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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1277609 |
審判番号 | 不服2011-22821 |
総通号数 | 165 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-10-24 |
確定日 | 2013-08-05 |
事件の表示 | 特願2007- 76666「易溶性CMC組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 2日出願公開、特開2008-228696〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成19年3月23日の出願であって,平成23年4月20日付けの拒絶理由通知に対して,同年6月21日に意見書及び手続補正書が提出され,その後,同年7月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,その後,平成24年10月29日付けの審尋に対し,同年12月28日に回答書が提出されたものである。 第2 平成23年10月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定 1 補正の却下の決定の結論 平成23年10月24日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)補正の内容 平成23年10月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,補正前の特許請求の範囲の請求項1?6は,次のように補正された。 補正前, 「【請求項1】 1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMCの粉末表面に,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が400mPa・s以下である低粘性多糖類が結着したCMCを含有することを特徴とする易溶性CMC組成物。 【請求項2】 請求項1記載の低粘性多糖類が,低粘性タイプCMC,グァーガム酵素分解物,低粘性アルギン酸塩類からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする易溶性CMC組成物。 【請求項3】 結着の方法が高粘性タイプCMCに低粘性多糖類溶液を噴霧し,同時に流動乾燥することを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の易溶性CMC組成物。 【請求項4】 高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類0.5から20重量部が結着していることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の易溶性CMC組成物。 【請求項5】 請求項1から4いずれか記載の易溶性CMC組成物が,イオン交換水99重量部に対して1重量部添加した際に,ダマにならずに分散・溶解し,添加後2分でピーク粘度の90%以上に達することを特徴とする易溶性CMC組成物。 【請求項6】 請求項1から5いずれか記載の易溶性CMC組成物を含有することを特徴とする飲食品。」 とあったのを,本件補正により, 「【請求項1】 1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,温度25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMCの粉末表面に,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,温度25℃)が100mPa・s以下である低粘性多糖類が結着したCMCを含有することを特徴とする易溶性CMC組成物であって,高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部が結着していることを特徴とする易溶性CMC組成物。 【請求項2】 低粘性多糖類が,低粘性タイプCMC,グァーガム酵素分解物,低粘性アルギン酸塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1記載の易溶性CMC組成物。 【請求項3】 低粘性多糖類が,2重量%の水溶液におけるCMC水溶液の粘度(B形粘度計 回転速度60rpm,温度25℃)が100mPa・s以下であるCMC,30重量%のグアーガム酵素分解物水溶液とした際の粘度(B型粘度計 回転速度30rpm,温度50℃)が500mPa・s以下であるグアーガム酵素分解物及び低粘性アルギン酸塩10重量%水溶液の粘度(B形粘度計 回転速度30rpm,温度20℃)が200mPa・s以下である低粘性アルギン酸塩類の群より選ばれる少なくとも1種以上である請求項1または2記載の易溶性CMC組成物。 【請求項4】 結着の方法が高粘性タイプCMCに低粘性多糖類溶液を噴霧し,同時に流動乾燥することを特徴とする請求項1から3いずれか記載の易溶性CMC組成物。 【請求項5】 易溶性CMC組成物が,イオン交換水99重量部に対して1重量部添加した際に,ダマにならずに分散・溶解し,添加後2分でピーク粘度の90%以上に達することを特徴とする請求項1から4いずれか記載の易溶性CMC組成物。 【請求項6】 請求項1から5いずれか記載の易溶性CMC組成物を含有する飲食品。」 に補正するものである。 (2)補正の適否 上記補正前後の請求項の対応関係は,補正後の請求項1,2,4,5及び6は,それぞれ,補正前の請求項1,2,3,5及び6に対応するが,補正後の請求項3については,対応する補正前の請求項がない。 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下「平成18年法改正前」という)平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号は「特許請求の範囲の減縮」について,括弧書きで「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る」と規定しているから,同号にいう「特許請求の範囲の減縮」は,補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって,かつ,補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるというべきであり,補正前の請求項と補正後の請求項とは,一対一又はこれに準じるような対応関係に立つものでなければならないと解すべきものである。(知財高裁平成17年10月11日判決(平成17年(行ケ)第10156号),知財高裁平成17年4月25日判決(平成17年(行ケ)第10192号)及び東京高裁平成16年4月14日判決(平成15年(行ケ)第230号)参照。) そうすると,前述のとおり,補正前の特許請求の範囲には,本件補正によって追加された請求項3と一対一又はこれに準じるような対応関係に立つ請求項は存在しないことが明らかであり,請求項3を追加する補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するということはできない。 そして,請求項3を追加する補正は,誤記の訂正,又は,明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 してみると,請求項3を追加する補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる事項である,請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものの何れにも該当しない補正が含まれている。 以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる事項を目的とするものに該当しない補正事項を含むから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 (3)独立特許要件について 平成23年10月24日付け手続補正は,上記のとおり,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる何れの目的にも該当しない補正事項を含むものと判断したものであるが,念のため請求項3に係る補正事項が平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる何れかの目的に該当するものであるとした場合についても判断を示すこととする。 本件補正は,請求項1に対する補正事項を含むものであって,本件補正により,補正前の請求項1の「高粘性タイプCMCの粉末表面に」結着される「低粘性多糖類」との割合について,「高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部」と限定された。 また,本件補正により,補正前の請求項1の低粘性多糖類の粘度が「400mPa・s以下」とあったものが,「100mPa・s以下」と範囲が減縮された。 これらの請求項1に対する補正事項は,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 ア 補正発明 平成23年10月24日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,次の事項により特定される発明であると認める。 「1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,温度25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMCの粉末表面に,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,温度25℃)が100mPa・s以下である低粘性多糖類が結着したCMCを含有することを特徴とする易溶性CMC組成物であって,高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部が結着していることを特徴とする易溶性CMC組成物。」 イ 引用刊行物の記載事項 原査定で引用され,本願出願前に頒布された刊行物である「特開昭63-23966号公報」(以下,「刊行物1」という。)には,下記の事項が記載されている。 なお,刊行物1の摘記箇所に付した下線は当審で付記したものである。 (刊1-1)「2.特許請求の範囲 1.水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は30センチポイズ以上で1000センチポイズ未満である)で架橋することによつて造粒されたものであることを特徴とする粒状糊料。 2.流動化された水溶性粉末糊料に結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は30センチポイズ以上で1000センチポイズ未満である)の水溶液を噴霧したのち乾燥して,水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤で架橋させてなる粒状物を得ることを特徴とする粒状糊料の製造法。」(1頁左下欄4行?末行) (刊1-2)「本発明は,水に対して即溶性のある粒状糊料およびその製造法に関する。 従来より水溶性粉末糊料(特に可食性のもの)は,分散系の安定化,ゲル化,増粘,皮膜形成,テクスチャーの向上等を目的とした安定剤として,畜産加工品,水産加工品等の食品業界において広く使用されているのみならず,化粧品,繊維,製紙,医薬品等の他の業界においても広範囲にわたり使用されている。 しかしながら,水溶性粉末糊料は,これを水に溶解させる際に通常の撹拌による溶解時に所謂ママコを形成するので,製品加工に使用する上で種々の問題点(糊料の溶解に時間がかかる,糊料の高濃度溶液をつくることができない等)を抱えている。ここでママコとは,粉末糊料を水に溶解させるに際し,水と接した粒子(接水粒子)のみが膨潤して高粘度となるため,接水粒子に囲まれた内側の粉末と水との接触が著しく阻害されることにより生じる塊のことをいう。」(1頁右下欄4行?2頁左上欄2行) (刊1-3)「このような問題点に対処すべく,本発明者らは,先に水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は1000センチポイズ以上である)で架橋することによって造粒されたものであることを特徴する粒状糊料,およびその製造法として流動化された水溶性粉末糊料粒子に結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は1000センチポイズ以上である)の水溶液を噴霧したのち乾燥して,水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤で架橋させてなる粒状物を得ることを特徴とする方法を提案した(特願昭60-94421号の明細書参照,以下「先願発明」という。)。」(2頁右上欄6行?18行) (刊1-4)「本発明は,上記粒状糊料を製造するにあたり,その製造工程において,結合剤として先願発明でのものよりも低粘度のものを使用しても先願発明と同様の粒状糊料を得ることができることを見出して完成されたものである。 従って,本発明による粒状糊料は,水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は30センチポイズ以上で1000センチポイズ未満である)で架橋することによって造粒されたものであること,を特徴とするものである。 また,本発明は,上記粒状糊料の製造法にも関する。 すなわち,本発明による粒状糊料の製造法は,流動化された水溶性粉末糊料に結合剤(ただし,その5%水溶液の粘度(20℃)は30センチポイズ以上で1000センチポイズ未満である)の水溶液を噴霧したのち乾燥して,水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤で架橋させてなる粒状物を得ること,を特徴とするものである。」(2頁右上欄20行?左下欄19行) (刊1-5)「効果 本発明による粒状糊料は,前記したようにその単位粒状物が水溶性粉末糊料の粒子間を特定の結合剤で架橋したもの,であって前記の性質を有するものである。 従って,先願発明と同様に今までの水溶性粉末糊料が有していた上記問題点を解決するとともに下記のような利点をも有する。 (イ) ママコを形成せず,水に対して即溶性がある。 従来の水溶性粒状糊料は,通常の撹拌により水に溶解する場合にママコを生じるのがふつうであり,従来より,このママコの形成防止ないし消失のため種々の方法が行われてきたが,いずれの方法もその解決策とはならなかった。しかしながら本発明の粒状糊料は,粒状糊料の粒子間を結合剤で架橋させて粒状糊料としたものであるため,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上した。 (ロ) 粒状糊料本来の特性を実質的に変化させない。 ママコ形成を防止するにあたり,従来は粉末糊料をママコを生じにくい別の粒状糊料でコーティングするという方法も行われていたが,このようにして得られた糊料は,糊料本来の特性が失われ,さらには糊液粘度も著しく変動するという不都合があった。 これに対し,本発明の粒状糊料の一実施態様は,原料粉末糊料そのものを結合剤として使用したものであるので,製品粒状糊料は原料粉末糊料本来の特性を実質的に損なうことなく保有している。また,他の一実施態様として原料粉末糊料以外のものを使用する場合であっても,その使用量は少ないので,製品粒状糊料を水に溶解させたときの糊液粘度は原料粉末糊料由来の粘度に比べて著るしく変化するということがなく,また糊料の液性にも著るしく変化はない。 従って,本発明による粒状糊料は,原料粉末糊料本来の用途(たとえば安定剤)に使用することが可能であるといえる。 (ハ) 取扱いが簡単である。 従来の水溶性粉末糊料は,飛散性,流動性,および充填性に問題があり,また保存中に固結を起こす等,好ましくない物性を有していた。 しかしながら,水溶性粉末糊料を粒状化してなる本発明の粒状糊料は飛散性および付着性が改善され,凝集性がないので保存性にもすぐれており,また流動性が良好であるところから適当な容量法で計ることもできるので取扱いが簡単である。」(2頁右下欄1行?3頁右上欄9行) (刊1-6)「本発明の粒状糊料は,「水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤で架橋することによって造粒された粒子からなるもの」である。この場合の「水溶性粉末糊料」とは,分散系の安定化,ゲル化,増粘,皮膜形成,テクスチャーの向上等の目的のためにあるいは結合剤として使用され得るもの,である。このような水溶性粉末糊料としては,例えば,ペクチン,キサンタンガム,ローカストビーンガム,グアーガム,アラビアゴム,アルギン酸ナトリウム等の天然品や,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルセルロ-ス、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム等のセルロース誘導体およびポリビニルピロリドン,ポリアクリル酸ナトリウム等の化学合成品がある。本発明の粒状糊料の原料として用いられる粉末糊料は,上記の単一成分からなってもあるいは二つ以上の任意の組合せからなってもよく,またこれらに他の成分を適宜配合したもの(例えば動物性蛋白質改良剤として「エクスホーマ」(日本コロイド株式会社)等がある)からなっていてもよい。 「粒子間を結合剤で架橋する」とは,具体的には水溶性粉末糊料の粒子間を結合剤で結合(架橋)させるということである。 ここでいう「結合剤」とは,水溶性粉末糊料粒子間を結合して粒状に固定させる糊料を意味する。これは,一般にその5%水溶液の粘度(20℃)が30?1000センチポイズ未満のものであって,通常使用されている低粘度の糊料(ヒドロキシプロピルセルロース,繊維素グリコール酸ナトリウム,メチルセルロース等)でありうる。本発明に用いる結合剤は原料粉末糊料と同一のものであることが好ましいが,それでは充分な結合力が得られないときには結合力の強い他の糊料を併用あるいは代用してもよい。 本発明による粒状糊料は,12メッシュ篩を実質的に全量が通過し,100メッシュ篩上に実質的に全量が残るという程度のものであることがふつうである(篩のメッシュは,JIS規格によるものである)。」(3頁右上欄12行?右下欄10行) (刊1-7)「ここで用いられる水溶性粉末糊料および結合剤は上記した通りであるが,結合剤の使用量および噴霧条件は下記の通りである。結合剤の使用量は,結合剤の粘着性の強弱,架橋すべき水溶性粉末糊料の種類,目的として得る粒状糊料の粒径等に合せて適宜換えるのが好ましいが,本発明においては糊料原料に対し0.5?4.5%(W/W)が好ましい。」(4頁左上欄13行?20行) (刊1-8)「実施例3 上記実施例と同一の装置を用い,カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(第-工業製薬(株)。以下CMC-Naという)400g(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))を温風(90℃)で流動化させたのち,これに結合剤水溶液(2%(w/w)CMC-Na水溶液(「セロゲンF-7A」))90gを噴霧速度30ml/分,噴霧圧1.5kg/cm^(2)の条件下で噴霧し,ついで乾燥することにより,粒状糊料を造粒した。結合剤としてのCMC-Naは,その5%濃度の粘度(20℃)が約500cpのものである。」(4頁右下欄10行?5頁左上欄1行) (刊1-9)「参考例1 下記の溶解法に従って,従来の粉末糊料と本発明の粒状糊料との溶解時間を測定した。 700ccステンレス鋼製ビーカーに精製水200ccを入れ,一定の速度(約500rpm)で撹拌(撹拌羽根4枚)を行いながら,試料10gを投入し,試料が完全に分散,溶解して粘稠な水溶液になるまでの時間を測定した。 そのときの結果を第1表に示す。 ^(*) 粒状糊料はすべて100メッシュの篩で篩分した篩上の粒状糊料を使用した。 ^(**) 溶解時間は3回測定したときの平均値である。 この結果より,本発明の糊料は,従来の糊料と比較して,その溶解性が著しく向上しているといえる。」(5頁左上欄13行?右上欄16行) ウ 引用刊行物1に記載された発明 上記刊行物1の摘示(刊1-8)には, 「上記実施例と同一の装置を用い,カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(第一工業製薬(株)。以下CMC-Naという)400g(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))を温風(90℃)で流動化させたのち,これに結合剤水溶液(2%(w/w)CMC-Na水溶液(「セロゲンF-7A」))90gを噴霧速度30m/分,噴霧圧1.5kg/cm^(2)の条件下で噴霧し,ついで乾燥することにより,粒状糊料を造粒した。結合剤としてのCMC-Naは,その5%濃度の粘度(20℃)が約500cpのものである。」 との記載がある。 この記載事項のうち「カルボキシメチルセルロース・ナトリウム(第一工業製薬(株)。以下CMC-Naという)400g(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」との記載事項について,「第一工業製薬(株)」という表記が重複している点を整理し,カルボキシメチルセルロース・ナトリウムをCMC-Naと表記し,「結合剤水溶液(2%(w/w)CMC-Na水溶液(「セロゲンF-7A」))」には,結合剤成分としてCMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aが含まれているから,これらを整理すると,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「結合剤水溶液(2%(w/w))に含まれる結合剤としてのCMC-Naは,その5%濃度の粘度(20℃)が約500cpのものであり, CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))400gを温風(90℃)で流動化させたのち,これにCMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))90gを噴霧速度30m/分,噴霧圧1.5kg/cm^(2)の条件下で噴霧し,ついで乾燥することにより,造粒した粒状糊料。」 エ 対比 補正発明と引用発明1を対比する。 (ア) 高粘性タイプCMCについて 本願明細書の段落【0009】に 「本発明に用いられる「CMC」とは,食品添加物に認可されている「カルボキシルメチルセルロース(Carboxymethyl Cellulose:簡略名CMC)」を意味し,特に限定されるものではないが,セルロースを主原料にした代表的なアニオン性の水溶性高分子であり,好ましくはカルボキシメチルセルロースの金属塩であり,より好ましくはカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩であることが望ましい。」(なお,本願明細書の摘記箇所に付した下線は,当審にて付記したものである。以下,同様である。)と記載されているから,CMCのナトリウム塩,すなわち,CMC-Naも補正発明のCMCに包含される。 他方,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」は,「100メッシュ全通」であるから,100メッシュの篩を通過するような粉末であって表面を有することは明らかである。 また,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」は,引用発明1の「粒状糊料」の主成分であり,一般的にCMC-Naの水溶液が粘性を有するものであることは技術常識である。 しかし,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」の1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)の条件における測定値は不明である。 以上のことから,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」と,補正発明の「1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMC」とは,所定粘度のCMCという点で共通する。 (イ) 低粘性多糖類について 引用発明1の「CMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))90g」は,結合剤成分としてセロゲンF-7Aを含むものである。そして,セロゲンF-7Aは,引用発明1の発明特定事項によればCMC-Naという多糖類の一種である。 ところで,刊行物1には「ここでいう「結合剤」とは,水溶性粉末糊料粒子間を結合して粒状に固定させる糊料を意味する。これは,一般にその5%水溶液の粘度(20℃)が30?1000センチポイズ未満のものであって,通常使用されている低粘度の糊料(ヒドロキシプロピルセルロース,繊維素グリコール酸ナトリウム,メチルセルロース等)でありうる。」(摘示(刊1-6))と記載されているから,引用発明1において,用いられているセロゲンF-7Aは,低粘度のCMC-Naという多糖類であると解される。 そして,セロゲンF-7Aは,例えば下記刊行物Aに記載されているように,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が15mPa・sであることが周知の事項となっており,15mPa・sであるから,100mPa・s以下であるし,低粘性といえる。 よって,引用発明1の「CMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))90g」に含まれるセロゲンF-7Aは,補正発明の「2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が100mPa・s以下である低粘性多糖類」に相当することは明らかである。 刊行物A:特開2004-8061号公報 なお,刊行物Aの摘記箇所に付した下線は,当審にて付記したものである。以下に示す刊行物B?Eに付した下線も同様である。 「【0023】 1.魚油のゲル化固化 スケソウダラ肝油(理研ビタミン株式会社製)1000gに,グリセリンモノラウレート(理研ビタミン株式会社製「ポエムM-300」)とカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬株式会社製「セロゲンF-7A」,25℃での2重量%水溶液粘度=15mPa・s,東京計器製造所製のB型粘度計(ローターNo.1,60rpm×60秒)により測定)を8:2(重量比)で混合したもの150gを加え,80℃にて撹拌した。グリセリンモノラウレートが溶解した後,撹拌を止めて室温まで放冷したところ,スケソウダラ肝油はゲル化固化した。」 (ウ) 高粘性タイプCMCと低粘性多糖類の結着について a 本願明細書記載の「結着」の定義について 本願明細書の段落【0019】に記載の「高粘性タイプCMC粒子表面に低粘性多糖類が粒子結合した状態で,60メッシュ上で30秒間振動させても粒子結合を維持していることであり,振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下であることをいい,粒子結合が維持している割合が高い点から20重量%以下であることが好ましい。」(本願明細書の記載事項に付した下線は,当審にて付記したものである。以下,同様である。)とする「結着」の定義からみて,補正発明の「易溶性CMC組成物」に含まれる粒子は,振動により崩されず,粒子結合が維持することを,30秒間60メッシュの篩の上で振動させたときの前記篩を通過する量という評価指標により規定したものと理解される。 そして,「振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下」という振動により崩された量の上限のみが規定されており,全く振動により崩されない,すなわち,0重量%のものを崩された量の下限とすることが定義に包含されている。 ここには振動の程度が規定されていないが,段落【0042】に 「試験例2 実施例,比較例で得られた組成物20gを内径150mmの60メッシュJIS標準篩上で30秒間振動(OCTAGON200型,(株)飯田製作所製,振動幅2?3mm,3600回/分)させ粒子の結着度合いを確認した。60メッシュを通過した粉末の割合を表4に示した。」 との記載事項からみて,補正発明でいう「結着」とは, 「高粘性タイプCMC粒子表面に低粘性多糖類が粒子結合した状態で,60メッシュ上で,振動幅2?3mm,3600回/分の条件で,30秒間振動させても粒子結合を維持していることであり,振動により崩された60メッシュの篩を通過する微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下である」 という状態を意味すると解される。 また,「振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末」というのであるから,振動により崩される前は,60メッシュの篩上に補正発明に係る「易溶性CMC組成物」は残り,崩され微粉末となったもののみが,60メッシュの篩を通過するものと解される。 CMCは,様々な粒径のものが例示するまでもなく本願出願前から存在し,60メッシュの篩を通過しない大きな粒径のものも存在する。補正発明の「高粘性タイプCMCの粉末」の粒径については,補正発明において全く限定がないから,補正発明の「高粘性タイプCMCの粉末」の粒径として,60メッシュの篩を通過しない大きな粒径のものを選べば,高粘性タイプのCMCの粉末に低粘性多糖類が結着していなくとも60メッシュの篩上に残るのであって,補正発明に係る「易溶性CMC組成物」が60メッシュの篩上に残るということ自体に特段の臨界的な技術的意義は見いだせない。 これらのことから,60メッシュという篩が選ばれたのは,補正発明に係る「易溶性CMC組成物」が,60メッシュの篩を通過しない大きさであるいうことが少なくとも理由の一つであり,本願明細書の段落【0042】記載のように「60メッシュJIS標準篩上で30秒間振動(OCTAGON200型,(株)飯田製作所製,振動幅2?3mm,3600回/分)させる」ことで,「易溶性CMC組成物」の崩れやすさを測定し,補正発明の「結着」の度合いを定義しているものといえる。 b 引用発明1の結着について 引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))400gを温風(90℃)で流動化させたのち,CMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))90gを噴霧速度30m/分,噴霧圧1.5kg/cm^(2)の条件下で噴霧し,ついで乾燥することにより,造粒した粒状糊料」との特定事項からみて,「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」を流動化させて,CMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))を噴霧し,乾燥させているものであって,何らかの結着がなされていることは自明である。 しかしながら,刊行物1には,具体的な結着状態の記載はなく,本願明細書の段落【0019】に記載された「結着とは,高粘性タイプCMC粒子表面への低粘性多糖類の粒子結合状態をいい,高粘性タイプCMC粒子表面に低粘性多糖類が粒子結合した状態で,60メッシュ上で30秒間振動させても粒子結合を維持していることであり,振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下である」という結着状態となっているか不明である。 c 小括 以上のことから,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」と「セロゲンF-7A」の結着状態と,補正発明の「高粘性タイプCMCの粉末表面に」「低粘性多糖類が結着した」状態とは,「高粘性タイプCMCの粉末表面に」「低粘性多糖類が所定の状態で結着した」点で共通する。 (エ) 高粘性タイプCMC100と低粘性多糖類との割合について 引用発明1の「CMC-Naの一種であるセロゲンF-7Aを結合剤成分として含む結合剤水溶液(2%(w/w))90g」に含まれるセロゲンF-7Aの重量は,90gの2%(w/w)であるから,1.8gである。 引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))400g」を100重量部とすると,「セロゲンF-7A」は,0.45重量部が結着していると計算される。 よって,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))400g」を100重量部としたときに「セロゲンF-7A」が0.45重量部結着することと,補正発明の「高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部」が結着することとは,「所定粘度のCMC100重量部に対して低粘性多糖類を所定割合」で結着することで共通する。 (オ) 易溶性CMC組成物について 引用発明1の「造粒した粒状糊料」は,「(イ)ママコを形成せず,水に対して即溶性がある。」(摘示(刊1-5))と記載されているように即溶性であるから,補正発明の「易溶性CMC組成物」に相当する。 (カ) 一致点及び相違点 以上のことから,両発明の間には,次の(一致点)及び(相違点1)?(相違点3)がある。 (一致点) 「所定の粘度を有するCMCの粉末表面に,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が400mPa・s以下である低粘性多糖類が所定の結着状態で結着したCMCを含有することを特徴とする易溶性CMC組成物であって,所定粘度のCMC100重量部に対して低粘性多糖類を所定割合で結着していることを特徴とする易溶性CMC組成物。」 (相違点1) 所定の粘度を有するCMCが,補正発明では「1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が2000mPa・s以上」で「高粘度タイプ」であるのに対して,引用発明1では,粘度が不明な点。 (相違点2) CMC100重量部に対する低粘性多糖類の割合が,補正発明では「1から20重量部」であるのに対して,引用発明1では,0.45重量部である点。 (相違点3) 所定の結着状態が,補正発明では,本願明細書の【0019】の定義に従い「高粘性タイプCMC粒子表面に低粘性多糖類が粒子結合した状態で,60メッシュ上で30秒間振動させても粒子結合を維持していることであり,振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下であること」とされる結着状態であるのに対して,引用発明1では,結着状態について規定が無い点。 オ 判断 (ア) 相違点1について 本願明細書に高粘性タイプのCMC,すなわち,カルボキシメチルセルロースについて,次のように記載されている。 「【0011】CMCの物性は,単位グルコースの重合度,単位グルコースの水酸基あたりの置換度,グルコースの重合度及び単位水酸基あたりの置換度の分布の均一性等により異なり,多様な物性を有するものが製造されている。CMCはこれらの違いにより,その濃度が2重量%の水溶液における粘度が5mPa・sから9000mPa・sにいたるまでの幅広い粘度の製品が市販されている。」 「【0013】本発明における高粘性タイプCMCとは,その濃度が1重量%の水溶液で2,000mPa・s(B形粘度計 東京計器製:回転速度60r/min,温度25℃で測定)以上の粘性を有するCMCであり,より少量で粘性を付与できる観点から,3,000mPa・s以上のCMCが好ましく,さらには4,000mPa・s以上のCMCが好ましい。」 この記載事項からすると,補正発明において「1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMC」としたのは,市販のCMCを含めて,様々な粘性を有するCMCの中から,少量で粘性を付与できる2000Pa・s以上のものを選んだものと理解される。 そして,補正発明の「粘性が2000mPa・s以上」という数値について,本願明細書に臨界的な技術的意義は記載されていない。 他方,刊行物1の(摘示(刊1-2))に, 「本発明は,水に対して即溶性のある粒状糊料およびその製造法に関する。 従来より水溶性粉末糊料(特に可食性のもの)は,分散系の安定化,ゲル化,増粘,皮膜形成,テクスチヤーの向上等を目的とした安定剤として,畜産加工品,水産加工品等の食品業界において広く使用されているのみならず,化粧品,繊維,製紙,医薬品等の他の業界においても広範囲にわたり使用されている。」 と記載されているように,引用発明1は,食品業界を含む広い分野で使用され得るものである。 そして,刊行物1の請求項1(摘示(刊1-1))において,「水溶性粉末糊料」としてどのような粘度のものを選ぶのかは規定されていないように,高粘度タイプのものを選ぶことを妨げるような事項は刊行物1に記載されていない。 ところで,前記した引用発明1の適用対象とされる食品分野に限ってみても,高粘性タイプのCMCで,しかも,1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)の条件で粘度が2000mPa・s以上であるものは,刊行物C並びに拒絶査定で示された下記刊行物B及びDに記載のように当技術分野においては周知のものとなっている。 そうすると,高粘性タイプのCMCは,少量で粘性を付与できることは,例示するまでもなく本願出願前から知られた技術常識であるから,引用発明1において,「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」に代えて,上記刊行物B?Dに記載されているような周知の高粘性タイプのCMCを適宜選択して,相違点1に記載の補正発明の特定事項のごとくすることは,当業者が難なくなし得たことといえる。 刊行物B:特開2006-8857号公報 「【0001】 本発明は塩類の存在下においても,容易に粒子が崩壊し,微細な繊維状のセルロースが水中に分散する高分散性のセルロース組成物,およびそれを含む食品組成物に関する。」 「【0016】 本発明で使用されるカルボキシメチルセルロース・ナトリウムは,1質量%水溶液の粘度が2000?6000mPa・sのものが好ましく使用される。2000mPa・s未満だと水分散時の粘度が低下する傾向があり,6000mPa・sを越える場合は,水道水中での粒子の崩壊・分散が不良となる場合がある。カルボキシメチル基の置換度は0.5?1.5が好ましく,より好ましくは0.6?0.8である。」 そして,この粘度をB形粘度計で測定したことが次に記載されている。 「【0019】 本発明の高分散性セルロース組成物は,0.01%塩化カルシウム水溶液中にて撹拌すると,容易に粒子が崩壊・分散し,高粘度を発現する。その程度(0.01%塩化カルシウム水溶液分散性)は,純水中で強力な条件で撹拌して発揮される粘度に対して,0.01%塩化カルシウム水溶液中に実用的な条件で撹拌した時の粘度が50%以上となるものである。 なお,「純水中で強力な条件で撹拌して発揮される粘度」とは,下記の方法で測定される粘度を意味する。 【0020】 (1)固形分濃度が1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り,エースホモジナイザー(商標,日本精機株式会社製,AM-T型)で,15000rpmで15分間(25℃)分散する。 (2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。 (3)よく撹拌した後,回転粘度計(株式会社トキメック製,B形粘度計)をセットし,撹拌終了30秒後にローターの回転を開始し,それから30秒後の指示値より粘度を算出する。なお,ローター回転数は60rpmとし,ローターは粘度によって適宜変更する。」 刊行物C:特開平2-109940号公報 「2.特許請求の範囲 蔗糖脂肪酸エステルとカルボキシメチルセルロースナトリウムを重量比率で80:20?20:80の割合で併含することを特徴とするチョコレートペースト用乳化安定剤。」(1頁左下欄4?8行) 「また,カルボキシメチルセルロースナトリウムは,グルコース残基1個中に置換するカルボキシメチル基は平均0.6?0.9個であり,その1%粘度が1000?10000cp(但し,B型粘度計による)であるのが好ましい。」(2頁左上欄11?15行) 「実施例1 水30部に,カカオマス5.5部,カカオバター4.5部,砂糖60部,蔗糖脂肪酸エステル(HLB=15)0.2部,カルボキシメチルセルロースナトリウム(DS=0.7,1%粘度=5000cp)0.3部を添加し,加熱撹拌して,均一に混合して,チョコレートペースト組成物を得た。 実施例2 蔗糖脂肪酸エステルとしてHLB=11のものを0.3部使用し,カルボキシメチルセルロースナトリウムとしてDS=0.7,1%粘度=2000cpのものを0.2部使用した以外は実施例1と同様にして,チョコレートペースト組成物を得た。」(2頁右上欄6?18行) 「*1)DSはグルコース残基1個中に置換するカルボキシメチル基の数を示す。1%粘度は,B型粘度計で測定した1%水溶液(25℃)の粘度を示す。」(3頁下から2行?末行) (当審注:1cp=1×10^(-3)Pa・s=1mPa・sと換算される。[参考url: http://www.keihin-ve.co.jp/valve/gijutsu/4.tani.pdf ]) 刊行物D:特開2006-290972号公報 「【0023】・・(略)・・中でも,カルボキシメチルセルロース・ナトリウムが好ましい。このカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては,カルボキシメチル基の置換度が0.5?1.5,好ましくは0.5?1.0,さらに好ましくは0.6?0.8である。また1質量%水溶液の粘度は5?9000mPa・s程度,好ましくは1000?8000mPa・s程度,さらに好ましくは2000?6000mPa・s程度のものである。」 「【0040】 本発明で言う食品の例としては,「プリン,ゼリー,ヨーグルトなどのデザート類」,・・・(略)・・・」 (イ) 相違点2について 高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部が結着しているという数値について,本願明細書には特段の臨界的意義は記載されていない。 他方,刊行物1の摘示(刊1-7)には, 「ここで用いられる水溶性粉末糊料および結合剤は上記した通りであるが,結合剤の使用量および噴霧条件は下記の通りである。結合剤の使用量は,結合剤の粘着性の強弱,架橋すべき水溶性粉末糊料の種類,目的として得る粒状糊料の粒径等に合せて適宜換えるのが好ましいが,本発明においては糊料原料に対し0.5?4.5%(W/W)が好ましい。」 との記載があり,補正発明における「高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部」との割合で,一部範囲が重複している記載事項がある。 また,刊行物1の「しかしながら本発明の粒状糊料は,粒状糊料の粒子間を結合剤で架橋させて粒状糊料としたものであるため,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上した。」(摘示(刊1-5))の記載事項からみて,ママコを形成せず,水に対する溶解を著しく向上させるという機能は,結合剤,すなわち,引用発明1の「セロゲンF-7A」による架橋により奏されるものであるから,当業者であれば,前記機能を奏するに足る下限量と,前記機能を奏するのにもはや十分となる上限量を適宜決め得るものといえる。 そうすると,引用発明1において,「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」に代えて,上記「(ア)相違点1について」に記載のごとく,高粘性タイプのCMCを選ぶと共に,それを100重量部としたときの「セロゲンF-7A」の割合を,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上するという機能を考慮して相違点2に記載の補正発明のごとくすることに特段の困難性はない。 (ウ) 相違点3について a 刊行物1記載の結着について 刊行物1には「しかしながら本発明の粒状糊料は,粒状糊料の粒子間を結合剤で架橋させて粒状糊料としたものであるため,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上した。」(摘示(刊1-5))と記載されている。下線を付した箇所を引用発明1の特定事項に置き換えてみると,粒状糊料,すなわち,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」の粒子間を結合剤,すなわち,結合剤成分である「セロゲンF-7A」で架橋することにより,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上するという機能を発揮するものである。 また,刊行物1において「^(*) 粒状糊料はすべて100メッシュの篩で篩分した篩上の粒状糊料を使用した。」(摘示(刊1-9))と記載されているように,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」と,100メッシュの篩を通過する粒径であったものが,粒子間をセロゲンF-7Aで架橋することにより100メッシュの篩の上に残るような大きさまで造粒されたことが記載されている。 b 振動型の篩について 食品分野を含めて振動型の篩を使用することは,本願出願前より例示するまでもなく周知の技術的事項である。 c 本願明細書記載の結着の定義に含まれる60メッシュの篩について 上記「第2 2(3)エ(ウ)a 本願明細書記載の「結着」の定義について」に記したように,補正発明に係る「易溶性CMC組成物」が,本願明細書の【0019】の結着の定義のごとく,60メッシュの篩上に残るということ自体に特段の臨界的な技術的意義は見い出せない。 他方,引用発明1は,上記「a 刊行物1記載の結着について」に記したように,「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」と,100メッシュの篩を通過する粒径であったものが,粒子間をセロゲンF-7Aで架橋することにより100メッシュの篩の上に残るような大きさまで造粒されたものである。 そして,「本発明による粒状糊料は,12メッシュ篩を実質的に全量が通過し,100メッシュ篩上に実質的に全量が残るという程度のものであることがふつうである(篩のメッシュは,JIS規格によるものである)。」(摘示(刊1-6))との記載事項からみて,引用発明1の粒状糊料の粒径の上限は12メッシュの目開き未満であり,これは,60メッシュの篩の上に残る大きな粒径の粒子を含むことを意味する。 刊行物1の特許請求の範囲(摘示(刊1-1))には,造粒された「粒状糊料」の粒径についての限定事項はなく,前記したように補正発明の結着の定義に含まれる60メッシュの篩上に残るということに特段の臨界的な技術的意義は見い出せないことから,引用発明1において,造粒した粒状糊料」の粒径を60メッシュの篩上に残るような大きさとすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。 d 本願明細書記載の結着の定義に含まれる振動条件について 上記「第2 2(3)エ(ウ)a 本願明細書記載の「結着」の定義について」に記したように,本願明細書に記載された「結着」の定義によれば, 「振動幅2?3mm,3600回/分の条件で,30秒間振動させても粒子結合を維持していることであり,振動により崩された60メッシュの篩をパスする微粉末が易溶性CMC組成物の30重量%以下である」 ことである。 一般的に耐久性はあらゆる分野の発明において求められる周知の課題であって,引用発明1において,ママコを形成せず,水に対する溶解性が著しく向上するという機能を維持するためには,機能維持に必須のセロゲンF-7Aの架橋状態を保つべく,強い機械的強度でセロゲンF-7Aを結着させる必要があることは,当業者が誰しも気付くものといえる。 そして,上記「a 刊行物1記載の結着について」で言及したように,刊行物1において「^(*) 粒状糊料はすべて100メッシュの篩で篩分した篩上の粒状糊料を使用した。」(摘示(刊1-9))と記載されており,引用発明1の「CMC-Na(100メッシュ全通,第一工業製薬(株))」の粒径であったものが,粒子間を結合剤成分である「セロゲンF-7A」で架橋することにより100メッシュの篩の上に残るような大きさまで造粒されたものである。引用発明1の「造粒した粒状糊料」を,篩にかける際に,食品分野等で普通に使用されているような振動型篩で簡単に崩壊するような弱い機械的強度のものであれば,実用上好ましくないことも当業者であれば誰しも気付くものといえる。また,振動型篩の振幅,回転数及び時間に比例して,引用発明1の「造粒した粒状糊料」に機械的な力が加わることも自明なことといえ,引用発明1の「造粒した粒状糊料」の機械的強度の確認手段として振動型篩を使用することを想到することに困難性はない。しかも,下記刊行物Eに記載のように振動型篩を粉末の強度の確認手段として使用することも普通のことである。 そうすると,引用発明1の「造粒した粒状糊料」において,セロゲンF-7Aの架橋状態の機械的強度を調べるために,篩上で振動させることは当業者が容易に案出できることといえる。 そして,その機械的強度の確認の際に用いる振幅,回転数及び時間の条件は,当業者が求められる機械的強度に応じ当業者が適宜決め得る単なる設計的事項であるといえる。 刊行物E:国際公開2006/095756号 「[1] キサンタンガムの粉末表面にカリウム塩が結着したキサンタンガムを含有することを特徴とする増粘用組成物。 [2] 結着の方法がキサンタンガムにカリウム塩溶液を噴霧後流動乾燥することを特徴とする請求項1記載の増粘用組成物。 ・・・(略)・・・ [5] 請求項1から4いずれか記載の増粘用組成物を含有することを特徴とする飲食品。」 「[0020] <噴霧工程> キサンタンガム100gを流動状態に調整し,塩化カリウム溶液50gを噴霧した。噴霧終了後得られた顆粒を流動乾燥しキサンタンガム組成物94.3gを得た。容量100mlの容器にすりきり1杯組成物を充填し,充填された顆粒の重量を測定した。顆粒の重量は41gであり,かさ比重は0.41g/mlであった。また,得られた顆粒20gを 内径150mmの60メッシュJIS標準篩上で30秒間振動(OCTAGON200型,(株)飯田製作所製,振動幅2?3mm,3600回/分)させ粒子の結着度合いを確認した結果,60メッシュを通過した粉末は20g中2.04gであり,結着度の低いキサンタンガムと塩化カリウムの割合は10.2重量%であった。残る89.8重量%は結着していることが確認された。一方,原子吸光光度法で,流動乾燥後の顆粒,60メッシュの篩上に残存した顆粒及び60メッシュを通過した粉末,それぞれ100g中のカリウム含量を測定した。結果,流動乾燥後の顆粒には1600mg,60メッシュの篩上に残存した顆粒には1600mg,60メッシュを通過した粉末には1600mgのカリウムが含有されており,上記キサンタンガム組成物にはカリウムが均一に結着していることが確認された。」 (エ) 補正発明の効果について 補正発明の効果について,本願明細書には, 「【0008】 高粘性タイプCMCの粉体表面に低粘性多糖類を結着させることによりCMC表面の水濡れ性が改善され,水への分散性が著しく向上しピーク粘度への到達速度も著しく改善することが可能となる。」 と記載されている。 他方,刊行物1の摘示(刊1-9)には,「参考例1」として, 「下記の溶解法に従って,従来の粉末糊料と本発明の粒状糊料との溶解時間を測定した。 700ccステンレス鋼製ビーカーに精製水200ccを入れ,一定の速度(約500rpm)で撹拌(撹拌羽根4枚)を行いながら,試料10gを投入し,試料が完全に分散,溶解して粘稠な水溶液になるまでの時間を測定した。 そのときの結果を第1表に示す。」とし,「第1表」には,「糊料」が「CMC-Na」の場合,「溶解時間^(**)(分)」は,「造粒前の粉末糊料」では「30」,「実施例3の粒状糊料^(*)」では「10」であることが記載されている。 そして,「この結果より,本発明の糊料は,従来の糊料と比較して,その溶解性が著しく向上しているといえる。」との記載がある。 この記載によると,「第1表」の「溶解時間(分)」は,「試料が完全に分散,溶解して粘稠な水溶液になるまでの時間を測定した。」ものであるから,試料がほぼ100%溶解して粘稠な水溶液となった時間,すなわち,「ピーク粘度」に達した時間であると解され,30分が10分へと著しく短縮されるという顕著な効果が引用発明1において奏されていることが分かる。 してみれば,補正発明の効果は,刊行物1に記載された事項及び上記周知の技術から予測されるところを越えて優れているとはいえない。 (オ) 請求人の主張について a 実験報告書について 請求人は,平成23年12月14日提出の手続補正書(方式)に,平成23年10月25日付け粕渕良章作成の「実験報告書」を添付している。 ここには,本願実施例1(易溶性CMC組成物A),比較品(易溶性CMC組成物B)及び引用文献1相当品(易溶性CMC組成物C)を調製し,粘度を測定し,ダマの発生について観察し,そして,「考察」として, 「表3の結果より,本願発明の実施例1相当品の易溶性CMC組成物Aは,引用文献1記載の実施例3に相当する易溶性CMC組成物Cと比較して,水に分散した際の粘度発現性,ダマの出来具合に明らかな差異があり,粘度発現性及び分散性に優れていることが判明した。」としている。 ところで,刊行物1の実施例3は,「セロゲンF-7A」(摘示(刊1-8))が使用されているものである。上記「第2 2(3)エ(イ)低粘性多糖類について」で言及したように,セロゲンF-7Aは,刊行物Aに記載のとおり「25℃での2重量%水溶液粘度=15mPa・s,東京計器製造所製のB型粘度計(ローターNo.1,60rpm×60秒)により測定)」である。これは,補正発明の「2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が100mPa・s以下である低粘性多糖類」に相当するものである。 そして,刊行物1の第1表(摘示(刊1-9))においては,「実施例3」の粒状糊料は,10分で完全に溶解しており,ダマは生じていないのにかかわらず,上記実験報告書においては,10分では粘度達成率は「92」であり,大きなダマができるとしており,その結果において著しい齟齬がある。 刊行物1の実施例3(摘示(刊1-8))で使用されている「セロゲンF-7A」は,補正発明の低粘性CMCに相当するものであるから,実施例3に相当する易溶性CMC組成物Cに含まれる低粘性CMC(2)が上記齟齬の原因とは考えられずその原因は不明である。 刊行物1の第1表(摘示(刊1-9))において「実施例3」の粒状糊料は,10分で完全に溶解しているのであるから,「引用文献1(当審注:刊行物1)に記載されたものに対し優れたものであり,引用文献と本願との差違は明らかになったものと考えます。」(手続補正書(方式)12頁下から4行?下から2行)と主張するのであれば,その結果の違いを説明するに足る根拠を十分裏付ける必要のあるところであるが,上記実験報告書においては,それが十分示されているとはいえない。 よって,「引用文献1(当審注:刊行物1)に記載されたものに対し優れたものであり,引用文献と本願との差違は明らかになったものと考えます。」(手続補正書(方式)12頁下から4行?下から2行)との主張を直ちに,採用することはできない。 b 手続補正書(方式)について 請求人は,手続補正書(方式)の8頁9?11行において,「ここで粘度発現性は,溶解後30分後に安定するピーク粘度に対して,わずか溶解2分後にピーク粘度の90%以上に達することを意味し,従来10分以上経過しなければ得られない粘度に2分で到達させることができることを見出したものであります。」と主張する。 しかしながら,完全に溶けきらない状態で,他のものと混合すれば,ムラが出るから,ピーク粘度の90%に到達する時間が2分後であることにいかなる技術的意義があるか不明である。しかも,刊行物1においては,2分後の粘度が測定されていないというだけであって,「(イ)ママコを形成せず,水に対して即溶性がある。」(摘示(刊1-5))と溶解速度について注目もしているのであるから,当業者であれば確かめれば,直ちにわかる程度の特性である。 仮に90%に到達する時間において,両発明の間で何らかの違いがあるとしても,引用発明1は,10分で完全に溶解する(摘示(刊1-9))ものであり,「本発明による粒状糊料は,12メッシュ篩を実質的に全量が通過し,100メッシュ篩上に実質的に全量が残るという程度のものであることがふつうである(篩のメッシュは,JIS規格によるものである)。」(摘示(刊1-6))と記載されているように,引用発明1の粒状糊料の粒径が12メッシュ篩通過?100メッシュ上に残る粒径という広範囲に分布することを考慮すれば,全ての粒子が同じ速度で均一に溶解するとは考えられず,ピーク粘度の90%に到達する時間が2分後である程度のことは,溶けやすい粒径のものが先に溶けた等のことで説明できる程度のものであって,当業者が予測を超えて優れた効果であることを示すものではない。 カ 独立特許要件の小括 以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 (4) 補正却下のまとめ 上記「第2 2(2)補正の適否」に記したように,請求項3に係る補正を含む本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる事項を目的とするものに該当しないから,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 また,上記「第2 2(3)カ 独立特許要件の小括」に記したように,請求項3に係る補正を含む本件補正が平成18年改正前の特許法第17条の2第4項に掲げる何かの目的に該当するものであるとした場合であったとしても,請求項1に係る補正を含む本件補正は,平成18年改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成23年10月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1?6に係る発明は,平成23年6月21日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 その内,請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,下記のとおりの事項により特定される発明である。 「1重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が2000mPa・s以上の高粘性タイプCMCの粉末表面に,2重量%の水溶液粘度(B型粘度計,回転数60rpm,25℃)が400mPa・s以下である低粘性多糖類が結着したCMCを含有することを特徴とする易溶性CMC組成物。」 2 引用刊行物の記載事項 原査定で引用され,本願出願前に頒布された刊行物である特開昭63-23966号公報に記載の事項は,上記「第2 2(3)イ 引用刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 また,特開昭63-23966号公報に記載された発明,すなわち,引用発明1は,「第2 2(3)ウ 引用刊行物1に記載された発明」に記載したとおりである。 3 本願発明と引用発明1の対比 本願発明は,上記「「第2 2(3)ア 補正発明」に記した補正発明から,「高粘性タイプCMCの粉末表面に」結着される「低粘性多糖類」との割合について限定事項である「高粘性タイプCMC100重量部に対して低粘性多糖類1から20重量部」との事項を削除し,さらに,補正発明の低粘性多糖類の粘度が「100mPa・s以下」とあったのを,「400mPa・s以下」と拡張するものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が,上記「第2 2(3)オ 判断」に記載したとおり,刊行物1記載の発明及び上記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1記載の発明及び上記周知技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載の発明及び周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-05-21 |
結審通知日 | 2013-05-30 |
審決日 | 2013-06-18 |
出願番号 | 特願2007-76666(P2007-76666) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A23L)
P 1 8・ 57- Z (A23L) P 1 8・ 121- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 匡子 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
安藤 倫世 小川 慶子 |
発明の名称 | 易溶性CMC組成物 |