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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する A61K
管理番号 1276568
審判番号 訂正2013-390069  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-05-08 
確定日 2013-06-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3258672号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3258672号に係る明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯

この訂正審判の請求(以下「本件請求」という。)は,平成25年5月8日付けで特許第3258672号(1997年4月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 1996年4月19日 米国(US),同年5月24日 イギリス(GB))を国際出願日とする特願平9-538156号,平成13年12月7日設定登録,以下「本件特許」という。)の訂正を求めるものである。



第2 請求の趣旨

本件請求の趣旨は,本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求める,というものである。

請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は,以下のとおりである。


(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6において,「酢酸緩衝液」を「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(7)訂正事項7

願書に添付した明細書第2頁下から第6行(特許公報第7欄第22行に対応)及び同第3頁第4行(特許公報第7欄第32?33行に対応)に記載の「酢酸緩衝液」を,それぞれ「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(8)訂正事項8

願書に添付した明細書第3頁第8行(特許公報第8欄第21行に対応)に記載の「酢酸緩衝液」を,「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(9)訂正事項9

願書に添付した明細書第4頁第1行(特許公報第9欄第20行に対応),同第10行(特許公報第9欄第33行に対応)及び同第22行(特許公報第9欄第49行に対応)に記載の「酢酸緩衝液」を,それぞれ「酢酸緩衝剤」と訂正する。

(10)訂正事項10

願書に添付した明細書第4頁第24行(特許公報第10欄第20行に対応)に記載の「緩衝液」を,「緩衝剤」と訂正する。

(11)訂正事項11

願書に添付した明細書第5頁第4行(特許公報第10欄第32行に対応)に記載の「酢酸緩衝液」を,「酢酸緩衝剤」と訂正する。



第3 当審の判断

1 一群の請求項ごとに訂正を請求することについて

本件請求は,二以上の請求項が記載された特許請求の範囲の訂正を請求するものである。

(1)本件請求が,特許法第126条第3項に規定する要件を満たすものであるかを検討する。

請求項2?17は,直接的に又は間接的に請求項1を引用しているから,請求項1?17は,一群の請求項を構成する。

(2)本件請求が,第126条第4項に適合するものであるかを検討する。

本件請求では,願書に添付した明細書の訂正である訂正事項7?11と関係する全ての一群の請求項(請求項1?17)が請求の対象とされている。
したがって,本件請求は,第126条第4項に適合するものである。


2 目的要件,新規事項の追加について

訂正事項1?11は,請求項1?6の各請求項並びに願書に添付した明細書第2頁下から第6行(特許公報第7欄第22行に対応),同第3頁第4行(特許公報第7欄第32?33行に対応),同第8行(特許公報第8欄第21行に対応),同第4頁第1行(特許公報第9欄第20行に対応),同第10行(特許公報第9欄第33行に対応),同第22行(特許公報第9欄第49行に対応)及び同第5頁第4行(特許公報第10欄第32行に対応)に記載された「酢酸緩衝液」をそれぞれ「酢酸緩衝剤」と訂正するとともに,願書に添付した明細書第4頁第24行(特許公報第10欄第20行に対応)に記載された「緩衝液」を「緩衝剤」と訂正するするものである。
本件特許に係る外国語でされた国際特許出願時の明細書における「酢酸緩衝液」に対応する箇所には「an acetate buffer」と記載されており,これは通常「酢酸緩衝液」または「酢酸緩衝剤」と翻訳されるものである。また,本件特許の国際出願時の明細書における「緩衝液」に対応する箇所には「buffer」と記載されており,これは通常「緩衝液」または「緩衝剤」と翻訳されるものである。
一方,国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(以下,基準明細書等という。)の第4頁第3行?第5行には,「このように製造した凍結乾燥ケークはバイアル1個当たり52.5mgの化合物Iと、62.5mgの糖と、31.25μmolの酢酸緩衝液とを含有する。」との記載があるところ,凍結乾燥ケークは乾燥状態にあるので液体である酢酸緩衝液を含有できないことが技術常識であることから,基準明細書等に記載される「酢酸緩衝液」及び「緩衝液」は,それぞれ本来「酢酸緩衝剤」及び「緩衝剤」の誤記であることは明らかである。
したがって,訂正事項1?11は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり,基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

以上のとおり,訂正事項1?11は,いずれも特許法第126条第1項ただし書2号に掲げる事項を目的とするものであり,また,基準明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項及び同法同条第5項に適合するものである。


3 特許請求の範囲の実質的な拡張又は変更について

上記2で述べたとおり,訂正事項1?11はいずれも,誤記又は誤訳の訂正をするものであって,訂正の前後で,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,本件訂正は,特許法第126条第6項に適合するものである。


4 訂正後の発明の独立特許要件について

本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とする訂正であるので,訂正後の特許請求の範囲に記載された発明が同条第7項に適合するものであるかを検討する。
訂正後の特許請求の範囲に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由は見出せない。

してみると,本件訂正は,特許法第126条第7項の規定に適合するものである。



第4 むすび
したがって,本件審判の請求は,特許法第126条第1項第2号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
抗真菌薬及び酢酸緩衝液を含有する組成物
【発明の詳細な説明】
発明の背景
本発明は、真菌感染の治療及び/または予防のための組成物に係わる。
カンジダ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属及びニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)などの作用物質によって誘発される日和見真菌感染に対して有効である新規な抗真菌薬の必要性は高まるばかりである。現行治療薬、即ちアムホテリシンB及びフルコナゾールは、その毒性及び耐性選択に起因して不適当である。本発明の組成物は安全で、かつ殺真菌性であると看做される。
本発明の組成物は、抗生物質として、特に抗真菌薬または抗原虫薬として有用な化合物を含有する。この化合物は、抗真菌薬としては糸状菌と酵母との両方の防除に有用である。この化合物は特に、哺乳動物におえる真菌感染、特にカンジダ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、カンジダ・グラブラタ(C.glabrata)及びカンジダ・シュードトロピカリス(C.pseudotropicalis)などのカンジタ(Candita)属種並びにアスペルギルス・フミガツス(A.fumigatus)、アスペルギルス・フラブス(A.flavus)及びアスペルギルス・ニガー(A.niger)などのアルペルギルス(Aspergillus)属種によって誘発される感染の治療に用いるのに適当であり得る。本発明の組成物は特に、アムホテリシンB及びフルコナゾールに耐性であると推定されるカンジタ(Candida)属分離株に対して有効であることが判明した化合物を含有する。本発明の組成物は、AIDS患者などの免疫低下患者が特に罹患しやすいニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)肺炎の治療及び/または予防にも有用である。
本発明の組成物は、再構成用の安全かつ安定な凍結乾燥投与形態を有し、このような形態は抗真菌薬を必要とする患者に該薬物を送達するのに特に有用である。
発明の概要
本発明は、
a)医薬有効量の式

を有する化合物(本明細書中では「活性成分」とも呼称)とその医薬に許容可能な塩、
b)医薬に許容可能の量の、pHを約4?7とするのに有効な酢酸緩衝剤、及び
c)医薬に許容可能な量の、凍結乾燥ケークの形成に有効なスクロース/マンニトール混合物などの賦形剤
を含有する医薬組成物に係わる。
本発明の一特定例では、42mg/mlの化合物Iと、30mg/mlのスクロースと、20mg/mlのマンニトールと、1.5mg/ml(25mM)の酢酸とを含有する溶液状の製剤を調製し、そのpHを水酸化ナトリウムで約6に調節する。続いて、溶液を1.25mlの量でバイアルに充填し、凍結乾燥する。このように製造した凍結乾燥ケークはバイアル1個当たり52.5mgの化合物Iと、62.5mgの糖と、31.25μmolの酢酸緩衝剤とを含有する。凍結乾燥ケークは使用時、21mlの稀釈剤での稀釈により再構成する。20mlの稀釈液を取り出し、再構成して200ml容の輸液用バッグに入れる。このようにして得られた、約0.25mg/mlの化合物Iと、約0.03mmolまたは0.15mmolの酢酸緩衝剤と、約0.3mg/mlの増量剤とを含有する溶液を患者に注入する。得られた組成物は約5?7のpHを有する。
発明の詳細な説明
本発明の上記製剤は医薬組成物の化学的安定性を高める。化学的安定性が高いことの一利点は、医薬品の有効期限が延長されることである。酒石酸緩衝液を用いる従来の製剤は、望ましくない分解生成物を医薬には過多なほど含有した。酢酸緩衝製剤を用いることによって分解物(degradates)の生成は減少し、製剤の安定性が向上する。医薬品の有効期限の延長は多大な経済的利点をもたらす。


の化合物とその医薬に許容可能な塩は、酢酸緩衝剤の存在下に製剤化するとその貯蔵時安定性が著しく向上することが判明した。
化合物Iは米国特許第5,378,804号において特許請求及び開示されている。化合物Iの製造方法は、前記特許及び1996年9月3日付米国特許第5,552,521号に開示されいてる。
化合物Iは単独ではきわめて不安定であり、加水分解、二量体化及び酸化を非限定的に含めた様々な経路によって分解する。この不安定性は以前に、酒石酸緩衝製剤中の化合物Iを凍結乾燥することによって克服された。しかし、前記製剤は、比較的安定である一方で分解物を比較的高率で生成させた。
酢酸緩衝剤への切り替えによって、凍結乾燥生成物はより安定となり、その含有する望ましくない分解物は減少し、組成物の有効期限が延長される。その結果、組成物は市販品として有望となる。
本発明は、カンジタ(Candida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属及びニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)によって誘発される真菌感染を治療する方法にも係わり、この方法は前記のような治療を必要とする患者に式Iの化合物を含有する本発明の組成物を真菌感染の治療に有効な量で投与することを含む。加えて本発明は、予防量の式Iの化合物の投与を含む、患者のニューモシスティス・カリニイ(Penumocystis carinii)感染を予防する方法にも係わる。
本発明の酢酸緩衝製剤は、医薬に許容可能なpHの実現、即ち例えば5?8、好ましくは約6?約7のpH環境の実現に有効な量のアセテートを含有する。所望pHの達成に有効な酢酸緩衝剤を医薬に許容可能な量で用意するべく、適量の酢酸ナトリウム及び酢酸、または適量の酢酸及び水酸化ナトリウムを用い得る。緩衝剤は、典型的には約12.5?約200mM、好ましくは約25?約50mMの量で存在させる。
増量剤などの賦形剤即ち賦形糖は、適当な外観を有する凍結乾燥ケークの実現、活性成分の固体稀釈、及び有効水分の収着のために用いる。本発明に有用な糖に、スクロース、ラクトース、マンニトール、またはこれらの組み合わせが含まれる。スクロース及びマンニトールはより安定な製剤をもたらし、かつ本発明の組成物のために医薬として高品質のケークの形成を実現することが判明した。賦形剤は通常約10?200mg/ml、好ましくは約40?60mg/mlの量で存在させる。
本発明の組成物は活性成分、酢酸緩衝剤及び増量剤に限定されず、医薬に許容可能な他の稀釈剤、賦形剤またはキャリヤも含有し得る。本発明の製剤は、製薬工業で通常用いられるガラス製容器内での長期貯蔵、例えば標準的なUSP TypeIホウケイ酸ガラス製容器内での濃縮形態での長期貯蔵に適する。
本発明の組成物は通常次のように調製する。
1)増量剤、または複数種の増量剤の組み合わせを水に溶解させる。
2)酢酸を添加して、必要であれば、pHを約3.7に調節する。
3)化合物Iを添加して溶解させ、その後塩基でpHを約5?約6に調節する。
4)溶液を濾過し、凍結乾燥バイアルに充填し、-50℃で連結させる。
5)凍結した製剤を-20℃で凍結乾燥し、15℃で二次乾燥する(サイクル完了に2日以上掛かる)。
6)凍結乾燥済みのバイアルに栓をし、これを約5℃で貯蔵する。
本発明の組成物の凍結乾燥製剤形態は、投与時に適当な稀釈剤で稀釈してその濃度を、望ましい活性成分を必要とする患者に使用させるべく輸液用バッグに移すのに適した完成品濃度、例えば約5.0mg/mlとすることができる。
「医薬に許容可能な塩」という語は活性成分の、モノ、ジ及びトリ酸形態を含めた無毒塩を意味し、この塩は通常遊離塩基を適当な有機または無機酸と反応させることにより製造する。酸付加塩として、及び第四級塩のアニオンを提供する塩として適当である医薬には許容可能な塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、マレイン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、琥珀酸、蓚酸、リンゴ酸、グルタミン酸、パモ酸等の酸から得られる塩であり、Journal of Pharmaceutical Science 66,p.2,1977に列挙された医薬に許容可能な塩に関連する他の酸から得られる塩も包含する。
「医薬有効量」という語は活性成分の、研究者または臨床家が求めている組織、系または動物の生物学的または医学的応答を惹起する量を意味する。
本発明の組成物は、真菌感染の治療及び/または予防が望まれる患者に投与し得る。この組成物はカンジタ・アルビカンス(C.albicans)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、カンジダ・グラブラタ(C.glabrata)及びカンジダ・シュードトロピカリス(C.pseudotropicalis)などのカンジダ(Candida)属種並びにアスペルギルス・フミガツス(A.fumigatus)、アスベルギルス・フラブス(A.flavus)及びアスペルギルス・ニガー(A.niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)属種の処置に有用である。本発明の組成物はまた、AIDS患者などの免疫低下患者が特に罹患しやすいニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)肺炎の治療及び/または予防にも有用である。
本発明の組成物を用いる投与の方式は、患者の体型、種、年齢、体重、性別及び容体;治療するべき状態の重篤度;投与経路;患者の腎及び肝機能;並びに用いる特定の活性成分またはその塩を含めた様々な要因に従って選択する。通常の技量を有する医師であれば、状態を予防し、状態に対処し、または状態の進行を阻止するのに必要な薬物の有効量は容易に決定及び処方し得る。
静脈内投与の場合、最も好ましい活性成分用量は、注入速度約200ml/時において約1.67?約33μg/kg/分である。この量の活性成分の投与のために本発明の組成物が含有するべき活性成分の量は、患者の体重が50kgであれば0.025?0.50mg/mlとなる。
活性成分の化合物Iは通常次のように製造する。


の出発物質IIを還元して式

の化合物IIIを得、続いて化合物IIIを式

の化合物IVに変換し、これをフェニルチオ基の置換によって立体選択的に化合物Iに変換する。
一代替方法では、化合物IIをチオフェノールと反応させて式

の化合物IV-aを得る。その後、化合物IV-aを還元して式

の化合物IVを得、これをフェニルチオ基の置換によって立体選択的に化合物Iに変換する。
化合物Iの製造
a)化合物IIIの合成及び分離
化合物II(15.9g;純度89面積%;含水量3.4重量%;0.0128mol)を乾燥THF(0.64L)に添加し、得られた懸濁液を、3Åモレキュラーシーブ層を通過しての還流により含水量10モル%未満に脱水した。追加の乾燥THFを添加して混合物を元の体積に戻し、懸濁液を氷/水/メタノール浴で4℃より低温に冷却した。
BH_(3)・SMe_(2)(10.91g;0.144mol)をそのままで10分掛けて添加し、反応混合物を0?4℃に維持した。反応の進行を、出発物質対生成物の比が反応時間の終了を示す1:1となるまで(3.5時間)HPLCで監視した。4時間経過時点で混合物を-12℃に冷却し、2N HCl(0.036L)でゆっくり反応停止させた。この溶液を水で1.14Lに稀釈した。化合物IIIのアッセイ収量は6.60g(47%)であった。
反応停止させた溶液を4Lに稀釈し、これをLiChroprep RP-C18 吸着剤(158g)の中圧カラムに導入した。導入後、カラムを1.2Lの水で洗浄し、1.9Lの1:4v/vアセトニトリル/水、次いで0.38Lの1:3v/vアセトニトリル/水でアミンを溶離した。
リッチカット(>80面積%)を一つに合わせ、かつ水で稀釈して1:7.3v/vアセトニトリル/水溶液(総量1.70L)を得た。この混合物を上記と同じカラムに導入し、カラムを0.57Lの水で洗浄した。所望化合物を0.57Lのメタノールで溶離した。リッチカット画分(>85面積%)を一つに合わせ、回転蒸発及び静的高真空により濃縮して、単離収率43%において化合物III(R1がジメチルトリデシル)の塩酸塩5.92gを含有する6.81gの濃縮物(純度87重量%;含水量6.8重量%)を得た。
b)フェニルスルフィド(化合物IV)の製造
化合物III[5.80g(アッセイ量);0.00533mol]を0.23Lの乾燥アセトニトリルに添加して-5℃に冷却し、この時点でチオフェノール(3.10g;0.028mol)を添加した。TFA(36g;24.5ml;0.318mol)を20分掛けて添加し、それによって反応混合物の温度を0℃より低く維持した。反応混合物を、出発物質が3面積%未満となったことがHPLC分析により判明するまで(3.75時間)-10?0℃の温度で熟成させた。出発物質が3面積%未満となった時点で冷水(0.56L)をゆっくり添加し(1時間)、その際反応混合物を冷却して温度を5℃より低く維持した。トリフルオロ酢酸塩としてのα-及びβ-フェニルスルフィド付加物のアッセイ収量は4.82g(71%)であった。
上記のようにして得た溶液をステップa)に述べたのと同じカラムに導入し、カラムを水(0.57L)で洗浄し、その後吸着した有機化合物をメタノール(0.50L)で溶離した。リッチカットを回転蒸発及び静的高真空によって濃縮した。その結果、7.20gの粗なフェニルスルフィドトリフルオロ酢酸塩(純度57重量%;含水量5.1重量%)が非晶質の泡状固体として得られた。フェニルスルフィドに関して修正した単離ステップ収量は、α-アミナールジアステレオマーとβ-アミナールジアステレオマーとの93:7混合物として4.10g(61%)であった。
c)化合物IVの化合物I-1への変換
粗なフェニルスルフィドトリフルオロメタンスルホン酸塩(粗物質として8.4g;純度57重量%;0.00377mol)をエチレンジアミン(24ml)に、周囲温度で攪拌下に添加した。得られた溶液を1.5時間攪拌して置換を完了させ、その後氷浴冷却で温度を25℃より低く維持しながらメタノール(40ml)、次いで酢酸(45ml)を添加した。粘稠なスラリーが得られた。水(160ml)を添加してスラリーを溶解させ、水性層をヘキサン(75ml)と共に穏やかに振盪することによって抽出した。ヘキサン層を水(40ml)で逆抽出し、一つに合わせた水性層を中多孔度の漏斗状ガラス濾過器で濾過してから、溶離剤として22%のアセトニトリル/78%の酢酸0.15%水溶液を用い、かつ50mm径C18カラムを用いる分取HPLCによって精製した。リッチカットを凍結乾燥し、単離ステップ収率78%において4.2gの化合物I-1(純度85重量%)を二酢酸塩として得た。
d)化合物I-1の結晶化
固体(2.3g)をエタノール(25ml)に溶解させ、その後水(2.7ml)を添加した。溶液を漏斗状ガラス濾過器に通して異物を除去した。濾液に酢酸(0.14ml)を添加し、その後酢酸エチル(14ml)を(1.75時間掛けて)ゆっくり添加した。溶液に種晶を添加し、種晶層を1時間熟成させた。残りの酢酸エチル(32ml)を5時間掛かて添加し、更に1時間熟成させた。結晶質の固体を漏斗状ガラス濾過器上に回収し、エタノール/酢酸エチル/水(それぞれ6ml/9ml/0.5ml)から成る溶液で洗浄した。湿ったケークを窒素流で乾燥して、化合物I-1の二酢酸塩1.91g[1.75g(アッセイ量);回収率88%]を得た。
実施例1
製剤1の調製

典型的操作として、25ml容のメスフラスコに0.75gのスクロース及び0.5gのマンニトール、約17.5mlの水、0.5mlの酢酸溶液(75mg/ml)、並びに42mg/ml相当量の化合物Iを入れた。得られた溶液を混合し、1M NaOHを用いてpHを6に調節した。水で体積を調節し、pHを確認した。溶液をMillex-GVシリンジフィルターで濾過し、複数の10ml容管形ガラス製バイアルに1.75mlずつ充填した。バイアルに凍結乾燥用栓を部分的に施し、これを凍結乾燥して、バイアル底部に固体の凍結乾燥ケークを得た。
得られた凍結乾燥製剤を10.5mlの稀釈剤で稀釈し、10mlの稀釈物を取り出し、体積200mlに稀釈し、それによって患者への投与前に0.25mg/mlの完成品濃度を実現した。
次の成分を含有する製剤も、上述のようにして調製した(いずれの製剤も活性成分の溶液中濃度を40?42mg/mlとして調製した)。

凍結乾燥状態の製剤を5℃で貯蔵し、約4週間の間隔で安定性について試験した。安定性及び分解物生成を、当業者に知られた標準的な方法を用いる勾配HPLCで測定した。
驚くべきことに、製剤1、5、7及び8は他の製剤に比べてはるかに安定であり、望ましくない分解物の生成も著しく少ないことが判明した。


(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】a)医薬有効量の式

を有する化合物とその医薬に許容可能な塩、
b)医薬に許容可能な量の、凍結乾燥ケークの形成に有効な増量剤などの賦形剤、及び
c)医薬に許容可能な量の、pHを医薬に許容可能な値とするのに有効な酢酸緩衝剤を含有する、患者に静脈内投与される医薬組成物。
【請求項2】a)医薬有効量の化合物I、
b)約10?200mg/mlの、凍結乾燥ケークの形成に有効な増量剤または複数種の増量剤の組み合わせなどの賦形剤、及び
c)医薬に許容可能な量の、pHを約4?7とするのに有効な酢酸緩衝剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】約5?200mg/mlの化合物Iまたはその医薬に許容可能な塩と、約12.5?約200mMの酢酸緩衝剤と、約10?200mg/mlの増量剤と、水とを含有することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】約30?50mg/mlの化合物Iまたはその医薬に許容可能な塩と、約20?60mMの酢酸緩衝剤と、約30?70mg/mlの、凍結乾燥ケークの形成に有効な増量糖または複数種の増量糖の組み合わせと、水とを含有することを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】42mg/mlの化合物Iまたはその医薬に許容可能な塩と、25mMの酢酸緩衝剤と、30mg/mlのスクロースと、20mg/mlのマンニトールと、水とを含有することを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】42mg/mlの化合物Iまたはその医薬に許容可能な塩と、50mMの酢酸緩衝剤と、30mg/mlのスクロースと、20mg/mlのマンニトールと、水とを含有することを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】医薬有効量の請求項1に記載の組成物を含む、哺乳動物の真菌感染を治療及び/または予防するための医薬組成物。
【請求項8】哺乳動物がヒトであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】有効量の請求項1に記載の組成物を含む、カンジダ属種(Candidasp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項10】有効量の請求項5に記載の組成物を含む、カンジダ属種(Candida sp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項11】有効量の請求項6に記載の組成物を含む、カンジダ属種(Candida sp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項12】有効量の請求項1に記載の組成物を含む、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項13】有効量の請求項5に記載の組成物を含む、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項14】有効量の請求項6に記載の組成物を含む、アスペルギルス属種(Aspergillus sp.)によって誘発される感染を治療するための医薬組成物。
【請求項15】予防または治療量の請求項1に記載の組成物を含む、ニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)によって誘発される感染もしくは状態の治療または予防するための医薬組成物。
【請求項16】予防または治療量の請求項5に記載の組成物を含む、ニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)によって誘発される感染もしくは状態の治療または予防するための医薬組成物。
【請求項17】予防または治療量の請求項6に記載の組成物を含む、ニューモシスティス・カリニイ(Pneumocystis carinii)によって誘発される感染もしくは状態の治療または予防をするための医薬組成物。
【請求項18】式

を有する化合物とその医薬に許容可能な塩を含有する医薬組成物を調製する方法であって、
a)増量剤、または複数種の増量剤の組み合わせを水に溶解させ、
b)酢酸を添加してpHを約3.7に調節し、
c)化合物Iを添加し、塩基でpHを約4?約7に調節し、
d)このように製造した溶液を濾過し、
e)前記溶液を凍結させ、
f)凍結した溶液を凍結乾燥する
ステップを含む方法。
【請求項19】請求項18に記載の方法で調製した組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-06-11 
出願番号 特願平9-538156
審決分類 P 1 41・ 852- Y (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森井 隆信  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 内田 淳子
内藤 伸一
登録日 2001-12-07 
登録番号 特許第3258672号(P3258672)
発明の名称 抗真菌薬及び酢酸緩衝液を含有する組成物  
代理人 坪倉 道明  
代理人 坪倉 道明  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 小野 誠  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 安藤 健司  
代理人 城山 康文  
代理人 金山 賢教  
代理人 重森 一輝  
代理人 重森 一輝  
代理人 安藤 健司  
代理人 城山 康文  
代理人 小野 誠  
代理人 金山 賢教  

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