• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01R
管理番号 1272911
審判番号 不服2011-19689  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-09-12 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2006-520909「アナライザ、アクティブロードプル回路、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答測定方法およびそれらの較正方法並びにそれらを含む回路の設計を改良および製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年2月3日国際公開、WO2005/010538、平成18年12月21日国内公表、特表2006-528769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、2003年(平成15年)7月24日にイギリスでされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して、平成16年7月23日(国際出願日)にされた国際特許出願である。そして、平成18年3月17日に、国際出願日における国際特許出願の明細書、請求の範囲及び図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文が提出され、また、特許協力条約第34条(2)(b)の規定に基づいて提出された補正書の翻訳文2通の提出により特許請求の範囲についての補正がされ、平成22年6月8日付け手続補正書により明細書及び特許請求の範囲についての補正がされた。その後、平成23年4月26日付けで拒絶査定がされ、同年5月11日に査定の謄本が送達された。
これに対して、同年9月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がされた。その後、当審の平成24年2月14日付け審尋に対し、同年4月17日付け回答書が提出された。

第2 本件補正の却下の決定
1.結論
本件補正を却下する。

2.理由
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成22年6月8日付け手続補正書による補正後をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1を以下のように補正するものである。なお、下線は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(本件補正前)
「【請求項1】
所定の周波数範囲内における或る周波数について、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答を測定するためのアナライザであって、
該アナライザは、使用中、分析される上記デバイスに接続可能なアクティブロードプル回路を備え、
このアクティブロードプル回路は、
(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し、
(ii)この出力信号を修正し、そして
(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻すように構成されたフィードバック回路を備え、
このフィードバック回路における前記出力信号の修正は、前記周波数範囲の外の周波数について該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限して、前記デバイスに戻される修正された信号が、前記周波数範囲内の前記或る周波数をもつ成分を含むように行われ、
前記フィードバック回路は、前記周波数範囲内のすべての周波数について、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限するように構成されていることを特徴とするアナライザ。」

(本件補正後)
「【請求項1】
所定の周波数範囲内における或る周波数について、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答を測定するためのアナライザであって、
該アナライザは、使用中、分析される上記デバイスに接続可能なアクティブロードプル回路を備え、
このアクティブロードプル回路は、
(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し、
(ii)この出力信号を修正し、そして
(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻すように構成されたフィードバック回路を備え、
このフィードバック回路における前記出力信号の修正は、前記デバイスに戻される修正された信号が前記周波数範囲内の前記或る周波数をもつ成分を含むように、前記周波数範囲の外の周波数について該フィードバック回路のマグニチュードゲインを実質的に0に制限し、前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて能動的に、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限することを含む、ことを特徴とするアナライザ。」

本件補正により、本件補正前の「前記周波数範囲内のすべての周波数について、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限する」という事項が、本件補正後の「前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて能動的に、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限する」という事項に変更された。
そこで、本件補正が、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の特許請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、「翻訳文等」という。)に記載された事項の範囲内においてしたものであるか否かについて、以下に検討する。

(2)検討
ア.翻訳文等の記載に基づく検討
請求人は、本件補正の根拠として、審判請求書の「3-1.(2)b.」で本件補正前の明細書の段落0057、0062、0065及び0066を挙げ、回答書の「2.」で本件補正前の明細書の段落0031及び0043をさらに挙げている。
翻訳文等の段落0031、0043、0057、0062、0065及び0066の記載は、以下のとおりである。

「【0031】
シグナルプロセッサは、バンド内とバンド外の信号変換のため都合良く設けられる。例えばシグナルプロセッサは、バンド外の信号を無視してポジティブフィードバックの可能性を低減するべく、前記のバンド内での信号の大きさおよび/または位相を制御するため設けられる(負荷引き出し回路中の信号発振を避ける目的を有する)。
フィードバック回路は、予め選択することのできる量によって分析されるデバイスからの信号の振幅を作動中に変更可能な回路を備えることを特徴とする。可変振幅変更回路は、例えば可変増幅器を有することができる。可変振幅変更回路は、可変増幅器と固定増幅器を有することができる。増幅変更回路は、信号の量またはコンポーネントのそれらによって分析されるデバイスからの信号の増幅度を作動中に変えることができる。」

「【0043】
この方法は、デバイスからの出力信号が変換される方法を予め選択するステップを含むことができる。例えば、この方法は、制御ユニット、マイクロプロセッサまたは同様なものをプログラムするステップを含むことができる。デバイスからの出力信号は、異なる周波数で異なった方法で変換される。出力信号の変換は、その信号の位相および/または振幅の変換することを伴うことができる。フィードバックループによる位相変化は、周波数範囲内のある周波数で制限される場合がある。その方法は、デバイスから出力信号に予め選択されたゲインの大きさを適用することができる。その方法は、デバイスからの出力信号に予め選択された位相変化を適用することができる。」

「【0057】
本発明は、またさらに高周波大電力素子または高周波大電力素子を含む回路の製造の方法を提供する。それは、上述した方法を行うことによって前記デバイスを含む同様の既存のデバイスまたは既存の回路の設計を改良するステップを含み、次にデバイスを含むデバイスまたは回路を製造する方法を提供する。
本明細書において周波数範囲内のすべての周波数でフィードバック回路の振幅ゲインを制限させる。ゲインの限界点がポジティブフィードバックまたは発振を起こしそうな周波数で能動的に適用されるだけでよい。」

「【0062】
フィードバック回路1(フィルタ8と変換器9によって図式的に表される)によって実行された信号のフィルタリングと操作はフィードバック負荷引き出しシステムの安定動作を確実にする。負荷引き出しシステムでされた測定は、例えば、高調波周波数における、または基本周波数または与えられた高調波周波数周辺の周波数などの既知の信号のすべてに関連付けてなされる。これら範囲外の周波数は無関係であり無視できる(フィルタリングはバンドフィルタ8によって表される。もちろん他の手段がそのようなフィルタリングステップを実行するかもしれないのが理解されるだろう)。フィルタリングしなければ、他の周波数の信号はシステムの不安定性の原因となることがある。例えば、DUT6の反射係数だけで負荷引き出し回路1に入力される信号b_(OUT)と回路を出る信号a_(OUT)の間のアイソレーションを提供するので、ループのゲインが1(すなわち、一つ以上の周波数でポジティブフィードバックループの構成になる)より大きいとすぐに、負荷引き出し部品の帯域幅の中の周波数で発振が起こる可能性がある。高調波周波数で実負荷引き出し回路の可変部品の特性を設定することによって、そのようなポジティブフィードバックループを避けることができ、フィードバックループは、回路のゲインにおける高い変化のための少ない周波数の変化と共に他の周波数でも起きることができる。対象となる周波数範囲の中の信号は、フィルタ8によって無視されないが、バンドにおける信号の操作(例えば範囲の中で与えられた周波数で信号を減衰させること)を実行する信号変換ユニット9によって積極的なフィードバックの原因が防がれる。」

「【0065】
IQデモジュレータ36からの信号は、ディジタルシグナルプロセッサ37(PC、または特に構成されたディジタルシグナルプロセッサの構成でもよい)によって受信される。信号b_(OUT)は、作動中にDUT6によって作られ、シグナルサーキュレータ7を介してIQデモジュレータ36に与えられる。IQデモジュレータは、信号「I」,「Q」を生成し、それは直交座標における信号の強度と位相を表す。xyプロット直交座標において「I」値は、x値を表し、「Q」値は、直交座標のy値を表す。IQ復調ダウンコンバータ、局部発振源39からの信号の組み合わせによって、「I」,「Q」信号をディジタル化してディジタルシグナルプロセッサ37で処理できるぐらい低い「I」,「Q」の周波数信号とする。」

「【0066】
「I」,「Q」信号は、非ポジティブフィードバックループが与えられた範囲の中で周波数でまったく原因とならないことを保証するように変更される。IQモジュレータ38で発生する信号はb_(OUT)と同じ周波数を持っている(IQモジュレータ38アップコンバータは、局部発振源39からの信号への組み合わせによって大きさと位相情報がIとQの中に含まれた信号を高周波信号にする)。IQモジュレータ38によって出力された信号は、増幅器5を通ってDUT出力に入る。」

これらの記載からは、フィードバック回路でポジティブフィードバック又は発振が起きるのを防止するために、デバイスの出力信号に含まれる周波数成分を所定の帯域内に制限する(段落0062)とともに、その帯域内のすべての周波数についてフィードバック回路の振幅ゲインを制限する(段落0057)ことが読み取れる。また、この制限は、ポジティブフィードバック又は発振が起きそうな周波数について能動的に適用すればよい(段落0057)とされていることが分かる。さらに、この制限は、具体的には、フィードバック回路に含まれる増幅回路の増幅度の変更(段落0031)、デバイスの出力信号に対するあらかじめ選択されたゲインの大きさ又は位相変化の適用(段落0043)、デバイスの出力信号の減衰(段落0062)、又はデバイスの出力信号を復調して得られる強度信号I及び位相信号Qの変更(段落0065及び0066)によって行われることが読み取れる。
しかし、フィードバック回路の振幅ゲインの制限は、段落0043に記載されているように、あらかじめ選択されたゲインの大きさの適用や、あらかじめ選択された位相変化の適用によって行うとされており、デバイスの出力信号の「マグニチュードと位相に応じて」行うことは、先に引用した段落のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。また、このことが、先に引用した段落に記載された事項から当業者に自明であるとも認められない。翻訳文等の他の部分の記載についても、同様である。
そうすると、本件補正後の「前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて能動的に、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限する」という事項は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、翻訳文等に記載した事項の範囲内にあるとはいえない。

イ.本件補正前の明細書等の記載に基づく検討
上記ア.で述べたとおり、請求人は、本件補正の根拠として、本件補正前の明細書の段落番号を挙げている。そこで、念のため、本件補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項に基づく検討もしておく。
本件補正前の明細書の段落0031、0043、0057、0062、0065及び0066の記載は、以下のとおりである。

「【0031】
シグナルプロセッサは、前記帯域内および帯域外の双方の信号修正を行い得るように構成されることが有利である。例えばシグナルプロセッサは、ある周波数帯域外の信号を除くようにフィルタ処理を行い、かつ(ロードプル回路内での信号の発振を避ける目的で)ポジティブフィードバックの可能性を下げるために、該帯域内で信号のマグニチュードおよび/または位相を制御するように構成されてもよい。
フィードバック回路は、使用中、分析されるべきデバイスからの信号の振幅を事前選択可能な量だけ修正できる可変振幅修正回路を含んでいることが有利である。可変振幅修正回路は、例えば可変増幅器を含んでいてもよい。可変振幅修正回路は、可変増幅器と固定増幅器を含んでいてもよい。振幅修正回路は、使用中、分析されるべきデバイスからの信号の振幅を、信号または信号の成分の周波数に依存した量だけ修正できるものであってもよい。」

「【0043】
この方法は、デバイスからの出力信号の修正の仕方を事前選択するステップを含んでもよい。例えば、この方法は、制御ユニットまたはマイクロプロセッサなどをプログラムするステップを含んでもよい。デバイスからの出力信号の修正は、周波数が違えば修正のされ方が異なるように行われてもよい。出力信号の修正は、該信号の位相および/またはマグニチュードを修正することを含んでもよい。フィードバックループがもたらす位相の変化は、前記周波数範囲内のある周波数について制限されてもよい。上記の方法は、デバイスからの出力信号に加えられるゲインの大きさを事前選択するステップを含んでもよい。上記の方法は、デバイスから出力信号に加えられる位相変化を事前選択するステップを含んでもよい。」

「【0057】
本発明は、またさらに高周波大電力素子または高周波大電力素子を含む回路を製造する方法であって、類似した既存のデバイス、またはそうしたデバイスを含む既存の回路の設計を、上述した説明した方法を実行することにより改良し、該改良された設計に従ってデバイスまたはデバイスを含む回路を製造するステップを含む方法を提供する。
本明細書中で、或る周波数範囲内の全ての周波数についてフィードバック回路のマグニチュードゲインを制限することに言及した。ゲインの制限は、ゲインがポジティブフィードバックまたは発振を起こしそうな周波数について能動的に加えられればよいことは理解されると思う。」

「【0062】
(図式的にフィルタ8と修正器9によって表された)フィードバック回路1によって実行される信号のフィルタ処理と操作は、フィードバックロードプルシステムの安定した動作を保証する。ロードプルシステムを用いて行われる測定は、すべて既知の周波数範囲内、例えば基本周波数または或る高調波周波数の周辺の周波数の信号に関する。これらの帯域外の周波数、つまり関心外の周波数はフィルタ処理によって除かれてもよい(フィルタ処理は帯域フィルタ8によって表されているが、他の手段でもこうしたフィルタ処理ステップを実行可能なことは勿論理解されると思う)。フィルタ処理を行わないと、他の周波数の信号によってシステムが不安定になりかねない。例えばロードプル回路1に入力する信号b_(OUT)と該回路から出力する信号a_(OUT)の間の分離はDUT6の反射係数Γ_(L)のみによって提供されるため、ループのゲインが[1]より大きくなる(つまり、その結果一つ以上の周波数でポジティブフィードバックループが形成されることになる)や否や、ロードプルの構成要素の帯域幅内の周波数で発振が生じる可能性がある。
こうしたポジティブフィードバックループはアクティブロードプル回路の可変の構成要素の特性を設定することにより高調波周波数では回避可能であるが、他の周波数ではフィードバックループにおいて起こり得る。これは周波数が僅かに変わると回路のゲインが大きく変動するためである。関心周波数範囲内の信号はフィルタ8によって除かれないが、帯域内信号操作を実行する信号修正ユニット9によって(例えば前記範囲内のある周波数の信号を減衰させることにより)ポジティブフィードバックを引き起こさないようにされる。」

「【0065】
IQデモジュレータ36からの信号は、ディジタルシグナルプロセッサ37(PC、または特別に構成されたディジタルシグナルプロセッサから成っていてもよい)によって受信される。ディジタル信号処理ユニット37からの処理された信号b_(OUT)は、IQモジュレータ38によって受信される。使用中、DUT6によって生成される信号b_(OUT)は、シグナルサーキュレータ7を経由してIQデモジュレータ36に送られる。IQデモジュレータは、信号I’およびQ’を生成し、該信号I’およびQ’は直交座標系上の信号b_(OUT)のマグニチュードと位相を表す。I’値はxy直交座標系上の信号b_(OUT)のx値を表し、Q’値はy値を表す。IQデモジュレータは、局部発振源39からの信号との結合により、I’信号およびQ’信号を、ディジタル信号処理ユニット37が処理可能な十分低い周波数にダウンコンバートし、ディジタル信号処理ユニット37は該I’信号およびQ’信号をディジタル化して修正する。」

「【0066】
I’信号およびQ’信号は、或る範囲内の周波数でポジティブフィードバックループが生じないように修正される。修正されたI値およびQ値は、次いでIQモジュレータ38に送られ、IQモジュレータ38はI信号およびQ信号によって表わされるマグニチュードと位相をもつ信号を生成する。IQモジュレータ38によって生成された信号は、信号b_(OUT)と同じ周波数を持つ(IQモジュレータ38は、局部発振源39からの信号との結合により、I信号およびQ信号に含まれるマグニチュード・位相情報を元のより高い周波数にアップコンバートする)。IQモジュレータ38によって出力された信号は、増幅器5を通ってDUTの出力に送られる。」

これらの記載から読み取れる事項は、翻訳文等の対応する記載から読み取れる事項とほぼ同じであるが、デバイスの出力信号の振幅は、事前選択可能な量だけ修正できること(段落0031及び0043)、及び周波数に依存した量だけ修正できること(段落0031及び0043)が明確になり、デバイスの出力信号の位相は、事前選択可能な量だけ修正できること(段落0043)が明確になった。すなわち、フィードバック回路の振幅ゲインの制限が、デバイスの出力信号の振幅又は位相の修正によって行われるとしても、その修正量は、事前選択されるものであり、デバイスの出力信号の「マグニチュードと位相に応じて」決定されるものでないことが一層明確になった。
そうすると、本件補正後の「前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて能動的に、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限する」という事項は、本件補正前の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項からみても、その記載した事項の範囲内にあるとはいえない。

(3)補正案について
請求人は、回答書の「3.」で補正案を提示しているので、それについても検討しておく。
補正案は、本件補正後の「前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて能動的に、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限する」という事項を、さらに以下のように変更しようとするものである。なお、下線は、請求人が付したものであり、変更箇所を示す。

(補正案)
「前記周波数範囲内のすべての周波数について、前記出力信号のマグニチュードと位相に応じて、そのマグニチュードおよび/または位相を能動的に修正することにより、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを1より大きくならないように制限する」

補正案は、振幅ゲインの制限が、デバイスの出力信号のマグニチュード(振幅)又は位相の修正によって行われることを特定しようとするものである。
しかし、そのような特定は、フィードバック回路の振幅ゲインの制限をデバイスの出力信号の「マグニチュードと位相に応じて」行うことが翻訳文等に記載されていないという、上記(2)ア.における判断を左右するものではない。

(4)むすび
以上に検討したとおり、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願に係る発明についての判断
1.本願に係る発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1から30までのそれぞれに係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1から30までのそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものである。特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
所定の周波数範囲内における或る周波数について、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答を測定するためのアナライザであって、
該アナライザは、使用中、分析される上記デバイスに接続可能なアクティブロードプル回路を備え、
このアクティブロードプル回路は、
(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し、
(ii)この出力信号を修正し、そして
(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻すように構成されたフィードバック回路を備え、
このフィードバック回路における前記出力信号の修正は、前記周波数範囲の外の周波数について該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限して、前記デバイスに戻される修正された信号が、前記周波数範囲内の前記或る周波数をもつ成分を含むように行われ、
前記フィードバック回路は、前記周波数範囲内のすべての周波数について、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限するように構成されていることを特徴とするアナライザ。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づき、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
特に、本願発明は、下記の刊行物1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであると判断されている。

刊行物1:アメリカ合衆国特許第6509743号明細書
(発行日:2003年(平成15年)1月21日)

3.刊行物1に記載された発明
刊行物1には、以下の記載がある。なお、原文の引用の後に、当審で作成した日本語訳を記載する。

(1)第1欄第10行から第13行まで
「The present invention regards an active load or source impedance
synthesis apparatus. In particular an apparatus of the above type
apt to the experimental characterization of radio frequency and
microwave components and systems.」
「本発明は、アクティブ負荷又は信号源インピーダンス合成装置に関する。特に、高周波及びマイクロ波素子並びにシステムの実験的特性評価に適した上記種類の装置に関する。」

(2)第1欄第36行から第60行まで
「A part from the traditional methods, based on the simple
measurement of input and output power ratio or on the harmonic
distortion measurement, in the last ten years a technique, called "Load/Source Pull", has being widely applied.
The "Load/Source Pull" technique is based on the experimental
measurement of the optimum load, i.e. of the source or load
impedance (in the following we will refer to the load only for
brevity) which gives the best value of some parameters (for example,
the output power) of a particular device under test. The today
commercially available load/source pull systems generally measure
the output over input power ratio while varying the load/source
impedance. FIG. 1 shows a scheme of a traditional load pull system
with passive tuners.
…(略)…
Due to its non linear behavior, a device under test E changes its
output power with both the source and loading impedance, thus with
only an experimental test set it is possible to measure the optimum
loading which gives the proper matching for the desired
performances.
Commercially available load/source pull systems are based on
coaxial or waveguide mechanical tuners Tp to change the impedance
shown to the transistor. A set (Sm) of directional coupler and bias
tee is normally added between the transistor reference planes E and
the tuners Tp to obtain the measurement signals.」
「電力入出力比の単純な測定や高調波歪みの測定に基づく伝統的な方法から離れて、過去10年間に「ロード/ソースプル」と呼ばれる技法が広く適用されてきた。
「ロード/ソースプル」技法は、最適な負荷、すなわち、特定の被試験デバイスのいくつかのパラメータ(例えば、出力電力)の最適値を与える信号源又は負荷インピーダンス(以下では、簡単のため負荷にのみ言及する。)の実測に基づいている。今日市販されているロード/ソースプルシステムは、一般に、負荷/信号源インピーダンスを変化させながら、入力電力に対する出力電力の比を測定する。図1は、受動チューナー付きの伝統的なロードプルシステムの図式を示す。
…(略)…
その非線形な挙動のために、被試験デバイスEは、信号源及び負荷インピーダンスの双方の影響を受けてその出力電圧を変えるので、実験的試験によってのみ、所望の性能のための適切な整合を与える最適負荷を測定することが可能である。
市販のロード/ソースプルシステムは、トランジスタから見たインピーダンスを変更する同軸又は導波路機械チューナーTpに基づいている。方向性結合器とバイアスティーとの組(Sm)が、通常はトランジスタ基準面EとチューナーTpとの間に追加されて、測定信号を得る。」

(3)第2欄第5行から第30行まで
「During the 80', within universities and in some research labs, a
new technique, called "active load pull", which overcomes the loss
limitations has been developed. This technique provides for
electronically synthetizing the source or load impedance shown at
the device by substituting the mechanical tuner Tp with an active
load loop.
The active load is made with a directional coupler Acc used to
sample a signal proportional to the outgoing wave from the device E
(see FIG. 2). After being filtered with a filter (Rf) this signal is
properly controlled in magnitude and phase (through the variable
attenuator Ra and the phase shifter Rs), then amplified and finally
injected back towards the device under test. Thank to the amplifier,
the reflection coefficient Γ_(L), out of the active loop, can have a
magnitude over than 1 (0 dB), which is then reduced to the unity at
the device reference plane due to the losses.
Although the use of an amplifier allows to compensate for the
measurement system Sm and probe Pr losses, which are between the
active loop coupler Acc and the device reference plane A-A', if the
loss value is too high unwanted oscillations can start which
compromise the use of the entire system.
This inconvenient prevents the use of the active loop technique
especially over 20 GHz and up today a simple solution which
overcomes the oscillation problem and gives reliable results at high
frequencies has not been found.」
「80年代を通じて、大学及び一部の研究機関において、損失による制限を克服する「アクティブロードプル」と呼ばれる新しい技法が開発されてきた。この技法は、機械的チューナーTpをアクティブロードループで置き換えることにより、デバイス側から見た信号源又は負荷インピーダンスの電子的な合成に必要なものを提供する。
アクティブロードは、デバイスEからの送信波に比例した信号をサンプリングするために使用される方向性結合器Accで作られる(図2参照)。フィルタ(Rf)でろ過された後、この信号は、(可変減衰器Ra及び位相器Rsによって)マグニチュード及び位相が適切に制御され、その後増幅され、最終的に被試験デバイスに戻して注入される。増幅器のおかげで、アクティブループからの反射係数Γ_(L)は、1(0dB)を超えるマグニチュードを有することができ、その後、損失によりデバイス基準面で1にまで減少する。
増幅器の使用は、アクティブループ結合器Accとデバイス基準面A-A’との間にある測定システムSm及びプローブPrによる損失の補償を可能にするものの、損失値が高すぎると、システム全体の使用を危険にさらす不必要な発振が始まる可能性がある。
この不都合は、特に20GHz超でのアクティブループ技法の使用を妨げ、そして、今日まで、発振問題を克服し、高い周波数で信頼できる結果を得る簡単な解は発見されていない。」

(4)第2欄第33行から第49行まで
「The object of the invention is to solve the above drawbacks. In
particular, the object is to provide an active loop impedance
synthesis apparatus which does not show any parasitic oscillation
even above 20 GHz.
…(略)…
The present applicant, could demonstrate, after a theoretical
analysis and several experiments, that the measurement system
losses which were originally placed between the active load loop and
the device under test dramatically affect the loop stability. With
the new arrangement, according to the invention, the loss of the
measurement system are included inside the loop and only lower the
amplifier gain without compromising the stability.」
「本発明の目的は、上記欠点を解決することである。特に、その目的は、20GHz超でも寄生的な発振を示さないアクティブループインピーダンス合成装置を提供することにある。
…(略)…
本出願人は、理論解析といくつかの実験の後で、もともとはアクティブロードループと被試験デバイスとの間に配置された測定システムの損失がループ安定性に劇的に影響を与えることを実証することができた。新しい構成では、本発明に従って、測定システムの損失がループの内側に含まれ、安定性を損なうことなく、増幅器の利得を下げるだけである。」

(5)第3欄第4行から第34行まで
「Considering the known technique shown in FIG. 3 and neglecting the
multiple reflection contributions, the undesired oscillation
conditions of the system will be analyzed, including the losses from
the reference plane A-A' of the device under test E and the section
B-B' of the active loop directional coupler Acc.
There are three signal path which can be sources of instabilities:
an internal Loop (L_(int)), which includes, the directional coupler
Acc, the phase and magnitude control system - schematically
represented by a variable attenuator Ra and a variable phase shifter
Rs - a narrow band variable filter Rf, an amplifier Am and an
isolator Is (which could be neglected in some cases);
an external Loop (L_(ext)), comprising the component of the internal
loop plus the connection path from the loop to the measurement
system Sm;
a device under test loop (L_(E)), which includes the components of
the external loop plus the measurement system Sm and a probe Pr, up
to the device E reference plane A-A'.
The oscillation conditions of those three loops will be analyze to
demonstrate that if high losses of the measurement system are
present, it is relatively easy to obtain the instability of the
external loop L_(ext).
For all the following analysis it is assumed that the reflection
coefficient Γ_(L) shown to the device under test E, never exceeds the
unity (i.e. a loading condition). Furthermore it is assumed that
outside the pass band of the loop filter Rf, the filter attenuation
is so high to cancel the gain of the amplifier Am, thus the system
can oscillate only inside the pass band of the filter Rf.」
「図3に示された公知の技法を考え、多重反射の寄与を無視して、システムの異常発振条件が、被試験デバイスEの基準面A-A’及びアクティブループ方向性結合器Accの断面B-B’からの損失を含めて解析される。
不安定性の原因となり得る以下の3つの信号経路がある。
内部ループ(L_(int)):これは、方向性結合器Acc、位相及びマグニチュード制御システム(可変減衰器Ra及び可変位相器Rsによって模式的に表されている)、狭帯域可変フィルタRf、増幅器Am及び(無視できる場合もある)アイソレーターIsを含む。
外部ループ(L_(ext)):内部ループを構成する素子とループから測定システムSmへの接続経路とからなる。
被試験デバイスループ(L_(E)):これは、外部ループを構成する素子と測定システムSm及びプローブPrとからなり、デバイスEの基準面A-A’に至る。
これら3つのループの発振条件が解析され、測定システムの高損失が存在すると、外部ループL_(ext)の不安定性が比較的容易に獲得されることが実証される。
以下のすべての解析のために、被試験デバイスEから見た反射係数Γ_(L)は、決して1を超えない(すなわち負荷条件)と仮定する。さらに、ループフィルタRfの通過帯域外では、フィルタによる減衰が増幅器Amの利得を打ち消すほど大きく、したがって、システムは、フィルタRfの通過帯域内でのみ発振し得ると仮定する。」

(6)第4欄第66行から第5欄第13行まで
「While it's relatively simple to fulfill the condition given by
equation 3.7, i.e. having directivity values of -15 dB or better, it
is difficult to respect the condition given by the 3.8, which means
to have the reflection coefficient shown by the measurement system
Γ_(SM) at the directional coupler reference plane less than -10 dB
(-6 dB is the minimum given by equation 3.8 but some margin it's
mandatory), i.e. to have a well match measurement system, especially
at high frequencies (above 20 GHz).
According to the invention this problem is solved by moving the
loop directional coupler Acc forward of the most significant losses
of the measurement system, right before the probe Pr as shown in
FIG. 4.
The new arrangement according to the invention, shown in FIG. 6,
allows to obtain stability of the external loop without the
requirements of low Γ_(SM).」
「式3.7で与えられる条件を満たすこと、すなわち-15dB又はそれよりよい値の方向性を有することは比較的簡単だが、式3.8で与えられる条件は、測定システムから見た反射係数Γ_(SM)が方向性結合器の基準面で-10dBより小さい(-6dBが式3.8で与えられる最小値だが、いくらかのマージンが必須である)こと、すなわち特に高い周波数(20GHz超)でよく整合した測定システムを有することを意味し、それを尊重することは困難である。
本発明によれば、この問題は、図4に示すように、ループ方向性結合器Accを測定システムの最も重要な損失の前、プローブPrの直前に移動することによって解決される。
図6に示す、本発明に従った新たな構成は、小さいΓ_(SM)という要件なしに、外部ループの安定性の獲得を可能にする。」

(7)第5欄第44行から第55行まで
「Now it is evident that the loop directional coupler Acc shifting,
taught by the inventor, results in stability conditions which are
more easy to fulfill in terms of directional coupler directivity
(equation 3.13) and reduces the overall measurement system matching
requirements of a factor which is around two time the loss (2*L_(SM))
thus making this technique available for higher frequencies where
the loss factor are more relevant.
From another point of view, the invention can be seen as the
integration of the measurement system Sm inside the active loop: in
this way the measurement losses just diminished the loop amplifier
gain and does not compromise the loop stability.」
「今や、発明者によって教示されたループ方向性結合器Accの移設が、方向性結合器の方向性に関して満たすことが容易な安定性条件(式3.13)をもたらして、全体的な測定システムの整合要件を、損失の2倍(2×L_(SM))程度の因子に軽減し、したがって、損失係数がさらに関係するより高い周波数でこの技法を利用可能にすることは明らかである。
別の観点では、本発明は、測定システムSmのアクティブループ内への統合として見ることができ、こうして、測定損失は、ループ増幅器の利得を単に減少させ、ループの安定性を損なわない。」

刊行物1に記載されたアクティブ負荷インピーダンス合成装置は、高周波及びマイクロ波素子の実験的特性評価に適したものであり(上記(1)参照)、測定信号を得るために、方向性結合器とバイアスティーとの組(Sm)のような測定システム(Sm)が組み込まれている(上記(2)及び(3)参照)から、測定装置の一種である。そして、測定する量は、入力電力に対する出力電力の比である(上記(2)参照)。また、高周波及びマイクロ波素子の実験的特性評価に適したものである(上記(1)参照)以上、被試験デバイスEとして、高周波素子を想定することができる。さらに、狭帯域可変フィルタRfであるループフィルタRfの通過帯域外では、フィルタによる減衰が増幅器Amの利得を打ち消すほど大きいとされている(上記(5)参照)から、所定の周波数範囲内における特定の周波数だけが考慮の対象とされていることが明らかである。
以上のことを踏まえて、上記記載及び図1から6までのそれぞれに示された事項を総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「所定の周波数範囲内における特定の周波数について、高周波素子である被試験デバイスEの入力電力に対する出力電力の比を測定するためのアクティブ負荷インピーダンス合成装置であって、
前記アクティブ負荷インピーダンス合成装置は、使用中、前記被試験デバイスEに接続可能なアクティブロードを備え、
このアクティブロードは、方向性結合器Accと狭帯域可変フィルタRfと位相器Rsと可変減衰器Raと増幅器Amとを備えたアクティブロードループを備え、
前記被試験デバイスEからの信号は、前記方向性結合器Accによってサンプリングされ、前記狭帯域可変フィルタRfによってろ過され、前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され、前記被試験デバイスEに戻して注入され、
前記増幅器Amと前記方向性結合器Accとの間に測定システムSmが設置された
アクティブ負荷インピーダンス合成装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

引用発明の「高周波素子である被試験デバイスE」は、本願発明の「電子デバイス」に相当する。
引用発明の「入力電力」は、「高周波素子である被試験デバイスE」に入力される信号であるから、高周波信号である。したがって、本願発明の「高周波入力信号」に相当する。
引用発明の「入力電力に対する出力電力の比」は、本願発明の「高周波入力信号に対する…応答」に相当する。
引用発明の「アクティブ負荷インピーダンス合成装置」は、本願発明の「アナライザ」に相当する。
そうすると、引用発明の「所定の周波数範囲内における特定の周波数について、高周波素子である被試験デバイスEの入力電力に対する出力電力の比を測定するためのアクティブ負荷インピーダンス合成装置」は、全体として、本願発明の「所定の周波数範囲内における或る周波数について、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答を測定するためのアナライザ」に相当する。

引用発明の「アクティブロード」は、本願発明の「アクティブロードプル回路」に相当する。
したがって、引用発明の「前記アクティブ負荷インピーダンス合成装置は、使用中、前記被試験デバイスEに接続可能なアクティブロードを備え」は、全体として、本願発明の「該アナライザは、使用中、分析される上記デバイスに接続可能なアクティブロードプル回路を備え」に相当する。

引用発明の「被試験デバイスEからの信号」は、本願発明の「分析されるべきデバイスから[の]出力信号」に相当する。
引用発明の「このアクティブロードは、方向性結合器Acc…を備えたアクティブロードループを備え、前記被試験デバイスEからの信号は、前記方向性結合器Accによってサンプリングされ」は、本願発明の「このアクティブロードプル回路は、(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し」に相当する。
引用発明の「このアクティブロードは、…狭帯域可変フィルタRfと位相器Rsと可変減衰器Raと増幅器Amとを備えたアクティブロードループを備え、前記被試験デバイスEからの信号は、…前記狭帯域可変フィルタRfによってろ過され、前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され」は、本願発明の「このアクティブロードプル回路は、…(ii)この出力信号を修正し」に相当する。
引用発明の「このアクティブロードは、…アクティブロードループを備え、前記被試験デバイスEからの信号は、…前記被試験デバイスEに戻して注入され」は、本願発明の「このアクティブロードプル回路は、…(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻す」に相当する。
引用発明の「このアクティブロードは、方向性結合器Accと狭帯域可変フィルタRfと位相器Rsと可変減衰器Raと増幅器Amとを備えたアクティブロードループを備え、前記被試験デバイスEからの信号は、前記方向性結合器Accによってサンプリングされ、前記狭帯域可変フィルタRfによってろ過され、前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され、前記被試験デバイスEに戻して注入され」は、引用発明の「アクティブロード」がフィードバック回路を構成していることを意味している。
したがって、引用発明の「このアクティブロードは、方向性結合器Accと狭帯域可変フィルタRfと位相器Rsと可変減衰器Raと増幅器Amとを備えたアクティブロードループを備え、前記被試験デバイスEからの信号は、前記方向性結合器Accによってサンプリングされ、前記狭帯域可変フィルタRfによってろ過され、前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され、前記被試験デバイスEに戻して注入され」は、全体として、本願発明の「このアクティブロードプル回路は、(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し、(ii)この出力信号を修正し、そして(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻すように構成されたフィードバック回路を備え」に相当する。

引用発明の「狭帯域可変フィルタRf」による減衰は、その通過帯域外では、増幅器Amの利得を打ち消すほど大きいとされている(上記3.(5)参照)。したがって、引用発明の「前記被試験デバイスEからの信号は、…前記狭帯域可変フィルタRfによってろ過され」は、本願発明の「このフィードバック回路における前記出力信号の修正は、前記周波数範囲の外の周波数について該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限して、前記デバイスに戻される修正された信号が、前記周波数範囲内の前記或る周波数をもつ成分を含むように行われ」に相当する。

本願の「第6の実施例」に関する記載(段落0082から0085まで並びに図10及び11)から明らかなように、本願発明においても、増幅器Amと方向性結合器Accとの間に測定システムSmを設置することが想定されている。
このことを踏まえると、引用発明の「前記被試験デバイスEからの信号は、…前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され」及び「前記増幅器Amと前記方向性結合器Accとの間に測定システムSmが設置された」と、本願発明の「前記フィードバック回路は、前記周波数範囲内のすべての周波数について、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限するように構成されている」とは、「フィードバック回路」(引用発明の「アクティブロード」、本願発明の「フィードバック回路」)が「出力信号」(引用発明の「被試験デバイスEからの信号」、本願発明の「分析されるべきデバイスから[の]出力信号」)の「マグニチュードを修正するように構成されている」点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「所定の周波数範囲内における或る周波数について、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答を測定するためのアナライザであって、
該アナライザは、使用中、分析される上記デバイスに接続可能なアクティブロードプル回路を備え、
このアクティブロードプル回路は、
(i)前記分析されるべきデバイスから出力信号を受信し、
(ii)この出力信号を修正し、そして
(iii)この修正された信号を前記分析されるべきデバイスに戻すように構成されたフィードバック回路を備え、
このフィードバック回路における前記出力信号の修正は、前記周波数範囲の外の周波数について該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限して、前記デバイスに戻される修正された信号が、前記周波数範囲内の前記或る周波数をもつ成分を含むように行われ、
前記フィードバック回路は、前記出力信号のマグニチュードを修正するように構成されている
アナライザ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
出力信号のマグニチュードを修正するために、本願発明では、フィードバック回路が「前記周波数範囲内のすべての周波数について、該フィードバック回路のマグニチュードゲインを制限するように構成」されているのに対し、引用発明では、「前記被試験デバイスEからの信号」が「前記位相器Rs及び前記可変減衰器Raによって位相及びマグニチュードが適切に制御され、前記増幅器Amによって増幅され」、「前記増幅器Amと前記方向性結合器Accとの間に測定システムSmが設置された」点。

5.相違点についての判断
引用発明は、方向性結合器Acc、狭帯域可変フィルタRf、可変減衰器Ra、位相器Rs及び増幅器Amからなるアクティブロードループを含むアクティブロードにおいて、測定システムSm及びプローブPrによる損失が大きいと不必要な発振が始まる可能性があるという課題(上記3.(3)参照)を認識した上で、前記測定システムSmを前記アクティブロードループ内に統合すると(すなわち、前記増幅器Amと前記方向性結合器Accとの間に前記測定システムSmを設置すると)、前記不必要な発振が始まらないようにするための要件を緩和することができる(上記3.(6)及び(7)参照)という知見を得てなされたものである。そして、引用発明において、例えば前記方向性結合器Accの方向性の値(上記3.(7)参照)を、緩和された前記要件を満たすように選択し、前記不必要な発振が始まらないようにすることは、引用発明のそもそもの目的を考慮すれば、当業者が当然に行うことである。
また、引用発明は、前記狭帯域可変フィルタRfによる減衰が、その通過帯域の外側では前記増幅器Amの利得を打ち消すほど大きく、前記不必要な発振は、前記通過帯域の内側でのみ起こり得るという状況を想定してなされたものである(上記3.(5)参照)。したがって、前記方向性の値の選択によって抑制される前記不必要な発振の周波数は、最初から前記通過帯域の内側に限定されている。そうすると、前記通過帯域の内側の各周波数について、前記要件を満たす前記方向性の値を検討し、その中から、前記通過帯域の内側のすべての周波数について前記不必要な発振を抑制することができるものを選択することは、当業者が容易に思い付くことである。
その結果、前記通過帯域の内側のすべての周波数について、前記アクティブロード(本願発明の「フィードバック回路」)のマグニチュードゲインが制限されることは明らかである。

6.むすび
本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-11-02 
結審通知日 2012-11-07 
審決日 2012-11-21 
出願番号 特願2006-520909(P2006-520909)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01R)
P 1 8・ 561- Z (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 荒井 誠  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 飯野 茂
山川 雅也
発明の名称 アナライザ、アクティブロードプル回路、高周波入力信号に対する電子デバイスの応答測定方法およびそれらの較正方法並びにそれらを含む回路の設計を改良および製造する方法  
復代理人 小川 英司  
代理人 長門 侃二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ