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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1273515
審判番号 不服2010-8153  
総通号数 162 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-16 
確定日 2013-05-13 
事件の表示 特願2003-560471「解像度と深さ領域を改善するための軸方向線焦点を用いたOCT撮像用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月24日国際公開、WO03/60423,平成17年10月 6日国内公表,特表2005-530128〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年1月10日(パリ条約に基づく優先権主張 平成14年1月11日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成21年12月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年4月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。そして,当審において,平成23年6月16日付けで拒絶理由を通知したところ,請求人から同年12月21日に意見書および手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明は,平成23年12月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定された,次のとおりのものである。

【請求項1】
少なくとも試料の一部を撮像するための装置であって、
電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置;及び
前記電磁的な放射を受け入れるように構成され、かつ合成電磁的強度分布を生成し、光学的な試料の像を提供するように構成された第2の装置を備え、
光軸方向に沿って、少なくとも予め設定された距離の間の前記強度分布が概ね一定とされ、さらに前記電磁放射の波長が、前記強度分布が概ね一定とされた少なくとも予め設定された距離の間概ね同一であり、
前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供する装置。
【請求項2】(旧【請求項3】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置は、アキシコン・レンズを備えたことを特徴とする装置。
【請求項3】(旧【請求項4】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置は、回折光学素子を備えたことを特徴とする装置。
【請求項4】(旧【請求項5】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置は、アポダイザーを備えたことを特徴とする装置。
【請求項5】(旧【請求項6】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置は、回折素子とレンズとの組み合わせを備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】(旧【請求項7】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置は、アポダイズド・レンズまたは回折素子の組み合わせを備えていることを特徴とする装置。
【請求項7】(旧【請求項8】)
請求項1に記載の装置において、
前記強度分布は、ベッセル関数の形を示していることを特徴とする装置。
【請求項8】(旧【請求項10】)
請求項1に記載の装置において、
前記試料と前記強度分布の少なくとも一つの移動により、2以上の次元を有する像が生成されるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項9】(旧【請求項11】)
請求項1に記載の装置において、
半値全幅の横解像度をもつ前記強度分布は10μmより小さいことを特徴とする装置。
【請求項10】(旧【請求項12】)
請求項1に記載の装置において、
前記予め設定された距離は少なくとも50μmとされていることを特徴とする装置。
【請求項11】(旧【請求項13】)
請求項1に記載の装置において、
前記強度分布の少なくとも一部は、非ガウシアン分布を有していることを特徴とする装置。
【請求項12】(旧【請求項14】)
請求項1に記載の装置において、
前記第2の装置から返された情報を受け取り、該受け取られた情報に基づいて像を表示するように構成された第4の装置をさらに備えていることを特徴とする装置。
【請求項13】(旧【請求項15】)
少なくとも試料の一部を撮像するための装置であって、
電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置;及び
前記電磁的な放射を受け入れるように構成され、かつ合成電磁的強度分布を生成し、光学的な試料の像を提供するように構成された第2の装置を備え、
光軸方向に沿って、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの幅が概ね等しくされ、さらに前記電磁放射の波長が、少なくとも、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの間概ね同一であり、
前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供する装置。
【請求項14】(旧【請求項17】)
請求項13に記載の装置において、
前記第2の装置は、複数のレンズを備えていることを特徴とする装置。
【請求項15】(旧【請求項18】)
請求項13に記載の装置において、
前記セクションの一つは、少なくとも部分的にもう一方の前記セクションの上方にあることを特徴とする装置。
【請求項16】(旧【請求項19】)
請求項13に記載の装置において、
半値全幅の横解像度をもつ前記強度分布は、10μmより少ないことを特徴とする装置。
【請求項17】(旧【請求項20】)
請求項13に記載の装置において、
前記強度分布の少なくとも一部は、非ガウシアン分布を有していることを特徴とする装置。
【請求項18】(旧【請求項22】)
請求項13に記載の装置において、
前記試料と前記強度分布の少なくとも一つの移動により、2以上の次元を有する像が生成されるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項19】(旧【請求項23】)
少なくとも試料の一部を撮像するための方法であって、
a)電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置を用いて電磁的な放射を供給し、
b)光学的な試料の像を提供するための第2の干渉装置を用いて、前記電磁的な放射を受け入れ、かつ合成電磁的強度分布を生成し、このとき、光軸方向に沿って、少なくとも予め設定された距離の間、前記強度分布を概ね一定にし、さらに前記電磁放射の波長を、前記強度分布が概ね一定とされた少なくとも予め設定された距離の間概ね同一にし、
前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供することを特徴とする方法。
【請求項20】(旧【請求項24】)
少なくとも試料の一部を撮像するための方法であって、
電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置を用いて電磁的な放射を供給し;及び
光学的な試料の像を提供するための第2の干渉装置を用いて、前記電磁的な放射を受け入れ、かつ合成電磁的強度分布を生成し、このとき、光軸方向に沿って、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの幅が概ね等しくされ、さらに前記電磁放射の波長が、少なくとも、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの間概ね同一にし、
前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供することを特徴とする方法。

第3 当審の拒絶理由通知
当審における拒絶理由通知の概略は,以下のとおりである。
1 本件出願の請求項1,2,3,8および13,15,23?24に係る発明は,その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平9-149878号公報あるいは特開2001-264246号公報に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
2 この出願の請求項4?7,9,10?12および14,16,17および18,19,20?び22に係る発明は,その出願前に日本国内において,頒布された刊行物である特開平9-149878号公報あるいは特開2001-264246号公報に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 本件出願は,請求項1,2,5,8?10,14?16,21?24に係る発明が明確でないため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
4 本件出願は,特許法第37条第1項に規定する要件を満たしていない。

第4 当審の判断(特許法第36条第6項第2号)
1 請求項1について
(1)請求項1に係る発明においては「電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置」と特定されている。
しかしながら,「電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた」の特定では,光源からの電磁波を分離する構成のみであって,どの様な電磁波を分離し,該電磁波をどの様に「干渉」させるのか特定されておらず,依然として「第1の干渉装置」が不明であり,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすこと明らかである。

(2)請求項1に係る発明においては「前記電磁的な放射を受け入れるように構成され」と特定されている。
しかしながら,「前記電磁的な放射を受け入れるように構成され」の記載では,光源からの「電磁的な放射」を受け入れることとなり,「ビームスプリッタ」にて分離された電磁波との関係が明確に特定されているとはいえず,依然として,「第1の干渉装置」と「第2の装置」との関係が不明であって,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすこと明らかである。

(3)請求項1に係る発明においては「光軸方向に沿って、少なくとも予め設定された距離の間の前記強度分布が概ね一定とされ」と特定され,また,「前記第2の装置は・・・・・、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供する」と特定されている。
ところで,本件補正は,請求項1に係る発明において,「前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供する」との特定事項を追加することを含むものであり,該補正により,請求項1に係る発明は,図6あるいは図7に記載されたものを実施例とする発明であるといえる。
そして,図6および図7の実施例について,本願明細書の段落【0040】には「図6が示すのはオフセット・ファイバ・アレイ(段違いファイバ列)であり、反射鏡(ミラー)により対物レンズを通して指向され、試料上の縦と横の次元に集束(結像)スポットを再配置するのに用いられる。これらのスポットは走査され(走査方向は、水平方向の線と矢印によって示されている)、 多次元像を生成する。」と記載され,また,同段落【0041】には,「 図7は、試料上の縦と横の次元に集束(結像)スポットを再配置するのに用いられるファイバ・アレイ、マイクロレンズアレイ、および回折格子(反射鏡のアレイ)の概略である。光源(図示せず)からの光は、アレイになったファイバを通過し、さらにマイクロレンズアレイを通過して回折格子にいたる。格子(回折格子)によって指向された光は、対物レンズを通過して試料上に焦点合わせされる。スポットは走査され(走査方向は、水平方向の線と矢印によって示されている)、多次元像を生成する。」と記載されている。該記載からみて,図6実施例の「オフセット・ファイバ・アレイ(段違いファイバ列)」は,請求項1に係る発明の「オフセット・ファイバ・アレイ」に対応することは明らかであり,図6実施例の「反射鏡(ミラー)」および「対物レンズ」とともに,請求項1に係る発明の「第2の装置」を構成するといえる。また,図7実施例の「ファイバ・アレイ」および「マイクロレンズアレイ」は,請求項1に係る発明の「ファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイ」に応することは明らかであり,図7実施例の「回折格子(反射鏡のアレイ)」および「対物レンズ」とともに,請求項1に係る発明の「第2の装置」を構成するといえる。そして,図6実施例においては「オフセット・ファイバ・アレイ(段違いファイバ列)」,「反射鏡(ミラー)」および「対物レンズ」により,また,図7実施例においては「ファイバ・アレイ」,「マイクロレンズアレイ」,「回折格子(反射鏡のアレイ)」および「対物レンズ」により,「試料上の縦と横の次元に集束スポット」が配置される,すなわち,図6および7に示されるように,縦(光軸方向)と横(走査方向)に集光された「点焦点」が形成されるのであって,該「点焦点」は,集束スポットが光軸上に一定距離並んでいる「線焦点」でないことは明らかである。
そうすると,請求項1に係る発明において「合成電磁的強度分布を生成」する「第2の装置」が「光軸方向に沿って、少なくとも予め設定された距離の間の前記強度分布が概ね一定とされ」,すなわち,「線焦点」を形成し,且つ,「第2の装置」が「オフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備え」ることを満足する具体的な構成が,図6および図7を含む本願明細書の記載を参照しても把握することができないというべきである。
そうすると,「第2の装置」の上記両特定が,どの様に関連し,具体的にどの様な光学系を構成するのか,依然として,請求項1の記載のみでは不明であって,特許を受けようとする発明が明確であるとは到底いえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすこと明らかである。

なお,請求人は,請求項1に係る発明について補正は,図5と図6,7に基づくものである旨主張しているが,「第2の装置」に関して,図5実施例は「オフセット・ファイバ・アレイ」あるいは「ファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイ」を備えておらず,図6,7実施例は「光軸方向に沿って、少なくとも予め設定された距離の間の前記強度分布が概ね一定とされ」るものではないことは明らかであるから,該請求人の主張は採用出来ない。当審の拒絶理由においても言及したように,図5実施例の発明と図6,7実施例の発明とは,基本的に相違する発明であり,それらを組み合わせた発明は,本願明細書に記載されていないし,該記載から自明な事項であるともいえない。

(4)請求項1に係る発明においては「前記電磁放射の波長が、・・・・・概ね同一である」と特定されている。
しかしながら,「前記電磁放射」がその前出の「光源の電磁的な放射」を意味するとしても,「波長」が同一であることにより,「第2の装置」のどの様な光学的構成を特定しようとしているのか不明であって,依然として,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすこと明らかである。

なお,請求人は,平成23年12月21日付け意見書3頁19?22行において,「電磁放射の波長が少なくとも予め設定された距離の間概ね同一とすることにより、強度分布が少なくとも予め設定された距離の間概ね一定とすることを高めます。すなわち、各焦点の波長が予め設定された距離の範囲で同一ですから、各焦点の光の強度が予め設定された距離の範囲で同一となります。」と主張しているが,「第2の装置」の作用について述べるのみであって,積極的に「電磁放射の波長が少なくとも予め設定された距離の間概ね同一とする」構成,すなわち,「第2の装置」の光学的構成について述べてはおらず,意味不明である。また,本願明細書段落【0026】の式は,屈折型のアキシコン・レンズの出力光の強度分布が,入力光の波長λの関数である,すなわち,入力光の波長λが変化しなければ,出力光の強度分布が一定であることを意味しているのみであって,「各焦点の波長が予め設定された距離の範囲で同一」とすることにより「各焦点の光の強度が予め設定された距離の範囲で同一」となることを意味していない。単に,入力光の波長λが変化しないこと意味するとすれば,出力光における「各焦点の波長」が同一であることは当然であって,何ら,「第2の装置」の構成を特定するものではないと考えられる。

2 請求項13(旧請求項15)について
(1)請求項13に係る発明においては「電磁的な放射を供給する光源、及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置」と特定されている。
しかしながら,前記「1 請求項1について (1)」において述べたと同様に,依然として,「第1の干渉装置」が不明であり,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすことが明らかである。

(2)請求項13に係る発明においては「前記電磁放射を受け入れるように構成され」と特定されている。
しかしながら,前記「1 請求項1について (2)」において述べたと同様に,依然として,「第1の干渉装置」と「第2の装置」との関係が不明であって,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすことが明らかである。

(3)請求項13に係る発明においては「前記電磁放射の波長が、・・・・・概ね同一である」と特定されている。
しかしながら,前記「1 請求項1について (4)」において述べたと同様に,「前記電磁放射」がその前出の「光源の電磁的な放射」を意味するとしても,「波長」が同一であることにより,「第2の装置」のどの様な光学的構成を特定しようとしているのか不明であって,依然として,特許を受けようとする発明が明確であるとはいえない。そして,そのことにより,第3者に不測の不利益をもたらすことが明らかである。

第5 新規性の判断
上記のとおり,請求項13に係る発明は,必ずしも明確であるとはいえないものの,本件補正により,「前記第2の装置はさらに、前記試料と前記強度分布の少なくとも一つを移す手段を備えており、且つオフセット・ファイバ・アレイを備えているか、またはファイバ・アレイ及びマイクロレンズアレイを備えており、多次元像を提供する」との特定事項が追加されたことにより,請求項13に係る発明は,図6あるいは図7に記載されたものを実施例とする発明であることが明らかとなった。
そこで,請求項13に係る発明が図6あるいは図7記載の実施例を含む発明であり,仮に,該実施例に関係する発明の詳細な説明の記載を参酌することにより,明確であるとして,その新規性について以下,検討する。

1 引用刊行物およびその記載事項
(1)当審拒絶理由にて引用され,本願優先日前に頒布された刊行物である特開平9-149878号公報(以下「刊行物2」という)には,「画像計測装置」に関して,次の事項が記載されている。

(2-ア)
「【請求項1】 光源からの光を二分し二分された光のうちの一方の光を被検体に照射して該被検体からの反射光と二分された他方の光との干渉光を受光する光ヘテロダイン法を用いて該被検体の画像を得る画像計測装置において、
被検体に向けて前記一方の光を照射する測定ヘッドと、
一端側が前記測定ヘッドに保持され前記一方の光を該測定ヘッドに導くと共に被検体からの反射光を該一端側の先端から入射して他端側に導く光ファイバと、
前記光ファイバの前記一端側を、該一端側の光軸に交わる方向に振動させることにより、被検体上を前記一方の光で走査する走査機構とを備えたことを特徴とする画像計測装置。
・・・・・
【請求項8】 前記光ファイバが、それぞれの一端側が振動方向に交わる面内に配列されるとともに、それぞれの一端側の先端から射出された光により、被検体の、光軸に対し斜めに広がる面上が走査されるように、それぞれの先端が位置決めされた複数本の光ファイバからなることを特徴とする請求項1記載の画像計測装置。
【請求項9】 前記測定ヘッドの、被検体に向けて照射される前記一方の光の射出端が、光軸に対し傾斜した面を成していることを特徴とする請求項8記載の画像計測装置。」

(2-イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光ヘテロダイン法を用いて被検体の画像を得る画像計測装置に関し、特に、内視鏡に適した画像計測装置に関する。」

(2-ウ)
「【0010】測定ヘッド40内部では、図22に示すように、光ファイバ34を経由してきた物体光はスキャニングミラー41により二次元的に偏向され、あるいは一次元的に変更されるとともにその偏向方向と直角に測定ヘッドが移動され、これにより、眼の網膜からの後方散乱光による、眼の網膜の二次元的な画像が計測される。」

(2-エ)
「【0018】
【発明の実施の形態】以下、代表的な干渉法であるマハツェンダ干渉計及びマイケルソン干渉計を用いた、OCMを内視鏡に適用したときの基本構成について説明し、次いで、本発明の特徴部分の実施形態について説明する。図1は、マハツェンダ干渉計を採用したOCMを内視鏡に適用したときの基本構成図である。
【0019】LC(低コヒーレント)光源の代表例であるSLD51から発せられた低コヒーレント光(LC光)51aは、ビームスプリッタ52で物体光52aと参照光52bに二分される。物体光52aはAOM53で周波数シフトされハーフミラー54を通過し、光ファイバ55に入射される。この光ファイバ55の先端は体内に挿入される。
【0020】光ファイバ55から射出した物体光は対物レンズ56を経由して被検体1に照射される。尚、この図では、被検体1を物体光で走査するための機構は図示省略されている。被検体1での後方散乱物体光は、再び対物レンズ56を通って光ファイバ55に入射し、ハーフミラー54で反射し、ハーフミラー61で反射して光ディテクタ62に入射する。
【0021】一方、ビームスプリッタ52で二分されたもう一方の参照光52bは、AOM57で周波数シフトを受けハーフミラー58を経由して、参照光の光路長を物体光52aの光路長に合わせるための光ファイバ59に入射し参照ミラー60で反射して再び光ファイバ59に入射し、ハーフミラー58で反射し、ハーフミラー61を透過して光ディテクタ62に至る。光ディテクタ62上では、互いに光路長が調整された被検体1からの後方散乱物体光と参照光とが干渉し、その干渉光が受光される。この光ディテクタ62では、AOM53、57で周波数シフトされた物体光と参照光のそれぞれの周波数の差の周波数の信号が検出される。ここで参照ミラー60を矢印方向(光軸方向)に位置調整することにより、被検体1内部の物体光の反射点の深さ(被検体1内部の画像計測点の深さ)が調整される。」

(2-オ)
「【0038】このような構造によっても、光ファイバ55を振動させることができる。図18は、光ファイバ先端部の配置状態の他の例を示す、測定ヘッドの模式図である。図18に示すように、複数本の光ファイバ55の先端を斜めに、かつ、対物レンズ56の特性により定まるある曲線に沿って配列すると、被検体1内部を、光軸Lに対し傾いた走査線に沿って走査することができる。ここではさらに、測定ヘッド2の先端面2aが斜め45°に傾斜しており、したがって被検体1の表面1aに対し垂直な断面の画像を計測することができる。」

上記記載事項(2-ア)?(2-オ)および図1ならびに18を総合すると,刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。
「光源からの光を二分し二分された光のうちの一方の光を被検体に照射して該被検体からの反射光と二分された他方の光との干渉光を受光する光ヘテロダイン法を用いて該被検体の画像を得る画像計測装置において,被検体に向けて前記一方の光を照射する測定ヘッドと,一端側が前記測定ヘッドに保持され前記一方の光を該測定ヘッドに導くと共に被検体からの反射光を該一端側の先端から入射して他端側に導く光ファイバと,前記光ファイバの前記一端側を、該一端側の光軸に交わる方向に振動させることにより、被検体上を前記一方の光で走査する走査機構とを備え,前記光ファイバが,それぞれの一端側が振動方向に交わる面内に配列されるとともに、それぞれの一端側の先端から射出された光により,被検体の,光軸に対し斜めに広がる面上が走査されるように,それぞれの先端が位置決めされた複数本の光ファイバからなり,前記測定ヘッドの、被検体に向けて照射される前記一方の光の射出端が、光軸に対し傾斜した面を成している画像計測装置。」(以下「引用発明2」という)

2 本願発明13について
(1)対比
本願発明13と引用発明2を対比する。
ア 引用発明2の「被検体」が本願発明13の「試料」の相当するから,引用発明2の「被検体の画像を得る画像計測装置」は,本願発明13の「少なくとも試料の一部を撮像するための装置」の相当するといえる。

イ 「光」は電磁波の一種であるから,引用発明2の「光源」が本願発明13の「電磁的な放射を供給する光源」に相当し,引用発明2においては「光源からの光を二分し二分された光のうちの一方の光を被検体に照射して該被検体からの反射光と二分された他方の光との干渉光を受光する光ヘテロダイン法を用いて」いるのであるから,引用発明2も,本願発明13の「ビームスプリッタ」に相当するものを備えおり,そして,本願発明13の「第1の干渉装置」を備えているといえる。

ウ 引用発明2においては「被検体に向けて前記一方の光を照射する測定ヘッドと,一端側が前記測定ヘッドに保持され前記一方の光を該測定ヘッドに導くと共に被検体からの反射光を該一端側の先端から入射して他端側に導く光ファイバと」を備えているのであるから,引用発明2も,本願発明13と同様に「前記電磁的な放射を受け入れるように構成され、かつ合成電磁的強度分布を生成し、光学的な試料の像を提供するように構成された第2の装置」を備えているといえる。

エ 引用発明2においては「前記光ファイバの前記一端側を、該一端側の光軸に交わる方向に振動させることにより、被検体上を前記一方の光で走査する走査機構とを備え」ているのであるから,引用発明2も,本願発明13と同様に「第2の装置はさらに、前記強度分布を移す手段を備え」を備えているといえる。

オ 引用発明2においては「前記光ファイバが,それぞれの一端側が振動方向に交わる面内に配列されるとともに、それぞれの一端側の先端から射出された光により,被検体の,光軸に対し斜めに広がる面上が走査されるように,それぞれの先端が位置決めされた複数本の光ファイバからなり,前記測定ヘッドの、被検体に向けて照射される前記一方の光の射出端が、光軸に対し傾斜した面を成している」のであるから,引用発明2も,本願発明13と同様に「オフセット・ファイバ・アレイを備えている」といえる。

カ 刊行物2には「・・・・・眼の網膜の二次元的な画像が計測される」(上記記載事項(2-ウ)参照)との記載されているとともに,引用発明2においては「被検体上を前記一方の光で走査する走査機構とを備え」とともに「被検体の,光軸に対し斜めに広がる面上が走査される」のであるから,引用発明2も,本願発明13と同様に「2次元像」,すなわち,「多次元像」を提供する装置であるといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「少なくとも試料の一部を撮像するための装置であって,
電磁的な放射を供給する光源,及びビームスプリッタを備えた第1の干渉装置;及び 前記電磁的な放射を受け入れるように構成され,かつ合成電磁的強度分布を生成し,光学的な試料の像を提供するように構成された第2の装置を備え,
前記第2の装置はさらに,前記強度分布を移す手段を備えており,且つオフセット・ファイバ・アレイを備えている,
多次元像を提供する装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点)
「合成電磁的強度分布」について,本願発明13では「光軸方向に沿って、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの幅が概ね等しくされ、さらに前記電磁放射の波長が、少なくとも、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの間概ね同一であ」るのに対し,引用発明2ではそのような構成である否か不明である点。

(2)判断
請求項13に係る発明においても,「1 請求項1について (3)」において述べたと同様に,図6実施例においては「オフセット・ファイバ・アレイ(段違いファイバ列)」,「反射鏡(ミラー)」および「対物レンズ」により,また,図7実施例においては「ファイバ・アレイ」,「マイクロレンズアレイ」,「回折格子(反射鏡のアレイ)」および「対物レンズ」により,「試料上の縦と横の次元に集束スポット」が配置される,すなわち,図6および7に示されるように,縦(光軸方向)と横(走査方向)に集光された「点焦点」が形成されるのであって,該「点焦点」は,集束スポットが光軸上に一定距離並んでいる「線焦点」でないことは明らかである。
また,請求項13に係る発明の「強度分布の少なくとも2つのセクション」について,本願明細書の発明の詳細な説明には,具体的な説明がないものの,該2つの「強度分布のセクション」とは,参考図1に示すように,「点焦点」から略同一距離離れた光軸上の上流位置と下流位置における「強度分布のセクション」である解することが可能であり,該2つの「強度分布のセクション」の幅および波長が概ね等しくなることは技術常識である。

一方,引用発明2おいては「前記光ファイバが,それぞれの一端側が振動方向に交わる面内に配列されるとともに、それぞれの一端側の先端から射出された光により,被検体の,光軸に対し斜めに広がる面上が走査される」のであるから,図18に示されているように,各光ファイバから射出された光の光軸上に点焦点が形成されることとなる。そして,参考図2に示すように,該「点焦点」から略同一距離離れた光軸上の上流位置と下流位置における2つの「強度分布のセクション」の幅および波長が概ね等しくなることは技術常識である。

そうすると,引用発明2においても,本願発明13と同様に「光軸方向に沿って、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの幅が概ね等しくされ、さらに前記電磁放射の波長が、少なくとも、前記強度分布の少なくとも2つのセクションの間概ね同一であ」るといえる。
してみると,本願発明13と引用発明2との間に実質的な相違点はなく,両発明は同一であるといわざるを得ない。

4 まとめ
以上のことから,本願発明13は,刊行物2に記載された発明であるというべきである。

第6 まとめ
以上のとおり,請求項1に係る発明は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず,また,請求項13に係る発明は,特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず,あるいは,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2012-02-15 
結審通知日 2012-02-21 
審決日 2012-03-05 
出願番号 特願2003-560471(P2003-560471)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (G01N)
P 1 8・ 537- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 横井 亜矢子
信田 昌男
発明の名称 解像度と深さ領域を改善するための軸方向線焦点を用いたOCT撮像用装置  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  

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