように、ドラム40を中心とした一定の角度ずれが存在している。実施例として示されたそれぞれの列44A、44Bは、180°(すなわち、ドラムの周囲半周分)を超える範囲に亘って、等しい間隔を有すると共に等しい角度間隔を有する、14組みものこのような正反対の方向に延びるペアを有している。それぞれの列44A、44Bにおける隣り合うペアであるnとnは、好ましくは、同様に、角度Xだけ角度ずれを有するよう配置される。これにより、個々の列44A、44Bだけでなく、ドラムの一端から他端に至るまで、複数の取付けポスト44が連続的ならせん状の列をなすことになる。正反対の方向に延びるポスト44の個々のペアは、ドラムの長手軸に対して垂直な共通面内に存在している。2つの列は、中央円直面V-Vで接すると共に、相互間で連続する絶え間ないらせんをなす。)
(ウ)「The blades on opposite sides of the central vertical plane V--V are, in effect, mirror images of one another. While they are all curved backward relative to the direction of rotation as shown in FIGS. 3, 5, and 5A, the offset end portions 58 extend to the right in group 44A, and to the left in group 44B as seen in FIG. 2.」(第3欄67行?第4欄5行)
(仮訳:中央円直面V-Vを挟んだ両面において、実際のところ、複数のブレードは、相互間で鏡像関係を有している。図3、5、5Aに示すように、複数のブレードは全て、回転方向との関係で後方となる方向に曲がっている。図2に示されているように、グループ44Aにおいては、複数のオフセット端部58が右側に延びている一方、グループ44Bにおいては、複数のオフセット端部58が左側に延びている。)
(エ)「A uniform vortex action, as shown by the arrows in FIGS. 6A-6C occurs on each side of the central plane V--V. This maximizes at the center, raising the pile with each pass and working objects such as the bottle 70 and can 72, up and out, alongside the base of the windrow.
The first pass of the cultivator results in a low triangular cross-section windrow, perfectly symmetrical on opposite sides of the central vertical plane V--V. This is illustrated in FIG. 6A and the contour, further, is phantomed onto FIG. 2 where it is marked "FIG. 6A".
Successive passes, in opposite directions are made about once a day. The windrow gradually, day by day, increases in height and finally narrows across the base to the contour shown in FIG. 6C. This final windrow contour, marked "FIG. 6C", is phantomed onto FIG. 2. 」(第4欄48?68行)
(仮訳:図6A?6Cにおいて矢印によって示された均一な渦状の作用が、中央面V-Vの両面で起きる。この作用は、中央部の高さを増大させる。各回の通過により積み重なりの高さを増加させる。そして、ボトル70や缶72といった物体については、上昇の後、中央円直面V-Vを挟んだ両面において完全に対称的な、低い三角形状の断面が作られる。このときの断面は図6Aに示されている。そして、この断面の輪郭については、「図6A(FIG.6A)」の印付きで図2に破線表記されている。
これに続く反対方向の通過は、およそ1日に1回実行される。干草の列は、徐々に、日に日に、その高さを増していき、ついには、ベース間の間隔が狭くされた図6Cに示された輪郭を有するに至る。この最終的な干草の列の輪郭については「図6C(FIG.6C)」の印付きで図2に破線表記されている。)

第8 当審の判断
1 無効理由1について
請求人は、本件発明1?3は、山梨県北杜市明野町上手12022-5所在の堆肥センターに、荏原エンジニアリングサービス株式会社が納入した混合機(本件混合機)に係る発明であるか、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するので、本件混合機が本件発明の特許出願前に公知であったかを検討する。
(1)公知性
請求人は、平成12年1月14日付の「施工管理記録」(甲第31号証)は、現場で据付状況を確認した記録であるので、遅くとも平成12年1月14日には、本件混合機は堆肥センターに納入されて公知になったと主張する。これに対し、被請求人は、同記録は、日環エンジニアリング株式会社の桶川工場で行った納品前の社内検査の記録であると主張する。そこで、同記録が、本件混合機の納品前の社内検査記録か、現場での据付状況を確認したものであるかを検討する。
これについては、以下の理由から、「施工管理記録」は、納品前の検査記録であり、本件混合機の納入は平成12年2月10日以降であると認める。ア (株)荏原製作所作成の「週間工程表(平成12年2月7日?2月27日)」(乙第2号証の2)は、本件混合機の納入・据付を含む関連装置の設置工事予定表とみられるが、混合機の納入は平成12年2月11日とされている。
一方、「現場作業日報」(乙第1号証の1?7)は、本件混合機の納入時期と納入状況を示すものであるが、日環エンジニアリング株式会社作成のものと推測される。なぜなら、社長印の欄に「社長 岸」の押印があるほか、甲31号証に添付された「社内検査書」(日環エンジニアリング株式会社作成)に押印された木下哲也の印影は、乙第1号証の1?7の「現場作業日誌」右上に押印された木下の印影と一致するからである。
そして、この「現場作業日報」によれば、レール設置作業が2月10日に行われ、翌日の11日には混合機据付が行われている。これは、上記「週間工程表(平成12年2月7日?2月27日)」における混合機据付の日が2月11日であることと符合する。
イ 甲第31号証の別紙は、日環エンジニアリング株式会社の「社内検査書」となっており、この表題からみると、これに添付された「施工管理記録」は、日環エンジニアリング株式会社における納品前の検査とみることができる。
このため、本件混合機の据付は平成12年2月11日に行われたと解するのが合理的であり、とすると、「施工管理記録」(甲第31号証)は、被請求人の主張するとおり、納品前の社内検査の記録とみるべきである。
なお、請求人は、調査嘱託で回答された事実の立証を、調査嘱託の回答者又は回答書に記載の関係者に対する証人尋問を行う用意がある旨を陳述する(審判請求書第47頁最下行、第48頁1行)。しかし、請求人の主張の根拠とする甲第31号証の「施工管理記録」は、納品前の社内検査の記録と認定できるので採用しない。
したがって、本件混合機は平成12年2月11日に据付が行われたので、これが公知になったのは、早くともこの日以降である。そして、本件特許の出願日は平成12年1月18日であるので、本件混合機は、本件発明の特許出願前に公知であるとすることはできない。
このため、本件混合機が本願出願前に公知であることを前提とする無効理由1は、採用することができない。
(2)まとめ
以上のとおりであるので、本件発明1?3は、本件混合機に係る発明であるか、それに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

2 無効理由2について
無効理由2は、本件発明1が甲第44発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたというものであるので、これを検討する。
(1)対比
本件発明1と甲44発明とを比較する。
甲44発明において正逆回転可能に設定された回転部に固定された「撹拌部と案内部」は、撹拌部が棒状をなし、案内部が正回転時案内部と逆回転時案内部とにより形成されたV字状をなすので、その外形上は、本件発明1における、長杆の先端に配設した2枚の板状部材からなるパドルに相当する。
そして、甲44発明の案内部は、正回転時案内部と逆回転時案内部からなるが、その案内部の回転方向に対して、一方の案内部は斜め1側前方を向き、他方の案内部は斜め1側後方を向くように配向し、攪拌機用の被処理物の撹拌をおこなう点で、本件発明1におけるパドルと同等の構造を有する。
したがって、本件発明1と甲44発明の一致点と相違点は、次のとおりとなる。
ア 一致点
攪拌機用のパドルであって、長杆の先端に、2枚の板状の部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し、その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とするパドル。
イ 相違点
甲44発明に係るパドルは、生ゴミ処理装置の処理槽内に設けられたものであるのに対し、本件発明1のパドルは、前提オープン式発酵処理装置、すなわち
「有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置」
で使用する点で相違する。
(2)検討
そこで、生ゴミ処理装置の処理槽内に設けられた甲44発明に係るパドルを、前提オープン式発酵処理装置に転用することが容易かを検討する。
これに関し、たしかに、甲44発明におけるV字状の撹拌部材は処理槽内の処理剤と生ゴミ混合物を撹拌しつつ移動させる機能を有する。この点で、本件訂正発明1において採用するパドルとは類似した機能を有する。
しかし、生ゴミ処理装置における撹拌部材とオープン式発酵処理装置におけるパドルとは、その作用が異なる。
すなわち、生ゴミ処理装置においては、密閉した処理槽内で処理剤と生ゴミの混合物を、単に撹拌・移動させるにとどまる。これは、甲44発明に係るパドルは、棒状をなす撹拌部とV字状をなす案内部の作用により、生ゴミ混合物を、処理槽内の中央部にある粗砕刃により粗砕するために、撹拌しつつ移動させていることから明らかである(第6 1(8)ア(オ))。
これに対し、オープン式発酵処理装置におけるパドルは、半ば開放された処理槽内で被処理物を掬い上げて放り投げるという撹拌・混合を行う。これにより、オープン式発酵処理装置においては、堆積物が外側に拡散して堆積物の堆積高さが減少し、良好で安定的な発酵状態を維持することができないという課題を解決することができる。
このため、甲44発明に係る生ゴミ処理装置において使用するパドルを、前提オープン式発酵処理装置に転用することについて、その動機をみいだすことができないので、前提オープン式発酵処理装置は甲44発明と同様に好気性発酵処理を行う発酵装置である点で共通するとしても、当該転用は当業者が容易に想到するものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおりであるので、本件発明1が甲第44発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

3 無効理由3について
無効理由3は、本件発明2、3がKS7-12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたというものである。そこで、以下では、本件発明2、3が、KS7-12発明に対して進歩性を有するかを、各発明毎に個別に検討する。
3-1 本件発明2について
(1)対比
本件発明2とKS7-12発明とを比較すると、KS7-12発明は、前提オープン式発酵処理装置に対応する。このため、本件発明2とKS7-12発明との一致点と相違点は、次のとおりとなる。
ア 一致点
前提オープン式発酵処理装置である点で共通する。
イ 相違点
(i) 本件発明2では、配設されるパドルについて、次の特徴事項を有するのに対し、KS7-12発明では、この点について具体的に明らかではない点。
「これらのパドルのうち、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、該長杆の先端に、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルから成り、その他の残る各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ること」
(ii) 本件発明2では、オープン式発酵槽について次の特徴事項を有するが、KS7-12発明では、この点について明らかでない点
「大容積のオープン式発酵槽は、日を改めて投入する有機質廃物について、少なくとも複数日にわたるものをすでに投入したものとは別の空いた領域に経時的に投入することができるだけの面域を備えること」
(iii) 本件発明2では、ロータリー式攪拌機及び長尺壁の高さを次のとおり限定するが、KS7-12発明では、この点が明らかでない。
「ロータリー式攪拌機及び前記長尺壁は、前記有機質廃物の堆積高さを高温発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること」

(2)検討
相違点(i)に関し、KS7-12に対して「長杆の先端に、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された」パドルを採用することの容易性について検討する。
ア 課題の周知性
KS7-12発明には、使用するパドルを従来の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルに替えて他のものを設置することについて、具体的な示唆はない。
しかし、一般に、オープン式発酵処理装置は、堆積された有機質廃物の発酵処理を促進するために撹拌を行うにつれ、堆積物の開放端面側が外側に拡散し、堆積物の高さが減少してしまうという課題を有することは、本件出願前に周知のことである(必要なら、周知例1の記載事項(イ)(ウ)、周知例2の記載事項(イ)を参照されたい)。
イ 解決手段の周知性
また、オープン式発酵処理装置で水平に設けられた回転軸に固定された回転パドルによる撹拌力が、当該パドルの回転方向ばかりでなく回転軸方向にも作用するように、撹拌面を被処理材料に対して斜めにする技術は、本件特許出願前に周知の技術である。必要なら、上記周知例2の記載事項(イ)、周知例3の記載事項(イ)?(エ)を参照されたい。
ウ 容易想到性
(ア)オープン式発酵処理装置により有機質廃物の発酵を行う際には、堆積物の外側への拡散を防ぐことは、上記アに示されるように周知の技術課題である。このため、KS7-12発明は、その構造から見てオープン式の発酵処理装置であるので、具体的な明示はないものの、KS7-12発明に接した当業者であれば、該発明が該周知の課題を有することを認識することは明らかである。
また、当該課題を解決する手段として、撹拌力が回転方向ばかりでなく回転軸方向にも作用するように撹拌面を斜めにする技術は、上記イに示されるように本件特許出願前に周知である。
このため、KS7-12の有する課題を解決するために、撹拌部材の攪拌面を斜めにする技術を採用することは容易であるといえる。
(イ)そこで、さらに、斜めの撹拌面を持つ撹拌部材として、甲44発明におけるV字状の撹拌部材を採用することが、当業者に適宜なしうることであるといえるかの検討が必要となる。
しかし、この点に関しては、本件発明1についての無効理由1において検討したように、甲44発明における撹拌部材をオープン式発酵処理装置であるKS7-12に転用することは、その動機がない以上、当業者が容易に想到しうるところとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるので、相違点(ii)及び(iii)について検討するまでもなく、相違点(i)の特徴事項を採用することが当業者に容易であるといえないので、本件発明1は、甲第44発明及び周知技術を考慮したとしても、KS7-12発明に基づいて当業者が容易になしえたものではない。

3-2 本件発明3について
本件発明3は、本件発明2に対し、オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルに加え、さらに、回転軸の中間域部に配設された通常のパドルのうち、所定の間隔を存して配設された複数本を、 本件発明1に係るパドルに替えることを特徴事項とするものである。
しかし、本件発明2の進歩性判断で検討したとおり、本件発明2は、KS7-12発明に基づいて当業者が容易になしえたものではないので、本件発明3も当業者が容易になしえたものではない。

4 無効理由6について
無効理由6は、本件発明1?3は、明確ではないから、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないというものである。そこで、この点について検討する。
4-1 本件発明1について
(1)請求人の主張する明確性違反事由
ア 「長杆」の前後の方向が観念できないので、請求項1における「前後に」、「前後方向に対し傾斜させて」、「前側」、「斜め1側前方を向き」、「その後ろ側」、「斜め1側後方を向く」の意味するところが不明である。
イ 「長杆」の形状が不明なため、「先端に・・・2枚の板状の部材を・・・配置」について、長杆と2枚の板状の部材をどのように組み合わせるか不明である。
ウ 「板」は直方体であるので、どの面をもって「外面」とするか不明である。
(2)当審の判断
本件訂正における訂正事項1により、本件発明1に係る「パドル」は、オープン式発酵処理装置におけるロータリー式攪拌機用のパドルであることが明確になった。このため、その「長杆」の前後方向を特定することができることとなった。
したがって、訂正された請求項1の記載は明確である 。

4-2 本件発明2について
(1)請求人の主張する明確性違反事由
ア 「正、逆回転自在のロータリー式攪拌機」に関し、いずれを正回転とし、いずれを逆回転とするか不明確である。
イ 「該長杆の先端に、前後一対の掬い上げ部材」に関し、いずれの方向を前後とするか不明である。
ウ 「該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取付けた」に関し、いずれの面と台車の走行方向とを直交するか不明であり、また、ロータリー撹拌である以上、撹拌中に両者を直交することは不可能である点で不明確である。
(2)本件特許明細書の記載事項
(ア)「その各パドル5bは、図15,16に示すように、・・・長杆5b1の先端に、台車6の走行方向に対して直交して長矩形の板状の掬い上げ部材5c溶接などにより取り付けて構成したものである。」(特許公報第2頁33?36行)
(イ)「台車6が往動走行するとき、正回転するロータリー式撹拌機5′の回転軸5aは、図11(a)に示すように、矢示のように正回転し、これに伴いパドル5a′は正回転し、従って、該回転軸5aの軸方向に対し所定角度内側に向いて傾斜した前側の傾斜板から成る先端の掬い上げ部材5c1は、その前方に堆積する堆積物Tの長尺開放側面側の外端堆積部に当接し、斜め内側に向けてこれを掬い上げる。かくして、従来のような堆積物Tの外端が外側に拡散することが防止される。
次に、台車6が反転し復動走行する場合は、図11(b)に示すように、ロータリー式撹拌機5′の回転軸5aは、矢示のように逆回転し、・・・」(同第6頁20?27行)
(ウ)図11を参照すると、パドル5a′の作用方向が台車が往動走行する場合(a)と復動する場合(b)に分けて描かれており、台車往動の際の回転が正転であり、台車の進行方向が前方であることを確認することができる。
(エ)図15,図16を参照すると、回転軸に対してパドルが垂直下向きの位置において、パドルの構成要素が図示されていることを確認することができる。
(3)当審の判断
(i)明確性違反事由アは、上記(2)の記載事項(イ)(ウ)より明確である。
すなわち、ロータリー式攪拌機の回転方向は、同(イ)によれば台車が往動走行する際の回転方向であり、これは図11(a)に矢印で示されている。このため、不明確であるとする請求人の主張は採用できない。
(ii)明確性違反事由イは、上記(2)の記載事項(イ)(ウ)より明確である。
すなわち、同(イ)によれば、回転軸が正回転する際の掬い上げ部材5c1は前方に堆積する堆積物を掬い上げるのであるから、図11(a)を合わせ見れば、正回転時の台車走行方向が前方であることが理解できる。このため、パドルに対する前後の方向は、同(イ)(ウ)の記載から明らかである。
(iii)明確性違反事由ウは、上記(2)の記載事項(ア)(エ)より明確である。
請求項2における「該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取付けた」という特定事項は、その表現ぶりから、板状の掬い上げ部材の取り付け態様を規定する記載である。
そして、その具体的な内容は、上記(2)の記載事項(ア)に示されている。これによれば、図15,図16に示す状態、すなわちパドルが撹拌軸に対して垂直下向きの状態において、台車の走行方向と直交して板状の掬い上げ部材を取り付けるとされている。この場合には、台車と掬い上げ部材とが直交することは明らかである。
これに対し、請求人は、パドルが回転軸に対して斜め上方、或いは斜め下方を向いている状態を想定して、その場合には台車と掬い上げ部材は直交しないので、当該特定事項は不明確である旨を主張する。これは、当該特定事項を、回転軸の回転を通じての掬い上げ部材と台車走行方向の直交を規定すると解釈するものである。
しかし、当該特定事項の技術的意味が明らかとなるように、具体的な態様が記載事項(ア)(エ)に開示されているのだから、該開示された態様又はそれに準じた態様により、当該特定事項を理解すべきである。あえて当該特定事項が実現できない態様を想定し、これをもって本件特許発明が不明確であるとすることは、正当な解釈であるとすることはできない。

4-3 本件発明3について
(1)請求人の主張する明確性違反事由
ア 「該ロータリー式攪拌機」、「該回転軸」に関し、「該」の意味するところが不明である。
イ 「ロータリー式攪拌機」、「回転軸」、「通常のパドル」に関し、具体的構成が特定されておらず、不明確である。
(2)当審の判断
本件訂正における訂正事項3により、本件発明3は、請求項2に係る発明に従属する発明であることが明らかになった。このため、「該」の意味するところが明らかになり、訂正された請求項3の記載は明確である。

4-4 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1?3は、明確ではないといういことはできず、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

第9 むすび
以上のとおり、請求人の申し立てた理由および証拠による無効理由によっては、本件発明1?3に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ロータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、前記ロータリー式攪拌機用のパドルであって、
長杆の先端に、2枚の板状の掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し、その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とするパドル。
【請求項2】
有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、これらのパドルのうち、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、該長杆の先端に、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された請求項1に記載のパドルから成り、その他の残る各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とし、しかもまた、次のX及びYの各特徴をさらに備えるオープン式発酵処理装置。
X 大容積のオープン式発酵槽は、日を改めて投入する有機質廃物について、少なくとも複数日にわたるものをすでに投入したものとは別の空いた領域に経時的に投入することができるだけの面域を備えること。
Y 前記ロータリー式撹拌機及び前記長尺壁は、前記有機質廃物の堆積高さを高温発酵を確保するに足るだけの高さ構成を備えること。
【請求項3】
請求項2に記載のオープン式発酵処理装置において、該ロータリー式撹拌機の該回転軸の中間域部に配設された通常のパドルのうち、所定の間隔を存して配設された複数本を、請求項1に記載のパドルに代えたことを特徴とするオープン式発酵処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
先に、出願人は、特願平11-222212号として、従来のピット式発酵槽の両側の長尺壁の上面にレールを敷設し、そのピットを跨ぎ、その左右のレール上をロータリー式撹拌機を具備した台車を、該ピット式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設けた有機質廃物の発酵処理装置の不都合を解消したオープン式発酵処理装置とこの装置を用いた発酵処理法を開示した。
即ち、該装置は、図13及び図14に示すように、オープン式発酵槽1と該オープン式発酵槽1を往復動走行し、且つロータリー式撹拌機5を横設した台車6とから成る。更に詳細には、該オープン式発酵槽1は、長棟(図示しない)内の所定個所に、畜糞、家庭廃棄物、汚泥、活性汚泥など所望の有機質廃物を水分調整材と共に経時的に、例えば毎日投入堆積し、その夫々の堆積物を所要期間発酵処理するに足る所望の長尺広幅の面域a、例えば長さ30?100m、幅7?8mの長尺広幅面域aと、その長さ方向の1側に、例えば長さ100m、高さ1?2mのコンクリート製の長尺壁1aと、該長尺壁1aと対向する他側には、長尺壁を構築することなく長尺開放側面2とから成り、かゝるオープン式発酵槽1の該長尺壁1aの上端面にその全長に亘りレール3を敷設し、該レール3上と該長尺開放側面2側の面域a側にその床面a上を回転走行する車輪4を左右前後に配設して具備すると共に、該オープン式発酵槽1内に投入堆積された被処理物を撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機5を具備した台車6を該オープン式発酵槽1の長さ方向に、即ち、該長尺広幅面域aの長さ方向に往復動走行自在に設けることにより、オープン式発酵処理装置Pを構成する。該ロータリー式撹拌機5は、正,逆回転自在の可逆モータ7により、台車6の往動走行時には正転方向に回転し、台車6の復動走行時には逆転回転せしめられる。該撹拌機5は、その幅方向に延びる回転軸5aにその長さ方向に亘り且つその周面に多数のパドル5b,5b,…が、好ましくは螺旋状に配設されている。図面で1bは、長尺壁1aの両端に直角に配設した端壁、19は、該ロータリー式撹拌機5の上面をカバーするべく前後に配設した蓋板、a′は、コンクリート施工床面を示す。その各パドル5bは、図15、図16に示すように、横断面Tの先端が、広幅帯状面域aの底面に略達する長さを有する長杆5b1の先端に、台車6の走行方向に対し直交して長矩形の板状の掬い上げ部材5cを溶接などにより取り付けて構成したものである。各パドル5bは、その長杆の基端部を該回転軸5aの周面から突設した凹嵌合基部5dにボルト、ナットにより交換自在に取り付けられている。しかし乍ら、この装置1では、そのロータリー式撹拌機5の回転軸5aの周面にその軸方向に配設した全てのパドル5b,5b,…を、その各長杆5b1の先端に、該台車6の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材5cを取り付けたパドルで構成したものであるので、ロータリー式撹拌機5を台車6の往復動走行に伴いロータリー式撹拌機5を正転及び逆転させ、これらのパドル5b,5b,…の台車6の走行方向に直交する掬い上げ部材5c,5c,…により長尺開放側面2に形成したオープン式発酵槽1内の有機質廃物の堆積物Tを往復動撹拌するに用い、その往復動撹拌が繰り返されるときは、図17に示すように、当初、実線示のように堆積されていた堆積物Tは、その往復動撹拌の回数が多くなるにつれ、一点鎖線示、二次鎖線示に示すように、そのオープン式発酵槽1の長尺開放側面2側において堆積物Tの開放端面側が外方に拡散が増大すると共に堆積物Tの高さが低くなる傾向があり、当初の好ましい高さで安定良好な高温発酵が得られない不都合を生じ、更には、その堆積物Tの崩れは、長尺開放側面2側の床面を走行する台車6の車輪4の軌道上にも達し、円滑な走行を阻害することがある。その結果、適時、頻繁に、その外方へ崩れた拡散分を人手によりスコップなどで掬い上げ、堆積物の頂面へ積み上げる面倒な作業を要するなどの不都合を生ずることが判った。
そこで、かゝる不都合を解消するため、特願平11-260846号により、ロータリー式撹拌機による往復動撹拌を行ったとき、堆積物の長尺開放側面側において外方へ崩れ、堆積物の所望の高さが低くならないようにし、人手によるスコップによる掬い積み上げ作業を要せず、更に好ましくは、当初の高さの堆積状態で発酵処理ができるオープン式発酵処理装置を開示した。
即ち、特願平11-260846号において、前記先願のオープン式発酵処理装置を、次のように改良した。即ち、その装置において、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、その長杆の先端杆部を回動自在とし、その先端に内側と外側で面積を異にする板状の掬い上げ部材を所定角度範囲回動自在に取り付け、該台車の往復動走行時に、正,逆回転する回転軸に伴い正,逆回転する板状の掬い上げ部材により堆積物を掬い上げる際に、該板状の掬い上げ部材の内側板部は外側板部より大きい堆積物の負荷を受けて該板状の掬い上げ部材は、常に内側に向いて所定角度回動し堆積物の掬い上げが行われるようにした回動式パドルに構成する一方、その他の残る各パドルは、その先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた最先の出願で用いたと同じ通常の固定式パドルに構成したことを特徴とするオープン式発酵処理装置を提示した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、上記の改良発明によれば、その回動式パドルは、回動式パドルとするため多くの組み立て構成部材を要し、而も比較的複雑な組立て作業と構成を要し、その製作が比較的面倒であり、且つ製作コストの増大をもたらすなどの問題を有することが判明した。そこで、構成部品を少なくし、通常の固定式パドルと同様に構造簡単で且つ製作コストを減少でき、軽量な固定式パドルの開発とこれを組み込んだ軽量で且つ用いた構造簡単で製造コストの安価なロータリー式撹拌機を具備し、前記の改良発明の目的と同様の目的を達成するオープン式発酵装置の開発が望まれる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の先願のオープン式発酵処理装置の不都合を解消し、上記の要望を満足するロータリー式撹拌機用パドルを提供するもので、長杆の先端に、2枚の板状の掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置し、その前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて配設したことを特徴とする。
更に本発明は、有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、これらのパドルのうち、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられた上記本発明のパドルから成り、その他の残る各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けたパドルから成ることを特徴とする。
更に本発明は、堆積物の上部を当初の平坦な高さを維持するようにしたオープン式発酵処理装置を提供するもので、該ロータリー式撹拌機の該回転軸の中間域部に配設された通常のパドルのうち、所定の間隔を存して配設された複数本を上記本発明のパネルに代えたことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1乃至図4は、本発明実施の1例のロータリー式撹拌機用パドルを示す。符号5b′で示す本発明のパドルは、その長杆5b1の先端に、同じ寸法、形状を有する2枚の長矩形板状の掬い上げ部材5c1及び5c2を前後に位置させ、且つその前側の傾斜板5c1の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板5c2の外面は斜め1側後方を向くように配向せしめて取り付けたことを特徴とする。この具体的な実施の1例は、前後の傾斜板から成る掬い上げ部材5c1及び5c2は、図3及び図4に明示するようにその夫々の一端部を直接互いに溶接し且つ前後方向に対し直交する幅方向の軸線X-Xに対し所定の角度θ1側方向に傾斜せしめる。即ち、その夫々の傾斜板の外面が1側斜め方向に夫々10?80°の範囲、図示の例では20°傾斜せしめてV字状に配向せしめた状態で、その夫々の中間部で該長杆5b1の下端に溶接などにより取り付ける。この場合、該長杆5b1の下端に、その中間部から一体に下垂突出せしめた下垂板部5b2を該V字状の傾斜板5c1及び5c2により形成される三角形のスペース内に嵌挿し、その両端面をその夫々の傾斜板5c1及び5c2の対向する内面の中間部に当接させると共にそのV字状の傾斜板5c1及び5c2の内面と溶接して該V字状の傾斜板5c1及び5c2を内側から支承固定し、該V字状の板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の外面に受ける外圧に対し安定堅牢な機械的強度の増大したV字状の板状の掬い上げ部材5c1及び5c2に構成するようにすることが好ましい。更に、その機械的強度の増大のために、該V字状の傾斜板5c1及び5c2の開脚側の端部の対向内面間に板状などの支承梁5eを渡し、その両端部をその夫々の対向面と溶接せしめるようにすることが好ましい。
図面で、この本発明のパドル5b′は、図1及び図2に示すように、その長杆5b1の基端部に設けたボルト挿通孔5fで、この基端部を仮想線で示すロータリー式撹拌機の回転軸5aの周面に突設した左右一対の取付け板から成る凹嵌合基部5dに嵌合し、該ボルト挿通孔5gにボルト5hを挿通し、ナット5iにより着脱自在に該回転軸5aに取り付けて用いるようにすることは、従来と変わりはない。
【0006】
また、本発明のパドルの変形例として、図5に示すようなパドル5b″に構成しても良い。即ち、先の実施例のそのV字状の傾斜板5c1及び5c2の一端部を当接し、互いに直接溶接する代わりに、その両傾斜板5c1及び5c2の一端部間を適当な距離離隔し、そのスペース内に板状などの補強梁5jを介在させ、その両端部を傾斜板5c1及び5c2の一端部とを溶接し、その前後一対の板状の掬い上げ板部5c1及び5c2はハの字状に対称的に傾斜した傾斜板に構成しても良い。
【0007】
本発明のパドル5b′又はパドル5b″の前側の傾斜板5c1及び後側の5c2の夫々の傾斜角度θは、同じ角度であることが一般であり好ましく、また、その傾斜角度θは、10?80°の範囲とする。
【0008】
更に、本発明は、上記の構成の本発明のパドルを組み込んだ比較的軽量且つ製造容易で且つ安価なロータリー式撹拌機を具備し、而も上記の目的を達成し得るオープン式発酵処理装置を次のように構成する。
即ち、有機質廃物を経時的に投入堆積発酵処理する長尺広幅の面域の長さ方向の1側に長尺壁を設け、その他側は長尺壁のない長尺開放側面として成る大容積のオープン式発酵槽を構成すると共に、該長尺壁の上端面にレールを敷設し、該レール上と該長尺開放側面側の面域上を転動走行する車輪を配設されて具備すると共に堆積物を往復動撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機を横設した台車を該オープン式発酵槽の長さ方向に往復動走行自在に設け、更に該ロータリー式撹拌機は、該台車の幅方向に水平に延びる回転軸と、該回転軸の周面に且つその軸方向に配設された多数本の長杆の先端に板状の掬い上げ部材を具備するパドルとから成るオープン式発酵処理装置において、これらのパドルのうち、該オープン式発酵槽の該長尺開放側面側に位置する該回転軸の外端から少なくとも1本乃至数本のパドルは、該長杆の先端に、前後一対の板状の掬い上げ部材が夫々台車の走行方向に対し斜めに交叉し且つ内側に向けられて配設された上記本発明のパドルから成り、その他の残る各パドルは、長杆の先端に、該台車の走行方向に対し直交して板状の掬い上げ部材を取り付けた通常のパドルから成ることを特徴とする。
換言すれば、本発明の該装置は、前記の改良発明に係る特願平11-260846号で開示したオープン式発酵処理装置の構成中の回転式パドルに代え、前記の本発明の図1乃至図4又は図5に示すパドル5b′又は5b″を用いたことを特徴とした構成を有し、これにより同様の効果をもたらす。
次に、本発明の装置の実施の1例を、図6乃至図9に基づいて更に詳細に説明する。
図において、本発明の装置の実施例において、該パドル5b′に用いた特徴構成部材の符号を除き、前記の先願に係る特願平11-260846号のオープン式発酵処理装置の実施例の構成部材と同じ構成部材には同じ参照符号を用いて以下詳述する。オープン式発酵槽1は、長棟(図示しない)内の所定個所に、畜糞、家庭廃棄物、汚泥、活性汚泥など所望の有機質廃物を水分調整材と共に経時的に、例えば毎日投入堆積し、その夫々の堆積物を所要期間発酵処理するに足る所望の長尺広幅の面域a、例えば長さ30?100m、幅7?8mの長尺広幅面域aと、その長さ方向の1側に、例えば長さ100m、高さ1?2mのコンクリート製の長尺壁1aと、該長尺壁1aと対向する他側には、長尺壁を構築することなく長尺開放側面2とから成る。このように構成したオープン式発酵槽1の該長尺壁1aの上端面にその全長に亘りレール3を敷設し、該レール3上と該長尺開放側面2側の面域a側にその床面a上を好ましくは、コンクリート製の床面a′とした床面上を回転走行する車輪4を左右前後に配設して具備すると共に、該オープン式発酵槽1内に投入堆積された被処理物を撹拌する正,逆回転自在のロータリー式撹拌機5を横設した台車6を該オープン式発酵槽1の長さ方向に、即ち、該長尺広幅面域aの長さ方向に往復動走行自在に設けることにより、オープン式発酵処理装置Pを構成する。該ロータリー式撹拌機5は、正,逆回転自在の可逆モータ7により、台車6の往動走行時には正転方向に回転し、台車6の復動走行時には逆転回転せしめられる。該撹拌機5は、その幅方向に延びる回転軸5aにその長さ方向に亘り且つその周面に多数のパドルが配設されている。
【0009】
前記の最先の出願に係る発明によれば、その配設された全てのパドルを、図15及び図16に示す通常のパドル5bで示すパドルで構成していた。即ち、そのパドル5bは、図15及び図16に示すように、その中間部は横断面T字状であり、その長さは、広幅帯状面域aの底面に略達する長さを有する長杆5b1から成ると共にその先端に、台車6の走行方向に対し直交して長矩形の板状の掬い上げ部材5cを溶接などにより取り付けて構成したものであり、かゝるパドル5bで該回転軸5aに配設するパドルの全てを構成し、その往復動撹拌を繰り返すときは、上記したような不都合を生ずることが判ったので、この不都合を解消するため、本発明のオープン式発酵処理装置P′では、該回転軸5aの該オープン式発酵槽1の長尺開放側面2側に位置する外端から少なくとも1本又は数本のパドルは、上記構成の最先の出願に係る発明で用いたパドル5bの使用を廃し、これに代え、例えば、図1乃至図4に示す本発明のパドル5b′を用い、これを、その前後にV字状に配設された板状の掬い上げ部材5c1及び5c2をその夫々の傾斜板の外面が内側を向くように、即ち、オープン式発酵槽1の長尺開放側面2とは反対の方向、換言すれば、その長尺壁1aの方向を向くように配向せしめた状態で該回転軸5aに取り付けた。
図示の例では、本発明の上記のパドル5b′を例えば1?5本を回転軸5aの外端側に取り付けた。而してその他の残る全てのパドルは上記の先願と同じ形式の図15及び図16に示すパドル5b、即ち、長杆5bの先端に、台車6の走行方向に対し直交して取り付けられた板状の掬い上げ部材5cを具備したパドル5b,5b,…(以下、この形式のパドルを固定式パドルと称する。)で構成して本発明のロータリー式撹拌機5′を構成した。かくして、かゝるロータリー式撹拌機を具備した台車6によりオープン式発酵槽1内に堆積した堆積物を撹拌するべく、台車6を往復動走行させるが、その往動走行時に該回転軸5aは正回転し、堆積物を掬い上げて、台車6の後方へ移動撹拌し、台車6の復動走行時に該回転軸5aは逆回転し、台車6の後方へ、即ち一旦移動撹拌された堆積物をもとの位置に移動撹拌する往復動撹拌を行うときは、その本発明のパドル5b′の内側に向いた前後一対の傾斜板から成る掬い上げ部材5c1及び5c2により夫々これに対応する堆積物の外端部を後記するように常に内側に向いて堆積物を掬い上げられるので、常にその外側への放散を防止することができる。
この場合、その全てのパドル5b,5b,…及び5b′,5b′,…は、該回転軸の長さ方向に螺旋状に且つ前方から見た板状の掬い上げ部材5c,5c,…,5c1,5c1及び後方から見た5c,5c,…,5c2,5c2の夫々の板間にはスペースを存せしめないように、即ち、前後方向において一部が重なるように配設することが好ましい。
また、その本発明のパドル5b′の夫々の傾斜板5c1及び5C2は長矩形状とし、同一形状、寸法であることが一般であり好ましく、また、通常のパドル5bの板状掬い上げ部材5cと同一形状、寸法であることが一般であるが、これに限定する必要はない。また、その各傾斜板5c1及び5C2の長さ又は高さ寸法は所望に設定される。
【0010】
次に、本発明の上記実施例のロータリー式撹拌機5′に、該回転軸5aに配設した上記の最外端に位置する本発明の固定式パドル5b′の掬い上げ作動を図11を参照し説明する。
台車6が往動走行するとき、正回転するロータリー式撹拌機5′の回転軸5aは、図11(a)に示すように、矢示のように正回転し、これに伴いパドル5a′は正回転し、従って、該回転軸5aの軸方向に対し所定角度内側に向いて傾斜した前側の傾斜板から成る先端の掬い上げ部材5c1は、その前方に堆積する堆積物Tの長尺開放側面側の外端堆積部に当接し、斜め内側に向けてこれを掬い上げる。かくして、従来のような堆積物Tの外端が外側に拡散することが防止される。
次に、台車6が反転し復動走行する場合は、図11(b)に示すように、ロータリー式撹拌機5′の回転軸5aは、矢示のように逆回転し、これに伴いパドル5b′は逆回転し、従って、該回転軸5aの軸方向に対し所定角度内側に向いて傾斜した後側の傾斜板から成る先端の掬い上げ部材5c2は、その前方に堆積する堆積物Tに当接し、その傾斜した角度で該掬い上げ部材5cにより堆積物Tを斜め内側に掬い上げるので、従来のような堆積物Tの外端が外側に拡散することが防止される。かくして、かゝる台車6の往復動走行による本発明のパドル5a′による往復動撹拌を何回繰り返し行っても、常に堆積物Tの外側への飛散は防止され、所望の好ましい高さを維持して、良好な発酵作用を維持することができる。
【0011】
かくして、回転軸5aに配設したパドルのうち、少なくとも最外端の1本のパドル又はその最外端から数本のパドル、、図示の例では、5本のパドルを本発明のパドル5b′で構成するときは、図11に示すように、内方への掬い上げを高能率に行うことができ、また更に確実に上記の防止効果をもたらす。この場合、これら数本の本発明のパドル5b′を配設するとき、堆積物Tの傾斜面の端縁より僅かに外側に位置して最外端の本発明のパドル5b′を設け、その内側の残りの本発明のパドル5b′は、その堆積物Tの傾斜面の裾野下部に対応する位置に設けることが好ましい。
【0012】
このように本発明のロータリー式撹拌機5に配設するパドルのうち、その最外端の1本又は最外端から2?5本程度を本発明のパドル5b′又は5b′,5b′,…で構成するときは、上記の作用効果をもたらすばかりでなく、先の改良発明に係る特願平11-260846号で用いた回転式パドルを用いるに比し、パドル5b′の構成は、その長杆5b1の先端に2枚の板を単に前後方向に対し傾斜させて固設するだけであるから、通常の固定式パドルと同様に、簡単に且つ安価に製作でき、而も回転軸5aに取り付けてロータリー式撹拌機5′を構成するときは、その製造が容易で構造簡単となり、重量も比較的軽くなるので、稼動エネルギーの消費の低減できるなど利便をもたらす。
【0013】
尚、ロータリー式撹拌機5′の回転軸5に配設した多数本のパドルのうち、長尺開放側面2側に位置するその最外端のパドルのみを又はその最外端を含めて端から1?数本のパドルを本発明のパドル5b′で構成し、その他の残る全てのパドルは、前記の通常のパドル5bで構成し、これにより堆積物Tの往復動撹拌を繰り返すときは、上記のように、回動式パドル5b′により堆積物Tの外端部は、常に内側に向かって掬い上げられるので、従来の外方への拡散は防止することができ、本発明の目的は達成されるが、同時に、図12に示すように、堆積物Tの頂面が、当初、実線のように概して平坦面であったものが、1?数本の本発明のパドル5b′により積み上げられた部分は、仮想線示のように山形になる傾向がある。これに鑑み、ロータリー式撹拌機5′により往復動撹拌を繰り返しても、堆積物Tはかゝる山形部のない常に概して平坦な頂面を維持するようにすることが望まれる。
【0014】
そこで、本発明は、かゝる要望を満足するロータリー式撹拌機5′をも提供するもので、図6及び図7に明示のように、少なくとも回転軸5aの外側端に配設した1?数本の本発明のパドル5b′より内側に配設されたその回転軸5aの中間域部に配設されるパドルのうち、その複数本を間隔を存して、好ましくは、一定間隔を存して本発明のパドル5b′で構成し、その他のものは図16、図17に示す通常のパドル5bで構成したロータリー式撹拌機5′とする。図示の例では、4本の通常のパドル5b,5b,…を存して5本目毎に本発明のパドル5b′を5本、回転軸5aの中間域部に配設したものを示す。かくして、このロータリー式撹拌機5′を使用すれば、回転軸5aの外端に設けた1?5本の本発明のパドル5b,5b,…により形成された上記図13に示す堆積物Tの頂面外端部の山形の部分は、その内側に位置する本発明の中間域に一定間隔で配設された夫々の本発明のパドル5b′,5b′,…により堆積物Tは、順次内側に向かい跳ね上げ堆積拡散されるので、前記の山形状の堆積部は消失し、堆積物Tの頂面は概して平坦面にならされ、略同じ高さに維持される。回転軸5aの内端部、即ち長尺壁1aに近い内端部に配設された最内端から複数本のパドルは、全て通常のパドル5bで構成する必要がある。なぜならば、そのうちの1本でも本発明のパドル5b′とするときは、長尺壁1aに近い側の堆積物Tの上面が山形に盛り上がったり、跳ね上げられた堆積物が長尺壁1aの近傍に山形の堆積が形成され、或いは長尺壁1aを越えて外方に放り出されるなどの不都合を生ずるからである。
【0015】
尚、該板状の掬い上げ部材5c1及び5c2の傾斜角度は、図示の例では、回転軸5aの中心軸線に対し20°傾斜せしめたものを示したが、一般に10°?80°の範囲が採用できる。
【0016】
本発明の上記のオープン式発酵処理装置P′は、これに具備した上記の本発明のパドル5b′以外の構成は、先願の発明で開示したものと同じである。念のため、茲に繰り返し添付図面を参考に詳述する。
【0017】
オープン式発酵槽1自体は、先願で提示した構成と変わりがなく、図13及び図14に示すと同じように、該長尺広幅面域aは、好ましくは、前記したように、その面域aにコンクリート製など施工床面a′に形成し、台車6の長尺開放側面2側の車輪4,4がその平坦な施工床面a′上を走行するようにすることが好ましく一般である。また、該長尺広幅面域aの長さ方向の両端は開放端面のまゝでも差支えないが、例えば、該長尺壁1の両端から該長尺壁1に対し直角に幅方向に所望長さ延びる例えば、幅7?8m延び且つ高さ1.5?2mのコンクリートの両端壁1b,1bを構築し、堆積物の両端の崩れを防止し、該長尺広幅面域a上に囲壁1a,1b,1bで囲まれ、その他側の開放側面2を介して経時的に投入堆積される極めて大量の被処理物をコ字状に区劃収容するに足る大容積の長尺コ字状のオープン式発酵槽1とすることが好ましく一般である。被処理物の投入堆積される堆積物は、高さ1.4?1.9m、その幅は6?7m程度まで堆積するのが一般である。
【0018】
長尺壁1の長さは、例えば、飼育する家畜の頭数や排出される家畜の生糞を毎日投入堆積し、30日程度の長期間に亘りその堆積物を発酵処理し、順次取り出し連続的に堆肥を生産するには100m以上でも差支えないが、一般に30?100mの範囲で足りる。100mの長尺壁を処理棟内に構築するには、極めて長手の処理棟を要し、相当長手の設置面積を要するので、たとえば、30?50mの比較的短い長尺壁のオープン式発酵槽を2つ又はそれ以上の数を1つの作業場内に配設するようにすることが好ましい。また、長尺壁や両端壁の高さは、ショベル車で被処理物を1?2mの高さまで投入堆積し得られる1?2mの範囲とし、一般に、1.5m程度が好ましい。
【0019】
尚、肉牛の飼育場では、オガ屑の寝床に生糞が堆積して汚れた寝床を掻き集めたものは、水分含有率は発酵に適した60%程度となっているため、オガ屑、モミ殼などの水分調整材を改めて添加して水分調整を行う必要がないから、そのまゝショベル車でオープン式発酵槽1内に投入することができる。
乳牛、豚などの生糞や汚泥などの多くの有機質廃物の含水率は一般に、約80%又はそれ以上と高いので、これに水分調整剤を添加して被処理物の含水率を60%程度又はそれ以下に調整して発酵処理する必要がある。例えば、乳牛の生糞を発酵処理する場合は、生糞1m^(3)に対し水分調整材3m^(3)の割合で添加して水分60%以下の被処理物とするが、ショベル車により生糞をオープン式発酵槽内に投入した後、その上から水分調整材として、例えば3倍の例えばオガ屑を投入し、台車の往復動道走行に伴うロータリー式撹拌機により生糞とオガ屑を往復動撹拌することにより混合堆積物とする必要がある。
【0020】
その投入された堆積物は、毎日撹拌すると、温度が低下し、生糞に含まれる病原菌などの微生物、ウジなどの害虫が死なずに残るおそれがある。特に、栄養分の少ない有機質廃物の処理では、毎日撹拌することは好ましくない。70℃以上の高温発酵を行うには、例えば1?5日間程度撹拌することなくそのまゝ静置することにより、その放置期間において、高温発酵が確保される。その放置期間後、撹拌することにより、内部の水分は蒸発し、動時に外気が混入し好気的条件が良くなる。このような放置と撹拌を繰り返すことにより、比較的栄養分の少ない有機質廃物も高温発酵が確保され、25?30日間程度の発酵期間が経過すれば、殺虫、殺菌された良質の堆肥として得られる。
【0021】
長棟内の処理場に施工したコンクリート製床面a′上に、例えば、長さ100メートル、高さ1.5メートル、肉厚170mmのコンクリート製の長尺壁1aとその両端に夫々該長尺壁1に対し直角に幅方向に7.7メートル延び、高さ1.5メートル、肉厚170mmのコンクリート製の端壁1a,1aを構築し、この長尺壁1aとその両端壁(図示省略)とによって囲まれ、その長尺壁1と対向する側は、長さ100メートルの高さ方向及び側面が開放された長尺開放側面2を有する長尺コ字状のオープン式発酵槽1を形成した。即ち、コ字状囲壁1,1a,1aで三辺を囲まれた大容積空間を有し、且つ1側面が長尺開放側面2に形成されたオープン式発酵槽1が得られる。尚、該コンクリート施工床面a′は、図示しないが、その開放側面2側の床面a′をその全長100メートルに亘り緩やかに下降する傾斜面に形成し、これによりショベル車での搬入、搬出を楽に円滑に行うようにすることが好ましい。
該長尺壁1aの上端面には、その全長に亘りレール3を敷設する。該レール3の敷設は、例えば、該レール3の下端に一体に成形された断面コ字状の長尺枠体3aを該長尺壁1の上端部に嵌合し、セメントその他の接着剤などを介して固着せしめることにより敷設するようにした。
【0022】
このようにオープン式発酵槽1を構成したので、その全長100メートル、高さ1.5メートルにより囲まれた大容積の内部空間には、極めて大量の各種の有機質廃物から成る被処理物を大量に毎日投入堆積し得られ、その夫々の堆積物が長期間に亘り発酵処理するに足り、而もその長尺の開放側面2を介して、その長さ方向の所望の場所に、その被処理物をショベル車により搬送し、投入とその発酵処理済みの堆積物、即ち堆肥の取り出しを行うことができるばかりでなく、また、発酵中の多数個所の堆積物のうち、例えば、その中間の所定の個所の堆積物に水分調整材を投入することができるなどの便利をもたらす。
【0023】
このように構成したオープン式発酵槽1内にその開放側面2を介して、所望の場所に有機質廃物と水分調整材を順次投入堆積せしめたものを、例えば、幅約6メートル、長さ約3.2メートルの方形の囲枠基台6aから成る台車6をその1側の前後の車輪4,4を該レール3上をその他側の前後の車輪4,4を該施工床面a′上を転動走行するように配置し、該台車6を該オープン式発酵槽1の長さ方向に往復動走行させて、この往動走行、復動走行に合わせてロータリー式撹拌機5の回転軸5aを正回転、逆回転させて、その往動走行で後方へその復動走行で前方へ、即ち、もとの位置に移動し、その間、有機質廃物と水分調整材とを撹拌混合する。即ち、往復動撹拌して混合堆積物とし、この状態で発酵が行われる。発酵終了後、かくして、その堆肥をその投入時と同じ位置から取り出すようにし、必要に応じ、その取り出した跡に、新しい被処理物を投入し、引続き連続して発酵処理を行えるようにした。また、かくして、オープン式発酵槽1内に、有機質廃物水分調整材を順次投入する場合、その長尺開放側面2を介しての長さ方向の所望の空所に投入でき、従来のような、投入の毎に、以前にピットの一端に投入した堆積物を撹拌移動用台車の往復動走行によりピットの奥の方へ移動させてピットの一端を空ける煩わしい作業と大きな電力消費の課題を解消できる。
【0024】
次に、図示の台車6の具体的な構成につき更に詳述する。
台車6は、幅6メートル、前後方向の長さ約3メートルの方形のH鋼などの鋼材から成る堅牢な方形の囲枠基台6aと、これに配設した車輪4,4,4,4とから成る。その囲枠基台6aの左右の側枠6a1,6a2の長さの中間部において、そのいくらか下方に位置して床面a′から約1.4メートルの高さに位置して横型ロータリー式撹拌機5の回転軸5aを左右のベアリング部を介し回転自在に架設した。該回転軸5aは、その囲枠基台6aの右側枠6a1より外方へ突出する外端に設けた伝導車輪及びベルトから成る伝導装置12を介して該囲枠基台6aの後側枠6a3の左端から突出する支持台上に設けた駆動用可逆モータ7により正,逆回転自在に駆動されるようにした。
該台車6の囲枠基台6aの長尺開放側面2側に位置する右側枠6a1には、その前後に位置して下方に延びる脚部13,13を設け、その下端に、夫々前後の車輪4,4を回転自在に取り付け、その前車輪4を車輪駆動用可逆モータ8により伝導装置14を介して駆動自在とした。また、該台車6の左側枠6a2上には、これから外方に突設した台上に車輪駆動用可逆モータ8′を設置し、その伝導装置14′を介し、後車輪4を駆動自在とした。
各該脚部13は、図示の例では、H鋼などの鋼材を材料として堅牢に図示のように組み立てたものである。前後の脚部13,13間には、鋼材から成る補強用梁15a,15aを上下に2本張り渡し、その下部の梁15b上には、前記の車輪駆動用可逆モータ8を設置した。一方、前記の囲枠基台6aの左側枠6a2は、コ字状の外側枠6bとコ字状の内側枠6cとで構成され、両内外側枠をその長さ方向において間隔を存して配設した連結部材6dを介して相互に溶接して構成した。
台車6の囲枠基台6aの右側枠6a1の下方には、車輪駆動用モータ8を収容する空間16を外面に形成せしめた屈曲凹板から成る側壁17をその前後の脚部13,13に溶接して設け、これにより、堆積物が撹拌される際に飛散するその粉粒などが該モータ8にかゝらない保護壁として作用せしめ、該モータ8をその飛散物による汚染、損傷から防止するようにした。
また、該囲枠基台6aの上面には、その中心に大きい方形の上面開放面18を残してその前後の開放面を上面からカバーする傾斜した金属蓋板19,19を前後の囲枠基台6aの前後側枠6a4,6a3から斜め上方へ突設せしめた。これにより、高温発酵中の堆積物を往復動撹拌する時に生ずる飛散による駆動モータなどの機器の汚染、損傷を防止すると同時に、その上面開口部18より水分を蒸散させ、該発酵中の堆積物の水分除去による乾燥をもたらすようにした。尚、前後の対向する傾斜金属蓋板19,19は、その両端において囲枠基台6aの左右側枠6a2,6a1から立ち上がる左右の垂直壁20,20に接続するようにした。
【0025】
該囲枠基台6aの左側枠6a2の前端部上面には、ケーブルリール11を設立し、台車6の往復動走行に伴い、外部の供給電源よりのケーブル10を揺動自在の案内杆11aを介して巻き付け巻き解し自在とし、そのケーブル10の供給端を該囲枠基台6aの前側枠6a4上面を横切り、その右側枠6a1の側面に取り付けたコントロールボックス9に接続するようにし、該コントロールボックス9からは、図示しない多数本のケーブルを介して、ロータリー式撹拌機駆動用モータ7、車輪駆動用可逆モータ8,8′、後記する反転用リミットスイッチ、全停止リミットスイッチ、蛇行防止用リミットスイッチなどに接続されるようにし、コントロールボックス9の内部には、タイマー、変流器、撹拌機起動用インバータ、メーターリレー、シーケンサー、ノイズフィルターなどの各種電気・電子機器が内蔵され、その開閉扉の外部に電源ランプ、起動ボタン、自動運転用ボタン、非常停止ボタン(図示しない)などの所望の操作用ボタンを外部から操作できるような構成が配備されている。
【0026】
該台車6の囲枠基台6aには、更にその左側枠6a2には、その長さ方向の所望の位置に、例えば、その中間部に、その下面に取り付けた基板21から該長尺壁1aの外壁面に沿って所望の長さ下垂する前後一対の杆部22a,22bの下端部に前後一対の反転リミットスイッチ23aと23bを配設すると共に、該前後一対の杆部22a,22bの前面に両杆部22a,22b間に跨がり取り付けた横杆24の中央から下垂する杆部25の全停止リミットスイッチ26を設ける。一方、該長尺壁1aの両端の該壁面には、反転リミットスイッチ23a,23bに夫々当接する高さを有する当接部材27a,27bを前後に配備して固設した。台車6が往動走行し、該長尺壁1aの一端(図10では右端)に来たとき、前側反転リミットスイッチ23aが前端の該当接部材27aに当接して反転し、台車6が復動走行し、該長尺壁1aの一端(図10では左端)に来たとき、後側反転リミットスイッチ23bが後端の該当接部材27bに当接して台車6が反転走行するようにした。
一方、該全停止リミットスイッチ26は、別個に用意した可搬当接スタンド28を少なくとも1個用意しておき、これを該長尺壁1aの外壁面に沿った長さ方向における所定の位置で台車6の走行を止めると同時に、そのロータリー式撹拌機の作動を停止させたい場合、即ち、全停止させたい場合に、その所定の位置に全停止リミットスイッチ22の進路内に立てておく。かくして台車6の往動走行或いは復動走行の過程で、その全停止リミットスイッチ22が該可搬当接スタンド28に当たったとき、台車6の全ての駆動装置は停止する。詳細には、車輪駆動用モータ8,8′及びロータリー式撹拌機駆動用モータ7は停止する。即ち、全停止する。
また、台車6を、その該長尺壁1aの長さ方向における所望の長さ間を所望の複数回往復動せしめる場合には、反転リミットスイッチ23a,23bと当接する高さを有する一対の可搬当接スタンド29a,29bを、その長尺壁1の外壁面に沿いその所望の往復動する長さ間隔を存して前後に配置し、台車6の往動走行においてその前方の反転リミットスイッチ23aが前位の該可搬当接スタンド29aに当接したとき反転し、復動走行してその後方の後位反転リミットスイッチ23bが後位の該可搬当接スタンド29bに当たったとき反転し、かくして、台車6の所定距離間の往復動がなし得られ、これによりその間の堆積物を正,逆回転撹拌混合がなし得られ、所望回数の台車6の往復動走行が得られる。所望回数の往動撹拌後、全停止を行う場合には、反転用可搬当接スタンド29a,29bのいずれか一方を除き、これに代わり全停止用の可搬当接スタンド28を所望の位置に設置すれば、その位置で台車6の全停止が得られる。
台車6は、通常、オープン式発酵槽1のいずれか一方の端部に、電源を切って全停止させ、待機させておく。所望量の被処理物をオープン式発酵槽1の他端側の空所に投入し、通常、長尺壁1aの高さより僅かに低い高さまで、例えば、長尺壁1aの高さが1.5mの場合は、1.4m位までに堆積する。また、堆積物Mの幅は、台車6のロータリー式撹拌機5′の回転軸5aの長さに略対応するものとする。オープン式発酵槽1の他端の空所に在る堆積物を往復動撹拌する場合は、スイッチオンして台車6を往動走行させ、その他端の固定反転リミットスイッチ27aに当接させて反転させ、その往動走行中に、該長尺壁1aの外側の床面a′上に、全停止用の可搬当接スタンド28を所定の位置に立てる。然るときは、往動走行する台車6は、その全停止用リミットスイッチ26が、該全停止用可搬当接スタンド28に当たったときに全停止し、堆積物の1回の往復動撹拌が終了する。複数回の往復動撹拌を行いたい場合は、該長尺壁1aの外側の床面a′上に、反転用の可搬当接スタンド29bを立てておけば、往動走行する台車6は、その後側の反転リミットスイッチ23bが該反転用の可搬当接スタンド29bに当たり、反転し再び往動走行する。かくして、所望回数の往復動撹拌を行うことができる。
オープン式発酵槽1の中間部に投入堆積した堆積物を往復動撹拌するには、該長尺壁1aの外側の床面a′上に、該堆積物が往復動撹拌できるような間隔を存して前後一対の反転用の可搬当接スタンド29a,29bを立てれば良い。1回又は所望回数の往復動撹拌を行った後、そのオープン式発酵槽1の中間位置で全停止させるには、いずれか一方の反転用可搬スタンド29a又は29bを除去し、その所望の中間位置に全停止用の可搬当接スタンド28を立てれば良い。これに代え、電源を切って全停止させることもできることは勿論である。
【0027】
上記図示の例では、製作を簡単にするため、台車6の左側枠6a2の長さ方向の中間部に前後一対の反転リミットスイッチ23a,23bとその中間に全停止用リミットスイッチ26とを一組にまとめて構成したが、これに限定されない。例えば、前後一対の反転リミットスイッチ23a,23bは、台車6の左側枠6a2の中心位置から左右に等距離の位置であればどの位置でも良く、左側枠6a2の両端部に配置すれば、それだけ早く台車6の往動走行及び復動走行における反転を行うことができる。
また、台車6には、先願の場合と同様に、保持部材30aとローラ30bとから成る機械的な蛇行防止装置30と、その前,後側枠6a4,6a3に配設したガイドリミットスイッチ31a,31bから成る電気的な蛇行防止装置を具備していることは、先願の場合と変わりがない。
【0028】
【発明の効果】
このように本発明のロータリー式撹拌機用パドルは、その長杆の先端に、2枚の板状掬い上げ部材を前後に且つ前後方向に対し傾斜させて配置すると共にその前側の傾斜板の外面は斜め1側前方を向き、その後側の傾斜板の外面に斜め1側後方を向くように配向して固設した構成としたので、先願の改良発明に係る回動式パドルに比し軽量となり、而も容易且つ安価に製造できる。
更に本発明は、オープン式発酵処理装置として、オープン式発酵槽を往復動走行する台車に横設したロータリー式撹拌機の回転軸の長さ方向に且つ周面に配設された多数本の通常のパドルのうち、その回転軸の外端部に位置する1?数本のパドルを、上記の本発明のパドルに代え且つその前後一対の傾斜板から成る掬い上げ部材の前後の傾斜板の外面をその回転軸の軸線に対し所定の傾斜角度内側に向けて傾斜せしめて配向せしめたので、台車を往復動走行させ、該ロータリー式撹拌機で堆積物を往復動撹拌としたとき、その堆積物の外端部に位置する本発明のパドルの掬い上げ部材によりその往動走行時には、その前側の傾斜板により、その復動走行時には、その後側の傾斜板により、常にその夫々対応する前方の堆積物を内側に向け掬い上げることができ、堆積物の外側への掬い上げ時の拡散、崩れなどの不都合を解消でき、また、オープン式発酵処理装置に具備するロータリー式撹拌機に回動式パドルを用いた場合に比し、容易且つ安価に且つ軽量に構成できると共に、稼動時の消費電力の低減をもたらす。
更に、上記本発明のオープン式発酵処理装置において、そのロータリー式撹拌機の回転軸の中間域部に配設されるパドルのうちの複数本を、適宜間隔を存してその複数本を本発明のパドルに代えるときは、その往復動撹拌において、堆積物の上面を略平坦面の全面均一な高さの堆積物に維持することができ、良好な高温発酵を維持する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の1例のロータリー式撹拌機用パドルの中間部を省略した正面図。
【図2】同パドルの中間部を省略した右側面図。
【図3】図1のB-B線裁断面図。
【図4】図3のC-C線裁断面図。
【図5】変形例のパドルの図3に類似の裁断面図。
【図6】本発明のオープン式発酵処理装置のオープン式発酵槽を横断して前方から見た正面図。
【図7】同装置の平面図。
【図8】同装置の右側面図。
【図9】同装置の中央縦断面図。
【図10】長尺壁の外側から見た同装置の一部を省略した左側面図。
【図11】本発明のパドルの作用を説明する図であり、図11(a)は台車の往動走行時の作動状態を示す一部横断平面図、図11(b)は台車の復動走行時の作動状態を示す一部横断平面図。
【図12】本発明のパドルを具備したロータリー式撹拌機の1例による堆積物の掬い上げ堆積状態を説明するための横断正面図。
【図13】最先の出願に係るオープン式発酵処理装置の平面図。
【図14】図15のオープン式発酵槽を横断して前方から見た同装置の正面図。
【図15】ロータリー式撹拌機の回転軸に取り付けた通常のパドルの正面図。
【図16】同パドルの右側面図。
【図17】最先の出願に係るオープン式発酵処理装置のロータリー式撹拌機により往復動撹拌された状態の堆積物の状態を示す横断面図。
【符号の説明】
P′ 本発明のオープン式発酵処理装置
1 オープン式発酵槽 1a 長尺壁
2 長尺開放側面、外側 3 レール
4 車輪 5′ ロータリー式撹拌機
5a 回転軸 5b 通常のパドル
5b′ 本発明のパドル 5b1 長杆
5c1 前側の板状の掬い上げ部材、前側の傾斜板
5c2 後側の板状の掬い上げ部材、後側の傾斜板
6 台車 a,a′ 床面
T 堆積物
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-03-12 
結審通知日 2012-03-14 
審決日 2012-03-28 
出願番号 特願2000-8670(P2000-8670)
審決分類 P 1 113・ 537- YA (B01F)
P 1 113・ 121- YA (B01F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官
豊永 茂弘
中澤 登
登録日 2005-05-27 
登録番号 特許第3682195号(P3682195)
発明の名称 ロータリー式撹拌機用パドル及びオープン式発酵処理装置  
代理人 保科 敏夫  
代理人 枩藤 朋子  
代理人 名古屋国際特許業務法人  
代理人 高橋 恭司  
代理人 寒河江 孝允  
代理人 寒河江 孝允  
代理人 保科 敏夫  

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