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審決分類 |
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない A41D 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない A41D 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない A41D 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない A41D 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正しない A41D 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない A41D |
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管理番号 | 1277137 |
審判番号 | 訂正2011-390083 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2011-07-06 |
確定日 | 2013-08-05 |
事件の表示 | 特許第4331782号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第4331782号に係る特許出願は、平成20年3月25日(優先権主張 平成19年3月30日)に出願した特許出願(特願2008-78937号)であり、平成21年6月26日に当該特許権の設定登録がなされた。 2.その後、これに対して平成22年7月7日に特許無効審判(無効2010-800114号)が請求され、平成23年3月8日付けで請求項1乃至7に係る発明についての特許を無効とする旨の審決がなされたところ、平成23年4月12日に上記審決の取消しを求めて知的財産高等裁判所に訴えが提起された[平成23(行ケ)第10118号]。 3.その訴えの提起があった日から起算して90日の期間内であって、当該事件について審決の取消しの判決又は審決の取消しの決定がされていない、平成23年7月6日に本件訂正審判が請求された。 4.そして、平成23年8月5日付けで本件訂正審判の手続を中止する旨を請求人に通知した。その後、請求人から、平成23年8月16日に審判請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出された。 5.上記特許無効審判に係る審決の取消しを求めていた訴えは、知的財産高等裁判所において、平成24年4月11日に請求を棄却するとの判決が出され、当該訴えはその上告期間内である平成24年4月21日に上告され、請求人より平成24年5月9日に上記中止の解除を求める上申書(手続中止解除の申出)が提出された。 6.当審はこの上申書を審理し平成24年5月24日付けで上記中止を解除し、平成24年6月5日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、その指定期間内である平成24年6月27日に意見書とともに審判請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらにその指定期間内である平成24年7月6日に再度、意見書とともに審判請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出された。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 1.平成23年7月6日に請求された本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4331782号に係る明細書(以下、「本件特許明細書」という。)、特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)及び図面を、審判請求書に添付した明細書(以下、「訂正特許明細書」という。)、審判請求書に添付した特許請求の範囲(以下、「訂正特許請求の範囲」という。)及び審判請求書に添付した図面のとおりに訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を求めるものであって、本件訂正の内容について、審判請求人は、審判請求書において訂正事項(1-1)ないし(2-16)と記号を付して訂正事項の説明をしているが、本件特許明細書及び本件特許請求の範囲に対する訂正の観点から訂正事項を整理すると、下記(a)ないし(v)のとおり訂正することを求めるものである。(以下、各訂正事項を「訂正事項(a)」?「訂正事項(v)」という。) (a)特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (b)特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (c)特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (d)特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (e)特許請求の範囲の請求項5の、 「【請求項5】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さい第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、 手袋。 」 を、 「【請求項1】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。」 と訂正する。 (f)特許請求の範囲の請求項6の、 「【請求項6】 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の下側に、気泡(4)を含まない樹脂皮膜(2)を少なくとも有している、 請求項5記載の手袋。 」 を、 「【請求項2】 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の下側に、気泡(4)を含まない樹脂皮膜(2)を少なくとも有している、請求項1記載の手袋。」 と訂正する。 (g)特許請求の範囲の請求項7の、 「【請求項7】 樹脂皮膜(3)に含まれる気泡の量が5?10vol%である、請求項5または6記載の手袋。 」 を、 「【請求項3】 樹脂皮膜(3)に含まれる気泡の量が5?10vol%である、請求項1または2記載の手袋。」 と訂正する。 (h)明細書の段落【0001】の 「【0001】 本発明は、樹脂表面の形成方法、表面に異なる大きさの凹状部が混在する物品の製造方法及びその物品、手袋の製造方法及び手袋にかかり、更に詳しくは、優れた滑り止め効果と柔軟性を有するものに関する。 」 を、 「【0001】 本発明は、表面に異なる大きさの凹状部が混在する手袋にかかり、更に詳しくは、優れた滑り止め効果と柔軟性を有するものに関する。 」 と訂正する。 (i)明細書の段落【0006】の 「【0006】 (本発明の目的) そこで本発明の目的は、優れた滑り止め効果と柔軟性を発揮することができる樹脂表面の形成方法、表面に異なる大きさの凹状部が混在する物品の製造方法及びその物品、手袋の製造方法及び手袋を提供することにある。 」 を、 「【0006】 (本発明の目的) そこで本発明の目的は、優れた滑り止め効果と柔軟性を発揮することができる手袋を提供することにある。 」 と訂正する。 (j)明細書の段落【0008】を削除する。 (k)明細書の段落【0009】を削除する。 (l)明細書の段落【0010】を削除する。 (m)明細書の段落【0011】を削除する。 (n)明細書の段落【0012】の 「【0012】 本発明は、異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さい第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、 手袋である。 」 を、 「【0012】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 と訂正する。 (o)明細書の段落【0015】の 「【0015】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明に係る樹脂表面の形成方法では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡が表面側で開口することによって第1の凹状部よりも小さい第2の凹状部を形成する。このため付着体の除去によって第1の凹状部だけが形成されるものと比べると、単位表面積あたりに形成される凹状部の数を大幅に増やすことができ、その結果、樹脂表面は優れた滑り止め効果を発揮する。 更に、固化状態の樹脂組成物には気泡が含まれているので、気泡が含まれていないものと比べ、樹脂皮膜の厚みが同じでも優れた柔軟性を発揮する。 」 を、 「【0015】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明に係る手袋では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口することによって径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に第1の凹状部よりも微細に多数形成される。このため付着体の除去によって第1の凹状部だけが形成されるものと比べると、単位表面積あたりに形成される凹状部の数を大幅に増やすことができ、その結果、樹脂表面は優れた滑り止め効果を発揮する。 更に、固化状態の樹脂組成物には気泡が含まれているので、気泡が含まれていないものと比べ、樹脂皮膜の厚みが同じでも優れた柔軟性を発揮する。 」 と訂正する。 (p)明細書の段落【0016】の 「【0016】 (b)本発明に係る表面に異なる大きさの凹状部が混在する物品の製造方法では、優れた滑り止め効果と柔軟性を発揮できる樹脂表面を有する物品が製造できる。 」 を、 「【0016】 (b)本発明に係る表面に異なる大きさの凹状部が混在する手袋では、優れた滑り止め効果と柔軟性を発揮できる樹脂表面を有する物品が製造できる。 」 と訂正する。 (q)明細書の段落【0017】を削除する。 (r)明細書の段落【0018】を削除する。 (s)明細書の段落【0019】を削除する。 (t)明細書の段落【0020】の 「【0020】 (f)気泡を含む樹脂皮膜の下側に、気泡を含まない樹脂皮膜を少なくとも有している手袋では、気泡を含まない樹脂皮膜が水や油等の液体を通さないので、手袋を装着して水や油等の液体を取り扱う場合に、該液体が手側に入り込むことを防止できる。 」 を、 「【0020】 (c)気泡を含む樹脂皮膜の下側に、気泡を含まない樹脂皮膜を少なくとも有している手袋では、気泡を含まない樹脂皮膜が水や油等の液体を通さないので、手袋を装着して水や油等の液体を取り扱う場合に、該液体が手側に入り込むことを防止できる。 」 と訂正する。 (u)明細書の段落【0021】の 「【0021】 本発明の対象は、特に限定されない。具体例としては、例えば手袋、靴下、マット、クッション、敷物、テーブルクロース、座布団、枕カバー、鞄、バッグの肩紐、頭部に接する部分に滑り止め加工が施された帽子、骨折時などに使用する医療用の吊り部材、荷造り用ベルト等の他、滑り止め作用を物品に与えるための各種の滑り止め材を挙げることができる。 」 を、 「【0021】 本発明の対象は、手袋である。」 と訂正する。 (v)明細書の段落【0022】の 「【0022】 以下、手袋を例にとって説明する。 」 を、 「【0022】 以下、手袋を説明する。 」 と訂正する。 2.そして、請求人は、平成23年8月16日に手続補正書を提出して、平成23年7月6日提出の審判請求書の審判請求書の請求の理由、訂正特許明細書及び訂正特許請求の範囲を補正しようとしており、その補正の内容は、以下のとおりである。 (e’)訂正特許請求の範囲の請求項1の、 「【請求項1】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 を、 「【請求項1】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 と補正する。 (n’)訂正特許明細書の段落【0012】の 「【0012】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも耐実用上十分な摩耗性を有する手袋であって、気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 を、 「【0012】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 と補正する。 第3 訂正拒絶理由通知の概要 平成24年6月5日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は次のとおりである。 (1)平成23年8月16日付けの手続補正は、誤記を訂正するものであると認められる。 (2)本件訂正審判は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものとはいえない訂正事項、すなわち特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものとはいえない訂正事項を含むものであり、また同法同条第3項及び第4項にそれぞれ規定するいずれの要件をも満たさない訂正事項を含むものである。 第4 平成24年7月6日付けの手続補正の訂正内容 上記平成24年6月5日付けで通知した訂正拒絶理由に対してその指定期間内になされた平成24年7月6日付け手続補正は、上記第2 に記載した、平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正事項について、さらに以下のように補正することをその内容とするものである。 (1)平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正特許請求の範囲の請求項1の、 「【請求項1】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 を、 「【請求項1】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、 気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、 上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、 上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、 上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、 上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成された、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、 形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 と補正する。 (2)平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正特許明細書の段落【0012】の 「【0012】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 を、 「【0012】 異なる大きさの凹状部が混在することにより滑り止め効果と柔軟性を発揮し、しかも実用上十分な耐摩耗性を有する手袋であって、気泡(4)を含む樹脂皮膜(3)の表面に、第1の凹状部(31)と該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)とが混在しており、上記第1の凹状部(31)は、樹脂皮膜(3)表面に一部又は全部が食い込むようにして付着していた粒状または/及び粉末状の付着体を除いた後の痕跡によって形成され、上記第2の凹状部(32)は、樹脂皮膜(3)に含まれている気泡(4)の開口によって形成されており、上記第1の凹状部は、内径が100μm?500μmであり、上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成された、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、上記樹脂皮膜(3)は、天然ゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴムを単独でまたは組み合わせて使用され、形成された樹脂皮膜に含まれる気泡の量は5?30vol%、気泡の長さ平均径は50μm以下である、手袋。 」 と補正する。 (3)平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正特許明細書の段落【0015】の 「【0015】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明に係る手袋では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口することによって径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に第1の凹状部よりも微細に多数形成される。このため付着体の除去によって第1の凹状部だけが形成されるものと比べると、単位表面積あたりに形成される凹状部の数を大幅に増やすことができ、その結果、樹脂表面は優れた滑り止め効果を発揮する。 更に、固化状態の樹脂組成物には気泡が含まれているので、気泡が含まれていないものと比べ、樹脂皮膜の厚みが同じでも優れた柔軟性を発揮する。 」 を、 「【0015】 本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。 (a)本発明に係る手袋では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口することによって径の大きい第1の凹状部の表面を含む樹脂皮膜の表面に第1の凹状部よりも微細に多数形成される。このため付着体の除去によって第1の凹状部だけが形成されるものと比べると、単位表面積あたりに形成される凹状部の数を大幅に増やすことができ、その結果、樹脂表面は優れた滑り止め効果を発揮する。 更に、固化状態の樹脂組成物には気泡が含まれているので、気泡が含まれていないものと比べ、樹脂皮膜の厚みが同じでも優れた柔軟性を発揮する。 」 と補正する。 そこで、これらの補正事項を整理すると、平成23年8月16日提出の手続補正書により補正された本件訂正の各訂正事項のうち、訂正事項(e’)、(n’)及び(o)の部分において、次のとおり補正することを求めるものであるといえる。(以下、各補正事項を「補正事項(ア)」及び「補正事項(イ)」という。) (ア)平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正特許請求の範囲の請求項1及び平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正明細書の段落【0012】の、 「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体 」 を、 「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体 」 と補正するとともに、平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正明細書の段落【0015】の、 「第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面 」 を、 「第1の凹状部の表面を含む樹脂皮膜の表面 」 と補正する。 (イ)平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正特許請求の範囲の請求項1及び平成23年8月16日付けの手続補正により補正された訂正明細書の段落【0012】の、 「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、 」 を、 「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成された、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、」 と補正する。 第5 平成24年7月6日付けの手続補正に対する適否の判断 平成24年7月6日付けの手続補正について以下に検討する。 上記補正事項(ア)は、「第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体」あるいは「第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面」との部分を訂正前のとおりに戻すもの、すなわち訂正事項の削除に相当するから適法なものである。 しかしながら、上記補正事項(イ)について検討すると、補正前の「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、」は、その主語が「上記第2の凹状部」であって、その後の「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、」と並列的な修飾関係を有する字句であると認められるところ、補正後の「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成された、」との記載では、当該字句はその後の「樹脂皮膜(3)表面」の字句を修飾するものとなると解釈するのが自然であって、補正の前後でその修飾関係が変化することになる。そうであれば、補正事項(イ)により、補正の前後で、技術的意味が変更することは明らかである。 これに関して、請求人は、平成24年7月6日提出の意見書において、「『樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面』の字句を修飾することが明確となる。」と主張しているが、補正後の当該字句を前後も含めて解釈すれば、上記のとおり「樹脂皮膜(3)表面」の字句を修飾しているとすることが自然であって、ことさらに「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面」の字句を修飾するものであると解釈しなければならない理由はなく、また根拠もみあたらず、仮に、請求人の主張するとおり、当該字句が「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面」の字句を修飾するものであるとしても、やはり補正の前後でその修飾関係が変化することになり、技術的意味が変更することには変わりはないことから、当該補正事項(イ)が訂正事項の削除及び軽微な瑕疵の補正等の微修正に止まるものではないことは明らかである。 そうすると、補正事項(イ)を含む当該手続補正は、平成23年8月16日提出の手続補正書による審判請求書の請求の趣旨の要旨を変更するものである。 したがって、平成24年7月6日付け手続補正は、特許法第131条の2第1項本文の規定に違反するものであるから、これを認めることはできない。 第6 平成24年6月5日付け訂正拒絶理由の妥当性についての検討 1.平成23年8月16日付け手続補正の適否について 平成23年8月16日付け手続補正に係る補正内容である、上記第2 2.の補正項目(e’)及び(n’)について検討すると、これらは共に、「耐実用上十分な摩耗性を有する手袋」との記載を「実用上十分な耐摩耗性を有する手袋」と補正しようとするものであって、誤記を訂正するものであると認められる。 そうすると、訂正事項(e)及び(n)において、上記手続補正は適法なものであるといえる。 2.平成23年8月16日提出の手続補正書により補正された本件訂正の適否の判断 上記1.で述べたとおり、平成23年8月16日付け手続補正は適法なものであるといえるから、以下、平成23年8月16日提出の手続補正書により補正された審判請求書(以下、単に「審判請求書」という。)における訂正事項(e)及び(n)を各々訂正事項(e’)及び(n’)という。 訂正事項(a)?(d)、(e’)、(f)?(m)、(n’)及び(o)?(v)につき以下検討する。 (1)訂正事項(e’)について 審判請求人は、審判請求書において、訂正事項(e’)について、「訂正前の旧請求項5を新たな請求項1とし、さらに、第1の凹状部、第2の凹状部及び樹脂皮膜の構成を限定したものである」旨主張している(審判請求書「6.4請求の原因」の「〔1〕訂正事項(1-1)」の欄)。 そこで、訂正事項(e’)について検討すると、訂正事項(e’)は以下の各訂正項目により構成されており、すなわち、下記(e’-1)ないし(e’-3)のとおり訂正することを求めるものである。(以下、各訂正項目を「訂正項目(e’-1)」?「訂正項目(e’-3)」という。) (e’-1)特許請求の範囲の請求項5の、 「耐実用上十分な摩耗性を有する手袋」 を訂正後の特許請求の範囲の請求項1の、 「実用上十分な耐摩耗性を有する手袋」 と訂正する。 (e’-2)特許請求の範囲の請求項5の、 「該第1の凹状部(31)よりも小さい第2の凹状部(32)」 を訂正後の特許請求の範囲の請求項1の、 「該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な第2の凹状部(32)」 と訂正する。 (e’-3)特許請求の範囲の請求項5の、 「上記第2の凹状部は、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に多数形成されており、」 を訂正後の特許請求の範囲の請求項1の、 「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており、」 と訂正する。 ア 訂正項目(e’-1)について 上記第2 1.でも述べたとおり、訂正項目(e’-1)は、「耐実用上十分な摩耗性を有する手袋」との記載を「実用上十分な耐摩耗性を有する手袋」と訂正しようとするものであって、誤記を訂正するものであるといえる。 そして、訂正項目(e’-1)は、いわゆる「新規事項の追加」に相当するものではなく、特許請求の範囲の拡張又は変更に相当するものでもない。 したがって、訂正項目(e’-1)については、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 イ 訂正項目(e’-2)について 訂正項目(e’-2)は、「第2の凹状部(32)」について、「該第1の凹状部(31)よりも小さい」との記載を「該第1の凹状部(31)よりも小さくて微細な」と訂正しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 そして、訂正項目(e’-2)は、特許明細書の段落【0062】の「第1の凹状部31よりもはるかに小さい(微細な)第2の凹状部32が多数形成されている」との記載に基づくものであり、いわゆる「新規事項の追加」に相当するものではなく、特許請求の範囲の拡張又は変更に相当するものでもない。 したがって、訂正項目(e’-2)については、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 ウ 訂正項目(e’-3)について (ア)訂正の目的の適否 訂正項目(e’-3)は、「第2の凹状部」について、「上記第2の凹状部は、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に多数形成されており」との記載を「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており」と訂正しようとするものである。 しかしながら、訂正項目(e’-3)により、「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体」から「樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体」と訂正されることとなり、すなわち、「第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体」から「第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体」と訂正されることになるから、訂正の結果、「第2の凹状部」が形成される部分が、一方で「第1の凹状部(31)の表面」を含むものを包含しないものとなり、他方で「第1の凹状部(31)の内面」を含むものを包含するものとなる。そうであれば、訂正の前後において「第2の凹状部」が形成される部分が変わることとなる。仮に、訂正前の「第1の凹状部(31)の表面」と訂正後の「第1の凹状部(31)の内面」とが同じ内容を言い換えて表現したものであるとしても、訂正の前後において特許請求の範囲が減縮されるものではない。そうすると、訂正項目(e’-3)が特許請求の範囲の減縮に相当するものでないことは明らかである。 また、「樹脂皮膜(3)表面」が訂正前では「第1の凹状部(31)の表面を含む」ものであったところ、訂正後では「第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面」との記載どおり「第1の凹状部(31)の内面」を含まないものとなったことから、かかる訂正の前後で「樹脂皮膜(3)表面」の表す技術的意味が変わることとなる。 そして、特許明細書では、「第2の凹状部」について、「第2の凹状部が形成されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、気泡の破泡による開口(破泡痕)或いは気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成されるものと推量され」(段落【0047】)と記載していたのに対して、かかる訂正事項により、訂正後においては、「第2の凹状部」が実際に「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」るもののみとなるから、かかる訂正の前後で「第2の凹状部」の表す技術的意味が変わることとなる。 そうすると、訂正項目(e’-3)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえない。 また、訂正項目(e’-3)は、誤記の訂正に相当するものでもないことは明らかである。 そして、訂正前の「上記第2の凹状部は、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の表面を含む樹脂皮膜(3)表面全体に多数形成されており」との記載は、その技術的意味が明確であり、「明りょうでない記載」に相当するものではないから、訂正項目(e’-3)は、明りょうでない記載の釈明にも相当しない。 したがって、訂正項目(e’-3)に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものではない。 (イ)新規事項の追加の有無 審判請求人は、審判請求書において、訂正項目(e’-3)について、「特許明細書の段落【0047】の『この第2の凹状部が形成されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、気泡の破泡による開口(破泡痕)或いは気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成されるものと推量され』に基づくものであり、同段落【0097】の『実施例1では、径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に、第1の凹状部よりも微細な第2の凹状部が多数形成されているのが明確に確認できる。』及び同段落【0062】の『以上のようにして得られた手袋の樹脂皮膜3(図1参照)表面には、除去した塩化ナトリウムの付着痕(痕跡)によって第1の凹状部31が多数形成されており、更に樹脂皮膜3表面から窪んでいる第1の凹状部31の表面を含む樹脂皮膜3表面全体に、樹脂皮膜3に含まれている気泡4(図1で丸で示す)の開口によって第1の凹状部31よりもはるかに小さい(微細な)第2の凹状部32が多数形成されている。』に基づくものである」旨主張している(審判請求書「6.4請求の原因」の「〔1〕訂正事項(1-1)(4)及び(5)」の欄)。 しかしながら、審判請求人が訂正の根拠としている特許明細書の段落【0097】では「第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に」と記載されており、同段落【0062】では「第1の凹状部31の表面を含む樹脂皮膜3表面全体」の記載と記載されているのであって、両者の記載は一致しておらず、特許明細書には、訂正後の「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており」との記載はない。そして、同段落【0097】の「径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に、第1の凹状部よりも微細な第2の凹状部が多数形成されている」ものにおいて、当該第2の凹状部が、「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」たもののみであることについては、特許明細書において一切記載されていない。 そして、訂正後の「上記第2の凹状部は、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され、樹脂皮膜(3)表面から窪んでいる第1の凹状部(31)の内面と樹脂皮膜(3)表面全体に微細に多数形成されており」との記載では、第1の凹状部の内面とは異なる樹脂皮膜の表面部分における第2の凹状部が、気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」たもののみとなるものと認められるところ、そのようなものについては、特許明細書には一切記載されていない。 また、特許明細書の段落【0047】には、「気泡の破泡による開口(破泡痕)或いは気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」と記載されているのであって、「気泡の破泡による開口(破泡痕)」により形成されるものを含まずに「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」るもののみが記載されているとすることはできないし、特許明細書の実施例などの他の部分の記載を検討しても、当該第2の凹状部が形成されるメカニズムが、「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成されるもの」によるもののみであることを明示する記載はない。 そして、第2の凹状部が、「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口して形成され」るもののみであることが、特許明細書に記載された事項から自明な事項でもない。 そうすると、訂正項目(e’-3)は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、いわゆる新規事項の追加に相当するものである。 したがって、訂正項目(e’-3)に係る訂正は、特許法第126条第3項に規定の要件を満たさない。 (ウ)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無 訂正項目(e’-3)につき検討すると、上記第2 2.(1)ウ(ア)で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮に相当するものであるとはいえないから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものであり、上記第2 2.(1)ウ(イ)で述べたとおり、特許明細書に記載された事項の範囲内ではない新規な事項を追加訂正するものであるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものである。 したがって、訂正項目(e’-3)に係る訂正は、特許法第126条第4項に規定の要件を満たさない。 (エ)小括 以上のとおり、訂正項目(e’-3)については、特許法第126条第1項ただし書各号に掲げる事項を目的とするものではなく、同法同条第3項及び第4項にそれぞれ規定のいずれの要件をも満たさないものであるから、不適法なものである。 (オ)補足 なお、訂正項目(e’-3)のうち、「多数形成されており」との記載を「微細に多数形成されており」と訂正しようとする点については、上記第2 2.(1)イ 訂正項目(e’-2)と同様に判断して、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 エ 訂正事項(e’)についてのまとめ 以上のとおり、訂正項目(e’-3)を含む訂正事項(e’)は、特許法第126条第1号ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものではなく、同法同条第3項及び第4項にそれぞれ規定のいずれの要件をも満たさないものであるから、不適法なものである。 (2)訂正事項(n’)について 審判請求人は、審判請求書において、訂正事項(n’)について、「訂正事項(2-8)は、訂正事項(1-1)の訂正にともない、特許請求の範囲との整合性を図りつつ、課題を解決するための手段を明確化したものであり、特許法第134条の2第1項第3号に規定された『明りょうでない記載の釈明』に相当するものである」旨主張している(審判請求書「6.4請求の原因」の「〔4〕訂正事項(2-1)?訂正事項(2-19)」の(8)の欄)。 しかしながら、訂正事項(n’)は、特許請求の範囲における訂正事項(e’)と同じ訂正内容を明細書においても訂正しようとするものであるところ、上記第2 2.ウ(イ)で述べたとおり、訂正項目(e’-3)は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、いわゆる新規事項の追加に相当するものである以上、訂正項目(e’-3)を含む訂正事項(e’)と同内容である訂正事項(n’)も、上記と同じ理由により、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、いわゆる新規事項の追加に相当するものである。 したがって、訂正事項(n’)に係る訂正は、特許法第126条第3項に規定の要件を満たさない。 (3)訂正事項(o)について 審判請求人は、審判請求書において、訂正事項(o)について、「訂正事項(2-9)は、訂正事項(1-1)の訂正にともない、特許請求の範囲との整合性を図りつつ、発明の効果を明確化したものであり、特許法第134条の2第1項第3号に規定された『明りょうでない記載の釈明』に相当するものである」旨主張している(審判請求書「6.4請求の原因」の「〔4〕訂正事項(2-1)?訂正事項(2-19)」の(9)の欄)。 しかしながら、訂正事項(o)は、訂正前の「本発明に係る樹脂表面の形成方法では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡が表面側で開口することによって第1の凹状部よりも小さい第2の凹状部を形成する。」を訂正後の「本発明に係る手袋では、気泡を含んだ未固化状態の樹脂組成物の表面に粒状または/及び粉末状の付着体をその一部又は全部が表面に食い込んだ状態で付着させ、樹脂組成物の固化後に前記付着体を除去することにより第1の凹状部を形成し、未固化状態または固化状態の樹脂組成物に含まれている気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口することによって径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に第1の凹状部よりも微細に多数形成される。」と訂正しようとするものを含むものであって、「気泡に接した付着体の除去に伴って気泡の一部が開口することによって径の大きい第1の凹状部の内面と樹脂皮膜の表面に第1の凹状部よりも微細に多数形成される。」との記載を追加しようとするものであり、かかる記載は訂正項目(e’-3)における訂正事項と実質的に異なるところはない。 そうすると、上記第2 2.(1)ウ(イ)で述べたとおり、訂正項目(e’-3)は、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、いわゆる新規事項の追加に相当するものである以上、訂正項目(e’-3)と実質的に同内容である訂正事項(o)も、上記と同じ理由により、特許明細書に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、いわゆる新規事項の追加に相当するものである。 したがって、訂正事項(o)に係る訂正は、特許法第126条第3項に規定の要件を満たさない。 (4)訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)について 訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)につき併せて検討すると、各訂正事項は、本件の特許請求の範囲の請求項を削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 そして、訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)は、いわゆる「新規事項の追加」に相当するものではなく、特許請求の範囲の拡張又は変更に相当するものでもない。 したがって、訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)については、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 (5)訂正事項(f)及び(g)について 訂正事項(f)及び(g)につき併せて検討すると、各訂正事項は、訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)に伴い、本件の特許請求の範囲の請求項が削除されたことにより、単に引用する請求項の項数を繰り上げ、整合させるために訂正したものであるから、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものであるといえる。 そして、訂正事項(f)及び(g)は、いわゆる「新規事項の追加」に相当するものではなく、特許請求の範囲の拡張又は変更に相当するものでもない。 したがって、訂正事項(f)及び(g)については、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 (6)訂正事項(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(p)、(q)、(r)、(s)、(t)、(u)及び(v)について 訂正事項(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(p)、(q)、(r)、(s)、(t)、(u)及び(v)につき併せて検討すると、各訂正事項は、いずれも、訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)に伴い、本件の訂正後の特許請求の範囲に記載された事項を具備しない態様につき、本件に係る実施の形態である旨記載されている点で明りょうでない記載を訂正事項(a)、(b)、(c)及び(d)に併せて削除したものであるか、あるいは当該削除に伴い明りょうでないものとなる部分を単に訂正したものであるから、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものであるといえる。 また、訂正事項(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(p)、(q)、(r)、(s)、(t)、(u)及び(v)については、いずれも明りょうでない記載の部分を単に削除したものであるか、当該削除に伴い明りょうでないものとなる部分を単に訂正したものであるから、いわゆる「新規事項の追加」に相当するものではなく、特許請求の範囲の拡張又は変更に相当するものでもない。 したがって、訂正事項(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(p)、(q)、(r)、(s)、(t)、(u)及び(v)については、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、同法同条第3項及び第4項に適合する。 3.まとめ 以上のとおり、訂正事項(e’)は、特許法第126条第1号ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものではなく、また同法同条第3項及び第4項にそれぞれ規定のいずれの要件をも満たさないものであるから、不適法なものである。 また、訂正事項(n’)及び(o)に係る訂正は、特許法第126条第3項に規定の要件を満たさないものであるから、不適法なものである。 したがって、以上の理由により、平成24年6月5日付け訂正拒絶理由は妥当なものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-09 |
結審通知日 | 2012-08-13 |
審決日 | 2012-08-27 |
出願番号 | 特願2008-78937(P2008-78937) |
審決分類 |
P
1
41・
841-
Z
(A41D)
P 1 41・ 855- Z (A41D) P 1 41・ 853- Z (A41D) P 1 41・ 851- Z (A41D) P 1 41・ 854- Z (A41D) P 1 41・ 852- Z (A41D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大島 祥吾 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
小野寺 務 田口 昌浩 |
登録日 | 2009-06-26 |
登録番号 | 特許第4331782号(P4331782) |
発明の名称 | 樹脂表面の形成方法、表面に異なる大きさの凹状部が混在する物品の製造方法及びその物品、手袋の製造方法及び手袋 |
代理人 | 山上 祥吾 |
代理人 | 濱田 建介 |
代理人 | 松尾 憲一郎 |
代理人 | 市川 泰央 |