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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1277197
審判番号 不服2011-15386  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-15 
確定日 2013-07-24 
事件の表示 特願2008-518275「サーチ結果を提供するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月 4日国際公開、WO2007/001974、平成20年12月25日国内公表、特表2008-547119〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2006年6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年12月19日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され、平成20年2月15日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出され、同年2月20日付けで審査請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成22年8月23日付けで拒絶理由通知(同年8月31日発送)がなされ、平成23年1月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年3月8日付けで拒絶査定(同年3月15日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許すべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成23年7月15日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成23年10月12日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成24年5月23日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年5月29日発送)がなされたが、請求人からの応答がなかったものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成23年7月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「1つ以上のサーバ装置により実行される方法であって、
複数の異なるウェブサイトに対応する複数のウェブページの、複数のユーザによるアクセスに関する情報を収集するステップを備え、前記複数の異なるウェブサイトのうちの少なくとも2つは異なるドメインに関連し、さらに、
前記複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに対するウェブページ情報をメモリに記憶するステップを備え、前記ウェブページ情報は、前記複数のウェブページの各々に対して、前記特定のウェブサイトに対応するウェブページが前記複数のユーザによってアクセスされた回数を反映する品質要因を含み、さらに、
クライアント装置を介して、ユーザからサーチクエリを受取るステップと、
サーチ結果を生成するために前記サーチクエリに基づいてサーチを実行するステップとを備え、複数の前記サーチ結果は複数の異なるウェブサイトに対応し、さらに、
前記複数のサーチ結果のうちの1つに対応する、前記複数のウェブサイトのうちの1つを識別するステップと、
前記識別されたウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶しているか否かを判定するステップと、
前記メモリが前記ウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶している場合、前記識別されたウェブサイトに関連するウェブページの組を、前記ウェブページの組に関連する前記品質要因に基づいて、前記メモリから識別するステップと、
前記クライアント装置のディスプレイ上での表示のために、前記サーチ結果を提供するステップとを備え、
前記サーチ結果を提供するステップは、
前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶している場合、前記複数のサーチ結果のうちの前記1つと、前記ウェブページの組内のウェブページへの複数のリンクとを提供するステップ、または、
前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶していない場合、前記ウェブページの組内のウェブページへのリンクなしで、前記複数の検索結果のうちの1つを提供するステップとを備える、方法。」

3.先行技術

(1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前の上記優先日の前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成22年8月23日付けの拒絶理由通知において引用された、米国特許6754873号明細書(2004年6月22日公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「FIG. 3 shows a network of multiple computer systems. A network 101 provides communication between multiple computer systems 1. In a wide area network such as the Internet, some of the computer systems are servers (or hosts) and provide access to resources or services to client computer systems on the network.」(第4欄10?15行)
(当審訳:「図3は、複数のコンピュータシステムのネットワークを示している。ネットワーク101は、複数のコンピュータシステム1の間での通信を提供する。インターネットなどの広域ネットワークで、コンピュータ・システムのいくつかはサーバ(またはホスト)であり、ネットワーク上のクライアントコンピュータシステムへのリソースへのアクセスやサービスを提供する。」)

B 「FIG. 8 shows a flowchart of a process of generating a list of related web pages. For example, the list of related web pages can be generated upon request from a user for a web page being displayed in a web browser or for a web page that is being displayed (e.g., as a link) in results from a web search. 」(第6欄51?56行)
(当審訳:「図8は、関連するウェブページのリストを生成する処理のフローチャートを示す。例えば、関連するウェブページのリストは、ウェブブラウザに表示されているウェブページやウェブ検索の結果(例えば、リンク)として表示されているウェブページのためのユーザからの要求に応じて生成することができる。」)

C 「A score is generated for each web page in the forwardlink set at a step 357. The score can be generated by adding together all the values for each of the forward links that points to each web page in the forwardlink set.
Once the scores are generated for each of the web pages in the forwardlink set, a list of related web pages can be generated at a step 359. The list of related web pages can be generated from the forwardlink set according to the score of the web pages. In other words, the score is an indication of the relatedness to the selected web page and the higher the score, the more related the web page is.
At a step 361, the list of related web pages is displayed. The displayed list of related web pages can be a predetermined number of the most highly related web pages, web pages that have a score greater than a threshold or any other way of selecting a number of related web pages to display. A process of displaying a list of related web pages will be described in more detail in reference to FIG. 10.」(第7欄18?35行)
(当審訳:「スコアは、ステップ357で前方リンクセット内の各ウェブページに対して生成される。前方リンクセット内の各ウェブページへのポイントであるスコアは、それを転送するリンクのそれぞれのすべての値を加算することによって生成することができる。
スコアは前方リンクセット内のウェブページごとに生成されると、関連したウェブページのリストは、ステップ359で生成できる。関連したウェブページのリストは、ウェブページのスコアに応じて前方リンクセットから生成することができる。言い換えれば、スコアは、選択したウェブページへの関連性の指標であり、より高いスコアは、より関連したウェブページである。
ステップ361では、関連するウェブページの一覧が表示される。関連するウェブページの表示されたリストは、最も関連するウェブページの所定の数を指定できる。すなわち、ウェブページは、しきい値より大きなスコアを持っているものか、関連するウェブページ数を選択する他の方法によって決められる。関連したウェブページのリストを表示するための処理は、図10を参照してより詳細に説明される。」)

D 「As shown, a user has indicated that she would like to search for web pages that include a match for New York Times as entered in a text window 501.
FIGS. 12A and 12B show the results of the search for web pages matching New York Times. As shown, the links to the best 10 matches are displayed. A first link 551 is to the New York Times web page. The other links also in some way match New York Times.」(第8欄30?37行)
(当審訳:「図に示すように、ユーザが、テキストウィンドウ501に入力された‘New York Times’との一致を含むウェブページを検索したい、ということが示されている。
図12A及び12Bには、‘New York Times’に一致するウェブページに対する検索結果が表示されている。図示されているように、最良の10個の一致へのリンクが表示されている。最初のリンク551は、ニューヨークタイムズのウェブページである。他のリンクもまた、何かしら‘New York Times’に一致している。」)

E 図12Aには、“ユーザが入力した検索語(‘New York Times’)に基づいてウェブページ検索を実行し、検索結果として複数の異なるウェブサイト(例えば、‘www.nytimes.com/’や‘The New York Times Syndicate’等)を表示する際に、当該ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有している場合、当該ウェブサイトの情報と共に複数のウェブページへのリンク情報を表示(例えば、‘www.nytimes.com/’と共に‘www.nytimes.com/info/help/copyright.html’や‘www.nytimes.com/info/contents/textpath.html’等を表示)し、当該ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有していない場合、当該ウェブサイトの情報のみ表示(例えば、‘The New York Times Syndicate’のみ表示)する”態様が記載されている。

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「In a wide area network such as the Internet, some of the computer systems are servers (or hosts) and provide … services to client computer systems on the network.」(「インターネットなどの広域ネットワークで、コンピュータ・システムのいくつかはサーバ(またはホスト)であり、ネットワーク上のクライアントコンピュータシステムへの・・・サービスを提供する。」)との記載からすると、引用文献には、
「いくつかのサーバにより(クライアントコンピュータシステムへのサービス提供が)実行される方法」
が記載されていると解される。

(イ)上記Bの「the list of related web pages can be generated upon request from a user … for a web page that is being displayed (e.g., as a link) in results from a web search.」(「関連するウェブページのリストは、・・・ウェブ検索の結果(例えば、リンク)として表示されているウェブページのためのユーザからの要求に応じて生成することができる。」)との記載、上記Cの「A score is generated for each web page … .」(「スコアは、・・・各ウェブページに対して生成される。」)、「the score is an indication of the relatedness to the selected web page and the higher the score, the more related the web page is.」(「スコアは、選択したウェブページへの関連性の指標であり、より高いスコアは、より関連したウェブページである。」)との記載、そして、上記Eに記載の“ユーザが入力した検索語に基づいてウェブページ検索を実行し、検索結果として複数の異なるウェブサイトを表示する”態様からすると、引用文献には、
「複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに関連するウェブページのリスト(ウェブサイトに対するリンク情報)が生成される」態様、及び
「複数のウェブページの各々に対して生成されるスコアは、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページへの関連性の指標である」態様
が記載されていると解される。

(ウ)上記Aの「some of the computer systems are servers (or hosts) and provide … services to client computer systems on the network.」(「コンピュータ・システムのいくつかはサーバ(またはホスト)であり、ネットワーク上のクライアントコンピュータシステムへの・・・サービスを提供する。」)との記載、上記Dの「a user has indicated that she would like to search for web pages that include a match for New York Times as entered in a text window 501.」(「ユーザが、テキストウィンドウ501に入力された‘New York Times’との一致を含むウェブページを検索したい、ということが示されている。」)、「FIGS. 12A and 12B show the results of the search for web pages matching New York Times. As shown, the links to the best 10 matches are displayed. A first link 551 is to the New York Times web page. The other links also in some way match New York Times」(「図12A及び12Bには、‘New York Times’に一致するウェブページに対する検索結果が表示されている。図示されているように、最良の10個の一致へのリンクが表示されている。最初のリンク551は、ニューヨークタイムズのウェブページである。他のリンクもまた、何かしら‘New York Times’に一致している。」)との記載、そして、入力された検索語(例えば、‘New York Times’)に対する検索結果を表示することは、入力された検索語に基づいて検索を実行し、検索結果を生成して表示することであるというのは、当業者にとって自明の事項である。
してみると、引用文献には、サーバが、
「クライアントコンピュータシステムを介して、ユーザが検索語を入力する」態様、
「検索結果を生成するために前記検索語に基づいて検索を実行する」態様、
「前記クライアントコンピュータシステムでの表示のために、前記検索結果を提供する」態様
が記載されていると解される。
そして、上記Eに記載されるように、図12Aには、“検索結果として複数の異なるウェブサイトを表示”していることからすると、引用文献には、
「複数の前記検索結果は複数の異なるウェブサイトに対応している」態様
も記載されていると解される。

(エ)上記Cの「A score is generated for each web page … .」(「スコアは、・・・各ウェブページに対して生成される。」)、「the score is an indication of the relatedness to the selected web page and the higher the score, the more related the web page is.」(「スコアは、選択したウェブページへの関連性の指標であり、より高いスコアは、より関連したウェブページである。」)、「The displayed list of related web pages can be a predetermined number of the most highly related web pages ….」(「関連するウェブページの表示されたリストは、最も関連するウェブページの所定の数を指定できる。」)との記載からすると、表示される所定数は、スコアに基づいて提供されるものと解される。そして上記Eに記載の“ユーザが入力した検索語に基づいてウェブページ検索を実行し、検索結果として複数の異なるウェブサイト(例えば、‘www.nytimes.com/’や‘The New York Times Syndicate’等)を表示する際に、ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有している場合、当該ウェブサイトの情報と共に複数のウェブページへのリンク情報を表示(例えば、‘www.nytimes.com/’と共に‘www.nytimes.com/info/help/copyright.html’や‘www.nytimes.com/info/contents/textpath.html’等を表示)”する態様が記載されている。
してみると、引用文献には、
「検索結果である複数の異なるウェブサイトに対して、そのウェブサイトに対するリンク情報があれば、スコアに基づいて、該リンク情報を提供する」態様
が記載されていると解される。

(オ)上記Eに記載の“ユーザが入力した検索語に基づいてウェブページ検索を実行し、検索結果として複数の異なるウェブサイトを表示する際に、当該ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有している場合、当該ウェブサイトの情報と共に複数のウェブページへのリンク情報を表示(例えば、‘www.nytimes.com/’と共に‘www.nytimes.com/info/help/copyright.html’や‘www.nytimes.com/info/contents/textpath.html’等を表示)し、当該ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有していない場合、当該ウェブサイトの情報のみ表示(例えば、‘The New York Times Syndicate’のみ表示)する”態様からすると、引用文献には、検索結果の提供に関して、
「ウェブサイトに対するリンク情報があれば、当該ウェブサイトの情報と、当該ウェブページに対する複数のリンク情報とを提供する」態様、または、
「ウェブサイトに対するリンク情報がなければ、当該ウェブページに対するリンク情報なしで、当該ウェブページの情報のみを提供する」態様
が記載されていると解される。

以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「いくつかのサーバにより実行される方法であって、
複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに関連するウェブページのリスト(ウェブサイトに対するリンク情報)が生成されるステップを備え、複数のウェブページの各々に対して生成されるスコアは、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページへの関連性の指標であり、さらに、
クライアントコンピュータシステムを介して、ユーザが検索語を入力するステップと、
検索結果を生成するために前記検索語に基づいて検索を実行するステップとを備え、複数の前記検索結果は複数の異なるウェブサイトに対応し、さらに、
前記検索結果である複数の異なるウェブサイトに対して、そのウェブサイトに対するリンク情報があれば、スコアに基づいて、該リンク情報を提供するステップと、
前記クライアントコンピュータシステムでの表示のために、前記検索結果を提供するステップとを備え、
前記検索結果を提供するステップは、
前記ウェブサイトに対するリンク情報があれば、当該ウェブサイトの情報と、当該ウェブページに対する複数のリンク情報とを提供するステップ、または、
前記ウェブサイトに対するリンク情報がなければ、当該ウェブページに対するリンク情報なしで、当該ウェブページの情報のみを提供するステップとを備える、方法。」

(2)参考文献に記載されている技術的事項

本願の出願前の上記優先日の前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成22年8月23日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2004-21589号公報(平成16年1月22日出願公開。以下、「参考文献」という。)には、図面とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0002】
【従来の技術】
検索キーワードを入力してクライアント端末から利用者が検索サーバにインターネット網を経由して情報検索を行うと、数百から数万ものページ情報がヒットする。検索サーバは、これらの一覧を表示させる場合、ページ内の検索キーワードの数が多いもの、または過去に参照された回数であるヒット数の多いものを優先に表示させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の検索サーバでの情報検索では、トレンドとなっているキーワードの場合、ヒット数だけを目的として故意にこのキーワードを数多く組み込んだページが上位に並ぶことになり、利用者は関係のないページを見させられることになり、目的のサイトへの到達までにかなりの時間を要している。従って、利用者が参照した回数が多いだけでは有効な情報ページであるとは断定できない。
【0004】
この発明の目的は、インターネットの情報検索サービスを行っているサイトにおいて、利用者が、目的とする情報提供サイトに無駄なく迅速に到達することのできるインターネット情報検索システムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、インターネットを介して不特定多数の情報提供サーバから情報を取得して検索データベースに格納し、検索キーワードを用いて検索要求が行われると検索データベースにアクセスして情報提供サイトのアドレス一覧である検索結果を得る検索サーバと、インターネットに接続され、ブラウザを使用して検索サーバに検索要求を行い、検索サーバから検索結果の通知を受けるクライアント端末とを備えるインターネット情報検索システムにおいて、検索サーバは、ページの参照時間、ページ内のキーワード数、過去に参照された回数の3つの条件に重み付けを行うことにより表示順を決定して検索結果をクライアント端末に通知することを特徴とする。」

G 「【0020】
また、この発明は、同一サイト内において、提供している情報内容に関して、どの情報ページを利用者が注目しているか判断することも可能である。今まででは、参照回数でしか情報ページの有効性を判断することしかできなかったが、参照時間を設けることにより、参照回数が多い場合でも、利用者は内容を読んでいないという事象を判断することが可能である。」

以上、上記F及びG記載の内容から、参考文献には、
「検索結果を一覧表示させる場合に、過去に参照された回数が多いものを優先的に表示させる」技術
が記載されていると解される。

なお、上記Fに「過去に参照された回数であるヒット数」と記載されているが、上記Fに「利用者が参照した回数が多いだけでは有効な情報ページであるとは断定できない。」、「検索サーバは、ページの参照時間、ページ内のキーワード数、過去に参照された回数の3つの条件に重み付けを行うことにより表示順を決定して検索結果をクライアント端末に通知する」と記載され、上記Gに「今まででは、参照回数でしか情報ページの有効性を判断することしかできなかったが、参照時間を設けることにより、参照回数が多い場合でも、利用者は内容を読んでいないという事象を判断することが可能である。」と記載されるように、当該参考文献全体の記載に基づけば、参照回数が、検索結果を経由して実際にページにアクセスした回数を計測したものを用いていることは、当業者にとって自明の事項である。
してみれば、当該参考文献で用いられている「参照回数」は、サーチ結果に含まれた回数ではなく、利用者によって実際に“アクセスされた回数”であると解される。

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「いくつかの」及び「サーバ」は、それぞれ、本願発明の「1つ以上の」及び「サーバ装置」に相当する。
したがって、引用発明の「いくつかのサーバにより実行される方法」は、本願発明の「1つ以上のサーバ装置により実行される方法」に相当する。

(2)引用発明の「ウェブサイトに関連するウェブページのリスト(ウェブサイトに対するリンク情報)」は、本願発明の「ウェブサイトに対するウェブページ情報」に相当する。そして、生成されたウェブページリストは、検索結果表示の際に用いられるものであることから、サーバ内に保持されるのは自明の事項であり、その際に、メモリを用いて記憶するようにすることについても、自明の事項である。
してみると、引用発明の「複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに関連するウェブページのリスト(ウェブサイトに対するリンク情報)が生成されるステップ」は、本願発明の「複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに対するウェブページ情報をメモリに記憶するステップ」に相当するといえる。

(3)引用発明の「スコア」は、関連するウェブサイトを選択する際の指標となるものであることから、本願発明の「品質要因」に相当する。そして、引用発明の「複数のウェブページの各々に対して生成されるスコアは、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページへの関連性の指標であり」とは、複数のウェブページの各々に対して、特定のウェブサイトに関連するウェブページについてのスコアを含んでいることに他ならず、また、本願発明の「複数のウェブページの各々に対して、前記特定のウェブサイトに対応するウェブページが前記複数のユーザによってアクセスされた回数を反映する品質要因を含み」とは、複数のウェブページの各々に対して、特定のウェブサイトに関連するウェブページについての品質要因を含んでいることに他ならない。
してみると、引用発明の「複数のウェブページの各々に対して生成されるスコアは、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページへの関連性の指標であり」と、本願発明の「前記ウェブページ情報は、前記複数のウェブページの各々に対して、前記特定のウェブサイトに対応するウェブページが前記複数のユーザによってアクセスされた回数を反映する品質要因を含み」とは、ともに、“前記ウェブページ情報は、複数のウェブページの各々に対して、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページについての品質要因を含み”で共通する。

(4)引用発明の「クライアントコンピュータシステム」及び「検索語」は、それぞれ、本願発明の「クライアント装置」及び「サーチクエリ」に相当する。そして、引用発明の「ユーザが検索語を入力する」とは、ユーザから(入力された)検索語を(サーバが)受取ることに他ならない。
してみると、引用発明の「クライアントコンピュータシステムを介して、ユーザが検索語を入力するステップ」は、本願発明の「クライアント装置を介して、ユーザからサーチクエリを受取るステップ」に相当するといえる。

(5)引用発明の「検索結果」及び「検索」は、それぞれ、本願発明の「サーチ結果」及び「サーチ」に相当する。
したがって、引用発明の「検索結果を生成するために前記検索語に基づいて検索を実行するステップ」は、本願発明の「サーチ結果を生成するために前記サーチクエリに基づいてサーチを実行するステップ」に相当する。
また、引用発明の「複数の前記検索結果は複数の異なるウェブサイトに対応」は、本願発明の「複数の前記サーチ結果は複数の異なるウェブサイトに対応」に相当する。

(6)引用発明の「前記検索結果である複数の異なるウェブサイトに対して、そのウェブサイトに対するリンク情報があれば、スコアに基づいて、該リンク情報を提供するステップ」において、上記Eの“ユーザが入力した検索語に基づいてウェブページ検索を実行し、検索結果として複数の異なるウェブサイトを表示する際に、ウェブサイトがそのウェブサイトに対するリンク情報を有している場合、当該ウェブサイトの情報と共に複数のウェブページへのリンク情報を表示”する態様からすると、引用発明が、リンク情報を提供する前段階として、“複数の検索結果のうちの1つに対応する、前記複数のウェブサイトのうちの1つを識別するステップ”、“前記識別されたウェブサイトに対するウェブページのリストがあるか判定するステップ”を備えていることは、当業者にとって自明の事項である。
そして、引用発明の“複数の検索結果のうちの1つに対応する、前記複数のウェブサイトのうちの1つを識別するステップ”は、本願発明の「複数のサーチ結果のうちの1つに対応する、前記複数のウェブサイトのうちの1つを識別するステップ」に相当し、引用発明の“前記識別されたウェブサイトに対するウェブページのリストがあるか判定するステップ”は、本願発明の「前記識別されたウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶しているか否かを判定するステップ」に相当するといえる。

(7)引用発明において、リンク情報を提供する際に、当該リンク情報をウェブページのリストから識別していることは、自明の事項であるから、引用発明の「そのウェブサイトに対するリンク情報があれば、スコアに基づいて、該リンク情報を提供する」とは、そのウェブページに対するリンク情報(本願発明の「ウェブページの組」に相当)があれば、識別されたリンク情報を、リンク情報に関連するスコアに基づいて識別して、提供していることに他ならない。
してみると、上記(2)及び(3)における検討内容、上記E記載の態様から、引用発明の「そのウェブサイトに対するリンク情報があれば、スコアに基づいて、該リンク情報を提供するステップ」は、本願発明の「前記メモリが前記ウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶している場合、前記識別されたウェブサイトに関連するウェブページの組を、前記ウェブページの組に関連する前記品質要因に基づいて、前記メモリから識別するステップ」に相当するといえる。

(8)引用発明においても、検索結果をクライアントコンピュータシステムのディスプレイ上に表示することは自明の事項である。
したがって、引用発明の「前記クライアントコンピュータシステムでの表示のために、前記検索結果を提供するステップ」は、本願発明の「前記クライアント装置のディスプレイ上での表示のために、前記サーチ結果を提供するステップ」に相当する。

(9)上記(2)における検討内容、上記E記載の態様から、引用発明の「前記ウェブサイトに対するリンク情報があれば、当該ウェブサイトの情報と、当該ウェブページに対する複数のリンク情報とを提供するステップ」は、本願発明の「前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶している場合、前記複数のサーチ結果のうちの前記1つと、前記ウェブページの組内のウェブページへの複数のリンクとを提供するステップ」に相当し、また、引用発明の「前記ウェブサイトに対するリンク情報がなければ、当該ウェブページに対するリンク情報なしで、当該ウェブページの情報のみを提供するステップ」は、本願発明の「前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶していない場合、前記ウェブページの組内のウェブページへのリンクなしで、前記複数の検索結果のうちの1つを提供するステップ」に相当するといえる。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「1つ以上のサーバ装置により実行される方法であって、
複数の異なるウェブサイトの各特定のウェブサイトに対するウェブページ情報をメモリに記憶するステップを備え、前記ウェブページ情報は、複数のウェブページの各々に対して、前記特定のウェブサイトに関連するウェブページについての品質要因を含み、さらに、
クライアント装置を介して、ユーザからサーチクエリを受取るステップと、
サーチ結果を生成するために前記サーチクエリに基づいてサーチを実行するステップとを備え、複数の前記サーチ結果は複数の異なるウェブサイトに対応し、さらに、
前記複数のサーチ結果のうちの1つに対応する、前記複数のウェブサイトのうちの1つを識別するステップと、
前記識別されたウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶しているか否かを判定するステップと、
前記メモリが前記ウェブサイトに対する前記ウェブページ情報を記憶している場合、前記識別されたウェブサイトに関連するウェブページの組を、前記ウェブページの組に関連する前記品質要因に基づいて、前記メモリから識別するステップと、
前記クライアント装置のディスプレイ上での表示のために、前記サーチ結果を提供するステップとを備え、
前記サーチ結果を提供するステップは、
前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶している場合、前記複数のサーチ結果のうちの前記1つと、前記ウェブページの組内のウェブページへの複数のリンクとを提供するステップ、または、
前記メモリが前記ウェブサイトに対するウェブページ情報を記憶していない場合、前記ウェブページの組内のウェブページへのリンクなしで、前記複数の検索結果のうちの1つを提供するステップとを備える、方法。」

(相違点1)

特定のウェブサイトに対するウェブページ情報の生成に際して、本願発明が、「複数の異なるウェブサイトに対応する複数のウェブページの、複数のユーザによるアクセスに関する情報を収集するステップ」を備え、「前記複数の異なるウェブサイトのうちの少なくとも2つは異なるドメインに関連」するものであるのに対して、引用発明は、それらの如く構成されていない点。

(相違点2)

ウェブページ情報を識別する際に用いる品質要因に関して、本願発明が、「ユーザによってアクセスされた回数を反映する」ものであるのに対して、引用発明は、ウェブページへの関連性の指標であるスコアである点。

5.当審の判断

上記相違点1及び相違点2について検討する。

検索結果を表示する際に、ユーザにとって有益な情報を優先的に提示するように構成することは、当該技術分野において、慣用的に行われていることであり、この優先度を決める指標である品質要因として、どのような品質要因(ウェブページの各々がアクセスされた回数、ウェブページの各々を見た時間、リンクを有するウェブページの数、等)を用いるかについては、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計的事項に過ぎない。そして、上記参考文献に記載されるように、「検索結果を一覧表示させる場合に、過去に参照された回数が多いものを優先的に表示させる」技術は周知技術である。
また、過去に参照された回数を調べるに際して、複数のユーザによるアクセスに関する情報を収集することは、自明の事項である。
してみれば、引用発明において、検索結果としてのウェブページに関連するウェブページ情報を識別する際に用いる品質要因として、ウェブページへの関連性の指標であるスコアに替えて、過去に参照された回数(本願発明の「アクセスされた回数」に相当)を反映するものとすることは、当業者が容易に想到できたことであり、また、当該構成を採用するに際して、複数のユーザによるアクセスに関する情報を収集するステップを備えるようにすることについては、当業者が必然的に行うことであると認められる。
なお、複数の異なるウェブサイトのうちの少なくとも2つは異なるドメインに関連するように構成することについても、当業者が適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。

よって、相違点1及び相違点2は格別のものではない。

上記で検討したごとく、相違点1及び相違点2は格別のものではなく、そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、当業者であれば当然に予測可能なものにすぎず、格別なものとは認められない。

したがって、本願発明は、上記引用発明及び上記参考文献に記載された周知技術等に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-02-20 
結審通知日 2013-02-26 
審決日 2013-03-11 
出願番号 特願2008-518275(P2008-518275)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波内 みさ野崎 大進  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 サーチ結果を提供するためのシステムおよび方法  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 仲村 義平  
代理人 深見 久郎  

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