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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03H
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F03H
管理番号 1274607
審判番号 不服2011-25799  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-10 
確定日 2013-06-13 
事件の表示 特願2008-298763「推進装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月 6日出願公開、特開2010-101300〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成20年10月27日の出願であって,平成23年10月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。その後,当審において,平成24年1月12日付けで拒絶理由を通知したところ,同年1月24日及び2月10日の各日付けで意見書が提出されるとともに,同年1月24日,2月6日及び2月7日の各日付けで明細書を対象とする手続補正がなされた。さらに,当審において,平成24年4月19日付けで拒絶理由を通知したところ,同年5月1日付けで意見書が提出されるとともに明細書を対象とする手続補正がなされた。

2.当審で通知した拒絶理由
当審で通知した2度の拒絶理由のうち,平成24年1月12日付けで通知した拒絶理由は,以下のとおりである。

(1)実施可能要件
この出願は,発明の詳細な説明の記載について下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願の推進装置は,装置自体が全体として,縦軸方向に沿って一方向に連続的に移動することを可能としたものと思われるが,発明の詳細な説明には,そのような運動をする原理が,当業者が容易に理解できる程度に記載されていない。段落【0004】に記載された「太陽が惑星を引き連れて上方へ移動する」原理は,当業者が容易に理解できるものではなく,段落【0004】に記載された「すると,この公転により生ずる歳差運動により,プーリーには横倒しを是正しようとする偶力が働く。その偶力に対する反作用として前記円盤が上方へ移動させられる。」も,その理由が明らかでない。

(2)自然法則を利用した技術的思想
この出願の請求項1に係る発明は,下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。
本願の推進装置が,何ら外力を受けないで,推進装置内で,作用体が被作用体の周りに公転運動をするとともに自転運動をするだけで,装置自体が全体として,公転軸である縦軸の方向に沿って一方向に連続的に移動することは,そもそも運動量保存の法則に反する。したがって,本願の推進装置は,自然法則を利用したものではなく,特許法第2条でいう「発明」に該当しない。

3.本願推進装置
(1)特許請求の範囲の記載
本願の請求項1に係る推進装置は,願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものと認める(以下「本願推進装置」という。)。
「縦軸回転可能とする被作用体1の周縁部位に,所要数の横軸回転可能とする作用体3の軸芯の一端を自在継手様若しくは蝶番様の連結具2を介して軸支することにより,該作用体3の軸芯を該連結具2の屈曲可能部の中心を支点として上下に傾斜可能とし,該作用体3が自転しながら該被作用体1の回転軸(縦軸)の周囲を公転するごとく該作用体3及び該被作用体1を独立して若しくは連動して回転させることにより該被作用体1を該縦軸回転軸の軸芯に沿って上方又は下方へ移動させることを特徴とする推進装置。」

(2)明細書の記載
本願の明細書中における「課題を解決するための手段」及び「作用」に関する記載は,平成24年5月1日付けで補正された明細書の段落【0004】及び【0005】に記載された下記イ)及びロ)のとおりであり,本願の明細書中における「実施例」に関する記載は,願書に最初に添付された明細書の段落【0006】に記載された下記ハ)のとおりである。

イ)「【0004】
そこで本願発明は,周囲の媒介物などからの連続的な反作用や燃料の燃焼ガスによる反作用に頼らない推進装置を採用する事にした。
特許請求の範囲に記載する内容に基づいて,本願発明の基本原理について説明する。まず天空の北極を上にした太陽系の運行に模して考えてみよう。このときの太陽が被作用体1であり,太陽・地球間に働く引力が連結具2である。さらに地球が作用体3であり,その重心が連結具2の屈曲可能部の中心に相当する。このとき現実の太陽は左回りの自転をしており,地球は左回りの自転をしながら太陽の周りを左回りの公転をしている。ここで地球の重心が北半球側にあると仮定する。すると地球は公転遠心力により北半球を太陽に向け,南半球を外側にして横倒しの自転運動をしようとする。回転方向は公転面上を公転方向に走る四輪自動車の右側の車輪と同じである。従ってこの横倒し自転運動の軸芯には左回りの公転により左折しようとする力が常に加えらる。すると歳差運動により,公転面に直角かつ右回りの偶力が,横倒しの地球に働いて地球はもとの自転(縦軸)姿勢に戻ろうとする。つまり公転遠心力により外側にいた南半球が,公転遠心力に逆らって内側に入ろうとするわけだから,その反動で引力の糸に張力が働く。このとき,引力の糸が切れたり伸びたりしなければ,歳差運動による偶力が働いた分だけ公転面上の太陽が上方へ移動することになる。従って自転する惑星の重心が全て北半球にあるならば,太陽はその惑星を引き連れて上方へ移動することになり,太陽及びその惑星たちは自らの力で太陽系を運行していると言える。」

ロ)「【0005】
本願発明はこのように疑似太陽系における自転惑星の公転運動により引き起こされる歳差運動による偶力の大きさと公転遠心力(太陽から遠ざかる力)の大きさを調整することにより,太陽を上下に移動させる推進力を得ようとする基本原理を採用した推進装置である。すなわちレールや路面,水や大気,燃焼ガスなどの周囲媒介物からの反作用を必要としない動力である。
では次にその機能,構造について実施例により説明する。」

ハ)「【0006】
まず,実証試験を実施するにあたり,周囲への飛散防止のため,高さ25cmで直径50cmほどの蓋付円筒容器を用意し,その中で試験する。この容器の蓋及び底部の中心を貫通する縦軸電動機シャフト用孔(ベアリング付き)を設け,底部外側には該シャフト用孔を貫通するシャフトを設けた縦軸電動機を固定し,該円筒容器内部にある該シャフトには底部から15cmの位置に直径15cmの円盤を固定する。
次にこの円盤の周縁部上面に蝶番を4枚等間隔に半片を水平に固定し,それぞれの開き角度は円盤中心から外側に向け270度とする。すると残りの半片は円盤の外周に垂れ下がる。この垂れ下がった半片に,直径10cmほどのプーリーを下方につけた電動機を固定し,このプーリーつき電動機4台の電源を円盤の適宜位置などに用意し,最後に前記縦軸電動機用電源を用意する。
では,この装置を動かしてみよう。まず円盤に取付たプーリーつき電動機4台の電源をいれ左回転させる。次に円筒容器底部外側の電動機にスイッチを入れて左回転させる。すると4つのプーリーは遠心力により横倒し自転になりつつ,公転をすることになる。すると,この公転により生ずる歳差運動により,プーリーには横倒しを是正しようとする偶力が働く。その偶力に対する反作用として前記円盤が上方へ移動させられる。」

4.当審の判断
(1)実施可能要件
本願推進装置は,周囲の媒介物などからの連続的な反作用や燃料の燃焼ガスによる反作用に頼らないものであって,「作用体3が自転しながら被作用体1の回転軸(縦軸)の周囲を公転するごとく作用体3及び被作用体1を独立して若しくは連動して回転させることにより被作用体1を縦軸回転軸の軸芯に沿って上方又は下方へ移動させる」ものであるが,以下に述べるように,発明の詳細な説明には,「作用体3が自転しながら被作用体1の回転軸(縦軸)の周囲を公転するごとく作用体3及び被作用体1を独立して若しくは連動して回転させる」と,どのような原理で「被作用体1を縦軸回転軸の軸芯に沿って上方又は下方へ移動させる」ことができるのか,当業者が容易に理解できる程度に記載されていない。
記載事項イ)?ハ)によれば,本願推進装置は,要するに,作用体が自転をしながら被作用体の周りに公転運動すると歳差運動が引き起こされ,歳差運動により偶力が働き,偶力に対する反作用として被作用体が上方へ移動するものであると解される。
しかし,「歳差運動」と「偶力」との関係は,むしろ,偶力の作用の下で歳差運動が生じるというべきであって,歳差運動を原因として偶力が発生するというのは合理性を欠くものであるし,偶力とは,大きさが同じで向きが反対の一対の力をいうところ,本願推進装置において,偶力を構成する一対の力が,どの部位に作用し,その大きさと方向がどのようなものか,不明である。仮に,作用体と,連結具のうち作用体と一体的な部分とからなる構成に対して何らかの偶力が働くとしても,偶力に対する反作用として被作用体が上方へ移動するというのは,論理が飛躍しており,到底理解することができないものである。
また,記載事項イ)及びロ)によれば,本願推進装置は,地球が自転をしながら太陽の周りを公転する場合と同じ原理をもつものとして説明がなされているが,本願推進装置は,作用体の軸芯の一端が被作用体の周縁部位に自在継手様若しくは蝶番様の連結具を介して軸支され,作用体の軸芯が連結具の屈曲可能部の中心を支点として上下に傾斜可能とされたものであり,作用体,被作用体及び連結具の3つの構成要素を有する上に,各構成要素の相互間に作用する力のほか,各構成要素には重力も作用しているから,本願推進装置は,地球と太陽からなる系と同視することはできない。記載事項イ)における「歳差運動による偶力が働いた分だけ公転面上の太陽が上方へ移動することになる。従って自転する惑星の重心が全て北半球にあるならば,太陽はその惑星を引き連れて上方へ移動する」及び記載事項ロ)における「太陽を上下に移動させる推進力を得ようとする基本原理」も,到底理解できるものではない。
したがって,発明の詳細な説明の記載は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)自然法則を利用した技術的思想
前記のとおり,本願推進装置は,作用体が自転をしながら被作用体の周りに公転運動すると歳差運動が引き起こされ,歳差運動により偶力が働き,偶力に対する反作用として被作用体が上方へ移動するものであると解されるところ,歳差運動により働く偶力の作用点,向き,大きさが不明であり,偶力に対する反作用として被作用体が上方へ移動する原理も不明である。
また,本願推進装置は,その外側からは何らの力も受けず,その内部で,作用体が被作用体の周りに公転運動をするとともに自転運動をするだけで,推進装置が全体として,公転軸である縦軸の方向に沿って一方向に連続的に移動する推進力をもつと解されるが,そのような事象は,運動量保存の法則に反する。請求人は,この点に関して,何ら反論していない。
したがって,本願推進装置は,自然法則を利用したものではなく,特許法第2条でいう「発明」に該当しない。

5.意見書について
請求人は,平成24年5月1日付け意見書において,同意見書と併せて提出した「実施例図面」を参照しながら,偶力に関して,「図1は公転,自転が始まったばかりの状態です。この状態が歳差運動の発生要因となり,図2で示すような偶力fが発生して右回りの偶力のモーメントf・Lを形成します。」,「プーリー内の公転遠心力の大きさの差異に起因する歳差運動が発生して,該最上端と該最下端を結ぶ線分を腕とする偶力のモーメントを形成します。」,「作用体3-1内に発生する公転遠心力の大きさの差異に起因する歳差運動により,図2(要部断面図)のように俯角αをもって作用体3-1の軸心は傾斜します。このとき,連結具2-1屈曲部と作用体3-1の中心部までの距離Lに対して垂直な偶力fが連結具2-1屈曲部及び作用体3-1にそれぞれ発生し,偶力のモーメントf・Lが形成されます。」,「作用体3-1が公転及び自転を続行する限り,偶力のモーメントf・Lも続行します。」等の主張をするが,図2で示される作用点(連結具2-1屈曲部及び作用体3-1の中心部)及び向き(連結具2-1屈曲部と作用体3-1の中心部までの距離Lに対して垂直な向き)をもつ一対の偶力fが何故発生するのか,明らかでない。同意見書における「作用体3-1に働く垂直分力fcosαには余力が無く,作用体3-1をこれ以上は下方へ引き下ろす能力は有りませんので現状の落差は拡大されません。そこでこの落差分を奪い返し,なおかつそれ以上に上昇するために,連結具2-1屈曲部に働く上向きの垂直分力fcosαに期待するのです。幸いにも俯角αが90度でない限り上方に向け,この垂直分力fcosαは押し上げ続けます。」との主張も,合理性を欠くものである。なお,本願明細書には図面は添付されていない。
また,同意見書と併せて提出された「実施例試験運転記録ビデオ」によれば,水槽の水面に浮かべた試験装置が所定の方向に僅かずつながら移動する様子が観察されるが,この試験装置と本願推進装置との関係が明らかでない上に,試験装置は水槽内の水から力を受けており,例えば,モータを駆動した際に生じた試験装置の振動と水槽内の水との相互作用によって試験装置が移動したとも考えられるなど,試験装置の移動が本願推進装置の作用によってもたらされたものか否かは,明らかでない。

6.むすび
以上のとおりであるから,本願は,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず,また,本願の推進装置は,特許法第2条でいう「発明」に該当せず,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2012-06-27 
結審通知日 2012-07-03 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2008-298763(P2008-298763)
審決分類 P 1 8・ 1- WZ (F03H)
P 1 8・ 536- WZ (F03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 杉浦 貴之
小関 峰夫
発明の名称 推進装置  
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