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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B01J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1274514
審判番号 不服2011-6759  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-31 
確定日 2013-05-23 
事件の表示 特願2000-595783「酸素貯蔵成分を含有する触媒組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 3日国際公開、WO00/44493、平成14年10月22日国内公表、特表2002-535135〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、2000年1月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年1月28日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年3月11日付けで拒絶理由が起案され、同年11月12日付けで拒絶査定の起案がなされ、平成23年3月31日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に明細書の記載に係る手続補正書が提出され、平成23年11月25日付けで特許法第164条第3項の規定に基づく報告書を引用した審尋の起案がなされたものの、その指定期間中に回答書が提出されなかったものである。

第2.平成23年3月31日付けの手続補正について補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年3月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.平成23年3月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項6及び16は、本件補正前の願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項6及び16である、
「 【請求項6】 触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が上に位置する少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物。」
「 【請求項16】 少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る請求項6記載の触媒組成物。」
から、
「 【請求項6】 窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物。」
「 【請求項16】 少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る請求項6記載の触媒組成物。」
と補正された。
2.この補正は、平成22年3月11日付けの拒絶理由で明確でないと指摘された請求項6の「前記貴金属成分が上に位置する少なくとも1種の支持体」を「前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体」とし、さらに、「触媒組成物」に「窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する」という発明特定事項を付け加えたものといえるから、請求項6を引用する請求項16に関し、それぞれ、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号及び第2号にそれぞれ規定する、明りょうでない記載の釈明、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3.そこで、本件補正後の請求項16に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか、以下に検討する。
(1)補正後発明
補正後発明を独立形式で書き改めると、
「窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物において、
少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る触媒組成物。」
ということができる。
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第98/13139号(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
(ア)「The zirconium, rare earth composition of the present invention preferably comprises ceria, praseodymium, neodymium, rare earth components and a zirconium component. ・・・・・・
A process which can be used to make this composition begins with making a zirconium hydroxide sol. This can be made by precipitating zirconium sulfate with sodium hydroxide at high temperature reflux, typically from 90 to 100°C to make nanometer size crystals (・・・・・・). The sulfur, sodium and other impurities can be washed out with an aqueous liquid. An acid, such as nitric acid HN0_(3), can be used to break the aggregates to obtain the zirconia hydroxide sol and to reduce the pH of the liquid. At this stage, other components such as cerium, praseodymium and neodymium salts such as nitrates can be added. The compounded sol should be sufficiently acidic, a pH of preferably 0.5 to 3 and more preferably 0.5 to 2.0 at this point, to keep the salts in solution. The pH can be quickly increased by adding an alkaline compound such as ammonia to precipitate the rare earth compounds.」(本文10頁11行?11頁20行)
(当審訳:本発明のジルコニウム、希土類組成物は、好適には、セリア、プラセオジム、ネオジム、希土類成分およびジルコニウム成分を含んで成る。・・・・・・
本組成物の製造で使用可能な方法は、水酸化ジルコニウムのゾルを生じさせることで始める方法である。これの調製は、水酸化ナトリウムを用いて硫酸ジルコニウムを高温の還流、典型的には90から100℃で沈澱させてナノメートル(・・・・・・)の大きさの結晶を生じさせることを通して実施可能である。硫黄、ナトリウムおよび他の不純物を水性液で洗い流すことができる。酸、例えば硝酸(HNO_(3))などを用いて凝集物を壊すことで水酸化ジルコニウムのゾルを得ると同時に液のpHを下げることができる。この段階で、他の成分、例えばセリウム、プラセオジムおよびネオジムなどの塩、例えば硝酸塩などを添加してもよい。このような複合ゾルは、この時点で、前記塩が溶液の状態に保持されるに充分なほど酸性でなければならず、pHが好適には0.5から3、より好適には0.5から2.0であるようにする。アルカリ性化合物、例えばアンモニアなどを添加してpHを急速に上昇させることを通して前記希土類の化合物を沈澱させることができる。)
(イ)「The zirconium rare earth composition is believed to function as an oxygen storage component.」(本文14頁22?23行)
(当審訳:このジルコニウム希土類組成物は酸素貯蔵成分として機能すると考えている。)
(ウ)「The oxygen storage component composition can comprise an oxygen storage component, ceria and a diluent component preferably zirconia. ・・・・・・A useful diluent material is a refractory oxide with preferred refractory oxides being of the same type of materials recited below for use as catalyst supports. Most preferred is a zirconium compound with zirconia most preferred. 」(本文18頁15?28行)
(当審訳:この酸素貯蔵組成物は酸素貯蔵成分、セリアおよび希釈剤成分、好適にはジルコニアを含んで成っていてもよい。本酸素貯蔵組成物に追加的にネオジムおよびプラセオジム成分を含めてもよい。・・・・・・有用な希釈剤材料は耐火性酸化物であり、好適な耐火性酸化物は以下に触媒支持体として用いるに適するとして示す材料と同じ種類のものである。最も好適なものはジルコニウム化合物であり、ジルコニアが最も好適である。)
(エ)「The composition can contain an additional zirconium compound derived from zirconium, preferably zirconium oxide. 」(本文19頁31?32行)
(当審訳:この組成物に、ジルコニウムから誘導される追加的ジルコニウム化合物、好適には酸化ジルコニウムを含めてもよい。)
(オ)「The catalysts are thus useful in promoting the oxidation of hydrocarbons, oxygen-containing organic components, and carbon monoxide, and the reduction of nitrogen oxides. These types of materials may be present in exhaust gases from the combustion of carbonaceous fuels, and the catalysts are useful in promoting the oxidation or reduction of materials in such effluents. 」(本文27頁15?21行)
(当審訳:従って、本触媒は、炭化水素、酸素含有有機成分および一酸化炭素の酸化および窒素酸化物の還元の促進で用いるに有用である。この種類の材料は炭素系燃料の燃焼で生じる排気ガス内に存在している可能性があり、本触媒は、前記流出物内に存在する材料の酸化または還元の促進で用いるに有用である。)
(カ)「Example 2
A composition comprising 31 weight percent of ceria, 7.5 weight percent of praseodymia, 7.5 of neodymia and 55 weight percent of zirconia was prepared in the laboratory. A coprecipitate of zirconium, cerium, neodymium and praseodymium nitrates was made. 」(本文28頁28?33行)
(当審訳:実施例2
セリアを31重量パーセントとプラセオジミアを7.5重量パーセントとネオジミアを7.5重量パーセントとジルコニアを55重量パーセント含んで成る組成物を実験室で調製した。ジルコニウムとセリウムとネオジムとプラセオジムの硝酸塩の共同沈澱物を生じさせた。)
(キ)「6. A catalyst composition comprising:
at least one precious metal component ;
at least one support on which said precious metal component is located;
an oxygen storage composition comprising:
40 to 80 weight percent of a zirconium component;
10 to 60 weight percent of a cerium component;
2 to 15 weight percent of a neodymium component;
and
2 to 15 weight percent of a praseodymium component;
optionally at least one first stabilizer;
optionally at least one first rare earth metal component;
and
optionally a zirconium compound.」(特許請求の範囲 請求項6)
(当審訳:6.触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持される少なくとも1種の支持体、
酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、
前記酸素貯蔵組成物が、
ジルコニウム成分を40から80重量パーセント、
セリウム成分を10から60重量パーセント、
ネオジム成分を2から15重量パーセント、
および
プラセオジム成分を2から15重量パーセント、
含んで成り、
前記触媒組成物は、
場合により少なくとも1種の安定剤、
場合により少なくとも1種の他の希土類成分、
および
場合により少なくとも1種のジルコニウム化合物、
を含む触媒組成物。)
(3)引用例に記載された発明
引用例の(キ)の記載からみて、引用例には、
「触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持される少なくとも1種の支持体、
酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、
前記酸素貯蔵組成物が、
ジルコニウム成分を40から80重量パーセント、
セリウム成分を10から60重量パーセント、
ネオジム成分を2から15重量パーセント、
および
プラセオジム成分を2から15重量パーセント、
含んで成り、
前記触媒組成物は、
場合により少なくとも1種の安定剤、
場合により少なくとも1種の他の希土類成分、
および
場合によりジルコニウム化合物、
を含む触媒組成物。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
(4)補正後発明と引用発明との対比・判断
ア 引用発明の「酸素貯蔵組成物」とは、引用例の(イ)の記載によれば、「ジルコニウム希土類組成物」のことであり、この「ジルコニウム希土類組成物」は「ジルコニウム、希土類組成物」と同義であるとみることが自然であるから、同(ア)に記載された製造方法に従い製造されたものといえ、水酸化ジルコニウムのゾルにセリウム、プラセオジム、ネオジムの塩を添加した複合ゾルをpHを調整し希土類化合物を沈殿させて製造するものであり、そして、この沈殿させたものが「共同沈澱物」、すなわち、「沈殿複合体」であることは、同(カ)の記載から明らかである。
そうすると、引用発明の「酸素貯蔵組成物」は、「沈殿複合体」を含んでいることは明らかであり、引用発明の「酸素貯蔵組成物」は、補正後発明の「沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物」に相当する。
イ 引用発明の「ジルコニウム成分」についてみてみると、引用例の(ウ)に「この酸素貯蔵組成物は・・・・・・希釈剤成分・・・・・・を含んで成っていてもよい。・・・・・・有用な希釈剤材料は耐火性酸化物であり・・・・・・最も好適なものはジルコニウム化合物であり、ジルコニアが最も好適である。」との記載がなされているから、希釈剤成分とみることができる。
そうすると、引用発明の「ジルコニウム成分を40から80重量パーセント」は、補正後発明の「ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント」と「ジルコニアである希釈剤成分を45から55重量パーセント」を含む点で一致している。
ウ また、引用発明の「セリウム成分を10から60重量パーセント」、「ネオジム成分を2から15重量パーセント」及び「プラセオジム成分を2から15重量パーセント」について含有量をみてみると、それぞれ、補正後発明と「セリウム成分を30から45重量パーセント」、「ネオジム成分を5から10重量パーセント」及び「プラセオジム成分を5から10重量パーセント」の範囲で含有範囲が一致している。
エ 引用発明の「場合により少なくとも1種の安定剤、
場合により少なくとも1種の他の希土類成分、および
場合によりジルコニウム化合物、
を含む」は、引用例の(エ)の「追加的ジルコニウム化合物」との記載を考慮すると、補正後発明の
「少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含」むと言い換えることができる。
オ そうすると、両者は、
「 触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物において、
少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る触媒組成物」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点:補正後発明の触媒組成物は、「窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する」ものであるのに対し、引用発明はかかる事項を有していない点。
カ そこで、この相違点について検討すると、引用例の(オ)に「本触媒は、炭化水素、酸素含有有機成分および一酸化炭素の酸化および窒素酸化物の還元の促進で用いるに有用である。この種類の材料は炭素系燃料の燃焼で生じる排気ガス内に存在している可能性があり、本触媒は、前記流出物内に存在する材料の酸化または還元の促進で用いるに有用である。」と記載されているから、引用発明は窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する」ものであるといえ、この相違点は実質的なものではない。
キ よって、補正後発明は、引用発明と同一であり、補正後発明は29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
ク-1 なお、請求人は、審判請求書において、「本願発明は、引用文献1に記載された複合体の成分割合を更に特定することによって、実施例4及び5において立証されているとおりの効果を奏し得た発明である。」(「[III]拒絶査定が取り消されるべき理由」の「(1)拒絶理由1及び2について」)と主張している。
ク-2 そこで、上記イ及びウの検討において、「酸素貯蔵組成物」のジルコニウム成分、セリウム成分、ネオジム成分、プラセオジム成分の含有重量%の範囲に関し、数字上の範囲をみると、補正後発明は引用発明において特定されている範囲に含まれるから一致点として扱ったが、一致点ではなく相違点として扱って、この引用発明で特定される範囲を補正後発明に特定される範囲とすることが引用例の記載から導出できるかについて検討する。
ク-3 引用例の(カ)の実施例2に関する記載をみてみると、「セリアを31重量パーセントとプラセオジミアを7.5重量パーセントとネオジミアを7.5重量パーセントとジルコニアを55重量パーセント含んで成る」例が示されている。
ク-4 ここで、この例で示されている重量%の合計は101(=31+7.5+7.5+55)となり、100を超えるものであるから、一見すると含有重量%について誤りがあるのではないかとの疑念を生じる可能性があるが、これら数値をよく見ると、有効数字が2桁で統一されており、有効数字を2桁にするための操作によって、重量%の合計値が100を超えるようになってしまったことは当業者にとって明らかであるから、上記引用例(オ)の記載に接した当業者は、「セリアを31重量パーセント程度とプラセオジミアを7.5重量パーセント程度とネオジミアを7.5重量パーセント程度とジルコニアを55重量パーセント程度含んで成る」ものは、引用発明の「酸素貯蔵組成物」として優れたものという教示を得るといえる。
ク-5 そうすると、この引用例(オ)に記載された「酸素貯蔵組成物」のジルコニウム成分、セリウム成分、ネオジム成分、プラセオジム成分の含有重量%は、補正後発明の「酸素貯蔵組成物」のジルコニウム成分、セリウム成分、ネオジム成分、プラセオジム成分の含有重量%に含まれるし、さらに、引用発明の「酸素貯蔵組成物」のジルコニウム成分、セリウム成分、ネオジム成分、プラセオジム成分の含有重量%の範囲を補正後発明のものとする動機付けは、引用例に記載されているといえ、補正後発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。
(5)補正却下のむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
平成23年3月31日付けの手続補正は却下されたから、本願の請求項1?31に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1?31に記載されるとおりのものであって、そのうち請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。

「 【請求項6】 触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が上に位置する少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物。」
「 【請求項16】 少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る請求項6記載の触媒組成物。」

ここで、請求項6の「前記貴金属成分が上に位置する少なくとも1種の支持体」とは、「前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体」のことであることは、技術常識に照らして明らかであるから、請求項6を引用する請求項16の記載を独立形式で記載すると、本願発明は、
「触媒組成物であって、
少なくとも1種の貴金属成分、
前記貴金属成分が担持された少なくとも1種の支持体、および
沈澱複合体を含んで成る酸素貯蔵組成物、
を含んで成っていて、前記複合体が、
ジルコニアおよびジルコニア活性化アルミナから選択される希釈剤成分を45から55重量パーセント、
セリウム成分を30から45重量パーセント、
ネオジム成分を5から10重量パーセント、および
プラセオジム成分を5から10重量パーセント、
含んで成る触媒組成物において、
少なくとも1種の安定剤、
少なくとも1種の他の希土類成分、および
少なくとも1種の追加的ジルコニウム化合物、
から選択される他の少なくとも1種の材料を含んで成る触媒組成物。」
であると認める。

第4.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用例(国際公開第98/13139号)に記載された発明であり、特許法第29条第1項3号に該当し、または、同引用例に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものを含むものである。

第5.引用例
引用例には、上記第2.(2)(ア)?(キ)に摘示した事項が記載されている。

第6.対比・判断
引用例には、上記第2.(3)に記載した引用発明が記載されている。
本願発明は、補正後発明の「窒素酸化物及び一酸化炭素を含んで成る排気ガスの処理に使用する」なる発明特定事項を有していないものであるから、上記第2.(4)で述べたように、本願発明と引用発明とは同一であり、相違するところがないし、仮に相違するとしても、当業者が容易になし得る程度の微差である。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、同法同条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項16に係る発明は、本願の出願日前に頒布された引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-12-03 
結審通知日 2012-12-11 
審決日 2012-12-26 
出願番号 特願2000-595783(P2000-595783)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B01J)
P 1 8・ 113- Z (B01J)
P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大城 公孝  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 國方 恭子
中澤 登
発明の名称 酸素貯蔵成分を含有する触媒組成物  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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