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審決分類 審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H01M
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更  H01M
管理番号 1274153
審判番号 無効2010-800240  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2013-05-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3742144号発明「非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3742144号は、平成8年5月8日に出願された特願平8-113710号の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1?4に係る発明について、平成17年11月18日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、本件審判は、当該特許の無効を請求するものであり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。

平成22年12月28日:審判請求
平成23年 1月21日:手続補正書提出(請求人)
24日:手続中止通知
6月17日:手続中止解除通知
21日:併合審理通知
(併合案件 無効2010-800051
無効2010-800119)
7月21日:訂正請求
9月28日:審理事項通知
11月16日:口頭審理陳述要領書提出(請求人)
30日:口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
12月14日:口頭審理
無効理由通知及び職権審理結果通知
16日:上申書提出(被請求人)
21日:意見書提出(被請求人)
訂正請求
先の訂正請求みなし取下
平成24年 1月 6日:上申書提出(請求人)
12日:併合分離通知
審理終結通知

2.訂正請求について

2-1.訂正の内容

平成23年12月21日付け訂正請求は、願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。

[訂正事項1]
請求項1に「マット面」(本件特許公報1頁6行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項2]
請求項1に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁7行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項3]
請求項1に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁7?8行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。
[訂正事項4]
請求項2に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁11行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する。
[訂正事項5]
請求項2に「マット面」(本件特許公報1頁12行)とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項6]
請求項2に「表面粗さとの差」(本件特許公報1頁13行)とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項7]
請求項2に「2.5μmより小さい」(本件特許公報1頁13行?14行)とあるのを「1.3μm以下である」と訂正する。
[訂正事項8]
請求項3に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁16?17行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。
[訂正事項9]
請求項4に「上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液二次電池」(本件特許公報1頁19?20行)とあるのを「平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。」と訂正する。
[訂正事項10]
本件特許公報3頁3行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項11]
本件特許公報3頁4?5行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項12]
本件特許公報3頁5行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。
[訂正事項13]
本件特許公報3頁8?9行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。
[訂正事項14]
本件特許公報3頁10行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項15]
本件特許公報3頁10行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。
[訂正事項16]
本件特許公報3頁16行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項17]
本件特許公報3頁18行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項18]
本件特許公報3頁18行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。
[訂正事項19]
本件特許公報3頁40行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項20]
本件特許公報3頁41行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項21]
本件特許公報3頁41?42行に「2.5μmより大きい」とあるのを「1.3μmより大きい」と訂正する。
[訂正事項22]
本件特許公報3頁49行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項23]
本件特許公報4頁1行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項24]
本件特許公報4頁1行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。
[訂正事項25]
本件特許公報4頁14行に「長さLだけだけ」とあるのを「長さLだけ」と訂正する。
[訂正事項26]
本件特許公報9頁13行に「マット面の表面粗さ」とあるのを「マット面及び光沢面の表面粗さ」と訂正する。
[訂正事項27]
本件特許公報9頁13行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項28]
本件特許公報9頁14行に「2.5μmより小さいこと」とあるのを「1.3μm以下であること」と訂正する。
[訂正事項29]
本件特許公報9頁22行に「マット面」とあるのを「マット面及び光沢面」と訂正する。
[訂正事項30]
本件特許公報9頁23行に「表面粗さとの差」とあるのを「表面粗さの差」と訂正する。
[訂正事項31]
本件特許公報9頁24行に「2.5μmより小さく」とあるのを「1.3μm以下で」と訂正する。
[訂正事項32]
請求項1に「銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり」(本件特許公報1頁5行)とあるのを「銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり」と訂正する(※審決注:訂正請求書下線部記載の「11行」は誤記と認められる。)。

2-2.訂正要件の検討

訂正事項1?32について、訂正の目的やその余の訂正要件について検討する。

まず、「マット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差」を「マット面と反対側の光沢面との表面粗さの差」に訂正する訂正事項2,6,11,14,17,20,23,27,30と、「長さLだけだけ」を「長さLだけ」に訂正する訂正事項25は、いずれも表現上の誤りを正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである(※審決注:関連訂正箇所に下線、以下同様。)。
そして、これらの訂正は、本件特許の出願時の願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

次に、請求項1,2に記載された「電解銅箔」を、「クロメート処理が施された電解銅箔」に訂正する訂正事項4,32は、請求項1,2に係る発明の発明特定事項であった「電解銅箔」について、その前処理を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書段落0032には、当該発明の実施例において、電解銅箔にクロメート処理を施すことが記載されていたから、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

次に、請求項1,2に記載された「マット面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さとの差が10点平均粗さにして2.5μmより小さい」を、「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下」に訂正する訂正事項1,3,5,7、及び請求項1の記載を引用する請求項3,4を上記の記載を含む独立請求項に書き改める訂正事項8,9は、請求項1?4に係る発明の発明特定事項であった「マット面の表面粗さ」「マット面と光沢面の表面粗さの差」さらにこの二つの発明特定事項から計算上発明特定事項となる「光沢面の表面粗さ」について、その数値範囲をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。一方、発明の詳細な説明において同様の訂正をする訂正事項10,12,13,15,16,18,19,21,22,24,26,28,29,31は、請求項の記載に発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の請求項1には、光沢面の表面粗さの上限が、計算上5.5μmになること、段落0051には、当該発明の実施例において、光沢面の表面粗さが1.58?2.00μmであることが記載されていたから、該上限を3.0μmにすることが新たな技術的事項を導入することにはならない。むしろ、段落0015には、集電体表面の凹凸が大きい場合に充放電を繰り返すことより容量の劣化がおこること、段落0034には、実施例において、電解銅箔である負極集電体の両面に活物質を塗布することが記載されていたから、マット面と共に集電体表面を構成する光沢面の表面粗さの上限をマット面と同一にすることは、作用効果の観点から自明なことである。
また、段落0051には、実施例において、マット面と光沢面との表面粗さの差が0.28?1.3μmになることも記載されていた。
してみると、この訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3.請求人の主張について

請求人は、本件訂正に関し、光沢面の表面粗さの上限が3.0μmであることは、本件特許明細書に記載されておらず、技術常識から自明でもなく、実施例の記載と矛盾し、本件特許の審査段階の手続に反するものであるから、これらの訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張している。
しかしながら、上述したように、この訂正は、請求項1や実施例等、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質的に発明特定事項であった光沢面の表面粗さの上限をより限定するものにすぎない。
したがって、上記主張は採用できない。

2-4.まとめ

以上のとおりであるから、訂正事項1?32よりなる本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するものであるから、該訂正を認める。

3.本件発明の認定

本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1?4」という。)は、本件訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

【請求項1】
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項2】
非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、
当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。
【請求項3】
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項4】
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。

4.本件特許の無効理由

これに対し、請求人が、本件訂正後において主張する本件特許の無効理由は、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び上申書の記載からみて、「マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく」を発明特定事項とする本件発明1?4は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから無効というものである。

なお、請求人は、上記無効理由に関連し、次の書証を提出している。

甲第1号証:別件無効審判事件(無効2010-800051)
平成22年6月21日付け答弁書抜粋(1頁、38頁)
甲第2号証:別件無効審判事件(無効2010-800051)
平成22年11月5日付け口頭審理陳述要領書抜粋
(1頁、12頁)
甲第3号証:特開平4-88185号公報
甲第4号証:特開平7-231152号公報
甲第5号証:特開平6-270331号公報
甲第6号証:特開平6-231754号公報
甲第7号証:特開平6-223878号公報
甲第8号証:「電池ハンドブック」610?617頁
電気化学会電池技術委員会編 株式会社オーム社
平成22年2月10日

5.無効理由について

5-1.発明の詳細な説明

本件訂正明細書には、次の記載がある。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。
【0007】
そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。

【0010】
【課題を解決するための手段】
・・・(中略)・・・
【0013】
一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。
【0014】
さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。
【0015】
しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。
【0016】
したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。

【0029】
【実施例】
以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。

【0050】
そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。
【0051】
【表1】

【0052】
また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。
【0053】
さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。

※審決注:
段落0055の下線部は、「1.3μm以下」の誤記と認められる。

5-2.サポート要件の判断

本件訂正明細書に記載された発明の詳細な説明には、本件発明1?4(以下、まとめて「本件発明」という。)が解決しようとする課題が、市販の電解銅箔を負極集電体に使用した場合の充放電サイクル特性の悪化にあり(段落0006)、当該課題が生じている原因が、市販の電解金属箔では、一方の主面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎるため、活物質の塗布後のプレス工程で、集電体が活物質に沿った変形をしないことにあることを見出し(段落0007、0013?0015)、その変形が容易になるように、電解銅箔の表面粗さを数値限定したこと(段落0016)が記載されている。
さらに、当該数値限定を満足する実施例1?3と、一方の主面であるマット面に大きな凹凸が形成されて両主面の表面粗さの差が大きすぎて当該数値限定を満足しない比較例1の電解銅箔を、それぞれ負極集電体に用いた円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率とインピーダンスを測定し、前者が後者より優れたものであること(段落0050?0055)が記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明には、本件発明の課題とその課題を解決する手段、その具体例において課題が解決されたことが記載されている。
してみると、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものである。
したがって、上記無効理由は失当である。

5-3.請求人の主張について

請求人は、目標とする容量維持率の目安について、発明の詳細な説明に記載がなく、実施例3の容量維持率70%は、本件特許の出願当時の要求水準を満足しないし、充放電条件等も明らかでないから、本件発明は、その課題を解決しているとはいえないと主張している。
また、本件発明の実施例1?3と比較例1の測定結果を図示した本件特許明細書添付の図3、5について、4つの測定点を仮想線で結んでみると、実施例3から延伸させた部分、すなわち、実施例3よりもマット面の表面粗さを小さくした場合には、比較例1よりも容積維持率が低下し、またインピーダンス(の変化)が大きくなることは一目瞭然であり、本件発明には、比較例1よりも効果の劣る範囲が含まれていると主張し、さらに図5記載の「100サイクル後のインピーダンス」ではなく「100サイクル前後のインピーダンスの変化」では、実施例3と比較例1との間に顕著な差異がないから、本件発明の「マット面及び光沢面の表面粗さ」の数値限定には臨界的意義がないと主張している。

【図3】 【図5】

そこで検討するに、本件発明の課題は、市販の電解銅箔を負極集電体に使用した場合に充放電サイクル特性が悪化すること(段落0006)であり、容量維持率の目標値が達成できないことではない。
そして、この課題が解決されていることは、市販の電解銅箔相当のものを使用する比較例1と本件発明の実施例1?3の非水電解液二次電池を、同1条件で比較した測定結果(表1?2,図3?6)により確認することができる。
次に、本件発明の発明特定事項「マット面及び光沢面の表面粗さ」は、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果(段落0007)、上記課題を解決する手段が、プレス工程における集電体の変形にあることを見出したこと(段落0016)により導出されたのであって、図3,5に記載された測定点は好適な例示にすぎない(段落0029)。
そして、図3,5からは、少なくとも「マット面の表面粗さ」が本件発明の数値限定の範囲内にある実施例1?3が、市販の電化銅箔(比較例1)より優れた特性をもつことが確認できる。なお、実施例1?3と比較例1は、「マット面と光沢面の表面粗さの差」が一定ではないから、図中の4つの測定点を仮想線で結ぶことに意味がなく、当該仮想線を延伸させても、マット面の表面粗さが異なる場合の効果が予測できるわけではない。
また、活物質に対する電解銅箔表面の変形性が、特定の表面粗さにおいて急激に変化するような性格のものとは認められないから、本件発明の数値限定は臨界的意義を必要としないものである。
したがって、上記主張はいずれも採用できない。

6.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張する理由と証拠方法によっては、本件発明1?4についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体
(57)【特許請求の範囲】
[請求項1]
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする非水電解液二次電池。
[請求項2]
非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、
当該平面状集電体は、銅を電解析出して形成され、クロメート処理が施された電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする平面状集電体。
[請求項3]
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、防錆被膜によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
[請求項4]
平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、
負極の平面状集電体は、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、
上記電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であって、上記電解銅箔の少なくとも一方の面が、シランカップリング剤によって被覆されていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
[0001]
[発明の属する技術分野]
本発明は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備える非水電解液二次電池に関し、特に平面状集電体の改良に関するものである。
[0002]
[従来の技術]
近年の電子技術のめざましい進歩により、電子機器の小型化、軽量化、高性能化が進み、これら電子機器には、エネルギー密度の高い二次電池が要求されている。従来、これら電子機器に使用される二次電池としてニッケル・カドミウム電池や鉛電池などが挙げられるが、これら電池では、エネルギー密度が高い電池を得るという点で不十分であった。
[0003]
このような状況下で、正極としてリチウムコバルト複合酸化物などのリチウム複合酸化物を使用し、負極として炭素材料などのようなリチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な物質を使用した非水電解液二次電池、いわゆるリチウムイオン二次電池の研究・開発が行われている。このリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有し、自己放電も少なく、サイクル特性に優れ、かつ軽量という優れた特性を有する。
[0004]
ところで、上記リチウムイオン二次電池の集電体としては、一般に金属箔が使用されている。特に、銅からなる金属箔は、リチウム金属と合金を形成しない、電気伝導性が良い、低コストといった特徴を有するため、負極集電体として多用されている。この銅箔には、一般に、銅板を機械的にローラ圧延した、いわゆる厚み10?30μmの圧延銅箔が使用されている。しかしながら、圧延銅箔は、圧延装置のサイズの規制から、幅の広いものを得るのが難しい。
[0005]
一方、銅の電解析出によって形成される、いわゆる電解銅箔は、圧延銅箔に比べ比較的幅の広いものも容易に得られる。また、この電解銅箔をリチウムイオン二次電池の負極集電体に使用した場合には、生産性が飛躍的に向上し、電池生産のコストを大幅に下げることができる。
[0006]
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、市販の電解銅箔を負極集電体に使用したリチウムイオン二次電池においては、電池特性、特に充放電でのサイクル特性が悪く、使用することができなかった。
[0007]
そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、上述した問題は、電解金属箔の一方の主面に大きな凹凸が形成されて、電解金属箔の両主面の表面粗さの差が大きすぎるために生じていることがわかった。
[0008]
これまで電解金属箔は、一般にその用途が主にプリント基板、フレキシブル基板であり、プラスチックとの密着性を良くするために(アンカー効果をねらうために)、その主面に大きな凹凸を形成していた。そのため、この電解金属箔を非水電解液二次電池の集電体に用いた場合には、活物質表面に沿った変形が十分に起こらないため、活物質と集電体の接触が悪く、容量の劣化やサイクル特性の低下が生じていた。
[0009]
本発明は、上述のような問題点を解決するために提案されたものであり、活物質表面に沿って集電体が十分に変形し、活物質と集電体の接触性を良好に保って、充放電サイクルに優れた安価な非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体を提供することを目的とする。
[0010]
[課題を解決するための手段]
本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる正極及び負極を備える非水電解液二次電池において、負極の平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。
[0011]
また、本発明は、非水電解液二次電池の負極を構成する平面状集電体であって、当該平面状集電体が、銅を電解析出して形成される電解銅箔からなり、上記電解銅箔が、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることを特徴とする。
[0012]
本発明に係る非水電解液二次電池においては、上記平面状集電体の負極に、銅の電解析出から形成される電解銅箔を用いたことから、製造上の大きさの制約がなく、電池生産のコストを下げることができる。
また、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。
[0013]
一般に、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極は、活物質とバインダーとを含有する電極構成物質層が集電体の表面に塗布され、その後ロール圧延等でプレスされて作製される。このプレス工程は、電極を所定の密度に圧縮する作用と、適切な導電性を有するように活物質粒子間を接近させる作用とを有する。プレス工程を経た電極は、活物質粒子間、及び活物質と集電体との接触性が良くなり、電気伝導度が大きくなる。
[0014]
さらに、十分な電池特性を得るには、活物質粒子間、及び活物質と集電体の距離を小さくすると共に、集電体の形状が活物質表面の形状に沿って変形することが重要である。活物質表面に沿って集電体が変形した場合には、活物質と集電体との接触性がさらに良くなり、電気伝導度がさらに大きくなり、望ましい電池特性が得られる。
[0015]
しかし、活物質表面に沿って集電体が変形しない場合には、活物質と集電体の接触部分が少なくなり、電気伝導度が小さい。また、集電体表面の凹凸が大きい場合には、活物質と集電体の接触点も少ない。このような接触抵抗が大きい電極は、充放電を繰り返すと、活物質の充放電に伴う膨張収縮によるストレスや、接着剤であるバインダーの電解液への溶解などによって、集電体と活物質との距離が段々と大きくなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化が起きる。
[0016]
したがって、この電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより大きい場合、或いはこのマット面と光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μmより大きい場合には、活物質が負極集電体に塗布されてプレスされる際に、集電体が活物質の表面に沿った変形が十分起こらず、また、表面の凹凸が大きいために活物質との接触点が少なく、充放電に伴って容量の劣化が起きて十分な電池特性が得られない。
[0017]
[発明の実施の形態]
本発明に係る非水電解液二次電池は、平面状集電体の表面に電極構成物質層が形成されてなる電極を備えて構成され、上記平面状集電体の少なくとも負極が銅の電解析出から形成される電解銅箔からなる。そして、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面とは反対側の他方の主面である光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。
[0018]
なお、一般に、電解銅箔は、銅を主成分とする溶液を電解液とし、回転ドラムを電極として、ドラム表面に形成される。この時、形成された電解銅箔は、ドラム側の主面を光沢面と称し、電解液側のもう一方の主面をマット面と称す。
[0019]
上記電解銅箔は、表面の凹凸が小さく、マット面と光沢面との表面粗さの差が小さいため、プレス工程時に活物質表面に沿った変形が十分に起こり、活物質との接触性が良好に保たれる。
[0020]
なお、上述する表面粗さは、JIS規格B0601において、10点平均線粗さ(R_(Z))についての定義がなされている。10点平均粗さ(R_(Z))は、図1に示すように、断面曲線から基準長さLだけ抜き取った部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Y_(p))の絶対値の平均値(|Y_(p1)+Y_(p2)+Y_(p3)+Y_(p4)+Y_(p5)|/5)と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Y_(v))の絶対値の平均値(|Y_(v1)+Y_(v2)+Y_(v3)+Y_(v4)+Y_(v5)|/5)との和を求めたものである。
[0021]
本発明は、電池を構成する物質について特に限定するものではないが、正極が少なくともリチウムを含む金属酸化物からなり、負極がリチウムをドープ及び脱ドープ可能な負極とからなるようないわゆるリチウムイオン二次電池において好適である。
[0022]
また、本発明に係るリチウムイオン二次電池に用いられる負極集電体には、電解銅箔が用いられる。電解銅箔は、リチウム金属と合金を形成することがなく、電気伝導性が良く、低コストで生産できるなどの種々の利点を有している。
[0023]
上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔の酸化を抑制するために、防錆被膜が被覆されていてもよい。また、上記電解銅箔の少なくとも一方の面には、銅箔表面と活物質との吸着性を向上させるために、シランカップリング剤からなる膜が被覆されていてもよい。
[0024]
なお、上記リチウムイオン二次電池において、正極活物質としては、Li_(x)MO_(2)(但し、Mは、1種類以上の遷移金属を表す。xは、リチウムの組成比である。)を含んだ活物質が使用可能である。かかる活物質としては、Li_(x)CoO_(2)、Li_(x)NiO_(2)、Li_(x)Mn_(2)O_(4)、Li_(x)MnO_(3)、Li_(x)Ni_(y)Co_((1ーy))O_(2)などの複合酸化物が挙げられる。
[0025]
上記複合酸化物は、例えば、リチウム、コバルト、ニッケルの炭酸塩を出発原料とし、これら炭酸塩を組成に応じて混合し、酸素存在雰囲気下600℃?1000℃の温度範囲で焼成することにより得られる。また、出発原料は、炭酸塩に限定されず、水酸化物、酸化物からも同様に合成可能である。
[0026]
一方、負極活物質としては、リチウムをドープ及び脱ドープ可能なものであれば良く、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスなど)、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂などを適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、あるいは、金属リチウム、リチウム合金(例えば、リチウム-アルミ合金)の他、ポリアセチレン、ポリピロールなどのポリマーも使用可能である。
[0027]
電解液には、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解させた電解液が用いられる。ここで有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの単独もしくは2種類以上の混合溶媒の使用が可能である。
[0028]
電解質には、LiClO_(4)、LiAsF_(6)、LiPF_(6)、LiBF_(4)、LiB(C_(6)H_(5))_(4)、LiCl、LiBr、CH_(3)SO_(3)Li、CF_(3)SO_(3)Liなどの使用が可能である。
[0029]
[実施例]
以下、本発明を適用した非水電解液二次電池について、好適な実施例を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
[0030]
実施例1
本実施例で作製したリチウムイオン二次電池は、図2に示すように、正極集電体1に正極活物質2を塗布してなる正極3と、負極集電体4に負極活物質5を塗布してなる負極6とから構成される。そして、この非水電解液二次電池は、正極3、セパレータ7、負極6、セパレータ7をこの順に積層して積層電極体とし、この積層電極体を多数回巻回されてなる渦巻式電極体の上下に絶縁体8、9を配置した状態で電池缶10に収納してなるものである。
[0031]
先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は、次のようにして作製した。組成1で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を得た。この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定法により測定し、表1に示した。
[0032]
(組成1)
硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l
硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l
チオ尿素 0.4ppm
アラビアゴム 0.8ppm
低分子量膠(分子量5000) 0.4ppm
Cl^(-) 30ppm
次いで、この電解銅箔をCrO_(3);1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。
[0033]
そして、負極6は次のようにして作製した。負極活物質5としては、出発原料として石油ピッチを用い、これを焼成して粗粒状のピッチコークスを得た。この粗粒状ピッチコークスを粉砕して平均粒径20μmの粉末とし、この粉末を不活性ガス中、1000℃にて焼成して不純物を除去し、コークス材料粉末を得た。
[0034]
このようにして得られたコークス材料粉末を90重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10重量部の割合で混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN-メチルピロリドンに分散させてスラリーにした。そして、このスラリーを上述した厚さ12μmの帯状の電解銅箔である負極集電体4の両面に塗布し、乾燥後ローラプレス機で圧縮形成して、帯状負極6を得た。この帯状負極6は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μmで同一であり、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成される。
[0035]
次に、正極3は、次にようにして作製した。正極活物質(LiCoO_(2))2は、炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成してLiCoO_(2)を得た。
[0036]
このようにして得られた正極活物質(LiCoO_(2))2を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合材を作製し、これをN-メチル-2ピロリドンに分散してスラリー状とした。次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウムからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極3を得た。この帯状正極3は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μmであり、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成される。
[0037]
このようにして作製された帯状正極3と、帯状負極6と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ7とを、上述したように積層し、これを積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極6を内側にして渦巻型に多数回巻回され、最外周セパレータの最終端部をテープで固定されて、渦巻式電極体となる。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が、3.5mm、外形が17mmに形成される。
[0038]
上述のように作製された渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板8、9が設置された状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶10に収納した。そして、正極3及び負極6の集電を行うために、アルミニウム製の正極リード13を正極集電体1から導出して電池蓋11に接続し、ニッケル製の負極リード14を負極集電体4から導出して電池缶10に接続した。
[0039]
そして、この渦巻式電極体が収納された電池缶10に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF_(6)を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入した。次いで、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケット12を介して電池缶10をかしめることにより、電池蓋11を固定し、電池缶10内の気密性を保持させた。
[0040]
以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解液二次電池(実施例1)を作製した。
[0041]
実施例2
先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成2で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温50℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解箔にクロメート処理を行った。なお、この電解銅箔の表面粗さについては、後述する測定方法により測定し、表1に示した。
[0042]
(組成2)
硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l
硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l
1-メルカプト3-プロパンスルホン酸ナトリウム 1ppm
ヒドロキシエチルセルロース 4ppm
低分子量膠(分子量3000) 4ppm
Cl^(-) 30ppm
上述した電解金属箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例2)を作製した。
[0043]
実施例3
先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成3で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm^(2)、液温58℃の条件で電解することによって、厚み9μmの電解銅箔を得た。
[0044]
(組成3)
硫酸銅(CuSO4・5H2O) 350g/l
硫酸(H2SO4) 110g/l
膠(分子量60000) 2ppm
Cl- 30ppm
この電解銅箔の表面粗さは、後述する測定方法により測定した結果、光沢面がRZ=2.00μm、マット面がRZ=3.52μmであった。
[0045]
次いで、この電解銅箔に、組成4で示される電解液からなる銅電解浴を用いて、電流密度6A/dm2、液温58℃でマット面に光沢銅メッキを施し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。なお、本発明では、マット面に光沢銅メッキを施した面もマット面と表現する。そして、この銅メッキが施された電解銅箔に同様にクロメート処理を施した。
[0046]
(組成4)
硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 240g/l
硫酸(H_(2)SO_(4)) 60g/l
膠 2ppm
日本シェーリング(株)製カバシラド210
メイキャップ剤 10cc/l
光沢剤(A) 0.5cc/l
光沢剤(B) 補充にのみ使用
Cl^(-) 30ppm
光沢剤の補充は、電流量1000Ahに対して光沢剤(A)及び光沢剤(B)を各々300cc添加した。
[0047]
上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(実施例3)を作製した。
[0048]
比較例1
先ず始めに、電解銅箔からなる負極集電体4は次のようにして作製した。組成5で示される硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度50A/dm2、液温58℃の条件で電解することによって、厚み12μmの電解銅箔を作成し、この電解銅箔の表面粗さを後述する測定方法により測定し、表1に示した。そして、この電解銅箔にクロメート処理を行った。
[0049]
(組成5)
硫酸銅(CuSO_(4)・5H_(2)O) 350g/l
硫酸(H_(2)SO_(4)) 110g/l
膠 2ppm
Cl^(-) 30ppm
上述した電解銅箔を使用した以外は、実施例1と同様にして円筒形非水電解液二次電池(比較例1)を作製した。
[0050]
そして、実施例1?実施例3及び比較例1で得られた電解銅箔において、その表面粗さ(10点平均粗さR_(Z))を表面粗さ計(株式会社小坂研究所製SE-3C型)で調べた。この結果を表1に示す。なお、光沢面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを0.8mmとし、マット面の表面粗さを測定する際には、基準長さLを2.5mmとした。
[0051]
[表1]

[0052]
また、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル後の容量維持率を調べた。その結果を図3、図4及び表2に示す。
[0053]
さらに、それぞれの電解銅箔を負極集電体に用いた実施例1?実施例3及び比較例1の円筒形非水電解液二次電池について、100サイクル前後のインピーダンスの変化を調べた。その結果を図5、図6及び表2に示す。
[0054]
[表2]

[0055]
図3、図5及び表2に示すように、マット面の表面粗さが3μm以上になると容量維持率が大幅に低下し、インピーダンスの変化が大きくなるため、マット面の表面粗さは、3μm未満が好ましい。また、図4及び図6に示すように、マット面と光沢面との表面粗さの差が大きくなるほど容量維持率が低くなり、インピーダンスが大きくなっている。このことから、マット面と光沢面との表面粗さの差は、2.5μm未満であることが好ましい。
[0056]
また、電解銅箔のマット面の粗さは、実施例1及び実施例2のように、最初の電解条件によって規制してもよいし、実施例3のように、銅メッキを後から施して規制してもよい。
[0057]
以上のことから、上述した非水電解液二次電池においては、圧延銅箔に比べ製造上大きさの制約がなく、生産性が高い電解銅箔を負極集電体に用いていることから、生産性が向上し、電池生産コストを大幅に下げることができる。
[0058]
さらに、上述した非水電解液二次電池においては、集電体である電解銅箔のマット面及び光沢面の表面粗さが3.0μmより小さく、光沢面とマット面との表面粗さの差が1.3μm以下であることから、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。
[0059]
[発明の効果]
以上の説明からも明らかなように、本発明に係る非水電解液二次電池は、集電体に銅を電解析出して形成される電解銅箔を用いてなることから、電池の生産性を向上させ、電池生産のコストを下げることができる。
[0060]
また、この電解銅箔は、マット面及び光沢面の表面粗さが10点平均粗さにして3.0μmより小さく、このマット面と反対側の光沢面との表面粗さの差が10点平均粗さにして1.3μm以下で形成される。このことから、本発明に係る非水電解液二次電池においては、集電体と活物質との接触性が良く、電気伝導度が大きくなって、充放電サイクルに優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
[図1]10点平均粗さ(R_(Z))の定義を説明するための断面図である。
[図2]本発明を適用した円筒形非水電解液二次電池の概略断面図である。
[図3]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと容量維持率との関係を示す特性図である。
[図4]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、容量維持率との関係を示す特性図である。
[図5]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面の表面粗さと100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。
[図6]上記円筒形非水電解液二次電池において、電解銅箔のマット面と光沢面との表面粗さの差と、100サイクル後のインピーダンスとの関係を示す特性図である。
[符号の説明]
1 正極集電体、2 正極活物質、3 正極、4 負極集電体、5 負極活物質、6 負極、7 セパレータ、8 絶縁体、9 絶縁体、10 電池缶、11 電池蓋、12 絶縁封口ガスケット、13 正極リード、14 負極リード、
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-01-12 
結審通知日 2012-01-17 
審決日 2012-02-09 
出願番号 特願平8-113710
審決分類 P 1 113・ 537- YA (H01M)
P 1 113・ 841- YA (H01M)
P 1 113・ 855- YA (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 千歌子  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 田中 則充
大橋 賢一
登録日 2005-11-18 
登録番号 特許第3742144号(P3742144)
発明の名称 非水電解液二次電池及び非水電解液二次電池用の平面状集電体  
復代理人 小川 直樹  
代理人 吉見 京子  
代理人 上山 浩  
代理人 石井 良夫  
代理人 松本 孝  
代理人 黒田 健二  
復代理人 小川 直樹  
代理人 上山 浩  
代理人 上山 浩  
代理人 吉村 誠  
復代理人 小川 直樹  
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