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審決分類 |
審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 C08L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L |
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管理番号 | 1276078 |
審判番号 | 不服2011-21638 |
総通号数 | 164 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-08-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-06 |
確定日 | 2013-06-25 |
事件の表示 | 特願2007-535144「高性能成形物品、それらの製造方法、及びそれらの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日国際公開、WO2006/037756、平成20年 5月15日国内公表、特表2008-516029〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成17年9月30日(パリ条約による優先権主張 2004年10月4日 米国(US) 2004年10月19日(2件) 米国(US) 2004年12月22日(3件) 欧州特許庁(EP) 2005年4月12日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、平成22年6月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月5日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成23年5月27日付けで拒絶査定がなされ、同年10月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成24年2月6日付けで前置報告がなされ、当審で同年7月30日付けで審尋がなされ、同年11月6日に回答書が提出されたものである。 第2.平成23年10月6日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [結論] 平成23年10月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.手続補正の内容 平成23年10月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、平成22年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の内容について、 「 成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種の高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める繰り返し単位(R1): 【化1】 (R1) が以下の繰り返し単位から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 【化2】 (i) (ii) (iii) (iv) 及びそれらの混合物」 (なお、以下、上記ポリマー(P)の繰り返し単位(R1)の構造及び説明を省略して「補正前繰り返し単位(R1)」とのみ記す場合がある。) を、 「 成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、ポリマー成分として少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める繰り返し単位(R1): 【化1】 (R1) が以下の繰り返し単位から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 【化2】 及びそれらの混合物」 (なお、以下、上記ポリマー(P)の繰り返し単位(R1)の構造及び説明を省略して「補正後繰り返し単位(R1)」とのみ記す場合がある。) とする、補正事項を含むものである。 2.本件補正の目的について 上記した特許請求の範囲についての補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)であるポリマー(P)の補正前繰り返し単位(R1)を補正後繰り返し単位(R1)に限定するとともに、ポリマー組成物(C)に含まれるポリマー(P)成分を「少なくとも1種」から「1種のみ」とする補正事項を含むものであり、請求項1についてする本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件について そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「補正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載した発明特定事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものである。 成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、ポリマー成分として少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 (2)刊行物等及びその記載事項 以下、 特願2011-221887号を「引用出願」、 特公昭49-30519号公報を「刊行物A」、 特開昭64-51439号公報を「刊行物B」、 特開昭62-502407号公報を「刊行物C」という。 A.刊行物Aの記載事項 当審において新たに発見した、本願の優先日前に頒布された刊行物Aには、以下の事項が記載されている。 A1「 」 (第2欄7行目?第2欄32行目) (なお、以下、上記式I又は/及びIIで表されるポリアリルエーテルスルフォンのの構造式とその説明を省略して「刊Aポリアリルエーテルスルフォン」とのみ記す場合がある。) B.刊行物Bの記載事項 当審において新たに発見した、本願の優先日前に頒布された刊行物Bには、以下の事項が記載されている。 B1「 」(第6頁左下欄9行目?14行目) B2「 」(第7頁右上欄下から4行目?第8頁左上欄8行目) C.刊行物Cの記載事項 当審において新たに発見した、本願の優先日前に頒布された刊行物Cには、以下の事項が記載されている。 C1「 」(第5頁左上欄10行目?11行目) C2「 」(第5頁右上欄下から4行目?右下欄第6行目) (3)引用出願に記載された発明 引用出願は、本願の分割出願に係るものであり、本件補正と同時に出願され、平成23年11月4日に手続補正書が提出されたものである。そして、引用出願の請求項1に係る発明(以下、「引用出願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。 「 成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含む少なくとも1種のポリマー組成物(C)を含み、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める繰り返し単位(R1): 【化1】 (R1) が以下の繰り返し単位から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 【化2】 (i) (ii) (iii) (iv) 及びそれらの混合物」 (なお、以下、上記ポリマー(P)の繰り返し単位(R1)の構造及び説明を省略して「引用出願繰り返し単位(R1)」とのみ記す。) (3-1)対比・判断 引用出願発明における、「該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含む少なくとも1種のポリマー組成物(C)を含み」との発明特定事項は、前記下線部について、該成形物品(A1)が該ポリマー組成物(C)のみである「該成形物品(A1)が、組成物(C)からなる」場合と、「該成形物品(A1)が、組成物(C)とその他の成分を含む」場合との、事実上の選択肢を有するものと認められる。そして、先願発明又は後願発明の発明を特定するための事項が二以上の選択肢を有する場合、先願発明(後願発明)の請求項が、発明を特定するための事項に関しての事実上の選択肢を有するものである場合には、当該選択肢中のいずれか一つのみを発明を特定するための事項と仮定したときの発明と、後願発明(先願発明)との対比を行うことにより、両者が同一であるか否かを判断する(審査基準第II部第4章3.3(3)”○1””○2”(「”○1”」、「”○2”」は1、2を○囲いしていることを意味する。))ところ、上記記載の選択肢の前者を発明を特定するための事項と仮定したときの発明は下記のとおりである。 「成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める引用出願繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。」 (以下、「引用出願選択発明」という。) そして、本願補正発明と引用出願選択発明とは同一であるから、本願補正発明と引用出願発明とは同一である。 (4)刊行物Aに記載された発明 摘示A1の記載からみて、刊行物Aには以下の発明(以下「刊行物A発明」という。)が記載されている。 溶融範囲が110℃?380℃の中間である刊Aポリアリルエーテルスルフォンを用いたフィルム又は繊維。 (4-1)対比・判断 本願補正発明と刊行物A発明とを比較する。 刊行物A発明における「刊Aポリアリルエーテルスルフォン」に関して、刊行物Aには、Ar基として、ジフェニレンを用いる旨の記載(摘示A1参照。)があり、この場合、刊行物Aに記載の式IIと本願補正発明における補正後繰り返し単位(R1)とが一致することからすると、刊行物A発明における「刊Aポリアリルエーテルスルフォン」は、本願補正発明における「その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマー」に相当する。 刊行物A発明における「溶融範囲が110℃?380℃の中間」は、本願補正発明における「ポリマー成分として少なくとも240℃のガラス転移温度を有する」に重複一致する。 刊行物A発明における「フィルム又は繊維」は、本願補正発明における「成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく」に相当する。 そして、フィルムに関して、通常その厚さは250μm未満である(JIS Z 1707)ことからすると、刊行物Aに記載のフィルムの厚さが500μm未満であることは記載されているに等しい事項である。 さらに、刊行物A発明は、刊Aポリアリルエーテルスルフォンのみを用いていることから、本願補正発明における「1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり」との規定を満たすと認められる。 よって、本願補正発明と刊行物A発明との間に差異はない。 (5)刊行物Bに記載された発明 摘示B2の記載からみて、刊行物Bには以下の発明(以下「刊行物B発明」という。)が記載されている。 4,4’-ビス(4-クロロフェニルスルホニル)ビフェニルとビフェノール、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルスルホン及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種を反応して得られたアリールエーテルスルホンポリマーからなる4×4×0.020インチのプラーク。 (5-1)対比・判断 本願補正発明と刊行物B発明とを比較する。 刊行物B発明における「プラーク」「アリールエーテルスルホンポリマー」は、それぞれ本願補正発明における「成形物品(A1)」「その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマー」に相当する。 そして、刊行物B発明におけるアリールエーテルスルホンポリマーと本願補正発明におけるポリマー(P)とはその構造が同一であることから、刊行物B発明における「アリールエーテルスルホンポリマー」は、本願補正発明における「少なくとも240℃のガラス転移温度を有する」との規定を満たしていると認められる。 さらに、刊行物B発明は、ポリマー成分として、ポリアリルエーテルスルフォンのみを用いていることから、本願補正発明における「1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり」との規定を満たすと認められる。 したがって、両発明は、 成形物品(A1)であって、該成形物品(A1)が、ポリマー成分として少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 〔相違点〕 本願補正発明は、成形物品(A1)が、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、と特定しているのに対し、刊行物B発明は、プラークとのみ特定している点 〔相違点〕について検討する。 しかし、刊行物Bには、樹脂を溶液塗布又は押出により薄いフィルムに形成する旨の記載(摘示B1参照。)があり、通常フィルムは、250μm未満の厚さを意味することからすると、509μmに代えて、500μm以下のフィルムとすることは、当該技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)において適宜設定しうる事項であり、格段の困難性はない。そして、そうしたことによる格別の効果も認められない。 よって、本願補正発明は刊行物B発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (6)刊行物Cに記載された発明 摘示C2の記載からみて、刊行物Cには以下の発明(以下「刊行物C発明」という。)が記載されている。 4,4’-ビス(4-クロロフェニルスルホニル)ビフェニルとジヒドロキシジフェニルスルホン、ビフェノール及びヒドロキノンから選ばれる少なくとも1種を反応して得られたアリールエーテルスルホンポリマーからなる4×4×0.020インチのプラック。 (5-1)対比・判断 本願補正発明と刊行物C発明とを比較する。 刊行物C発明における「プラック」「アリールエーテルスルホンポリマー」は、それぞれ本願補正発明における「成形物品(A1)」「その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマー」に相当する。 そして、刊行物C発明におけるアリールエーテルスルホンポリマーと本願補正発明におけるポリマー(P)とはその構造が同一であることから、刊行物C発明における「アリールエーテルスルホンポリマー」は、本願補正発明における「少なくとも240℃のガラス転移温度を有する」との規定を満たしていると認められる。 さらに、刊行物C発明は、ポリマー成分として、ポリアリルエーテルスルフォンのみを用いていることから、本願補正発明における「1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり」との規定を満たすと認められる。 したがって、両発明は、 成形物品(A1)であって、該成形物品(A1)が、ポリマー成分として少なくとも240℃のガラス転移温度を有する1種のみの高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正後繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 の点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 〔相違点〕 本願補正発明は、成形物品(A1)が、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、と特定しているのに対し、刊行物C発明は、プラックとのみ特定している点 〔相違点〕について検討する。 しかし、刊行物Cには、樹脂を塗膜、フィルム又は繊維に二次加工する旨の記載(摘示C1参照。)があり、通常フィルムは、250μm未満の厚さを意味することからすると、509μmに代えて、500μm以下のフィルムとすることは、当業者において適宜設定しうる事項であり、格段の困難性はない。そして、そうしたことによる格別の効果も認められない。 よって、本願補正発明は刊行物B発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 (6)まとめ したがって、本願補正発明は、本願と同日の出願に係る引用出願発明と同一であり、本願補正発明は特許法第39条第2項の規定により、特許を受けることができない。また、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。さらに、本願補正発明は、刊行物B又はCに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。よって、本件補正は特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成22年11月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 成形物品(A1)であって、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種の高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正前繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 2.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由とされた平成22年6月28日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は、 この出願の本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記引用例2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 引用例2:特開平2-227460号 というものである。 3.当審の判断 (1)引用例2の記載事項 平成22年6月28日付け拒絶理由通知において引用された、本願の優先日前に頒布された引用例2には、以下の事項が記載されている。 2A「 」(特許請求の範囲 請求項1) (なお、以下、上記「ポリイミドまたはポリアミド-イミド」をその構造と説明を省略して単に「ポリイミドまたはポリアミド-イミド」と記す。) 2B「 」(特許請求の範囲 請求項6) (なお、以下、引用例2において「ポリ(アリールスルホン)」は、上記請求項6の構造を有するものとする。) 2C「 」(第17頁右下欄1行目?12行目) 2D「 」(第22頁左下欄1行目?11行目) (2)引用例2に記載された発明 摘示2A?2Cの記載からみて、引用例2には以下の発明(以下「引用例2発明」という。)が記載されている。 ポリ(アリールスルホン)とポリイミドまたはポリアミド-イミドとの混和性配合物からなる成型品において、ポリ(アリールスルホン)が2?98重量%であり、残りがポリイミドまたはポリアミド-イミドである、成型品。 (2)対比・判断 本願発明と引用例2発明とを比較する。 引用例2発明における「成型品」「ポリ(アリールスルホン)」「混和性配合物」は、それぞれ本願発明における「成形物品(A1)」「その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正前繰り返し単位(R1)から選択されルポリマー」「組成物」に相当する。 そして、引用例2発明のポリ(アリールスルホン)と本願発明におけるポリマー(P)とはその構造が同一であることから、引用例2発明における「ポリ(アリールスルホン)」は、本願発明における「少なくとも240℃のガラス転移温度を有する」との規定を満たしていると認められる。 引用例2発明における「ポリ(アリールスルホン)が2?98重量%」は、本願発明における「ポリマー(P)を80質量%を超えて含む」と重複一致する。 したがって、両発明は、 成形物品(A1)であって、該成形物品(A1)が、少なくとも240℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種の高ガラス転移温度スルホンポリマー(P)を80質量%を超えて含むポリマー組成物(C)からなり、該ポリマー(P)が、その繰り返し単位の50質量%よりも多くを占める補正前繰り返し単位(R1)から選択されるポリマーである、上記成形物品(A1)。 の点で一致し、以下の点で一応相違するものと認められる。 〔相違点〕 本願発明は、成形物品(A1)が、その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満であり、と特定しているのに対し、引用例2発明は、成型品とのみ特定している点 〔相違点〕について検討する。 引用例2には、2×2×0.010インチのプラックに成型する旨の記載(摘示2D参照。)があり、0.010インチとの記載から、上記成形物の厚さは254μm(0.010×25.4×1000)であることからすると、引用例2発明は、本願発明における 「その特徴的な次元の1つ(“厚み-高さ”)がその他の2つの次元よりもかなり小さく、500μm未満」である態様を含むといえる。 よって、本願発明と引用例2発明との間に差異はない。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないという原査定の理由は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-01-22 |
結審通知日 | 2013-01-28 |
審決日 | 2013-02-13 |
出願番号 | 特願2007-535144(P2007-535144) |
審決分類 |
P
1
8・
4-
Z
(C08L)
P 1 8・ 113- Z (C08L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 のぞみ、福井 美穂、柴田 昌弘 |
特許庁審判長 |
蔵野 雅昭 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 加賀 直人 |
発明の名称 | 高性能成形物品、それらの製造方法、及びそれらの使用 |
代理人 | 浅井 賢治 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 箱田 篤 |