• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1277107
審判番号 不服2012-13931  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-20 
確定日 2013-07-25 
事件の表示 特願2007-507191「光デバイス及び光デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月14日国際公開、WO2006/095834〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成18年3月9日(特許法第41条に基づく国内優先権主張 平成17年3月9日)を国際出願日とする出願であって、平成23年12月28日付けで手続補正がなされたが、平成24年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月20日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成24年7月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成24年7月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成24年7月20日の手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前(平成23年12月28日付け手続補正後)の請求項1、
「基板上に形成された光電変換部を有する光電変換素子を含む1つ以上の素子と、
前記光電変換素子に電気的に接続される接続端子と、
前記1つ以上の素子及び前記接続端子を封止する封止部材と
を備える光デバイスであって、
前記光デバイスは、光を入射または出射する側に開口部を備え、かつ、前記開口部の底面は、前記1つ以上の素子のうち外界に最も近い素子と該外界との界面であり、かつ、前記外界に最も近い素子は、該外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有することを特徴とする光デバイス。」を、
「基板上に形成された光電変換部を有する光電変換素子を含む1つ以上の素子と、
前記光電変換素子に電気的に接続される接続端子と、
前記1つ以上の素子及び前記接続端子を封止する封止部材と
を備える光デバイスであって、
前記光デバイスは、光を入射または出射する側に開口部を備え、かつ、前記開口部の底面は、前記1つ以上の素子のうち外界に最も近い素子と該外界との界面であり、かつ、前記外界に最も近い素子は、該外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有し、前記外界に最も近い素子と、前記光反射防止部、および/または前記フィルターとは、界面を形成していることを特徴とする光デバイス。」のように補正することを含むものである。

2 補正の目的
(1)上記1によれば、本件補正は、補正前の請求項1の「開口部の底面は、前記1つ以上の素子のうち外界に最も近い素子と該外界との界面であり、かつ、前記外界に最も近い素子は、該外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有する」との記載を、「開口部の底面は、前記1つ以上の素子のうち外界に最も近い素子と該外界との界面であり、かつ、前記外界に最も近い素子は、該外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有し、前記外界に最も近い素子と、前記光反射防止部、および/または前記フィルターとは、界面を形成している」と補正することを含む。
そして、「前記外界に最も近い素子は、該外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有し」との記載によれば、「素子」自体が「光反射防止部」あるいは「フィルター」を有するものであると認められる。他方、「前記外界に最も近い素子と、前記光反射防止部、および/または前記フィルターとは、界面を形成している」との記載によれば、「素子」と「光反射防止部」あるいは「フィルター」とが界面を形成するとされるところ、上記のように、「光反射防止部」あるいは「フィルター」を有する「素子」と、「光反射防止部」あるいは「フィルター」とが界面を形成するとはどのようなことを意味するのか理解できない。
したがって、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることはできない。
また、本件補正の目的は、同法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号に掲げる、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明、のいずれにも該当しない。

3 補正却下の決定のむすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55条改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年12月28日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、1において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開平4-217375号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア 「【請求項1】基板上に実装された光素子を含む半導体装置において、前記光素子が、前記基板上のパッドに金属バンプを介して固定され、且つ、前記光素子の受光部または発光部を除いて、基板上に堆積された樹脂によりモールディングされていることを特徴とする半導体装置。」(特許請求の範囲)

イ 「【0011】尚、光素子の受光部または発光部を避けて樹脂モールディングするためには、例えば、光素子を作製するウェハプロセスの最後に、受光部または発光部を覆うようなパッシベーション膜を形成しておき、一旦光素子全体を樹脂モールディングした後で、受光部または発光部上の樹脂を取り除くことにより、光素子の受光部または発光部を損傷することなく、モールディング樹脂を容易に除去することができる。
【0012】以上のような工程により、光素子の機能を阻害することなく樹脂モールディングを形成することができる。」

ウ 「【0014】
【実施例】図1は、本発明に係る半導体装置の具体的な構成例を示す図である。
【0015】図1に示すように、この半導体装置は、基板1上に実装された光素子2を備えている。
【0016】ここで実装されている光素子2は、その上面に受光部または発光部22を備え、その下面にリードパッド21を備えている。
【0017】また、上記光素子2を実装される基板1は、光素子2のリードパッド21に対応した位置に、電極バッド11を備えている。
【0018】上述のような光素子2は、そのリードパッド21を、金属バンプ3を介して電極パッド11にフリップチップボンディングにより、基板1と電気的に接続される。また、この金属パンプ3により、物理的にも固定されている。
【0019】更に、この半導体装置においては、光素子2は、樹脂4a、4bによってモールディングされることにより、基板1と物理的に強固に固着されている。
【0020】ここで、光素子2をモールディングしている樹脂4a、4bは、受光部または発光部22である光素子の上面を避けて形成されている。従って、モールディング樹脂4a、4bにより、光素子2の機能が阻害されることはない。」

エ 「【0022】図2は、図1に示した半導体装置において使用する光素子を作製する際の最終工程を示す図である。
【0023】図2(a)に示すように、光素子の機能部23は、半導体ウェハ200の下面に複数一括して形成されており、半導体ウェハ200の裏面、即ち上面から光を受光あるいは発光するように構成されている。」

オ 図1及び図2(a)は、次のものである。


よって、これらの記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板上に実装された光素子を含む半導体装置において、前記光素子が、前記基板上のパッドに金属バンプを介して固定され、且つ、前記光素子の受光部または発光部を除いて、基板上に堆積された樹脂によりモールディングされている半導体装置であって、
前記光素子をモールディングしている樹脂は、受光部または発光部である光素子の上面を避けて形成されている半導体装置。」

(2)対比・判断
ア 本願発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「半導体装置」は、光素子を含む半導体装置であるから、本願発明の「光デバイス」に相当する。

(イ)引用発明の「光素子」は、上記(1)エによれば、機能部が半導体ウェハの下面に形成されており、半導体ウェハの裏面、即ち上面から光を受光あるいは発光するように構成されているから、半導体ウェハ上に形成された機能部を有する光素子であるといえる。そうすると、引用発明の光素子は「半導体ウェハ」と「機能部」を備えており、それぞれが本願発明の光電変換素子の「基板」及び「光電変換部」に相当すると認められる。また、引用発明は、光素子を1つ備えるから、引用発明は、本願発明と、「基板上に形成された光電変換部を有する光電変換素子を含む1つの素子」を有する点で一致する。

(ウ)引用発明の「光素子」は、「基板上のパッドに金属バンプを介して固定され、且つ、前記光素子の受光部または発光部を除いて、基板上に堆積された樹脂によりモールディングされている」から、引用発明の金属バンプは本願発明の「(光電変換素子に電気的に接続される)接続端子」に相当し、また、引用発明の樹脂は本願発明の「(1つ以上の素子及び前記接続端子を封止する)封止部材」に相当する。

(エ)引用発明の「半導体装置」は、「光素子の受光部または発光部を除いて、基板上に堆積された樹脂によりモールディングされ」、かつ、「記光素子をモールディングしている樹脂は、受光部または発光部である光素子の上面を避けて形成されている」ものであるから、樹脂が除かれた受光部または発光部である光素子の上面は、光を受光または発光する側の開口部であるといえる。また、前記開口部は、光素子の上面と外界の界面であるといえる。
また、引用発明の「半導体装置」は光素子を1つ備えるところ、前記開口部は、前記光素子の上面と外界の界面であるから、前記開口部の底面は、前記光素子の外界との界面であるといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明の「光デバイスは、光を入射または出射する側に開口部を備え、かつ、前記開口部の底面は、前記1つ以上の素子のうち外界に最も近い素子と該外界との界面であ」る点と、「光デバイスは、光を入射または出射する側に開口部を備え、かつ、前記開口部の底面は、前記1つの素子と外界との界面であ」る点で一致する。

(オ)したがって、両者は、
「基板上に形成された光電変換部を有する光電変換素子を含む1つの素子と、
前記光電変換素子に電気的に接続される接続端子と、
前記1つの素子及び前記接続端子を封止する封止部材と
を備える光デバイスであって、
前記光デバイスは、光を入射または出射する側に開口部を備え、かつ、前記開口部の底面は、前記1つの素子と外界との界面である光デバイス。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(カ)相違点
本願発明の「1つの素子」は、「外界との界面に、光の反射を防ぐ光反射防止部、および/または、受光・発光の波長を制御するフィルターを有し」ているのに対し、引用発明の「光素子」は、このようなものを有していない点(以下「相違点」という。)。

イ 判断
上記相違点につき検討する。
引用発明の「半導体装置」の「光素子」は「受光部または発光部」を有するものであるところ、光電変換素子の受光面に受光波長を制御するフィルターを備えること(例えば、実願昭62-46564号(実開昭63-153557号)のマイクロフィルム:4頁16?18行の「ガラス基板2の他面すなわち受光面2Aには凸面を有するカラーフィルタ10が設けられている。」との記載及び第1、2図参照)や、光素子の半導体基板の受光面や発光面に光の反射を防ぐ光反射防止部を備えること(例えば、特開平6-318731号公報:段落【0035】?【0039】の「N型基板1の表面1aに、反射防止膜11を形成する。・・・上記発光による発光光は、上記PN接合面Jに対向するN型半導体部2の対向面2aを通過して、N型基板1の表面1aつまり光出射面から外部に出射する。」との記載と図1、及び、特開昭59-188965号公報:特許請求の範囲、2頁右上欄15?17行の「干渉フィルタ」と2頁右下欄12?20行の「光反射に対する防止膜」に係る記載参照)が、本願の優先日時点で周知技術であることを踏まえると、引用発明の半導体装置において、「光素子の受光部を除いて、基板上に堆積された樹脂によりモールディングされ」、かつ、「前記光素子をモールディングしている樹脂は、受光部である光素子の上面を避けて形成」するものとなすに際して、樹脂が除かれた受光部である光素子の上面に、受光波長を制御するフィルター、あるいは、光の反射を防ぐ光反射防止部を形成して、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、「しかしながら、本願発明における光反射防止部、および/またはフィルターは、補正した請求項1に『前記外界に最も近い素子と、前記光反射防止部、および/または前記フィルターとは、界面を形成している』と記載されているように、光変換素子等と界面を形成するように一体化しています(明細書段落[0064]参照)。これにより、部品の数が減り、さらに、光反射防止部、および/またはフィルターと、光変換素子等との間のスペースを減らすことができ、非常に薄型の光デバイスを実現できます。」と主張するが、上記イの判断を左右するものではない。

(3)小括
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-05-21 
結審通知日 2013-05-28 
審決日 2013-06-10 
出願番号 特願2007-507191(P2007-507191)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 松川 直樹
小松 徹三
発明の名称 光デバイス及び光デバイスの製造方法  
復代理人 濱中 淳宏  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ