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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65H
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1272928
審判番号 不服2012-5915  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-04-02 
確定日 2013-04-11 
事件の表示 特願2008-102956「紙葉類搬送切替え装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月29日出願公開、特開2009-249174〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成20年4月10日を出願日とする出願であって、平成23年10月17日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年12月21日に手続補正がなされたが、平成24年1月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年4月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成24年4月2日になされた手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
1.補正の内容
本件手続補正は、明細書、特許請求の範囲及び図面について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について、補正前後の記載は、以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】
3方向に分岐する搬送路の分岐部に設けられ、任意の1つの搬送路から送られてくる紙葉類を他の2つの搬送路の何れか1つに案内するために回転して切替動作をする搬送切替ブレードを有する紙葉類搬送切替え装置であって、
前記分岐部は3方向に延びるように構成され、
前記搬送切替ブレードは回転中心から3方向に突出した案内部を有し、その内の1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度を前記2つの搬送路が成す角度よりも大きくすると共に、1つの案内部から他の2つの案内部にかけて湾曲面とした案内面を形成し、モータによって前記搬送切替ブレードを回転させることを特徴とする紙葉類搬送切替え装置。」

(2)補正後
「【請求項1】
3方向に分岐する搬送路の分岐部に設けられ、任意の1つの搬送路から送られてくる紙葉類を他の2つの搬送路の何れか1つに案内するために回転して切替動作をする搬送切替ブレードを有する紙葉類搬送切替え装置であって、
前記分岐部は約120度の間隔で放射状に3方向に延びるように構成され、
前記搬送切替ブレードは回転中心から3方向に突出した案内部を有し、その内の1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度を約150度として前記2つの搬送路が成す角度よりも大きくすると共に、1つの案内部から他の2つの案内部にかけて湾曲面とした案内面を形成し、モータによって前記搬送切替ブレードを回転させることを特徴とする紙葉類搬送切替え装置。」

2.補正の適否
上記の請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である分岐部が、「約120度の間隔で放射状に」3方向に延びるとする限定事項を追加するとともに、1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度について、「約150度として」との限定事項を追加するものである。
そして、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、本件手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記1.(2)のとおりのものと認める。

(2)先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願日前に出願されるとともに本願出願日後に出願公開された特願2007-236653号(特開2009-70056号。以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、次の記載がある。

a「【0001】
本発明は、紙葉類を搬送する搬送路を切り換える紙葉類分岐機構、紙葉類処理装置および紙葉類分岐方法に関する。」
b「【0005】
または、等角度の3方向から交わる3方向の搬送路の合流部に分岐部材を回動可能に設け、この分岐部材の停止位置を制御して3方向の搬送路間で紙葉類の双方向搬送を可能とした分岐機構がある。……」
c「【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、1つの分岐機構で紙葉類を多方向に分岐できるとともに、紙葉類の高速分岐にも対応でき、2方向分岐機構で構成する場合に比べて分岐機構の数を削減できる紙葉類分岐機構、紙葉類処理装置および紙葉類分岐方法を提供することを目的とする。」
d「【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、1つの紙葉類分岐機構で紙葉類を多方向に分岐できるとともに、紙葉類の高速分岐にも対応でき、このような分岐機能を2方向分岐機構で構成する場合に比べて紙葉類分岐機構の数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0053】
図1は、紙葉類分岐機構の方向制御した状態を(a)(b)(c)に示す側面図である。3つの搬送路として第1の搬送路11と第2の搬送路12と第3の搬送路13とが交わる合流部14に、これら搬送路11?13内を搬送される紙葉類として例えば紙幣の搬送方向を切り換える紙葉類分岐機構としての分岐機構15が配設されている。
【0054】
各搬送路11?13には、紙幣の両面に対向してガイドする対のガイド16が配設されているとともに、合流部14に臨む端部を含む複数箇所に搬送路11?13内の紙幣を挟み込んで搬送する複数対の搬送ローラ17が配設されている。
【0055】
分岐機構15は、合流部14の中心を通るように通路幅方向に沿って配置される回動軸20により回動可能に配設される分岐部材21を備えている。この分岐部材21は回動軸20の軸方向の複数箇所に配置されているとともに(図4参照)、同様にガイド16および搬送ローラ17も通路幅方向に複数に分割されていて、これらが互いに干渉しないように配設されており、分岐部材21がガイド16および搬送ローラ17に干渉することなく回動可能になっている。
【0056】
分岐部材21は、略三角形状で、一端に先細りとなる鋭角先端部22が形成されているとともに、他端に幅広となる幅広後端部23が形成され、一端から他端にかけた両側面に紙幣を搬送する搬送面24が形成されている。
【0057】
そして、分岐部材21は、図1(a)に示すように、分岐部材21の鋭角先端部22を第1の搬送路11へ向け、第1の搬送路11から他の2つの搬送路12,13へ紙幣を搬送する2つの搬送経路を切り換える2つの停止位置(実線位置と2点鎖線位置)と、図1(b)に示すように、分岐部材21の鋭角先端部22を第2の搬送路12へ向け、第2の搬送路12から他の2つの搬送路11,13へ紙幣を搬送する2つの搬送経路を切り換える2つの停止位置(実線位置と2点鎖線位置)と、図1(c)に示すように、分岐部材21の鋭角先端部22を第3の搬送路13へ向け、第3の搬送路13から他の2つの搬送路11,12へ紙幣を搬送する2つの搬送経路を切り換える2つの停止位置(実線位置と2点鎖線位置)との、最大で6箇所の停止位置に回動可能とする。」
e「【0064】
また、分岐部材21の形状は、図2の各例に示すように、一端が先細り、他端が幅広となる外形状であれば、一端が角張っていても(図2(a)(d)(e)参照)、角張っていなくてもよく(図2(b)(c)参照)、搬送面24が……、通路に沿った凹曲面でもよい(図2(c)参照)。また、分岐部材21の他端において両側の搬送面24間の一部が窪むように切り欠いても(図2(d)参照)、……よい(図2(e)参照)。そして、分岐部材21の他端において両側の搬送面24間の一部を切り欠いた場合には、分岐部材21を軽量化でき、分岐部材21を高速回動できるとともに停止位置を安定させることができる。」
f「【0069】
次に、図4には、分岐機構15の第1の駆動方法を示す。
【0070】
複数の分岐部材21を設けた回動軸20の両端は搬送路11?13の両側の側板31に回動可能に取り付けられ、この回動軸20の一端に分岐部材21を回動させる駆動手段32が配設されている。この駆動手段32は、位置制御可能な駆動部としてのステッピングモータ33を有し、このステッピングモータ33の駆動軸がカップリング34を介して回動軸20に連結されている。」

そして、図1及び図3の記載から、合流部14から搬送路11?13が3方向に放射状に延びていると認められる。
また、図1及び図3の記載から、分岐部材21の1つの鋭角先端部22と幅広後端部23とが成す角度は、2つの搬送路が成す角度よりも大きくなっていると認められる。
さらに、図1、図2(d)及び図3の記載から、分岐部材21の幅広後端部23には、鋭角先端部22とは異なる他の2つの先端部が設けられているとともに、これら鋭角先端部22及び他の2つの先端部は、分岐部材21の回動中心から3方向に突出するものと認められる。

以上の記載及び図1ないし図4によれば、先願明細書等には、次の発明が記載されていると認められる。
「3つの搬送路11?13の合流部14に設けられ、任意の1つの搬送路から送られてくる紙葉類を他の2つの搬送路の何れか1つに案内するために回動して搬送経路を切り換える分岐部材21を有する紙葉類分岐機構15であって、
合流部14は放射状に3方向に延びるように構成され、
分岐部材21は回動中心から3方向に突出した先端部を有し、その内の1つの鋭角先端部22と他の2つの先端部とが成す角度を2つの搬送路が成す角度よりも大きくすると共に、1つの鋭角先端部22から他の2つの先端部にかけて凹曲面とした搬送面24を形成し、ステッピングモータ33によって分岐部材21を回動させる紙葉類分岐機構15。」
(以下、「先願発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「3つの搬送路11?13の合流部14」、「回動」、「搬送経路を切り換える分岐部材21」、「紙葉類分岐機構15」、「先端部」、「その内の1つの鋭角先端部22」、「凹曲面」、「搬送面24」、「ステッピングモータ33」は、それぞれ本願補正発明の「3方向に分岐する搬送路の分岐部」、「回転」、「切替動作をする搬送切替ブレード」、「紙葉類搬送切替え装置」、「案内部」、「その内の1つの案内部」、「湾曲面」、「案内面」、「モータ」
に相当する。

そうすると、両者は、
「3方向に分岐する搬送路の分岐部に設けられ、任意の1つの搬送路から送られてくる紙葉類を他の2つの搬送路の何れか1つに案内するために回転して切替動作をする搬送切替ブレードを有する紙葉類搬送切替え装置であって、
分岐部は放射状に3方向に延びるように構成され、
搬送切替ブレードは回転中心から3方向に突出した案内部を有し、その内の1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度を2つの搬送路が成す角度よりも大きくすると共に、1つの案内部から他の2つの案内部にかけて湾曲面とした案内面を形成し、モータによって搬送切替ブレードを回転させることを特徴とする紙葉類搬送切替え装置。」
である点で一致し、次の点で一応相違する。

《相違点》
本願補正発明は、分岐部が「約120度の間隔」で放射状に3方向に延びるとするとともに、搬送切替ブレードの1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度を「約150度として」いるのに対し、先願発明は、それぞれの角度を特定していない点。

(4)相違点の検討
分岐部を「約120度の間隔」で放射状に3方向に延びるものとすることは、例えば、上記(2)b及び特開2000-72306号公報の【0043】、【0044】に記載されているように周知技術であるし、先願発明は、上記(2)c及びdの記載から、機構を簡素化して高速分岐を可能とするものであるところ、分岐位置制御の観点からは、放射状の3方向は等間隔とすることが自然であり、先願明細書等の図1及び図3の記載からも、先願発明の分岐部の延びる間隔は実質的に約120度とされている。
また、搬送切替ブレードの1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度の具体的数値については、先願発明及び本願補正発明のいずれにおいても、搬送される紙葉類が詰まることなく円滑に搬送されるように設定されるものであって、課題を解決する手段を具体化するにあたっての単なる設計的事項に過ぎない。
そして、本願明細書の記載(特に、【0011】)を参酌しても、これらの角度を「約120度の間隔」及び「約150度」と限定することによって、新たな効果を奏するものでもないので、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における設計上の微差にすぎない。
したがって、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、出願時における本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年12月21日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記第2.1.(1)のとおりのものである。

2.先願明細書等の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された先願明細書等の記載事項は、上記第2.2.(2)に記載したとおりである。

3.対比・検討
本願発明1は、上記第2.2で検討した本願補正発明から、分岐部が、「約120度の間隔で放射状に」3方向に延びるとする限定事項を省くとともに、1つの案内部と他の2つの案内部とが成す角度について、「約150度として」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.(4)に記載したとおり、先願発明と実質的に同一であるから、本願発明1も、同様の理由により、先願発明と実質的に同一である。

4.補正案について
請求人は平成24年8月30日付け回答書において補正案を提示しているので、一応検討しておく。
補正案における請求項1に係る発明(以下、「本願補正案発明」という。)は、本願補正発明に、分岐部が「内側に湾曲した3枚の紙幣ガイドにより形成されるもの」とする事項、及び、「紙葉類を分岐部を通過させる際、搬送ブレードの3方向に突出した案内部の先端が分岐部内に停止しないようにモータによる搬送切替ブレードの回転を制御することで、紙葉類の通過部位における紙幣ガイドの面と搬送切替ブレード案内面が対向して湾曲状の滑らかな搬送路を形成する」事項を追加するものである。
しかしながら、紙葉類が紙幣である点は上記2.(2)dに記載されており、また、分岐部が「内側に湾曲した3枚のガイドにより形成されるもの」であること、及び、「紙葉類の通過部位におけるガイドの面と搬送切替ブレード案内面が対向して湾曲状の滑らかな搬送路を形成する」ことは、例えば、上記特開2000-72306号公報の図2に記載されているように周知技術である。
さらに、「紙葉類を分岐部を通過させる際、搬送ブレードの3方向に突出した案内部の先端が分岐部内に停止しないようにモータによる搬送切替ブレードの回転を制御する」ことについては、先願明細書等の図1及び図3においても、側面視において分岐部材21の先端はガイド16に重なる、すなわち、分岐部内に停止しないようにされていると認められるとともに、案内部の先端が分岐部内に停止するようでは紙葉類の円滑な搬送の妨げになることは明らかであるので、案内部の先端が分岐部内に停止しないようにすることは、当然に行われるべきことでもある。
したがって、本願補正案発明で追加された事項は、課題解決のための具体化手段における設計上の微差に過ぎず、本願補正案発明は、先願発明と実質的に同一であり、しかも、本願補正案発明の発明者が先願発明の発明者と同一ではなく、出願時における本願の出願人が先願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-07 
結審通知日 2013-02-12 
審決日 2013-02-25 
出願番号 特願2008-102956(P2008-102956)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65H)
P 1 8・ 161- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 ▲高▼辻 将人
河原 英雄
発明の名称 紙葉類搬送切替え装置  
代理人 金倉 喬二  

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