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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1274972
審判番号 不服2012-19404  
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-03 
確定日 2013-06-06 
事件の表示 特願2010-173320「電子制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月11日出願公開,特開2010-258474〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概略
本願は,平成14年3月28日に出願した特願2002-92495号の一部を平成17年9月22日に新たな特許出願とした特願2005-275453号の一部を,さらに平成22年8月2日に新たな特許出願としたものである。
平成24年2月15日付けで拒絶の理由が通知され,平成24月4月20日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたが,平成24年7月6日付けで拒絶の査定がなされ,これに対し,平成24年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同時に手続補正がなされた。

第2 平成24年10月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成24年10月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
平成24年10月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
発熱する電子部品が所定領域に搭載された基板,
開口部を有する箱状のケースと,当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成され,前記基板を収容する筐体,
前記筐体内において前記カバー側に設けられ,前記基板の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出し,前記カバーと一体に形成された突出部,
前記突出部の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板あるいは前記電子部品の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性を有する熱伝導材とを有し,
前記熱伝導材の配置される前記隙間の間隔の寸法精度を確保するように,前記基板は前記カバーに直接押圧されて固定されていることを特徴とする電子制御装置。」
と補正された(なお,下線は,本件補正により補正された箇所を示す。)。
上記補正は,本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基板」が「固定されている」点に関し,択一的に記載された事項を削除し,「前記基板は前記カバーに直接押圧されて固定されている」と限定するもので,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

2 引用文献に記載された事項
(1)ア 原査定の拒絶の理由に示された引用文献1である,特開平9-55459号公報には,「半導体装置」に関し,以下の事項が記載されている。
・「【請求項1】 所望の位置にサーマルビアホールを設けた基板と,前記基板の前記サーマルビアホールを設けた位置に実装された電子部品と,前記基板の電子部品実装面と反対側に配置された放熱部材とからなり,前記サーマルビアホールを設けた位置において前記基板と前記放熱部材との間に高熱伝導性材料が配設されていることを特徴とする半導体装置。
・・・
【請求項3】 前記高熱伝導性材料が電気的絶縁性を有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】 前記高熱伝導性材料が半流動性のシリコンゴムであることを特徴とする請求項3記載の半導体装置。」
・「【0014】従って,電子部品から発生した熱は,サーマルビアホールを介して基板の電子部品実装面と反対側に伝達され,高熱伝導性材料から放熱部材に伝達されて放散させることができる。この放熱経路は,サーマルビアホールが金属で形成されて熱伝導率が高く,しかも電子部品の実装面から放熱部材まで熱の伝達距離が短くかつ断面積が大きいので,熱抵抗が小さく,効率よく放熱させることができる。特に,ベアチップの電子部品をボンディング剤で基板に表面実装した場合には,シリコンと金属間における熱伝達が良好であることから,熱抵抗がより小さい放熱経路が得られる。
【0015】高熱伝導性材料には,電気的絶縁性を有するものを使用すると,電子部品が放熱部材から電気的に絶縁されるため,静電気などの外来の電気的なサージが放熱部材に加えられても,電子部品には印加されないので,その誤動作や破壊などから保護することができる。半導体装置の組立作業の観点から,前記高熱伝導性材料が,柔軟性や半流動性のシリコンゴムなどであると,その形状が基板と放熱部材との間隔に応じて変形するので有利である。また,シート形状のものは,取扱いが容易なため,組立工程を簡単化することができる。
【0016】また,本発明によれば,高熱伝導性材料を基板と放熱部材との間で金属板を挟んで積層することができ,それらの間隙が比較的大きい場合でも,それに対応して上述した放熱経路を確保することができる。このとき,金属板を挟んで基板側の高熱伝導性材料に電気的絶縁性を有するものを使用すると,放熱部材との間で熱抵抗を小さく維持しつつ,電子部品を外来のサージなどから保護することができる。また,基板と放熱部材との間隔が両面実装などの理由で大きい場合に,放熱部材の基板側の面に突部を形成し,かつ該突部と基板との間に高熱伝導性材料を設けることによって,同様にサーマルビアホールを介して基板の裏面から放熱させる上述した熱抵抗の小さい放熱経路を確保することができる。ここで,基板を放熱部材の突部にねじ止めして固定すると,外部からの衝撃などによっても,基板と突部との間隔を狭く維持できるので,熱伝導グリースなどの油脂を高熱伝導性材料に使用できる。」
・「【0021】
【発明の実施の形態】図1は,本発明を適用した所謂ICカードやメモリカード等と略同一のカード形状をなす半導体装置の好適実施例を示している。この半導体装置20はコンピュータの制御回路部を構成し,図2に併せて示すように,中央演算ユニット(CPU)21,メモリ22,受動素子23及び各種コントローラ24などの電子部品を搭載した基板25が金属ケース26内に収容されている。金属ケース26は,金属製のフレーム27及び上下パネル28,29からなり,該フレームの一方の側部に設けられたコネクタ30が,端子31を介して基板25の回路と電気的に接続されている。・・・
【0022】本実施例の半導体装置においては,消費電力が大きくそのために発熱量の大きいCPU21が,カード形金属ケース26の狭い空間に収容されているので,その特性の低下を防止するために,熱対策の一つとして放熱構造が非常に重要である。本実施例のCPU21は,図11のような樹脂封止されたパッケージ部品ではなく,図1に良く示すようにべアチップであり,COB方式により銀ペースト33で基板25表面に直接実装されている。CPU21の電極は,ボンディングワイヤ34で前記基板上の端子と接続され,かつこれら全体がモールド樹脂35で封止されている。また,CPU21の基板25へのマウントには,銀ペースト以外に,銅ペースト又ははんだのような従来から知られた熱伝導性の良いろう材又は接着剤などをボンディング剤として用いることができる。
【0023】基板25には,CPU21を実装する領域に多数のサーマルビアホール36が形成されている。サーマルビアホール36は,基板25に貫通する孔を形成しかつその内周面に金属をめっきしためっきスルーホールであり,通常の基板の製造工程において,特別な工程を追加することなく容易に形成することができる。また,サーマルビアホール36は,前記めっきスルーホールの中に樹脂を充填して穴埋めしても良く,又は基板25の貫通孔に銅ペーストなどの熱伝導性材料を充填して形成することもできる。
【0024】サーマルビアホール36を形成した領域の基板25の裏面と下パネル29との間には,熱伝導性の高い充填材37を配設する。本実施例では,サーマルビアホール36及び基板25裏面の電位が該基板の表面即ちCPU実装面と同電位であるので,CPU21を静電気等の外来サージから保護する観点からすれば,充填材37として電気的絶縁性を有する材料を使用し,基板25を金属製の下パネル29から電気的に絶縁することが好ましい。また,半導体装置20の組立作業を容易にするためには,充填材37は,柔軟性を有するもの,容易に変形可能なものやシート状のものが好ましい。このような材料として,例えば半流動性を有するシリコンゴム,シリコン樹脂や熱伝導グリースなどが好都合である。」
・「【0035】図5には,図4の第3実施例に変形を加えた本発明による半導体装置の第4実施例が示されている。第4実施例では,基板25がその裏面にも半導体部品45がCOB方式で実装される両面実装板であるため,該基板と下パネル29との間隔が比較的大きい。このため,下パネル29の内面に台形状の突部46を設け,かつその上面と前記基板との間に熱伝導率の高い充填材47を介装した点において,第4実施例は第3実施例と異なる。充填材47は,上記第1実施例の場合と同様に,シリコンゴムなどのような電気的絶縁性を有する材料が好ましい。
【0036】従って,本実施例における第1の放熱経路は,CPU21からの熱が銀ペースト33,サーマルビアホール36を介して充填材47から突部46に即ち下パネル29に直接伝達される。熱の伝達距離は,基板25と下パネル29との間隔が大きいことによってそれだけ長くなるが,突部46は下パネル29と一体に形成されているので,熱抵抗は小さく,第3実施例のように充填材を介在させる場合よりも効率よく熱伝達が行われ,大きな放熱効果が得られる。」
・「【0038】図6は,図5の第4実施例の変形例を示している。この変形例では,突部46の外面に凹み49が設けられ,かつその中に放熱フィンのような凹凸部50が一体的に形成されている。凹凸部50は,金属ケースを厚さ方向に大きくすることなく,その表面積を最大にするように,その先端が下パネルの29の下面と同一平面をなすように設計されている。従って,装置全体の厚さを維持したまま,上記第4実施例の優れた作用効果をそのまま維持して高い放熱効果を得ることができる。」
・「【0039】図7は,図5の第4実施例の別の変形例を示している。本実施例は,突部46が大きく形成され,かつ基板25が該突部上面に,その間に充填材51を挟装してねじ52で固定されている点で,第4実施例と異なる。これにより,充填材51に半流動性の材料を用いても外部からの衝撃などによって前記基板と突部との間隔や位置がずれる虞が無いので,熱伝導率の高い熱伝導グリースのような充填材を用いることが容易になる。また,図7の実施例では,基板25下面と突部46上面との間隔に応じて,フィルム39又は充填材51のいずれか一方のみを用いることが可能である。この場合には,熱の伝達距離が更に短くなり,熱伝導が効率よく行われるので,放熱効果が高められる。」
イ 上記の記載及び図面の記載からみて,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「発熱する中央演算ユニット21が所定領域に搭載された基板25,
フレーム27,上パネル28及び下パネル29とから構成され,前記基板25を収容する金属ケース26,
前記金属ケース26内において前記下パネル29側に設けられ,前記基板25の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出し,前記下パネル29と一体に形成された突部46,
前記突部46の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板25の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性や半流動性のシリコンゴムなどからなる充填材47とを有する半導体装置。」

(2) 原査定の拒絶の理由に示された引用文献2である特開平5-160289号公報には,「半導体チップの実装構造」に関し,以下の事項が図面とともに記載されている。
・「【請求項1】 回路基板(1) のダイパッド(3) 上に,ダイボンディング接着剤(11)を用いて,半導体チップ(10)をダイボンディングする回路基板装置において,
ダイパッド形成領域に設けたサーマルスルーホール(2) に,高熱伝導性・耐湿性物質(30)を充填するとともに,
高熱伝導性の板状のスペーサ(40)を該高熱伝導性・耐湿性物質(30)で,該ダイパッド(3) に対応する該回路基板(1) の裏面側に,接着したことを特徴とする半導体チップの実装構造。」
・「【0025】そして,アルミニウム等よりなる上方が開口した箱形の金属ケース20の底板21に,高熱伝導性セラミック板41を当接して回路基板1を金属ケース20に収容し,回路基板1の周辺部を小ねじを用いて底板21に固着して,回路基板1を金属ケース20に固定している。
【0026】本発明は上述のようにサーマルスルーホール2に,高熱伝導性・耐湿性物質30を充填しているので,半導体チップ10の耐湿信頼性が保持される。一方,回路基板1の裏面を,サーマルスルーホール2に熱的に接続したスペーサ40を介して,金属ケース20の底板21に密着させている。
【0027】よって,半導体チップの熱は,ダイボンディング接着剤11,ダイパッド3,サーマルスルーホール2の内壁に形成された導体層及び高熱伝導性・耐湿性物質30,スペーサ40を経て金属ケース20に伝達され,金属ケース20から外部に放出される。即ち,半導体チップの放熱性が良好となる。
【0028】また,回路基板の裏面に板状のスペーサ40を接着しているので,回路基板1は裏面側がぐらつくことなく,安定した状態で底板21に密着する。即ち,回路基板1の金属ケース20への組み込みの作業性が良くなる。」

3 対比及び判断
(1)ア 本願補正発明と引用発明とを,その有する機能に照らして対比すると,引用発明の「中央演算ユニット21」は本願補正発明の「電子部品」に相当し,同様に,「基板25」は「基板」に,「金属ケース26」は「筐体」に,それぞれ相当する。
また,引用発明の「下パネル29」に形成された「突部46」は,本願補正発明の「突出部」に相当し,その意味において,引用発明の「下パネル29」は本願補正発明の「カバー」に相当する。
そして,引用発明の「充填材47」は,本願補正発明の「柔軟性を有する熱伝導材」に相当し,同様に,「半導体装置」は「電子制御装置」に相当する。
そうすると,本願補正発明と引用発明とは,次の点で一致し,相違することがわかる。
(一致点)
「発熱する電子部品が所定領域に搭載された基板,
カバーを有し,前記基板を収容する筐体,
前記筐体内において前記カバー側に設けられ,前記基板の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出し,前記カバーと一体に形成された突出部,
前記突出部の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性を有する熱伝導材とを有する電子制御装置。」である点
(相違点1)
本願補正発明は,筐体が,「開口部を有する箱状のケースと,当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成され」ているのに対し,引用発明においては,金属ケース26が「フレーム27,上パネル28及び下パネル29とから構成され」ている点
(相違点2)
本願補正発明は,「前記熱伝導材の配置される前記隙間の間隔の寸法精度を確保するように,前記基板は前記カバーに直接押圧されて固定されている」のに対し,引用発明はそのように構成されていない点

(2)ア まず,上記相違点1について検討する。
引用発明の金属ケース26は,フレーム27,上パネル28及び下パネル29とから構成され,フレーム27及び上パネル28により,本願補正発明における「箱状のケース」と同様の機能を果たしており,その意味において,箱状のケースとカバーとより構成されていると解して差し支えない。
そして,筐体を,開口部を有する箱状のケースと,当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成する点は,特開2000-252657号公報及び特開2002-57478号公報に記載されているように,従前より広く知られたものであることに加え,引用発明において,金属ケース26が開示された構造に限定されるものではなく,適宜の構造を採用し得ることは,技術的に明らかである。
そうすると,引用発明において,上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が適宜になし得ることであって,容易に想到できた事項である。
イ 次に,上記相違点2について検討する。
引用文献2には,回路基板1の周辺部を小ねじを用いて金属ケース20の底板21に固着して,回路基板1を金属ケース20に固定することにより,回路基板1の裏面をスペーサ40を介して金属ケース20の底板21に密着させ,もって,半導体チップ10の熱を金属ケース20に伝達し放熱する点が記載されている(前記2(2))。このように,密着する程度に固定するものであるから,回路基板1が底板21に直接押圧されて固定されている構造といえ,当該固定構造を前提に所定の放熱性能を発揮させるものであることからして,回路基板1の裏面と底板21との間隔の寸法精度を確保するように固定していることは技術的に明らかである。このような事項は当業者であれば,引用文献2の記載から容易に理解できる。
引用発明においても,充填材47,突部46を介して,中央演算ユニット21の熱を下パネル29に伝達し,所定の放熱性能を発揮させるためには,充填材47の配置される隙間の間隔の寸法精度が重要であることは明らかであるとともに,引用文献1には,基板を突部にねじで固定することで当該間隔を維持する点が開示されていることからすると(【0016】及び【0039】),引用発明においても,当該間隔の寸法精度を確保しようとするといった課題は内在することがわかる。
そして,引用発明における基板25の金属ケース26に対する固定態様が,引用文献1に開示された構造に限定されるものではなく,適宜の構造を採用し得ることは,所期の目的に照らしても明らかである。
そうすると,引用発明に引用文献2に記載された事項を適用し,充填材47の配置される隙間の間隙の寸法精度を確保するように,基板25が下パネル29に直接押圧されて固定されるようにすること,すなわち,上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できた事項である。
上述のとおり,引用発明において,上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できた事項であるところ,上記相違点1に係る金属ケース26の構造とした上で,充填材47の配置される隙間の間隙の寸法精度を確保するように,基板25が下パネル29に直接押圧されて固定されるようにすることも,当業者にとって格別困難なことではない。
ウ 本願補正発明の奏する効果についてみても,引用発明及び引用文献2に記載された事項から予測し得る範囲内であって,格別ではない。
エ 以上の点に関し,請求人は,
・筐体は開口部を有する箱状のケースと当該ケースの前記開口部を閉塞するカバーとから構成され,基板とケース突出部の間隔を寸法精度良く確保するために基板はカバーに直接押圧された状態で筐体内に固定するため,基板とケース突出部との間隔の寸法精度への固定部による影響を無くすことができることが本願補正発明の特徴で,つまり,固定部での隙間や傾きが生じない固定状態を形成するものである
・引用文献2の記載された内容は,【0036】に記載のとおり,カバーにスペーサを押し付ける前提であって,必然的に基板とカバーの固定部に傾きや隙間が生じる構造であり,組立寸法公差が考慮されておらず,間隔を精度良く確保することは困難であると考えられる,ネジ部周囲の基板穴クリアランスを設けずに貫通させていることからネジ山は基板にも作用するため,基板とカバー間で押圧されていない状態が想定される
などと主張している。
しかし,上述のとおり,引用文献2に記載されたものは,当該固定構造により所定の放熱性能を発揮させるものであるから,たとえ,固定部に傾きや隙間が生じる余地があるとしても,本質的には,回路基板1の裏面と底板21との間隔の寸法精度を確保するように固定していることは明らかであるし,密着する程度に固定するものであるから,回路基板が底板21に直接押圧されて固定されている構造と解して差し支えない。
また,請求項1に具体的に特定された事項により,本願補正発明が引用文献2に記載された事項に比べ,特段有利な固定状況を呈するとは認められない。
そして,上述のとおり,引用発明において,上記相違点1に係る金属ケース26の構造とした上で,充填材47の配置される隙間の間隙の寸法精度を確保するように,基板25が下パネル29に直接押圧されて固定されるようにすることも,当業者にとって格別困難なことではないところ,その場合に,引用発明においても,当該間隔の寸法精度を確保しようとするといった課題は内在するから,金属ケース26の具体的な構造を踏まえて,固定部での隙間や傾きが生じない固定状態を形成するような固定構造とすることは当然で,発明の具体化に際し当業者が適宜になし得ることである。
よって,請求人の主張は,採用することができない。
オ 請求人は,本願補正発明に,(a)同一平面状でプリント基板反搭載面とカバー結合面とが直接押圧されて固定する点(本願明細書【0015】に記載された内容),(b)カバー突出部はプリント基板反搭載面と平行な面を形成する点(本願明細書【0019】に記載された内容),(c)プリント基板は樹脂製の材料からなる点(本願明細書【0016】に記載された内容),及び(d)熱伝導部材は柔軟性を有して押圧によって形状が変形する点(本願明細書【0022】に記載された内容)を加える補正の用意があるとし,このような事項を備えることを前提に本願補正発明の特許性を主張しているが(平成25年2月13日付けの回答書),このような事項を加味しても,本願補正発明は容易想到である。
すなわち,上記(a)に関し,引用発明において,固定部での隙間や傾きが生じない固定状態を形成するような固定構造とすることは発明の具体化に際し当業者が適宜になし得ることであるから,同一平面状で基板反搭載面とカバー結合面とが直接押圧されて固定するようにすることは,当業者にとって格別困難なことではない。
上記(b)に関し,引用発明においても突出部は基板反搭載面と平行な面を形成していることは十分に窺えることであるし,所期の目的に照らして当然といえる。
上記(c)に関し,引用文献1に基板が樹脂製であるかについて明記はないが十分に窺えることであるし,樹脂製であることは通常のことである。
上記(d)に関し,引用発明の充填材47も,柔軟性を有して押圧によって形状が変形することは明らかである。
よって,請求人の主張は採用することができない。
カ 以上を総合すると,本願補正発明は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3) 以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,前記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし請求項6に係る発明は,平成24月4月20日付けの手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるとおりのものであるが,そのうち,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,つぎのとおりである。
「【請求項1】
発熱する電子部品が所定領域に搭載された基板,
開口部を有する箱状のケースと,当該ケースの開口部を閉塞するとともにケースよりも底の浅いカバーとから構成され,前記基板を収容する筐体,
前記筐体内において前記カバー側に設けられ,前記基板の前記所定領域に対応する突出面を有して前記所定領域に向けて突出し,前記カバーと一体に形成された突出部,
前記突出部の前記突出面と前記所定領域において前記突出面に近接する前記基板あるいは前記電子部品の前記突出面の対向面との間の隙間に配置された柔軟性を有する熱伝導材とを有し,
前記熱伝導材の配置される前記隙間の間隔の寸法精度を確保するように,前記基板は前記カバーに直接,もしくは所定の厚みを有するスペーサに接触して押圧されて固定されていることを特徴とする電子制御装置。」

2 引用文献に記載された事項
引用文献に記載された事項は,前記第2・2のとおりである。

3 対比及び判断
本願発明は,本願補正発明が,「基板」が「固定されている」点に関し,「前記基板は前記カバーに直接押圧されて固定されている」と限定していたものを,「前記基板は前記カバーに直接,もしくは所定の厚みを有するスペーサに接触して押圧されて固定されている」と択一的な事項に拡張したものである(前記第2・1)。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項をすべて含み,さらに発明を特定するために必要な事項を減縮したものに相当する本願補正発明が,前記第2・3で検討したとおり,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明に対し拡張した事項を有する本願発明が,同様の理由により,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。

4 以上のとおり,本願発明(請求項1に係る発明)は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
そして,本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができない以上,本願の請求項2ないし請求項6に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-27 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-04-15 
出願番号 特願2010-173320(P2010-173320)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
窪田 治彦
発明の名称 電子制御装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 伊藤 高順  
代理人 井口 亮祉  
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