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審決分類 |
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 E02D 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 E02D 審判 全部無効 2項進歩性 E02D |
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管理番号 | 1272729 |
審判番号 | 無効2011-800004 |
総通号数 | 162 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-06-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-01-06 |
確定日 | 2011-09-05 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4494500号発明「ドレーン材の打設装置および方法」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第4494500号の請求項1,3及び4に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4494500号の請求項2及び5に係る発明についての審判請求は,成り立たない。 審判費用は,その5分の2を請求人の負担とし,5分の3を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件審判の請求に係る特許第4494500号(以下,「本件特許」という。)の手続の経緯は,以下のとおりである。 平成20年 8月29日:出願(特願2008-222428号) 平成22年 4月16日:特許権の設定登録(請求項の数:7) 平成23年 1月 6日:本件特許無効審判請求(全請求項) 平成23年 3月23日:被請求人より答弁書及び訂正請求書提出 平成23年 4月27日:請求人より弁駁書提出 平成23年 5月30日:当審より審理事項通知書発送 平成23年 6月28日:両当事者より口頭審理陳述要領書提出 平成23年 7月12日:口頭審理,審理終結 第2.訂正請求について 1.請求の趣旨 請求の趣旨は,本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲(以下,「特許明細書等」という。)を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり,すなわち,以下の各訂正事項のとおり訂正することを求めるものである(下線は当審にて付与)。 (1)特許請求の範囲の訂正 (イ)訂正事項1 請求項1を削除する訂正。 (ロ)訂正事項2 請求項2を請求項1の記載を引用する記載から,他の請求項を引用しない形式(以下,「独立形式」)とした以下の記載に改め,請求項の項番号を2から1に繰り上げる訂正。 「長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と,地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において,前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと,ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け,前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし,ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ,ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。」 (ハ)訂正事項3 請求項3を請求項1の記載を引用する記載から,独立形式とした以下の記載に改め,請求項の項番号を3から2に繰り上げる訂正。 「長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と,地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において,前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと,ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け, 前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし,ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ,ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。」 (ニ)訂正事項4 請求項4中に「請求項1?3のいずれかに記載の」とあるのを「請求項1または2に記載の」と改め,請求項の項番号を4から3に繰り上げる訂正。 (ホ)訂正事項5 請求項5を削除する訂正。 (ヘ)訂正事項6 請求項6を請求項5の記載を引用する記載から,独立形式とした以下の記載に改め,請求項の項番号を6から4に繰り上げる訂正。 「長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後,ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において,前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき,打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し,この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み,その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし,ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には,必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにしたドレーン材の打設方法。」 (ト)訂正事項7 請求項7を請求項5の記載を引用する記載から,独立形式とした以下の記載に改め,請求項の項番号を7から5に繰り上げる訂正。 「長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後,ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において,前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき,打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し,この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み,その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし,ケーシングを地盤に打ち込む際には,そのケーシングに取付けたローラを取外し,打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には,そのケーシングにローラを取付けるようにしたドレーン材の打設方法。」 (2)明細書の訂正 (イ)訂正事項8 段落【0005】中の 「移動させる移動手段とを設け,」 との記載の後に, 「前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし,」 との記載を挿入し, 段落【0006】中の 「前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にすることもできる。或いは,」 との記載を削除する訂正。 (ロ)訂正事項9 段落【0005】中の 「移動させる構成にしたことを特徴とするものである。」 との記載の後に改行したうえで, 「また,本発明の別のドレーン材の打設装置は,長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と,地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において,前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと,ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け,前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし,ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ,ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたことを特徴とするものである。」 との記載を挿入し, 段落【0006】中の 「前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にすることもできる。」 との記載を削除する訂正。 (ハ)訂正事項10 段落【0007】中に 「前記複数本のケーシングを並列し,供給源から繰り出したドレーン材を,」 とあるのを, 「前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,」 とするとともに, 「連結を解除した地盤上のケーシングを並列させるようにした」 とあるのを, 「連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし,ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には,必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにした」 とし, 段落【0008】中の 「ここで,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列したケーシングに連続するように内挿させ,ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には,必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにすることもできる。」 との記載を削除する訂正。 (ニ)訂正事項11 段落【0008】中に 「或いは,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列したケーシングに連続するように内挿させ,ケーシングを地盤に打ち込む際には,そのケーシングに取付けたローラを取外し,打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には,そのケーシングにローラを取付けるようにすることもできる。」 とあるのを, 「また,本発明の別のドレーン材の打設方法は,長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後,ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において,前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき,打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し,この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み,その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし,ケーシングを地盤に打ち込む際には,そのケーシングに取付けたローラを取外し,打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には,そのケーシングにローラを取付けるようにしたことを特徴とするものである。」 とする訂正。 2.訂正の許否判断 請求項に記載された特許発明と訂正事項との関係は,以下のとおりであると認められる。 ・請求項1に係る訂正:訂正事項1 ・請求項2に係る訂正:訂正事項2及び8 ・請求項3に係る訂正:訂正事項3及び9 ・請求項4に係る訂正:訂正事項4 ・請求項5に係る訂正:訂正事項5 ・請求項6に係る訂正:訂正事項6及び10 ・請求項7に係る訂正:訂正事項7及び11 そして,本件特許無効審判は,全ての請求項(請求項1?7)に記載された特許発明を無効とすることを求めるものであるから,本件訂正請求が,特許法第134条の2第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とし,同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するか否かについて,以下に検討する。 (1)第134条の2第1項ただし書各号(訂正の目的)について (イ)訂正事項1及び5について 訂正事項1及び5は,請求項を削除するものであるから,特許法第134条の2第1項第1号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (ロ)訂正事項2及び3について 訂正事項2及び4は,記載を引用していた請求項が削除されたことに伴い,請求項の記載を独立形式に改めるものであるから,特許法第134条の2第1項第3号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (ハ)訂正事項4について 訂正事項4は,記載を引用していた複数の請求項の一部を引用しないようにするものであるから,特許法第134条の2第1項第1号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (ニ)訂正事項6及び7 訂正事項6及び7は,訂正前の請求項6又は7に記載された「ケーシング」について,これを打ち込み前及び引き抜き後に「ステーション」で「保持」することを限定し,さらに,記載を引用していた請求項が削除されたことに伴い,請求項の記載を独立形式に改めるものであるから,特許法第134条の2第1項第1号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするもの,及び,同第3号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (ホ)訂正事項8?11について 訂正事項8?11は,訂正された特許請求の範囲の記載に,明細書の記載を整合させるものであるから,特許法第134条の2第1項第3号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (2)第126条第3項及び第4項(新規事項,実質拡張又は変更)について (イ)訂正事項1?5について 訂正事項1?5は,請求項の削除又はその記載形式を独立形式に変更するものであるから,特許明細書等又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 (ロ)訂正事項6及び7について 訂正事項6及び7は,打ち込み前にケーシングをステーションで保持する点については,特許明細書の段落【0014】に「ステーション2には,長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシング4…が立った状態で並列して保持されている。」と記載されていることに基づくものであり,引き抜き後にケーシングをステーションで保持する点については,段落【0040】に「…引抜き工程を,第4ケーシング4d,第3ケーシング4c,第2ケーシング4b,第1ケーシング4aに対しても順次行なって,フリーになったケーシング4をチェーンブロック7を用いて,ステーション2内で並列するように移動させて保持する。」と記載されていることに基づくものであるから,特許明細書等又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 (ハ)訂正事項8?11について 訂正事項8?11は,訂正事項1?7により訂正しようとする特許請求の範囲との整合をとるための明細書の訂正であり,訂正事項1?7は上述のとおり,いずれも,特許明細書等又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないから,訂正事項8?11も,特許明細書等又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であって,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではなく,特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 3.むすび 以上のとおり,訂正事項1?11は,いずれも特許法第134条の2第1項ただし書の規定に適合し,かつ,同第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するから,請求項1?7の全ての請求項に係る訂正を認める。 第3.本件特許発明 本件訂正請求による訂正は全て認められたので,本件特許の請求項1?5に記載された発明(以下,請求項1に記載された発明を「本件特許発明1」といい,同様に,請求項2?5の各請求項に記載された発明をそれぞれ「本件特許発明2」,「本件特許発明3」…という。)は,平成23年3月23日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の記載からみて,訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次のとおりのものと認められ,これを構成要件に分説すると,次のとおりである(分説のための記号は,平成23年3月23日付けの審判事件答弁書に記載された記号に準拠した)。 「【請求項1】 a 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と, b 地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において, c 前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと, d ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け, g 前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし, e ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ, f ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。 【請求項2】 a 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と, b 地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において, c 前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと, d ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け, h 前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け,これらローラに前記ドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし, e ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ, f ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。 【請求項3】 i 前記複数本のケーシングの長さが5m以上7m以下である請求項1又は2に記載のドレーン材の打設装置。 【請求項4】 j 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後, k ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において, X1 前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき, m 打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し, n この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み, o その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし, X2 ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には,必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにしたドレーン材の打設方法。 【請求項5】 j 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後, k ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において, X3 前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき, m 打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し, n この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み, o その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし, X4 ケーシングを地盤に打ち込む際には,そのケーシングに取付けたローラを取外し,打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には,そのケーシングにローラを取付けるようにしたドレーン材の打設方法。」 第4.当事者の主張の概要 1.請求人の主張の概要 請求人は,本件特許の請求項1?7に記載された発明についての特許を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由として,以下の無効理由を主張し,証拠方法として,甲第1号証?甲第3号証を提出した。 [無効理由] 本件特許の請求項1及び5に記載された発明は,甲第1号証に記載された発明であるから,同法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり,また,請求項2?4,6及び7に記載された発明は,甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから,同第2項の規定により特許を受けることができないものであるので,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 また,訂正後の請求項1?5に記載された特許発明も,甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 [証拠方法] 甲第1号証:谷井昌彦ほか3名,「高圧送電線直下での地盤改良工事について」,第12回土木施工管理技術論文報告集(平成19年度版),社団法人全国土木施工管理技士会連合会,平成20年3月17日発行,第9?12頁 甲第1号証の1:甲第1号証第10頁右欄の(1)欄の拡大複写 甲第1号証の2:甲第1号証第10頁右欄の(2)欄の拡大複写 甲第1号証の3:甲第1号証第11頁左欄の(3)欄の拡大複写 甲第1号証の4:甲第1号証第11頁左欄の(4)欄の拡大複写 甲第1号証の5:甲第1号証第11頁左欄の(5)欄の拡大複写 甲第2号証:特開平10-76989号公報 甲第3号証:特開2006-307552号公報 2.被請求人の主張の概要 被請求人は,答弁書及び訂正請求書を提出し,本件審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め,甲第1号証?甲第3号証に記載された発明には, 本件特許発明1の構成要件d,e及びfの「移動手段」並びにg, 本件特許発明2の構成要件d,e及びfの「移動手段」並びにh, 本件特許発明4の構成要件X1及びX2, 本件特許発明5の構成要件X3及びX4, が開示されておらず,また,本件特許発明3は本件特許発明1又は2の構成要件を備えるものであるから,本件特許発明1?5は,甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に想到し得ない旨,反論した。 第5.刊行物の記載 1.甲第1号証 甲第1号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (1a) 「3.現場における課題・問題点 当該工区の上空には,66,000Vの高圧送電線が横断しており,感電災害が発生した場合は作業員の人命に係わるほか,周辺地域への電力供給が停止するなど工事や住民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあった。 このため,関係機関との事前協議を行い,高圧送電線との近接作業の際には5.5mの安全離隔距離を確保することとし,限界高さを16.6mに制限した。 この高さ制限により,所定の長さに連結したケーシングを打設機に搭載し,キャップ付ドレーンを打込むことができなくなったため,以下の施工方法を策定した。」(甲第1号証第10頁左欄?右欄) (1b)「(1) 打設機にケーシング接続装置を取付け,3分割したケーシングを搭載する。 (1本目16.0m,2本目5.5m,3本目5.5m) 」(甲第1号証第10頁右欄の(1)欄及び甲第1号証の1) (1c)「(2) 打設機を所定の位置にセットし,1本目のケージンクを接続部まで打設する。 」(甲第1号証第10頁右欄の(2)欄及び甲第1号証の2) (1d)「(3) 接続装置により2本目のケーシングを1本目と接合し,接続部まで打設する。 (3本目のケーシングも同様に打設する) 」(甲第1号証第11頁左欄の(3)欄及び甲第1号証の3) (1e)「(4) 改良深度に達したことを確認後,3本目のケ-シングを接続部まで引抜き,分離後,接続装置に格納する。 (2本目のケーシン外も同様に引抜く) 」(甲第1号証第11頁左欄の(4)欄及び甲第1号証の4) (1f)「(5) 1本目のケーシングを引抜いた後,キャップ付ドレーンを切断・養生し,施工を完了する。 」(甲第1号証第11頁左欄の(5)欄及び甲第1号証の5) (1g) 甲第1号証の上記摘記事項から,以下の事項が記載されていることは明らかである。 ・ケーシング接続装置に,3本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出したドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で搭載すること(摘記事項(1b)参照)。 ・ケーシングが長手方向に互いに連結されていること(摘記事項(1d)参照)。 ・ケーシングにドレーン材を内挿した状態で,地盤に打設すること(摘記事項(1b)?(1d)参照)。 ・ケーシングの打設工程において,ケーシング接続装置内で並列させたケーシングを,順次打設位置に移動させていること(摘記事項(1b)?(1d)の工程の流れを参照)。 ・ケーシングの引抜き工程において,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打設されている下方のケーシングとの接合を分離されるケーシングを,接続装置内で並列するように移動させ格納していること(摘記事項(1e)及び(1f)の工程の流れを参照)。 ・ケーシングを引抜いた後にドレーン材が地盤に固定した状態となっていることから,ドレーン材の先端にアンカーが取付けられていること(摘記事項(1e)及び(1f)を参照)。 以上の記載事項及び図示内容を総合すると,甲第1号証には以下の物の発明(以下,「甲1物発明」という。)及び方法の発明(以下,「甲1方法発明」)が記載されていると認められる。 甲1物発明: 「長手方向に互いに接合可能な1本目が16.0m,2本目及び3本目が5.5mの3本のケーシングと,これらケーシングを順次接合して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打設するための手段と, 地盤に打設したケーシングを地盤上に引抜くための手段とを備えたドレーン材の打設機において, 前記3本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で搭載するケーシング接続装置とを設け, ケーシングの打設工程では,ケーシング接続装置内で並列させたケーシングを,順次打設位置に移動させ, ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打設されている下方のケーシングとの接合を分離されるケーシングを,ケーシング接続装置内で並列するように移動させ格納するようにしたドレーン材の打設機。」 甲1方法発明: 「長手方向に互いに接合可能な3本のケーシングを順次接合して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の改良深度まで打設した後, ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において, 前記3本のケーシングをケーシング接続装置で並列して搭載し,供給源から繰り出したドレーン材を,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき, 打設位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打設し,順次,次のケーシングを打設位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打設されている下方のケーシングとを接合し, この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打設する工程を,3本のケーシングに対して繰り返し行うことによりドレーン材を地盤の改良深度まで打設し, その後,打設したケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの接合を分離して,接合を分離した地盤上のケーシングを接続装置内で並列させて搭載するようにしたドレーン材の打設方法。」 2.甲第2号証 甲第2号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (2a) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,帯状のドレーン材を水底に圧入するための工事用作業船に関するものである。」 (2b) 「【0008】<ロ>リーダー1。 リーダー1はその上端のローラーを介してロープによってケーシングパイプ2を吊り下げる。ケーシングパイプ2の吊り下げロープは2本配置する。1本はウインチを巻き出すことによってケーシングパイプ2の重量によって水底に貫入させる。他の1本はウインチを巻き取ることによってケーシングパイプ2を引き上げる構造である。ドレーン材5はリーダー1の船側の側面に沿っていったん最上部まで持ち上げ,最上部のリーダー1側ガイドローラーで折り返した状態でケーシングパイプ2内に導入する。リーダー1の船側にはドレーン材風防トランク3を平行して取り付ける。このトランク3の内部にドレーン材5を導入することによって,ドレーン材5が風によって妄動することを防止することができる。 【0009】<ハ>ケーシングパイプ2。 リーダー1から吊り下げたケーシングパイプ2はその最上部にパイプ側ガイドローラー21が取り付けてある。このパイプ側ガイドローラー21は,ケーシングパイプ2と一体で昇降するから,ケーシングパイプ2が下降して,リーダー1の最上部のリーダー1側ガイドローラー11との距離が大きくなってもドレーン材5を安定した状態でケーシングパイプ2内に導入することができる。ケーシングパイプ2の上部には注水弁22を設けてパイプ内に水を注入してケーシングパイプ2の引き抜き時のドレーン材5の共上がりを防止する。あるいはケーシングパイプ2へのドレーン材5の導入口にエアシール弁23を設け,この弁23の開閉によってケーシングパイプ2へ圧縮空気を封入して同様の効果を期待する場合もある。」 3.甲第3号証 甲第3号証には,図面とともに次の事項が記載されている。 (3a) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,地盤改良用ドレーン材の打設及び切断装置,方法及び地盤改良工法に係り,特に,ドレーン材を地盤内で途中から切断する場合に好適な地盤改良用ドレーン材の打設及び切断装置,方法,及び地盤改良工法に関する。」 (3b) 「【0034】 《第1実施形態》 図1に示すように,本発明に係る地盤改良用ドレーン材の打設及び切断装置1は,軟弱地盤2内の水分を排水して地盤改良するため,先端にアンカー部材11が設けられ,且つ所定の張力によって切断可能な被切断部であるスリットS1(図10参照)を有するドレーン材13を地盤2内に打設し,且つ,地盤2内に打設されたドレーン材13に所定の張力をかけて,スリットS1のある部分を切断することが可能なように構成されている。 【0035】 すなわち,この地盤改良用ドレーン材の打設及び切断装置1は,ドレーン材13の打設装置と切断装置とを兼用している。 【0036】 なお,図1中の符号15は各部を制御するための油圧装置及び制御装置(図示せず)を有する車体,16はドレーン材13を地盤2内に挿入するためのケーシング部材,17は支柱,18はドレーン材13が巻回されたリール,19はリール18を支持するため支柱17から側方に延びる支持台,20はドレーン材13の引き出し方向を転換するガイドローラ,53はケーシング部材16を上下移動自在に支持するガイド,54はドレーン材13を長手方向に移動自在に支持する支持部材である。」 (3c) 「【0042】 上記ドレーン材13を地盤2内に打設する際には,ケーシング部材16の内側空洞16a内に,ドレーン材13を挿入する。この際,ドレーン材13の先端がケーシング部材16より引き出されて折り返され,その折り返し部13aにアンカー部材11(図5参照)が取り付けられる。」 第6.無効理由についての判断 1.本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1物発明とを対比すると, (A) 甲1物発明の「長手方向に互いに接合可能な1本目が16.0m,2本目及び3本目が5.5mの3本のケーシング」は,本件特許発明1の「長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシング」に相当し,以下同様に, (B)「順次接合」することは,「順次継ぎ足」すことに, (C)「打設」は,「打ち込み」に, (D)「地盤に打設するための手段」は,「地盤に打ち込む打ち込み手段」に, (E)「地盤に打設したケーシングを地盤上に引抜くための手段」は,「地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段」に, (F)「ドレーン材の打設機」は,「ドレーン材の打設装置」に, (G)「搭載する」ことは,「保持する」ことに, (H)「ケーシング接続装置」は,「ステーション」に, (I)「ケーシングの打設工程」は,「ケーシングの打ち込み工程」に, (J)「地盤に打設されている下方のケーシング」は,「地盤に打ち込まれている下方のケーシング」に, (K)「接合を分離される」ことは,「連結を解除される」ことに, それぞれ相当する。 また, (L) 甲1発明において「順次打設位置に移動させ」る態様と,本件特許発明1において「移動手段により順次打ち込み位置に移動させ」る態様とは,「順次打ち込み位置に移動させ」る態様において共通し,同様に, (M)「ケーシング接続装置内で並列するように移動させ格納するようにした」態様と,「移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にした」態様とは,「ステーション内で並列するように移動させる構成にした」態様において共通する(下線は,相当関係にない発明特定事項に対して当審にて付与)。 してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「a 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと,これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で,地盤に打ち込む打ち込み手段と, b 地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において, c 前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を,これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと, e’ケーシングの打ち込み工程では,ステーション内で並列させたケーシングを,順次打ち込み位置に移動させ, f’ケーシングの引抜き工程では,1本ずつ順次地盤上に露出されて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを,ステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。」 [相違点1] 構成要件d,e及びfに関して,本件特許発明1では,「ドレーン材の打設装置」に,「ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段」が設けられ,「ケーシングの打ち込み工程」及び「ケーシングの引抜き工程」において,当該「移動手段により」ケーシングを移動させるのに対して,甲1物発明では,「ドレーン材の打設装置」が「移動手段」を有するか否かが不明であり,その結果,「ケーシングの打ち込み工程」及び「ケーシングの引抜き工程」において,どのようにケーシングを移動させているのかも不明な点。 [相違点2] 構成要件gに関して,本件特許発明1では,「ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け,これらローラにドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成」とされているのに対して,甲1物発明では,ドレーン材を架け回わすための「ローラ」を有するか否かが不明であり,その結果,「ローラ」の配設位置も不明な点。 (2)判断 上記各相違点について,以下に検討する。 (イ)[相違点1]について 地盤改良用に使用される「ケーシング」は,通常,鉄製のものであり,甲1物発明において,水平移動させる必要のある2本目及び3本目のケーシングの長さが5.5mであることから,その重量及び上端の位置を考慮して,このケーシングの水平移動に当たり,作業負担を軽減し,安全性を向上させること等を目的に,周知な機械的移動手段を利用することは,当業者が通常有する創作能力の発揮に当たる。 また,甲1物発明は,ステーション内でケーシングを移動させるものであるところ,このケーシングの移動を,ステーション内で1本ずつ行うか,あるいは,複数本まとめて行うかは,当業者が適宜選択し得た事項である。 してみると,甲1物発明において,「ケーシングの打ち込み工程」及び「ケーシングの引抜き工程」におけるケーシングの移動のために,上記の周知な機械的移動手段を利用することとし,当該移動手段によりステーション内でケーシングを1本ずつ移動させるようにして,上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。 なお,本件特許発明1では,「移動手段」がステーションに内在されているかは必ずしも明確ではないが,甲1物発明において,ケーシングは,上記のとおりステーション内で移動させられるものであるから,移動手段をそのステーションに内在させることも,当業者が容易に想到し得た事項である。 (ロ)[相違点2]について ケーシングの開口部にドレーン材をスムーズに挿入するための導入部材として,当該開口部近傍に設けたガイドローラ(本件特許発明1の「ローラ」に相当。)を利用し,ドレーン材を架け回すようにすることは,例えば甲第2号証及び甲第3号証に開示されるように周知技術である。甲第2号証及び甲第3号証では,ガイドローラの取付形態は明確ではないものの,ガイドローラが,ケーシングの開口部近傍において,ドレーン材の打設装置におけるいずれかの部材に固定される必要があることは自明である。 してみると,甲1物発明において,ケーシングの開口部にドレーン材をスムーズに挿入するために,ドレーン材を上端部から導入することとなるケーシングについてはその上端の開口部近傍(本件特許発明1の「上端部近傍」に相当。)に,また,ドレーン材を下端部から導入することとなるケーシングについてはその下端の開口部近傍(本件特許発明1の「下端部近傍」に相当。)に,それぞれ上記周知技術のガイドローラを設けて,これらのローラにドレーン材を架け回すようにすることは当業者が容易に想到し得た事項である。 さらに,上記のとおり,ローラはドレーン材の打設装置におけるいずれかの部材に固定しなくてはならないところ,ケーシングの上下の開口部近傍に存在するステーションにこれを固定するようにすることも,当業者であれは容易になし得ることである。 よって,甲1物発明に,上記周知技術を適用して,上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。 (ハ)被請求人の主張について (i) 被請求人は,相違点1に関して,平成23年3月23日付の審判事件答弁書の第7頁第1?7行目において,甲第1号証の第11頁右欄第7?9行目の「(2) 打設機にケーシング接続装置を取付けるため,機械重量が増加し,転倒に対する安定度が減少する。」との記載を根拠に,「更なる負荷荷重となる『移動手段』を設けることは阻害要因となる。」と主張している。 しかしながら,当該記載における「機械重量」は,「ケーシング接続装置」自体の機械重量のみならず,「ケーシング接続装置」を取付けることに付随する装置を含めた機械重量を指していると解すべきであり,「移動手段」を付加することは,更なる負荷荷重とはならない。仮に,「移動手段」が当該「機械重量」に含まれないと解釈しても,通常想定される機械的移動手段の重量は「ケーシング接続装置」の重量に比してかなり小さく,安定度に影響を与えるほどのものではないから,「移動手段」を付加することは阻害する要因とはならない。 よって,被請求人の上記主張は採用できない。 (ii) 被請求人は,相違点2に関する上記周知技術における「ローラ」の甲1物発明への適用について,平成23年6月28日付の口頭審理陳述要領書の第2頁(1)(イ)欄の第2段落において,甲1物発明の「即ち,この打設機では,元々,1本目の上端から2本目のケーシングの下端の間にドレーン材が架け渡されているので,打設する際にドレーン材に過大なテンションが作用することがない。ケーシング(ドレーン材)を打設する際に,ドレーン材に過大なテンションが作用するのであれば,過大なテンションを防止するためにローラを設けようとするが,この打設機においてはドレーン材に過大なテンションが作用しないため,ローラを設ける必要はない。」と主張している。 また,甲第1号証の1に掲載の図面において,1本目のケーシングの上部から2本目のケーシングの下部にかけてケーシング外を引き回されたドレーン材の長さが,甲第1号証の2に掲載の図面では短くなっていることから,ドレーン材がその供給源の方向にケーシング内で相対的に動いていると認定できる点について,被請求人は平成23年7月12日の口頭審理(第1回口頭審理調書を参照。以下,同様。)において,人が丁寧にドレーン材を動かせば,過大なテンションを作用させないようにすることは可能であると主張した。 しかしながら,ドレーン材は通常,ロールの形態で供給され,一定の硬度を有し,ロール状に巻かれていたときの巻き癖が残ることを考慮すれば,たとえ人が丁寧にドレーン材を動かしたとしても,ケーシングの上端及び下端の開口部でドレーン材が食い付いたり,引っかかったり,あるいは,こすれたりすると考えるのが合理的である。 そして,このような食い付きなどを防止するための対策を講ずる必要があることは当業者に自明であって,上記のとおり,「ローラ」を設けることは,ケーシングの開口部にドレーン材をスムーズに挿入するための技術として周知であることから,その対策のための有力な手段の一つであるので,「ローラを設ける必要はない」という主張は,根拠に乏しいと言わざるをえない。 よって,被請求人の上記主張は採用できない。 (iii) 被請求人は,相違点2に関して,上記口頭審理陳述要領書の第2頁(1)(イ)欄の第3及び4段落,並びに,平成23年7月12日の口頭審理において,甲第2号証及び甲第3号証には,ドレーン材の架け替えが必要となるローラは開示されていないうえ,甲1物発明にローラを設けようとすると,ドレーン材のローラへの架け替えが必要になり,そのような繁雑な作業を回避しようと考えるのが普通であるから,甲1物発明にローラを設けるということは,当業者は想到し得ない旨を主張している。 当該主張について,以下に検討する。 上記(ii)欄に記載したように,食い付きなどを防止するための対策を講ずる必要があることは当業者に自明であって,その対策としては, (α)ローラを設ける (β)ケーシングの開口端部を曲面にするなどして滑りやすくする といったものが考えられる。しかし,(α)については,被請求人が主張するような架け替え作業の問題が発生し,(β)については,架け替え作業の問題は回避できる一方で,地盤への打込みの際の衝撃により滑りやすくした部分の機能が短時間で失われるといった問題や,(α)との対比において,ドレーン材をより丁寧に扱うことが必要になるなどの問題の発生が予測される。 このように,ある技術的課題を解決するための手段は一長一短であって,どの長所を重視し,どの短所を許容するかに基づいて設計方針が決せされるところ,ケーシングの開口部にドレーン材をスムーズに挿入することをより重視し,架け替え作業については許容するという設計方針は,当業者が選択し得るものと言うべきであり,このような架け替え作業の問題の存在が,ローラを設けるという対策を採用することの阻害要因となるとまでは言えない。 よって,被請求人の上記主張は採用できない。 (iv) 被請求人は,相違点2に関して,上記口頭審理陳述要領書の第3頁第3段落において,甲第1号証にはローラが記載されている図面と記載されていない図面があり,ローラが図示されていない図面は「意図的に」図示をしていないものであり,甲1物発明及び甲1方法発明を,いずれもローラが記載されていない図面に基づいて認定していることを理由に,甲1物発明及び甲1方法発明では「ケーシングの上下端部近傍になる位置にローラを設ける発想がない」と主張している。 しかしながら,甲第1号証に記載の図面は模式図であって,ローラの有無を意図的に書き分けたと考えることに合理的理由はない。また,上記のとおり,甲1物発明ではローラを有するか否かが不明であると相違点を認定したうえで,ローラを設けるようにすることは容易であると判断しているので,甲第1号証にローラが記載されていないことは,進歩性を肯定する理由とはならない。 よって,被請求人の上記主張は採用できない。 (ニ)作用効果の予測性について 本件特許発明1の全体構成により奏される作用・効果は,甲1物発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。 したがって,本件特許発明1は,甲1物発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (3)むすび 以上のとおり,本件特許発明1は,甲1物発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明1についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 2.本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2は,本件特許発明1の構成要件gを構成要件hに置き換えたものである。 してみると,本件特許発明2と甲1物発明との一致点は,上記1.(1)欄に記載した[一致点]と同じであり,相違点は,上記1.(1)欄に記載した[相違点1],及び,以下に示す[相違点3]である。 [相違点3] 構成要件hに関して,本件特許発明2では,「ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け,これらローラにドレーン材を架け回して,並列させたケーシングに連続するように内挿する構成」とされているのに対して,甲1物発明では,ドレーン材を架け回わすための「ローラ」を有するか否かが不明であり,その結果,「ローラ」の配設位置も不明な点。 (2)判断 上記各相違点について,以下に検討する。 (イ)[相違点1]について 上記1.(2)(イ)欄に記載したように,当業者が容易に想到し得た事項である。 (ロ)[相違点3]について 甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも,上記相違点3に係る本件特許発明2の構成である (γ)ローラを地中にその全てが埋め込まれることになるケーシングに設 ける点 (δ)ローラをケーシングに対して着脱自在にする点 が開示されていない。 そして,甲1物発明において,ケーシングの開口部にドレーン材をスムーズに挿入するためにローラを設けることまでは想到できるとしても,地中にその全てが埋め込まれることになるケーシングに,ケーシングの地中への埋め込みを阻害するローラ等の突起物を設けることは,当業者が容易に想到しうることではない。 したがって,甲1物発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明,又は,これらの発明及び周知技術に基づいて,上記相違点3に係る本件特許発明2の構成を当業者が容易に想到することはできない。 (ハ)請求人の主張について (i) 請求人は,相違点3に関して,平成23年6月28日付の口頭審理陳述要領書の第5頁ニ.欄において,本件特許発明1の構成要件gと本件特許発明2の構成要件hとの記載を比較した結果として,本件特許発明2では「ローラを支持している個所が特定されているとは解されず,ローラ支持箇所は,『ケーシング又はステーション』の何れをも含むものと解釈すべきである。」と主張している。 しかしながら,ローラの配設に関し,構成要件gには「ケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるように…ステーションに設け」と記載されるように,配設箇所が「ステーション」であることを明記したうえで,「ケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるように」と特定されているのに対し,構成要件hでは,構成要件gにように「ステーション」に設ける旨の特定がなく,且つ,構成要件gのように「…になるように…設け」ではなく「…に設け」と特定されていることから,構成要件hの「ケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け」との記載は,ケーシングに着脱可能なローラを設けることを特定していると認定すべきである。 仮に,構成要件hの記載から,ローラの配設箇所が不明確であったとしても,本件特許発明2に対応するものとして特許明細書に記載された実施例には,着脱可能なローラをケーシングに設けるものしか開示されていないから,この観点からも,構成要件hの「ケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け」との記載は,ケーシングに着脱可能なローラを設けることを特定していると認定すべきである。 よって,請求人の上記主張は採用できない。 (ii) 請求人は,相違点3に関して, 参考文献1:特開平10-18278号公報 参考文献2:特開2000-204541号公報 を例示して,ローラをケーシングに設けることは周知技術である旨を主張している。 しかしながら,上記参考文献1及び2に開示されているのは,地中にその全てが埋め込まれることのないケーシングにローラを設ける技術であり,上記(γ)の点が周知技術であるとはいえない。また,地中にその全てが埋め込まれることのないケーシングにローラをつけたとしても,ケーシングの地中への埋め込みの障害とはならないので,このような周知技術では,上記(δ)の点についても想定されていないといえる。 そして,地中にその全てが埋め込まれることのないケーシングにローラを設ける技術を,地中にその全てが埋め込まれることになるケーシングに適用することは,当業者にとって容易であるとは言えない。 (3)むすび 以上のとおり,本件特許発明2は,甲1物発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明,又は,これらの発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから,本件特許発明2についての特許は,無効とすることができない。 3.本件特許発明3について (1)対比 本件特許発明3は,本件特許発明1に構成要件iを追加したものである。 してみると,本件特許発明3と甲1物発明との一致点は,上記1.(1)欄に記載した[一致点]と同じであり,相違点は,上記1.(1)欄に記載した[相違点1]及び[相違点2],並びに,以下に示す[相違点4]である。 [相違点4] 構成要件iに関して,本件特許発明3では,「複数本のケーシングの長さが5m以上7m以下である」のに対して,甲1物発明では,3本のケーシングが「1本目が16.0m,2本目及び3本目が5.5m」である点。 (2)判断 上記各相違点について,以下に検討する。 (イ)[相違点1]及び[相違点2]について 上記1.(2)(イ)欄及び(ロ)欄の記載に記載したように,当業者が容易に想到し得た事項である。 (ロ)[相違点4]について 上記摘記事項(1a)欄に記載されるように,打設機の限界高さは,施工現場における安全性や事故発生時の影響等を考慮して,当業者が適宜選択し得た事項である。また,甲1物発明において,ケーシングを短くすることは,ケーシングの接合のための作業工程を増やすこととなる。 してみると,甲1物発明におけるケーシングの長さは,選択された限界高さ,及び,許容される接合回数に応じて,当業者が適宜設定し得た設計的事項である。そして,甲1物発明は,2本目及び3本目のケーシングの長さが,上記相違点4に係る本件特許発明3で特定される「5m以上7m以下」の範囲に含まれる長さであり,1本目のケーシングを含む全てのケーシングの長さを,この範囲に含まれるようにすることにより,上記相違点4に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。また,このような構成を採用することによる効果も,甲1物発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。 したがって,本件特許発明3は,甲1物発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (3)むすび 以上のとおり,本件特許発明3は,甲1物発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明3についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 4.本件特許発明4について (1)対比 本件特許発明4と甲1方法発明とを対比すると, (A) 甲1方法発明の「接合」は,本件特許発明4の「連結」に相当し,以下同様に, (B)「3本のケーシング」は,「複数本のケーシング」及び「必要な本数のケーシング」に, (C)「順次接合」することは,「順次継ぎ足」すことに, (D)「改良深度」は,「所定深さ」に, (E)「打設」は,「打込」み及び「打ち込み」に, (F)「ケーシング接続装置」は,「ステーション」に, (G)「搭載」は,「保持」に, それぞれ相当する。 また, (H) 甲1方法発明の「供給源から繰り出したドレーン材を,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき」との工程と,本件特許発明4の「並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け,これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき」との工程とは,「供給源から繰り出したドレーン材を,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき」との工程において共通する(下線は,相当関係にない発明特定事項に対して当審にて付与)。 さらに, (I) 甲1方法発明の「打設位置」は,本件特許発明4の「打ち込み位置」に相当し,以下同様に, (J) 「地盤に打設されている下方のケーシング」は,「地盤に打ち込まれている下方のケーシング」に, (K) 「接合」することは,「連結」することに, (L) 「接合を分離」することは,「連結を解除」することに, それぞれ相当する。 してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「j 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して,これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後, k ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって,ドレーン材を地盤中に固定した状態にして,ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において, X1’前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し,供給源から繰り出したドレーン材を,これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき, m 打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み,順次,次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに,この移動させたケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し, n この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を,必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み, o その後,打込んだケーシングを,1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて,ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま,地盤上に露出したケーシングと,地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して,連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにしたドレーン材の打設方法。」 [相違点5] 構成要件X1に関して,本件特許発明4では,「並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け」,これらローラにドレーン材を「架け回」すとされているのに対して,甲1方法発明では,ドレーン材を架け回わすための「ローラ」を有するか否かが不明であり,その結果,「ローラ」の配設位置も不明な点。 [相違点6] 構成要件X2に関して,本件特許発明4では,「ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には,必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なう」のに対して,甲1方法発明には,これに相当する工程がない点。 (2)判断 上記[相違点5]及び[相違点6]について,以下に検討する。 相違点5は,相違点2と実質的に同じであり,上記相違点5に係る本件特許発明4の工程は,上記1.(2)(ロ)欄に記載したのと同様,甲1方法発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得た事項である。 また,相違点6に係る本件特許発明4の工程は,上記相違点5に係る本件特許発明4の工程を採用したことに伴う必然的な工程である。そして,このような工程の存在が,甲1方法発明から本件特許発明4を想到する際の阻害要因とまで言えないことは,上記1.(2)(ハ)(iii)欄において記載したとおりである。 さらに,本件特許発明4の全体構成により奏される作用・効果も,上記1.(2)(ニ)欄に記載したのと同様,甲1方法発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。 したがって,本件特許発明4は,甲1方法発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (3)むすび 以上のとおり,本件特許発明4は,甲1方法発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許発明4についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。 5.本件特許発明5について (1)対比 本件特許発明5は,本件特許発明4の構成要件X1及びX2を,それぞれ構成要件X3及びX4に置き換えたものである。 してみると,本件特許発明5と甲1方法発明との一致点は,上記4.(1)欄に記載した[一致点]と同じであり,相違点は,以下に示す[相違点7]及び[相違点8]である。 [相違点7] 構成要件X3に関して,本件特許発明5では,「並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け」,これらローラにドレーン材を「架け回」すとされているのに対して,甲1方法発明では,ドレーン材を架け回わすための「ローラ」を有するか否かが不明であり,その結果,「ローラ」の配設位置も不明な点。 [相違点8] 構成要件X4に関して,本件特許発明5では,「ケーシングを地盤に打ち込む際には,そのケーシングに取付けたローラを取外し,打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には,そのケーシングにローラを取付ける」のに対して,甲1方法発明には,これに相当する工程がない点。 (2)判断 上記各相違点について,以下に検討する。 (イ)[相違点7]について 相違点7は,相違点3と実質的に同じであり,上記2.(2)(ロ)欄に記載したのと同様,甲1方法発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明,又は,これらの発明及び周知技術と基づいて,上記相違点7に係る本件特許発明5の構成を当業者が容易に想到することはできない。 (ロ)[相違点8]について 上記(イ)欄に記載したように,上記相違点7に係る本件特許発明5の構成を当業者が容易に想到することはできないことから,上記相違点8に係る本件特許発明5の構成も当業者が容易に想到することができない。 (3)むすび 以上のとおり,本件特許発明5は,甲1方法発明並びに甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明,又は,これらの発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものではないから,本件特許発明5についての特許は,無効とすることができない。 第7.むすび 上記のとおり,本件特許発明1,3及び4についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり,同法第123条第1項第2号に該当し,いずれも無効とすべきものである。 一方,本件特許発明2及び5について特許は,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効とすることができない。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により,その5分の2を請求人の負担とし,5分の3を被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ドレーン材の打設装置および方法 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、ドレーン材の打設装置および方法に関し、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、ドレーン材を所定の深さまで効率よく打設することができるドレーン材の打設装置および方法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 軟弱な粘土地盤の圧密促進やゆるい砂質地盤等の液状化防止対策として、地盤にドレーン材を打設する方法が、知られている。ドレーン材は一般に、その地盤上に高く立設した長いケーシングに内装して打設される。そのため、高さ方向に使用できるスペースの制約がある打設現場の場合には、深い位置までドレーン材を打設することが困難になる。 【0003】 そこで、ケーシングおよびドレーン材を、順次継ぎ足して打設する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この提案の方法ではケーシングおよびドレーン材を継ぎ足す作業が煩雑になり、作業効率を向上させるには限界があるという問題があり、打設作業の効率性を向上させることができる方法や装置が求められていた。 【特許文献1】特開平10-292361号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、ドレーン材を所定の深さまで効率的に打設することができるドレーン材の打設装置および方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 上記目的を達成するため本発明のドレーン材の打設装置は、長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと、これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で、地盤に打ち込む打ち込み手段と、地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において、前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を、これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと、ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け、前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け、これらローラに前記ドレーン材を架け回して、並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし、ケーシングの打ち込み工程では、ステーション内で並列させたケーシングを、前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ、ケーシングの引抜き工程では、1本ずつ順次地盤上に露出されて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを、前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたことを特徴とするものである。 また、本発明の別のドレーン材の打設装置は、長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと、これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で、地盤に打ち込む打ち込み手段と、地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において、前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を、これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと、ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け、前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け、これらローラに前記ドレーン材を架け回して、並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし、ケーシングの打ち込み工程では、ステーション内で並列させたケーシングを、前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ、ケーシングの引抜き工程では、1本ずつ順次地盤上に露出されて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを、前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたことを特徴とするものである。 【0006】 ここで、前記複数本のケーシングの長さは、例えば、5m以上7m以下にする。 【0007】 また、本発明のドレーン材の打設方法は、長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して、これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後、ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって、ドレーン材を地盤中に固定した状態にして、ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において、前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し、前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け、これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して、これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき、打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み、順次、次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し、この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み、その後、打込んだケーシングを、1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出したケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して、連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし、ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には、必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにしたことを特徴とするものである。 【0008】 また、本発明の別のドレーン材の打設方法は、長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して、これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後、ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって、ドレーン材を地盤中に固定した状態にして、ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において、前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し、前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け、これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して、これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき、打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み、順次、次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し、この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み、その後、打込んだケーシングを、1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出したケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して、連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし、ケーシングを地盤に打ち込む際には、そのケーシングに取付けたローラを取外し、打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には、そのケーシングにローラを取付けるようにしたことを特徴とするものである。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出したドレーン材を、これら並列させたそれぞれのケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーション内で、並列させたケーシングを移動手段によって、1本ずつ順次打設位置に移動させ、打設位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を打ち込み手段により地盤に打ち込み、順次、次のケーシングを打設位置に移動させるとともに、この移動させたケーシングを、地盤に打ち込んでいる下方のケーシングに連結し、このケーシングとともに内挿しているドレーン材を打ち込み手段により地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことにより、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、ドレーン材を所定の深さまで打ち込むことができる。 【0010】 その後、ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって、ドレーン材を地盤中に固定した状態にして、打込んだケーシングのみを引抜き手段により、1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出させたケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して、連結を解除した地盤上のケーシングを、1本ずつ順次移動手段によって、ステーション内に並列させるようにすることで、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、すべてのケーシングを引抜くことができる。 【0011】 そして、ドレーン材を常時、複数本のケーシングに連続するように内挿した状態にして、ケーシングを地盤に打ち込む際には、並列させたケーシングを順次、移動手段により移動させて長手方向に連結させ、ケーシングを引抜く際には、地盤上に引抜いて順次連結を解除したケーシングを、移動手段により移動させて並列させるので、迅速に打設作業を行なうことができ、作業効率を向上させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 以下、本発明のドレーン材の打設装置および方法を実施形態に基づいて説明する。 【0013】 図1に例示するように、この実施形態のドレーン材の打設装置1(以下、打設装置1という)は、バックホウをベースにした車体に取付けられている。この車体にはアウトリガーが設けられており、打設装置1を取付けた際の安定性が確保できるようになっている。打設装置1は、枠体3を基本構造としたステーション2と、ステーション2の下端部に設置された打ち込み引抜き手段8とを備えている。ステーション2には、上側作業足場3aおよび下側作業足場3bが設けられ、上端部には移動手段であるチェーンブロック7が設けられている。 【0014】 ステーション2には、長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシング4(第1ケーシング4a、第2ケーシング4b、第3ケーシング4c、第4ケーシング4d、第5ケーシング4e)が立った状態で並列して保持されている。ステーション2で保持されるケーシング4の本数は5本に限定されるものではなく、必要な本数のケーシング4が保持される。ケーシング4は、それぞれスタンド上に並立され、外れ止めにより保持されている。 【0015】 また、第2ケーシング4b、第3ケーシング4c、第4ケーシング4dおよび第5ケーシング4eの上端部近傍、下端部近傍になるように、ステーション2にはローラ5a?5gが固設されている。さらに、ステーション2には、その後端上部に導入ローラ6a、第1ケーシング4aの上方位置(後述する打ち込み位置)に、もう一つの導入ローラ6bが固設されている。 【0016】 車体の後側には、ドレーン材Dを巻き取った供給ロール11が軸支されている。この供給ロール11から繰り出したドレーン材Dは、導入ローラ6aを介してステーション2に導入され、それぞれのローラ5a?5g、導入ローラ6bに架け回されて、ステーション2に保持されたそれぞれのケーシング4に連続するように内挿されている。これらローラ5a?5gおよび導入ローラ6bは、ドレーン材Dの架け替え作業(ドレーン材Dの架け回しや架け回しているドレーン材Dの取外し等)を容易に行なえるように片持ち構造にすることが好ましい。 【0017】 ドレーン材Dの先端は、第1ケーシング4aの下端部から突出し、打ち込み引抜き手段8を通過して地盤の表面近傍まで達し、その先端にはアンカー10が取付けられている。ドレーン材Dは、ステーション2に固設されたそれぞれのローラ5a?5g、6a、6bに架け回されてケーシング4に内挿されているので、ドレーン材Dとケーシング4とは相対的な移動が円滑に行なえるようになっている。 【0018】 打ち込み引抜き手段8が設置されているステーション2の前方部(図1では、左端部)は、ケーシング4の打ち込み位置になっている。それぞれのケーシング4は、チェーンブロック7により吊設されてステーション2内を水平移動および上下移動できるようになっている。そのため、チェーンブロック7を用いて、ケーシング4を打ち込み位置に移動させ、或いは打ち込み位置にあるケーシング4を他の位置に移動させることができる。 【0019】 打ち込み引抜き手段8は、ケーシング4を地盤へ打ち込む打ち込み機能と、地盤に打込まれているケーシング4を地盤上に引抜く引抜き機能を有し、この実施形態では、上下動する保持チャック9を有している。保持チャック9がケーシング4を保持した状態で下方移動すると、ケーシング4が地盤に打込まれ、ケーシング4を保持した状態で上方移動すると、地盤に打ち込まれているケーシング4が引抜かれることになる。 【0020】 次に、図2?図12に基づいて、この打設装置1を用いたドレーン材Dの打設方法を説明する。尚、図2?図12では、打設装置1の構造を分かり易くするために、上側作業足場3a、下側作業足場3bなど、一部の構成を省略して示している。 【0021】 まず、図2?図8に基づいて、ケーシング4とともにケーシング4に内挿されているドレーン材Dを所定の深さまで打ち込む工程について説明する。チェーンブロック7を用いて、第1ケーシング4aをステーション2の打ち込み位置に移動させ、図2に例示するように、打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させる。ドレーン材Dの先端のアンカー10は、第1ケーシング4aの下端部にセットされている。そして、打ち込み引抜き手段8を作動させて第1ケーシング4aとともに、第1ケーシング4aに内挿されているドレーン材Dを地盤に打ち込む。 【0022】 第1ケーシング4aをある程度の深さまで打込んだ後は、図3に例示するように架け回されているドレーン材Dを導入ローラ6bおよびローラ5aから取外してフリーな状態にする。そして、第2ケーシング4bをチェーンブロック7に吊設して、打ち込み位置まで移動させる。ドレーン材Dはローラ5b?5g、導入ローラ6aに架け回されているので、円滑に第2ケーシング4bを移動させることができる。 【0023】 第2ケーシング4bを打ち込み位置まで移動させた後は、図4に例示するように第2ケーシング4bの下端部を、地盤に打ち込んでいる第1ケーシング4aの上端部に連結する。その際に、ドレーン材Dを架け回しているローラ5bから取外すとともに、導入ローラ6bに架け回し、弛んでいるドレーン材Dの余長は、供給ロール11側へ巻き戻す。 【0024】 第1ケーシング4aの上端部と第2ケーシング4bの下端部とは嵌合構造になっていて、嵌め込んだ上端部と下端部とにピン等を貫通するように取付けることにより、強固に連結できるようになっている。第2ケーシング4bは、第1ケーシング4aに連結した後でチェーンブロック7から取外す。 【0025】 ケーシング4をチェーンブロック7に吊設する作業、吊設しているケーシング4をチェーンブロック7から取外す作業および導入ローラ6bに対するドレーン材Dの架け替え作業、ローラ5bに対するドレーン材Dの取外し作業は、図1に例示した上側作業足場3aに作業者が載って行なうことができる。また、第1ケーシング4aの上端部と第2ケーシング4bの下端部の連結作業、ローラ5aに対するドレーン材Dの取外し作業は、図1に例示した下側作業足場3bに作業者が載って行なうことができる。 【0026】 次いで、図5に例示するように、第2ケーシング4bを打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させて、第2ケーシング4bを地盤に打ち込む。ドレーン材Dは、第1ケーシング4aおよび第2ケーシング4bを連続するように内挿されているので、第2ケーシング4bとともに、第2ケーシング4bに内挿されているドレーン材Dが地盤に打ち込まれることになる。 【0027】 第2ケーシング4bをある程度の深さまで打込んだ後は、第3ケーシング4cについても第2ケーシング4bと同様の手順によって、第3ケーシング4cをある程度の深さまで打ち込む。そして、図6に例示するように架け回されているドレーン材Dを導入ローラ6bおよびローラ5eから取外してフリーな状態にする。 【0028】 次いで、第4ケーシング4dをチェーンブロック7に吊設して、打ち込み位置まで移動させる。ドレーン材Dはローラ5f、5g、導入ローラ6aに架け回されているので、円滑に第4ケーシング4dを移動させることができる。 【0029】 第4ケーシング4dを打ち込み位置まで移動させた後は、図7に例示するように第4ケーシング4dの下端部を、地盤に打ち込んでいる第3ケーシング4cの上端部に連結する。その際に、ドレーン材Dをローラ5eに架け回すとともに、導入ローラ6bに架け回し、弛んでいるドレーン材Dの余長は、供給ロール11側へ巻き戻す。 【0030】 次いで、既述した第2ケーシング4b、第3ケーシング4cと同様に、第4ケーシング4dを打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させて地盤に打ち込む。このようにして、第4ケーシング4dとともに、第4ケーシング4dに内挿されているドレーン材Dが地盤に打ち込まれることになる。 【0031】 次いで、この実施形態では、架け回されているドレーン材Dを導入ローラ6bおよびローラ5e?5gから取外してフリーな状態にする。そして、チェーンブロック7を用いて第5ケーシング4eを打ち込み位置まで移動させ、図8に例示するように第5ケーシング4eの下端部を、地盤に打ち込んでいる第4ケーシング4dの上端部に連結する。その際に、ドレーン材Dを導入ローラ6bに架け回し、弛んでいるドレーン材Dの余長は、供給ロール11側へ巻き戻す。 【0032】 次いで、第5ケーシング4eとともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込むことにより、打ち込む工程が完了する。 【0033】 このように、ケーシング4とともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込み、順次、次のケーシング4を打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシング4を地盤に打ち込んでいる下方のケーシング4に連結し、この移動させたケーシング4とともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシング4に対して繰り返し行なう。 【0034】 ケーシング4を打込み位置に移動させる際には、移動させるケーシング4を円滑に移動できるように必要な箇所のローラ5a?5g、導入ローラ6bに対してドレーン材Dの架け替え作業を行なうようにすればよく、上記実施形態に例示した架け替え作業に限定されるものではない。 【0035】 地盤上では、複数本のケーシング4をステーション2に並列させて保持しているので、高さ方向に大きなスペースが不要になる。したがって、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、複数本のケーシング4を順次継ぎ足して打ち込むことにより、ドレーン材Dを所定の深さまで打ち込むことができる。ケーシング4の長さは、例えば、5m?7m程度であり、ドレーン材Dを20m程度の深さまで打ち込む場合には、長さ5mのケーシング4を4本継ぎ足せばよい。従来のように、長さ20mの1本のケーシングを用いる場合と比べて、高さ方向の制約を受けにくくなる。 【0036】 しかも、ステーション2で並列している状態のケーシング4を、チェーンブロック7を用いて打ち込み位置に移動させて、ドレーン材Dをケーシング4に連続するように内挿した状態のまま、ケーシング4どうしを長手方向に連結すればよいので、迅速に作業を行なうことができ、作業の煩雑さが軽減される。 【0037】 次に、図9?図12に基づいて、地盤に打ち込んだケーシング4を地盤上に引抜くようにする引抜き工程について説明する。この引抜き工程は、上記したケーシング4を打ち込む工程の逆の手順となる。 【0038】 ドレーン材Dを所定の深さまで打ち込んだ後は、図9に例示するように、打ち込んだケーシング4を打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させ、打ち込み引抜き手段8を作動させて地盤上に引抜く。この際に、連結しているケーシング4に、ドレーン材Dを連続するように内挿させた状態のままにしておき、まず、第5ケーシング4eの全長が地盤上に露出するまで引抜く。この状態で、第5ケーシング4eの下端部と第4ケーシング4dの上端部との連結を解除する。連結を解除した後は、導入ローラ6bから架け回されているドレーン材Dを取外してフリーな状態にする。 【0039】 次いで、図10に例示するように、第4ケーシング4dとの連結が解除されてフリーになった第5ケーシング4eを、チェーンブロック7に吊設してステーション2の後方位置に移動させる。そして、導入ローラ6b、ローラ5e?5gにドレーン材Dを架け回す。吊設している第5ケーシング4eは、移動させた位置でチェーンブロック7から取外して、ステーション2内で保持する。 【0040】 上記の引抜き工程を、第4ケーシング4d、第3ケーシング4c、第2ケーシング4b、第1ケーシング4aに対しても順次行なって、フリーになったケーシング4をチェーンブロック7を用いて、ステーション2内で並列するように移動させて保持する。この実施形態では、図11に例示するように、第1ケーシング4aを地盤上に引抜いて、ドレーン材Dをすべてのケーシング4に連続するように内挿させた状態のままにして、ステーション2内にすべてのケーシング4を並列させることにより、引抜き工程が完了する。 【0041】 このように、ケーシング4を1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材Dをケーシング4に連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出させたケーシング4と、地盤に打ち込まれている下方のケーシング4との連結を解除し、フリーになった地盤上のケーシング4を、1本ずつ順次、ステーション2内に並列させるようにするので、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、すべてのケーシング4を引抜くことができる。 【0042】 しかも、連結を解除してフリーになったケーシング4を、チェーンブロック7を用いてドレーン材Dをケーシング4に連続するように内挿した状態のまま、並列するように移動させればよいので、迅速に作業を行なうことができ、作業の煩雑さが軽減される。 【0043】 引抜いて打ち込み位置にあるケーシング4を移動させて並列させる際には、移動させるケーシング4を円滑に移動できるように必要な箇所のローラ5a?5g、導入ローラ6bに対してドレーン材Dの架け替え作業を行なう。 【0044】 次いで、図12に例示するように、第1ケーシング4aの下端部から突出しているドレーン材Dを切断する。地盤に打ち込まれたドレーン材Dは、先端に取付けたアンカー10によって、地盤中に固定された状態になるので、上記の引抜き工程によってケーシング4のみを地盤上に引抜くことにより、地盤の所定深さまで打設されることになる。このようにドレーン材Dを切断することにより、その位置でのドレーン材Dの打設作業が完了するので、ドレーン材Dを所定の深さまで効率よく打設することができる。 【0045】 次の位置にドレーン材Dを打設するには、ステーション2の打ち込み位置を次の打設位置にあわせるように車体を移動させる。そして、第1ケーシング4aの下端部から突出しているドレーン材Dの先端にアンカー10を取付けて、図2?図12に例示した工程を行なえばよい。 【0046】 このように、本発明によれば、ドレーン材Dをある位置に打設した後は、ステーション2内に複数本のケーシング4が並列され、供給ロール11から繰り出したドレーン材Dが、これら並列されたケーシング4に連続するよう内挿した状態で保持されているので、ドレーン材Dの先端にアンカー10を取付けるだけで、すぐに次の位置でドレーン材Dの打設作業行なうことができる。 【0047】 従来の長尺のケーシングでは、損傷等した場合はそのケーシングがまったく使用できなくなり、別のケーシングを使用する必要があったが、本発明によれば、損傷等したケーシング4だけを別のケーシング4に取り替えるだけでよいので、メンテナンス性に優れている。また、ケーシング4を短尺化できるので、ケーシング4の運搬が容易になり、ケーシング4を保管するスペースを小さくできるというメリットもある。さらには、継ぎ足すケーシング4の本数を変えるだけで、ドレーン材Dを要求される深さまで打設できるので、打設深さの異なる様々な打設現場に対応することが容易になる。 【0048】 次いで、別の実施形態を説明する。この実施形態は、上記した実施形態の導入ローラ6bおよびローラ5a?5gに替えて、第1ケーシング4aの上端部近傍にはローラ5が設け、第2ケーシング4b、第3ケーシング4c、第4ケーシング4dおよび第5ケーシング4eの上端部近傍と下端部近傍にローラ5を設けたものであり、これらローラ5は、ボルト等によって着脱可能になっている。その他の構成は上記した実施形態と同様である。 【0049】 供給ロール11から繰り出したドレーン材Dは、ステーション2に固設された導入ガイドローラ6を介してステーション2に導入され、それぞれのローラ5に架け回されてステーション2に保持された複数本のケーシング4に連続するように内挿されている。ドレーン材Dは、それぞれのケーシング4に設けられたローラ5に架け回されてケーシング4に内挿されているので、ドレーン材Dとケーシング4とは相対的な移動が円滑に行なえるようになっている。 【0050】 図13?図20に基づいて、この実施形態の打設装置1を用いたドレーン材Dの打設方法を説明する。尚、図13?図20では、打設装置1の構造を分かり易くするために、上側作業足場3a、下側作業足場3bなど、一部の構成を省略して示している。 【0051】 まず、図13?図17に基づいて、ドレーン材Dを所定の深さまで打ち込む工程について説明する。チェーンブロック7を用いて、第1ケーシング4aをステーション2の打ち込み位置に移動させ、図13に例示するように、打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させる。ドレーン材Dの先端のアンカー10は、第1ケーシング4aの下端部にセットされている。そして、打ち込み引抜き手段8を作動させて第1ケーシング4aとともに、第1ケーシング4aに内挿されているドレーン材Dを地盤に打ち込む。 【0052】 第1ケーシング4aをある程度の深さまで打込んだ後は、図14に例示するように、第2ケーシング4bをチェーンブロック7に吊設して、打ち込み位置まで移動させる。ドレーン材Dがローラ5に架け回されているので、円滑に第2ケーシング4bを移動させることができる。 【0053】 ここで、第1ケーシング4aの上端部近傍のローラ5と第2ケーシング4bの下端部近傍のローラ5を取外す。そして、第2ケーシング4bの下端部を、地盤に打ち込んでいる第1ケーシング4aの上端部に連結する。第2ケーシング4bは、第1ケーシング4aに連結した後でチェーンブロック7から取外す。 【0054】 ケーシング4をチェーンブロック7に吊設する作業および吊設しているケーシング4をチェーンブロック7から取外す作業は、図1に例示した上側作業足場3aに作業者が載って行なうことができる。また、ケーシング4に対するローラ5の取外し作業、後述するケーシング4に対するローラ5の取付け作業は、図1に例示した下側作業足場3bに作業者が載って行なうことができる。 【0055】 次いで、図15に例示するように、第2ケーシング4bを打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させて、第2ケーシング4bを地盤に打ち込む。ドレーン材Dは、第1ケーシング4aおよび第2ケーシング4bを連続するように内挿されているので、第2ケーシング4bとともに、第2ケーシング4bに内挿されているドレーン材Dが地盤に打ち込まれることになる。 【0056】 第2ケーシング4bをある程度の深さまで打込んだ後は、第3ケーシング4c、第4ケーシング4dに対しても、既述した第2ケーシング4bと同様に、打ち込み作業を行なって、ドレーン材Dを地盤に打ち込む。このように、ケーシング4とともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込み、順次、次のケーシング4を打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシング4を地盤に打ち込んでいる下方のケーシング4に連結し、この移動させたケーシング4とともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシング4に対して繰り返し行なう。 【0057】 この実施形態では、図16に例示するように、チェーンブロック7を用いて第5ケーシング4eを打ち込み位置まで移動させ、第4ケーシング4dの上端部近傍のローラ5と第5ケーシング4cの下端部近傍のローラ5を取外し、第5ケーシング4eの下端部を、地盤に打ち込んでいる第4ケーシング4dの上端部に連結する。次いで、図17に例示するように、第5ケーシング4eとともに内挿しているドレーン材Dを地盤に打ち込むことにより、打ち込む工程が完了する。 【0058】 この実施形態においても、先の実施形態と同様に、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、複数本のケーシング4を順次継ぎ足して打ち込むことにより、ドレーン材Dを所定の深さまで打ち込むことができ、また、迅速に作業を行なうことができ、作業の煩雑さが軽減される。 【0059】 次に、図18?図20に基づいて、地盤に打ち込んだケーシング4を地盤上に引抜くようにする引抜き工程について説明する。この引抜き工程は、上記したケーシング4を打ち込む工程の逆の手順となる。 【0060】 ドレーン材Dを所定の深さまで打ち込んだ後は、図18に例示するように、打ち込んだケーシング4を打ち込み引抜き手段8の保持チャック9に保持させ、打ち込み引抜き手段8を作動させて地盤上に引抜く。この際に、連結しているケーシング4に、ドレーン材Dを連続するように内挿させた状態のままにしておき、まず、第5ケーシング4eの全長が地盤上に露出するまで引抜く。この状態で、第5ケーシング4eの下端部と第4ケーシング4dの上端部との連結を解除する。連結を解除した第5ケーシング4eの下端部と、第4ケーシング4dの上端部とには、それぞれローラ5を取付け、取付けたローラ5にはドレーン材Dを架け回す。 【0061】 次いで、図19に例示するように、第4ケーシング4dとの連結が解除されてフリーになった第5ケーシング4eを、チェーンブロック7に吊設してステーション2の後方位置に移動させる。ドレーン材Dがローラ5に架け回されているので、円滑に第5ケーシング4eを移動させることができる。吊設している第5ケーシング4eは、移動させた位置でチェーンブロック7から取外して、ステーション2内で保持する。 【0062】 上記の引抜き工程を、第4ケーシング4d、第3ケーシング4c、第2ケーシング4b、第1ケーシング4aに対しても順次行なって、フリーになったケーシング4をチェーンブロック7を用いて、ステーション2内で並列するように移動させて保持する。この実施形態では、図20に例示するように、第1ケーシング4aを地盤上に引抜いて、ドレーン材Dをすべてのケーシング4に連続するように内挿させた状態のままにして、ステーション2内にすべてのケーシング4を並列させることにより、引抜き工程が完了する。 【0063】 このように、ケーシング4を1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材Dをケーシング4に連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出させたケーシング4と、地盤に打ち込まれている下方のケーシング4との連結を解除し、フリーになった地盤上のケーシング4を、1本ずつ順次、ステーション2内に並列させるようにするので、高さ方向にスペースの制約がある打設現場であっても、すべてのケーシング4を引抜くことができる。 【0064】 しかも、連結を解除してフリーになったケーシング4を、チェーンブロック7を用いてドレーン材Dをケーシング4に連続するように内挿した状態のまま、並列するように移動させればよいので、迅速に作業を行なうことができ、作業の煩雑さが軽減される。 【0065】 次いで、図20に例示するように、第1ケーシング4aの下端部から突出しているドレーン材Dを切断する。このようにドレーン材Dを切断することにより、その位置でのドレーン材Dの打設作業が完了するので、ドレーン材Dを所定の深さまで効率よく打設することができる。 【0066】 次の位置にドレーン材Dを打設するには、ステーション2の打ち込み位置を次の打設位置にあわせるように車体を移動させる。そして、第1ケーシング4aの下端部から突出しているドレーン材Dの先端にアンカー10を取付けて、図13?図20に例示した工程を行なえばよい。 【図面の簡単な説明】 【0067】 【図1】本発明のドレーン材の打設装置を例示する側面図である。 【図2】図1のドレーン材の打設装置により、第1ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図3】必要なローラに対して架け回していたドレーン材を取外す工程を例示する説明図である。 【図4】第1ケーシングの上端部と第2ケーシングの下端部とを連結する工程を例示する説明図である。 【図5】第2ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図6】必要なローラに対して架け回していたドレーン材を取外す工程を例示する説明図である。 【図7】第4ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図8】第5ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図9】第5ケーシングを地盤上に引抜く工程を例示する説明図である。 【図10】第5ケーシングをステーション内で並列するように移動させる工程を例示する説明図である。 【図11】第1ケーシングを地盤上に引抜く工程を例示する説明図である。 【図12】地盤に打ち込んだドレーン材を地盤表面近傍で切断する工程を例示する説明図である。 【図13】別の実施形態によって、第1ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図14】第1ケーシングの上端部と第2ケーシングの下端部とを連結する工程を例示する説明図である。 【図15】第2ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図16】第4ケーシングの上端部と第5ケーシングの下端部とを連結する工程を例示する説明図である。 【図17】第5ケーシングとともにドレーン材を打ち込む工程を例示する説明図である。 【図18】第5ケーシングを地盤上に引抜いて、第4ケーシングとの連結を解除する工程を例示する説明図である。 【図19】第5ケーシングをステーション内で並列するように移動させる工程を例示する説明図である。 【図20】第1ケーシングを地盤上に引抜いた後、地盤に打ち込んだドレーン材を地盤表面近傍で切断する工程を例示する説明図である。 【符号の説明】 【0068】 1 打設装置 2 ステーション 3 枠体 3a 上側作業足場 3b 下側作業足場 4、4a、4b、4c、4d、4e ケーシング 5、5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g ローラ 6a、6b 導入ローラ 7 チェーンブロック(移動手段) 8 打ち込み引抜き手段 9 保持チャック 10 アンカー 11 供給ロール D ドレーン材 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと、これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で、地盤に打ち込む打ち込み手段と、地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において、前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を、これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと、ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け、前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに設け、これらローラに前記ドレーン材を架け回して、並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし、ケーシングの打ち込み工程では、ステーション内で並列させたケーシングを、前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ、ケーシングの引抜き工程では、1本ずつ順次地盤上に露出されて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを、前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。 【請求項2】 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングと、これらケーシングを順次継ぎ足して先端にアンカーを取付けたドレーン材を内挿した状態で、地盤に打ち込む打ち込み手段と、地盤に打込んだケーシングを地盤上に引抜く引抜き手段とを備えたドレーン材の打設装置において、前記複数本のケーシングを並列させるとともに供給源から繰り出した前記ドレーン材を、これら並列させたケーシングに連続するよう内挿した状態で保持するステーションと、ステーション内でケーシングを1本ずつ移動させる移動手段とを設け、前記ステーション内で並列させたケーシングの下端部近傍および上端部近傍に着脱可能なローラを設け、これらローラに前記ドレーン材を架け回して、並列させたケーシングに連続するように内挿する構成にし、ケーシングの打ち込み工程では、ステーション内で並列させたケーシングを、前記移動手段により順次打ち込み位置に移動させ、ケーシングの引抜き工程では、1本ずつ順次地盤上に露出されて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除されるケーシングを、前記移動手段によりステーション内で並列するように移動させる構成にしたドレーン材の打設装置。 【請求項3】 前記複数本のケーシングの長さが5m以上7m以下である請求項1または2に記載のドレーン材の打設装置。 【請求項4】 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して、これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後、ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって、ドレーン材を地盤中に固定した状態にして、ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において、前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し、前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍になるようにローラをステーションに取付け、これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して、これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき、打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み、順次、次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し、この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み、その後、打込んだケーシングを、1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出したケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して、連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし、ケーシングを打込み位置に移動させる際および地盤上に引抜いたケーシングを並列させる際には、必要な箇所のローラに対してドレーン材の架け替えを行なうようにしたドレーン材の打設方法。 【請求項5】 長手方向に互いに連結可能な複数本のケーシングを順次継ぎ足して、これらケーシングとともに内挿したドレーン材を地盤の所定深さまで打込んだ後、ドレーン材の先端に取付けたアンカーによって、ドレーン材を地盤中に固定した状態にして、ケーシングを地盤上に引抜くドレーン材の打設方法において、前記複数本のケーシングをステーションで並列して保持し、前記並列したケーシングの下端部近傍および上端部近傍にローラを取付け、これらローラに供給源から繰り出したドレーン材を架け回して、これら並列したケーシングに連続するように内挿しておき、打ち込み位置に配置したケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込み、順次、次のケーシングを打ち込み位置に移動させるとともに、この移動させたケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとを連結し、この移動させたケーシングとともに内挿しているドレーン材を地盤に打ち込む工程を、必要な本数のケーシングに対して繰り返し行なうことによりドレーン材を地盤の所定深さまで打ち込み、その後、打込んだケーシングを、1本ずつ順次地盤上に露出するように引抜いて、ドレーン材をケーシングに連続するように内挿させた状態のまま、地盤上に露出したケーシングと、地盤に打ち込まれている下方のケーシングとの連結を解除して、連結を解除した地盤上のケーシングをステーションで並列させて保持するようにし、ケーシングを地盤に打ち込む際には、そのケーシングに取付けたローラを取外し、打込んだケーシングを地盤上に引抜いた際には、そのケーシングにローラを取付けるようにしたドレーン材の打設方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2011-07-25 |
出願番号 | 特願2008-222428(P2008-222428) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZD
(E02D)
P 1 113・ 853- ZD (E02D) P 1 113・ 851- ZD (E02D) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 石村 恵美子 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 仁科 雅弘 |
登録日 | 2010-04-16 |
登録番号 | 特許第4494500号(P4494500) |
発明の名称 | ドレーン材の打設装置および方法 |
代理人 | 田中 雅雄 |
代理人 | 昼間 孝良 |
代理人 | 昼間 孝良 |
代理人 | 昼間 孝良 |