• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1276094
審判番号 不服2012-5798  
総通号数 164 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-29 
確定日 2013-06-26 
事件の表示 特願2007-523481「電磁波増幅中継器及びこれを用いた無線電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日国際公開,WO2006/011769,平成20年 3月21日国内公表,特表2008-508842〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,2005年(平成17年) 7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2004年(平成16年) 7月29日,大韓民国)を国際出願日とする特許出願であって,平成23年11月16日付けで拒絶査定(発送日:平成23年11月29日)がなされ,これに対して,平成24年 3月29日に本件審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

II.平成24年 3月29日付けの手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年 3月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正前の平成23年 3月 7日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲は,以下のとおりである。
「【請求項1】
人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁波の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器において,
所定の太さを有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,
前記巻かれた誘導コイルと結合して,磁束の大きさを増加させるための一定の大きさと形態を有する磁性体と,
前記誘導コイルと連結され,共振回路を構成する可変コンデンサーとで構成され,
前記増幅中継器は,電磁波発生源送信コイル及び受信コイルと付着設置されるか,または電磁波発生源の受信コイルの一側に別に付着設置され,電磁波発生源と受信コイルとの距離を考慮し,電磁波発生源の送信コイルと受信コイルとの間に前記増幅中継器が少なくとも1つ以上設置されることを特徴とする電磁波磁場増幅中継器。
【請求項2】
前記所定の巻線数を巻回した誘導コイルは,ソレノイド形態またはスパイラル形態に設計,製作されることを特徴とする請求項1に記載の電磁波磁場増幅中継器。
【請求項3】
前記誘導コイルと結合して磁束を増加させる一定の大きさと形態を有する磁性体は,フェライトコアまたは磁性を有する磁性体で構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波磁場増幅中継器。
【請求項4】
前記所定の巻線数を巻回した誘導コイルを互いに並列または直列に締結し,誘導コイルの抵抗及びインダクタンスを制御し,電磁波の磁場を效率的に発生するように構成されることを特徴とする請求項3に記載の電磁波磁場増幅中継器。
【請求項5】
前記共振回路を構成する可変コンデンサーは,誘導コイルと並列または直列に締結され,電磁波の磁場を増幅するように構成されることを特徴とする請求項4に記載の電磁波磁場増幅中継器。
【請求項6】
人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁波の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器を用いた無線電力変換装置において,
一定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,磁性体と,可変コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器と,前記増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生する誘導コイル及び磁性体と,
前記誘導コイルと結合して電力変換効率を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うための可変コンデンサーと,
前記誘導コイルと可変コンデンサーにより遺棄された電圧を整流する整流ダイオードと,
前記電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサーとを備えることを特徴とする無線電力変換装置。
【請求項7】
前記磁性体と結合された誘導コイルは,所望の形態及び大きさに所定の巻線数を巻回した誘導コイルを並列または直列に締結し,誘導コイルの抵抗及びインダクタンスを制御することによって電力変換効率を向上できるように構成した電磁波磁場増幅中継器を含むことを特徴とする請求項6に記載の無線電力変換装置。
【請求項8】
前記増幅中継器は,電磁波発生源送信コイル及び受信コイルと付着設置されるか,または電磁波発生源の受信コイルの一側に別に付着設置されることができ,電磁波発生源と受信コイルとの距離を考慮し,電磁波発生源の送信コイルと受信コイルとの間に増幅中継器が少なくとも1つ以上設置されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の無線電力変換装置。
【請求項9】
前記増幅中継器,送信コイル,及び受信コイルは,ソレノイドまたはスパイラル形態に設計,製作されることを特徴とする請求項8に記載の無線電力変換装置。
【請求項10】
前記無線電力変換装置は,電磁波を人為的に発生させるソレノイドまたはスパイラル形態の送信コイルが付着されている電磁波発生源をさらに付加した増幅中継器を含むことを特徴とする請求項6に記載の無線電力変換装置。
【請求項11】
人為的な電磁波発生源に送信のための送信コイルを巻いたコアの一側に誘導コイルを巻いてキャパシタと結合させて増幅中継器を設置した構成と,受信のための受信コイルを巻いたコアの一側に誘導コイルを巻いてキャパシタと結合させて増幅中継器を設置した構成と,送信コイル及び受信コイルのコア両側の全てに増幅中継器を設置した構成の中から1つを選んで構成することを特徴とする請求項6に記載の無線電力変換装置。
【請求項12】
人為的な電磁波発生源に送信のためのスパイラルコイルの外郭にスパイラルコイルを巻いてキャパシタと結合させて増幅中継器を設置する構成と,受信のためのスパイラルコイルの外郭にスパイラルコイルを巻いてキャパシタと結合させて増幅中継器を設置する構成と,送信及び受信のためのスパイラルコイルの外郭にスパイラルコイルを巻いてキャパシタと結合させて増幅中継器を設置する構成の中から1つを選んで構成することを特徴とする請求項6に記載の無線電力変換装置。」

これに対し,本件補正により,特許請求の範囲は,以下のように補正された。
「【請求項1】
人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁波の磁場を増幅させて中継することができる電磁波磁場増幅中継器を用いた無線電力変換装置において,
一定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,磁性体と,可変コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器と,前記電磁波磁場増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生する誘導コイル及び磁性体と,
前記誘導コイルと結合して電力変換効率を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うための可変コンデンサーと,
前記誘導コイルと可変コンデンサーにより,誘導された電圧を整流する整流ダイオードと,
前記電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサーを備えるレシーバー(審決注:「電磁気波磁場増幅中継器」は誤記と認める。(平成24年12月18日の面接にて確認済。))と,を含み,
前記電磁波磁場中継器は,
前記電磁波発生源に隣接して位置する第1中継器と,
前記第1中継器から一定の間隔離れた第2中継器と,を備え,
前記第1中継器は,第1誘導コイル及び前記第1誘導コイルに接続されて共振回路を構成する第1コンデンサーを含み,
前記第2中継器は,第2誘導コイル及び前記第2誘導コイルに接続されて共振回路を構成する第2コンデンサーを含む,
ことを特徴とする無線電力変換装置。
【請求項2】
前記電磁波磁場増幅中継器は,少なくとも1つの第3中継器をさらに備え,
前記少なくとも1つの第3中継器は,第3誘導コイル及び前記第3誘導コイルに接続されて共振回路を構成する第3コンデンサーを含む,ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力変換装置。」

2.目的要件について
そこで,本件補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当するかについて検討する。
改正前の特許法第17条の2第4項2号の「特許請求の範囲の減縮」は,特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限られ,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請され,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。
本件補正前の請求項6に記載された発明も,本件補正後の請求項1に記載された発明も,「無線電力変換装置」に係るものであるから,仮に,本件補正前の請求項6が本件補正前の請求項1に対応するものとする。
本件補正前の請求項6に記載された発明の「電磁波増幅中継器」は,本件補正後の請求項1に記載された発明の「電磁波磁場増幅中継器」に対応し,本件補正前の請求項6に記載された発明の「電磁波磁場中継器」は,単に誘導コイルと磁性体と可変コンデンサーを有していたものに対して,本件補正後の請求項1に記載された発明の「電磁波磁場増幅中継器」は,「電磁波発生源に隣接して位置する第1中継器と,前記第1中継器から一定の間隔離れた第2中継器と,を備え,前記第1中継器は,第1誘導コイル及び前記第1誘導コイルに接続されて共振回路を構成する第1コンデンサーを含み,前記第2中継器は,第2誘導コイル及び前記第2誘導コイルに接続されて共振回路を構成する第2コンデンサーを含む」ものである。
本件補正後の請求項1に記載された発明の「無線電力変換装置」は,第1及び第2の中継器を有し,当該2つの中継器は,電磁波発生源に隣接する位置と第1中継器から一定の距離離れた位置に配置され,それぞれ共振回路を構成しているから,第1及び第2の中継器は,受信部において電力を効率的に受信できるような配置と共振という効率的に受信できるような回路構成を採用することにより,受信部で電力を効率的に受信するという課題を解決している。
しかしながら,本件補正前の請求項6に記載された発明の「無線電力変換装置」は,2つの中継器が存在しないため,当然に2つの中継器の配置が特定されず,中継器の回路構成として共振回路を採用していないから,受信部で電力を効率的に受信するという課題が存在していない。

次に,本件補正前の請求項7-12に記載された発明において,中継器が複数存在することを示唆するのは本件補正前の請求項8に記載された発明であるから,仮に,本件補正前の請求項8に記載された発明が本件補正後の請求項1に記載された発明に対応するものとする。
本件補正前の請求項8に記載された発明は,「電磁波発生源送信コイル及び受信コイルと付着設置されるか,または電磁波発生源の受信コイルの一側に別に付着設置されることができ」との構成を有しているが,本件補正後の請求項1に記載された発明は,当該構成を有していないから,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていない。

そうであれば,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の解決しようとする課題が同一である「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。

本件補正後の請求項2に記載された発明は,本件補正後の請求項1に記載された発明を引用すると共に,第3中継器を有しており,且つ,本件補正前の請求項6に記載された発明に択一的記載は無いから,本件補正後の請求項2に記載された発明は,本件補正前の請求項8に記載された発明に一応対応する。
しかしながら,本件補正前の請求項8に記載された発明は,「電磁波発生源送信コイル及び受信コイルと付着設置されるか,または電磁波発生源の受信コイルの一側に別に付着設置されることができ,電磁波発生源と受信コイルとの距離を考慮し,電磁波発生源の送信コイルと受信コイルとの間に増幅中継器が少なくとも1つ以上設置される」との構成を有しているが,本件補正後の請求項2に記載された発明は,第3中継器の配置箇所に限定は無く配置箇所は任意であるから,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていない。

そうであれば,請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものである「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。

よって,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とする補正とは認められない。
また,本件補正が,請求項の削除,誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものでないことも明らかである。

3.むすび
したがって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

III.本願発明について
1.本願発明
平成24年 3月29日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成23年 3月 7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項6】
人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁波の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器を用いた無線電力変換装置において,
一定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,磁性体と,可変コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器と,前記増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生する誘導コイル及び磁性体と,
前記誘導コイルと結合して電力変換効率を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うための可変コンデンサーと,
前記誘導コイルと可変コンデンサーにより誘導された(審決注:「遺棄された」は誤記と認める。)電圧を整流する整流ダイオードと,
前記電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサーとを備えることを特徴とする無線電力変換装置。」

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2002-508916号公報(以下「引用例1」という。)には,「拡大ギャップを横切る誘導電力伝達」に関し,図面とともに以下の事項が記載または示されている。

・「第1の一般的な態様において,本発明は,一次導線と,二次共振ピックアップ回路との間の拡大ギャップを横切る誘導電力伝達のための手段であって,システム全体の共振周波数で共振し,かつ誘導電力伝達システム内に位置することができる中間共振ループを備えて,誘導電力を,一次誘導導線から,前述の中間共振ループを経て,誘導電力を集めることのできる少なくとも1つの二次共振ピックアップ回路に,誘導的に結合できるようにする手段を提供する。
好ましくは,本発明は,前述の中間共振ループが,システム全体の共振周波数でいっしょに共振するキャパシタンスとインダクタンスから成っている,このセクションに記述される通りの誘導電力を結合するための手段を提供する。」(公報第5ページ下から3行?第6ページ第6行)

・「好ましくは,本発明は,発生しかねないシステムのどんな不安定をも克服するために,中間共振回路が,能動周波数調整手段,もしくはそれに類するものを含む,請求項に記載の誘導電力を結合するための手段を提供する。」(公報第7ページ第16行?第18行)

・「好ましくは,本発明は,中間共振ループが,インダクタンスを持つ少なくとも1個の素子と,キャパシタンスを持つ少なくとも1個の素子から成っていて,これら素子が,いっしょになって,実質的にシステム全体の共振周波数で共振する回路を形成し,またこの中間共振ループが,一次誘導経路からの誘導電磁界を途中で捕らえ,それにより,実効共振電流を,そのループ内に誘導でき,次に,この中間共振ループの周りに発生する誘導電磁界が,二次共振回路内に電流を誘導できる,このセクションの他の個所に記述される通りの誘導電力を結合するための手段を提供する。」(公報第7ページ最下行?第8ページ第7行)

・「電力部分:この回路を,誘導ピックアップ二次回路(セクション(b)とセクション(c))と一体化したものは,好ましくは,以下の通りである。ピックアップ・コイル120は,コンデンサ121と共振して,変化する磁界の形式で誘導電力を集め,それを交流に変換することができる。一般に,我々は,変化する磁界を供給するために,一次導線または一次コイル119に10?40kHzの交流を発生させる。共振タンク回路120?121の循環電流は,ブリッジ整流器122で整流され,その電流を通常560μHのインダクタンス123に流す。このインダクタンスは,ピックアップコイルを短絡できる制御スイッチ124を流れるピーク電流を制限するためのものである(もちろん,2個のダイオードの電圧降下を無視する)。この短絡スイッチが高インピーダンス状態にある場合には,整流された電流は,指向ダイオード124(審決注:図1からみて,「125」の誤記と認める。)を流れ,またバス131を伝って流れて,平滑コンデンサ126を充電し,このコンデンサの両端に電源電圧が発生する。この回路において,ある比較器は,バス101が50ボルトを超えるかどうか判定し,50ボルトを超える場合には,ライン129上のその出力は高くなり,スイッチ124をONにし,あるいは,49ボルト以下の場合には,その出力は低くなる。この出力は,スイッチ124を制御する。この負のバスは,インダクタンス102に接続される。
誘導結合される誘導電力伝達すなわちICIPTを伝達できるギャップの長さ100を長くするための新規な手段は,以下のように提供される(図1と図2の両方を参照のこと)。効果的な量の誘導電力を伝達できる距離の少なくとも数倍増が達成できる。本発明のこのような態様は,変化する磁界の一次側の源と,最終消費者(一人,または複数人)との間に,(少なくとも,この例において)制御手段も,能動構成要素も,それらに類するものも持たない単純な中間共振回路117,118を置くことから成っている。図1において,この新規な共振回路は,コンデンサ118とインダクタンス117で表される。」(公報第16ページ第3行?第27行)

・「電流制限手段(おそらく可飽和インダクタンス)が要求されるかもしれないが,我々は,2つ以上の中間ループを積み重ねたものも,うまくゆくものと期待している。」(公報第19ページ第9行?第11行)

・「図5は,コンデンサ506と,好ましくは,供給源からの磁束を効果的に途中で捕らえるように強磁性コアを配置しているインダクタンス507とから成る共振ピックアップ回路から交流電力を受け取る1組の電動機制御回路508から給電される電動機509が,少なくとも1つの車輪を駆動する車両500(例えばレール装置501に沿って走行できる)を示している。」(公報第19ページ第21行?第25行)

・「変形例
車両では,中間ループは,ギャップを広げる目的で,路面内の固定一次軌道の真上に装架されるか,あるいは,二次ピックアップコイル(1つ,または複数)との関係で車両内に搭載される(これは,安定性を高める働きをする)。
我々は,大電力動作条件のもと,または,いくつかの中間回路が,一本の一次導線から同時に駆動されるような場合,中間回路の動作をまだ調査していない。中間共振ループ回路は,全循環電力を制限するために,制御回路を含める必要ある。制御「回路」の1つの可能な例は,同調インダタタンス内の可飽和フェライトコアである。別の例は,循環電圧が所定の限度を超える時に,ブレータダウンするように選定された,同調コンデンサの両端に接続された逆並列接続ツェナーダイオードである。」(公報第23ページ第6行?第16行)

図1からは,インダクタンス117は所定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回したものであることが看て取れる。

図1からは,ピックアップ・コイル120とコンデンサ121が電線を介して結合していることは看て取れる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,上記引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「変化する磁界を供給するために一次コイル119に交流を発生させ,誘導電磁界を捕らえて,大きい磁束を発生させ,長いギャップ長100にわたって電力を伝達することができる中間共振回路117,118を用いた誘導電力伝達システムにおいて,
所定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回したインダクタンス117と,コンデンサ118から成っている中間共振回路117,118と,前記中間共振回路117,118により発生された大きい磁束によって誘導電力を集め,交流に変換するピックアップコイル120と,
前記ピックアップ・コイル120と電線を介して結合して,共振を行うためのコンデンサ121と,
前記ピックアップ・コイル120とコンデンサ121により,誘導された交流を整流するブリッジ整流器122と,
整流された電流は充電されて両端に電源電圧が発生する平滑コンデンサ126とを備える,誘導電力伝達システム。」

原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-188113号公報(以下「引用例2」という。)には,「電力伝送システムおよび電力伝送方法ならびにその電力伝送システムを備えた電気刺激装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,対向配置された1対の電力供給コイルを用いて,両コイル間で電気エネルギーを伝送する電力伝送システムおよび電力伝送方法に関する。より具体的には,種々の生体機能の外的制御を行う装置,例えば脳卒中や脊髄損傷等,中枢性神経障害で麻痺した生体の機能を電気的刺激で治療,再建する電気刺激装置などに適用される電力伝送システムおよび電力伝送方法に関する。ここでいう電力伝送とは,電力の伝送だけでなく制御信号などの伝送をも含む。」

・「【0015】(実施形態1)図1は,本発明の第1の実施形態の電力伝送システムの概略構成を示すブロック図である。この電力伝送システムは,生体の機能を電気的刺激で治療,再建する電気刺激装置に適用されるもので,生体の麻痺した部分を電気的に刺激する負荷回路3(刺激装置)が接続され,該負荷回路3とともに体内に埋め込まれる電力受信部1と,体内に埋め込まれた負荷回路3に電力や信号を伝送して刺激動作を制御する駆動回路4(装置本体)が接続され,該駆動回路4とともに体外に設置される電力送信部2とを有する。
【0016】電力受信部1は,体外から供給される電力を受信するための受信コイル11とこれに並列に接続された可変コンデンサ12とからなるLC回路(共振回路)と,受信コイル11にて受信される電圧レベルを検出する電圧検出回路13と,該電圧検出回路13にて検出された電圧レベルを入力とし,該検出電圧レベルが常に最高値をとるように可変コンデンサ12の容量を可変する容量制御回路14と,受信コイル11にて受信される電圧を交流から直流に整流する整流回路15とを有する。
【0017】電力送信部2は,体内に埋め込まれた受信コイル11と平行に対向して配置され,該受信コイル11へ誘導的に電力を伝送する送信コイル21とこれに並列に接続された可変コンデンサ22とからなるLC回路(共振回路)と,送信コイル21にて伝送される電圧レベルを検出する電圧検出回路23と,該電圧検出回路23にて検出された電圧レベルを入力とし,該検出電圧レベルが常に最高値をとるように可変コンデンサ22の容量を可変する容量制御回路24とを有する。
【0018】送受信コイル11,21は,両コイル間で誘導的に電力伝送が可能であればどのようなものを用いてもよく,例えば空芯コイル,磁芯コイルなど種々のコイルを使用することができる。
【0019】上述のように構成された電力伝送システムでは,駆動回路4から負荷回路3を駆動するための電力が電力送信部2の送信コイル21に供給されると,送信コイル21から電力受信部1の受信コイル11に誘導的に電力が伝送される。このとき,電力搬送波の周波数に電力受信部1および電力送信部2の各共振回路が共振した状態になっていれば,駆動回路4から供給される電力のほとんどが負荷回路3にて使用され,共振していない場合には,電力受信部1の受信コイル11とこれに接続された各回路(電圧レギュレータ)で浪費される。受信コイル11にて受信された電力は整流回路15を介して負荷回路3へ供給される。
【0020】いま,電力搬送波の周波数に電力受信部1および電力送信部2の各共振回路が共振した状態で電力伝送が行われている状態とする。ここで,送信コイル21と受信コイル11間の距離lが変化すると,これら送受コイルの相互インダクタンスが変化し,これにより共振パラメータも変化する。共振パラメータが変化すると,電力搬送波の電圧レベルが小さくなり,この電圧レベルの変化が電力受信部1および電力送信部2の各電圧検出回路13,23で検出される。
【0021】電圧レベルが低下すると,容量制御回路14は,電圧検出回路13の出力を基に,その検出電圧レベルが最高値になるように可変コンデンサ12の容量を可変する。同様に,容量制御回路24は,電圧検出回路23の出力を基に,その検出電圧レベルが最高値になるように可変コンデンサ22の容量を可変する。これにより,送受コイルの相互インダクタンスが変化しても,常に電力搬送波の周波数に共振した状態で電力伝送を行うことができる。
【0022】以上のように,本実施形態の電力伝送システムでは,送信電圧,受信電圧の検出をそれぞれ送信部,受信部個々に設けられた電圧検出部で行い,送信部,受信部の個々の共振回路のコンデンサの容量を共振状態を維持するように自動的に補正するようになっているので,最適の状態で電力伝送が行われる。
【0023】なお,以上の説明では,生体機能の外的制御を行う装置に適用される例について説明したが,本発明はこれに限定されるものではなく,対向配置された1対の電力供給コイルを用いて,電気エネルギーを誘導的に伝送することにより電力供給を行うことが可能な装置であればどのようなものにも適用可能である。」

原査定時に周知例として示された,本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2001-238372号公報(以下「引用例3」という。)には,「電力伝送システム,電磁場発生装置および電磁場受信装置」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非接触型ICカードにおいてリーダライタ側とICカード側との間でデータの授受のみならず,ICカードを動作させる電力供給も同時に行う方式のICカードシステムに関し,特に,広い動作範囲にわたって電力供給を効率的に行うためのインピーダンス整合手段に係る。」

・「【0011】このインピーダンス可変整合手段10は,アンテナコイル9の後段,もしくは,整流回路12の後段に挿入しても差し支えないが,整流前の信号について動作する方が,インピーダンス可変整合の効果が大きいため,アンテナコイル9と整流回路12の間に挿入するのが良い。また,上記インピーダンス可変整合手段10は,入出力インピーダンスを任意に制御するために,等価的に直列および並列に接続した2素子の特性値を制御する構成としたことを特徴としている。直列および並列に接続した2素子を用いることで,インピーダンス不整合による反射が最も少なくなり,電力供給効率が高くなるように制御することができる。ここで,直列および並列に挿入する素子は,キャパシタ,インダクタ,抵抗を使用することができるが,抵抗は簡単な構成で連続的に特性値を制御できるという特徴があるが,電力損失は避けられない。また,インダクタは抵抗と比較して電力損失は少ないが,形状が大きくなり集積回路に搭載することが難しく,また制御も容易でない。したがって,電力損失,特性値制御の容易さ等の観点から図3に示す可変キャパシタ20および21のみで構成すれば,インピーダンス整合を連続的に行うことが可能となり,構成上も,あるいは調整の手間からも好適である。なお,図3に示した可変キャパシタ20および21の容量の範囲は概略1pFから200pF程度の範囲で可変すればよく,集積回路上での実装が可能である。
【0012】また,上記のインピーダンス可変整合手段10に使用する素子は,1素子で構成する必要はない。直列および並列に接続されたそれぞれ1つの素子の特性値がが等価的に制御可能であればよいので,図4に例示するように,図3中の1つの可変キャパシタの代わりに,特性値が固定のキャパシタとこのキャパシタに直列に挿入したスイッチ群による組を複数組並列に挿入し,制御回路11によってこれらスイッチを制御することにより,アンテナコイル9に並列および直列にあらかじめ挿入した複数のキャパシタからそれぞれ1つずつもしくは複数を選択して接続し,等価的に素子の特性値を制御しても構わない。ここで,上記スイッチは高速に動作し,また,制御回路11による制御が容易であることから,CMOS等のトランジスタで構成した電子スイッチが望ましい。このような構成にすることにより,非連続・離散的に素子の特性値を変化させることになるが,通常の使用では,距離が変動した際にも給電効率は約50%以上保持すればよく,これらキャパシタとスイッチの組をさらに多く用いることで,連続的に近く特性値を制御することが可能である。なお図3では,上記インピーダンス可変整合手段10に使用する素子をすべてキャパシタによるものとしたが,これらの一部もしくはすべてをインダクタまたは抵抗またはこれら複数種類の組み合わせにしても差し支えないことは勿論である。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「一次コイル119」は前者の「電磁波発生源」に相当し,以下同様に,「中間共振回路117,118」は「電磁波増幅中継器」又は「電磁波磁場増幅中継器」又は「増幅中継器」に,「誘導電力伝達システム」は「無線電力変換装置」に,「インダクタンス117」は「誘導コイル」に,「誘導電力を集め,交流に変換するピックアップコイル120」は「誘導起電力を発生する誘導コイル」に,「ピックアップコイル120」は「誘導コイル」に,「平滑コンデンサ126」は「コンデンサー」に,それぞれ相当する。
また,後者の「変化する磁界を供給するために一次コイル119に交流を発生させ,誘導電磁界を捕らえて,大きい磁束を発生させ,長いギャップ長100にわたって電力を伝達することができる中間共振回路117,118を用いた誘導電力伝達システム」は,前者の「人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁場の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器を用いた無線電力変換装置」に相当し,後者の「所定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回したインダクタンス117と,コンデンサ118から成っている中間共振回路117,118」と,前者の「一定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,磁性体と,可変コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器」とは,「所定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器」において共通する。
次に,後者の「中間共振回路117,118により発生された大きい磁束によって誘導電力を集め,交流に変換するピックアップコイル120」は,前者の「増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生する誘導コイル」に相当する。
そして,後者の「ピックアップ・コイル120と電線を介して結合して,共振を行うためのコンデンサ121」と,前者の「誘導コイルと結合して電力変換効率を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うための可変コンデンサー」とは,「誘導コイルと結合して共振を行うためのコンデンサー」において共通し,後者の「ピックアップ・コイル120とコンデンサ121により,誘導された交流を整流するブリッジ整流器122と,整流された電流は充電されて両端に電源電圧が発生する平滑コンデンサ126」と,前者の「誘導コイルと可変コンデンサーにより,誘導された電圧を整流する整流ダイオードと,前記電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサー」とは,「誘導コイルとコンデンサーにより,誘導された電圧を整流する整流器と,電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサー」において共通する。

そうすると,両者は,
「人為的または様々な電磁波発生源から発生した電磁場の磁場を増幅させて中継することができる電磁波増幅中継器を用いた無線電力変換装置において,
所定の直径を有するコイルにより所望の大きさと形態に所定の巻線数を巻回した誘導コイルと,コンデンサーとで構成される電磁波磁場増幅中継器と,前記増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生する誘導コイルと,
前記誘導コイルと結合して共振を行うためのコンデンサーと,
前記誘導コイルと前記コンデンサーにより,誘導された電圧を整流する整流器と,電圧を平滑し,必要な直流成分を有する電源に生成するコンデンサーとを備える,
無線電力変換装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違すると認められる。

<相違点1>
電磁波磁場増幅中継器が,本願発明では,一定の直径を有する誘導コイルと,磁性体と,可変コンデンサーとで構成されるのに対して,引用発明では,所定の直径を有するインダクタンス117(誘導コイル)とコンデンサ118で構成される点。

<相違点2>
電磁波磁場増幅中継器に増幅された磁場を使用して誘導起電力を発生するものが,本願発明では,誘導コイル及び磁性体であるのに対して,引用発明では,ピックアップコイル120(誘導コイル)である点。

<相違点3>
誘導コイルと結合して共振を行うためのコンデンサーが,本願発明では,誘導コイルと結合して電力変換効率を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うための可変コンデンサーであるのに対して,引用発明では,ピックアップ・コイル120(誘導コイル)と結合して共振を行うためのコンデンサ121(コンデンサー)であるものの,それ以上の特定はなされていない点。

<相違点4>
誘導コイルとコンデンサーにより,誘導された電圧を整流する整流器に関し,整流器が,本願発明では,「整流ダイオード」であるのに対して,引用発明では,ブリッジ整流器122である点。

3.相違点の検討
<相違点1について>
まず,引用発明の所定の直径を有するインダクタンス117(誘導コイル)の直径を「一定」とすることは,周知慣用の事項であって適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
次に,引用例1の第23ページ第6行?第16行には,変形例として,中間共振ループ回路に制御回路を含める1つの例として,「同調インダクタンス内に可飽和フェライトコアを設けるもの」を開示していることから,中間共振ループ回路(電磁波磁場増幅中継器)に可飽和フェライトコア(磁性体)を設けることについての示唆がされている。
また,電磁誘導を用いた電力の送受信に関し,磁場を強化するために,誘導コイルにコア(磁性体)を設けることは,慣用手段に過ぎない(必要があれば,特開平3-98432号公報の第1図,特開平4-329336号公報の段落【0057】?【0059】を参照のこと。)。
次に,インピーダンス整合を行う際に,複数のコンデンサーの中から1つもしくは複数を選択して接続するか,可変コンデンサーとするかは,適宜選択される事項であるが,可変コンデンサーを用いた方が,インピーダンス整合を連続的に行うことが可能となり,構成上も,調整の手間からも好ましいことは,技術常識ともいえる(必要があれば,引用例3の段落【0011】,【0012】を参照のこと。)。
そして,電力伝送システムにおいて,送信側と受信側に,誘導コイルと可変コンデンサを設けて,送信側と受信側の距離が変動した際にも電力供給効率(電力変換効率)を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うことは,本願の優先権主張の日前に周知技術に過ぎない(必要があれば,引用例2,引用例3の摘記事項を参照のこと。)。
よって,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,引用発明に,上記周知慣用の事項,上記引用例1に記載された示唆,上記慣用手段,上記技術常識及び上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2について>
引用例1の第19ページ第21行?第25行には,「図5は,コンデンサ506と,好ましくは,供給源からの磁束を効果的に途中で捕らえるように強磁性コアを配置しているインダクタンス507とから成る共振ピックアップ回路」と記載され,共振ピックアップ回路(レシーバー)に強磁性コア(磁性体)を配置したインダクタンス(誘導コイル)を設けることが開示されている。
よって,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,引用発明に,上記引用例1の開示された事項を適用することにより,当業者が適宜なし得たものである。

<相違点3について>
上記<相違点1について>において検討したように,インピーダンス整合を行う際に,複数のコンデンサーの中から1つもしくは複数を選択して接続するか,可変コンデンサーとするかは,適宜選択される事項であるが,可変コンデンサーを用いた方が,インピーダンス整合を連続的に行うことが可能となり,構成上も,調整の手間からも好ましいことは,技術常識ともいえる(必要があれば,引用例3の段落【0011】,【0012】を参照のこと。)。
そして,電力伝送システムにおいて,送信側と受信側に,誘導コイルと可変コンデンサを設けて,送信側と受信側の距離が変動した際にも電力供給効率(電力変換効率)を高めるために,共振及びインピーダンス整合を行うことは,本願の優先権主張の日前に周知技術に過ぎない(必要があれば,引用例2,引用例3の摘記事項を参照のこと。)。
よって,相違点3に係る本願発明の構成とすることは,引用発明に,上記技術常識を考慮して,上記周知技術を適用することにより,当業者が適宜なし得たものである。

<相違点4について>
受信機(レシーバー)において,誘導コイルとコンデンサにより,誘導される電圧を検波器(整流ダイオード)で直接整流することは,本願の優先権主張の日前に常套手段に過ぎない(必要があれば,特開2003-153467号公報の図1を参照のこと。)。
よって,相違点4に係る本願発明の構成とすることは,引用発明に,上記常套手段を適用することにより,当業者が適宜なし得たものである。

そして,本願発明の奏する作用効果について検討しても,引用発明,上記周知慣用の事項,上記引用例1に記載された示唆,上記引用例1に開示された事項,上記慣用手段,上記周知技術,及び,上記常套手段から予測し得るものに過ぎず,格別のものとはいえない。

したがって,本願発明は,引用発明,上記周知慣用の事項,上記引用例1に記載された示唆,上記引用例1に開示された事項,上記慣用手段,上記技術常識,上記周知技術,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,上記周知慣用の事項,上記引用例1に記載された示唆,上記引用例1に開示された事項,上記慣用手段,上記技術常識,上記周知技術,及び,上記常套手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。

5.付記
なお,審判請求人は,平成24年12月 4日の面接において,本願補正発明は,ギャップの間に中継器を備える点で引用例1(引用文献1)と異なる旨の主張をした。
しかしながら,引用例1には,第19ページ第9行?第11行に「2つ以上の中間ループ(電磁波磁場中継器)を積み重ねてもよい。」ことが示唆されている。
さらに,特開平4-329336号公報には,
「信号中継器6(電磁波磁場中継器)は,キャップ7の信号授受部709の信号送出部をなす電磁コイル701(電磁波発生源)と若干の隙間を隔てて対向する第N段目の信号中継器6(第1中継器)と,前記N段目の信号中継器6(第1中継器)から若干の距離を隔てて対向する(一定の間隔離れた)第N-1段目の信号中継器6(第2中継器)と,を備え,前記N段目の信号中継器6(第1中継器)は,電磁コイル601,603(誘導コイル)及び前記電磁コイル601,603(誘導コイル)に接続されて共振回路を構成するコンデンサ604,605(コンデンサー)を含み,第N-1段目の信号中継器6(第2中継器)は電磁コイル601,603(誘導コイル)及び前記電磁コイル601,603(誘導コイル)に接続されて共振回路を構成するコンデンサ604,605(コンデンサー)を含む」ものが開示されていると認められる(特に,段落【0001】,【0022】,【0023】,【0027】,【0028】,【0035】?【0037】,【0050】?【0060】,図2,図3(A),図4(A)(B)(C)を参照のこと。)から,ギャップの間に中継器を備える点についても従来から知られており,審判請求人の上記主張は,採用できない。
 
審理終結日 2013-01-24 
結審通知日 2013-01-29 
審決日 2013-02-12 
出願番号 特願2007-523481(P2007-523481)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 57- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 嘉紀  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 藤井 昇
川口 真一
発明の名称 電磁波増幅中継器及びこれを用いた無線電力変換装置  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ