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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20129701 審決 特許
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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E03C
管理番号 1272285
審判番号 不服2011-26964  
総通号数 161 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-13 
確定日 2013-04-04 
事件の表示 特願2008-246893「カウンターとシンクの接合構造」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 4月 8日出願公開、特開2010- 77674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年9月25日の出願であって、平成23年10月24日付け(11月1日発送)で拒絶査定され、これに対し、同年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。
審判合議体は、平成24年6月4日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行ったが、請求人から回答書の提出はなかった。

第2.平成23年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年12月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成23年12月13日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
カウンターの開口部にシンクが組み付けられ、カウンターの開口部端面とシンクのフランジ部とが、合成樹脂を主体とし且つ製品面側から裏面側に向かって形成された接合部材を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造において、
前記接合部材は、
製品面側に位置し且つ前記カウンターの色と略同じ色に形成された第1接着層と、
該第1接着層の裏面に位置する第2接着層と
の2層からなり、
前記第1接着層には柄や模様を形成するための柄材が配合され、
この柄材は、その比重が前記合成樹脂の比重の1.1倍以上1.2倍未満に形成されていると共にその粒径が0.6mm以下に形成され、
前記接合部材の製品面側に柄材が位置して当該接合部材の製品面に柄や模様が形成されている
ことを特徴とするカウンターとシンクの接合構造。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成23年8月12日付け手続補正による補正)の請求項1における「柄材の比重」について、「合成樹脂の比重に比べ僅かに重く形成されて」とあったものを「合成樹脂の比重の1.1倍以上1.2倍未満に形成されて」と、合成樹脂からなる第1接着層に配合される柄材の特性(比重)を限定したものであるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2.引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開2008-156940号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【0019】
図例のキッチンカウンタAは、図1乃至図3に示すように、耐熱性の樹脂で成型された人造大理石のカウンタ10と、絞り成型されたステンレス製のシンク20とを備える。
カウンタ10は、前記収容部(不図示)の天板を構成し、その手前側縁は垂下し、前垂れ部11が形成され、後方側縁は立ち上り、バックガード12が形成され、略中央には平面視略長方形で角が丸く形成されたシンク20が配設される開口部13が開設されている。開口部13は、シンク20のフランジ部22の外周縁よりも、やや大径に成型されている。
また、カウンタ10の開口部13近傍の裏面16には、桟木40が周設されている。桟木40は、合板やパーチクルボード、角材等の木製あるいは合成樹脂で断面視矩形に形成され、開口部13の内周縁15から一定の間隔を空けて、その全周に亘って裏面16に固着されている。
【0020】
シンク20の底面21の中央後方側には、排水口21aが形成され、上方は開口しており、その開口外周上端縁には、外方に向けて延出するフランジ部22が形成されている。
フランジ部22は、テーパ部23を有して内方に向けてやや傾斜した形状とされ、テーパ部23よりも外周側には、水平部24が形成され、水平部24の外周縁から床面に対し略垂直に延びた折返し片25が周設されている。折返し片25には、全周に亘って間隔を空けて複数箇所に保持孔25bが開設されている。
【0021】
カウンタ10とシンク20とは接合部30を介して接合固着されており、接合部30は、カウンタ10の表面側14とシンク20の上端部となるフランジ部22の水平部24の表面側24aとに位置する第1接合層31と、それらの裏面側に位置する第2接合層32とからなり、開口部13の内周縁15に折返し片25を対向させて、カウンタ10とシンク20との表面側14、24aを、隙間を介して整合させた状態に保持し、その状態で、それらの裏面側より第1接合層31を形成する第1硬質接着剤と第2接合層32を形成する第2硬質接着剤とを注入することにより形成されて、第1接合層31の一部が目地Jを形成するように隙間の表面側に露出する構成としており、更に、本実施形態では、カウンタ10とシンク20との表面側14、24aが目地Jを挟んで、略面一となるように形成している。」

イ.「【0022】
詳しくは、目地Jに対応させて環状に形成されたシリコンゴム冶具(不図示)が配設された台座(不図示)上に、カウンタ10を上下反転して載置し、カウンタ10の開口部13にシンク20を上下反転して該台座上に載置して、目地Jに対応する箇所に前記シリコンゴム冶具が弾接するように配置する。
この際、カウンタ10の開口部13の内周縁15とシンク20のフランジ部22の折返し片25の外周面25aとの隙間が全周に亘って略均一となるようにするとともに、カウンタ10の表面側14と、シンク20の水平部24の表面側24aとが、略面一となるように整合させるようにして、位置決めを行い、前記台座及び前記シリコンゴム冶具に対して、上方(上下反転した状態での上方を指す)からカウンタ10及びシンク20を押圧して圧接させる。
前記隙間は、意匠性の観点及び成型誤差吸収の観点から0.5mm?5.0mm程度となるようにすることが好ましく、より好ましくは、2.0mm前後とすることで、カウンタ本体10とシンク20との接合強度を阻害することなく、意匠性に優れたものとなる。
【0023】
この状態で、それらの裏面側から硬質接着剤を、カウンタ10とシンク20との間に注入する。
硬質接着剤30としては、例えば、主剤と硬化剤を混合して構成された、2液常温硬化型の樹脂組成物からなる接着剤が好適であり、主剤としては、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系、硬化剤としては、主剤に応じてポリアミド系やイソシアネート系などが挙げられる。
このような2液常温硬化型の接着剤は、硬化反応が進んで完全に硬化すると、硬質となる。
【0024】
この際、本実施形態では、2種類の硬質接着剤を使用する。
すなわち、硬質接着剤は、第1接合層31を形成する第1硬質接着剤と第2接合層32を形成する第2硬質接着剤を使用し、該第1硬質接着剤は、該第2硬質接着剤よりも低粘性のものとしている。
本実施形態では、前記第1硬質接着剤として、低粘性のエポキシ樹脂系の2液常温硬化型の接着剤を使用し、前記第2硬質接着剤として、該第1硬質接着剤よりも粘度の高い高粘性のウレタン樹脂系の2液常温硬化型の接着剤を適用しているが、これに限られず、第1硬質接着剤をウレタン樹脂系、第2硬質接着剤をエポキシ樹脂系、または、いずれもエポキシ樹脂系にする、あるいは、いずれもウレタン樹脂系にしてもよい。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂や、ウレタン変性エポキシ樹脂などのように変性させたエポキシ樹脂を使用してもよい。
また、ウレタン樹脂としては、無黄変や難黄変タイプなどのウレタン樹脂を使用してもよい。これによれば、耐候性、耐光性に優れたものとなる。
【0025】
前記のようにカウンタ10と、シンク20を整合させた状態で、前記第1硬質接着剤を先に注入する。該第1硬質接着剤は、前記したように低粘性のものとしているので、カウンタ10の開口部13の内周縁15とシンク20の折返し片25の外周面25aとの間や、シンク20の折返し片25の内周面25cとシンク20の側壁外周面26との間に形成される隙間、折返し片25に開設された保持孔25bにも、その低粘性から隙間無く、かつ気泡等を生じることなく充填され、前記したシリコンゴム冶具により、表面側では、前記第1硬質接着剤の「かけ」、「はみ出し」等が形成されず、略均一に目地Jが形成される。
尚、前記第1硬質接着剤は、図例のように桟木40のシンク側の側面41に、その一部が接触するような量まで注入することが好ましい。これにより、後記するようにカウンタ10とシンク20との接合強度を高めることが出来る。
【0026】
次いで、前記第1硬質接着剤が硬化する前に、該第1硬質接着剤の上から桟木40の上端部近傍(上下反転した状態での上端を指す)まで、前記第2硬質接着剤を注入する。
これによれば、前記第1硬質接着剤が前記したような隙間に注入され、また低粘性であることから硬化時間が長くなる場合でも、前記第2硬質接着剤の硬化発熱が該第1硬質接着剤の硬化反応を助け、より早く硬化させることができる。
また、前記第2硬質接着剤を前記第1硬質接着剤よりも安価なものとして、図例のように、該第1硬質接着剤よりも該第2硬質接着剤を多く注入することで、カウンタ10とシンク20との接合強度を阻害することなく、安価に製造できる。
【0027】
さらに、前記第1硬質接着剤及び前記第2硬質接着剤が注入される際、カウンタ10の裏面16に固着された桟木40により堰き止められ、カウンタ10の裏面16の他部位に硬質接着剤が流れ出ることを防止できる。
また、桟木40をカウンタ10の裏面16に固着させていることにより、本実施形態のようにカウンタ10として人造大理石を適用した場合にも、人造大理石を肉厚とせずとも、硬質接着剤で接合される接着面積が増え、カウンタ10とシンク20との接合強度を阻害することなく、十分な接合強度が得られる。この場合において、桟木40を前記したような木製のものとすれば、各硬質接着剤が桟木40に含浸するように接着し、カウンタ10とシンク20との接合強度をより一層、高めることが出来る。
【0028】
前記した状態で、各硬質接着剤が十分に硬化すると第1接合層31及び第2接合層32が形成され、その後に、接合固着されたカウンタ10及びシンク20を前記台座上から脱離させると、カウンタ10とシンク20の表面側14、24aは、目地J、すなわち、表面側に露出する第1接合層31の一部を挟んで略面一に形成されることとなる。
尚、図1及び後記する図4では、第1接合層31、31A、31Bと第2接合層32との境界面が形成されているが、いずれも各接合層を模式的に現したものであり、実際には、硬化反応が進むにつれて、その境界面近傍では、前記第1硬質接着剤と前記第2硬質接着剤とが混和された状態で硬化することは言うまでもない。」

ウ.「【0032】
さらに、前記第1硬質接着剤には、抗菌剤、防カビ剤のうち少なくともいずれか一方を混合してもよい。これにより、表面側に露出する目地Jの抗菌、防カビ性に優れたものとなるとともに、表面側に露出しない前記第2硬質接着剤には、それらを混合する必要がないので、低コストとなる。
さらにまた、前記第1硬質接着剤に、カウンタ10またはシンク20のいずれかの色、柄に合わせて、着色剤(顔料、染料等)、柄材などを混合してもよい。これにより、表面側に露出する目地Jが目立たず、より意匠性に優れたものとなる。この場合にも、本実施形態のように、前記したような着色剤(顔料、染料等)、柄材などは、表面側に露出する第1硬質接着剤にのみ混合すれば良いため、低コストとなる。」

3.引用発明の認定
以上を整理すると、引用文献1には、
「カウンター10の開口部13にシンク20が配設され、カウンター10の開口部13の内周縁15とシンク20のフランジ部22とが、樹脂組成物からなる接着剤を主体とし且つ表面側から裏面側に向かって形成された接合部30を介して接合されたカウンター10とシンク20の接合構造において、
前記接合部30は、
表面側に位置し且つ前記カウンター10の色に合わせた色に形成された第1接合層31と、
該第1接合層31の裏面に位置する第2接合層32と
の2層からなり、
前記第1接合層31には柄を形成するための柄材が配合された
カウンター10とシンク20の接合構造。」なる発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明における「(カウンター10の開口部13の)内周縁15」は、本願補正発明における「開口部端面」に相当する。
引用発明における「樹脂組成物からなる接着剤」は、本願補正発明における「合成樹脂」に相当する。
引用発明における「表面」は、本願補正発明における「製品面」に相当する。
引用発明における「接合部30」は、本願補正発明における「接合部材」に相当する。
引用発明における「カウンター10の色に合わせた色」は、段落0032の「第1硬質接着剤に、カウンタ10…の色…に合わせて、着色剤(顔料、染料等)…を混合してもよい。これにより、表面側に露出する目地Jが目立たず、より意匠性に優れたものとなる。」との記載、段落0021の「第1接合層31の一部が目地Jを形成する」との記載、及び、同段落0022?0028の接合部を形成する方法の記載から、本願補正発明の「カウンターの色と略同じ色」に相当することは、当業者にとって自明である。
引用発明における「柄を形成するための柄材」は、段落0032の「第1硬質接着剤に、カウンタ10…の…柄に合わせて、…柄材などを混合してもよい。これにより、表面側に露出する目地Jが目立たず、より意匠性に優れたものとなる。」との記載、段落0021の「第1接合層31の一部が目地Jを形成する」との記載から、本願補正発明のように「接合部材の製品面側に柄材が位置して当該接合部材の製品面に柄や模様が形成」されていることは、当業者にとって自明である。

以上のことより、引用発明と本願補正発明とは、
<一致点>
「カウンターの開口部にシンクが組み付けられ、カウンターの開口部端面とシンクのフランジ部とが、合成樹脂を主体とし且つ製品面側から裏面側に向かって形成された接合部材を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造において、
前記接合部材は、
製品面側に位置し且つ前記カウンターの色と略同じ色に形成された第1接着層と、
該第1接着層の裏面に位置する第2接着層と
の2層からなり、
前記第1接着層には柄や模様を形成するための柄材が配合され、
前記接合部材の製品面側に柄材が位置して当該接合部材の製品面に柄や模様が形成されているカウンターとシンクの接合構造。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
第1接着層に配合された柄材に関して、本願補正発明では「柄材の比重が合成樹脂の比重の1.1倍以上1.2倍未満に形成されている」であるのに対して、引用発明の柄材においては、比重に関する記載がない点。

<相違点2>
第1接着層に配合された柄材に関して、本願補正発明では「柄材の粒径が0.6mm以下に形成されている」であるのに対して、引用発明の柄材においては、粒径に関する記載がない点。

5.相違点の判断
<相違点1>について
人造大理石を製造する際に用いる柄材の比重が「合成樹脂の比重の1.1倍以上1.2倍未満に形成されている」との数値に限定することは、この技術分野において周知技術(以下、「周知技術1」という。下記周知文献1?3を参照。)である。

周知文献1:特表2008-506629号公報
「【請求項3】前記石英チップの比重が1.4乃至1.8であることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石。
【請求項4】前記石英チップの比重がこのチップが適用される人造大理石原料組成物の比重と等しいか、その比重差が±0.2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石。」
上記の条件を満たす例として、例えば、本願補正発明の柄材に相当する石英チップの比重を1.4とし、本願補正発明の第1接着層に相当する人造大理石原料組成物の比重を1.28とした場合、本願補正発明の「柄材の比重が合成樹脂の比重の1.1倍以上」の数値限定も満たしていることとなる。

周知文献2:特開平6-39852号公報
「【請求項1】硬化性樹脂液と無機充填剤と第1の粒子とからなる第1の混和物を成形型に注形したのち、この上に硬化性樹脂液と無機充填剤と前記第1の混和物の硬化性樹脂液と無機充填剤とで定まるマトリックスコンパウンドの比重よりも比重の高い第2の粒子とからなる第2の混和物を流し込み、硬化させることを特徴とする人工大理石の製法。
【請求項2】前記第2の粒子の比重が、前記マトリックスコンパウンドの比重の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1記載の人工大理石の製法。」
周知文献2には、本願補正発明の柄材に相当する第2の粒子の比重を、本願補正発明の第1接着層に相当するマトリックスコンパウンドの比重の1.1倍以上とする点が記載されている。

周知文献3:特開2001-89213号公報
「【0027】(実施例1)ビニルエステル樹脂として(武田薬品(株)製のプロミネートP-311)を100重量部、充填剤として水酸化アルミニウム(住友化学(株)製のCW-310)を200重量部配合して樹脂組成物Aを得た。この樹脂組成物Aの比重はρ=1.75であった。
【0028】次に、同一の樹脂と充填剤で構成され、配合比を変えて、更に、各種の着色剤を添加して着色した樹脂組成物に硬化剤(日本油脂(株)製のパーキュアWO)を適量添加して90℃で60分間加熱して硬化物を得て、その後、目的とする粒径に粉砕されて製造された比重の異なる5種類の球状の柄材(柄材B、柄材C、柄材D、柄材E、柄材F)を得た。得られた柄材の比重はそれぞれ、柄材Bはρ=1.85、柄材Cはρ=1.90、柄材Dはρ=1.95、柄材Eはρ=2.00、柄材Fはρ=2.05であった。」
周知文献3には、本願補正発明の第1接着層に相当する樹脂組成物Aの比重を1.75とし、そこに比重1.95(樹脂組成物Aの比重の1.11倍)の柄材D、比重2.00(樹脂組成物Aの比重の1.14倍)の柄材E、比重2.05(樹脂組成物Aの比重の1.17倍)の柄材Fを配合する点が記載されている。

本件補正発明は「カウンターとシンクの接合構造」係るものであって製造方法に関する発明ではないが、樹脂材料に柄材を配合して柄や模様を有する人造大理石を製造する方法として、本件明細書に本願補正発明の実施例として、例えば段落0027に記載されるような「樹脂材料より比重の大きな柄材を樹脂材料に配合し、比重の差を利用し、樹脂材料の(製造過程における上下方向の)下方に沈降させ、該下方表面側に柄材を集中して分布させ、人造大理石の(製品としての)表面側に柄や模様を形成する」ことは、原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開平4-254456号公報、特開平8-224852号公報(以下、それぞれ「引用文献2」、「引用文献3」という。)に記載されているように周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、上述したとおり本願補正発明に具体的な人造大理石の製造方法の記載はないが、相違点1に係る本願補正発明の構成が、人造大理石の製造方法に密接に関連したものであるとしても、該製造方法及び、柄材の比重を樹脂材料の比重の1.1倍以上1.2倍未満にすることが周知技術であって、引用発明に周知技術1及び2を適用することに何らの技術的困難性も認められず、該適用によって格別の作用効果が生じたものでもないから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明に周知技術1及び2を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について
人造大理石に配合される柄材の粒径については、形成したい柄の態様や製造時に使用するノズルの径により、当業者が最適なものを選択するものであるところ、本願補正発明においては、単に柄材の粒径が限定されているのみであるが、本願補正発明のカウンターに用いられている人造大理石を製造するにあたり、柄材が配合された第1接着層を充填したシリンジに圧力を加え、ノズルから吐出する手法を用いた場合、柄材の粒径が小さいほど、ノズル部分での目詰まりが起きにくくなることは常識であり、しかも、人造大理石や人造石の技術分野において「柄材の粒径を0.6mm以下とする」ことは、周知技術(以下、「周知技術3」という。下記周知文献1、4、5を参照。)である。

周知文献1:特表2008-506629号公報(周知技術2における周知文献1と同じ)
「【請求項10】前記石英チップのサイズが0.1乃至10mmであることを特徴とする、請求項1に記載の人造大理石。」
ここで、周知文献1の「石英チップ」は、本願補正発明の「柄材」に相当する。

周知文献4:特開2000-238048号公報
「【0010】熱硬化性合成樹脂に柄材微粉1を混入して樹脂コンパウンドを形成するに当たっては、柄材微粉1を一種類又は異なる色のものを複数種類混入するものであるが、柄材微粉1の総混入量は、粒径が0.1?0.3mmの柄材微粉を、熱硬化性合成樹脂100部に対して10?30重量部添加することで、成形される人造大理石2における柄の深み感を現出するようになっている。」

周知文献5:特開2007-131511号公報
「【0039】
条件3(良品)
着色剤成分:溶剤40%、顔料(カーボンブラック)10%、ウレタン樹脂50%
目標粒径0.5mmの粉砕フィルム100重量部に対し、黒着色剤7.5重量部
攪拌時間約40分
(条件3の結果)
フィルム粒塊が発生せず、濃度の均一な人工大理石用柄材を得た(図4参照)。」
そして、引用発明に周知技術3を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることに何らの技術的困難性も認められず、該適用によって格別の作用効果が生じたものでもないから、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明に周知技術3を適用することにより当業者が容易に想到し得たものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明と周知技術1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

6.補正却下の決定についてのまとめ
よって、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明及び引用文献に記載された発明
平成23年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明 (以下、「本願発明」という。)は、平成23年8月12日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
カウンターの開口部にシンクが組み付けられ、カウンターの開口部端面とシンクのフランジ部とが、合成樹脂を主体とし且つ製品面側から裏面側に向かって形成された接合部材を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造において、
前記接合部材は、
製品面側に位置し且つ前記カウンターの色と略同じ色に形成された第1接着層と、
該第1接着層の裏面に位置する第2接着層と
の2層からなり、
前記第1接着層には柄や模様を形成するための柄材が配合され、
この柄材は、その比重が前記合成樹脂の比重に比べ僅かに重く形成されていると共にその粒径が0.6mm以下に形成され、
前記接合部材の製品面側に柄材が位置して当該接合部材の製品面に柄や模様が形成されている
ことを特徴とするカウンターとシンクの接合構造。」
一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-156940号公報(引用文献1)に記載された発明は、前記したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、柄材の比重に関して「その比重が前記合成樹脂の比重に比べ僅かに重く形成されている」と、本願補正発明における「合成樹脂の比重の1.1倍以上1.2倍未満に形成されている」から、数値限定をなくし、単に比重の大小関係を限定したものである。
そうすると、柄材と合成樹脂との比重の関係を数値限定した本願補正発明が、前記第2の5.に記載したとおり、引用文献1に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その本願補正発明における数値限定を包含する比重の大小関係を限定した本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-01-30 
結審通知日 2013-02-05 
審決日 2013-02-18 
出願番号 特願2008-246893(P2008-246893)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03C)
P 1 8・ 575- Z (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 吉村 尚
長崎 洋一
発明の名称 カウンターとシンクの接合構造  
代理人 水尻 勝久  
代理人 坂口 武  
代理人 西川 惠清  
代理人 北出 英敏  

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