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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1272083
審判番号 無効2012-800081  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-23 
確定日 2013-03-25 
事件の表示 上記当事者間の特許第4492539号発明「液浸型光学系及び投影露光装置、並びにデバイス製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4492539号の請求項1ないし31に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4492539号(以下「本件特許」という。)は、平成16年9月29日を国際出願日として国際特許出願されたものであって(優先権主張 平成15年9月29日)、平成22年4月16日にその設定登録がなされた。
その後、平成24年5月23日に無効審判が請求され、同年6月19日付けで被請求人に対して答弁指令がなされたが、答弁書が提出されることなく指定期間が経過した。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし31に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明31」という。)は、それぞれ、その本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし31に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の浸液に接触する光学面を有する光学系本体と、
前記光学系本体の光学面に対向して配置され、かつ2つの面を有し、前記2つの面の一方が前記第1の浸液に接触するとともに、前記2つの面の他方が第2の浸液に接触する光透過部材と、
前記光透過部材を前記一方の面が前記光学系本体の前記光学面に対向するように着脱自在に支持する保持部材と
を備える液浸型光学系。
【請求項2】
前記第1及び第2の浸液は、それぞれ水を含むことを特徴とする請求項1記載の液浸型光学系。
【請求項3】
前記第1の浸液は、前記第2の浸液と分離されていることを特徴とする請求項1記載の液浸型光学系。
【請求項4】
前記第1の浸液は、周囲を閉じた閉空間内に収容されており、前記第2の浸液は、周囲を開放した開放空間内に存在することを特徴とする請求項3記載の液浸型光学系。
【請求項5】
前記閉空間内に収容されている前記第1の浸液の量は、前記開放空間内に存在する前記第2の浸液の量よりも多いことを特徴とする請求項4記載の液浸型光学系。
【請求項6】
前記光学系本体と前記光透過部材との間に前記第1の浸液を供給する吐出ノズルと、前記光学系本体と前記光透過部材との間から前記第1の浸液を吸引する吸引ノズルとを有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項7】
前記吸引ノズルは、第1液体供給装置に接続されることを特徴とする請求項6記載の液浸型光学系。
【請求項8】
前記第2の浸液を前記2つの面の他方に接触するように供給する第2液体供給装置と、当該他方の面に接触している前記第2の浸液を回収する液体回収装置とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項9】
前記光学系本体及び前記光透過部材の間の前記第1の浸液と、前記光透過部材に設けた前記他方の面に接触する前記第2の浸液との少なくとも一方を循環させる循環機構をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項10】
前記循環機構は、前記第1の浸液を循環させる第1循環系と、前記第2の浸液を循環させる第2循環系とを有することを特徴とする請求項9記載の液浸型光学系。
【請求項11】
前記第1及び第2の浸液の少なくとも一方の温度を調節する温度調節装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項12】
前記第1及び第2の浸液は、ともに脱イオン水であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項13】
前記光透過部材は、蛍石で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項14】
前記光学系本体の前記光学面を構成する光学素子は、合成石英で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項15】
前記光学系本体を構成する光学素子及び前記光透過部材は、投影露光用の紫外光を透過させることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項16】
前記紫外光は、ArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光、F_(2)レーザ光及び水銀ランプのi線のいずれかであることを特徴とする請求項15記載の液浸型光学系。
【請求項17】
前記光学系本体を構成する光学素子及び前記光透過部材の少なくとも一方は、反射防止膜を有することを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項18】
前記光透過部材は、平行平板、又は屈折率を有するレンズで形成されることを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか一項記載の液浸型光学系。
【請求項19】
投影光学系を用いてパターン像を基板上に投影露光する装置であって、
前記投影光学系は、請求項1から請求項18のいずれか一項記載の液浸型光学系で構成されることを特徴とする投影露光装置。
【請求項20】
投影光学系を用いてパターン像を基板上に投影露光する投影露光装置であって、
前記投影光学系は、
第1の浸液に接触する光学面を有する光学系本体と、
前記光学系本体の光学面に対向して配置され、かつ2つの面を有し、前記2つの面の一方が前記第1の浸液に接触するとともに、前記2つの面の他方が第2の浸液に接触する光透過部材とを有し、
前記第2の浸液で前記基板上に局所的に液浸領域を形成して、前記第1及び第2の浸液を介して前記基板を露光する投影露光装置。
【請求項21】
前記光透過部材を保持する保持部材を有し、
前記保持部材は、前記光学系本体に対して着脱可能に取り付けられる請求項20記載の投影露光装置。
【請求項22】
前記光透過部材は、平行平板状又は屈折率を有するレンズで形成されることを特徴とする請求項20又は請求項21記載の投影露光装置。
【請求項23】
前記第1及び第2の浸液は、それぞれ水を含む請求項20から請求項22のいずれか一項記載の投影露光装置。
【請求項24】
前記第1の浸液は、前記第2の浸液と分離されていることを特徴とする請求項20から請求項23のいずれか一項記載の投影露光装置。
【請求項25】
前記光学系本体と前記光透過部材との間に、前記第1の浸液を供給するとともに、供給した前記第1の浸液を回収する第1供給回収機構をさらに備える請求項20から請求項24のいずれか一項記載の投影露光装置。
【請求項26】
前記第1の浸液の温度を調節する温度調節装置を備えた請求項25記載の投影露光装置。
【請求項27】
前記第1供給回収機構は、前記第1の浸液の循環系を含む請求項26記載の投影露光装置。
【請求項28】
前記基板と前記光透過部材との間に、前記第2の浸液を供給するとともに、前記第2の浸液を回収する第2供給回収機構をさらに備える請求項20から請求項27のいずれか一項記載の投影露光装置。
【請求項29】
前記第2の浸液の温度を調節する温度調節装置を備えた請求項28記載の投影露光装置。
【請求項30】
前記第2供給回収機構は、前記第2の浸液の循環系を含む請求項29記載の投影露光装置。
【請求項31】
請求項19から請求項30のいずれか一項記載の投影露光装置を用いるデバイス製造方法。」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張及び証拠
請求人は、本件発明1?31についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1ないし16号証を提出し、以下のとおりの無効理由I?VIを主張している。
(無効理由I)
本件発明1?3,6?19,31は、出願前の他の特許出願であって出願後に出願公開された甲第1号証の出願当初明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由II)
本件発明1?31は、甲第12号証に記載された発明、周知技術及び技術常識に基いて(無効理由II-1)、甲第12号証及び甲第13号証に記載された発明並びに技術常識に基いて(無効理由II-2)、甲第12号証及び甲第14号証に記載された発明並びに技術常識に基いて(無効理由II-3)、甲第12号証及び甲第15号証に記載された発明並びに技術常識に基いて(無効理由II-4)、甲第12号証に記載された発明及び技術常識に基いて(無効理由II-5)、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由III)
本件発明20は、甲第12号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許をうけることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由IV)
本件発明18,22は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正によるものであるから、このような新規事項追加補正をした特許出願に対してされた本件特許は、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由V)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明16の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号の規定により、特許を受けることができないものである、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(無効理由VI)
本件発明16は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許を受けることができないものである、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(甲第1ないし16号証)
なお、請求人が提出した証拠方法(甲第1?16号証)は、次のとおりである。
(1)甲第1号証:国際公開第2004/107048号(国際出願PCT/EP2004/005816号)
(2)甲第2号証:国際出願PCT/EP2004/005816号の優先権証明書
(3)甲第3号証:Alex k. raub et.al., “Deep UV immersion interferometric lithography ”,Optical Microlithography XVI, Proceedings of SPIE, 2003年6月26日, vol.5040,pp.667-678
(4)甲第4号証:M. Switkes et.al., “Resolution enhancement of 157 nm lithography by liquid immersion”, Optical Microlithography XV, Proceedings of SPIE, 2002年7月30日, vol.4691,pp.459-465
(5)甲第5号証:国際公開第99/49504号
(6)甲第6号証:特開2001-223422号公報
(7)甲第7号証:特開2001-89170号公報
(8)甲第8号証:特開2001-342034号公報
(9)甲第9号証:特開2002-158157号公報
(10)甲第10号証:特開2002-139663号公報
(11)甲第11号証:特開2001-168000号公報
(12)甲第12号証:旧東ドイツ特許出願公告明細書DD-221563号
(13)甲第13号証:米国特許出願公開第2002/167740号明細書
(14)甲第14号証:国際公開第2002/52624号
(13)甲第15号証:特開平10-54932号公報
(14)甲第16号証:特開平10-303114号公報

2 被請求人の応答
被請求人は、平成24年6月19日付けの答弁指令に対して答弁書の提出や訂正請求によって応答することなく、指定期間が経過した。

第4 当審の判断
1 本件発明1について
(1)上記「第3 当事者の主張」の「1 請求人の主張及び証拠」に記載した無効理由I?無効理由VIのうち、はじめに、無効理由IIの無効理由II-1について判断する。
無効理由II-1は、甲第12号証に記載された発明を主引例として、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものであるとするものであるから、甲第12号証刊行物に記載された発明を認定した後、本件発明1と、甲第12号証に記載された発明とを対比することにより、判断する。

(2)甲第12号証刊行物に記載された発明
ア 甲第12号証の記載事項
甲第12号証刊行物には、次の事項が記載されている。(日本語訳を記載する。なお、日本語訳は、請求人が審判請求書において記載した仮訳を採用し、それに基づくものである。また、下線は、当審において付したものである。)

(ア)「本発明は、集積半導体回路を製造するためのフォトリソグラフィ法においてマスク構造を半導体基板上に逐次投影結像するための液浸対物系に関する。」(第1ページ第6?10行)

(イ)「本発明の目標は、液浸対物系を用いた逐次的かつ部分的構造結像時に阻害となる液浸液中の気泡含有および条痕形成を回避すると共に、基板縁、基板支持台および基板背面の液浸液による濡れを阻止することにある。」(第4ページ第3?9行)

(ウ)「本発明に基づく液浸対物系はその半導体基板に対向する側に2つの液浸系を有しており、第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成されている。さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより、形成されている。前記リングはそのために、水平方向の基板支持台移動から見て対物系の前記前側装置の前に少なくともひとつの開口を、また該デバイスの後に少なくともひとつの開口を有しており、これらの開口はその中に設置された閉鎖装置ならびにろ過・サーモスタット装置を備えたチューブまたはパイプ管路を介して、供給・調圧装置と接続されており、さらに前記前側装置の前に配置された開口におけるチューブまたはパイプ管路は前側装置の後に配置された開口におけるチューブまたはパイプ管路と閉鎖系を形成しており、該系内に前記の各装置が統合されている。」(第4ページ第29行?第5ページ第20行)

(エ)「前記前側装置自体において、一方で減圧装置、閉鎖装置、貯留・調圧装置としての容器およびサーモスタット装置を有する液浸液用供給管が設置されており、また他方では前記の供給管が排出管と接続されているため、閉鎖系が構成されている。」(第5ページ第21?28行)

(オ)「液浸露光のために、前記前側装置はその半導体基板に対向したテーパー状開口における光透過性板として、平行平面ガラス板または低屈折力の平凸レンズを有する。」(第6ページ第1?5行)

(カ)「平行平面ガラス板、平凸レンズまたはフォイルと半導体基板上のフォトレジストの表面との間隔が5μm?5mmの範囲にあることが有利である。」(第6ページ第18?24行)

(キ)「構造転写用光源は、その波長が200?450nmのスペクトル領域にある紫外線を有する。」(第7ページ第16?18行)

(ク)「露光ステップのために前側装置は、半導体基板に対向するテーパー状開口に配置された例えば平行平面ガラス板からなる光学的中性層と対物系の対物系側の最終光学素子との間において、液浸液により完全に満たされており、液浸液は絶えず供給および排出されると共に、一定温度に維持される。」(第7ページ第27?36行)

(ケ)「照射範囲における液浸液内の条痕形成を防止するために、液の均等分配手段が供給開口部に設けられる。液体は適切なフィルタを介して排出され、また適切な上記のチューブおよびパイプ管路を介して調圧・貯留装置の温度管理装置に供給され、前記調圧・貯留装置が出口側で再び前側装置と接続することにより、第1液浸系が構成される。」(第8ページ第1?10行)

(コ)「第2液浸系は、転写ステップの開始直前に、液浸液が基板支持台の移動方向から見て前側装置の前にリングに設けられた供給用開口を通って、当該調整・制御装置により半導体基板またはそのフォトレジストおよび湿潤剤を備えた表面に供給され、さらにリングと前側装置の下部の光透過性板との間に形成された液浸液膜が基板支持台の移動中に一定に維持されかつ破断しないように、前側装置が下降することによって形成される。その際に液浸液の供給は、供給開口の前に液体壁が生じるように、分量適正に行われる。」(第8ページ第11?27行)

(サ)「図1に示すように、液浸対物系には対物系1に、その基板支持台16に対向する側で露光口径までテーパー状になっている前側装置7がある。このテーパー状開口は、マウント3.1によって媒質密封的に光透過板3により閉鎖されている。」(第10ページ第1?6行)

(シ)「他の実施形態において、前側装置7の図面右側にある外壁7.1に配置された供給管17は、閉鎖装置15および継手14.1を備えた調圧・貯留装置14に接続されている。図面左側にある外壁7.1に配置された排出管18はろ過・サーモスタット装置8を有しており、その出口8.1は継手14.1に接続されている。対物系側の最終光学素子2と光学的に中性の透過板3との間に存在する空間4は液浸液4.1により完全に満たされており、また該液は供給および排出管17;18ならびに出口8.1および継手14.1を介して広がっているため、閉じた第1液浸系が形成される。」(第10ページ第20?36行)

(ス)「第2の液浸液を形成するために、前側装置7の下側にリング9が設けられるが、該リングには基板移動方向において前側装置7の前後に、それぞれ少なくともひとつの開口10および11が配置されている。開口10;11の複数配置は、例えばそれらが共通の部分円上に位置して前側装置7の下部開口の周囲においてそれぞれ中央を占める仕様とすることができる。リング9における1つまたは複数の開口10は当該の接続および結合要素を介してチューブ管路またはパイプ管路12に接しており、これらの管路はさらに調圧および/または貯留装置14に接続している。その際の管路は、チューブ管路またはパイプ管路12が調圧および/または貯留装置の前で分岐しており、流体技術的には、第2の液浸液4.1のための分岐12.1が、開いた閉鎖装置15を通る流れ方向、およびもう1つの分岐において閉鎖方向に配置された閉鎖装置15.1による流れ方向を与える。」(第11ページ第1?23行)

(セ)「閉鎖装置15の後にろ過・サーモスタット装置8が設置されており、また調圧および/または貯留装置14の後ではその出口側接続部においてチューブ管路またはパイプ管路12が接続しており、さらに分岐の前にはこの方向から流れる液浸液4.1を通過させるように配置された閉塞装置15.1が設置されている。」(第11ページ第24?31行)

(ソ)「供給管として複数のチューブ管路またはパイプ管路12が設けられる場合には、それらは分岐12.1の前で結合され、設けられたすべての開口10を介して液浸液の供給が行われる。」(第11ページ第32?36行)

(タ)「図1に示された変更形態において、1つまたは複数の開口11は吸引部としてのチューブ管路またはパイプ管路13と接続しており、吸引された液浸液4.1は、適切な上記の装置により運ばれ、調整および被覆された半導体基板16上で前側装置7の前への供給のための装置に供給される。」(第12ページ第1?8行)

(チ)「図1にしたがって使用される液浸液4.1は、前側装置7内だけでなく、前側装置7と被覆されたフォトレジスト26;27の表面の間においても温度管理されており、その際に好ましくは22±1℃の温度が一定に維持される。」(第12ページ第16?21行)

(ツ)「図2には、露光ステップのブロック回路図が示されている。
半導体基板の露光は所定の流れプログラムにしたがって行われる、すなわち、半導体基板は湿潤剤により前処理されて露光装置へ送られ、予備調整ステップ後に基板支持台に固定される。
湿潤剤を予備調整または固定ステップ後に、露光装置において直接的に塗布することもできる。
それに続いて、半導体基板と共に基板支持台が前側装置を備えた対物系の下方へ移動し、前側装置が露光距離まで下降する。基板支持台が円形に移動する際に当該開口を通過する温度管理された液浸液の供給により、フォトレジストまたは湿潤剤と前側装置の光透過性板下縁またはリングとの間での安定的な液浸液被膜の形成が行われる。
続くステップでは、第1露光位置に到達するが、同時に更なる液浸液が供給され、半導体基板が位置決めされて、第1露光ステップが行われる。
以後の露光シーケンスが第1露光と同様に半導体基板露光が完了するまで実施された後に、液浸液の供給が停止される。」(第15ページ第1?30行)

(テ)「特許請求の範囲
1.集積半導体回路を製造するためのフォトリソグラフィ法においてマスク構造を半導体基板上に投影結像するための液浸対物系であって、前記対物系と半導体基板との間に配置された前側装置内に供給が制御されかつフォトレジストの屈折率に等しい液体を有する液浸対物系において、対物系(1)に第1の液浸系が設けられており、該対物系(1)に配置された前側装置(7)がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板(3)により媒質密封的に閉鎖されていること、また最終光学素子(2)と光透過性板(3)との間に存在する空間(4)が液浸液(4.1)により完全に満たされていること、さらに第2の液浸系が設けられており、前側装置(7)ではリング(9)が基板(25)表面に平行に光透過性板(3)のケーシング(7.1)に結合されており、前記リングにおいては基板移動方向から見て距離的に対物系(1)の前に少なくともひとつの開口(10)および対物系の後に少なくともひとつの開口(11)が配置されており、これらの開口はチューブまたはパイプ管路(12;13)を介してその中に設置された閉鎖装置(15)ならびに供給・調圧装置(14)を備えたろ過・サーモスタット装置(8)と接続されており、閉鎖系として構成されていることを特徴とする液浸対物系。
2.前側装置(7)には一方で液浸液(4.1)用の複数の管(17)が設置されており、それらには圧力低減装置(5)および閉塞装置(15)が含まれていること、さらに液浸液(4.1)用の貯留・調圧装置(14)としての容器が配置されていること、また他方でろ過・サーモスタット装置(8)を備えた少なくともひとつの排出管(18)が設置されており、該回路は供給および調圧装置(14)の継手(14.1)と共に閉鎖系を形成していることを特徴とする請求項1に記載の液浸対物系。」(第17ページ第1行?第18ページ第13行)

(ト)「9.光透過性板(3)が半導体基板(25)の上方5μmから5mmの範囲に配置されていることを特徴とする請求項1および5?8に記載の液浸対物系。」(第19ページ第12?15行)

(ナ)図面の記載


Fig.1 」

(ニ)図面の記載


Fig.3 」

イ 甲第12号証に記載された発明の認定
図面の記載から、光透過性板(3)が、、対物系(1)の最終光学素子(2)に対向するように、対物系(1)に配置された前側装置(7)のケーシング(7.1)に、マウント(3.1)を介して保持されていることが見て取れる。
上記記載から、甲第12号証には、
「集積半導体回路を製造するためのフォトリソグラフィ法においてマスク構造を半導体基板上に投影結像するための液浸対物系であって、
液浸対物系はその半導体基板に対向する側に2つの液浸系を有しており、第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより形成され、
光透過性板は、対物系の最終光学素子に対向するように、対物系に配置された前側装置のケーシングに、マウントを介して保持されている液浸対物系。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(3)本件発明1と引用発明の対比
ア ここで、本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「対物系」が本件発明1の「光学系本体」に相当し、引用発明の「第1の液浸系」における「液浸液」が本件発明1の「第1の浸液」に相当する。
引用発明においては「対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされる」のだから、引用発明の「最終光学素子」は、液浸液に接する面を有することが明らかであり、引用発明の当該「最終光学素子」の液浸液に接する面が、本件発明1の「第1の浸液に接触する光学面」に相当する。

引用発明においては、「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供される」のであるから、引用発明の「光透過性板」は、「対物系」(の最終光学素子)に対向して配置され、一方の面で第1の液浸系の液浸液に接し、他方の面で第2の液浸系の液浸液に接しているものであることは、明らかである。
よって、引用発明の「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供される」構成における「光透過性板」が、本件発明1の「前記光学系本体の光学面に対向して配置され、かつ2つの面を有し、前記2つの面の一方が前記第1の浸液に接触するとともに、前記2つの面の他方が第2の浸液に接触する光透過部材」に相当する。

引用発明の「光透過性板」を「対物系の最終光学素子に対向するように」「保持」している「前側装置のケーシング」及び「マウント」と、本件発明1の「前記光透過部材を前記一方の面が前記光学系本体の前記光学面に対向するように着脱自在に支持する保持部材」とは、「前記光透過部材を前記一方の面が前記光学系本体の前記光学面に対向するように支持する保持部材」である点で一致する。

引用発明の「液浸対物系」が、本件発明1の「液浸型光学系」に相当する。

イ 一致点
よって、本件発明1と引用発明とは、
「第1の浸液に接触する光学面を有する光学系本体と、
前記光学系本体の光学面に対向して配置され、かつ2つの面を有し、前記2つの面の一方が前記第1の浸液に接触するとともに、前記2つの面の他方が第2の浸液に接触する光透過部材と、
前記光透過部材を前記一方の面が前記光学系本体の前記光学面に対向するように支持する保持部材と
を備える液浸型光学系。」
の発明である点で一致し、次の相違点1で相違する。

ウ 相違点1
光透過部材が、本件発明においては「着脱自在」に保持されているのに対し、引用発明(の光透過性板)においては、その点が明確でない点。

(4)判断
ア 相違点1についての検討
(ア)相違点1に関連する甲第13?15号証の記載
a 甲第13号証刊行物(米国特許出願公開第2002/167740号明細書)には、次の事項が記載されている。(日本語訳を記載する。なお、下線は当審において付したものである。)
「[0044]図3乃至7は、多数の弾性部材15を有するクランプリング14を備えたクランプ装置の形状をした、交換可能な光学部材としての端板3のための接続手段を提供する。これら弾性部材15は、端板3を、マウント5の面装着部6上に押圧する。前記クランプリング14は、L字形状の断面を有している。また、弾性部材15は、径方向の切込みによって形成され、これの上に、端板3が載っている。L字形の他方の脚部は、これの端に、弾性の係合突起(ラメラ(lamellae)、即ち係合突起(barb))16を有し、これらによって、クランプリング14は、マウント5の対応する肩部にラッチされている。必要であれば、マウント5の環状の肩部の代わりに、歯部形状のタイプのものを与えることも可能であり、このような場合には、係合突起16は、歯部と係合する。前記端板3を交換するためのクランプリング14の分離は、係合突起16が歯部に対してずれを生じさせられるまで僅かに回転されるクランプリング14によって、簡単な方法で果たされる。バイヨネット閉塞あるタイプの差込みクロージャは、このようにして形成される。」

b 甲第14号証刊行物(国際公開第2002/52624号)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「前記投影系鏡筒28内には、前記照明光学系31によって照明されるレチクルR上のパターンの像を前記ウエハW上に投影するための投影光学系41が収容されている。この投影光学系41は、光学部材としての複数のレンズエレメント42からなっている。前記投影系鏡筒28の両端の開口部43には、前記平行平板38と同様の光学部材及び光学素子としての平行平板44が嵌合され、その投影系鏡筒28の内部に第1空間としての投影気密室45が形成されている。」(第8ページ第14?19行)
「(ハ) 露光装置20は、保持機構80が、平行平板38,44及びカバーガラス64,76の周囲を保持する枠材81に設けられた突出部82と、先端鏡筒83に設けられ、突出部82が係合する係合部84とを有している。そして、前記保持機構80は、突出部82と係合部84とを係合位置で係合するとともに、突出部82と係合部84との係合をその係合位置と異なる脱着位置で解除するようになっている。
このような簡単な構成の保持機構80を装備することで、不純物で汚染された平行平板38,44及びカバーガラス64,76を容易かつ迅速に脱着することができるという優れた効果を発揮させることができる。このため、露光装置の構成が複雑化するのを回避することができる。」(第18ページ第2?10行)

c 甲第15号証刊行物(特開平10-54932号公報)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付したものである。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体回路パターン等を感光基板上に転写する投影露光装置に用いられる投影光学装置及びそれを含む投影露光装置に関する。」
「【0034】次に、図1及び2に示した投影光学装置10における球面収差及び像面湾曲の調整法を説明する。前述のように投影光学装置10の下端に螺着するガラス枠50を複数個用意しておく。各ガラス枠50にはそれぞれ異なる厚さ及び曲率半径を有するガラス板(レンズ素子)を装着させておく。そして、例えば、特定の厚さ及び曲率半径のガラス板52を有するガラス枠50を装着した投影光学装置10で所定のテストパターンをウエハW上に試し露光し、得られたパターンを観測することで球面収差及び像面湾曲をそれぞれ観測する。かかる観測から調整すべき球面収差及び像面湾曲の量に応じて好適なガラス板の厚み及び曲率半径を有するガラス板52が装着されたガラス枠50を選択し、それを先に投影光学装置10に装着した特定のガラス枠50と交換する。前述のように、ガラス板の厚みは球面収差を調整し、ガラス板52の曲率半径は像面湾曲を調整する。」

(イ)上記甲13号証刊行物の「端板3」、甲第14号証刊行物の「平行平板38,44及びカバーガラス64,76」、甲第15号証刊行物の「ガラス枠50」は、いずれも、露光装置の投影光学系の最終端の位置に、半導体基板に対向して配置された光透過性の部材という意味において、引用発明の「光透過性板」に相当するものである。そして、甲13号証刊行物の「端板3」、甲第14号証刊行物の「平行平板38,44及びカバーガラス64,76」、甲第15号証刊行物の「ガラス枠50」は、いずれも、保持部材に着脱可能に保持されたものであることから、露光装置の投影光学系の最終端の位置に、半導体基板に対向して配置された光透過性の部材を、着脱可能に設けることは、甲第13?15号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。

(ウ)引用発明においても、液浸液中の不純物が付着する等により「光透過性板」が汚れる可能性があることが想定でき、「光透過性板」の汚れを減少させることは自明の課題である。したがって、引用発明において、「光透過性板」の汚れを減少させるために、上記の甲第13?15号証刊行物に記載されている周知技術を適用し、「交換可能」すなわち「着脱可能」として、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明1が奏する作用効果について
そして、本件発明1によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2 本件発明2について
(1)本件発明2と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明2と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点2において相違する。

イ 相違点2
本件発明2においては「第1及び第2の浸液は、それぞれ水を含む」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点2について
a 甲第3号証刊行物には次の事項が記載されている(日本語訳を記載する)。
「2つの液浸液が試験された:脱イオン水及びクライトックスRペルフルオロポリエーテル(PFPE)オイルが検討された。これらの液は193nmのレジストに適合した。クライトックスR28%の、脱イオン水について41%の解像向上率が実証された。」(第667ページ第11?14行)
b 甲第4号証刊行物には次の事項が記載されている(日本語訳を記載する)。
「157nmでの液浸リソグラフィのフィージビリティスタディの結果を示す。」(第459ページ第8行)
「より長い波長では、透明な液浸液について幅広い選択肢があることも指摘する。193nmでは、測定された最も透明な液である脱イオン水のα_(193)は、0.036cm^(-1)(底10)である。」
c甲第5号証刊行物には次の事項が記載されている
「本発明は、・・・更に詳しくは液浸液を用いた投影露光方法及び装置に関する。」(第1ページ第6?10行)
「また、液体7として、本例では例えば純水を使用する。純粋は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できると共に、ウエハ上のフォトレジストや光学レンズに対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないと共に、不純物の含有量が極めて低いため、ウエハの表面、及びレンズ4の表面を洗浄する作用も期待できる。」(第12ページ第1?5行)

上記a?cの記載からも認められるように、液浸液の浸液として水を用いることは、甲第3?5号証刊行物にも記載されているように周知技術であり、「水」は上記甲第5号証刊行物に記載された「容易に大量に入手できる」「ウエハ上のフォトレジストや光学レンズに対する悪影響がない」「環境に対する悪影響がない」「ウエハの表面、及びレンズ4の表面を洗浄する作用」を有するなどの利点を有することを勘案して、引用発明において液浸液に「水」を採用し、上記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明2が奏する作用効果について
そして、本件発明2によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明2は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明2は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 本件発明3について
(1)本件発明3と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 対比
本件発明3と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べた対応関係に加え次の対応関係がある。
すなわち、引用発明の「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより形成され」ていることから、引用発明においては「第1の液浸系」と「第2の液浸系」は光透過性板等によって分離されていることは明らかである。よって、引用発明の「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより形成され」ていることが本件発明3の「前記第1の浸液は、前記第2の浸液と分離されている」ことに相当する。
イ 一致点・相違点
すると、本件発明3と引用発明とは、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「イ 一致点」で述べた一致点に加えて、「前記第1の浸液は、前記第2の浸液と分離されている」ことにおいても一致し、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1で相違する。
(2)判断
そして,上記相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
また、本件発明3によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
よって、本件発明3は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明3は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 本件発明4について
(1)本件発明4と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 対比
本件発明4と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」、及び、上記「3 本件発明3について」の「(1)本件発明3と引用発明の対比・一致点・相違点」の「ア」で述べた対応関係に加え次の対応関係がある。
すなわち、引用発明の「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより形成され」ていることから、引用発明においては「前記第2の浸液」については2つの平行に配置された部材間に供給することから「周囲を開放した開放空間内に存在する」ことは明らかである。よって、引用発明の「第1の液浸系は、対物系に設置された前側装置がその基板に対向するテーパー状開口において光透過性板より媒質密封的に閉じられており、対物系の最終光学素子と前記光透過性板との間の空間が液浸液により完全に満たされることにより形成され、さらに第2の液浸系は、前記前側装置において半導体基板の表面に平行に配置されたリングによって前記光透過性板と半導体基板との間に第2の液浸液が提供されることにより形成され」ていることが本件発明4の「前記第1の浸液は、周囲を閉じた閉空間内に収容されており、前記第2の浸液は、周囲を開放した開放空間内に存在する」ことに相当する。
イ 一致点・相違点
すると、本件発明4と引用発明とは、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比の「イ 一致点」、及び、上記「3 本件発明3について」の「(1)本件発明3と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ 一致点・相違点」で述べた一致点に加えて、「前記第1の浸液は、周囲を閉じた閉空間内に収容されており、前記第2の浸液は、周囲を開放した開放空間内に存在する」ことにおいても一致し、「ウ 相違点」において記載した相違点1で相違する。
(2)判断
そして,上記相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
また、本件発明4によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
よって、本件発明4は、本件発明3と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明4は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 本件発明5について
(1)本件発明5と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明5と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」、「3 本件発明3について」の「(1)本件発明3と引用発明の対比・一致点・相違点」の「ア 対比」、及び、「4 本件発明4について」の「(1)本件発明4と引用発明の対比・一致点・相違点」の「ア 対比」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「4 本件発明4について」の「(1)本件発明4と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ 一致点・相違点」で述べた一致点において一致し、そして、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点5において相違する。

イ 相違点5
本件発明5においては「前記閉空間内に収容されている前記第1の浸液の量は、前記開放空間内に存在する前記第2の浸液の量よりも多い」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点5について
第1の浸液の量及び第2の浸液の量をどの程度にするかは、投影光学系を含めた装置全体に起因する要請に応じて当業者が適宜設定し得る設計事項である。
したがって、第1の浸液の量は第2の浸液の量より多いと設定した点は、単なる設計的事項であり、それによって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明5が奏する作用効果について
そして、本件発明5によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明5は、本件発明4と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明5は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 本件発明6について
(1)本件発明6と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明6と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点6において相違する。

イ 相違点6
本件発明6においては「前記光学系本体と前記光透過部材との間に前記第1の浸液を供給する吐出ノズルと、前記光学系本体と前記光透過部材との間から前記第1の浸液を吸引する吸引ノズルとを有する」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明6の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点6について
相違点6について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(ケ)及び図面の記載(ニ)から、甲第12号証刊行物には、「光学系本体と光透過部材(光透過性板)との間に第1の浸液を供給する吐出ノズルと、光学系本体と光透過部材(光透過性板)との間から第1の浸液を吸引する吸引ノズルとを有する」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点6は、本件発明6と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点6によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明6が奏する作用効果について
そして、本件発明6によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明6は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明6は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 本件発明7について
(1)本件発明7と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明7と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1及び上記「6 本件発明6について」の「(1)本件発明6と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」に記載した相違点6に加えて次の相違点7において相違する。

イ 相違点7
本件発明7においては「前記吸引ノズルは、第1液体供給装置に接続される」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明7の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点6について
相違点6については、上記「6 本件発明6について」の「(2)判断」の「(イ)相違点6について」において既に検討したとおり、相違点6に係る本件発明7の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(ウ)相違点7について
相違点7について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(ケ)及び図面の記載(ニ)から、甲第12号証刊行物には、「吸引ノズルは、第1液体供給装置に接続される」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点7は、本件発明7と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点7によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明7が奏する作用効果について
そして、本件発明7によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明7は、本件発明6と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明7は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

8 本件発明8について
(1)本件発明8と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明8と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点8において相違する。

イ 相違点8
本件発明8においては「前記第2の浸液を前記2つの面の他方に接触するように供給する第2液体供給装置と、当該他方の面に接触している前記第2の浸液を回収する液体回収装置とをさらに備える」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明8の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点8について
相違点8について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(コ)並びに図面の記載(ナ)及び(ニ)から、甲第12号証刊行物には、「第2の浸液を光透過性板の2つの面の他方に接触するように供給する第2液体供給装置と、当該他方の面に接触している第2の浸液を回収する液体回収装置とをさらに備える」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点8は、本件発明8と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点8によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明8が奏する作用効果について
そして、本件発明8によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明8は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明8は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

9 本件発明9について
(1)本件発明9と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明9と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点9において相違する。

イ 相違点9
本件発明9においては「前記光学系本体及び前記光透過部材の間の前記第1の浸液と、前記光透過部材に設けた前記他方の面に接触する前記第2の浸液との少なくとも一方を循環させる循環機構をさらに備える」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明9の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点9について
相違点9について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(ツ)並びに図面の記載(ナ)及び(ニ)(特に、(ツ)には、「ろ過・サーモスタット装置(8)を備えた少なくともひとつの排出管(18)が設置されており、該回路は供給および調圧装置(14)の継手(14.1)と共に閉鎖系を形成している」こと記載されており、上記「閉鎖系」は「循環機構」であるといえる。)から甲第12号証刊行物には、「光学系本体及び前記光透過部材の間の前記第1の浸液と、光透過部材に設けた他方の面に接触する前記第2の浸液との少なくとも一方を循環させる循環機構をさらに備える」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点9は、本件発明9と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点9によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明9が奏する作用効果について
そして、本件発明9によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明9は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明9は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

10 本件発明10について
(1)本件発明10と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明10と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1及び上記「9 本件発明9について」の「(1)本件発明9と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」に記載した相違点9に加えて次の相違点10において相違する。

イ 相違点10
本件発明10においては「前記循環機構は、前記第1の浸液を循環させる第1循環系と、前記第2の浸液を循環させる第2循環系とを有する」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明10の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点9について
相違点9については、上記「9 本件発明9について」の「(2)判断」の「(イ)相違点9について」において既に検討したとおり、相違点9に係る本件発明10の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(ウ)相違点10について
相違点10は、循環機構を「第1の浸液」の供給・排出回路と「第2の液浸」の供給・排出回路の両方に設けることを意味している。これに対して、甲第12号証には、「9 本件発明9について」の「(2)判断」の「(イ)相違点9について」において記載したように、循環機構を「第1の浸液」の供給・排出回路と「第2の液浸」の供給・排出回路の少なくとも一方に設けることが記載されている。そして、同様の2つの供給・排出回路の一方に設けたものを他方にも設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることに過ぎないから、上記の一方に設けられた循環機構を他方にも設け、上記相違点10に係る本件発明10の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本件発明10が奏する作用効果について
そして、本件発明10によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明10は、本件発明9と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明10は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

11 本件発明11について
(1)本件発明11と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明11と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点11において相違する。

イ 相違点11
本件発明11においては「前記第1及び第2の浸液の少なくとも一方の温度を調節する温度調節装置をさらに備える」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明11の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点11について
相違点11について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(チ)には、「液浸液4.1は、前側装置7内だけでなく、前側装置7と被覆されたフォトレジスト26;27の表面の間においても温度管理されており、その際に好ましくは22±1℃の温度が一定に維持される」と記載されており、第1の浸液又は第2の浸液の温度を管理する温度調節装置が設けられていることは明らかであるから、甲第12号証刊行物には、「第1及び第2の浸液の少なくとも一方の温度を調節する温度調節装置をさらに備える」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点11は、本件発明11と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点11によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明11が奏する作用効果について
そして、本件発明11によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明11は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明11は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

12 本件発明12について
(1)本件発明12と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明12と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点12において相違する。

イ 相違点12
本件発明12においては「第1及び第2の浸液は、ともに脱イオン水である」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明12の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点12について
相違点12については、甲第3?5号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。(甲第3?5号証刊行物の記載事項については、「2 本件発明2について」の「(2)判断」の「ア 各相違点についての検討」の「(イ)相違点2について」の記載参照)
すなわち、液浸液の浸液として脱イオン水(純水)を用いることは、甲第3?5号証刊行物にも記載されているように周知技術であり、「水」は上記甲第5号証刊行物に記載された「容易に大量に入手できる」「ウエハ上のフォトレジストや光学レンズに対する悪影響がない」「環境に対する悪影響がない」「ウエハの表面、及びレンズ4の表面を洗浄する作用を有する」などの利点を有することを勘案して、引用発明において液浸液に「脱イオン水(純水)」を採用し、上記相違点12に係る本件発明12の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明12が奏する作用効果について
そして、本件発明12によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明12は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明12は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

13 本件発明13について
(1)本件発明13と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明13と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点13において相違する。

イ 相違点13
本件発明13においては「光透過部材は、蛍石で形成されている」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明13の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点13について
相違点13については、甲第6?8号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。

a 甲第6号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0007】また微細な加工を行うための次世代露光機として、波長が193nmのアルゴンフッ素(ArF)エキシマレーザを露光光源に用いた露光機が用いられ始めて
おり、これはArF露光機と呼ばれる。
【0008】ArF露光機では、縮小投影光学系には、通常、石英と蛍石の二種の材質から成る色消しレンズが用いられる。」
「【0012】一方、このようなフッ素レーザを露光光源として用いるフッ素露光機では、それまで(すなわちArF露光機まで)の露光機で一般に用いられてきたレンズのみによる屈折型の縮小投影光学系が適用困難になる。
【0013】その理由としては、波長157nmでは、一般に紫外域での透過率が高いとされている合成石英においても、透過率が1cm当たり約10%以下と非常に低くなるため、合成石英も利用できなくなる。従って、従来においては、フッ素レーザ用の光学部材としては、フッ化カルシウムのみが利用されていた。」
b 甲第7号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線レーザー、特に波長157nmのF_(2)エキシマレーザの透過材料として好適に使用できる光学用シリカガラス部材に関し、紫外線用の光学系を構成する、例えばF_(2)エキシマレーザー用のレンズ、ウィンドウ、フィルター、ビームスプリッター、フォトマスクなどの光学部材に適したF_(2)エキシマレーザー透過用光学シリカガラス部材及びその製造方法に関する。」
「【0005】しかしながら、F_(2)エキシマレーザー用の光学材料としては、その発振波長が157nmとArFよりもさらに短いため、KrF、ArF用の従来の合成シリカガラスでは、十分な透過率が得られず使用できなかった。これまでは使用できる光学材料は蛍石(フッ化カルシウム)しかなく、そのため露光装置の設計上の大きな制約となっていた。一方、シリカガラスの157nmに対する透過率の向上にはフッ素をシリカガラス中にドープすることで大幅に改善されることが知られている。特開平4-19510号にはシリカガラス中にフッ素をドープすることにより、155?400nmの広い波長領域にわたって構造欠陥による吸収を軽減、若しくは、ほとんど消失させることができ、さらに、高エネルギー紫外線を長期にわたって照射しても構造欠陥が生じないようにする方法が示されている。
【0006】また、特開平8-67530号には、シリカガラスにフッ素を1mol%以上及びOH基濃度10ppm以上ドープすることで、ArFエキシマレーザーに対する安定性を向上せしめる技術が開示されているが、同公報には同時に、F_(2)エキシマレーザー波長領域である157nm付近の紫外線透過率が大幅に改善されていることが示されている。さらに、特開平8-75901号には、フッ素と水素をドープすると共にOH基の濃度を制御することにより、真空紫外域の透過率及び耐紫外線性に優れた合成シリカガラスの製造方法を提供している。」
c 甲第8号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、F_(2)エキシマレーザー光を透過するレンズ、プリズム、フィルター、フォトマスク等の合成石英ガラス光学部材及びそのための光学材料に関する。」
「【0006】しかしながら、F_(2)エキシマレーザー用の光学材料としては、その発振波長が157nmとArFエキシマレーザーより更に短い為、KrF、ArF用の従来の合成石英ガラスでは、充分な透過率が得られず、使用出来なかった。このため使用できる光学材料は蛍石しかなく、装置設計上の大きな制約となっていた。」

上記a?cの記載からも認められるように、投影露光装置の光学素子としてArFエキシマレーザ用等より短い波長のレーザに使用できる材料である「蛍石」を用いることは周知技術である。引用発明においも、より短波長のレーザ光を使用するために光学部材である光透過性板として「蛍石」を採用し、上記相違点13に係る本件発明13の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明13が奏する作用効果について
そして、本件発明13によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明13は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明13は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

14 本件発明14について
(1)本件発明14と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明14と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点14において相違する。

イ 相違点14
本件発明14においては「光学系本体の前記光学面を構成する光学素子は、合成石英で形成されている」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明14の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点14について
相違点14については、甲第6?8号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。(上記「13 本件発明13について」の「(2)判断」の「ア 各相違点についての検討」の「(イ)相違点13について」の記載参照)

上記a?cの記載からも認められるように、投影露光装置の光学素子として合成石英を用いることは、甲第6?8号証刊行物にも記載されているように、周知技術である。引用発明においも、上記の周知技術を採用し、上記相違点14に係る本件発明14の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明14が奏する作用効果について
そして、本件発明14によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明14は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明14は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

15 本件発明15について
(1)本件発明15と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明15と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点15において相違する。

イ 相違点15
本件発明15においては「前記光学系本体を構成する光学素子及び前記光透過部材は、投影露光用の紫外光を透過させる」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明15の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点15について
相違点15について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(キ)には、「構造転写用光源は、その波長が200?450nmのスペクトル領域にある紫外線を有する。」こと記載されており、この記載から甲第12号証刊行物には、「光学系本体を構成する光学素子及び光透過部材は、投影露光用の紫外光を透過させる」ことが記載されているに等しいといえる。
そうすると、上記相違点15は、本件発明15と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点15によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明15が奏する作用効果について
そして、本件発明15によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明15は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明15は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

16 本件発明16について
(1)本件発明16と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明16と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1及び上記「15 本件発明15について」の「(1)本件発明15と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」に記載した相違点15に加えて次の相違点16において相違する。

イ 相違点16
本件発明16においては「投影露光用の紫外光」が「ArFエキシマレーザ光、KrFエキシマレーザ光、F_(2)レーザ光及び水銀ランプのi線のいずれかである」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明16の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点15について
相違点15については、上記「15 本件発明15について」の「(2)判断」の「(イ)相違点15について」において既に検討したとおり、上記相違点15は、本件発明15と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点15によって発明の進歩性が生じるものではない。
(ウ)相違点16について
相違点16については、甲第6?8号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。(上記「13 本件発明13について」の「(2)判断」の「ア 各相違点についての検討」の「(イ)相違点13について」の記載参照)
引用発明においても、上記の周知技術を採用し、上記相違点16に係る本件発明16の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明16が奏する作用効果について
そして、本件発明16によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明16は、本件発明15と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明16は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

17 本件発明17について
(1)本件発明17と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明17と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点17において相違する。

イ 相違点17
本件発明17においては「前記光学系本体を構成する光学素子及び前記光透過部材の少なくとも一方は、反射防止膜を有する」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明17の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点17について
相違点17については、甲第9?11号証刊行物に記載されているように周知の技術的事項である。

a 甲第9号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0014】 また、マスクのパターンを照明した光束は、投影光学系を構成する複数の光学素子を介してウエハ上にパターン像を結像するが、これらの光学素子は反射防止膜で被膜されており、膜を透過する際の光路長の差異等により光学素子の中心と外周側とでは光束の透過率が若干異なる。そのため、ウエハ上の照度分布は、中心側が外側に比較して大きくなる傾向があり、従来では中心側の照度を抑えることでこの照度分布を、例えば1%以下の照度むらの範囲に均一化していた。ところが、大σ形状の光束のみならず、小σ形状、さらには輪帯形状の光束を選択して用いると、ウエハ上の照度分布を所定範囲内に抑えることが困難であった。」
b 甲第10号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0038】投影露光装置の全体概略構成を図3に示しており、この投影露光装置STPは、光源2から出射される露光光を照明レンズ3からレチクルRに照射してレチクルRを均一に照明するための露光用照明光学系1を有する。レチクルRは、図3(A)に示すように、表面に露光転写される回路パターンPが形成されており、投影露光装置STPの所定位置に保持されて、露光用照明光学系1から均一な露光光が照射される。レチクルRの下側(露光光の出射側)に透明なガラス板からなる補正板5が配設されている。」
「【0087】次に、ステップS42の工程へ移行する。ここでは、レンズ加工装置(光学部材加工装置)及びレンズ研磨装置(光学部材研磨装置)を用いて、ガラスインゴットから切り出された多数の光学ガラス部材の加工及び研磨を行い、その加工及び研磨されたレンズLが光学設計値どおりとなって投影レンズ10を構成する光学部材として機能するまで(許容製造誤差となるまで)加工及び研磨の工程が繰り返される。
【0088】次に、加工及び研磨を終えたレンズ部品に、その透過率等を高めるために反射防止膜が薄膜形成装置によってコートされ、投影レンズ10を組み上げるためのレンズLが製造される。」
「【0151】その後、図26の研磨装置により加工されたディストーション補正板5に対して反射防止膜を蒸着し、図3の投影光学装置の所定位置に加工されたディストーション補正板を載置する。尚、図26の研磨装置においては、研磨皿123はXY方向において固定されているが、ステージ121をXY方向へ移動させる代わりにこの研磨皿123を移動させても良い。」
c 甲第11号証刊行物には次の事項が記載されている。
「【0156】次いで、投影光学系PLに挿入されていた未加工の像歪み補正板G1を取り外し、図11に示す専用研磨加工機のXYステージ上にセットする。そして、回転研磨ヘッド部を計算された傾斜角度で所望の研磨領域に所定の力で押圧することにより、ステップS15の算出結果に基づいて、像歪み補正板G1の補正面を所要の面形状に研磨加工する(S16)。また、研磨加工された像歪み補正板G1の補正面には、必要に応じて、所要のコート(反射防止膜など)が施される。 最後に、研磨加工された像歪み補正板G1を、投影光学系PL中の所定位置に挿入して位置決めする(S17)。すなわち、研磨加工された像歪み補正板G1を、研磨加工前のディストーション特性計測の時点で未加工の像歪み補正板G1が設置されていた位置に戻す。」

上記a?cの記載からも認められるように、投影露光装置の光学素子等に「反射防止膜」を設けることは周知技術である。引用発明においても、光学特性の向上のため、投影露光装置の光学素子等に「反射防止膜」を採用し、上記相違点17に係る本件発明17の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。

イ 本件発明17が奏する作用効果について
そして、本件発明17によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明17は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明17は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

18 本件発明18について
(1)本件発明18と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明18と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「ウ 相違点」において記載した相違点1に加えて次の相違点18において相違する。

イ 相違点18
本件発明18においては「前記光透過部材は、平行平板、又は屈折率を有するレンズで形成される」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点1について
相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明18の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
(イ)相違点18について
相違点18について、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(オ)には、「液浸露光のために、前記前側装置はその半導体基板に対向したテーパー状開口における光透過性板として、平行平面ガラス板または低屈折力の平凸レンズを有する。」と記載されており、この記載から甲第12号証刊行物には、「光透過部材(光透過性板)は、平行平板、又は屈折率を有するレンズで形成される」ことが記載されているといえる。)
そうすると、上記相違点18は、本件発明18と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点18によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明18が奏する作用効果について
そして、本件発明18によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明18は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明18は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


19 本件発明19について
(1)本件発明19と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 対比
本件発明19と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べた対応関係に加え次の対応関係がある。
すなわち、引用発明の「集積半導体回路を製造するためのフォトリソグラフィ法においてマスク構造を半導体基板上に投影結像するための液浸対物系」であることが本件発明19の「投影光学系を用いてパターン像を基板上に投影露光する装置であって、前記投影光学系は、液浸型光学系で構成される」ことに相当する。
イ 一致点・相違点
すると、本件発明19と引用発明とは、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「イ 一致点」で述べた一致点に加えて、「投影光学系を用いてパターン像を基板上に投影露光する装置であって、前記投影光学系は、液浸型光学系で構成される」ことにおいても一致し、「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ 相違点」において記載した相違点1で相違する。
(2)判断
そして,上記相違点1については、上記「2 本件発明1について」の「(4)判断」において既に検討したとおり、相違点1に係る本件発明19の発明特定事項を得ることは当業が容易になし得たことである。
また、本件発明19によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
よって、本件発明19は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明19は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

20 本件発明20について
(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明20と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、次の相違点20において相違する。

イ 相違点20
本件発明20においては「前記第2の浸液で前記基板上に局所的に液浸領域を形成」するのに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 相違点20についての検討
相違点20については、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(コ)(ソ)及び(タ)の記載、並びに、(ナ)及び(ニ)の記載から、甲第12号証には、「第2の浸液で基板上に局所的に液浸領域を形成」することが記載されているといえる。)
そうすると、上記相違点20は、本件発明20と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明20が奏する作用効果について
そして、本件発明20によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明20は、本件発明1と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明20は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

21 本件発明21について
(1)本件発明21と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明21と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ウ」の相違点1及び上記「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20において相違する。

(2)判断
ア 相違点1,20についての検討
相違点1については、上記「1 本件発明1について」の「(4)判断」において述べたように、引用発明に甲第13?15号証刊行物に記載されている周知技術を適用し、「光透過性板」を「着脱可能」として、上記相違点1に係る本件発明21の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。
また、相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において述べたように、上記相違点20は、本件発明20と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。

イ 本件発明21が奏する作用効果について
そして、本件発明21によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ よって、本件発明21は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明21は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

22 本件発明22について
(1)本件発明22と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明22と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20に加えて次の相違点22において相違する。
イ 相違点22
本件発明22においては「前記光透過部材は、平行平板、又は屈折率を有するレンズで形成される」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20について
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点22について
相違点22は、上記「18 本件発明18について」の「(1)本件発明18と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点18と同様の相違点である。よって、相違点22については、上記「18 本件発明18について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点18と同様に、上記相違点22は、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明22が奏する作用効果について
そして、本件発明22によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明22は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明22は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

23 本件発明23について
(1)本件発明23と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明23と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20に加えて次の相違点23において相違する。
イ 相違点23
本件発明23においては「第1及び第2の浸液は、それぞれ水を含む」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20について
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点23について
相違点23は、上記「2 本件発明2について」の「(1)本件発明2と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点2と同様の相違点である。よって、相違点2については、上記「2 本件発明2について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点2と同様に、上記相違点23に係る本件発明23の発明特定事項を得ることはことは当業者が容易に想到し得ることである。
イ 本件発明23が奏する作用効果について
そして、本件発明23によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明23は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明23は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

24 本件発明24について
(1)本件発明24と引用発明の対比・一致点・相違点
本件発明24と引用発明を対比すると、上記「3 本件発明3について」の「(1)本件発明3と引用発明の対比・一致点・相違点」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点(「前記第1の浸液は、前記第2の浸液と分離されている」ことにおいても一致しすることも含む)において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20において相違する。

(2)判断
ア 相違点20についての検討
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明24が奏する作用効果について
そして、本件発明24によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明24は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明24は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

25 本件発明25について
(1)本件発明25と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明25と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20に加えて次の相違点25において相違する。
イ 相違点25
本件発明25においては「前記光学系本体と前記光透過部材との間に、前記第1の浸液を供給するとともに、供給した前記第1の浸液を回収する第1供給回収機構をさらに備える」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20について
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点25について
相違点25については、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(ケ)(コ)及び図面の記載(ナ)(ニ)から、甲第12号証刊行物には、「光学系本体と光透過部材(光透過性板)との間に、第1の浸液を供給するとともに、供給した第1の浸液を回収する第1供給回収機構をさらに備える」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点25は、本件発明25と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点25によって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明25が奏する作用効果について
そして、本件発明25によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明25は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明25は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

26 本件発明26について
(1)本件発明26と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明26と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20及び「25 本件発明25について」の「(1)本件発明25と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点25に加えて次の相違点26において相違する。
イ 相違点26
本件発明26においては「第1の浸液の温度を調節する温度調節装置を備え」るのに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20、25について
相違点20及び25については、それぞれ、上記「20 本件発明20について」「25 本件発明25について」において既に検討したとおり、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点26について
相違点26は、上記「11 本件発明11について」の「(1)本件発明11と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点11と同様の相違点である。よって、相違点26については、上記「11 本件発明11について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点11と同様に、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明26が奏する作用効果について
そして、本件発明26によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明26は、本件発明25と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明26は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

27 本件発明27について
(1)本件発明27と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明27と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20、「25 本件発明25について」の「(1)本件発明25と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点25及び「26 本件発明26について」の「(1)本件発明26と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点26に加えて次の相違点27において相違する。
イ 相違点27
本件発明27においては「前記第1供給回収機構は、前記第1の浸液の循環系を含む」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20、25及び26について
相違点20、25及び26については、それぞれ、上記「20 本件発明20について」「25 本件発明25について」及び「26 本件発明26について」において既に検討したとおり、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点27について
相違点27は、上記「9 本件発明9について」の「(1)本件発明9と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点9と同様の相違点である。よって、相違点27については、上記「9 本件発明9について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点9と同様に、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明27が奏する作用効果について
そして、本件発明27によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明27は、本件発明26と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明27は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

28 本件発明28について
(1)本件発明28と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明28と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20に加えて次の相違点28において相違する。
イ 相違点28
本件発明28においては「前記基板と前記光透過部材との間に、前記第2の浸液を供給するとともに、前記第2の浸液を回収する第2供給回収機構をさらに備える」のに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20について
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点28について
相違点28については、甲第12号証刊行物に記載されている技術的事項である。(上記「1 本件発明1について」の「(2)甲第12号証刊行物に記載された発明」の「ア 甲第12号証の記載事項」の(ケ)(コ)及び図面の記載(ナ)(ニ)から、甲第12号証刊行物には、「基板と光透過部材(光透過性板)との間に、第2の浸液を供給するとともに、第2の浸液を回収する第2供給回収機構をさらに備える」ことが記載されていることは明らかである。)
そうすると、上記相違点28は、本件発明28と甲第12号証刊行物に記載されているものとの相違点ではないので、上記相違点28によって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明28が奏する作用効果について
そして、本件発明28によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明28は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明28は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

29 本件発明29について
(1)本件発明29と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明29と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20及び「28 本件発明28について」の「(1)本件発明28と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点28に加えて次の相違点29において相違する。
イ 相違点29
本件発明29においては「第2の浸液の温度を調節する温度調節装置を備え」るのに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20、28について
相違点20及び28については、それぞれ、上記「20 本件発明20について」「28 本件発明28について」において既に検討したとおり、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点29について
相違点29は、上記「11 本件発明11について」の「(1)本件発明11と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点11と同様の相違点である。よって、相違点29については、上記「11 本件発明11について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点11と同様に、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明29が奏する作用効果について
そして、本件発明29によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明29は、本件発明28と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明29は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

30 本件発明30について
(1)本件発明30と引用発明の対比・一致点・相違点
ア 本件発明30と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」及びで述べたのと全く同様の対応関係にあり、「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20、「28 本件発明28について」の「(1)本件発明28と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点28及び「29 本件発明29について」の「(1)本件発明29と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点29に加えて次の相違点30において相違する。
イ 相違点30
本件発明30においては「前記第2供給回収機構は、前記第2の浸液の循環系を含む」るのに対して、引用発明においては、その点の特定がない点。

(2)判断
ア 各相違点についての検討
(ア)相違点20、28及び29について
相違点20、28及び29については、それぞれ、上記「20 本件発明20について」「28 本件発明28について」及び「29 本件発明29について」において既に検討したとおり、それらによって発明の進歩性が生じるものではない。
(イ)相違点30について
相違点30は、上記「9 本件発明9について」の「(1)本件発明9と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」で述べた相違点9と同様の相違点である。よって、相違点30については、上記「9 本件発明9について」の「(2)判断」ですでに検討した相違点9と同様に、それによって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明30が奏する作用効果について
そして、本件発明30によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明30は、本件発明29と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明30は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

31 本件発明31について
(1)本件発明31と引用発明の対比・一致点・相違点
本件発明31と引用発明を対比すると、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「ア」で述べた対応関係に加え次の対応関係がある。
すなわち、引用発明の「集積半導体回路を製造するためのフォトリソグラフィ法」が、本件発明31の「投影露光装置を用いるデバイス製造方法」ことに相当する。
そうすると、本件発明31と引用発明とは、上記「1 本件発明1について」の「(3)本件発明1と引用発明の対比」の「イ 一致点」で述べた一致点において一致し、そして、「20 本件発明20について」の「(1)本件発明20と引用発明の対比・一致点・相違点」の「イ」の相違点20において相違する。

(2)判断
ア 相違点20についての検討
相違点20については、上記「20 本件発明20について」の「(2)判断」において既に検討したとおり、上記相違点20によって発明の進歩性が生じるものではない。
イ 本件発明31が奏する作用効果について
そして、本件発明31によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
ウ よって、本件発明31は、本件発明20と同様に引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明31は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

32 まとめ
以上のとおり、本件発明1?31は、いずれも、甲第12号証に記載された発明、周知技術及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第5 結論
以上のとおりであるから、他の無効理由および証拠を検討するまでもなく、本件特許第4492539号の請求項1ないし31に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-11 
結審通知日 2013-01-16 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2005-514258(P2005-514258)
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 北川 清伸
川俣 洋史
登録日 2010-04-16 
登録番号 特許第4492539号(P4492539)
発明の名称 液浸型光学系及び投影露光装置、並びにデバイス製造方法  
代理人 須田 洋之  
代理人 西島 孝喜  
代理人 辻居 幸一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 上杉 浩  
代理人 谷口 信行  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 吉田 和彦  

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