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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A42C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A42C
管理番号 1276833
審判番号 不服2012-19780  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-09 
確定日 2013-07-18 
事件の表示 特願2006-103528「帽子」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月25日出願公開、特開2007-277747〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年4月4日の出願であって、平成23年8月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成23年9月22日付けで意見書及び手続補正書が提出された。
その後、平成24年2月9日付けで拒絶理由(最後)が通知されたが、期間内に応答がなく、平成24年6月29日付けで拒絶査定がされた。
これに対し、平成24年10月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされ、当審で、平成24年12月13日付けで審尋が送付されたが、期間内に回答がなかったものである。

第2.平成24年10月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年10月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、本件補正前の請求項1に
「二等辺三角形状の複数枚のれんげ生地の側縁を互いに縫着することにより半球状に形成された帽体と、
庇芯地と、庇芯地の上面を覆う庇表地と、庇芯地の下面を覆う庇裏地とで構成され、帽体の前周部の下縁から前方に突出して設けられた三日月形状の庇と、
帽体の内部下縁に沿って取り付けられたびん皮と、
を備えた帽子であって、
庇表地と庇裏地の先端縁を互いに縫着して袋状に形成した後裏返し、庇表地及び庇裏地の先端縁における裁ち目が外部に露出しないようにすることにより、庇表地及び庇裏地の先端縁にほつれ防止処理を施し、
庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目に沿って補強テープT1を配し、補強テープT1を長手方向に沿って二つ折りにして庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目を補強テープT1で包み込み、補強テープT1の長手方向に沿った両側の縁を補強テープT1の内側にさらに折り返し、その折り返された部分で補強テープT1を庇表地及び庇裏地に対して縫着することにより、庇の基端縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
びん皮表地の上縁及び下縁をびん皮芯地の裏面側に折り返し、びん皮の長手方向に沿って補強テープT2を配し、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目を補強テープT2で被覆し、補強テープT2の上縁及び下縁を内側に折り返し、その折り返された部分で補強テープT2をびん皮表地及びびん皮芯地に縫着することにより、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
帽体の下縁をその内部に折り返して、その折り返された下縁における裁ち目に沿って補強テープT3を配し、帽体の下縁における裁ち目の近傍を補強テープT3とともにかがり縫いすることにより、帽体の下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
帽体を構成するれんげ生地の継ぎ目を帽体の内部から補強テープT4で被覆して縫着することにより、帽体を構成するれんげ生地の側縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施すとともに、
帽体の下縁及び庇の基端縁が、びん皮によって覆われたことを特徴とする帽子。」
とあるのを、
「二等辺三角形状の複数枚のれんげ生地の側縁を互いに縫着することにより半球状に形成された帽体と、
庇芯地と、庇芯地の上面を覆う庇表地と、庇芯地の下面を覆う庇裏地とで構成され、帽体の前周部の下縁から前方に突出して設けられた三日月形状の庇と、
帽体の内部下縁に沿って取り付けられたびん皮と、
を備えた帽子であって、
庇表地と庇裏地の先端縁を互いに縫着して袋状に形成した後裏返し、庇表地及び庇裏地の先端縁における裁ち目が外部に露出しないようにすることにより、庇表地及び庇裏地の先端縁にほつれ防止処理を施し、
庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目に沿って補強テープT1を配し、補強テープT1を長手方向に沿って二つ折りにして庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目を補強テープT1で包み込み、補強テープT1の長手方向に沿った両側の縁を補強テープT1の内側にさらに折り返し、その折り返された部分で補強テープT1を庇表地及び庇裏地に対して縫着することにより、庇の基端縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
びん皮表地の上縁及び下縁をびん皮芯地の裏面側に折り返し、びん皮の長手方向に沿って補強テープT2を配し、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目を補強テープT2で被覆し、補強テープT2の上縁及び下縁を内側に折り返し、その折り返された部分で補強テープT2をびん皮表地及びびん皮芯地に縫着することにより、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
帽体の下縁をその内部に折り返して、その折り返された下縁における裁ち目に沿って補強テープT3を配し、帽体の下縁における裁ち目の近傍を補強テープT3とともにかがり縫いすることにより、帽体の下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
帽体を構成するれんげ生地の継ぎ目を帽体の内部から補強テープT4で被覆して縫着することにより、帽体を構成するれんげ生地の側縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施すとともに、
帽体の内側に折り返された帽体の下縁及び庇の基端縁が、びん皮によって覆われたことを特徴とする帽子。」
とするものである。

2.目的要件等
特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「びん皮によって覆われた」「帽体の下縁」を「帽体の内側に折り返された」ものに限定するものであり、本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

(1)引用文献及び引用発明
i)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-1699号(実開昭63-135920号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「多数枚のレンゲ(帽子の半球状のキャップの部分を形成するための三角形の布片をいう、以下同じ)を継ぎ合わせてなる野球帽等では、レンゲの継ぎ合わせを完了したキャップ形状に刺繍を施したり、ワッペンを縫い合わせる必要があるため、平たい布にその作業をなす場合とは違って、作業が繁雑となることは避けられなかった。」(第3頁第1?8行)
(b)「この考案の構成は、多数枚のレンゲを継ぎ合わせてなるキャップの下部全周のうち、少なくとも額当り部に欠除部を形成することにより、それだけ使用材料の節約となり、欠除部を模様付きの補完布で補完してキャップの形態を得るので、使用材料の増加はほとんどなく、前記補完布を欠除部の周縁に縫着するので、縫着作業を容易になし得るようにしたことをその要旨とする。」(第4頁第3?11行)
(c)「帽子P1は、キャップ1と、鍔2と、補完布3と、鬢皮4と、バイアステープ5と、紙テープ6とからなる(第3図)。
キャップ1は、4枚の普通レンゲ1a、1a…と、2枚の短レンゲ1b、1bと、天ボタン1eとからなる。計6枚のレンゲの使用であるので、いわゆる6枚張りレンゲであるが、8枚張りレンゲであってもよい。普通レンゲ1aと短レンゲ1bとは、その長さが異なっており、普通レンゲ1aがキャップ1の上端から下端に至る一般的な寸法であるのに対して、短レンゲ1bは、キャップ1の上端からほぼ中間部に至る寸法に短く形成され、それだけ材料の節約がなされている。
各レンゲ1a、1a…、1b、1bは、普通に縫い合わされているが、そのうち、2枚の短レンゲ1b、1bが前側、つまり鍔2の取付け位置に用いられているために、その前側の額当り部に材料の欠除部1cを有する。…。
補完布3は、欠除部1cを補完するものであるため、欠除部1cとは、それより一回り大きい、ほぼ相似形であって、その補完布3と欠除部1cの形状については、横長のほぼ矩形であるが、上端に丸みをもたせて、両端の角が取れたアール縁3a、1dが形成されている。」(第4頁第15行?第6頁第1行)
(d)「補完布3は、必ずしもゴム編み地であることを要せず、他の編地や、織地、皮等であってもよい。」(第6頁第8?10行)
(e)「鍔2は、その外カバー2a、2aの端を鬢皮4と共にキャップ1の下端(大部分は補完布3の下端)に縫着することにより、キャップ1に取り付けられ、補完布3のその縫着位置よりも端にほつれ防止用に紙テープ6を縫着してある。」(第7頁第4?9行)
(f)第1図、第2図より、三日月形状の鍔2がキャップ1及び補完布3とにより形成された半球状の部分の前周部の下縁から前方に突出して設けられており、外カバー2a、2aが鍔2の上面と下面を覆っている点、キャップ1及び補完布3とにより形成された半球状の部分の下端(第2図では、ほつれ防止用に紙テープ6を縫着してある補完布3の端の部分)が内部に折り返され、当該折り返された下端及び鍔の外カバー2aの右端を鬢皮4によって覆っている点がみてとれる。
(g)第2図、第3図より、鬢皮4がキャップ1及び補完布3とにより形成された半球状の部分の内部下縁に沿って取り付けられている点がみてとれる。

以上の記載事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「三角形状の複数枚の普通レンゲ1a及び短レンゲ1bの側縁を互いに縫着したキャップ1と前記キャップの欠除部1cを補完する補完布3とにより形成された半球状の部分と、前記半球状の部分の前周部の下縁から前方に突出して設けられ、上面と下面を覆う外カバー2aを有する三日月形状の鍔2と、前記半球状の部分の内部下縁に沿って取り付けられた鬢皮4と、を備えた帽子であって、
前記半球状の部分の下端をその内部に折り返して、その折り返された下端にほつれ防止用に紙テープ6を縫着し、前記半球状の部分の内側に折り返された下端及び鍔の外カバーの端を鬢皮によって覆った帽子。」

ii)原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-253517号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「つまり、本発明に於ける当該変装帽子100に於いては、当該鍔部3は、4層の布帛で構成される事が必要であり、更には、当該第2の帽子部2に対応する鍔部の表裏面を形成する当該第2及び第3の鍔部層42,41は、当該鍔部を構成する布帛が中表に積層されている事が必要である。」(段落【0018】)
(b)「即ち、本発明に於ける当該鍔部3の外周縁部80は、当該第1の帽子部と対応する鍔部の表面を構成する布帛と、当該第1の帽子部と対応する鍔部の裏面を構成する布帛とを中表となるように重ね合わせた一対の第1の鍔部構成布帛層群と、当該第2の帽子部と対応する鍔部の表面を構成する布帛と、当該第2の帽子部と対応する鍔部の裏面を構成する布帛とを中表となるように重ね合わせた一対の第2の鍔部構成布帛層群を相互に重畳させ、当該重畳布帛層群の外周縁部を当該一体的に逢着し、当該第1若しくは第2の鍔部構成布帛層群の何れか一方の対に於ける最外層部を構成する布帛を反転させて、他方の最外層部を構成する布帛の上側に配置せしめた事を特徴とするものである。
上記の構成をより詳細に説明するならば、即ち、図2(A)に示す様に、所定の布帛素材から、当該各クラウン部のサイズ元の寸法に合わせて、略円環状に切り出した鍔部形成材料を…重ね合わせて4層の鍔部層からなる積層体を形成した後、その一方の端縁部を一体的に逢着して固定すると共に、その後、図2(B)に示す様に、逢着された一方の端部を湾曲させ、次いで、図2(C)に示す様に、最下段の第1の鍔部層33を、当該第2の鍔部層42の上方に反転させて当該第2の鍔部層42を被覆するようにして鍔部3を形成する。」(段落【0028】?【0029】)
(c)「つまり、本発明に於ける当該鍔部3の外周縁部80は、当該積層された第1乃至第4の鍔部層の外周縁端部が一体的に逢着せしめられており且つ当該逢着部は、当該鍔部の内部に折り込まれているものである事が望ましい。」(段落【0030】)
(d)「当該逢着に際しては、当該鍔部3に於ける第1の鍔部層32と第2の鍔部層42との間に必要に応じて適宜の芯材85を介在させることが望ましく、同様に、当該第3の鍔部層41と第4の鍔部層33との間にも必要に応じて適宜の芯材86を介在させることが望ましい。」(段落【0032】)

iii)原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3081178号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「従来、帽子のサイズの調整は…帽子の下端の内側回りに配されるスベリをゴム入りとして伸縮させるものがある。」(段落【0002】)
(b)「帽子2の帽体2aの内周面の下端縁2a1と鍔部2bの基端縁2b1に内方に芯布10を入れたスベリ3の下端縁3aを縫着接続してスベリ3を帽体2aの内周面に周回して配備し、このスベリ3の内周面の下半に、二つ折り袋状布製の縮径補助スベリ4を、その上方側基端縁4aを縫着接続し、帽体2aの後部の内周面と対応する部分を開口する開口部4b、4cに設け、その縮径補助スベリ4の内方にゴム紐5を貫通し、そのゴム紐5の両端部5a、5bを前記開口部4b、4cから引き出し、引き出し部に飾止具6を接続して抜け止めを図るものである。」(段落【0009】)
(c)「前記スベリ3には、その内面側3cと外面側3dとに両折りテープ8、9を縫着して補強している。」(段落【0011】)
(d)図4から、スベリ3はその上端縁3b、下端縁3aで、それぞれ芯布10の内面側3cに折り返されて、その裁ち目が、上下縁を内側に折り返した両折りテープ8で被覆され、その折り返した部分で該両折りテープ8がスベリ3及び芯布10に逢着されている点がみてとれる。

iv)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-292512号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「被冠部3は頭形状に応じて、例えば6分割したほぼ三角形状の被冠部細片9a?9f相互を半球形状に縫着して形成される。各被冠部細片9a?9fとしては多数の孔を有するように織布されたメッシュ布或いは普通の布からなる。」(段落【0011】)
(b)「各被冠部細片9a?9fは隣接する側縁相互を所定の幅で折り返してほぼ平面状にして相互を縫着した後、折り返された夫々の側縁を覆うようにテープ状の裏打ち布13を縫着して半球状の被冠部3に形成される。このため、各被冠部細片9a?9fを縫着する際には、折り返された側縁の厚さが一致しているため、側縁の折り返し作業及び縫着作業を簡易、かつ効率的に行うことができる。」(段落【0016】)

v)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-265570号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「従来より、寝具、敷物、肌着、紳士服、婦人服等の繊維製品(繊維加工品)等においては最終製品になってから、生地(被縫製生地)の端縁側(生地の端縁部及び生地の端縁部の周囲の表裏面)より「ほつれ」が生じるのを防止したり、同端縁側の装飾等を図るため、図1に示す様に、同端縁側41を所定の縫製加工用テープ生地(以下、「テープ生地」という)5で挟み込みながら、同テープ生地5を同端縁側41にミシン縫着すること多い。」(段落【0002】)
(b)「この装着に際し、上記経路中を移動する上記テープ生地(最先端部分)5は、その中央寄りの部分を同経路Lの主要部Mの断面形状に応じて略逆U字状に変形させると共に、その両端側の部分を同経路Lの付加部の断面形状に応じて略ノの字状(若しくは、逆ノの字状)に変形させる。しかし、上記導出口L2 より繰り出される際に、上記の様に折り返されるため、図1に示す様に、上記中央寄りの部分が略U字状に変形し、挟持部51を形成すると共に、両端側の部分(以下、「耳部」という。)52a、52bが、この挟持部51内に折り込まれる。」(段落【0043】)

vi)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-304364号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「縫製された縫製物の布地縁には、布地縁からの糸ほつれを防止するとともに、美観を向上させるため、布地の縁に沿って帯状の布地からなるテープ体が縫い付けられる…このテープ体Tは、縫製物の縫製場所によって種々縫製形状が異なり、今日では一般に図6に示す縫製形状が知られている…同図(c)に示すテープ体Tは、テープ体Tの上下両端部を内側に折り返したもので、当業者間ではこうした縫製形状を、四つ巻き縫いと称している。」(段落【0002】?【0003】)

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「レンゲ」、「(キャップ及び補完布とにより形成された)半球状の部分」、「鍔」、「(鍔の)上面と下面を覆う外カバー」、「紙テープ」、「半球状の部分の下端」、「鬢皮」は、それぞれ本願補正発明の「れんげ生地」、「帽体」、「庇」、「庇芯地の上面を覆う庇表地と庇芯地の下面を覆う庇裏地」、「補強テープ」、「帽体の下縁」、「びん皮」に相当する。
また、引用文献1の第2図から、引用発明の「鍔2」も本願の「庇」同様、芯地を有すると認められる。
さらに、引用発明の「三角形状の複数枚の普通レンゲ及び短レンゲの側縁を互いに縫着したキャップと、前記キャップの欠如部を補完する補完布とにより形成された半球状の部分」と、本願発明の「二等辺三角形状の複数枚のれんげ生地の側縁を互いに縫着することにより半球状に形成された帽体」とは「三角形状の複数枚のれんげ生地を利用して半球状に形成された帽体」の限りにおいて一致し、引用発明の「(半球状の部分の)折り返された下端にほつれ防止用に紙テープを縫着」することと、本願補正発明の「折り返された下縁における裁ち目に沿って補強テープT3を配し、帽体の下縁における裁ち目の近傍を補強テープT3とともにかがり縫いすることにより、帽体の下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施」すこととは、「折り返された下縁における裁ち目に沿って補強テープを配し、帽体の下縁における裁ち目の近傍を補強テープとともに縫うことにより、帽体の下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施」すことの限りにおいて一致する。
以上より、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「三角形状の複数枚のれんげ生地を利用して半球状に形成された帽体と、
庇芯地と、庇芯地の上面を覆う庇表地と、庇芯地の下面を覆う庇裏地とで構成され、帽体の前周部の下縁から前方に突出して設けられた三日月形状の庇と、
帽体の内部下縁に沿って取り付けられたびん皮と、
を備えた帽子であって、
帽体の下縁をその内部に折り返して、その折り返された下縁における裁ち目に沿って補強テープを配し、帽体の下縁における裁ち目の近傍を補強テープとともに縫うことにより、帽体の下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施し、
帽体の内側に折り返された帽体の下縁及び庇の基端縁が、びん皮によって覆われたことを特徴とする帽子。」
である点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、補強テープをかがり縫いするのに対して、引用発明では、かがり縫いするとはされていない点。

[相違点2]
本願補正発明では、「庇表地と庇裏地の先端縁を互いに縫着して袋状に形成した後裏返し、庇表地及び庇裏地の先端縁における裁ち目が外部に露出しないようにすることにより、庇表地及び庇裏地の先端縁にほつれ防止処理を施し」、及び「庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目に沿って補強テープT1を配し、補強テープT1を長手方向に沿って二つ折りにして庇表地及び庇裏地の基端縁における裁ち目を補強テープT1で包み込み、補強テープT1の長手方向に沿った両側の縁を補強テープT1の内側にさらに折り返し、その折り返された部分で補強テープT1を庇表地及び庇裏地に対して縫着することにより、庇の基端縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施」すことで庇のほつれ防止をしているのに対して、引用発明では、庇(鍔部)にほつれ防止処理を施すとされていない点。

[相違点3]
本願補正発明では、「びん皮表地の上縁及び下縁をびん皮芯地の裏面側に折り返し、びん皮の長手方向に沿って補強テープT2を配し、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目を補強テープT2で被覆し、補強テープT2の上縁及び下縁を内側に折り返し、その折り返された部分で補強テープT2をびん皮表地及びびん皮芯地に縫着することにより、びん皮表地の上縁及び下縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施」すのに対して、引用発明では鬢皮を表地と芯地とで構成しておらず、補強テープも配していない点。

[相違点4]
本願補正発明では、「二等辺三角形状の複数枚のれんげ生地の側縁を互いに縫着することにより」帽体を形成し、「帽体を構成するれんげ生地の継ぎ目を帽体の内部から補強テープT4で被覆して縫着することにより、帽体を構成するれんげ生地の側縁における裁ち目に沿ってほつれ防止処理を施す」のに対して、引用発明では、三角形状の複数枚の普通レンゲ及び短レンゲの側縁を互いに縫着したキャップと、前記キャップの欠如部を補完する補完布とにより帽体を形成しており、内部から補強テープでほつれ防止処理を施すとはされていない点。

(3)当審の判断
上記相違点1について検討すると、ほつれ止めを目的としてかがり縫いを施すことは周知技術にすぎない(例えば、特開平11-333162号公報参照)。
よって、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知技術から当業者が容易になし得たことである。

次に、上記相違点2について検討すると、庇を芯体を包む表地と裏地からなる構成としたものにおいて、布帛からなる庇表地と庇裏地の先端縁を互いに縫着して袋状の外カバーを形成した後裏返し、庇表地及び庇裏地の先端縁における裁ち目が外部に露出しないようにすることは、引用文献2に記載された事項であり(上記(1)ii)参照。ちなみに、リバーシブルでなくとも帽子の鍔先端で表地と裏地を内部に折り込ませることは、例えば特開2001-207319号公報に記載されたように、当業者が適宜なす程度のこととにすぎない。)、これは、先端縁における裁ち目が外部に露出しないのであるから、先端縁のほつれ防止の効果があるものと認められる。
また、繊維製品等において、最終製品になってから、生地の端縁側より「ほつれ」が生じるのを防止するため、裁ち目に沿って補強テープを配し、補強テープを長手方向に沿って二つ折りにして裁ち目を補強テープで包み込み、補強テープの長手方向に沿った両側の縁を補強テープの内側にさらに折り返し縫着する、ほつれ防止処理も周知技術にすぎず(上記引用文献5、引用文献6参照)、引用発明において、半球状の部分の下端同様に、鍔の外カバーの基端側の裁ち目にも、当該周知技術を用いて、ほつれ止め処理を施すことは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された事項、並びに引用文献5、引用文献6に開示された周知技術から当業者が容易になし得たことである。

次に、上記相違点3について検討すると、スベリ(本願補正発明の「びん皮」に相当)の表地の上縁及び下縁をスベリの芯地の裏面側に折り返し、スベリの長手方向に沿って補強テープを配し、スベリ表地の上縁及び下縁における裁ち目を補強テープで被覆し、補強テープの上縁及び下縁を内側に折り返し、その折り返された部分で補強テープをびん皮表地及びびん皮芯地に縫着することは上記引用文献3に記載された事項であり(上記(1)iii)参照)、補強テープによりスベリ表地の上縁及び下縁における裁ち目が覆われるので、ほつれ防止の効果があるものと認められる。
そして、引用発明では、鬢皮を鍔の外カバーの基端側と共に半球状の部分の下端に縫着して帽子を縫製するのであるから、鬢皮も、半球状の部分の下端同様に、ほつれ止め処理を施したものを用いることは当業者が容易に想到し得ることである。
よって、上記相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び引用文献3に記載された事項から当業者が容易になし得たことである。

次に、上記相違点4について検討すると、れんげ生地のみを用いて半球状の部分を形成することは周知技術であり(上記(1)i)(a)参照)、この場合、相互に縫着する側縁を等しくした同形の二等辺三角形のレンゲのみを用いて半球形状の部分を形成することは当業者が適宜なす程度の設計的事項にすぎない。
また、れんげ生地を用いる帽子において、隣接する被冠部細片(本願補正発明の「れんげ生地」に相当)の側縁を所定幅で折り返して相互に縫着し、半球状の被冠部(本願補正発明の「帽体」に相当)を形成し、継ぎ目を帽体の内部から裏打ち布(本願補正発明の「補強テープ」に相当)で被覆して縫着することは上記引用文献4に記載された事項であり(上記(1)iv)参照)、被冠部細片の裁ち目が被覆されるのでほつれ防止の効果があるものと認められる。
以上より、複数のレンゲを用いる引用発明の半球状の部分を、二等辺三角形状の複数枚のれんげ生地の側縁を互いに縫着することにより形成するとともに、継ぎ目を半球状の部分の内部から補強テープで被覆して縫着して、ほつれ防止処理されたものとすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、本願補正発明の上記相違点4に係る構成は、引用発明及び引用文献4に記載された事項、並びに引用文献1に開示された周知技術から当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2?4にそれぞれ記載された事項、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。
請求人は、審判請求理由として「ほつれが発生する可能性のある全ての箇所にほつれ防止処理が施された」点を主張する。しかし、ほつれが生じる箇所にほつれ防止処理をすることは、上記各文献に示されており、「全て」の箇所とすることも格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2?4にそれぞれ記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成24年10月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月22日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項1参照)。

第4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、引用発明は、前記「第2.」の「3.」「(1)」に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明(前記「第2.」「1.」の補正前の請求項1参照。)から、「びん皮によって覆われた」「帽体の下縁」が「帽体の内側に折り返された」ものであるとの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の「3.」に記載したとおり、引用発明及び引用文献2?4にそれぞれ記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明及び引用文献2?4にそれぞれ記載された事項、並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2?4にそれぞれ記載された事項、並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-16 
結審通知日 2013-05-21 
審決日 2013-06-04 
出願番号 特願2006-103528(P2006-103528)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A42C)
P 1 8・ 121- Z (A42C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西藤 直人  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 二ッ谷 裕子
熊倉 強
発明の名称 帽子  
代理人 森 寿夫  
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