• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 特29条の2  A63F
審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 1項1号公知  A63F
管理番号 1275440
審判番号 無効2010-800146  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-08-23 
確定日 2013-06-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3587771号「スロットマシン」の特許無効審判事件についてされた平成23年 8月 3日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成23年(行ケ)第10291号平成24年 1月11日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。  
結論 訂正を認める。 特許第3587771号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3587771号の請求項3に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その3分の1を請求人の負担とし、3分の2を被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許の経緯概要は以下のとおりである。

平成12年 8月16日 本件特許出願(特願2000-246777号)
平成16年 7月27日 特許査定
平成16年 8月20日 設定登録(特許第3587771号)

平成22年 8月23日差出 無効審判請求(書面には8月20日の日付)
平成22年11月 8日 答弁書(被請求人)
平成23年 2月 4日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 上 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成23年 2月18日 口頭審理
平成23年 3月 7日 無効理由通知,審理結果通知
平成23年 4月 5日 意見書(請求人)
平成23年 4月 8日 訂正請求,意見書(請求人)
平成23年 5月16日 答弁書(被請求人)
平成23年 5月18日 弁駁書(請求人)
平成23年 7月11日 審理終結通知
平成23年 8月 3日 審決(訂正を認める,特許を無効とする)

平成23年 9月 9日 審決取消訴訟の提起(被請求人による)(平成2
3年(行ケ)10291号)
平成23年11月15日差出 訂正の審判請求(訂正2011-39012
5号,書面には11月14日の日付)
平成24年 1月11日 特許法181条2項の規定に基づく決定(特許庁
が無効2010-800146号事件について平
成23年8月3日にした審決を取り消す。)
平成24年 1月20日(1月24日発送)訂正請求のための期間指定通知
平成24年 2月 3日 訂正請求
平成24年 3月 8日差出 弁駁書(請求人,書面には3月7日の日付)
なお,被請求人は平成24年1月20日付け訂正請求のための期間指定通知に対して訂正請求をしなかったので,被請求人が行った平成23年11月15日差出の訂正審判請求(訂正2011-390125号,書面には11月14日の日付)は,特許法134条の3第5項の規定により,当該期間の末日である平成24年2月3日に,その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書を援用した訂正請求とみなされた。


第2.無効理由に関する主張等
1.請求人の主張
(1)請求人は,平成22年8月23日差出の審判請求書において,「特許第3587771号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求め」(請求の趣旨),以下の理由により,本件特許発明(本件設定登録時の請求項1?3)は特許を受けることができないものであるから,特許法123条1項の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?11号証を提出した。

【無効理由1】
甲第1号証は本件出願前に頒布された刊行物(審判請求書44?50頁)であって,本件特許発明(本件設定登録時の請求項1?3)は,甲第1号証に記載された発明,甲第2?5号証に例示される周知技術,甲第6号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に成し得たものであり,特許法29条2項により無効とされるべきものである。

甲第1号証:日電協発(技)第4号 平成11年4月19日 「日電協にお
ける回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式(主基板か
しめ封印方式の日電協呼称)」の導入について」
甲第2号証:特開平11-114133号公報
甲第3号証:特開平10-249025号公報
甲第4号証:特開2000-189555号公報
甲第5号証:特開平10-240519号公報
甲第6号証:特開平10-309360号公報
甲第7号証:日電協発第44号 平成11年9月13日 「日電協における
回胴式遊技機の「主基板セフティーロック方式(かしめ封印方
式の日電協呼称)」の導入について(報告)」
甲第8号証:「不正のない公正・公平なパチンコ産業を目指して-遊技機・
周辺機器に関する総括報告書-」,平成12年6月26日,社
団法人日本遊技関連事業協会発行,全頁
甲第9号証:日電協発(技)第3号 平成11年3月25日 「回胴式遊技
機用「主基板かしめ封印方式」に対するアンケート調査依頼に
ついて」
甲第10号証:平成11年4月2日 日電協の技術委員会会議次第および配
布資料
甲第11号証:特許第3587771号公報(本件特許公報)

(2)平成23年2月4日付け口頭審理陳述要領書において,請求人は,甲第12?16号証を提出して甲第1号証は「刊行物」であることを主張した(要領書3?5頁)。更に,請求人は,甲第17?30号証を提出して,甲1号証が「刊行物」に該当しないとしても甲第1号証には公知技術が記載されており,本件特許発明(本件設定登録時の請求項1?3)は,依然として,当業者が容易に成し得たものであり,特許法29条2項により無効とされるべきものである旨主張した(要領書5?34頁)。
平成23年2月18日の口頭審理において,審判長は,上記主張のうち後者については審判請求書の要旨を変更するものであるから,これを許可しないこととし,甲第1号証に公知技術が記載されておりそれを根拠とする無効理由について職権によって通知することとした。

甲第12号証:平成23年1月11日大阪弁護士会受付,整理番号1378
1号,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会の件」
甲第13号証:平成23年1月25日大阪弁護士会受付,整理番号1378
1号,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会に対する
回答」
甲第14号証:「日電協20年の歩み,そして未来」,平成13年11月3
0日,日本電動式遊技機工業協同組合発行,34?35頁,
42?43頁,74?75頁
甲第15号証:日電協発第43号 平成11年9月13日 「回胴式遊技機
用主基板樹脂ケースのセフティーロック方式(日電協のかし
め封印方式の名称)の実施について」
甲第16号証:「Green Belt」2000年8月号,株式会社アドサーク
ル発行
甲第17号証:「デュエルドラゴン」のパンフレット
甲第18号証:パチスロ攻略マガジン2000年3月号,平成12年3月1
日,株式会社双葉社発行,4?5頁
甲第19号証:「アラベスク」のパンフレット
甲第20号証:「ニュートラッド1」のパンフレット
甲第21号証-1:パチスロ攻略マガジン2000年5月号,平成12年5
月1日,株式会社双葉社発行,4?7頁
甲第21号証-2:パチスロ攻略マガジン2000年6月号,平成12年6
月1日,株式会社双葉社発行,8?11頁
甲第22号証-1:パチスロ攻略マガジン2000年7月号,平成12年7
月1日,株式会社双葉社発行,8?9頁
甲第22号証-2:パチスロ攻略マガジン2000年8月号,平成12年8
月1日,株式会社双葉社発行,66?69頁
甲第23号証:特開2000-167196号公報
甲第24号証:特開2000-116912号公報
甲第25号証:特開平11-156027号公報
甲第26号証:特開平11-19310号公報
甲第27号証:特開平10-328385号公報
甲第28号証:特開平10-277238号公報
甲第29号証:特開平10-216324号公報
甲第30号証:特開平10-249024号公報

(3)平成23年4月5日付け意見書において,請求人は,甲第31?32号証を提出するとともに,日本電動式遊技機特許株式会社と日本電動式遊技機工業協同組合との関係,甲第7号証,甲第15号証に関する事情について主張している。

甲第31号証:平成23年3月15日大阪弁護士会受付,整理番号1732
1号,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会の件」
甲第32号証:平成23年3月23日大阪弁護士会受付,整理番号1732
1号,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会に対する
回答」

(4)平成23年5月18日付け弁駁書において,請求人は,平成23年4月8日付け訂正請求について訂正を認めるとともに,訂正後の請求項1?3に係る発明は平成23年3月7日付け無効理由通知書の無効理由2,3により無効とされるべきである旨主張している。

(5)平成24年3月8日差出の弁駁書において,請求人は,平成24年2月3日付けの訂正請求について,請求項2に関する訂正事項6?8及び請求項2の訂正に関連した訂正事項19による訂正は認められず,その他の訂正事項による訂正は認める旨主張している。更に,請求人は,甲第33?38号証及び参考資料1?27を提出して,仮に訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1?3に係る発明は特許法29条2項の規定によって特許を受けることができないものであるから,同法123条1項2号の規定に該当し,無効とされるべきである旨主張している。
なお,前記甲第33?34号証及び甲第35?38号証は,平成23年3月7日付け無効理由通知及び平成23年8月3日付け審決における,引用例5?8及び周知例B?Cである。

甲第33号証:特開2000-334142号公報(引用例5)
甲第34号証:特開2000-354673号公報(引用例6)
甲第35号証:特開2001-137428号公報(引用例7)
甲第36号証:特開2001-161891号公報(引用例8)
甲第37号証:特開平10-263171号公報(周知例B)
甲第38号証:特開平11-333111号公報(周知例C)
参考資料1:特開平11-114184号公報
参考資料2:特開平11-169534号公報
参考資料3:特開2000-185156号公報
参考資料4:特開2000-189633号公報
参考資料5:特開平10-15195号公報
参考資料6:特開平11-276695号公報
参考資料7:実願平5-910号(実開平6-59972)のCD-ROM
参考資料8:実願平6-1894号(実開平7-3068)のCD-ROM
参考資料9:特開平7-78286号公報
参考資料10:特開平7-121758号公報
参考資料11:特開平8-315227号公報
参考資料12:特開平9-245232号公報
参考資料13:特開平10-21458号公報
参考資料14:特開平10-105816号公報
参考資料15:特開平10-232969号公報
参考資料16:特開平11-193084号公報
参考資料17:特開平4-248159号公報
参考資料18:実願平5-29896号(実開平6-81935)のCD-ROM
参考資料19:実願平5-57051号(実開平7-21148)のCD-ROM
参考資料20:実公昭58-47758号公報
参考資料21:実公昭60-42447号公報
参考資料22:実公昭60-16030号公報
参考資料23:実公平6-35508号公報
参考資料24:特開平7-213697号公報
参考資料25:特開平8-255604号公報
参考資料26:特開平11-185720号公報
参考資料27:特開2000-107374号公報

2.無効理由通知及び審決
(1)審判長は,平成23年3月7日付けで,以下の理由で無効理由を通知した。

【無効理由2】
本件の請求項1?3に係る発明(本件設定登録時の請求項1?3)は,本件特許出願の日前の下記の特許出願であって,当該特許出願後に出願公開されたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから,特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

特願平11-345478号(特開2001-161891号公報)
(平成11年12月3日出願,無効理由3の引用例8と同じ)

【無効理由3】
本件の請求項1?3に係る発明(本件設定登録時の請求項1?3)は,その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者が,本件出願前公然知られた発明及び頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明ををすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。

引用例1:日電協発(技)第4号 平成11年4月19日 「日電協におけ
る回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式(主基板かしめ
封印方式の日電協呼称)の導入について(無効審判請求人が提出
した甲第1号証)
引用例2:平成23年1月11日大阪弁護士会受付,整理番号13781号
,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会の件」(同,甲第
12号証)
引用例3:平成23年1月25日大阪弁護士会受付,整理番号13781号
,「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会に対する回答」(
同,甲第13号証)
引用例4:「日電協20年の歩み,そして未来」,平成13年11月30日
,日本電動式遊技機工業協同組合発行,34?35頁,42?4
3頁,74?75頁(同,甲第14号証)
引用例5:特開2000-334142号公報
引用例6:特開2000-354673号公報
引用例7:特開2001-137428号公報
引用例8:特開2001-161891号公報
引用例9:日電協発第44号 平成11年9月13日 「日電協における回
胴式遊技機の「主基板セフティーロック方式(かしめ封印方式の
日電協呼称)」の導入について(報告)」(同,甲第7号証)
引用例10:「不正のない公正・公平なパチンコ産業を目指して-遊技機・
周辺機器に関する総括報告書-」,平成12年6月26日,社
団法人日本遊技関連事業協会,全頁(同,甲第8号証)
引用例11:特開平11-114133号公報(同,甲第2号証)
引用例12:特開平10-249025号公報(同,甲第3号証)
引用例13:特開2000-189555号公報(同,甲第4号証)
引用例14:特開平10-240519号公報(同,甲第5号証)
引用例15:特開平10-309360号公報(同,甲第6号証)

(2)審判長は,平成23年8月3日付けで,平成23年4月8日付け訂正請求について訂正を認めるとともに,訂正後の請求項1?3に係る発明が【無効理由3】によって無効とすべきものである旨の審決をした。


3.被請求人の主張
(1)被請求人は,平成22年11月8日付けで答弁書を提出し,「本件の審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め」(答弁の趣旨),本件発明1?3の特許は無効にされるべきものではない旨,主張している。そして,乙第1号証を提出するとともに,「甲第1号証は,特許法第29条1項3号にいう頒布された刊行物とは認められず,特許法29条2項の規定による刊行物に該当しない」(25頁30?33行),「仮に,甲第1号証が特許法29条1項3号にいう刊行物と認められたとしても,本件発明1?3は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとすることはできず」(26頁1?4行)と主張している。

乙第1号証:日本電動式遊技機工業協同組合のホームぺージ抜粋([online]
,平成22年10月27日検索,インターネットURL:http:
//www.nichidenkyo.or.jp/top.html)

(2)平成23年2月4日付け口頭審理陳述要領書において,被請求人は,乙第2,3号証を提出するとともに,日電協とその組合員の間には黙示の秘密保持契約が締結されていた等の主張をしている。

乙第2号証:「遊技日本」1999年1月号,平成11年1月25日,近畿
出版社発行,18?19頁
乙第3号証:「遊技通信」1999年2月号,1999年1月20日,遊技
通信社発行,26?29頁

(3)被請求人は,平成23年4月8日付けで訂正を請求するとともに,同日付けの意見書において,乙第4?8号証を提出するとともに,【無効理由2】に関して訂正後の請求項1?3は同一でない旨,【無効理由3】に関して引用例1に記載された発明が公然知られた発明ではない旨,仮に公知発明だとしても容易に想到し得たものではない旨,主張している。

乙第4号証:「型式試験申請添付書類 ミスタークールα」,株式会社ダイ
ドー
乙第5号証:特開2000-84145号公報
乙第6号証:特開2000-254271号公報
乙第7号証:特開2000-317044号公報
乙第8号証:実公平6-1173号公報

(4)平成23年5月16日付け答弁書において,被請求人は,請求人と日本電動式遊技機工業協同組合は利害関係が深い関係にあるので,甲第32号証には証明力(証拠力)はない旨,甲第1,7,9,10,15号証が真正であることは立証されておらず,甲第7,15号証の提出の事実,添付資料を添付した事実も示されていない旨,主張している。

(5)被請求人は,平成24年2月3日付けの訂正請求書において,訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するとともに,【無効理由3】に関して,引用例1に記載された発明が公然知られた発明ではない旨及び仮に公知発明であるとしても容易に想到し得たものではない旨,主張している。


第3.訂正請求について
以下において,訂正前の請求項とは本件設定登録時の請求項を,訂正後の請求項とは平成24年2月3日付けの訂正請求に基づく請求項を,それぞれ指す。

1.訂正請求の内容
平成24年2月3日付けの訂正請求(以下,「本件訂正」という。)は,本件設定登録時の特許第3587771号の明細書(以下,「特許明細書」という。)を,本件訂正の請求書に添付した訂正明細書によって訂正しようとするものであって,次の事項を訂正内容とするものである。

・訂正事項1
【請求項1】の「開放可能な収納ケース」を「開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケース」と訂正する。
・訂正事項2
【請求項1】の「本体に設けられたスロットマシンであって」を「箱状の本体に設けられたスロットマシンであって」と訂正する。
・訂正事項3
【請求項1】の「前記収納ケースの一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と」を「前記収納ケースの短寸の一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と」と訂正する。
・訂正事項4
【請求項1】の「更に前記収納ケースの他端側には,前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が設けられており」を「更に前記収納ケースの短寸の他端側には,前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくも二つ設けられており」と訂正する。
・訂正事項5
【請求項1】の「前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記係止部を前記取付部材に係止させた状態で前記第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを固着手段により固着し」を「前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し」と訂正する。

・訂正事項6
【請求項2】に「前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,」及び「前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており,」を追加し訂正する。
・訂正事項7
【請求項2】に「前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに,」を追加し訂正する。
・訂正事項8
【請求項2】に「前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,」を追加し訂正する。

・訂正事項9
【請求項3】の「前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから外方に張り出す封止片からなり」を「前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり」と訂正する。
・訂正事項10
【請求項3】の「前記第1の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記下部ケースから外方に張り出す封止片が位置するように構成されている」を「前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており,」と訂正する。
・訂正事項11
【請求項3】に「前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており,前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており,」を追加し訂正する。
・訂正事項12
【請求項3】に「前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され,」を追加し訂正する。
・訂正事項13
【請求項3】に「前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え,」を追加し訂正する。
・訂正事項14
【請求項3】に「前記取付部材と別体の前記固定部は,第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され,」を追加し訂正する。
・訂正事項15
【請求項3】に「前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され,」を追加し訂正する。
・訂正事項16
【請求項3】に「前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は,前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる」を追加し訂正する。
・訂正事項17
【請求項3】の「請求項1または2に記載のスロットマシン」を「請求項2に記載のスロットマシン」と訂正する。

・訂正事項18
特許明細書の段落【0008】の
「【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,本発明のスロットマシンは,表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が,開放可能な収納ケースにより収納された状態で本体に設けられたスロットマシンであって,
前記収納ケースの一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と,該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と,が並設され,更に前記収納ケースの他端側には,前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が設けられており,
前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記係止部を前記取付部材に係止させた状態で前記第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば,制御基板が収納ケースにより覆われた状態で本体に固着されることにより,制御装置等への不正を困難とすることが出来るとともに,固着手段により収納ケースが開放不能に,かつ本体に取り外し不能に取り付けられると,収納ケースを開放したり本体から取り外す際には,収納ケースの一部が破壊されて機械的な変形を伴うことにより痕跡が確実に残ることになるため,不正が行われた可能性があることが外部から直ちに発見出来るようになり,不正行為を効果的に抑制出来ることになる。また,収納ケースの係止部を係止させ,第1の封止部及び固定部を固着手段により固着するのみで,収納ケースを筐体に対して取り外し不能に取り付け出来るため,取付けの作業性が向上する。また,例えば,メーカーから店舗への出荷時や店舗からメーカーへの返品時等において収納ケースを開放不能な状態とすることができるので,スロットマシンの本体と収納ケースとを別送する場合でも,制御基板を収納ケースに収納した状態で安全に輸送できる。」を,請求項1の訂正に伴い,
「【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,本発明のスロットマシンは,表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が,開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって,
前記収納ケースの短寸の一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と,該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と,が並設され,更に前記収納ケースの短寸の他端側には,前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくも二つ設けられており,
前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば,制御基板が収納ケースにより覆われた状態で本体に固着されることにより,制御装置等への不正を困難とすることが出来るとともに,固着手段により収納ケースが開放不能に,かつ本体に取り外し不能に取り付けられると,収納ケースを開放したり本体から取り外す際には,収納ケースの一部が破壊されて機械的な変形を伴うことにより痕跡が確実に残ることになるため,不正が行われた可能性があることが外部から直ちに発見出来るようになり,不正行為を効果的に抑制出来ることになる。また,収納ケースの係止部を係止させ,第1の封止部及び固定部を固着手段により固着するのみで,収納ケースを筐体に対して取り外し不能に取り付け出来るため,取付けの作業性が向上する。また,例えば,メーカーから店舗への出荷時や店舗からメーカーへの返品時等において収納ケースを開放不能な状態とすることができるので,スロットマシンの本体と収納ケースとを別送する場合でも,制御基板を収納ケースに収納した状態で安全に輸送できる。」と訂正する。
・訂正事項19
特許明細書の段落【0009】の
「本発明のスロットマシンは,前記第2の封止部は,メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と,店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と,からなり,
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は,一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ,他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられていることが好ましい。」を,請求項2の訂正に伴い,
「本発明のスロットマシンは,前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,
前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており,
前記第2の封止部は,メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と,店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と,からなり,
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は,一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ,他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられていることが好ましい。」と訂正する。
・訂正事項20
特許明細書の段落【0010】の
「本発明のスロットマシンは,前記収納ケースは,上部ケースと下部ケースとからなり,
前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから外方に張り出す封止片からなり,
前記第1の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記下部ケースから外方に張り出す封止片が位置するように構成されていることが好ましい。」を,請求項3の訂正に伴い,
「本発明のスロットマシンは,前記収納ケースは,上部ケースと下部ケースとからなり,
前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり,
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており,
前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており,前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており,
前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され,
前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え,
前記取付部材と別体の前記固定部は,第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固定手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され,
前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は,前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われることが好ましい。」と訂正する。


2.訂正の適否に対する判断
上記各訂正事項について検討する。
(1)訂正事項1
訂正事項1は,「開放可能な収納ケース」を「開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケース」と限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0030】の「収納ケース50は,平面視で横長矩形状に形成される制御基板40よりも若干大寸に形成され,」との記載によれば「開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケース」は特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項1は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は,「本体」を「箱状の本体」と限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0022】の「スロットマシン1の筐体は,前面が開口する箱状の本体部1aと,…からなり」との記載によれば「箱状の本体」は特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項2は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は,「第1の封止部」が設けられている位置を「収納ケースの一端側」から「収納ケースの短寸の一端側」と限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0037】の「側板51c,51c’それぞれにおける係止片66,66間には,特に図3及び図5に示されるように,ワンウェイネジ61の頭部を収容可能な凹部67及びネジ部を挿通可能とする貫通孔68が形成された封止片69が,収納ケース50の閉塞時において,各封止片63の上方に位置するように設けられている。」との記載,及び図3?5によれば,「第1の封止部」が「収納ケースの短寸の一端側」に設けられることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項3は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は,「係止部」が設けられている位置を「収納ケースの他端側」から「収納ケースの短寸の他端側」と限定するとともに,「係止部」が「離間して少なくとも二つ設けられ」たものであることを限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0033】の「下部ケース52における短寸の側板52c,52c’における長手方向両端には,上面に開口57が形成された凸部材56,56’がそれぞれ外向きに突設されている。図3中左側の凸部材56の外側面には,後述する本体部1aの取付部材に対して係止可能な係止ピン59が図中上下方向に向けてそれぞれ突設されている。」との記載,及び図3?5によれば,「係止部」が「収納ケースの短寸の他端側」「離間して少なくとも二つ設けられ」ることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項4は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(5)訂正事項5
訂正事項5は,「前記係止部」,「前記第1の封止部」及び「前記取付部材」を,「前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部」,「前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部」及び「前記本体に設けられた取付部材」と限定するものであるとともに,
「前記収納ケース」の「前記本体への取付け時」において,「第1の封止部」と「前記本体に設けられた固定部」とが「当接させた状態で」固着されることを限定したものである。
そして,訂正事項4及び3に示したとおり,「前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部」及び「前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部」は特許明細書に記載されていると認められ,
「前記本体に設けられた取付部材」は,訂正前の請求項1に記載されている。
さらに,特許明細書の段落【0049】の「このように背面板74に固着された取付部材75,76を介して収納ケース50を固着するには,図6に示されるように,まず上下の係止ピン59を切欠溝77内に前方から差し込んだ後,この係止ピン59を中心に収納ケース50における図中右側を回動させるようにして取付部材75に押し込む。すると係止片66の係止爪66aが係合穴79に弾性係合され,収納ケース50が取付部材75,76により取付け状態で保持される。」及び段落【0050】の「この状態において,特に図8に示されるように,取付部材76の各固定片81の上面と各封止片63の下面とが当接され,互いのネジ孔62とネジ孔80とが合致された状態となるため,図6に示されるように,本体部1aの前方より,収納ケース50の右側の所定の封止片69(ここではワンウェイネジ61を挿通しなかった保持片65に対応する封止片)の上方よりワンウェイネジ61を貫通孔68に挿通し,ネジ孔62を介してネジ孔80に螺入する。」との記載によれば,「当接させた状態で」固着されることは特許明細書に記載されていると認められる。
よって,訂正事項5は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(6)訂正事項6
訂正事項6は,「前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,」及び「前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており,」を追加して,スロットマシンの構成を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0022】の「スロットマシン1の筐体は,前面が開口する箱状の本体部1aと,本体部1aの側端に回動自在に枢支された前面パネル1bとからなり」との記載,及び図2?3,6によれば,「前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,」及び「前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており,」は特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項6は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(7)訂正事項7
訂正事項7は,「前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに,」を追加して,「箱状の本体」への「可変表示装置」及び「収納ケース」の取付状態を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0016】の「スロットマシン1の前面の所定箇所には表示窓2が設けられており,この表示窓2の内側には,可変表示装置3(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための左可変表示部5L,中可変表示部5C,右可変表示部5Rが,それぞれに上下3段に図柄を可変表示可能に構成されている。」との記載,段落【0046】の「取付部材75は,図7(a)に示されるように,収納ケース50の係止ピン59を挿通可能な略L字状の切欠溝77が前端部に形成された取付片75aを有するとともに,その基板75bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。」との記載,段落【0047】の「取付部材76は,図7(b)に示されるように,収納ケース50の係止片66の係止爪66aが係合可能な係合穴79が上下に形成された上下方向を向く取付片76aを有するとともに,その基板76bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。また,基板76bには,図7(b)及び図8に示されるように,収納ケース50の取付け時において,各封止片63のネジ孔62と合致するネジ孔80が設けられた略L字状の固定片81が形成されて複数形成されている。」との記載,上記の段落【0049】?【0050】の記載,及び図1?2,7(a)(b)によれば,「可変表示装置」が「箱状の本体」に「収容され」ていること及び「収納ケース」が「前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられる」ことは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項7は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(8)訂正事項8
訂正事項8は,「前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,」を追加して,「収納ケース」の固着状態を限定したものである。
そして,特許明細書の段落【0040】の「ここで,本実施例においては,メーカーからの出荷時において,全ての保持片65の貫通孔64にワンウェイネジ61を挿通し,かつ,前述したように制御基板40を下部ケース52に収納した状態で,例えば図3中の収納ケース50における左側最上部及び右側最下部の封止片69,63にワンウェイネジ61が後述するように螺入され,上部ケース51及び下部ケース52が開放不能に固着されているため,これらワンウェイネジ61が螺入された封止片69,63を切断して収納ケース50を開放した状態にあるものとして以下固着方法を説明する。」との記載,段落【0041】の「なお,図3中の収納ケース50における右側最上部及び左側最下部の保持片65の貫通孔64に挿通されたワンウェイネジ61は,例えばメーカーへの返品時等において使用されるため,本体部1aへの取付け固着時においてはこれ以外の貫通孔64に挿通されているワンウェイネジ61を使用することとしている。」との記載,上記の段落【0049】?【0050】の記載,及び図3,6によれば,訂正事項8により追加した「前記収納ケースは,?固着するように構成されており,」は,特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項8は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(9)訂正事項9
訂正事項9は,「第1の封止部」及び「第2の封止部」を「前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からな」ると限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0030】の「収納ケース50は,平面視で横長矩形状に形成される」との記載,段落【0034】の「上部ケース51と下部ケース52とを開放不能な状態で固着する固着手段及び,後述するように本体部1aに対して取り外し不能に取り付けるための取付手段を兼ねるワンウェイネジ61が,上下方向に貫通するように螺入されるネジ孔62が形成された複数(本実施例においては図中左右側にそれぞれ6つずつ)の封止片63と,ワンウェイネジ61が,上下方向に貫通するように挿通される貫通孔64が形成された複数(本実施例においては図中左右側にそれぞれ6つずつ)の保持片65とが,それぞれ側板52c,52c’より外方に張り出すように交互に突設されている。」との記載,段落【0037】の「側板51c,51c’それぞれにおける係止片66,66間には,特に図3及び図5に示されるように,ワンウェイネジ61の頭部を収容可能な凹部67及びネジ部を挿通可能とする貫通孔68が形成された封止片69が,収納ケース50の閉塞時において,各封止片63の上方に位置するように設けられている。」との記載及び図3によれば,「第1の封止部」及び「第2の封止部」が「前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からな」ることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項9は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(10)訂正事項10
訂正事項10は,「前記第1の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する前記封止片の下方には,前記下部ケースから外方に張り出す封止片が位置するように構成されている」を「前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており,」と限定するものである。
そして,上記の段落【0034】,【0037】,【0049】?【0050】の記載によれば,「第1の上部封止片」及び「第2の上部封止片」の「下方」に「第1の下部封止片」及び「第2の下部封止片」が「位置するように構成されて」いることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項10は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(11)訂正事項11
訂正事項11は,「前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており,前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており,」を追加して「収納ケース」と「第1の封止部」及び「第2の封止部」との関係を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0048】の「図3中の収納ケース50の左右側における最上部及び最下部の封止片69,63は,上部ケース51と下部ケース52との閉塞にのみ使用されるように設定されているため,固定片81は,収納ケース50の右側における最上部及び最下部の封止片69,63を除く中央よりの4つの封止片69,63に対応する分のみ設けられている。」との記載及び上記の段落【0049】?【0050】の記載によれば,「収納ケースの短寸の一端側」に「第1の封止部」及び「第2の封止部」が設けられ,「収納ケースの短寸の他端側」に「第2の封止部のみ」が設けられていることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項11は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(12)訂正事項12
訂正事項12は,「前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され,」を追加して「係止部」の構成を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0033】の「下部ケース52における短寸の側板52c,52c’における長手方向両端には,上面に開口57が形成された凸部材56,56’がそれぞれ外向きに突設されている。図3中左側の凸部材56の外側面には,後述する本体部1aの取付部材に対して係止可能な係止ピン59が図中上下方向に向けてそれぞれ突設されている。」との記載及び図3によれば,「係止部」が「前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され」ることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項12は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(13)訂正事項13
訂正事項13は,「前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え,」を追加して「取付部材」の構成を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0046】の「取付部材75は,図7(a)に示されるように,収納ケース50の係止ピン59を挿通可能な略L字状の切欠溝77が前端部に形成された取付片75aを有するとともに,その基板75bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。」との記載及び図7(a)によれば,「取付部材」が「第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され」かつ「前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え」ることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項13は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(14)訂正事項14
訂正事項14は,「前記取付部材と別体の前記固定部は,第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され,」を追加して「固定部」の構成を限定するものである。
そして,特許明細書の段落【0047】の「取付部材76は,図7(b)に示されるように,収納ケース50の係止片66の係止爪66aが係合可能な係合穴79が上下に形成された上下方向を向く取付片76aを有するとともに,その基板76bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。また,基板76bには,図7(b)及び図8に示されるように,収納ケース50の取付け時において,各封止片63のネジ孔62と合致するネジ孔80が設けられた略L字状の固定片81が形成されて複数形成されている。」との記載及び図7(b),8によれば,「固定部」が「取付部材と別体」でありかつ「第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され」ていることは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項14は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(15)訂正事項15
訂正事項15は,「前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され,」を追加して,「収納ケース」の固着状態を限定したものである。
そして,特許明細書の段落【0033】の「また,図3中右側の凸部材56’の外側面には,後述する本体部1aの取付部材に対して係脱自在な側面視略U字状をなす係合片60が図中右側に向けて突設されている。この係合片60は弾性変形可能に構成されているとともに,外面所定箇所には取付部材に係合する係合凸部60aが形成されている。」との記載,上記の段落【0040】?【0041】,【0049】?【0050】の記載によれば,訂正事項15により追加した「前記収納ケースは,?固着するように構成され,」は,特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項15は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(16)訂正事項16
訂正事項16は,「前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は,前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる」を追加して,「第1の固定手段」及び「第2の固定手段」と,固定された「収納ケース」との関係を限定するものである。
そして,上記の段落【0046】?【0047】の記載及び図6?7(b)によれば,「第1の固定手段」及び「第2の固定手段」が固定された「収納ケース」によって「覆われる」ことは特許明細書に記載されていると認められるから,
訂正事項16は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(17)訂正事項17
訂正事項17は,請求項3の引用を「請求項1または請求項2」から「請求項2」に限定するものであるから,
訂正事項17は,特許明細書に記載された事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(18)訂正事項18?20について
訂正事項18?20は,上記訂正事項1?17による特許請求の範囲の訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るものであるから,明りようでない記載の釈明を目的とするものであって,特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.小括
以上のとおりであるから,平成24年2月3日付けの訂正は,特許請求の範囲の減縮又は明りようでない記載の釈明を目的とし,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
したがって,上記訂正は,特許法134条の2第1項ただし書,及び同条5項において準用する同法126条3項,4項の規定に適合するので,当該訂正を認める。


第4.本件特許発明
上記のとおり訂正を認めるので,本件特許発明は,本件訂正により訂正された明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのもの(以下,それぞれ「本件特許発明1」,「本件特許発明2」,「本件特許発明3」という。)と認める。

(本件特許発明1)
「【請求項1】 表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が,開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって,
前記収納ケースの短寸の一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と,該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と,が並設され,更に前記収納ケースの短寸の他端側には,前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくも二つ設けられており,
前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっていることを特徴とするスロットマシン。」
(本件特許発明2)
「【請求項2】 前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,
前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており,
前記第2の封止部は,メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と,店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と,からなり,
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は,一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ,他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられている請求項1に記載のスロットマシン。」
(本件特許発明3)
「【請求項3】 前記収納ケースは,上部ケースと下部ケースとからなり,
前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり,
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており,
前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており,前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており,
前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され,
前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え,
前記取付部材と別体の前記固定部は,第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し,
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され,
前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は,前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる請求項2に記載のスロットマシン。」


第5.本件特許発明にかかる検討
1.無効理由1について(刊行物記載発明に基づく特許法29条2項)
(1)甲第1号証は,その記載内容からみて,回胴式遊技機に用いられる「主基板樹脂ケース」に対するセキュリティーを確保するため,回胴式遊技機に使用する「主基板ケース」自体の封印と遊技機筐体への固定を同時に行う封印方式について,日本電動式遊技機工業協同組合(以下,「日電協」という。)の組合員である遊技機メーカー各社が遵守すべき基本的必要条件を定め,その旨を組合員に対して日電協が通知しようとしたものと認められる。そして,無効理由3についての検討において詳述するように,遅くとも「平成11年5月12日(水)」までには組合員に配布されたものと認められ,本件特許出願日前に配布されたものといえる。

(2)特許法29条1項3号にいう「頒布された刊行物」とは,公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書,図画その他これに類する情報伝達媒体であって,頒布されたものを指すと解される(最高裁昭和55年7月4日第二小法廷判決・民集34巻4号570頁,同昭和61年7月17日第一小法廷判決・民集40巻5号961頁参照)ところ,甲第1号証は,上述の如く,遵守すべき事項を日電協がその構成員である組合員に通知するものであって,構成員たる組合員は「公衆」ということはできず,また,組合員が遵守すべき事項を組合員に通知することを「公開することを目的として」いるということはできない。そうすると,甲第1号証は,「公衆に対して」「公開することを目的として」複製されたものではなく,「頒布された刊行物」に該当するものとはいえない。

(3)以上のとおり,甲第1号証は特許法29条1項3号の「頒布された刊行物」に該当しないから,甲第1号証を主要な引用例として特許法29条2項により,本件特許発明1?3を無効とすることはできない。
したがって,無効理由1は理由がない。

2.無効理由2について(特許法29条の2)
(1)平成23年3月7日付け無効理由通知で引用した特願平11-345478号(特開2001-161891号公報)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「先願明細書等」という。)には以下の記載がある。
・記載事項ア
「本発明は,スロットマシン,パチンコ機等の遊技機に使用されている遊技機用の制御基板を収納するための遊技機用の基板ケースに関するものである。」(段落【0001】)
・記載事項イ
「<本実施の形態例における各部の構成>(遊技機に基板ケースを装着,封止した例の概観)図1は,遊技機に基板ケースを封止した例の概観を示す全体的斜視図である。図1では,遊技機100の前面扉103を開いた場合の簡略化した斜視図を示しており,内部に固定された基板ケース102が,遊技機100の筐体の基板ケース取付板206に取付けられている様子を示している。参照番号210は,以下に説明する本発明の封止部である。」(段落【0028】)
・記載事項ウ
「基板ケース102の基本的構成は,図3の断面からも判るように,基板ケース本体300と,その上側(図3では右側)に遊技機を制御するCPUやROM,RAM等々の電子部品を上面(図3では右側)に実装した主基板302を乗せ,部品の実装状態が外部(図3の右方向)から観測可能とし,更に主基板302を包むように主基板302の上側(図3では,更に右側)に,透明または半透明な樹脂をからなる基板ケースカバー301でカバーするように構成している。」(段落【0036】)
・記載事項エ
「(封止部)本実施の形態例における封止部210は,図2,図3から判るように,基板ケース102の上端部(図2では左側)に位置し,基板ケース102と一体となっており,基板ケース102の周縁から基板ケースと同じ平面方向で外側(本実施の形態例では上側)に向けて突出した部分が封止部である。」(段落【0043】)
・記載事項オ
「封止部は前述したように,(1)基板ケース102を遊技機の基板ケース取付板206(遊技機本体)へ取付けて封止する,基板ケース取付封止部204と(図2参照),(2)基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止する基板ケース一体化封止部(基板ケース封止部)(203:図2参照)からなる。」(段落【0044】)
・記載事項カ
「(基板ケースの封止)封止された基板ケース102を遊技機に取付け,封止するための補助部分の例の1つとして,本実施の形態例では,図2に示すように,基板ケース102の下側に突出した2つの突起部201がある。」(段落【0045】)
・記載事項キ
「(基板ケース取付封止の補助部)上述のようにして封止された基板ケース102を遊技機の基板ケース取付板206へ取付け,封止するための補助部部分の1つとして,上述の基板ケース102の下側に突起した突起部201がある。次に基板ケース102を基板ケース取付板206へ取り付けると,図3のようになる。」(段落【0047】)
・記載事項ク
「従って,基板ケース102の左側の2つのミミ突出部205を,基板ケース取付板206の切り込みに合せて「コ」形状部309の「コ」の間に入れ,更に基板ケース102の下側の突起部201を基板ケース取付板206の下部の「L」形の部分にある係合穴に合せ,差し込むように基板ケース102をスライド挿入することにより,図2に示すように,基板ケース102の左側にある2つのミミ突出部205は,基板ケース取付板206の「コ」形状部309に挟まれ左方向に平行移動が不可能であるように固定された状態となる。また,基板ケース102は,下側の「L」形の補助部により,下方向に平行移動が不可能であるように固定された状態となる。同時に,基板ケース102は,左側の「コ」形状部309に挟まれ,更に突起部201が,係合穴202に挿入されているので,基板ケース102は,遊技機100の基板ケース取付板206から離すことが阻止され,不可能となる。」(段落【0052】)
・記載事項ケ
「そこで,本実施の形態例として,上述のように基板ケース102が,基板ケース取付板206の「コ」形状部309に挟まれ収容された状態で,基板ケース102を上方向にスライド(平行移動)できないようにし,又突起部201が係合穴202に挿入・係合され右方向にも平行移動できない状態で,基板ケース102の上の基板ケース取付封止部204のいずれかに後述するセフティロックピン500を挿入することにより基板ケースと基板ケース取付板206の間を引っかけて平行移動を阻止して封止し,また挿入したセフティロックピン500を取外して封止を解除すには,セフティロックピン又はその挿入部を破壊しなければならなく,封止を解除・開封した解除履歴を破壊の痕跡として残す構成としている。」(段落【0054】)
・記載事項コ
「本実施の形態例では,更なる基板ケース取付封止の補助部として,図2,図3,図6の参照番号303で示すフック係合部を設けている。フック係合部303は,封止部210を基板ケース102の上にして見た時に,図示していないが,封止部210の両端に位置し,基板ケース102の裏側で,「コ」の字状に下へ伸びたフック状をしており,基板ケース102を所定の位置から,基板ケース取付板309の表面を上から下にスライドすると,フック係合部303が,基板ケース取付板309に引っかかる(フックする)構成になっている。」(段落【0057】)
・記載事項サ
「従って,基板ケース102の封止部210の位置に設けたフック係合部303により,基板ケース102は,基板ケース取付板206に係合させ,密着させることができ,基板ケース102は手前側(基板ケース取付板206から離れる方向)にガタついて動かないように,基板ケース取付板206へ固定できる。このようにすることにより,基板ケース102は,放熱板のネジ208により締め付けなくても,各部の係合(突起部201,ミミ突出部205,フック係合部303)により,基板ケース取付板206へしっかり密着固定できる。」(段落【0058】)
・記載事項シ
「しかし,本発明の基板ケース102の基板ケース取付板206への取付構造に,本フック係合部303を更に基板ケース取付封止の補助部として設けることにより,基板ケース102をフック係合部303により基板ケース取付板206へ密着固定し,セフティロックピン500を基板ケース取付封止部204の挿通部に挿入し,基板ケース102を基板ケース取付板206へ一旦固定してしまえば,セフティロックピン500を固定しているリブ701を破壊(痕跡が履歴として残る)しない限り,基板ケース102を基板ケース取付板206から取外すことができなくなる。(段落【0060】)
・記載事項ス
「更に,後述するようにセフティロックネジ400によって封止する位置を本実施の形態例では2箇所(図2,図6参照,詳細は後述する)設けており,セフティロックネジ400をネジ止することにより,基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化した基板ケース102を,基板ケース一体化封止部203(位置的には図2参照)で封止する。(段落【0067】)
・記載事項セ
「なお,基板ケース102の封止を解除して主基板302を取り出すには,セフティロックネジ又はその基板ケース封止部を破壊しなければならなく,封止を解除・開封した解除履歴を破壊の痕跡として残す構成としている。」(段落【0068】)
・記載事項ソ
「(封止部のリブ部分)図7に簡略的にリブ700と,リブ701が示してある。前述したように,各挿通部は周辺の枠部分と離れて構成されており,各挿通部を囲む部分と,その挿通部を周辺の枠部分に橋渡しするようにリブがも設けられている。基板ケース102の一体化封止を行なう基板ケース一体化封止部203に対するリブは,リブ700であり,基板ケースを遊技機100に取付け封止する基板ケース取付封止部204に対するリブは,リブ701で示してある。」(段落【0082】)
・記載事項タ
「(基板ケース一体化封止,封印)一般に,ホール(遊技場,パーラー等ともいう)に遊技機を設置した業者とは異なる基板取付認定書を取得している専門の遊技機取扱主任者が,CPUやROM等の電子部品を収納した遊技機の中枢となる制御部の基板ケース102を単体でホールに持込み,遊技機に装着した後,必要な検査を行い,封止(封印)をし,ホールへの引き渡しを行なっている。」(段落【0085】)
・記載事項チ
「ここで,基板ケース102の封止は,監督官庁等により指定された団体組織により行われる。本実施の形態例における基板ケース102の封止(上述のように,基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止すること)は,本実施の形態例では,基板ケース102を遊技機100に取り付ける状態での,基板ケース102の周縁の上端に位置する封止部にある基板ケース一体化封止部203によって行われる。これは,見易い所ならばどこでもよいことはいうまでもない。」(段落【0086】)
・記載事項ツ
「基板ケース一体化封止部203の封止,封印は,(1)基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203の左端側の基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400でネジ締めすることにより封止することと,(2)基板封印シールによる封印を合せて行なうことにより封印する。尚,基板ケース一体化封止部203の右端側の基板ケース一体化封止部203は,最初の時点での封止には使用しない。」(段落【0087】)
・記載事項テ
「(基板ケースの遊技機への取付封止,封印)遊技場(ホール)に遊技機を設置する際の基板ケース102の取付は,遊技機取扱主任者が立ち会い,遊技機100に基板ケース102を取付け封止し,封印をする。遊技機100への基板ケース102の取付け封止は,基板ケース102の一体化の封印と同じ基板ケース102の周縁の上端に位置する封止部にある基板ケース取付封止部204(4箇所の中の1つ)によって封止する。即ち,最初の封止は(1)基板ケース取付封止部204の最左端の1箇所にセフティロックピン500を嵌め込み,基板ケース102を基板ケース取付板206に固定し,封止することと,(2)基板ケース102と遊技機とを台封印シールにより封印する。尚,残りの基板ケース取付封止部204のピン挿通部は,この時点での封印には使用しない。」(段落【0088】)
・記載事項ト
「[遊技機から基板ケース取外,封止,封印を解除]まず,基板ケース102を遊技機100から取り外す。その手順は,(1)遊技機の台封印シールを剥がした後,(2)基板ケース102を遊技機100に取り付けて基板ケース取付封止部204で封印してあるセフティロックピン500をドライバー等により回転させ,セフティロックピン500のピン挿通部を固定している2本のリブ部701を破壊し(図7参照),抜き取り紐503を引いて破壊した部分を取り出し,基板ケース102を単体として基板ケース取付板206,即ち遊技機100から取り外する。」(段落【0090】)
・記載事項ナ
「[一体の基板ケースの封止,封印を解除]次に,基板ケース102の封止を解除するには,(1)基板ケースの封印シールを剥がした後に,(2)単体になった基板ケース102のセーフティーロックネジ400のネジ螺合部を固定している2本のリブ部700にドライバー等を挿入させて破壊する(図7参照)ことにより,基板ケース102の封止を解除し,一体化した基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を分離する。従って,基板ケース102を開けてCPUやROM等の実装された電子部品制御基板である主基板302を取り出して容易に検査できる。(段落【0091】)
・記載事項ニ
「(基板ケースの回収)遊技場(ホール)側が遊技機を交換するときは,前述の基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203の右端側の基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400を締付けし,基板ケース102を単体でメーカが回収するようにする。これにより,基板ケース102の回収経路の途中で,遊技機のゲーム性等を左右する重要な制御を行なうCPUやROM等の電子部品が実装されている主基板302の内容情報を外部の不正業者に漏らすことなくメーカの管理下のもと回収し,処分することが可能となり不正の防止を行うことができる。また,基板ケース102のみを封止したまま単体で回収できるので作業工数も省力化できる。」(段落【0096】)
・記載事項ヌ
図1は基板ケース102を遊技機100の筐体の基板ケース取付板206に取付けた状態を示している(段落【0028】)が,当該状態で,前面側から見て,基板ケース102を横長矩形状とし,基板ケース102の長寸の一端側には封止部210が設けられ,基板ケース102の長寸の他端側には突起部201が設けられることが図示されている。
・記載事項ネ
図2には,長寸の一端側の封止部210として,4つの基板ケース取付封止部204を挟んで基板ケース一体化封止部を並設すること,長寸の他端側の突起部201は離間して2つ設けられることが図示されている。

記載事項アには「スロットマシン,パチンコ機等の遊技機」とされているので,「遊技機」として「スロットマシン」を採用して整理すると,上記各記載事項及び図面によれば,先願明細書等には以下の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「スロットマシンを制御するCPUを実装した主基板302が,開放可能な横長矩形状の基板ケース102により収納された状態で筐体に取り付けられたスロットマシンであって,
基板ケース102の長寸の一端側には,(1)基板ケース102をスロットマシンの筐体に設けられた基板ケース取付板206へ取付けて封止する基板ケース取付封止部204及びフック係合部303と,(2)基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止する基板ケース一体化封止部203とを並設し,基板ケース102の長寸の他端側には,筐体に設けられた基板ケース取付板206の係合穴202に挿入される突起部201が離間して二つ設けられており,短寸の一端側には2つのミミ突出部205を設け,
筐体への取付け時に,ミミ突出部205を基板ケース取付板206の「コ」形状部309に挟んだ状態で突起部201を係合穴202に挿入するとともに,フック係合部303を基板ケース取付板206に引っかけた状態で基板ケース取付封止部204のいずれかにセフティロックピン500を挿入することで基板ケース102は筐体に固定され,
監督官庁等により指定された団体組織により基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400でネジ締めすることにより封止され,ホール側が遊技機を交換するときは,前述の基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400を締付けし,基板ケース102を単体でメーカが回収するようにし,
ホールにおいて基板ケース102を装着した後,基板ケース102を取り外し開ける際には,基板ケース取付封止部204のリブ部701が破壊されるとともに,セフティロックネジ400による基板ケース一体化封止部203の封止後に基板ケース102を開ける際には,基板ケース一体化封止部203のリブ700が破壊されるようになっている,
スロットマシン。」

(2)対比・判断
先願発明と本件特許発明1を対比する。
先願発明の「スロットマシンを制御するCPU」は本件特許発明の「遊技制御を司る制御装置」に相当し,以下同様に,「主基板302」は「制御基板」に,「基板ケース102」は「収納ケース」に,「筐体」は「箱状の本体」に,「基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止する基板ケース一体化封止部203」は「収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部」に,「基板ケース取付板206」は「取付部材」に,「係合穴202に挿入される突起部201」は「係脱可能な係止部」に,「セフティロックネジ400」は「(第2の封止部を)固着手段(により固着する)」に,「ホール」は「店舗」に,それぞれ相当する。
そして,先願発明について以下のことがいえる。
(2-1)「スロットマシンを制御するCPU」について
本件特許発明1の「表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する」という制御は,スロットマシンであればそのCPUが当然実行するものであり,スロットマシンに関する先願発明のCPUも同様の制御を実行することは自明である。
そうすると,先願発明は,本件特許発明1の「表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置」に相当する構成を実質的に具備している。
(2-2)「横長矩形状の基板ケース102」について
先願発明において,「遊技機100の前面扉103を開いた場合」に遊技機100の筐体に取付けた基板ケース102を前面側から見て,基板ケース102を「横長矩形状」と認定した(記載事項イ,ヌ,図1参照)。一方,本件特許発明1においては「平面視で横長矩形状」とされているが,「平面視」については本件明細書の段落【0030】に「まず図3,図4に示されるように,収納ケース50は,平面視で横長矩形状に形成される制御基板40よりも若干大寸に形成され,」と記載されているだけで,技術的にどのような概念を示すか不明確であるが,本件明細書の図2を参酌すると,スロットマシンの本体に取り付けた収納ケースを前面側から見ると「横長矩形状」となっているものと認められ,先願発明とこの点で差異はない。
(2-3)「基板ケース102の長寸の一端側には,(1)基板ケース102をスロットマシンの筐体に設けられた基板ケース取付板206へ取付けて封止する基板ケース取付封止部204及びフック係合部303と,・・・短寸の一端側には2つのミミ突出部205を設け,」及び「筐体への取付け時に,ミミ突出部205を基板ケース取付板206の「コ」形状部309に挟んだ状態で突起部201を係合穴202に挿入するとともにフック係合部303を基板ケース取付板206に引っかけた状態で基板ケース取付封止部204のいずれかにセフティロックピン500を挿入することで基板ケース102は筐体に固定され,」について
先願明細書等には,「セフティロックピン500」が基板ケース102と基板ケース取付板206との間を引っかけて平行移動を阻止する旨の記載はある(記載事項ケ参照)が,「セフティロックピン500」が基板ケース102(基板ケース本体300と基板ケースカバー301)を封印する旨の記載は無く,図6をみると「セフティロックピン500」のみによっては封印は行われないものと認められる。しかしながら,「セフティロックピン500」が挿入され基板ケース102の平行移動が阻止されている状態では,「ミミ突出部205」が「コ」形状部309に挟まれることにより,基板ケース102の開放が阻止され封印が実行されるものと認められるから,基板ケース102の長寸の一端に設けられた「基板ケース取付封止部204」及び基板ケース102の短寸の一端に設けられた「ミミ突出部205」は,あわせて,「ケースを開放不能に固着する手段」を構成している。また,「フック係合部303」を基板ケース取付板206に引っかけた状態で「基板ケース取付封止部204」のいずれかに「セフティロックピン500」を挿入すると,「セフティロックピン500」によって基板ケース102の平行移動が阻止されて「フック係合部303」と基板ケース取付板206の係合状態(引っかけた状態)が維持されるものであるから,「基板ケース取付封止部204」及び「フック係合部303」は,あわせて,「本体に対して取り外し不能に取り付ける手段」を構成している。そして,「ケースを開放不能に固着する手段」及び「本体に対して取り外し不能に取り付ける手段」は,あわせて,どこに設けられているかは別として,本件特許発明1の「第1の封止部」に相当する。
また,先願発明が「基板ケース102は,放熱板のネジ208により締め付けなくても,各部の係合(突起部201,ミミ突出部205,フック係合部303)により,基板ケース取付板206へしっかり密着固定できる」(記載事項サ?シ参照)ものである点と,図3,6の記載から,「筐体への取付け時に,ミミ突出部205を基板ケース取付板206の「コ」形状部309に挟んだ状態で突起部201を係合穴202に挿入するとともにフック係合部303を基板ケース取付板206に引っかけた状態」において,「ケースを開放不能に固着する手段」及び「本体に対して取り外し不能に取り付ける手段」は「基板ケース取付板206」と当接していると認められる。
よって,先願発明と本件特許発明1は“前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着”する点で共通している。
(2-4)「(2)基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止する基板ケース一体化封止部203」及び「監督官庁等により指定された団体組織により基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400でネジ締めすることにより封止され,ホール側が遊技機を交換するときは,前述の基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400を締付けし,基板ケース102を単体でメーカが回収するようにし,」について
「監督官庁等により指定された団体組織」によって封止された基板ケース102は,ホールにおいてスロットマシンを設置する際にスロットマシンに取付けられるが,ホールへの輸送はメーカーから行われるか先願明細書には明記されていない。しかしながら,スロットマシンにおいて最も重要な部品である基板ケース102がスロットマシンを製作販売したメーカーからホールに輸送されるものと解することは自然である。また,「メーカが回収する」ということは「店舗からメーカーへ輸送」されることであることは自明である。
そうすると,先願発明と本件特許発明1は,「該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部」及び「前記収納ケースは,・・・メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段」により固着するように構成されている点で共通している。
(2-5)「ホールにおいて基板ケース102を装着した後,基板ケース102を取り外し開ける際には,基板ケース取付封止部204のリブ部701が破壊されるとともに,セフティロックネジ400による基板ケース一体化封止部203の封止後に基板ケース102を開ける際には,基板ケース一体化封止部203のリブ700が破壊されるようになっている」について
「リブ部701が破壊される」ということは「基板ケース取付封止部204」が破壊されるということができ,「リブ700が破壊される」ということは「基板ケース一体化封止部203」が破壊されるということができる。
そうすると,先願発明と本件特許発明1は,「固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっている」点で共通している。

よって,本件特許発明1と先願発明は,
「表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が,開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって,
前記収納ケースには収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部を設け,前記収納ケースの一側端には該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部を設け,前記収納ケースの他端側には前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して二つ設けられており,
前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっている,
スロットマシン。」の点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
第1の封止部が,本件特許発明1では,短寸の一端側に設けられた「収納ケースを開放不能に固着するとともに本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる」ものであるのに対し,先願発明では,長寸の一端側に設けられた「ケースを開放不能に固着する手段」と,長寸の一端側及び短寸の一端側に設けられた「ケースを開放不能に固着する手段」とから構成される点。

上記相違点について検討すると,先願発明では,特に「ケースを開放不能に固着する手段」が長寸の一端に設けられた手段(「基板ケース取付封止部204」)と短寸の一端に設けられた手段(「ミミ突出部205」)から構成されているのに対し,本件特許発明1では「ケースを開放不能に固着する手段」は一つの端部に設けられた点で相違しており,この相違点について実質的な相違点でないとすることはできない。

(3)小括
以上のとおり,本件特許発明1及びこれを引用する構成の本件特許発明2?3は,本件特許出願の日前の特許出願であって,当該特許出願後に出願公開されたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と上記相違点で相違し,特許法29条の2の規定により特許を受けることができないものではなく,その特許は同法123条1項2号により無効とすべきものとすることはできない。
したがって,無効理由2は理由がない。

3.無効理由3について(公知発明に基づく特許法29条2項)
(1)平成23年3月7日付け無効理由通知で引用した引用例1(甲第1号証)には以下の事項が記載されている。なお,以下における「/」は原文における改行を表す。
・記載事項a
「日電協では,今般技術委員会において「主基板セフティーロック方式」についての考えを纏めたので,以後本方式を導入し主基板に対する不正工作を排除することとしたので遺漏のないよう実施願いたい。」(1頁9?11行)
・記載事項b
「(4) 「主基板セフティーロック」の取付状態が一見して解るような取付位置と構造設計であること。」(2頁8?9行)
・記載事項c
「2 『回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領』/「主基板セフティーロック方式」は別添の『回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領』を基本とし,各社遊技機構造に合わせた方法により導入すること。」(2頁13?16行)
・記載事項d
「3 構造設計書及び取扱説明書の提出/(1) 各社ごとに設計した「主基板セフティーロック方式」の構造設計図と取扱説明書を理事長宛提出し事前に承認を得ること。(中略)(4) 提出期限:平成11年5月12日(水)」(3頁1?11行)
・記載事項e
「5 行政当局への手続き/組合全社の設計書及び取扱説明書が提出された時点で,当局に対し日電協「主基板セフティーロック方式」の説明を実施承認を得るとともに各公安委員会に対する周知徹底を依頼する。」(3頁15?18行)
・記載事項f
「6 実施期限/平成11年9月30日までに,全組合員全ての機種について完了すること。従って10月1日以降の保通協に型式試験申請する機種については,「主基板セフティーロック方式」が全て採用されていること。」(3頁19?22行)
・記載事項g
「回胴式遊技機に使用する「主基板樹脂ケース」自体の封印と,遊技機筐体に固定する方法を同時に行う封印方式について説明する。/なお,封印については本文記載の基本条件を遵守し,各社遊技機の構造に最も適した方法を考案し実施すること。(別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」1頁3?6行)
・記載事項h
「1 「主基板樹脂ケース」封印用「セフティーロック・ヘッド」6個の使い方/○1番目(A)の封印は(樹脂ケースの封印用)………組合での「ケース封印」時に使用する。/○2番目(B)の封印は(樹脂ケースの封印と筐体への固定)………最初に「主基板樹脂ケース」を筐体に取付る時使用。/○3番目(C)の封印は( 〃 )………1回目の「立入検査時」に使用する。/○4番目(D)の封印は( 〃 )………2回目の「立入検査時」に使用する。/○5番目(E)の封印は( 〃 )………3回目の「立入検査時」に使用する。/○6番目(F)の封印は(樹脂ケースの封印用)………3回目の立入検査が終了した場合の中古基板・修理基板の「回収時」に使用する。」(別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」1頁7?13行)
・記載事項i
「7 完成期日の厳守(平成11年9月30日)/各メーカーは,求められる基本的必要条件を遵守し自社遊技機構造に最も適合した方法を考案し確実な「セフティーロック方式」が所定期日まで完成するよう努力すること。」(別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」2頁3?5行)
・記載事項j
「注:○1 本方式は,組合作業場で「主基板樹脂ケース」にセキュリティーロムを取付けた後で,一つ目(A)の「セフティーロック」を行なう。/○2 メーカーでは,「主基板樹脂ケース」が「セフティーロック」された状態で,開封せず二つ目(B)の「セフティーロック」を使って遊技機の筐体に固定する。/○3 本方式はメーカーが輸送途上,ホールでの設置時においても「主基板樹脂ケース」を開封する必要がない。(中略)○5 中古基板,修理基板を遊技機から離して回収する場合の樹脂ケースの「セフティーロック」用として6個目を設けた。」(別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」の3頁の「日電協「主基板セフティーロック方式」基本構造図」(以下,「基本構造図」という。)の右下部(90度右回転させて図を横長にした状態とした。「基本構造図」については以下同様。))
・記載事項k
「基本構造図」の左上部には,横長矩形状の「主基板樹脂ケース」の短寸の一端側に封印(A)?(F)を設けることが図示され,短寸の他端側に封印(A)?(F)を設けることが図示されている。
・記載事項l
「基本構造図」の左下部には,「主基板」を固定した「樹脂ケース本体」の上に「樹脂ケース上蓋」を重ねて「セフティーロック」し,「樹脂ケース本体」及び「樹脂ケース上蓋」で構成される「主基板樹脂ケース」に「主基板」を収納することが図示されている。
・記載事項m
「基本構造図」の右上部には,1番目の封印の(A’)において「樹脂ケース本体」と「樹脂ケース上蓋」が「戻り止めネジ」で「セフティーロック」されている状態,2番目の封印(B’)において「樹脂ケース上蓋」と遊技機筐体に固定された「セフティーロック兼用固定金具」とが「樹脂ケース本体」を挟んで「戻り止めネジ」で「セフティーロック」されている状態が図示されている。
・記載事項n
別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」の4頁の「「セフティーロック方法」例」の上部の図面には,樹脂ケース上蓋において「セフティーロックヘッド部」に隣接する「×」が図示されてた部分が「開封時切断箇所」であることが図示され,樹脂ケース本体において「セフティーロックヘッド部」に隣接する破線で「×」が図示された部分が「主基板樹脂ケースを取外すとき封印をカットする箇所」であることが図示されている。また,同図及び5頁上部の図面には,封印(A)及び(F)においては「樹脂ケース本体」と「樹脂ケース上蓋」とが「戻り止めネジ」で「セフティーロック」され得ること,封印(B)?(E)においては「樹脂ケース上蓋」と遊技機筐体に固定された「セフティーロック兼用固定金具」とが「樹脂ケース本体」を挟んで「戻り止めネジ」で「セフティーロック」され得ることが図示されている。

(2)引用例1(甲第1号証)に記載された発明
上記各記載事項,図面によれば,引用例1(甲第1号証)には以下の発明が記載されている。
「主基板が,セフティーロックされた樹脂ケース本体と樹脂ケース上蓋とからなる横長矩形状の主基板樹脂ケースにより収納された状態で筐体に設けられた回胴式遊技機であって,
主基板樹脂ケースの短寸の両端には,樹脂ケース上蓋と遊技機筐体に固定されたセフティーロック兼用固定金具とが樹脂ケース本体を挟んで戻り止めネジでセフティーロックされる封印(B)?(E)と,樹脂ケース本体と樹脂ケース上蓋とが戻り止めネジでセフティーロックされる封印(A),(F)とが並設され,
主基板樹脂ケースは,取付け時に封印(B)?(E)と遊技機筐体に固定されたセフティーロック兼用固定金具とを戻り止めネジでセフティーロックし,組合作業場で「主基板樹脂ケース」にセキュリティーロムを取付けた後封印(A)を戻り止めネジでセフティーロックし,中古基板・修理基板を遊技機から離して回収する場合に封印(F)を戻り止めネジでセフティーロックするように構成されており,
戻り止めネジによる封印(B)?(E)とセフティーロック兼用固定金具とのセフティーロック後における,主基板樹脂ケースの開封時には,セフティーロックされた封印(B)?(E)の切断箇所を切断し,及び主基板樹脂ケースの取外し時にはセフティーロックされた封印(B)?(E)の切断箇所を切断するとともにカットする箇所をカットし,戻り止めネジによる封印(A),(F)のセフティーロック後における,主基板樹脂ケースの開封時には,セフティーロックされた封印(A),(F)の切断箇所を切断する回胴式遊技機。」

(3)引用例1(甲第1号証)記載の発明の公知性
(3-1)文書の成立,配布
(ア)引用例1(甲第1号証)は,その記載内容からみて,回胴式遊技機に用いられる「主基板樹脂ケース」に対するセキュリティーを確保するため,回胴式遊技機に使用する「主基板ケース」自体の封印と遊技機筐体への固定を同時に行う封印方式について,日電協の組合員である遊技機メーカー各社が遵守すべき基本的必要条件を定め,その旨を組合員に対して日電協が通知しようとしたものと認められる。

(イ)引用例2(甲第12号証)における照会事項1(「貴組合発行の本文書は,その内容に照らし,回胴式遊技機に対する不正工作対策として,貴組合の技術委員会が取り纏めた「主基板セフティーロック方式」の内容を貴組合の全組合員に周知し,かつ,平成11年5月12日までに,同方式に基づく構造設計図と取扱説明書を貴組合理事長宛て提出すること,平成11年9月30日までに,全組合員が,全機種において同方式の導入を完了すること,同年10月1日以降に組合員が財団法人保安電子通信技術協会(保通協)に型式試験申請する機種については,全て同方式を採用することなどを求める旨通知されたものと理解されますが,それでよろしいでしょうか。」)に対し,日電協は引用例3(甲第13号証)の回答書において「ご照会の文書の趣旨及び目的は,ご照会の通りです。」と回答している。更に,引用例2(甲第12号証)における照会事項2(「上記の目的に照らし,本文書は,平成11年4月19日,貴組合の全組合員宛に頒布されたものと理解されますが,正しいでしょうか。」)に対し,日電協は同回答書において「ご照会の文書に関し,当時の配布記録(文書発議簿)は既に処分していて残っておりませんが,本文書には,宛先として本組合員全員が,そして文書番号及び日付が記載されていることから,その当時当組合から全組合員に配布したものと思われます。」と回答している。

(ウ)上記記載事項c,iによれば,各メーカーは引用例1(甲第1号証)によって「基本的必要条件を遵守し自社遊技機構造に最も適合した方法を考案」することを求められたものである。
一方,当時組合員であった各メーカーは以下の特許出願を行っている。なお,下記のメーカーが平成11年において組合員であったことは,引用例4(甲第14号証)の75頁の一覧表より認めることができる。
特願平11-148912号(引用例5参照)(高砂電器産業株式会社,平成11年5月27日出願)
段落【0017】,【0026】には,ビス止め固定部39をワンウエイビス40にて取付金具23に連結し,基板ボックス13を筐体背面板2aに固定すること,及び基板ボックス13を取り外すには脆弱連結部38を切断する必要があることが記載されている。また,段落【0029】には,取り外された基板ボックスは底ケース21と蓋ケース22とが2箇所の結合部56,56で分離不能に結合して封印されており,ホールから修理メーカーに移送する際にセキュリティーが確保されることが記載されている。更に,段落【0030】には,検査などのために基板ケースを取り付けたままその蓋ケース22を開けるときは,「1」の2箇所の結合部56,56に対し,それぞれその周囲の3つの脆弱連結部64a,64b,64cをニッパ等を用いて切断すること,検査後に蓋ケース22を閉じるときには,「2」の2箇所の結合部56,56を用いて蓋ケース22と底ケース21を分離不能に結合すること,このような蓋ケース22の開閉は3回行うことができることが記載されている。
・特願平11-168270号(引用例6参照)(サミー株式会社,平成11年6月15日出願)
段落【0042】には,ケース本体30に基板などを収納した状態で,ヒンジ部80で接続されたケースカバー40を閉じ,接続部110の接続孔113から被接続部90の接続孔91までネジをねじ込み,ケース本体30にケースカバー40を固定すると,ケースカバー40を開放するためには一対の破断部111を破断する方法のみが可能であること,ケースカバー40を開放した場合は,更に1回に限り,用いていない2つの接続部110と被接続部90を用いて,再び固定することが記載されている。また,段落【0043】?【0046】には,基盤ケース10が一体化した状態で遊技機に固定させた左右ベース20の間に位置させ,いずれかの取付部100とそれに対応する固定部70にネジをねじ込むと,ケース本体30はケースカバー40にはまりこんだ状態となって固着されること,ケースカバー40を開放するためには固定に用いている取付部100の破断部101を破断することが必要であること,ケースカバー40を一端開放した後でも固定に用いていない取付部100と固定部70とを用いて再び固定することができることが記載されている。
特願平11-319273号(引用例7参照)(アルゼ株式会社,平成11年8月27日優先日)
段落【0034】には,ケース本体3と上蓋4から成る遊技機用基板ケース1内にゲーム用電子回路基板2を収容し,上蓋4とケース本体3との間を左右の第1封印部7B,7Bで封印する作業は,ゲーム用電子回路基板2を取り扱う所定の組合(図7等には「日電協封印」との記載がある。)が行うことが記載されている。また,段落【0037】?【0040】には,メーカに輸送された遊技機用基板ケース1は,その左側部を挟持する固定金具5およびその右側部を挟持する固定金具6を介してスロットマシンSに固定された後,第2封印部7Dの先端に突設された封印ヘッド7Hを固定金具5の受け部5Dに設けた連結穴5Eに挿入し,封印ヘッド7Hを連結穴5Eから引抜き不能とすることにより封印すること,何れか一方の第2封印部7Dを切断または破断しない限り,ケース本体3から上蓋4を開けることは不可能となることが記載されている。更に,【0041】?【0044】には,警察官の立入検査に際しては,第2封印部7Dを引き千切り部7Lから封印ヘッド7Hを残して引き千切るとともに,上蓋4とケース本体3とを連結している左右の第1封印部7B,7Bをそれぞれ引き千切り部7Lから封印ヘッド7Hを残して引き千切り,上蓋4はケース本体3から取り外し可能となること,検査の結果異常がなければ,第2封印部7E,7Eを使用して上蓋4と固定金具5の受け部5Dとの間,および上蓋4と固定金具6の受け部6Cとの間を同様の手順で封印することが記載されている。また,【0047】には,立入検査の結果や故障等により,ゲーム用電子回路基板2を収容した遊技機用基板ケース1を回収してメーカに輸送する場合には,固定金具5および固定金具6から遊技機用基板ケース1を取り外した後,封印部材7の左右の第1封印部7C,7Cを使用して上蓋4とケース本体3との間をそれぞれ封印することが記載されている。
・特願平11-345478号(引用例8参照)(株式会社大都技研,平成11年12月3日出願)
段落【0086】には,監督官庁等により指定された団体組織により行われる基板ケース102の封止(基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を一体化して封止すること)は,基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203の左端側の基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400でネジ締めすることにより行われることが記載されている。また,段落【0088】には,遊技場(ホール)に遊技機を設置する際の基板ケース102の取付は,基板ケース取付封止部204の最左端の1箇所にセフティロックピン500を嵌め込み基板ケース102を基板ケース取付板206に固定し,封止すること,段落【0091】?【0094】には,主基板302のCPUやROM等の検査を行う際には,基板ケース102のセフティーロックネジ400のネジ螺合部を固定している2本のリブ部700にドライバー等を挿入させて破壊することにより基板ケース102の封止を解除し,一体化した基板ケース本体300と,主基板302と,基板ケースカバー301を分離すること,検査終了後は基板ケース取付封止部204の最左端にある前回封印した封止部(破壊した封止部)に隣接する挿通部にセフティロックピン500を嵌め込み,基板ケース102を基板ケース取付板206に固定,封止することが記載されている。更に,段落【0096】には,基板ケースの回収時には,基板ケース一体化封止部203の左右の端にある基板ケース一体化封止部203の右端側の基板ケース一体化封止部203のネジ挿通部にセフティロックネジ400を締付けし,基板ケース102を単体でメーカが回収することが記載されている。

一方,引用例9(甲第7号証)の5頁の「回胴式遊技機主基板樹脂ケースのセフティーロック方式の分類」には,「自社遊技機の製造に最も適した方法を工夫開発し採用」(2頁15?16行)した結果と認められるものが,メーカー毎に図示されている。そのうち,高砂電器産業株式会社,サミー株式会社,アルゼ株式会社,株式会社大都技研が採用したセフティーロック方式は,各社が特許出願したものと,主基板樹脂ケース自体の封印,主基板樹脂ケース自体の封印と筐体固定を同時に行う位置において一致している。

引用例1(甲第1号証)に記載された発明及び各社の特許出願に係る発明は,その課題(主基板樹脂ケースの開放及び取外しの痕跡を残し,不正改造を防止する)及び,解決手段(破壊しないと開封できない封印部で,ケースの封印及びケースと遊技機本体の封印を行う)においては共通していること,特に引用例7において「他の形態」に関する図面(図19?28)は引用例1(甲第1号証)記載の図面と同じものであること,引用例1(甲第1号証)は組合員あてにセフティーロック方式について遵守を求め「最も適合した方法を考案」することを求めた内容であることを考慮すると,引用例1(甲第1号証)が日電協によって作成されて,組合員に配布されたことが推認される。

(エ)引用例10(甲第8号証)の11頁4?8行には,「(3)主基板の「すり替え」,不正加工防止にカシメケースの採用を検討する。/<<平成11年10月1日以降,保通協に対して型式申請する全機種について,かしめ封印(セーフティロック)を行うことにし,全社が施策を完了した。」と記載されており,これは引用例1(甲第1号証)における「6 実施期限/平成11年9月30日までに全組合員全ての機種について完了すること。従って,10月1日以降の保通協に型式試験申請する機種については,「主基板セフティーロック方式」が全て採用されていること。」(記載事項f)との記載と整合する。
また,引用例9(甲第7号証)によれば「警察庁生活安全局 生活環境課長 原芳正」あてに,セフティーロック方式の説明等を記載した文書を提出したと推認されるところ,これは引用例1(甲第1号証)における「当局に対し日電協「主基板セフティーロック方式」の説明を実施承認を得る」(記載事項e)との記載と整合する。

(オ)以上を総合勘案すれば,引用例1(甲第1号証)はコピーであるが,その原本は日電協によって組合員に配布することを目的として作成されたものであって,真正に成立したもの,全組合員22社に配布されたもの,と認めるのが相当である。なお,組合員が平成11年4月において22社であったことは,引用例4(甲第14号証)の75頁の一覧表より認めることができる。

そして,引用例1(甲第1号証)には平成11年4月19日との日付が付され,引用例3(甲第13号証)においては「本文書には,宛先として本組合員全員が,そして文書番号及び日付が記載されていることから,その当時当組合から全組合員に配布したものと思われます。」との回答がされているが,「その当時,・・・思われます。」としている当該回答によっては引用例1(甲第1号証)が組合員に配布された日を平成11年4月19日と認定することはできない。
しかしながら,引用例1(甲第1号証)は,構造設計書及び取扱説明書の提出を組合員に求め,その提出期限を「平成11年5月12日(水)」としている(記載事項d参照)ことから,遅くとも「平成11年5月12日(水)」までには組合員に配布されたものといえる。

(3-2)文書内容の秘密保持について
引用例1(甲第1号証)には第3者への再配布や開示を禁止する等,当該文書を秘密とすべき旨の記載は何等存在せず,また引用例1(甲第1号証)の配布を受けた組合員が秘密を保持する義務を負っていたとの事実は認めることができない。

被請求人は,引用例1(甲第1号証)に記載の「主基板セフティーロック方式」は,不正工作対策に用いられる技術であって,組合に属するメーカーあるいは監督官庁のみが知りうるものであって,上記以外の不特定の第三者に対して開示が許される性質のものではなく,日電協と組合員との間では黙示の秘密保持契約が締結されていたとみるべきである旨主張している(答弁書11頁下から1行?12頁7行)ので検討する。
「主基板セフティーロック方式」は,主基板樹脂ケースを遊技機本体から取外す際,又は主基板樹脂ケースの上蓋を開放する際には,封印部を物理的に破壊する必要があるというもので,取外し又は開放する権限を有する者の封印部の破壊の他に,破壊が行われたことを発見すると不正を知ることができるというものである。すなわち,「主基板セフティーロック方式」は,その構造を知っていても封印部の物理的破壊をせずに取外し又は開放することはできないから,不特定の第三者に構造を知られてもセキュリティーが低下するものではない。
また,従来より,主基板を収納したケースは,不正工作をされた場合に容易且つ早期に発見できるように,スロットマシンの前扉を開けた状態で見やすい位置に配置することが慣用手段となっており,引用例1(甲第1号証)においても「「主基板セフティーロック」の取付状態が一見して解るような取付位置と構造設計であること。」(記載事項b)と記載されている。そして,前扉を開けることは営業時間中も含めメンテナンスのために多々あり,そのような場合にはホール関係者,遊技者はその構造を知ることができる。
以上のように,主基板を収納したケースは秘密としないことを前提としたものであって,被請求人の主張は採用することはできない。

更に,引用例5?8に示されるように組合員による特許出願が行われたことは前述のとおりであり,特許出願自体は秘密を暴露する行為ではないが,特許出願すれば1年6月後には出願公開されることは常識であるから,その特許出願に含まれる日電協のセフティーロック方式の内容について秘密を保持すべきであったとの認識が組合員にあったとは認められない。

請求人が平成23年4月5日付け意見書に添付して提出した,日電協に対する照会である甲第31号証及びそれに対する日電協の回答である甲第32号証について検討すると,省略されている資料の内容が引用例1(甲第1号証)に記載された発明と同じものとの証明はされていない。しかしながら,日電協の回答によれば,引用例9(甲第7号証)及び甲15号証は警察庁及び全日本遊技事業協同組合連合会に提出した文書の写しを組合員へ参考資料として配付したものと認められる。
そうすると,省略された資料の内容はどのようなものであったかは別として,少なくとも引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証の以下の記載の内容について,日電協は警察庁及び全日本遊技事業協同組合連合会に文書を提出したものと認められるものである。なお,以下における「/」は原文における改行を表す。
引用例9(甲第7号証)の1頁14?16行には「来る平成11年10月1日以降,(財)保安電子通信技術協会あて型式試験申請する遊技機から全面的に採用実施することにいたしました。」と記載され,「添付資料」である「回胴式遊技機用「セフティーロック」の実施要領」の1頁下から2行?2頁9行には「ア 「主基板樹脂ケース自体のかしめ封印」と「主基板樹脂ケースを遊技機本体(筐体)に固定するかしめ封印」とを同時に行う場合(一体型)/「セフティロックヘッド部」6個の使用方法は次のとおりとする。/○A:日電協封印時使用/(樹脂ケース自体の封印専用)・・・1個/○B:遊技機取付時使用/(樹脂ケース自体の封印と遊技機本体への固定専用)・・・1個/○C,○D,○E:立入検査時使用/(樹脂ケース自体の封印と遊技機本体への固定専用)・・・1個/○F:基板回収時使用/(中古基板,修理基板の回収時に使用する樹脂ケース自体の封印専用)・・・1個」と記載されている。
甲第15号証の1頁14?20行には「平成11年10月1日以降,(財)保安電子通信技術協会あて型式試験申請する遊技機から全面採用実施することにいたしました。/この「セフティーロック方式」は,主基板樹脂ケースのセフティーロックを破壊しない限り主基板に触れられないようになっており,輸送時における主基板に対する不正工作を防止するとともに,更にホ-ル設置後においても「セフティーロック」を破壊しない限り筐体から主基板ケースを取り外すことが出来ない二段構えの構造となっております。」と記載され,3頁1?22行には「4 基板検査(立入検査)の要領(この項参考)/(1) 一体型の場合/ア ホール設置時には,「セフティーロックヘッド部分」○1?○2(又は○A?○B)の2ケ所が,かしめ封印されていますので,この2ケ所をニッパ-等により開封し,第一回目の立入検査を行います。/立入検査終了後は,○3番目(又は○C)の「セフティーロックヘッド部」をかしめ封印し,主基板樹脂ケース自体の封印と主基板樹脂ケースの遊技機本体への固定装着を行い「セフティーロック」が完了します。/なお,「セフティーロック」終了後は,主基板樹脂ケース上面に貼付されている「セフティーロック使用記録用紙」の実施年月日及び担当者欄に記録して下さい。/イ 第二回目の(中略)立入検査終了後の処置は,ア項の要領で○4番目(又は○D)の「セフティーロックヘッド部」をかしめ封印して下さい。/ウ 第三回目の(中略)立入検査終了後の処置は,ア項の要領で○5番目(又は○E)の「セフティーロックヘッド部」をかしめ封印して下さい。/エ なお,○1(又は○A)及び○6(又は○F)のセフティーロックは,主基板樹脂ケースが単独で輸送する場合に使用するもので,ケース専用のセフティーロックです。/(注:主基板ケースを単独で輸送する場合や中古基板回収時に使用します。)」と記載されている。
以上の引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証の記載によれば,主基板樹脂ケース自体の封印と主基板樹脂ケースの遊技機本体への固定装着を行う「セフティーロックヘッド部分」を4箇所設けること,主基板ケースを単独で輸送する場合や中古基板回収時に使用するケース専用のセフティーロックを2箇所設けることについて,日電協は,組合員以外の者である,警察庁および全日本遊技事業協同組合連合会に伝えていることが認められ,引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証にはその内容が秘密にすべきものである旨の記載はない。
そして,引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証には平成11年9月13日との日付が付され,甲第32号証においては「本文書には,文書には宛先として警察庁生活安全局生活環境課長(全日本遊技事業協同組合連合会)が,そして文書番号及び日付が記載されており,平成11年9月13日当時,当組合が作成し,警察庁生活安全局生活環境課長(全日本遊技事業協同組合連合会)に提出した文書と思われます。」との回答がされているが,「当時,・・・思われます。」としている当該回答によっては引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証が提出された日を平成11年9月13日と認定することはできない。しかしながら,引用例9(甲第7号証)及び甲第15号証がその内容としているのがセフティーロックが「平成11年10月1日以降,(財)保安電子通信技術協会あて型式試験申請する遊技機から全面採用実施する」ことの予告である以上,平成11年10月1日以前に提出されたと解することが自然である。
そうすると,日電協は,平成11年10月1日以前に組合員以外の者に引用例1(甲第1号証)に記載された発明の内容の一部を秘密とすべきとの条件を課すことなく伝えており,遅くともその時点において引用例1(甲第1号証)に記載された発明を秘密とすべきとの認識はなかったものと認められ,当然に日電協と組合員のとの間に黙示的な秘密保持契約が締結されていないものと認められる。

(3-3)日電協の回答の証明力
請求人と日電協は利害関係が深い関係にあるので,甲第32号証には証明力(証拠力)はない,との主張について検討する。
甲第32号証は請求人とは別個独立した組織(日電協)の証明であり,仮に,請求人の株主及び日電協の組合員が一部共通していたとしても,そのことから,直ちに,甲第32号証の記載内容を信用することができないと断定することができるものではない。
一方,日電協及びその組合員が警察庁の動向により大きな影響を受けることは,周知の事実である。そして,甲第32号証において照会の対象とした引用例1(甲第1号証)には「5 行政当局への手続き/組合全社の設計書及び取扱説明書が提出された時点で,当局に対し日電協「主基板セフティーロック方式」の説明を実施承認を得るとともに各公安委員会に対する周知徹底を依頼する。」(記載事項e)と記載され,同引用例9(甲第7号証)の宛先は「警察庁生活安全局生活環境課長 原 芳正殿」とされているように,引用例1(甲第1号証)及び引用例9(甲第7号証)は警察庁に関連する文書であり,このような文書しかも個人名も記載されている文書に関する照会に対して日電協が虚偽の回答を行うとは考え難い。
また,全日本遊技事業協同組合連合会は全国のパチンコホールの協同組合の連合会組織であって,日電協の組合員にとっては顧客であって信用を確保すべき対象である。そして,甲第32号証において照会の対象とした甲第15号証の宛先は「全日本遊技事業協同組合連合会 理事長 浅野元哲殿」とされているように,甲第15号証は顧客である全日本遊技事業協同組合連合会に関連する文書であり,このような文書しかも個人名も記載されている文書に関する照会に対して日電協が虚偽の回答を行うとは考え難い。
更に,甲第32号証にはその記載内容において,他に,それを信用できないとするに足る記載,他の事実と矛盾する事項等はなく,以上を斟酌すれば,甲第32号証の記載内容は信用することができる。なお,引用例3(甲第13号証)も,同様にその記載内容は信用することが出来る。

(3-4)小括
以上検討したとおり,引用例1(甲第1号証)記載の発明は遅くとも「平成11年5月12日(水)」までには組合員22社に知られたものであって,日電協と組合員との間は明示的にも黙示的にも秘密保持契約が締結されていたとは認めることはできない。また,仮に黙示的な秘密保持契約が締結されていたとしても,平成11年10月1日以前に日電協は引用例1(甲第1号証)記載の発明について組合員以外に知らせており,遅くともその時点で秘密保持契約は存在しないものと認められる。そうすると,本件出願前において,引用例1(甲第1号証)に記載の発明は日本国内において公然知られた発明であって,特許法29条1項1号の発明に相当する。

なお,被請求人は,平成23年4月8日付け意見書(13?15頁)において,非組合員である不特定の第三者が知り得たとの証拠は何ら示されていないので,引用例1(甲第1号証)に記載された発明は公然知られた発明でない旨,主張しているが,無効理由3は,引用例1(甲第1号証)に記載された発明が守秘義務を負わない組合員に知られたことにより公然知られた発明となったとしているものである。また,引用例1に記載された発明を知って出願したか不明なので参考であるが,非組合員(株式会社タイトー)であっても日電協のセフティーロックと同様の発明を出願している例(特開2001-111247号公報:平成11年10月13日出願。段落【0022】,図1,図6参照)もある。

(4)本件特許発明1についての検討
(4-1)対比
引用例1(甲第1号証)記載の発明(「(2)引用例1(甲第1号証)に記載された発明」参照。以下,「公知発明」という。)と本件特許発明1とを対比する。
公知発明の「主基板」は本件特許発明1の「制御基板」に相当し,以下同様に,「筐体」は「箱状の本体」に,「回胴式遊技機」は「スロットマシン」に,「戻り止めネジ」は「固着手段」に,「セフティーロック」は「固着」に,「遊技機筐体に固定されたセフティーロック兼用固定金具」は「本体に設けられた固定部」に,相当する。
公知発明の「セフティーロックされた樹脂ケース本体と樹脂ケース上蓋とからなる主基板樹脂ケース」は,開封時には樹脂ケース上蓋を開くことができるから,本件特許発明1の「開放可能な収納ケース」に相当する。公知発明において,「別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」の3頁の「日電協「主基板セフティーロック方式」基本構造図」の右下部」に基づいて,「主基板樹脂ケース」を「横長矩形状」と認定した(記載事項k)。一方,本件特許発明1においては「平面視で横長矩形状」とされているが,「平面視」については本件明細書の段落【0030】に「まず図3,図4に示されるように,収納ケース50は,平面視で横長矩形状に形成される制御基板40よりも若干大寸に形成され,」と記載されているだけで,技術的にどのような概念を示すか不明確であるが,本件明細書の図2を参酌すると,スロットマシンの本体に取り付けた収納ケースを前面側から見ると「横長矩形状」となっているものと認められ,長寸の辺を上部及び下部に位置させた場合の公知発明とこの点で差異はない。
公知発明の「樹脂ケース上蓋と遊技機筐体に固定されたセフティーロック兼用固定金具とが樹脂ケース本体を挟んで戻り止めネジでセフティーロックされる封印(B)?(E)」は,主基板樹脂ケースを遊技機筐体に取り付けると同時に主基板樹脂ケースの開放を不能にするものであるから,本件特許発明1の「該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部」に相当する。
公知発明の「封印(A)」は,組合作業場で「主基板樹脂ケース」にセキュリティーロムを取付けた後セフティーロックされるものであり,引用例1(甲第1号証)の「本方式はメーカーが輸送途上,ホールでの設置時においても「主基板樹脂ケース」を開封する必要がない。」(記載事項j)との記載からみて,店舗への輸送時にセフティーロックされているものであるから,「収納ケースのメーカーから店舗への輸送時」に用いられるものと認められる。また,「封印(F)」は「中古基板・修理基板を遊技機から離して回収する場合」にセフティーロックされるものであるから,「店舗からメーカーへの輸送時」に用いられるものと認められる。そうすると,公知発明の「樹脂ケース本体と樹脂ケース上蓋とが戻り止めネジでセフティーロックされる封印(A),(F)」は,主基板樹脂ケースの開放を不能にするものであるから,本件特許発明1の「該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部」に相当する。
公知発明における上記「封印(B)?(E)」及び「封印(A),(F)」は「主基板樹脂ケース」の両端において並設されているものであるが,公知発明と本件特許発明1は,少なくとも収納ケースの一端側において「第1の封止部」及び「第2の封止部」が並設されている点で共通し,「前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており」という点で共通している。
公知発明の「戻り止めネジによる封印(B)?(E)とセフティーロック兼用固定金具とのセフティーロック後」は,本件特許発明1の「固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後」に相当し,「切断箇所を切断」及び「カットする箇所をカット」は封印の破壊を意味しているから,公知発明の「主基板樹脂ケースの開封時にはセフティーロックされた封印(B)?(E)の切断箇所を切断し,及び主基板樹脂ケースの取外し時にはセフティーロックされた封印(B)?(E)の切断箇所を切断するとともにカットする箇所をカットし,戻り止めネジによる封印(A),(F)のセフティーロック後における,主基板樹脂ケースの開封時にはセフティーロックされた封印(A),(F)の切断箇所を切断する」は本件特許発明1の「前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっている」に相当する。

以上によれば,本件特許発明1と公知発明は,
「制御基板が,開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって,
前記収納ケースの短寸の一端側には,該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と,該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と,が並設され,
前記収納ケースは,前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを固着手段により固着し,メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており,
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放,及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際,前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに,固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際,該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっているスロットマシン。」の点で一致し,次の点で相違する。
<相違点1>
制御基板が,本件特許発明1では,表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装されたものであるのに対し,公知発明ではそのような構成であるか不明な点。
<相違点2>
本件特許発明1では,収納ケースの短寸の他端側には,本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくとも二つ設けられており,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点3>
本件特許発明1では,本体への取付け時に係止部を取付部材に係止させた状態で固着するのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点4>
本件特許発明1では,本体への取付け時に第1の封止部と固定部とを当接させた状態で固着するのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。

(4-2)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
制御基板が,表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ,該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置を実装することは,引用例11?14(甲第2?5号証)に示されるように,スロットマシンにおいて普通に採用される技術(従来周知技術)であって,これを採用することは当業者であれば当然のことである。

<相違点2,3>について
相違点2と相違点3は関連しているので,あわせて検討する。
引用例15(甲第6号証)には,「ボックス62側の係止穴120が取付台150側の係合突起154と係合してボックス62が装着される。そして,回路基板ボックス62の取付突起148aに穿設された取付穴149aを取付片部156aの取付穴159aにワンウェイネジ160で共締めすることにより,回路基板ボックス62を取付台150に対して非可逆的な固着状態で取り付ける。」(段落【0042】)の記載によれば,ボックス62(収納ケースに相当)の他端側に本体に設けられた取付台150の係合突起154(取付部材に相当)に対して係脱可能な係止穴120(係止部に相当)を設けること,更に係止穴120を係合突起154に係止させた状態で固着することが記載されている。
また,引用例12(甲第3号証)には,「この基板ケース71も,前述した一般的なパチンコ機1における基板ケース5および一般的なスロットマシン21における基板ケース34に相当しており,内部にはROM48が着脱自在に実装された前述した遊技基板42が収納されている。また,基板ケース71が取り付けられている基盤72は,遊技機が前述したパチンコ機1の場合には裏機構盤や遊技盤2に相当し,遊技機が前述したスロットマシン21の場合には木枠33に相当する。」(段落【0065】)及び「基板ケース71の一端部が収容具74に収容され,その他端部が基盤72側に倒されて係合部71c,dが固定具76の近傍に位置される。この状態で固定具76および係合部71c,dの各貫通穴77,73に南京錠78が挿通され,この南京錠78が施錠される。」(段落【0068】)との記載によれば,基板ケース71(収納ケースに相当)の他端側に本体に設けられた収納具74(取付部材に相当)に対して係脱自在な一端部(係止部に相当)を設けること,更に一端部を収納具に係止させた状態で固着することが記載されている。

一方,収納ケースの他端側に係脱可能な係止部を離間して二つ設けることは,以下の例に示されるように従来周知の技術手段であって,係止部としてこのような構造のものを採用することは単なる設計事項に過ぎない。
(周知例A)特開平10-309360号公報(甲第6号証)(図16参照)
段落【0057】には「・・遊技制御回路基板181を収納した回路基板ボックス182が取付基板190を介して遊技盤40に取り付けられている。・・取付基板190には,左右一対の係止部195a・195bと,が形成されている。一方,回路基板ボックス182には,前記回路基板ボックス62の取付突起148a?148dと同様な取付突起183a?183dが形成されると共に,・・係止部195a・195bと係合する左右一対の係合爪185a・185bと,が形成されている。」と記載され,段落【0058】には「回路基板ボックス182は,係合爪185a・185bが係止部195a・195bに係止されると共に,係合片部184が係止レバー194に係止され,この状態で取付突起183aが取付片部193aにワンウェイネジ196で止められている。」と記載されており,「係合爪185a・185b」は収納ケースの他端側に離間して二つ設けられた係脱可能な係止部ということができる。
(周知例B)特開平10-263171号公報(図2参照)
段落【0053】には「そして,このように組立てた基板ボックス15を図2のように遊技機の裏メカベース盤10の所定の取付位置に取付ける。」と記載され,段落【0054】には「基板ボックス15のベース部材25を裏メカベース盤10の所定の取付位置の表面に合わせ,ベース部材25の取付ボス72のワンタッチ式の止め具73を裏メカベース盤10の所定位置の掛止具に押し込み,固定する。」と記載され,段落【0059】には「基板ボックス15を取り外す際は,まず配線コード群17?20を接続領域33のコネクタ部32より外し,ベース部材25のワンタッチ式の止め具73を引くと,外せる。」と記載され,図2には基板ボックス15の下側の一端に取付ボス72が離間して二つ設けることが記載されており,「取付ボス72」は収納ケースの他端側に離間して二つ設けられた係脱可能な係止部ということができる。
(周知例C)特開平11-333111号公報(図4参照)
段落【0033】には「・・ここで,止着部材82は,図5に示すように,頭部82aから伸びる軸の先端側に挿入端部82bが形成され,ワンタッチの簡単な手作業で止着が可能な周知の取付具である。即ち,この止着部材82は,頭部82aを押圧しつつ,対応する止着穴に挿入端部82bを挿入して押し込むと,挿入端部82bが拡径して前記止着穴に係止し,容易に離脱しないようになるものであり,逆に頭部82aを引張ることで,挿入端部82bを縮径させて前記止着穴から容易に離脱できるものである。」と記載され,段落【0039】には「排出制御ユニット16のケース75の上下3箇所の位置・・には,突片81が形成され,この突片81には,前述の止着部材82の挿通穴が形成され,必要に応じて止着部材82が予め取付けられている。」と記載され,段落【0040】には「・・次いで,例えば排出制御ユニット16の全体を導電性部材76の板状部76aの表面側(遊技機1aの裏面側)に重ねるようにして,ケース75の各突片81に挿通した止着部材82の挿入端部82bを,対応する止着部77の止着穴に挿入し,各止着部材82を押込む。これにより,排出制御ユニット16が止着部材82の係止作用により基枠体22に略固定状態に取付けられ,」と記載され,図4にはケース75の下側の一端に突片81が離間して二つ設けることが記載されており,「突片81」は収納ケースの他端側に離間して二つ設けられた係脱可能な係止部ということができる。

したがって,公知発明において,引用例15又は引用例12に記載された発明を採用するとともに,その際に収納ケースの他端側の係止部として離間して二つ設けられたものを採用し,相違点2,3に係る本件特許発明1の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点4>について
複数の部材をネジ等の固着手段により固着する際において,複数の部材を予め当接させておくことは,普通に採用される技術(従来周知技術)であって,これを採用することは当業者であれば当然のことである。

(4-3)小括
以上により,本件特許発明1は公知発明,引用例12又は引用例15に記載された技術事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,本件の請求項1の特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,同法123条1項2号の規定に該当し,無効とされるべきである。

(5)本件特許発明2についての検討
本件特許発明2は,本件特許発明1に対し
「前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え,
前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着」するように構成されており,かつ「前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており」との構成(以下「構成2A」という。)及び
「前記第2の封止部は,メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と,店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と,からなり,
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は,一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ,他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられている」との構成(以下「構成2B」という。)を付加するものである。

(5-1)対比
・構成2Aについて
公知発明は構成2Aを有しない。
よって,本件特許発明2と公知発明は,構成2Aに関して,次の点で相違する。
<相違点5>
本件特許発明2では「前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え」るのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点6>
本件特許発明2では「前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され,前記収納ケースは,前記可変表示装置の上部に」取り付けられるのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点7>
本件特許発明2では,収納ケースが「前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を,前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着」するように構成されているのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点8>
本件特許発明2では「前記前面パネルは,前記箱状の本体に対して,前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されて」いるのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。

・構成2Bについて
公知発明の「封印(A)」が「収納ケースのメーカーから店舗への輸送時」に用いられるものであり,「封印(F)」が「店舗からメーカーへの輸送時」に用いられるものであること,「封印(A),(F)」が本件特許発明1の「該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部」に相当することは,本件特許発明1で検討したとおりである。そして,「メーカーから店舗への輸送時」のものが通常「出荷」されるものであること,「店舗からメーカーへの輸送時」のものが通常「返品」されるものであることは常識であるから,「第2の封止部」を「出荷用」及び「返品用」とすることに技術的意味はなく,この点で公知発明と本件発明2に実質的差違はない。
更に,公知発明において,「封印(A)」及び「封印(F)」は主基板樹脂ケースの一端の最上部と最下部に設けられているから,構成2Bについては,公知発明と本件特許発明2に実質的差違はない。
よって,公知発明は,構成2Bを有する点で,本件特許発明2と共通する。

以上によれば,本件特許発明2と公知発明は,前記<相違点1>?<相違点4>及び<相違点5>?<相違点8>において相違し,他の点で一致する。

(5-2)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>?<相違点4>について
前記(4-2)と同趣旨。

<相違点5>について
引用例12(甲第3号証)の段落【0039】?【0042】及び図12には,引用例12(甲第3号証)に記載された発明が適用される一般的なスロットマシンの構成として,「キャビネット25」(箱状の本体に相当)及び「フロントドア22」(前面パネルに相当)を備える点と,当該「フロントドア22」が開く点が記載されている。
例えば引用例13(甲第4号証)の段落【0072】及び図5に記載されているように,箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備えることは,スロットマシンにおいて普通に採用される技術(従来周知技術)であって,これを採用することは当業者であれば当然のことである。
よって,公知発明において,引用例12に記載された発明及び周知技術を採用し,相違点5に係る本件特許発明2の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点6>について
引用例12(甲第3号証)の段落【0039】?【0042】及び図12には,引用例12(甲第3号証)に記載された発明が適用される一般的なスロットマシンの構成として,「キャビネット25」(箱状の本体に相当)に「リール24」(可変表示装置に相当)が「内蔵」(収容に相当)される点と,「リール24の上部に位置するキャビネット25の内側背面」に,「基板ケース34」(収納ケースに相当)を取り付ける点が記載されている。
よって,公知発明において,引用例12に記載された発明を採用し,相違点6に係る本件特許発明2の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点7>について
引用例12(甲第3号証)の【0064】?【0071】及び図4には,「基板ケース71」(収納ケースに相当)の他端側に設けた「一端部」(係止部に相当)を,回動自在な「収納具74」(取付部材に相当)に対して係止させた状態で,該「基板ケース71」を回動させる点が記載されており,
当該「基板ケース71」の一端側は,前記「一端部」を中心にして回動していると認められる。
また,第1の封止部と固定部とを当接させる点は,<相違点4>について述べたとおりである。
よって,公知発明において,引用例12に記載された発明及び周知技術を採用し,相違点6に係る本件特許発明2の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

なお,請求人は平成24年3月8日差出の弁駁書7(2)(2)(b)において,「ケースが回動するものとして?甲第37号証(周知例B)の段落【0029】,図4の蝶着部40にも,上下であるが回動構造が示されており」と主張するが,甲第37号証(周知例B)に記載された回動構造は,基板ボックス15(収納ケースに相当)における上蓋部材26とベース部25とを相対的に回動させるための構造であって,基板ボックス15(収納ケースに相当)自体を回動させるための構造ではないので,当該回動構造が「ケースが回動するもの」である旨の主張は採用できない。

<相違点8>について
前面パネルと収納ケースが回動する点については,<相違点5,7>について述べたとおりである。
本件訂正の請求書(9-2)には,前面パネルと収納ケースが同一方向に回動することにより,作業スペースが狭い箇所であっても収納ケースは前面パネルに干渉することなく固定部に固着させることができ,収納ケースの取付作業性を向上させることができる旨記載されている。しかしながら,例えば次の[例ア?イ]で示すように,収納ケースの取付作業性が何と比較してどの程度向上するかは,収納ケースの具体的な大きさ,形状,位置,固着手段や係止部の具体的な構成,等により変化するものであるから,相違点8に係る本件特許発明2の構成により,顕著な効果が奏されるとまでは認められない。
[例ア]訂正後の請求項2の記載上,本件特許発明2における収納ケースは箱状の本体に収納されているとは限らない。そして,収納ケースが箱状の本体の外部に取り付けられている場合,収納ケース及び前面パネルの回動方向は,収納ケースの取付作業性にほとんど影響しない蓋然性がある。
[例イ]横長矩形状の収納ケースが前面パネルと同一方向に回動する場合,回動の中心となる他端側の作業スペースは,一端側よりも狭くなる。そしてこの場合,当該他端側に設けられた係止部と取付部材との係合に関する収納ケースの取付作業性は,他の場合と比較して低下しているともいえる。
よって,公知発明において,引用例12に記載された発明及び周知技術を採用する際に,前面パネルと収納ケースを同一方向に回動するように構成することは,当業者が適宜なしうる事項であって,その際に奏される効果も予測しうる程度のものである。

(5-3)小括
以上により,本件特許発明2は公知発明,引用例12又は引用例15に記載された技術事項,周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,本件の請求項2の特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから,同法123条1項2号の規定に該当し,無効とされるべきである。

(6)本件特許発明3についての検討
本件特許発明3は,本件特許発明2に対し,
「前記収納ケースは,上部ケースと下部ケースとからなり,
前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり,
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており」との構成(以下「構成3A」という。)及び
「前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており,
前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され,
前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え,
前記取付部材と別体の前記固定部は,第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され,
前記収納ケースは,
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着」するように構成され,かつ「前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は,前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる」との構成(以下「構成3B」という。)を付加するものである。

(6-1)対比
・構成3Aについて
公知発明の主基板樹脂ケースは,「樹脂ケース本体」及び「樹脂ケース上蓋」とからなるもの(記載事項k参照)であり,「樹脂ケース本体」は本件特許発明3の「下部ケース」に相当し,「樹脂ケース上蓋」は本件特許発明3の「上部ケース」に相当することは明らかである。
また,「別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」の4?5頁の「「セフティーロック方法」例」の図面」(記載事項m参照)には,本件特許発明3の「前記第1の封止部と前記第2の封止部は,ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり,
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には,前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され,前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には,前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており」に相当する構成が図示されている。
以上のとおり,本件特許発明3において付加された上記構成3Aは,公知発明が具備するものである。

・構成3Bについて
前記(4-1)で述べたとおり,公知発明の「主基板樹脂ケース」及び「遊技機筐体に固定されたセフティーロック兼用固定金具」は,本件特許発明3の「収納ケース」及び「前記本体に設けられた前記固定部」に相当する。
また,「別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領」」の3頁の「日電協「主基板セフティーロック方式」基本構造図」には,前記「セフティーロック兼用固定金具」が「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」によって「遊技機筐体」に固定される点と,当該「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」が「セフティーロック兼用固定金具」に固定された「主基板樹脂ケース」によって覆われる点が図示されている。
よって,前記「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」は,本件特許発明3における「第2の固定手段」に相当する。

一方,公知発明は,「第2の固定手段」に相当する「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」以外には,構成3Bに相当する構成を有しない。
したがって,本件特許発明3と公知発明は,構成3Bに関して,次の点で相違する。
<相違点9>
本件特許発明3では「前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられて」いるのに対し,公知発明では「第1の封止部」及び「第2の封止部」の両方が設けられている点。
<相違点10>
本件特許発明3では「前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され」るのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点11>
本件特許発明3では「前記取付部材は,第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され」るのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点12>
本件特許発明3では「前記取付部材」が「前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え」に対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点13>
本件特許発明3では「前記取付部材」と「前記固定部」とが「別体」であるのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点14>
本件特許発明3の「収納ケース」では,「前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを,前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着」するように構成されているのに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。
<相違点15>
本件特許発明3では,「前記第1の固定手段」が「前記収納ケースが前記取付部材」「に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる」のに対し,公知発明ではそのような構成となっていない点。

以上によれば,本件特許発明3と公知発明は,前記<相違点1>?<相違点8>及び<相違点9>?<相違点15>において相違し,他の点で一致する。

(6-2)判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>?<相違点4>について
前記(4-2)と同趣旨。

<相違点5>?<相違点8>について
前記(5-2)と同趣旨。

<相違点9>について
前記(2)で認定したとおり,公知発明の「主基板樹脂ケース」(収納ケースに相当)の短寸の両端には,「封印(B)?(E)」(第1の封止部に相当)と「封印(A),(F)」(第2の封止部に相当)とが並設されている。
前記(4-2)において<相違点2,3>について述べたとおり,公知発明において,係止部を収納ケースの短寸の他端側に構成し,係止部に対応する取付部材を本体に構成することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして,収納ケースの他端側に係止部が構成される以上,収納ケースの他端側に設けられている第1の封止部を廃して,相違点9に係る本件特許発明3の構成とすることに,特段の困難性は認められない。

<相違点10,12>について
相違点10,12は関連しているので,あわせて検討する。
本件の請求項3が引用する請求項1?2に記載されているように,本件特許発明3における係止部は,取付部材に対して係脱可能であって,回動の中心となる構成であるから,本件特許発明3において係止部を形成している係止ピンは,取付部材に対して係脱可能であって,かつ回動の中心となる構成である。

[引用例12(甲第3号証)に基づく検討]
前記(4-2)において<相違点2,3>について述べたとおり,引用例12(甲第3号証)に記載された「基板ケース71」(収納ケースに相当)は,回動自在な「収納具74」(取付部材に相当)に対して係脱可能である。また,同段落【0067】及び図4には,前記「基板ケース71」の短寸の長手方向に突設するピン状の部材(係止ピンに相当)が前記「収納具74」に設けられている点と,当該ピン状の部材によって「この収納具74は,基盤72に設けられた支持具75により,その両端部が基盤72に回動自在に支持されている。」点が,記載されている。
そして,相違点10,12に関して,引用例12に記載された発明と本件特許発明3とは,次の点で相違している。
《相違点》収納ケース側の構成と本体側の構成とを係脱可能とする点について,本件特許発明3では,係止ピンと略L字状の切欠溝との間において係脱可能であるのに対し,引用例12に記載された発明では,係止ピン以外の部分で係脱可能である上に,略L字状の切欠溝を有しない点。
すると,公知発明に引用例12に記載された技術事項を適用した発明は,前記《相違点》に係る本件特許発明3の構成を有しない点で,依然として本件特許発明3と相違している。
次に,当該《相違点》について検討する。
参考資料17の段落【0013】?【0017】のピン21,22及びL字溝33,34,参考資料18の段落【0008】のピン79及びL字溝38a,並びに参考資料19の段落【0022】?【0024】の釦フック21c及びL字溝22Aにみられるように,略L字状の切欠溝と係止ピンとを組み合わせることについては,従来周知技術であると認められる。しかしながら,回動の中心となる係止ピンと略L字状の切欠溝との間において係脱可能とすることは周知である,とまではいえない。すなわち,係止ピンと略L字状の切欠溝とを係脱可能とする点は参考資料17には記載されていないし,係止ピンを中心に回動する点も参考資料17?18には記載されていない。
そうすると,公知発明,引用例12に記載された技術事項,周知技術からは,相違点10,12に係る本件特許発明3の構成は導き出せない。

[甲第37号証(周知例B)に基づく検討]
甲第37号証(周知例B)の段落【0029】,図4には,「基板ボックス15」(収納ケースに相当)の「上蓋部材26」(上部ケースに相当)と「ベース部25」(下部ケースに相当)とを相対的に回動させるための「蝶着部40」において,「上蓋部材26」及び「ベース部25」とが係脱可能である旨記載されている。
しかしながら,前記「蝶着部40」については,係脱に係る具体的な構成が明確でない。また,前記「蝶着部40」は,収納ケースの上部ケース及び下部ケースを相対的に回動させるための構造であって,収納ケース自体を回動させるための構造ではない。
そうすると,前記参考資料17?19に記載された従来周知技術を考慮したとしても,甲第37号証(周知例B)に記載された発明からは,相違点10,12に係る本件特許発明3の構成は導き出せない。

[他の甲各号証及び参考資料に基づく検討]
請求人の提出したその他の甲各号証及び参考資料には,相違点10,12に係る本件特許発明3の構成については,記載も示唆もない。

よって,相違点10,12に係る本件特許発明3の構成については,請求人の提出した甲各号証及び参考資料には記載がなく,当業者が容易になし得たとすべき理由もない。

<相違点11,15>について
前記(4-2)において<相違点2,3>について述べたとおり,公知発明に引用例15又は引用例12に記載された発明を適用して,収納ケースの他端側に係止部を設け,当該係止部に対応する取付部材を箱状の本体に設けることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
前記(6-1)において構成3Bについて述べたとおり,公知発明における「セフティーロック兼用固定金具」(固定部に相当)は,「セフティーロック兼用固定金具」に固定された「主基板樹脂ケース」(収納ケースに相当)によって覆われるような「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」(第2の固定手段に相当)によって,「遊技機筐体」(箱状の本体に相当)に固定されている。
そうすると,公知発明に引用例15又は引用例12に記載された発明を適用する際に,前記取付部材を前記「セフティーロック兼用固定金具止めネジ」と同様の止めネジで固定して,相違点11,15に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点13>について
前記(4-2)において<相違点2,3>について述べたとおり,公知発明に引用例15又は引用例12に記載された発明を適用して,収納ケースの他端側に係止部を設け,当該係止部に対応する取付部材を箱状の本体に設けることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
一の部材を固定するために,複数の固定金具等を用いることは,従来周知技術である。また,「別添 「回胴式遊技機用「主基板セフティーロック方式」実施要領の3頁の「日電協「主基板セフティーロック方式」基本構造図」における「セフティーロック兼用固定金具」(固定部に相当)を示すハッチングから,公知発明における「セフティーロック兼用固定金具」は,「主基板樹脂ケース」(収納ケースに相当)の一端側と他端側とで,別体であるとも解される。
そうすると,公知発明に引用例15又は引用例12に記載された発明を適用する際に,取付部材と固定部を別体として,相違点13に係る本件特許発明3の構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

<相違点14>について
相違点14のうち,「係止ピン」及び「切欠溝」については,<相違点10,12>について前記した点と同趣旨。
次に,相違点14のうち,「該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると,前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され,前記第1の上部封止片,前記第1の下部封止片,及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり,該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着」するような構成について検討する。
この構成は,要するに,側面視略U字状の弾性係合片と係合穴とを設けることによって,収納ケースの一端側を回動させるようにして第1の封止部と固定部とを当接させたときに,第1の封止部と固定部にそれぞれ形成された孔を合致させるためのものである。

[引用例12(甲第3号証)に基づく検討]
参考資料20?27に記載されているように,側面視略U字状の弾性係合片と係合穴とを弾性係合させる技術は,従来周知技術である。
しかしながら,公知発明,引用例12に記載された発明及び周知技術は,第1の封止部と固定部とを当接させたときに係合して孔を合致させる手段を有していない。
そうすると,公知発明,引用例12に記載された技術事項,周知技術からは,相違点14に係る本件特許発明3の構成は導き出せない。

[甲第37号証(周知例B)に基づく検討]
甲第37号証(周知例B)の段落【0029】,【0035】,【0043】,図3?6には,「蝶着部40」を中心として「基板ボックス15」(収納ケースに相当)の「上蓋部材26」(上部ケースに相当)の一端側を回動させるようにして,「上蓋部材26」に設けられた「上方結合部61」(第2の上方封止片に相当)と「ベース部25」(下部ケースに相当)に設けられた「下方結合部63」(第2の下方封止片に相当)と当接させると,「上方結合部61」に形成された「突起41」と「下方結合部63」に形成された「門型の係止片42」弾性係合され,「上方結合部61」に形成された「通し穴64」と「下方結合部63」に形成された「穴69」とが互いに合致した状態となり,該互いに合致した「通し穴64」と「穴69」に「ワンウェイネジ65等(締結部材)」を挿通することにより前記「上方結合部61」と「下方結合部63」とを固着するような構成が記載されている。
しかしながら,当該構成は,収納ケースを封止するための構成であって,収容ケースを本体側に固定するための構成ではない。
そうしてみると,公知発明に甲第37号証(周知例B)に記載された技術及び側面視略U字状の弾性係合片と係合穴とを弾性係合させる従来周知技術を適用したとしても,相違点14に係る本件特許発明3の構成は導き出せない。
また,甲第37号証(周知例B)に記載された技術については,公知発明に引用例12(甲第3号証)に記載された発明を適用して,収容ケースを本体側に固定する際に収納ケースの一端側を回動させるように構成した上で,さらに甲第37号証(周知例B)に記載された技術及び側面視略U字状の弾性係合片と係合穴とを弾性係合させる従来周知技術を適用する,ということも考えられる。しかしながら,甲第37号証(周知例B)に記載された技術は従来周知技術であるとまでは認められないので,公知発明に引用例12(甲第3号証)に記載された発明を適用して,さらに甲第37号証(周知例B)に記載された技術及び従来周知技術を適用することは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

[他の甲各号証及び参考資料に基づく検討]
請求人の提出したその他の甲各号証及び参考資料には,相違点14に係る本件特許発明3の構成については,記載も示唆もない。

よって,相違点14に係る本件特許発明3の構成については,請求人の提出した甲各号証及び参考資料には記載がなく,当業者が容易になし得たとすべき理由もない。

(6-3)小括
以上により,本件特許発明3は,上記相違点10,12,14について容易になし得たものということができず,請求人の提出した甲各号証及び参考資料に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第6.むすび
以上のとおりであるから,
本件の請求項1?2に係る本件特許は,無効理由3によって無効とすべきものであり,
本件の請求項3に係る本件特許は,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法64条の規定により,その3分の1を請求人の負担とし,3分の2を被請求人の負担とする。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スロットマシン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が、開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって、
前記収納ケースの短寸の一端側には、該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と、該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と、が並設され、更に前記収納ケースの短寸の他端側には、前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくも二つ設けられており、
前記収納ケースは、前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し、メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており、
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放、及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際、前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに、固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際、該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっていることを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え、
前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され、前記収納ケースは、前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに、
前記収納ケースは、
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を、前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し、
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており、
前記前面パネルは、前記箱状の本体に対して、前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており、
前記第2の封止部は、メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と、店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と、からなり、
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は、一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ、他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられている請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】前記収納ケースは、上部ケースと下部ケースとからなり、
前記第1の封止部と前記第2の封止部は、ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり、
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には、前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され、前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には、前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており、
前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており、前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており、
前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され、
前記取付部材は、第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え、
前記取付部材と別体の前記固定部は、第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され、
前記収納ケースは、
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを、前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると、前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され、前記第1の上部封止片、前記第1の下部封止片、及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり、該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し、
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され、
前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は、前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われる請求項2に記載のスロットマシン。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スロットマシン遊技機に係わり、特に遊技機の遊技制御を司る制御基板に関わる不正行為の防止処理が施されたスロットマシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のスロットマシンは、一般的に前面が開放自在な筐体により構成されており、この筐体の内部には、各種装置の動作や、所定の有価価値を有する遊技媒体としてのコインの払出し等、遊技に関わる制御を司る制御装置(CPU)等が実装された制御基板が設けられている。
【0003】
近年においては、このように遊技に関わる制御を司る制御装置が実装される制御基板に不正な処理が施されたり、不正な改造が施された制御装置にすり替えられたりすることにより、不当に利益を得るといった不正行為が多発している。
【0004】
このような不正行為が多発すると、店側は多大な損失を被ることになるため、制御基板への不正な処理を施しにくくするために、制御基板を収納ケースにより覆い、この収納ケースを筐体に対して取り付けるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、店側において制御基板のメンテナンス等が必要となる場合があることから、このような収納ケースは開放可能な構成とすることが多いが、これを容易に開放出来る構成にすると、筐体に取り付けられた状態で開放され、不正な処理を施される恐れがある。また、この収納ケースが筐体に対して容易に着脱出来る状態で取り付けられていると、制御基板が内蔵された収納ケースごとすり替えられてしまうことがあった。
【0006】
そして、収納ケースを開放することで不正な処理を施すために収納ケースが一旦開放されたとしても、元通りに近い状態で閉塞されていたり、収納ケースごとすり替えるために筐体から取り外されたとしても、元通りに近い状態で取り付けられてしまうと、収納ケースが開閉されたことや、制御基板がすり替えられたことを外観上で判別することは非常に困難であり、店側は不正な処理が施された可能性があることが発見しにくく、長期にわたって不正行為が繰り返される危険性があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、制御基板への不正な処理や、制御基板ごとのすり替えを困難とするとともに、不正が行われた可能性をあることが容易に判別出来るようにしたスロットマシンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスロットマシンは、表示状態が変化可能な可変表示装置における表示結果を導出表示させ、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板が、開放可能な平面視で横長矩形状の収納ケースにより収納された状態で箱状の本体に設けられたスロットマシンであって、
前記収納ケースの短寸の一端側には、該収納ケースを開放不能に固着するとともに前記本体に対して取り外し不能に取り付けるために用いられる第1の封止部と、該収納ケースのメーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に該収納ケースを開放不能に固着するために用いられる第2の封止部と、が並設され、更に前記収納ケースの短寸の他端側には、前記本体に設けられた取付部材に対して係脱可能な係止部が離間して少なくも二つ設けられており、
前記収納ケースは、前記本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を前記本体に設けられた取付部材に係止させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記本体に設けられた固定部とを当接させた状態で固着手段により固着し、メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており、
固着手段による前記第1の封止部と前記固定部との固着後における前記収納ケースの開放、及び前記収納ケースの前記本体からの取り外しの際、前記固着された第1の封止部の破壊を伴うようになっているとともに、固着手段による前記第2の封止部の固着後における前記収納ケースの開放の際、該固着された第2の封止部の破壊を伴うようになっていることを特徴としている。
この特徴によれば、制御基板が収納ケースにより覆われた状態で本体に固着されることにより、制御装置等への不正を困難とすることが出来るとともに、固着手段により収納ケースが開放不能に、かつ本体に取り外し不能に取り付けられると、収納ケースを開放したり本体から取り外す際には、収納ケースの一部が破壊されて機械的な変形を伴うことにより痕跡が確実に残ることになるため、不正が行われた可能性があることが外部から直ちに発見出来るようになり、不正行為を効果的に抑制出来ることになる。また、収納ケースの係止部を係止させ、第1の封止部及び固定部を固着手段により固着するのみで、収納ケースを筐体に対して取り外し不能に取り付け出来るため、取付けの作業性が向上する。また、例えば、メーカーから店舗への出荷時や店舗からメーカーへの返品時等において収納ケースを開放不能な状態とすることができるので、スロットマシンの本体と収納ケースとを別送する場合でも、制御基板を収納ケースに収納した状態で安全に輸送できる。
【0009】
本発明のスロットマシンは、前記箱状の本体の側端に回動自在に枢支された前面パネルを備え、
前記箱状の本体には前記可変表示装置が収容され、前記収納ケースは、前記可変表示装置の上部に前記取付部材及び固定部を介して前記箱状の本体に対して取り付けられるとともに、
前記収納ケースは、
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部を、前記箱状の本体の他側端側に設けられた取付部材に係止させた状態で該係止部を中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを当接させた状態で前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着手段により固着し、
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成されており、
前記前面パネルは、前記箱状の本体に対して、前記取付部材が設けられた前記他側端側に枢支されており、
前記第2の封止部は、メーカーから店舗への輸送時に用いられる出荷用の第2の封止部と、店舗からメーカーへの輸送時に用いられる返品用の第2の封止部と、からなり、
前記出荷用の第2の封止部及び返品用の第2の封止部は、一方が前記収納ケースの一端側の最上部に設けられ、他方が前記収納ケースの一端側の最下部に設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明のスロットマシンは、前記収納ケースは、上部ケースと下部ケースとからなり、
前記第1の封止部と前記第2の封止部は、ともに前記上部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す上部封止片及び前記下部ケースから前記収納ケースの長寸の長手方向外方に張り出す下部封止片からなり、
前記第1の封止部を構成する第1の上部封止片の下方には、前記第1の封止部を構成する第1の下部封止片及び前記本体に設けられた前記固定部が位置するように構成され、前記第2の封止部を構成する第2の上部封止片の下方には、前記第2の封止部を構成する第2の下部封止片が位置するように構成されており、
前記収納ケースの短寸の一端側には前記第1の封止部及び前記第2の封止部が設けられており、前記収納ケースの短寸の他端側には前記第2の封止部のみが設けられており、
前記収納ケースの短寸の他端側に設けた係止部は前記収納ケースの短寸の長手方向に突設する係止ピンにて形成され、
前記取付部材は、第1の固定手段により前記箱状の本体に固定され前記係止ピンを挿通可能な略L字状の切欠溝を備え、
前記取付部材と別体の前記固定部は、第2の固定手段により前記箱状の本体に固定され、
前記収納ケースは、
前記箱状の本体への取付け時に前記収納ケースの短寸の他端側に設けた2つの前記係止ピンを、前記箱状の本体の他側端側に設けられた前記取付部材の前記切欠溝に差し込んで係止させた状態で該係止ピンを中心に該収納ケースの短寸の一端側を回動させるようにして前記第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた前記固定部とを当接させると、前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた側面視略U字状の弾性係合片の外側突部が前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部の係合穴に弾性係合され、前記第1の上部封止片、前記第1の下部封止片、及び前記固定部にそれぞれ形成された孔が互いに合致した状態となり、該互いに合致した孔に固着手段を挿通することにより前記収納ケースの短寸の一端側に設けられた第1の封止部と前記箱状の本体の一側端側に設けられた固定部とを固着し、
メーカーから店舗への輸送時及び店舗からメーカーへの輸送時に前記第2の封止部を固着手段により固着するように構成され、
前記第1の固定手段及び前記第2の固定手段は、前記収納ケースが前記取付部材及び前記固定部に固定されることにより前記収納ケースによって覆われることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず図1には、本発明が適用されたスロットマシン1の正面図が示されている。スロットマシン1の前面の所定箇所には表示窓2が設けられており、この表示窓2の内側には、可変表示装置3(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための左可変表示部5L、中可変表示部5C、右可変表示部5Rが、それぞれに上下3段に図柄を可変表示可能に構成されている。
【0017】
遊技者が遊技を行なう場合には、まず有価価値の一例としてのコインをコイン投入口4から投入するか、あるいは、所定数以上のコインの投入することにより蓄積され、クレジット表示器6に表示されたクレジットを使用することにより、ゲームにおける賭数を設定する。なお、クレジットを使用する場合はクレジット操作ボタン7を押圧操作することにより賭数が設定され、クレジット表示器6には賭数分が減算表示される。
【0018】
コインが1枚以上投入されると、スタートランプ8が点灯され、スタートレバー9を押圧操作可能であるスタート状態になった旨が示されるとともに、可変表示部5L、5C、5Rにおける所定の有効ラインが投入されたコインの枚数(賭数)に応じて有効化され、有効ライン表示ランプ10が点灯してそのラインが有効である旨が遊技者に報知される。
【0019】
スタートレバー9を押圧操作すれば、可変表示装置3により後述する各リールが回転することによりゲームが開始され、各可変表示部5L、5C、5Rにおいて複数種類の図柄が可変表示される。そして遊技者が所望の停止ボタン11L、11C、11Rを押圧操作すれば、そのボタンに対応したリールが停止する。なお、12L、12C、12Rはそれぞれ左操作有効ランプ、中操作有効ランプ、右操作有効ランプであり、それぞれに対応する停止ボタン11L、11C、11Rの押圧操作を有効に受付ける状態になった旨を点灯または点滅表示し、停止ボタン11L、11C、11Rの押圧操作に対応して消灯する。停止ボタン11L、11C、11Rを押圧操作する順序は不定であり、遊技者が任意に選択することができる。
【0020】
そして、可変表示装置3の停止時、すなわち全てのリールが停止した状態において、各可変表示部5L、5C、5Rにおける所定の有効ライン上に所定の図柄の組み合わせが停止され、予め定められた特定の表示態様となった場合、その表示態様に応じて予め定められた大きさの有価価値の付与が可能な状態となり、例えば所定枚数のコインの払出しや、クレジットの加算がなされる。また、特に予め定められた特別の表示態様となった場合には、コインの払出しが行なわれるとともに、通常のゲームよりも大きな利益が得られる、いわゆるビッグボーナスゲームやレギュラーボーナスゲームが開始されるようになっている。
【0021】
また、13はクレジットされた有価価値を遊技者に払い戻す場合に操作するための精算ボタンであり、この精算ボタン13を押圧操作することにより、クレジット表示器6に表示された枚数分のコインが遊技者に返却されるようになっている。14はゲーム回数表示器であり、後述するビッグボーナスゲームカウンタやボーナスゲームカウンタの値を表示し、現在実行しているビッグボーナスゲームやボーナスゲームの回数を切替表示し得るように構成されている。15は払出数表示器であり、入賞が成立した場合に付与されるコイン枚数を表示するためのものである。
【0022】
次に本実施例におけるスロットマシン1の構造を図1、図2に基づいて説明する。スロットマシン1の筐体は、前面が開口する箱状の本体部1aと、本体部1aの側端に回動自在に枢支された前面パネル1bとからなり、施錠装置16に所定のキーを挿入して時計回り方向に回動操作することにより施錠が解除されて前面パネル1bが開成可能状態となる。
【0023】
可変表示部5の周辺には遊技効果ランプ17が複数設けられており、ビッグボーナスゲームやボーナスゲームの発生時に点灯または点滅表示される。また、18はゲームオーバランプであり、スロットマシンが打止(ゲームオーバ)になったときに点灯または点滅表示される。
【0024】
本体部1a内略中央部には、シート部材からなる複数(本実施例では3個)のリール19L、19C、19Rを有する可変表示装置3が設けられている。それぞれのリール19L、19C、19Rは、各々に対応して設けられたステッピングモータからなるリール駆動モータ20L、20C、20Rにより、それぞれ独立して回転、停止するように構成されている。各リール19L、19C、19Rの外周には、複数種類のシンボルからなる識別情報が描かれており、これらシンボルが可変表示領域を構成する各可変表示窓5L、5C、5Rにおいて可変表示されるように構成されている。21L、21C、21Rは各リールの基準位置を検出するリール位置検出センサであり、このリール位置検出センサ21L、21C、21Rにより所定のシンボルの停止位置を導出出来るようになっている。
【0025】
可変表示装置3の下方には、コイン投入口4より投入されたコインを貯留するコイン貯留タンク22が、本体部1aを構成する下板上面に固設された案内レール23を介して前方に引き出し可能に配設されている。コイン貯留タンク22の下方部分にはコイン払出モータ24が設けられており、このコイン払出モータ24が回転することにより、コイン貯留タンク22内のコインがコイン払出口25から前面パネル1bの前面下部に設けられたコイン貯留皿26内に排出される。排出されたコインは、コイン払出口25の近傍に設けられる払出しコインセンサ27により検出され、所定枚数の払出コインが検出された時点でコイン払出モータ24が停止制御される。
【0026】
コイン貯留タンク22の側部には、前面に入賞確率を変更可能とする確率設定スイッチ28、電源スイッチ29、ビッグボーナスゲームの終了時や遊技中にエラーが生じた場合等において再びゲームを続行可能な状態にリセットするためのリセットスイッチ30等が配設された電源ユニット31が配設されている。これら各スイッチは、遊技場の管理者等が所持する特定のキーを電源ユニット31の前面上部に設けられたキー差込口32に挿入して所定のキー操作を行なうことで操作可能となるように構成されている。
【0027】
本体部1aにおける可変表示装置3の上部には、前述したような各種装置の制御を行う制御装置(図示略)が実装された制御基板40が内蔵された収納ケースが、後述する方法にて取り付けられている。
【0028】
なお、制御基板40は、詳しくは、スロットマシン1の各種動作を制御する機能を有しており、その中には、特に詳細な図示はしないが制御動作を所定の手順で実行することのできるCPUや、CPUの動作プログラムを格納するROM、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAMや、遊技に関わる遊技制御、及び図示しない通信ケーブル等を介してホール内に設置される管理コンピュータとのデータ通信を行うための通信ユニット等が設けられており、異常信号や遊技情報等の授受を管理コンピュータとの間で行うこと等が出来るようになっている。
【0029】
次に、本実施例における制御基板40を収納するための収納ケース50の構成を、以下図面に基づいて説明する。
【0030】
まず図3、図4に示されるように、収納ケース50は、平面視で横長矩形状に形成される制御基板40よりも若干大寸に形成され、下面が開口する略箱形の上部ケース51と、上面が開口する略箱形の下部ケース52とから構成されており、これら上部ケース51及び下部ケース52は、それぞれ透明な樹脂材により成形されている。
【0031】
下部ケース52の底板52aの上面四隅には支柱53がそれぞれ突設されており、上部ケース51の開口と下部ケース52の開口とを互いに付き合わせた時に、上部ケース51の下面四隅に形成された下向きの凹部58が支柱53の先端に嵌合され、上部ケース51と下部ケース52との位置ずれが防止されるようになっている。
【0032】
これら各支柱53には、制御基板40の四隅にそれぞれ形成される孔部54が挿通されるようになっているとともに、その外周所定高さ位置には、制御基板40の下面における孔部54近傍を係止可能な段部53aが形成されており、制御基板40を下部ケース52における所定高さ位置に支持出来るようになっている。また、下部ケース52の側板52b内面には、上下方向を向くリブ55が複数形成されており、支柱53の段部53aに四隅が支持された制御基板40の端縁部下面所定箇所がリブ55の上端に支持されるようになっている。
【0033】
下部ケース52における短寸の側板52c、52c’における長手方向両端には、上面に開口57が形成された凸部材56、56’がそれぞれ外向きに突設されている。図3中左側の凸部材56の外側面には、後述する本体部1aの取付部材に対して係止可能な係止ピン59が図中上下方向に向けてそれぞれ突設されている。また、図3中右側の凸部材56’の外側面には、後述する本体部1aの取付部材に対して係脱自在な側面視略U字状をなす係合片60が図中右側に向けて突設されている。この係合片60は弾性変形可能に構成されているとともに、外面所定箇所には取付部材に係合する係合凸部60aが形成されている。
【0034】
また、側板52c、52c’それぞれにおける凸部材56、56及び凸部材56’、56’の間には、特に図3及び図5に示されるように、上部ケース51と下部ケース52とを開放不能な状態で固着する固着手段及び、後述するように本体部1aに対して取り外し不能に取り付けるための取付手段を兼ねるワンウェイネジ61が、上下方向に貫通するように螺入されるネジ孔62が形成された複数(本実施例においては図中左右側にそれぞれ6つずつ)の封止片63と、ワンウェイネジ61が、上下方向に貫通するように挿通される貫通孔64が形成された複数(本実施例においては図中左右側にそれぞれ6つずつ)の保持片65とが、それぞれ側板52c、52c’より外方に張り出すように交互に突設されている。
【0035】
なお、このワンウェイネジ61は従来公知のものが使用されており、特に詳細な図示はしないが、一方向のねじ込みしか出来ず、すなわち、一度ねじ込むと逆方向に回して取り外すことが出来ない構成とされている。
【0036】
上部ケース51における短寸の側板51c、51c’における長手方向両端には、先端に外向きの係止爪66aが形成された下向きL字形の係止片66が形成されている。この係止片66は弾性変形可能に形成されており、図4に示されるように、上部ケース51と下部ケース52とを、互いに開口を付き合わすように閉塞した際に、先端が弾性変形して開口57内に挿入され、係止爪66aが凸部材56、56’における開口57縁部下面に係止されるようになっている。この係止作用により、上部ケース51及び下部ケース52が閉塞状態で保持される。
【0037】
側板51c、51c’それぞれにおける係止片66、66間には、特に図3及び図5に示されるように、ワンウェイネジ61の頭部を収容可能な凹部67及びネジ部を挿通可能とする貫通孔68が形成された封止片69が、収納ケース50の閉塞時において、各封止片63の上方に位置するように設けられている。また、これら複数の封止片69の間には、保持片65の貫通孔64の上方から挿通されたワンウェイネジ61の上方への逸脱を規制する規制片70が、収納ケース50の閉塞時において各保持片65の上方に位置するとともに、その下面が保持片65の上面と離間するように設けられている。
【0038】
また、上部ケース51には、制御基板40に実装されたコネクタ71を挿通可能な開口部72が、図3中左右側における所定箇所に形成されており、収納ケース50の閉塞時において、コネクタ71の上端が上部ケース51の上面よりも上方に突出されるようになっている。なお、これら上部ケース51及び下部ケース52には放熱用の複数の孔部73が所定箇所に形成されている。
【0039】
次に、このように構成された収納ケース50による制御基板40の収納、及び本体部1aへの取付け方法を説明する。
【0040】
ここで、本実施例においては、メーカーからの出荷時において、全ての保持片65の貫通孔64にワンウェイネジ61を挿通し、かつ、前述したように制御基板40を下部ケース52に収納した状態で、例えば図3中の収納ケース50における左側最上部及び右側最下部の封止片69、63にワンウェイネジ61が後述するように螺入され、上部ケース51及び下部ケース52が開放不能に固着されているため、これらワンウェイネジ61が螺入された封止片69、63を切断して収納ケース50を開放した状態にあるものとして以下固着方法を説明する。
【0041】
まず、後述するように、収納ケース50の左右側所定箇所を1箇所ずつ固着するために必要なワンウェイネジ61を、上記切断された封止片69、63に隣接する保持片65の貫通孔64から予め抜いておく。なお、図3中の収納ケース50における右側最上部及び左側最下部の保持片65の貫通孔64に挿通されたワンウェイネジ61は、例えばメーカーへの返品時等において使用されるため、本体部1aへの取付け固着時においてはこれ以外の貫通孔64に挿通されているワンウェイネジ61を使用することとしている。
【0042】
次に図4に示されるように、上部ケース51及び下部ケース52を、互いの開口を付き合わせるようにして閉塞する。この閉塞時において、下部ケース52に配設された制御基板40の上方に突出する各支柱58の先端が各凹部58内に嵌合されるとともに、各係止片66の先端が開口57内に挿入されて開口57の縁部に係止爪66aが弾性的に係止されることで、上部ケース51と下部ケース52とが閉塞状態で保持される。なお、ここで係止片66を変形させて係止爪66aと開口57の縁部との係止を解除すれば、収納ケース50を再度開放することが出来る。
【0043】
この状態において、封止片63のネジ孔62と封止片69の貫通孔68とが合致されるとともに、保持片65に保持されたワンウェイネジ61の上方に規制片70が位置し、その逸脱が規制される。
【0044】
そして図4及び図5中における上部ケース51の左側の所定の封止片69(ここではワンウェイネジ61を挿通しなかった保持片65に対応する封止片)の上方よりワンウェイネジ61を貫通孔68に挿通し、ネジ孔62に螺入する。
【0045】
本体部1aの背面板74上部には、図6及び図7(a)、(b)に示されるように、収納ケース50を取り付けるための取付部材75、76がそれぞれ固着されており、これら取付部材75、76に収納ケース50を取付け出来るようになっている。
【0046】
取付部材75は、図7(a)に示されるように、収納ケース50の係止ピン59を挿通可能な略L字状の切欠溝77が前端部に形成された取付片75aを有するとともに、その基板75bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。
【0047】
取付部材76は、図7(b)に示されるように、収納ケース50の係止片66の係止爪66aが係合可能な係合穴79が上下に形成された上下方向を向く取付片76aを有するとともに、その基板76bが背面板74の前面にリベット78を介して取り外し不能に固着されている。また、基板76bには、図7(b)及び図8に示されるように、収納ケース50の取付け時において、各封止片63のネジ孔62と合致するネジ孔80が設けられた略L字状の固定片81が形成されて複数形成されている。
【0048】
なお、前述したように、図3中の収納ケース50の左右側における最上部及び最下部の封止片69、63は、上部ケース51と下部ケース52との閉塞にのみ使用されるように設定されているため、固定片81は、収納ケース50の右側における最上部及び最下部の封止片69、63を除く中央よりの4つの封止片69、63に対応する分のみ設けられている。
【0049】
このように背面板74に固着された取付部材75、76を介して収納ケース50を固着するには、図6に示されるように、まず上下の係止ピン59を切欠溝77内に前方から差し込んだ後、この係止ピン59を中心に収納ケース50における図中右側を回動させるようにして取付部材75に押し込む。すると係止片66の係止爪66aが係合穴79に弾性係合され、収納ケース50が取付部材75、76により取付け状態で保持される。
【0050】
この状態において、特に図8に示されるように、取付部材76の各固定片81の上面と各封止片63の下面とが当接され、互いのネジ孔62とネジ孔80とが合致された状態となるため、図6に示されるように、本体部1aの前方より、収納ケース50の右側の所定の封止片69(ここではワンウェイネジ61を挿通しなかった保持片65に対応する封止片)の上方よりワンウェイネジ61を貫通孔68に挿通し、ネジ孔62を介してネジ孔80に螺入する。
【0051】
このように、固着手段を兼ねる取付手段としてのワンウェイネジ61が貫通孔68を挿通してネジ孔62に螺入されることにより、上部ケース51と下部ケース52とが閉塞状態で開放不能に固着されるとともに、さらにワンウェイネジ61がネジ孔80まで螺入されることにより、本体部1aに固着された取付部材76に対して取り外し不能に取付けられることになる。そしてこの状態において、収納ケース50の左側は、係止ピン59が略L字状の切欠溝77の奥方まで挿通され、切欠溝77からの逸脱が不能となるので、収納ケース50は、開放不能に、かつ、取付部材75、76を介して本体部1aの背面板74に対して取り外し不能に固着されることになる。
【0052】
この状態にて収納ケース50を開放しようとする場合や、収納ケース50を取付部材75、76から取り外そうとする場合、ワンウェイネジ61を取り外すことは困難であるため、これらワンウェイネジ61の螺入された封止片69及び63を切り離して切断する等、破壊するなどしない限り取り外すことは困難であるため、不正行為を効果的に抑制出来るばかりか、仮に取り外された場合にあっても、封止片69、63等が切り離されるなどして破壊等による機械的変形を伴う構成とされていることからその痕跡が確実に残るため、不正行為が行われた可能性があることが外観上から容易に判断することが可能となる。
【0053】
また、本実施例においては、収納ケース50の一端側を、固着手段としてのワンウェイネジ61にて開放不能に固着した状態で取付部材75に係止し、この状態で他端側を取付手段としての1本のワンウェイネジ61にて開放不能に、かつ、取付部材76の固定片81に取り外し不能な状態で取り付ければ、収納ケース50が本体部1aから取り外し不能となるため、ワンウェイネジ61により複数箇所を取り付けることなく、簡単な作業で取付けを行える。
【0054】
また、収納ケース50を開放不能な状態で固着する固着手段と、本体部1aに対して収納ケース50を取り外し不能に取り付ける取付手段とが、同一のワンウェイネジ61にて構成されているため、収納ケースの閉塞、及び本体部1aへの取付けを容易に行うことが出来るばかりか、収納ケース50が、ワンウェイネジ61による本体部1aへの取付け同時に開放不能に固着されるように構成されているため、作業性が向上する。
【0055】
また、収納ケース50には、固着手段にて上部ケース51と下部ケース52とを開放不能に固着するための封止片69、63が、それぞれ両側に複数ずつ設けられているため、メンテナンス時等、収納ケース50の開放や本体部1aからの取り外しが必要になった場合においても、再度収納ケース50を開放不能に、かつ本体部1aに対して取り外し不能に固着することが出来る。
【0056】
また、本実施例のように、固着手段としてのワンウェイネジ61によるによる収納ケース50の閉塞が、該収納ケース50の両端部における略中央部を挟んで互いに対向する箇所(例えば図3中左側の最上部から1つ下の封止片69と、図3中右側の最下部から1つ上の封止片69)にて行われることが好ましい。このようにすれば、固着手段としてのワンウェイネジ61により閉塞された状態の収納ケース50を開放しようとした際に隙間が開きにくい状態とすることが出来る。
【0057】
さらに、これら封止片63、69は、上部ケース51及び下部ケース52の側方より突出するように形成されていることから、取り外しや開放を必要とする際に制御基板40を覆う重要な部位を破壊することなく、封止片69、63を切り離すようにして取り外しや開放を行えるため、収納ケース50を繰り返し使用することが可能となる。
【0058】
また、このような固着手段や取付手段は、特に上記したようなワンウェイネジ61を用いた固着方法に限らず種々に変形可能であり、例えば図9(a)(b)に示されるような従来公知のブラインドリベット等を用いてもよい。このリベット90はアルミニウム製で、内部には貫通路91が形成されており、この貫通路91内には引きピン92が挿通可能とされている。引きピン92の一端部には、貫通路91の内径よりも大径の拡径部92aが形成されているとともに、この拡径部92aの基部には貫通路91の内径よりも小径の折曲部92bが形成されている。
【0059】
そして図9(a)の状態から所定の工具を使用して引きピン92を図9(b)中矢印方向に引くと、引き込まれた拡径部92aがリベット90下端部に係止され、リベット90の端部が変形される。さらに引き込まれた拡径部92aの移動が貫通路91における下部位置にて規制された時点で、リベット90の変形した端部とリベット90の頭部とにより封止片69と封止片63とが挟持された状態となり、さらに引きピン92を強く引っ張ることにより、折曲部92bから先端部が折れて分離し、取り外し不能な状態に固着されることになる。
【0060】
このような固着手段によるリベット90を用いた方法にあっても、前記ワンウェイネジ61を用いた固着と同様の作用、効果を得ることが出来る。
【0061】
前記各実施例における各要素は、本発明に対して以下のように対応している。
【0062】
本発明の請求項1は、表示状態が変化可能な可変表示装置(3)における表示結果を導出表示させ、該可変表示装置(3)の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に所定の有価価値を遊技者に付与する等の遊技制御を司る制御装置が実装された制御基板(40)が、開放可能な収納ケース(50)により収納された状態で筐体(本体部1a)内に設けられたスロットマシン(1)であって、固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)により開放不能に固着出来るとともに、取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)により前記筐体の所定箇所に対して取り外し不能に取付け出来るように構成されており、前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による固着後における開放、及び前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による取付け後における筐体からの取り外しの際に、その少なくとも一部が外部から認識可能な機械的変形を伴うようになっている。
【0063】
本発明の請求項2は、前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケース(50)の筐体(本体部1a)への取付けにより、前記収納ケース(50)が開放不能に固着されるようになっている。
【0064】
本発明の請求項3は、前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケース(50)の閉塞、及び前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による筐体(本体部1a)への取付けが複数回行えるようになっている。
【0065】
本発明の請求項4は、前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケースの閉塞、及び前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケース(50)の筐体(本体部1a)への取付けのうち、少なくとも最初と最後が前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケース(50)の閉塞のみである。
【0066】
本発明の請求項5は、少なくとも前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)による収納ケース(50)の閉塞が、該収納ケース(50)の両端部における略中央部を挟んで互いに対向する箇所にて行われている。
【0067】
本発明の請求項6は、前記収納ケース(50)の一端側が前記固着手段(ワンウェイネジ61、リベット90)により開放不能に固着されており、また、他端側が前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)により開放不能に、かつ、筐体(本体部1a)の所定箇所に取り外し不能に取付けられている。
【0068】
本発明の請求項7は、前記収納ケース(50)は、その一端側に前記筐体(本体部1a)の所定箇所に形成された係止溝(切欠溝77)に対して係脱可能な係止部(係止ピン59)を有しており、他端側を前記取付手段(ワンウェイネジ61、リベット90)により開放不能に、かつ、筐体(本体部1a)の所定箇所に取り外し不能に取付けることで、前記係止部(係止ピン59)の前記係止溝(切欠溝77)からの逸脱が不能となり、筐体(本体部1a)からの取り外しが不可となるようになっている。
【0069】
本発明の請求項8は、前記固着手段、及び前記取付手段が、一方向にのみ回動可能なネジ(ワンウェイネジ61)である。
【0070】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0071】
例えば、上記実施例における収納ケース50は、本体部1aの上部所定箇所に固着されていたが、取付け箇所等は任意であり、例えば前面パネル1bの裏面所定箇所等に取り外し不能に固着されてもよい。
【0072】
また、上記実施例においては、1つのワンウェイネジ61が、固定手段及び取付手段としての機能を備えるようになっていたが、それぞれ別の部材により構成されていてもよい。
【0073】
【発明の効果】
本発明は以下の効果を奏する。
【0074】
(a)請求項1項の発明によれば、制御基板が収納ケースにより覆われた状態で本体に固着されることにより、制御装置等への不正を困難とすることが出来るとともに、固着手段により収納ケースが開放不能に、かつ本体に取り外し不能に取り付けられると、収納ケースを開放したり本体から取り外す際には、収納ケースの一部が破壊されて機械的な変形を伴うことにより痕跡が確実に残ることになるため、不正が行われた可能性があることが外部から直ちに発見出来るようになり、不正行為を効果的に抑制出来ることになる。また、収納ケースの係止部を係止させ、第1の封止部及び固定部を固着手段により固着するのみで、収納ケースを筐体に対して取り外し不能に取り付け出来るため、取付けの作業性が向上する。また、例えば、メーカーから店舗への出荷時や店舗からメーカーへの返品時等において収納ケースを開放不能な状態とすることができるので、スロットマシンの本体と収納ケースとを別送する場合でも、制御基板を収納ケースに収納した状態で安全に輸送できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用されたスロットマシンを示す正面図である。
【図2】図1のスロットマシンの筐体内部構造を示す正面図である。
【図3】収納ケースを示す正面図及び平面図である。
【図4】図3のA-A断面図である。
【図5】上部ケースと下部ケースの固着手段による固着状態を示す断面図である。
【図6】収納ケースの筐体への取付け状態を示す図である。
【図7】(a)及び(b)は、筐体に固着された収納ケースの取付部材を示す斜視図である。
【図8】取付部材と収納ケースとの固着状態を示す断面図である。
【図9】固着手段及び取付手段の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 スロットマシン
1a 本体部
1b 前面パネル
2 表示窓
3 可変表示装置
4 コイン投入口
5 可変表示部
5L 左可変表示部
5C 中可変表示部
5R 右可変表示部
6 クレジット表示器
7 クレジット操作ボタン
8 スタートランプ
9 スタートレバー
10 有効ライン表示ランプ
11L 停止ボタン
11C 停止ボタン
11R 停止ボタン
12L 左操作有効ランプ
12C 中操作有効ランプ
12R 右操作有効ランプ
13 精算ボタン
14 ゲーム回数表示器
15 払出数表示器
16 施錠装置
17 遊技効果ランプ
18 ゲームオーバランプ
19L リール
19C リール
19R リール
20L リール駆動モータ
20C リール駆動モータ
20R リール駆動モータ
21L リール位置検出センサ
21C リール位置検出センサ
21R リール位置検出センサ
22 コイン貯留タンク
23 案内レール
24 コイン払出モータ
25 コイン払出口
26 コイン貯留皿
27 コインセンサ
28 確率設定スイッチ
29 電源スイッチ
30 リセットスイッチ
31 電源ユニット
32 キー差込口
40 制御基板
50 収納ケース
51 上部ケース
51a 底板
51c、51c’側板
52 下部ケース
52a 底板
52c、52c’側板
53 支柱
53a 段部
54 孔部
55 リブ
56、56’ 凸部材
57 開口
58 凹部
59 係止ピン
60 係合片
60a 係合凸部
61 ワンウェイネジ
62 ネジ孔
63 封止片
64 貫通孔
65 保持片
66 係止片
66a 係止爪
67 凹部
68 貫通孔
69 封止片
70 規制片
71 コネクタ
72 開口部
73 孔部
74 背面板
75 取付部材
75a 取付片
75b 基板
76 取付部材
76a 取付片
76b 基板
77 切欠溝
78 リベット
79 係合穴
80 ネジ孔
81 固定片
90 リベット
91 貫通路
92 ピン
92a 拡径部
92b 折曲部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-04-17 
結審通知日 2012-04-19 
審決日 2012-05-11 
出願番号 特願2000-246777(P2000-246777)
審決分類 P 1 113・ 111- ZD (A63F)
P 1 113・ 121- ZD (A63F)
P 1 113・ 16- ZD (A63F)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
登録日 2004-08-20 
登録番号 特許第3587771号(P3587771)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 重信 和男  
代理人 清水 英雄  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 清水 英雄  
代理人 小椋 正幸  
代理人 高木 祐一  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 溝渕 良一  
代理人 秋庭 英樹  
代理人 小椋 正幸  
代理人 川下 清  
代理人 振角 正一  
代理人 溝渕 良一  
代理人 重信 和男  
代理人 高木 祐一  
代理人 今田 晋一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ