• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1275792
審判番号 不服2012-2909  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-15 
確定日 2013-06-20 
事件の表示 特願2006-227081「放電プラズマ生成補助装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月 5日出願公開、特開2007- 87937〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・原査定の拒絶の理由
本願は、平成18年8月23日の出願(国内優先権主張 平成17年8月26日)であって、平成23年11月7日付け(送達は、同年同月15日である。)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年2月15日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、原査定の拒絶の理由は、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、本願優先日前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開平6-333532号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明であり、又は、この発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、というものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「放電媒体であるガスが封入された気密容器と、気密容器の内部と外部との少なくとも一方に配置され前記ガスを放電させて放電プラズマを生成するためのエネルギを供給するエネルギ供給手段とを備えた発光装置に用いられ放電プラズマの生成を補助する放電プラズマ生成補助装置であって、
気密容器内に配置され前記ガス中へ電子を供給する電子源と、気密容器内に配置され電子源から放出された電子の衝突により前記ガス中へ二次電子を放出する二次電子放出部とを備えてなることを特徴とする放電プラズマ生成補助装置。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
これに対して、引用例には、次の事項が図面とともに記載されている。
(1-1)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は細長いガラス管の両端部の近くにそれぞれ配置された電子放射用の中心電極及びこの中心電極を囲むグロー電極を有する複合放電ランプに係り、例えば熱陰極低圧蛍光放電灯に関する。」
(1-2)
「【0016】図4は本発明の別の実施例を示すものであり、グロー電極32として図12に断面で示したドーム形のものを用いている。図12に示したグロー電極32の直径Dは8mm、高さHは4mm、ドーム内には幅Cが4mmで巻線とされた10W用のフィラメントコイル5がガラス管14の横断方向に配置されている。
【0017】図4において、ガラス管14の直径は25.5mm、長さは33cmであり、ガラス管14内には5torrのアルゴンガス16と水銀蒸気圧0.006mmHgが封入されており、ガラス管14の内壁には蛍光膜9が形成されている。ガラス管14は4本の口金ピン27,28,29,30を有し、口金ピン27,28間にはグロースタータ15が、口金ピン29,30間には交流電源16及び安定器31が接続される。
【0018】左側が負(-)側の場合フィラメントコイル5から発生流出する熱電子10はグロー電極32の開口部25からガラス管14の内壁とグロー電極32の外壁間を流れ、ガラス管14の中央部を通過して右側の正(+)側電極に到達する。これと並行して、グロー電極32の底部26などの外壁面にイオン12が衝突して発生した二次電子11も正側電極に引かれる。すなわち、ガラス管14の中央部は熱電子10と二次電子11とが混在した状態でランプ電流が流れる。このランプ電流はほとんど正側のグロー電極32の底部26などの外壁面に到達して、その中のフィラメントコイル5には到達しない。従って、正側のグロー電極32の開口部25付近は電子の流れが少ないのでほとんど発光しない。
【0019】しかし、電源16は交流電源であるから、半サイクルごとに負側と正側とが逆転するので、結果的にはガラス管14の両端部はともに明るく点灯することになる。グロー電極の近くの暗部をできるだけ少なくするためには、図3に示した円筒状のグロー電極6よりも、図4及び図12に示したドーム形のグロー電極32の方が有利である。又グロー電極の直径をフィラメントコイルに接触しない最小の直径とするとより効果的である。
【0020】負側で発生する電子10には熱電子の他に、フィラメントコイル5の抵抗とグロー電極32との間の電位差(約11?12V)によってグロー放電が発生することによる二次電子が含まれている。かような電子10が開口部25を通って正側電極に向かって流れるわけである。グロー電極32内のフィラメントコイル5のエミッターはイオン衝撃エネルギーから全く隔離されているので、スパッタリングを無くすることができるわけである。
【0021】フィラメントコイル5のエミッターは自己の蒸発によって失われるが、その際エミッターの飛散粒子はほとんどグロー電極32の内壁面に付着する。付着したエミッターは容易に電子を放出するので放電電流を増加させるか、又は飛散してフィラメントコイル5或いは他の場所に付着して、そこからまた電子を放出する。
【0022】このようにして、フィラメントコイル5をイオン衝撃から完全に隔離してエミッターのスパッタリングを無くし、加えて、自己蒸発による飛散粒子はグロー電極の内壁面とフィラメントコイルとの間をキャッチボールするように往復して電子の放出を継続するので、エミッターの消耗が極度に少なくなり、その結果としてランプの寿命が大幅に延びることができるのである。」

(2)引用発明
上記記載、及び図4、図12の記載を総合すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認める。
「アルゴンガス16が封入されたガラス管14と、ガラス管14の内部と外部との少なくとも一方に配置され前記アルゴンガス16を放電させて放電プラズマを生成するためのエネルギを供給する口金ピン29,30とを備えた複合放電ランプに用いられ放電プラズマの生成を補助する、フィラメントコイル5及びグロー電極32であって、
ガラス管14内に配置され前記アルゴンガス16中へ熱電子を供給するフィラメントコイル5と、ガラス管14内に配置され、前記アルゴンガス16中へ二次電子を放出する、フィラメントコイル5又はグロー電極32とを備えてなることを特徴とするフィラメントコイル5及びグロー電極32。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
(1)本願発明と引用発明とを、主たる構成要素毎に対比する。
引用発明における、「アルゴンガス16」、「ガラス管14」、「口金ピン29,30」、「複合放電ランプ」、「フィラメントコイル5及びグロー電極32」は、それぞれ、
本願発明における、「放電媒体であるガス」、「気密容器」、「エネルギ供給手段」、「発光装置」、「放電プラズマ生成補助装置」に相当する。
また、引用発明における、「熱電子」、「フィラメントコイル5」、「二次電子」、「フィラメントコイル5又はグロー電極32」は、それぞれ、
本願発明における、「電子」、「電子源」、「二次電子」、「二次電子放出部」に相当する。

(2)以上を総合すると、両者の一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
「放電媒体であるガスが封入された気密容器と、気密容器の内部と外部との少なくとも一方に配置され前記ガスを放電させて放電プラズマを生成するためのエネルギを供給するエネルギ供給手段とを備えた発光装置に用いられ放電プラズマの生成を補助する放電プラズマ生成補助装置であって、気密容器内に配置され前記ガス中へ電子を供給する電子源と、気密容器内に配置され、
前記ガス中へ二次電子を放出する二次電子放出部とを備えてなることを特徴とする放電プラズマ生成補助装置。」

【一応の相違点】
本願発明では、二次電子放出部が、電子源から放出された電子の衝突により二次電子を放出するとしているのに対し、
引用発明では、フィラメントコイル5又はグロー電極32(本願発明の「二次電子放出部」に相当、以下、同様。)のどちらが、フィラメントコイル5(電子源)から放出された熱電子(電子)の衝突により二次電子を放出するのかが明らかでない点。

5.判断
上記一応の相違点について検討する。
なるほど、引用例には電子10に含まれる熱電子と二次電子のうち、二次電子が、グロー電極32から放出される旨の明示的な記載はない。
しかしながら、引用例において、仮に、二次電子がフィラメントコイル5から放出されるとすると、一旦フィラメントコイル5から放出された熱電子が、再びフィラメントコイル5に戻ることとなり、このことは技術的に不自然である。
したがって、引用発明におけるグロー電極32(二次電子放出部)が、フィラメントコイル5(電子源)から放出された熱電子(電子)の衝突により二次電子を放出すると解するのが自然である。
よって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

また、グロー電極32は、フィラメントコイル5よりも面積が大きいから、二次電子放出の増大を目的として、グロー電極32(二次電子放出部)が、フィラメントコイル5(電子源)から放出された熱電子(電子)の衝突により二次電子を放出するように構成することは、その作用からみて当業者が容易に想到しうることであるともいえる。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と実質的に同一であり、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるから、特許法第29条第1項3号及び同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-04-17 
結審通知日 2013-04-23 
審決日 2013-05-08 
出願番号 特願2006-227081(P2006-227081)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 佳久  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 関根 洋之
中塚 直樹
発明の名称 放電プラズマ生成補助装置  
代理人 北出 英敏  
代理人 西川 惠清  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ