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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1271814
審判番号 不服2012-1050  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-19 
確定日 2013-03-21 
事件の表示 特願2006- 12565「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成19年8月2日出願公開、特開2007-190266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成18年1月20日に出願されたものであって、平成23年10月11日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成24年1月19日付けで本件審判請求がなされるとともに手続補正書を提出した。
当審においてこれを審理した結果、平成24年10月10日付けで、新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成24年12月17日付けで、意見書及び手続補正書を提出した。

2.当審の判断
2.-1.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年12月17日付けで補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり、その記載は次のとおりである。
「筐体と、
該筐体内に配置されるとともに、遊技が予め定められた遊技状態になった場合、遊技者にとって有利価値が異なる複数の特定遊技状態に制御可能であるとともに、前記複数の特定遊技状態をそれぞれ示す複数の特定遊技状態期間信号及び前記特定遊技状態期間信号以外の複数の遊技情報信号を出力可能な制御装置と、
前記筐体内に配置されるとともに、前記制御装置の出力側に電気的に接続され、前記制御装置が出力する前記複数の特定遊技状態期間信号及び前記複数の遊技情報信号を送出可能な外部集中端子板と、
前記筐体内にあって、前記外部集中端子板の出力端子に電気的に接続される遊技機側コネクタと、
前記筐体の外部にあって、外部のホールコンピュータに各種信号を送信可能なホールコンピュータ信号線に電気的に接続される外部側コネクタと、
一端が前記筐体内で前記遊技機側コネクタに電気的に接続され、他端が前記筐体の後板に穿設した孔部を通って前記筐体外に排出されて前記外部側コネクタに電気的に接続されることにより、前記外部集中端子板の前記出力端子から出力される、前記複数の特定遊技状態期間信号を前記ホールコンピュータ信号線へ送出可能な前記複数の特定遊技状態期間信号にそれぞれ対応する複数の特定遊技状態期間信号線及び前記複数の遊技情報信号を前記ホールコンピュータ信号線へ送出可能な前記複数の遊技情報信号にそれぞれ対応する複数の遊技情報信号線を含む中継信号線と、
前記遊技機側コネクタと前記外部側コネクタとを互いに電気的に繋ぐ前記複数の特定遊技状態期間信号線をそれぞれ必要に応じて断続可能であって、前記複数の特定遊技状態期間信号線のうち、いずれか一の特定遊技状態期間信号線に接続された前記遊技機側コネクタの入力端子に入力される前記複数の特定遊技状態期間信号のうちいずれか一の特定遊技状態期間信号を、前記一の特定遊技状態期間信号線に接続された前記外部側コネクタの出力端子に送信可能であるとともに、前記一の特定遊技状態期間信号を、前記複数の特定遊技状態期間信号線のうち、前記一の特定遊技状態期間信号線以外の他の特定遊技状態期間信号線に接続された前記外部側コネクタの他の出力端子に送出し得るように、前記一の特定遊技状態期間信号線と前記他の特定遊技状態期間信号線とを互いに繋ぎ替え可能な複数の中継コネクタとを備え、
前記複数の中継コネクタは、前記筐体外に配置されるとともに、前記複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け、前記複数の遊技情報信号線の全てには設けないことを特徴とする遊技機。」

2.-2.引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用した特開2005-177309号公報(以下「引用文献1」という。なお、「引用文献1」の数字「1」は、平成24年10月10日付け拒絶理由通知書にて提示した引用文献の番号と同じであり、以下本審決において、他の引用文献についても同様である。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア.「【0007】
発明の実施の形態
図1は実施形態による遊技機1の遊技機制御装置501を説明するためのブロック図、図2は遊技機1の外観斜視図、図3は遊技機1の前枠3を取り外した状態を示す外観斜視図、図4は遊技機1における正面パネル5を取り外した状態を示す外観斜視図、図5は遊技機1のブロック構成図、図6は遊技機制御装置とこれに関連する装置との配線説明図、図7は取込・払出制御装置とこれに関連する装置との配線説明図、図8は演出制御装置とこれに関連する装置との配線説明図、図9は遊技機の前面図、図10は遊技機の裏側の構成図である。
図2に示すような外観を呈した実施形態1による遊技機1は、遊技媒体としてパチンコ球を使用して回胴図柄表示装置の図柄合わせによる当たり外れ遊技(ゲーム)を行うものである。遊技機1は、図1に示すように、本遊技機の制御手段としての遊技機制御装置501を備え、この遊技機制御装置501はCPUと記憶装置としてのROM700(不揮発性メモリでありデータ書き換え不可)及びRAM701(揮発性メモリでありデータ書き換え可能)等を備えたコンピュータで構成される。遊技機制御装置501は遊技制御部703、設定制御部704、リール駆動信号出力制御部705、抽選部706、割当時間タイマ707等を備える。遊技制御部703はROM700から遊技制御プログラムを、RAM701から各種制御データを読み込んで遊技制御を行う。遊技制御部703は例えば4MHz以上のタイミングクロックで遊技制御プログラムを実行し、このタイミングでカウンタ708のカウント値を更新しており、スタートレバー99からのスタート信号を遊技制御部703が入力を受けたときのカウンタ708のカウント値を保持(ラッチ)し、抽選部706がそのカウント値と図柄組合わせとが対応付けられた抽選テーブル709とを照合して図柄の組合せを決定することにより遊技機内部での抽選が行われる。即ち、抽選部706はカウンタ708のラッチされたカウント値と抽選テーブル709とで抽選を行う。従って、遊技者によりスタートレバー99が操作されると遊技制御部703がリール駆動信号出力制御部705に対しリールの回転開始を指示し、リール駆動信号出力制御部705は図4の回胴図柄表示装置537Aのリール121、123、125を回転させる。その後、図柄停止ボタン101?103が所定のタイミングで押されると遊技制御部703はリール駆動出力制御部705を制御して抽選部706で決定された図柄の組合せが透明窓35を介して遊技者に表示されるようリール121、123、125の回転を停止させる。」

イ.「【0008】
以下、実施形態の遊技機1をさらに説明する。
遊技機1は図2に示すような外観を有しており、(中略)
前面パネル7の右端には内枠67の一部が正面パネルから露出して設けられ、内枠露出部69を構成している。そして、この内枠露出部69には錠71が設けられ、この錠71に専用の鉤(図示しない)を差し込んで左に回動することにより、前面パネル7の閉塞が解かれて、図示左端上下に設けられたヒンジ73,75を支点に回動して内枠67から開く。前面パネル7とともに前枠3を構成し前面パネル7の下部に設けられた上皿部9は、前面パネル7とは分離して設けられており、前面パネル7が開いた状態で前面パネル7裏で内枠67内に設けられたロック機構(図示しない)を解除することにより、上皿部9がヒンジ73,75を支点に回動して内枠67から開く。また、錠71を右に回動すると内枠67と外枠77との間の閉塞が解除され、内枠67がヒンジ73,75を支点に回動して外枠77から開くことができる。(中略)
遊技制御基板500には前面パネル7、操作パネル535、リールユニット537、外部集中端子板539が接続されている。前面パネル7には、第1ランプ基板541と第2ランプ基板543とを備え、伝送線545によって遊技制御基板500から信号および電気エネルギーが第1ランプ基板541に向けて送られ、さらに必要な信号および電気エネルギーが伝送線547によって第1ランプ基板541から第2ランプ基板543に向けて送られるように構成している。(中略)
外部集中端子板539は、遊技制御基板500とは伝送線567によって接続し、遊技制御基板500からの信号を遊技機1の外部機器、例えばホールコンピュータや遊技島の表示器等に向けて送信するための中継基板の役割を担っている。遊技制御基板500から送信しうる信号としては、遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号、BB中信号、RB中信号、チャレンジタイム(CT)状態やリプレイ状態出力信号がある。さらに、外部集中端子板539には扉開放スイッチ569から遊技機1の前枠3の開放信号であるドアセンサ信号が伝送線571を介して送信され、遊技制御基板500からの送信信号と同じく外部器機に向けて送信可能に構成される。外部集中端子板539は、これら外部に送信可能な各信号毎に外部機器との接続用の接続端子を備えている。(後略)」

ウ.「【0009】
ROM700には例えば以下の表1乃至表4に示すようなデータがその機種の仕様に合せて選択されてデータテーブル710に記憶されている。以下の各表では、1回のゲームに際して投入可能な遊技球またはメダルの賭け数A毎に、この賭け数Aで行われる遊技においてのBB(ビックボーナス)の当選確率B,1ゲームの割当時間C,BB中の1回の小役当たりで払出される遊技球の個数またはメダルの枚数である賞数D,BBゲームの際に遊技者が獲得して払出され得る最大の遊技球またはメダルの数である最大賞数Eの値が設定されている。即ち、複数のデータA毎にデータB?Eが対応付けられている。そして各遊技機には、その機種の仕様に合せて表1乃至表4のいずれか1つの表のデータ、あるいはいずれかの表のいくつかの行のデータが選択されてROM700のデータテーブル710に記憶されている。例えばパチンコ機用の遊技球を用いたスロットマシン(以下「パロット」と称す)の場合には表1の1?7行のデータ全てが、メダルを用いたいわゆるパチスロ機の場合には表1の5?7行のデータが記憶されている。
尚、ここでBB(ビッグボーナス)とは、従来のメダルを使ったスロットマシン遊技機いわゆるパチスロ機における当選すると30回の小役抽選獲得ゲームを行う中で、メダル1枚賭けで指定された絵柄(JAC等)をそろえるJACゲーム8回のレギュラーボーナスゲームを最大3回まで可能な特別遊技を想定している。
データB?Eは、1つの表における各賭け数A,A・・・で行われる遊技において、単位時間当たり(例えば1秒当たり)の賞期待値(個)(以下「単位時間賞期待値(個)」という)がすべてほぼ一定になるように、かつ、1ゲームに際して投入される投入遊技媒体数に対する賞期待値(以下「投入数量賞期待値」という)がすべてほぼ一定になるように設定されている。単位時間賞期待値(個)は「E(BB最大賞数)*B(BB確率)/C(1ゲームの割当時間)」で定義され、投入数量賞期待値は「E(BB最大賞数)/Amax(1ゲームに際して投入可能な最大賭け数)」で定義される。各表の場合、BB(ビックボーナス)確率Bを一定にしているので、単位時間賞期待値(個)は実質的にはEとCとの値で決まる。即ち、各表では、各賭け数Aで行われる遊技において、単位時間賞期待値(個)は実質的に「E(BB最大賞数)/C(1ゲームの割当時間)=一定」となるような関係にEとCとの値が設定され、また、投入数量賞期待値は「E(BB最大賞数)/Amax(1ゲームに際して投入される最大賭け数)=一定」となるような関係にEとAmaxとの値が設定されている。」

エ.【図5】には、遊技制御基板500と伝送線567によって接続された「外部集中端子基板539」が、【図10】には、遊技機の裏面の上部に設けられた「外部集中端子基盤」が記載されている。

2.-3.引用文献1記載の発明の認定
認定に先立ち、上記2.-2.の「ア.」及び「エ.」において、「外部集中端子板539」、「外部集中端子基板539」、「外部集中端子基盤」なる部材の名称が記載されているが、いずれも遊技制御基板500とホールコンピュータや遊技島の表示器等の間に介在する同じ部材を指し示していることは自明であり、これ以降「外部集中端子板539」に統一することとする。

上記2.-2.の「ア.」ないし「エ.」の記載を総合すると、引用文献1には、
「JACゲーム8回のレギュラーボーナスゲームとJACゲーム8回のレギュラーボーナスゲームを最大3回まで可能なビッグボーナスの複数の特別遊技状態に制御可能であり、BB中信号、RB中信号及び前記BB中信号、RB中信号以外の遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号をホールコンピュータに出力可能な遊技制御基板500と、
前記遊技機の裏面側に配置されるとともに、前記遊技制御基板500の出力側に伝送線567によって接続され、前記遊技制御基板500が出力する前記BB中信号、RB中信号及び前記技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号を前記ホールコンピュータに対して各信号毎に送信するための外部機器との接続用の接続端子を備えた外部集中端子板539とを有する遊技機。」が開示されていると認めることができる。(以下、「引用発明」という。)

2.-4.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明とを比較するに先立ち、本願発明において発明の詳細な説明に開示された実施例と対応しない箇所があるため、当審において以下のとおり解釈して認定する。
本願発明において「前記筐体の外部にあって、外部のホールコンピュータに各種信号を送信可能なホールコンピュータ信号線に電気的に接続される外部側コネクタ」と記載されているが、外部側コネクタ122が接続されるのは、外部信号線111aであって、ホールコンピュータ信号線111ではない。しかしながら、外部信号線111aは呼び出し兼表示装置15を介してホールコンピュータ信号線111に接続されている(【0047】、【図4】参照)から、本願発明の当該箇所は「前記筐体の外部にあって、外部のホールコンピュータに各種信号を送信可能な信号線に電気的に接続される外部側コネクタ」と認定する。

a.引用発明における「特別遊技」のBB(ビッグボーナス)は、レギュラーボーナス3回分としたものであり、その双方を備える引用発明は、遊技者にとって有利価値が異なる複数の特定遊技を備えているといえ、これらの特別遊技が例えば特定の図柄の組み合わせが停止表示されたことにともなって開始されることは自明である。
よって、引用発明は、本願発明の「遊技が予め定められた遊技状態になった場合、遊技者にとって有利価値が異なる複数の特定遊技状態」に相当する構成を備えている。

b.引用発明において「遊技制御基板500」は、ホールコンピュータに向けて「遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号、BB中信号、RB中信号、チャレンジタイム(CT)状態やリプレイ状態出力信号」を送信しており、「BB中信号、RB中信号」は、それぞれビッグボーナスゲームおよびレギュラーボーナス中に出力される信号であることは「中」という言葉の意味からみて自明であるから、本願発明の「複数の特定遊技状態期間信号」に、それ以外の「遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号」などは、本願発明の「特定遊技状態期間信号以外の複数の遊技情報信号」に相当する。
さらに、「遊技制御基板500」は、遊技機で行われる特別遊技を制御しているから、引用発明の「遊技制御基板500」は、本願発明の「制御装置」に相当する。

c.引用発明の「外部集中端子板539」は、遊技制御基板500とは伝送線567によって接続し、遊技制御基板500からの遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号、BB中信号、RB中信号などの信号を遊技機1の外部機器、例えばホールコンピュータに向けて送信しているから、本願発明の「外部集中端子板」に相当する。

d.引用発明の「遊技制御基板500」は、「ホールコンピュータに向けて遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号、BB中信号、RB中信号、チャレンジタイム(CT)状態やリプレイ状態出力信号を外部集中端子板539を介して送信」している以上、外部集中端子板539とホールコンピュータとは何らかの信号線で電気的に接続されていること、該信号線が本願発明の「中継信号線」に相当することは自明である。

e.引用発明の「外部集中端子板539」は、BB中信号、RB中信号及び前記技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号をホールコンピュータに対して各信号毎に送信するための外部機器との接続用の接続端子を備えているのであるから、外部集中端子板539とホールコンピュータとを接続する信号線も各信号毎に独立していることは自明である。

以上のことより、引用発明と本願発明とは、
〈一致点〉
「遊技が予め定められた遊技状態になった場合、遊技者にとって有利価値が異なる複数の特定遊技状態に制御可能であるとともに、前記複数の特定遊技状態をそれぞれ示す複数の特定遊技状態期間信号及び前記特定遊技状態期間信号以外の複数の遊技情報信号を出力可能な制御装置と、
前記制御装置の出力側に電気的に接続され、前記制御装置が出力する前記複数の特定遊技状態期間信号及び前記複数の遊技情報信号をホールコンピュータへ送出可能な前記複数の遊技情報信号にそれぞれ対応する複数の特定遊技状態期間信号及び複数の遊技情報信号を含む中継信号線が接続された外部集中端子板と、
を有する遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明の遊技機は「筐体」を備え、該筐体内に「制御装置と外部集中端子板」を配置するものであるが、引用発明には「筐体」がなく、遊技機と「(本願発明の制御装置と外部集中端子板にそれぞれ相当する)遊技制御基板500と外部集中端子板539」との位置関係も不明である点。

<相違点2>
中継信号線に関して、本願発明では「筐体内にあって、外部集中端子板の出力端子に電気的に接続される遊技機側コネクタと、前記筐体の外部にあって、外部のホールコンピュータに各種信号を送信可能な信号線に接続される外部側コネクタ」を有しているが、引用発明では「遊技制御基板500は、ホールコンピュータや遊技島の表示器等に向けて遊技球(メダル)投入信号、遊技球(メダル)払出信号、BB中信号、RB中信号、チャレンジタイム(CT)状態やリプレイ状態出力信号を外部集中端子板539を介して送信」している以上、何らかの信号線を有していることは明らかであるが、コネクタについての記載がない点。

<相違点3>
中継信号線に関して、本願発明では「一端が筐体内で遊技機側コネクタに電気的に接続され、他端が前記筐体の後板に穿設した孔部を通って前記筐体外に排出されて外部側コネクタに電気的に接続」されているが、引用発明では信号線がどのように引き回されているのか不明な点。

<相違点4>
中継コネクタに関して、本願発明では「遊技機側コネクタと外部側コネクタとを互いに電気的に繋ぐ複数の特定遊技状態期間信号線をそれぞれ必要に応じて断続可能であって、前記複数の特定遊技状態期間信号線のうち、いずれか一の特定遊技状態期間信号線に接続された前記遊技機側コネクタの入力端子に入力される前記複数の特定遊技状態期間信号のうちいずれか一の特定遊技状態期間信号を、前記一の特定遊技状態期間信号線に接続された前記外部側コネクタの出力端子に送信可能であるとともに、前記一の特定遊技状態期間信号を、前記複数の特定遊技状態期間信号線のうち、前記一の特定遊技状態期間信号線以外の他の特定遊技状態期間信号線に接続された前記外部側コネクタの他の出力端子に送出し得るように、前記一の特定遊技状態期間信号線と前記他の特定遊技状態期間信号線とを互いに繋ぎ替え可能な複数の中継コネクタ」であるのに対して、引用発明では中継コネクタの記載がない点。

<相違点5>
中継コネクタに関して、本願発明では「複数の中継コネクタは、筐体外に配置されるとともに、複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け、複数の遊技情報信号線の全てには設けない」のに対して、引用発明では中継コネクタの記載がなく、中継コネクタを設ける信号線の区別も当然記載されない点。

2.-5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1及び2について
相違点1及び2は、いずれも「筐体」に関連していることから、併せて検討する。
引用文献1に記載された遊技機は、前枠3、内枠67及び外枠77とによって区画された領域内に、遊技機を構成する部材を内蔵しているものであって、遊技制御基板500が当該領域外に設置されることは、遊技機の技術分野の常識から考えてあり得ず、外部集中端子板539も図10にあるように遊技機の裏面に設けられており、遊技制御基板500も、外部集中端子板539も当該領域内に配置されていることは自明である。
そして、「筐体」という構成が、本願発明の実施例のように「特に背面がふさがれた箱体」を意味しているのであれば、遊技機、特にパチスロの技術分野において、そのような筐体を備えることは周知技術(以下、「周知技術1」という。)であって、引用文献6(特開2004-201782号公報)にも「外枠2」として記載されている。
さらに、信号を送出する信号線を、制御装置や中継基板に接続するにあたって、信号線の両端にコネクタを設けることは、引用例をあげるまでもない周知の技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、信号線を接続する対象物が筐体の内部にあればコネクタも筐体の内部にあることになり、対象物が筐体の外部であればコネクタも筐体の外部にあることになるのは、当然のことである。
よって、引用発明において、引用文献1に記載された技術及び周知技術1、周知技術2を用いて、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について
引用文献6の特に【図9】及び【図10】には、遊技機1と遊技機設置島18に設けられた配線接続部21を接続するにあたって、配線20を背板2dに穿設した配線挿通口32もしくは配線操作用の窓孔35を通って遊技機の筐体外に排出する点が記載されており、配線の端部にコネクタを設けることは、2.-5.(1)で検討したとおり周知技術2にすぎず、引用文献6においても遊技機1側のコネクター24、配線接続部21側のプラグ23が記載されている。
よって、引用発明の信号線の引き回しにおいて、引用文献6に記載された発明を用いて、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(4)相違点4及び5について
相違点4及び5は、いずれも「中継コネクタ」に関連していることから、併せて検討する。
引用文献2(特開2005-334487号公報)には、以下の記載がある。
「【0070】
即ち、遊技機端末装置2と回胴式遊技機GMとが同じメーカのものとは限らず、しかもホールHでは回胴式遊技機GMの機種の入替えを頻繁に行うが、この時にも前の機種と同じメーカの新しい機種を導入するとは限らないため、遊技機端末装置2と回胴式遊技機GMとの接続には、何れかの装置のコネクタ6を一端は裸線として他方のコネクタ6と同じものに取り替えることで接続する。この場合には、複数ある遊技台毎にコネクタ6取り替え作業を行う必要があるため、遊技機端末装置2と回胴式遊技機GMとの入替えには多大な労力と時間が必要となってしまう。」
引用文献3(実開平3-91271号のCD-ROM)には、以下の記載がある。
「【0019】
すなわち、第一列目?第五列目の全コネクタハウジング18?36に各信号内容を示す文字がシルク印刷表示されていることにより、各コネクタハウジング18?36に接続するコネクタが容易に識別可能となっている。又、各コネクタハウジング18?36は目的に応じ色分けされることにより、同じく各コネクタハウジング18?36に対応するコネクタが容易に識別可能となっている。なお、前記「AUX1」?「AUX5」は予備の接続部としてのコネクタハウジング25,29?32を示し、新型パチンコ機等の入替え時には、コネクタ37が増加した場合に対応可能となっている。」
引用文献4(特開平10-137413号公報)には、以下の記載がある。
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、昨今では、新機種の遊技機の開発が進み、遊技店では、現在配置されている遊技台と、新機種の遊技機を入れ替えたり、あるいは、現在配置されている位置から、別の位置に移動させる必要がある。このように遊技機を取り替えたり、移動させるためには、遊技機に設けられた遊技機端子台の遊技機端子と、中継ボックスに設けられた中継端子とを接続している数十本の信号線のそれぞれを、取り外して遊技機を移動させ、新しい遊技機は、この遊技機に設けられた複数の遊技機端子と、中継ボックスに設けられた複数の中継端子とを、それぞれ対応して接続する必要があり、この信号線接続作業が、非常に煩雑になっていた。」
つまり、遊技機の技術分野において、ホールで遊技機を入れ換えた際に、遊技機とホールコンピュータとの接続が従来の遊技機と異なる場合に、信号線同士を繋ぎ替えて対応することは、周知技術(以下、「周知技術3」という。)であった。
そして、信号線の繋ぎ替えに際して、本願発明のような「中継コネクタ」を用いることは、中継コネクタ自体が周知技術(以下、「周知技術4」という。)であり、遊技機の技術分野においても、引用文献5(特開2005-52674号公報)の特に【0031】、【図2】に、遊技機用ターミナルボックス149とホール用管理コンピュータとを接続するコネクタ157、158として記載されているように既に用いられていたものである。
さらに、本願発明において、中継コネクタを用いたことによる効果は、中継コネクタそのものが有している効果を単に付加したものにすぎず、その中継コネクタを特定遊技状態期間信号線に限定して設けたとしても、本願発明のそれ以外の構成が有する効果との総和以上の効果が認められない。
また、出願人は、本願発明は相違点5に係る構成のうち「(複数の中継コネクタは)複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け、複数の遊技情報信号線の全てには設けない」という構成を有することをもって、「遊技機の仕様とホールコンピュータの管理形態を確実に一致させることが可能となるとともに、中継コネクタの数を少なくして各特定遊技状態期間信号線同士の繋ぎ替えの間違いを抑止することが可能となる。」という効果が生じることを、平成24年12月17日付け意見書において主張している。
当該主張は、2つの効果の主張から成り立っているため、それぞれについて検討する。
1.「遊技機の仕様とホールコンピュータの管理形態を確実に一致させることが可能となる」
これは遊技機側からの全ての信号線が、過不足なく対応するホールコンピュータ側の端子に接続されれば達成できるものであって、「中継コネクタを複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け、複数の遊技情報信号線の全てには設けない」ことによる効果ではないから、当該主張は当を得ないものである。
2.「中継コネクタの数を少なくして各特定遊技状態期間信号線同士の繋ぎ替えの間違いを抑止することが可能となる」
これは、部品や工程の数が少なければ、間違いや誤差が少なくなるという機械設計の常識に基づいたごく普通の効果でしかなく、「(複数の中継コネクタは)複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け、複数の遊技情報信号線の全てには設けない」という構成を採用することは、当業者が適宜定める程度の設計的事項である。
そもそも、信号線の繋ぎ替え自体は「遊技機の仕様に基いて決定」されるものであって、中継コネクタが設けられた信号線は、どのような種類の信号線であれ、中継コネクタが自身が有する周知の効果によって、繋ぎ替えが容易になることを単に保証しているに過ぎず、本願発明のように、「複数の特定遊技状態期間信号線の全てにそれぞれ独立して設け」ならびに「複数の遊技情報信号線の全てには設けない」と限定したことによる格別の作用効果は認められない。
さらに、本願発明は相違点5に係る構成のうち「複数の中継コネクタは、筐体外に配置される」という構成を有することをもって、「繋ぎ替え作業を筐体の外部から簡単に行うことができるとともに、中継コネクタが筐体内に存在しないため、筐体内の配線の一部として間違われることもない」という効果が生じることが、発明の詳細な説明中に記載されている。
しかしながら、引用文献5に記載された遊技機用ターミナルボックス149とホール用管理コンピュータとを接続するコネクタ157、158が、特に【図2】に記載されているように、図面上遊技機の裏面領域にはなく、これから「複数の中継コネクタは、筐体外に配置される」という構成に到ることは、当業者にとって容易である。
よって、引用発明に、当業者が適宜定める程度の設計的事項、引用文献5に記載された技術、周知技術3及び4を適用して、本願発明の相違点4及び5に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2.-6.進歩性のまとめ
以上のとおり、引用発明において、相違点1?5に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、当該構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1?6に記載された技術、周知技術1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-16 
結審通知日 2013-01-22 
審決日 2013-02-04 
出願番号 特願2006-12565(P2006-12565)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 祐介  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 吉村 尚
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  

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