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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1277616
審判番号 不服2012-9418  
総通号数 165 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-05-22 
確定日 2013-08-05 
事件の表示 特願2010-118872「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月19日出願公開、特開2010-179169〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年8月6日に出願した特願2004-230005号の一部を、平成18年12月6日に特許出願したものを、さらにその一部を平成22年5月25日に特許出願したものであって、平成24年3月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年5月22日付けで拒絶査定不服審判が請求され、当審において、平成25年4月1日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年5月17日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1?3に記載された発明は、平成25年5月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認めれ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
遊技盤に設けられたレールの内側に遊技領域を形成し、
該遊技領域内に設けられた始動手段に遊技球が検出されることに起因して抽出される抽出値により、遊技者に有利な状態である特別遊技を実行するか否かを抽選する特別遊技抽選手段と、
前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が通常確率である通常確率状態時に所定条件が成立した場合、前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が高確率である高確率状態に変更させる確率変更手段と、
電源が遮断される際に電源遮断直前の遊技状態を記憶し、電源復帰後に電源遮断直前の遊技状態から遊技が再開できるようにするためのバックアップ手段と、
遊技機からホールコンピュータに信号を出力するための外部接続端子と、
を備える遊技機において、
前記レールの外側の前記遊技盤上にランプを設け、
通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合には、前記ランプにより特別な報知を行わず、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合には前記ランプにより特別な報知を行うようにし、
通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合でも電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合でも前記外部接続端子からホールコンピュータに信号を出力するようにするが、通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合と電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合とで前記外部接続端子からホールコンピュータに出力される信号の態様を異ならせ、
さらに、前記ランプによる特別な報知を高確率状態が終了するまで継続するようにしたことを特徴とする遊技機。」


3.先願明細書等に記載された事項及び発明
当審の拒絶理由で引用された、本件出願の日前の特許出願である特願2004-228801号(平成16年8月5日に出願され、本件出願後の平成18年2月16日に特開2006-43159号公報として出願公開された。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面(以下、これらをあわせて「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

「【請求項1】
所定の契機に基づき所定の抽選を行い、その抽選結果において特別条件を満たす場合には、遊技者に有利な特別遊技状態を導出可能に構成するとともに、前記抽選結果に応じて前記特別遊技状態終了後の遊技における遊技モードを、少なくとも通常モードと、それよりも価値の高い特別モードとの間で切換可能に構成するとともに、初期化時における遊技モードが通常モードとなるよう構成してなる遊技機であって、
電源の供給が遮断された場合に、少なくともそのときの遊技モードを記憶維持しておく記憶維持手段と、
電源の供給が再開された場合に、前記記憶維持された遊技モードにて遊技を開始させる復帰手段と、
所定のクリヤ操作が行われた場合、前記記憶維持された遊技モードに関わらず、少なくとも遊技モードを初期化するリセット手段と、
少なくとも遊技モードに関する情報を視覚態様及び聴覚態様のうち少なくとも一方の態様で教示可能な視聴覚教示手段と
を備え、
遊技モードが前記通常モードのとき、前記視聴覚教示手段が第1の態様をとり、
遊技モードが前記特別モードのとき、前記視聴覚教示手段が第2の態様をとるよう構成するとともに、
電源の供給が再開されたとき、前記記憶維持された遊技モードが特別モードである場合には、前記視聴覚教示手段が前記第1及び第2の態様とは異なる第3の態様をとるよう構成し、
電源の供給が継続され、かつ、遊技モードが特別モードであり、かつ、遊技が行われない状態が所定時間経過した場合には、
前記視聴覚教示手段が前記第1及び第2の態様とは異なる第4の態様をとるよう構成し、前記第3の態様と第4の態様とが同一であることを特徴とする遊技機。」

「【0010】
手段1.所定の契機に基づき所定の抽選を行い、その抽選結果において特別条件を満たす場合には、遊技者に有利な特別遊技状態を導出可能に構成するとともに、前記抽選結果に応じて前記特別遊技状態終了後の遊技における遊技モードを、少なくとも通常モードと、それよりも価値の高い特別モードとの間で切換可能に構成するとともに、初期化時における遊技モードが通常モードとなるよう構成してなる遊技機であって、
電源の供給が遮断された場合に、少なくともそのときの遊技モードを記憶維持しておく記憶維持手段と、
電源の供給が再開された場合に、前記記憶維持された遊技モードにて遊技を開始させる復帰手段と、
所定のクリヤ操作が行われた場合、前記記憶維持された遊技モードに関わらず、少なくとも遊技モードを初期化するリセット手段と、
少なくとも遊技モードに関する情報を視覚態様及び聴覚態様のうち少なくとも一方の態様で教示可能な視聴覚教示手段と
を備え、
遊技モードが前記通常モードのとき、前記視聴覚教示手段が第1の態様をとり、
遊技モードが前記特別モードのとき、前記視聴覚教示手段が第2の態様をとるよう構成するとともに、
電源の供給が再開されたとき、前記記憶維持された遊技モードが特別モードである場合には、前記視聴覚教示手段が前記第1及び第2の態様とは異なる第3の態様をとるよう構成し、
電源の供給が継続され、かつ、遊技モードが特別モードであり、かつ、遊技が行われない状態が所定時間経過した場合には、
前記視聴覚教示手段が前記第1及び第2の態様とは異なる第4の態様をとるよう構成し、前記第3の態様と第4の態様とが同一であることを特徴とする遊技機。
【0011】
手段1によれば、所定の契機に基づき所定の抽選が行われ、その抽選結果において特別条件を満たす場合には、遊技者に有利な特別遊技状態が導出させられる。また、前記抽選結果に応じて、特別遊技状態終了後の遊技における遊技モードが、少なくとも通常モードと、それよりも価値の高い特別モードとの間で切換えられる。さらに、電源の供給が遮断された場合に、記憶維持手段により、少なくともそのときの遊技モードが記憶維持(バックアップ)される。その後、電源の供給が再開された場合には、復帰手段にて、前記記憶維持された遊技モードにて遊技が開始させられる。なお、少なくとも遊技モードに関する情報が視聴覚教示手段により視覚態様及び聴覚態様のうち少なくとも一方の態様で外部(例えば少なくとも遊技者等)に教示される。
・・・(中略)・・・
【0014】
尚、「視覚態様」とあるのは、「表示態様」の文言に置き換えることもできるが、例えば可変表示装置を用いた表示態様、ランプ等の発光手段を用いた発光態様、機械的な動作手段を用いた動作態様等、人間の視覚に訴えることで、その旨を把握可能な態様を指すものである。また、「聴覚態様」とあるのは、「音声態様」の文言に置き換えることもできるが、例えばスピーカを用いた音声出力態様等、人間の聴覚に訴えることで、その旨を把握可能な態様を指すものである。
【0015】
また、「・・異なる第3の態様」或いは「・・異なる第4の態様」の例としては、聴覚態様においては、音声出力手段を用いた、第1の態様、第2の態様よりも大音量の音声での教示、或いは第1の態様、第2の態様とは別の音色での教示等が考えられる。また、視覚態様においては、発光手段を用いた、第1の態様、第2の態様よりも高輝度、多数、多色、或いは、点滅頻度の多い教示、さらには、可変表示装置における、例えば識別情報の変動表示よりも目立つ表示、変動表示領域を浸食、圧縮した上での表示等が挙げられる。また、これらの組み合わせを用いてもよい。例えば、第1、第2の態様が音声演出のみからなるのに対し、第3、第4の態様が、ランプ演出と音声演出との組み合わせ、或いはランプ演出と音声演出と可変表示装置での演出の組み合わせといった具合である。さらに、第3の態様、第4の態様としては、第1、第2の態様と異なっていることが理解できればよいため、第1、第2の態様より地味な態様であってもよいのであるが、不誠実な営業形態の発見という趣旨からは目立つ態様の方がより望ましい(以下、各手段において同様)。
【0016】
さらに、「特別モード」としては、「通常モード」よりも特別遊技状態の導出確率(特別条件を満たす確率)の高められた「確率変動(確変)モード」、「通常モード」よりも前記所定の抽選の頻度(例えば単位時間あたりの可変表示装置における識別情報の変動表示の機会(回数))が高められた「時間短縮(時短)モード」等が挙げられる。
【0017】
併せて、第1の態様と第2の態様とが同一であってもよいし、異なっていてもよい。」

「【0024】
遊技機に可変表示装置が設けられている場合、遊技者、取締まり者等は、一般的には当該可変表示装置に着目しやすい。この点、手段4によれば、前記第1から第4の態様による教示が、少なくとも前記可変表示装置において行われるため、上記教示を視認しやすく、その旨をより短時間で理解しやすい。そのため、上記不誠実な行為をより確実に発見することができる。また、可変表示装置であれば、文字等のメッセージ等を直接表示することができるため、概してランプ等よりも、より多くの情報を表示できるというメリットもある。」

「【0059】
以下、パチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1はパチンコ機10の正面図であり、図2は、後述する外枠11と内枠12とに対して、前面枠セット14を開放し、下皿ユニット13を取り外した状態を示す斜視図である。但し、図2では便宜上、後述する遊技盤30面上の遊技領域内の構成を空白で示している。」

「【0068】
次に、遊技盤30の構成を、図4を用いて説明する。遊技盤30には、入球手段としての一般入賞口31、入球手段としての可変入賞装置32、入球手段としての第1契機対応口(始動口)33、入球手段としての第2契機対応口(スルーゲート)34、可変表示装置ユニット35等がルータ加工によって形成された貫通穴に配設され、遊技盤30前面側から木ネジ等により取付けられている。周知の通り前記一般入賞口31、可変入賞装置32、第1契機対応口33に遊技球が入球し、後述する検出スイッチの出力により、上皿19(または下皿15)へ所定数の賞球が払い出される。その他に、遊技盤30にはアウト口36が設けられており、各種入賞部(入賞装置、入賞口、第1契機対応口33等)に入球しなかった遊技球はこのアウト口36を通って図示しない球排出路の方へと案内されるようになっている。遊技盤30には、遊技球の落下方向を適宜分散、調整等するために多数の釘が植設されているとともに、風車27等の各種部材(役物)が配設されている。」

「【0072】
また、遊技盤30には、遊技球発射装置から発射された遊技球を遊技盤30上部へ案内するためのレールユニット50が取り付けられており、ハンドル18の回動操作に伴い発射された遊技球はレールユニット50を通じて所定の遊技領域に案内されるようになっている。レールユニット50はリング状をなす樹脂成形品にて構成されており、内外二重に一体形成された内レール構成部(内レール部)51と外レール構成部(外レール取付け部)52とを有する。内レール構成部51は上方の約1/4ほどを除いて略円環状に形成されている。また、一部(主に左側部)が内レール構成部51に向かい合うようにして外レール構成部52が形成されている。かかる場合、内レール構成部51と外レール構成部52とにより主として誘導レールが構成され、これら各レール構成部51,52が所定間隔を隔てて並行する部分(向かって左側の部分)により球案内通路が形成されている。なお、球案内通路は、遊技盤30との当接面を有した溝状、すなわち手前側を開放した溝状に形成されている。」

「【0077】
本実施形態では、遊技領域を、パチンコ機10の正面から見て、内レール構成部51及び外レール構成部52によって囲まれる領域のうち、内外レール構成部51,52の並行部分である誘導レールの領域を除いた領域としている。」

「【0095】
加えて、前面枠セット14にはその周囲(例えばコーナー部分)に各種ランプ等の発光手段が設けられている。これら発光手段は、大当たり時や所定のリーチ時等における遊技状態の変化に応じて点灯、点滅のように発光態様が変更制御され遊技中の演出効果を高める役割を果たすものである。例えば、窓部101の周縁には、LED等の発光手段を内蔵した環状電飾部102が左右対称に設けられ、該環状電飾部102の中央であってパチンコ機10の中央上部には、同じくLED等の発光手段を内蔵した中央電飾部103が設けられている。
【0096】
本パチンコ機10では、中央電飾部103が大当たりランプとして機能し、大当たり時に点灯や点滅を行うことにより、大当たり中であることを報知する。さらに、上皿19周りにも、同じくLED等の発光手段を内蔵した上皿電飾部104が設けられている。その他、中央電飾部103の左右側方には、賞球払出し中に点灯する賞球ランプ105と所定のエラー時に点灯するエラー表示ランプ106とが設けられている。また、環状電飾部102の下端部に隣接するようにして、内枠12表面や遊技盤30表面等の一部を視認できるよう透明樹脂が取り付けられた小窓107が設けられている。
【0097】
さらに、前記中央電飾部103の上方には、特別報知電飾部401が設けられている。本実施形態において、特別報知電飾部401は、視聴覚教示手段の1つを構成するものであって、大型の高輝度LEDを内蔵している。そして、後述する特別教示フラグFHKが「1」に設定されている場合に、特別報知電飾部401は点滅を行うようになっている。また、当該特別報知電飾部401は、前記中央電飾部103よりも、前方(遊技者に向かって)突出している。これにより、ホールにおいて、複数台のパチンコ機10が一列に並べられて「島」が構成された場合、「島」の端部側(の「島」から離れた位置)から一見してどのパチンコ機10の特別報知電飾部401が点滅しているかが一目瞭然となっている。すなわち、上述した中央電飾部103や、上皿電飾部104や、賞球ランプ105等の各種ランプは、いわば演出等(大当たり報知や、リーチ演出、モード報知演出等)の興趣の向上を図るためであって、当該パチンコ機10で遊技を行う遊技者(の興趣感)に対してのものであるのに対し、上記特別報知電飾部401は、当該パチンコ機10で遊技を行う遊技者(の興趣感)に対してのものではなく、主として、外部(例えば取締まり関係者等)に対してのものである。なお、特別報知電飾部401として、パトロールランプ等を採用することとしてもよい。」

「【0160】
RAM503は、パチンコ機10の電源のオフ後においても電源装置313からバックアップ電圧が供給されてデータが記憶維持(バックアップ)できる構成となっており、RAM503には、遊技モード(これについては後述する)をはじめとする各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリやエリアの他に、バックアップエリア503aが設けられている(記憶維持手段)。
【0161】
バックアップエリア503aは、停電などの発生により電源が切断された場合において、電源の再入時にパチンコ機10の状態を電源切断前の状態に復帰させるべく、電源切断時(停電発生時を含む。以下同様)のスタックポインタや、各レジスタ、I/O等の値を記憶しておくためのエリアである。バックアップエリア503aへの書き込みは、NMI割込み処理(図32参照)によって電源切断時に実行され、逆にバックアップエリア503aに書き込まれた各値の復帰は、電源入時(停電解消による電源入を含む。以下同様)の復電処理(図25参照)において実行される。なお、CPU501のNMI端子(ノンマスカブル割込端子)には、停電等の発生による電源断時に、後述する停電監視回路542から出力される停電信号SK1が入力されるように構成されており、停電の発生により、図32の停電処理(NMI割込み処理)が即座に実行される。」

「【0181】
本実施形態では、パチンコ機10の電源投入時においては、通常モードに設定される。また、その後は、大当たりが決定される際に、確変モード又は通常モードのいずれかが選択される。より詳しくは、本実施形態では、大当たりが決定されたときに選択決定される図柄(大当たり図柄)が奇数(「1」、「3」、「5」、「7」)の場合には、大当たり状態終了後の遊技モードとして確変モードが決定づけられ、大当たり図柄が偶数(「2」、「4」、「6」、「8」)の場合に、大当たり状態終了後の遊技モードとして、基本的には通常モードが決定づけられる。
【0182】
さらに、本実施形態では、確変モード(第1特別モード)、通常モードとは別の遊技モード(第2特別モード)として、時間短縮(時短)モードが用意されている。当該時短モードは、大当たり確率は、通常モードと同等であるが、通常モードに比べ、図柄が変動表示される機会が高められるモードである。より詳しく説明すると、確変モード時においては、(1)第2図柄表示装置41(普通図柄表示装置)において、その変動表示が所定図柄で停止する確率が高められ、第1契機対応口33が所定時間だけ作動状態となる(開放される)機会を増やすこと、(2)第2図柄表示装置41(普通図柄表示装置)における第2図柄の変動時間を短くすること、(3)第1契機対応口33の羽根の開放時間を長くすること(及び/又は入賞個数を多くすること)、(4)第1図柄表示装置42の図柄の変動時間を短くすること、(5)大当たり確率が通常モードに比べて高くなること等が挙げられ、本実施形態の確変モードにおいては、これら(1)?(5)のうち、全てが実行されるのに対し、時短モードにおいては、(5)を除く(1)?(4)が実行される(勿論、通常モードにおいては、これら(1)?(5)のいずれも実行されない)。本実施形態では、確変モード時に、大当たり図柄が偶数(「2」、「4」、「6」、「8」)の場合に、大当たり状態終了後の所定時間(所定回数(例えば100回)の変動表示が行われるまでの間)、遊技モードとして、時短モードが決定づけられ、その後強制的に通常モードが決定づけられるよう構成されている。
【0183】
なお、遊技モードが確変モードである場合には、第1図柄表示装置42の背景画像の色がピンク色に設定され(第2の態様に相当)、遊技モードが時短モードである場合には、第1図柄表示装置42の背景画像の色が緑色に(第2の態様に相当)、遊技モードが通常モードである場合には、第1図柄表示装置42の背景画像の色が白色に(第1の態様に相当)切り換えられるようになっている。」

「【0196】
その後、ステップS604では、第1契機対応口33への入賞に伴う始動入賞処理を実行する。この始動入賞処理を図31のフローチャートにより説明すると、ステップS701では、遊技球が第1契機対応口33(始動口)に入賞したか否かを第1契機対応口(始動口)スイッチ224の検出情報により判別する。遊技球が第1契機対応口33に入賞したと判別されると、続くステップS702では、第1図柄表示装置42の始動保留球数Nが上限値(本実施形態では4)未満であるか否かを判別する。第1契機対応口33への入賞があり、且つ始動保留球数N<4であることを条件にステップS703に進み、始動保留球数Nを1インクリメントする。
【0197】
また、続くステップS704では、第1図柄の当落に関わる乱数を取得する。具体的には、前記ステップS603で更新した大当たり乱数カウンタC1、大当たり図柄カウンタC2及びリーチ乱数カウンタC3の各値を、RAM503の保留球格納エリアの空き記憶エリアのうち最初のエリアに格納する。そして、始動入賞処理の後、CPU501は本タイマ割込処理を一旦終了する。」

「【0208】
ステップS114では、電源断前における遊技モードが確変モードであったか否かを判断する。当該ステップS114で否定判定された場合には、ステップS115において電源断前における遊技モードが時短モードであったか否かを判断する。そして、ステップS114又はステップS115で肯定判定された場合、つまり、電源断前が、確変モード又は時短モード(=特別モード)であった場合には、ステップS116において特別教示フラグFHKを「1」に設定し、電源断前の番地へ戻る。これに対し、ステップS114において否定判定され、かつ、ステップS115においても否定判定された場合、つまり、電源断前が、通常モードであった場合には、ステップS117において特別教示フラグFHKを「0」に設定し、電源断前の番地へ戻る。
【0209】
ここで、本実施形態における特別教示フラグFHKは、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401(ランプ)、スピーカを介して、通常時とは異なる特別な教示を行うか否かを決定づけるためのフラグである。当該フラグFHKが「0」の場合には特別な教示が行われず(第1の態様又は第2の態様をとることに相当し)、「1」の場合には、後述する特別な教示が行われる(第3の態様又は第4の態様をとることに相当する)ようになっている。」

「【0212】
また、本実施形態では、上述した特別教示フラグFHKを参照し、当該フラグFHKが「1」の場合には、特別な教示を行わしめるべく、表示制御装置45及び音声ランプ制御装置262に対し、特別教示実行コマンドを送信する。当該コマンドを入力した表示制御装置45は、かかるコマンドに基づいて、第1図柄表示装置42において特別な教示態様を決定し、該教示態様を第1図柄表示装置42において表示する。例えば、正常な状態においては、図22(a)に示すように、表示部の全域を図柄表示領域としている(第1又は第2の態様)のに対し、フラグFHKが「1」の場合には、図22(b)に示すように、図柄表示領域を圧縮し、表示部の上段において、目立つ態様で、「このホールは、モーニング設定をやっています」等のメッセージをテロップで流す(第3又は第4の態様)。また、このときの表示部の背景色を、正常時とは異なる色、例えば灰色とする(第3又は第4の態様)。そして、そのような表示態様を視認した遊技者や取締まりの担当者に、その旨(不誠実な営業が実施されている旨)を教示せしめる。
【0213】
同様に、当該コマンドを入力した音声ランプ制御装置262は、かかるコマンドに基づいて、スピーカやランプにおいて派手な音声態様、ランプ点滅態様等を決定し、該教示態様をスピーカやランプを介して教示する。例えば、正常な状態においては消灯状態(第1又は第2の態様)とされていた特別報知電飾部401に関し、フラグFHKが「1」の場合には、図22(c)に示すように、派手に点滅させ(第3又は第4の態様)、それを視認した遊技者や取締まりの担当者に、その旨を教示せしめる。また、例えば、正常な状態においてスピーカより出力されていたメロディ、楽曲や女性の声等の音声(第1又は第2の態様)とは異なる、かつ、大音量での男性の声や、爆発音等の音声(第3又は第4の態様)を出力し、それを視認した遊技者や取締まりの担当者に、その旨を教示せしめる。特に、本実施形態では、前記特別報知電飾部401での点滅により、パチンコ機10側方の「島」の端部側の比較的遠い位置から見ても、一見してどのパチンコ機10の特別報知電飾部401が点滅しているかを把握できる。」

「【0260】
これに対し、本実施形態では、電源の供給が再開(開始)されたとき、バックアップされた遊技モードが特別モードである場合には、通常時(正常時)とは異なる態様で、遊技者、取締まり担当者等に、その旨が第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカ等を介して教示されることとなる(ステップS114?116、ステップS201等)。
・・・(中略)・・・
【0263】
さらに、本実施形態では、一旦前記教示が開始された場合には、原則として遊技モードが通常モードへと切換えられるという所定条件が成立しない限り、前記教示が継続して実行される。つまり、特別モードのまま維持しようとした場合には、教示が中止されないため、不誠実な行為が発見されてしまう。そのため、上記不誠実な行為に関し、より確実な抑止を図ることができる。
【0264】
より具体的に説明すると、一旦前記教示が開始された場合には、RAM消去スイッチ323が押下された状態でパチンコ機10の電源が投入されるというクリヤ操作が行われるか、確変モード中にあっては、非特定図柄で大当たり状態を発生させ、その後、100回の変動表示を行って通常モードとするか、或いは時短モード中にあっては、その後、所定回数の変動表示を行って強制的に通常モードとするか、のいずれかが行われない限り、教示が継続させられる。このため、教示により、リセット手段によるリセットが促される格好となり、より効果的に不誠実な行為を抑止できる。
【0265】
さらに、上記不誠実な行為の教示に際し、本実施形態では、第1図柄表示装置42においてテロップで表示する構成を採用する一方で、図柄の変動表示については依然として行うこととしている。つまり、教示は行うものの、継続して遊技が実行可能となっている。
ここで、本実施形態では、特別モード中において停電等の不測の事態が発生して、その後復帰した場合においても、上記のような教示が行われることとなる。つまり、不誠実な営業を行っている訳でもないのに、上記教示が行われることが考えられる。しかし、このような場合であっても第1図柄表示装置42においては図柄の変動表示を行うこととしているので、遊技を継続して行うことができる。このとき、通常時とは異なる態様で教示が行われているものの、ホール関係者がきちんと遊技者に説明さえすれば特段の支障なく遊技を継続せしめることができる。その意味で、第1図柄表示装置42において教示を行いつつも、図柄表示領域を確保することとしていることは、停電復帰時等においてメリットが大きいといえる。
【0266】
併せて、本実施形態では、上記不誠実な行為の教示に際し、第1図柄表示装置42のみならず、特別報知電飾部401においても教示が行われる。当該特別報知電飾部401においては、普段は消灯されており、なおかつ、不誠実な行為の教示に際し、点滅が実行される。しかも、当該特別報知電飾部401は、本体(外枠11等)から、前方(遊技者側)に向かって突出している。その上、特別報知電飾部401は、本体(外枠11等)の「上部」特に「最上部」に配設されている。このため、当該特別報知電飾部401での点滅が行われた場合、パチンコ機10側方の「島」の端部側の比較的遠い位置から見ても、一見してどのパチンコ機10の特別報知電飾部401が点滅しているかを把握できる。そのため、極めて短時間でより多くのパチンコ機10に関し、不誠実な行為が行われたか否かを判断することができる。結果として、従来では事実上困難であった取締まりを容易に行うことができ、より一層の不誠実な行為の抑止を図ることができる。」

「【0268】
(a)上記実施形態では、特別モードとして、確変モードと時短モードとを用意することとしているが、いずれか一方のモードのみが設定されてなる遊技機に具体化することもできる。また、確変モード終了後に時短モードに移行するのではなく、各モードがそれぞれ独立して付与されるような構成であってもよい。例えば、特別モードとして確変モードのみが設定されてなる遊技機にあっては、特別図柄ではない図柄で大当たりする際に、通常モードへと切り換えられるため、教示を確実に終了させることができる。」

「【0281】
(i)また、上記教示は、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカを介して遊技者(取締まり関係者)側に行われる構成となっている。この場合において、ホールコンピュータ等に対し、当該情報(教示の旨)を外部信号として出力することが考えられる。このように構成した場合、例えば連続的に大当たり状態が発生した場合、それが不正行為に基づくものであるのか、確変モード中であることに基づくものであるのかを判断しなければならないところ、確変モード中の情報が得られれば、判断を容易に行うことができるという点でメリットが大きいからである。すなわち、上記点を鑑みると、本来、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報と、ホール側に教示される情報とは一致しているべきであるところではある。しかしながら一方で、上記対策を施すことに関してはホール側の不誠実な営業形態を取締まることも目的の1つとしていることを鑑みると、当該情報(教示の旨)を外部信号としてホールコンピュータ等に出力しない構成とするのが望ましい。」

これら記載事項および先願明細書等の他の記載を総合すると、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

「遊技盤30に取り付けられたレールユニット50の内レール構成部51及び外レール構成部52によって囲まれる領域のうち、内外レール構成部51,52の並行部分である誘導レールの領域を除いた領域に、遊技領域を形成し、
遊技盤30面上の遊技領域内に入球手段としての第1契機対応口33が配設され、遊技球が前記第1契機対応口33に入賞したか否かを第1契機対応口スイッチ224の検出情報により判別し、遊技球が前記第1契機対応口33に入賞したと判別されると、第1図柄表示装置42の始動保留球数Nが上限値未満であるか否かを判別し、前記第1契機対応口33への入賞があり、且つ始動保留球数N<上限値であることを条件に始動保留球数Nを1インクリメントし、第1図柄の当落に関わる乱数を取得することにより抽選を行い、その抽選結果において特別条件を満たす場合には、遊技者に有利な特別遊技状態を導出可能に構成するとともに、前記抽選結果に応じて前記特別遊技状態終了後の遊技における遊技モードを、少なくとも通常モードと、通常モードよりも特別遊技状態の導出確率(特別条件を満たす確率)の高められた確率変動(確変)モードで切換可能に構成するとともに、初期化時における遊技モードが通常モードとなるよう構成してなる遊技機であって、
電源の供給が遮断された場合に、少なくともそのときの遊技モードを記憶維持しておく記憶維持手段と、
電源の供給が再開された場合に、前記記憶維持された遊技モードにて遊技を開始させる復帰手段と、
少なくとも遊技モードに関する情報を視覚態様及び聴覚態様で教示可能な視聴覚教示手段と
を備え、
前記視聴覚教示手段には、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカが含まれ、
前面枠セット14には、大型の高輝度LED又はパトロールランプを内蔵した前記特別報知電飾部401が設けられ、
遊技モードが前記通常モードのとき、前記視聴覚教示手段が第1の態様をとり、
遊技モードが前記確率変動(確変)モードのとき、前記視聴覚教示手段が第2の態様をとるよう構成するとともに、
電源の供給が再開されたとき、前記記憶維持された遊技モードが確率変動(確変)モードである場合には、前記視聴覚教示手段が前記第1及び第2の態様とは異なる第3の態様をとるよう構成し、
少なくとも遊技モードに関する情報が視聴覚教示手段により視覚態様及び聴覚態様で外部(例えば少なくとも遊技者等)に教示され、
遊技モードが前記確率変動(確変)モードである場合には、第1図柄表示装置42の背景画像の色がピンク色に設定され(第2の態様に相当)、遊技モードが前記通常モードである場合には、第1図柄表示装置42の背景画像の色が白色に(第1の態様に相当)切り換えられ、
電源の供給が再開(開始)されたとき、バックアップされた遊技モードが前記確率変動(確変)モードである場合には、通常時(正常時)とは異なる第3の態様(この態様をとる教示は、特別な教示とされる)で、その旨が前記視聴覚教示手段を介して教示(特別な教示)され、前記視聴覚教示手段のうちの特別報知電飾部401では、正常な状態においては消灯状態(第1又は第2の態様)とされていたものが、特別な教示では、派手に点滅させる(第3の態様)ものであり、
一旦前記教示(特別な教示)が開始された場合には、原則として遊技モードが通常モードへと切換えられるという所定条件が成立しない限り、前記教示(特別な教示)が継続して実行され、
上記教示は、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカを介して遊技者(取締まり関係者)側に行われる構成となっており、この場合において、(a)ホールコンピュータに対し、当該情報(教示の旨)を外部信号として出力することが考えられ、このように構成した場合、例えば連続的に大当たり状態が発生した場合、それが不正行為に基づくものであるのか、確変モード中であることに基づくものであるのかを判断しなければならないところ、確変モード中の情報が得られれば、判断を容易に行うことができるという点でメリットが大きいからであり、すなわち、上記点を鑑みると、本来、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報と、ホール側に教示される情報とは一致しているべきであるところではあり、(b)しかしながら一方で、上記対策を施すことに関してはホール側の不誠実な営業形態を取締まることも目的の1つとしていることを鑑みると、当該情報(教示の旨)を外部信号としてホールコンピュータに出力しない構成とするのが望ましいものである、
遊技機。」


4.先願発明と本願発明との対比
先願発明と本願発明を対比すると、
先願発明の「遊技盤30に取り付けられたレールユニット50の内レール構成部51及び外レール構成部52によって囲まれる領域のうち、内外レール構成部51,52の並行部分である誘導レールの領域を除いた領域に、遊技領域を形成し」は、本願発明の「遊技盤に設けられたレールの内側に遊技領域を形成し」に実質的に相当する。

次に、先願発明の「第1契機対応口33」は本願発明の「始動手段」に相当し、以下同様に、
「配設され」は「設けられ」に、
「検出情報により判別」は「検出されること」に、
「判別されると」は「起因して」に、
「取得」は「抽出」に、
「第1図柄の当落に関わる乱数」は「抽出値」に、
「遊技者に有利な特別遊技状態」は「遊技者に有利な状態である特別遊技」に、
「電源の供給が遮断された場合に」は「電源が遮断される際に」に、
「少なくともそのときの遊技モードを記憶維持しておく記憶維持手段と、電源の供給が再開された場合に、前記記憶維持された遊技モードにて遊技を開始させる復帰手段」は「電源遮断直前の遊技状態を記憶し、電源復帰後に電源遮断直前の遊技状態から遊技が再開できるようにするためのバックアップ手段」に、
それぞれ相当する。

また、先願発明の「前面枠セット14には、大型の高輝度LED又はパトロールランプを内蔵した前記特別報知電飾部401が設けられ」と本願発明の「前記レールの外側の前記遊技盤上にランプを設け」とは、報知用のランプを備えた点で共通する。

さらに、先願発明について、先願明細書等の記載を参酌すると、次のことがいえる。

先願発明では、第1図柄の当落に関わる乱数を取得することにより抽選を行い、その抽選結果において特別条件を満たす場合には、遊技者に有利な特別遊技状態を導出可能に構成していることから、先願発明は、本願発明の「遊技者に有利な状態である特別遊技を実行するか否かを抽選する特別遊技抽選手段」に相当する構成を備えていることは明らかである。

先願発明では、確率変動(確変)モードは通常モードよりも特別遊技状態の導出確率(特別条件を満たす確率)の高められたモードであることから、通常モードは特別遊技状態の導出確率(特別条件を満たす確率)が通常の確率であるといえ、具体的な条件は明らかではないが何らかの条件で通常モードと確率変動(確変)モードとを切換可能であるため、
先願発明は、本願発明の「前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が通常確率である通常確率状態時に所定条件が成立した場合、前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が高確率である高確率状態に変更させる確率変更手段」に相当する構成を備えているといえる。

先願発明の「電源の供給が再開(開始)されたとき、バックアップされた遊技モードが前記確率変動(確変)モードである場合には、通常時(正常時)とは異なる第3の態様(この態様をとる教示は、特別な教示とされる)で、その旨が前記視聴覚教示手段を介して教示(特別な教示)され、前記視聴覚教示手段のうちの特別報知電飾部401では、正常な状態においては消灯状態(第1又は第2の態様)とされていたものが、特別な教示では、派手に点滅させる(第3の態様)ものであり」について、
第2の態様をとるときは、先願明細書等の段落【0204】【0206】【0208】【0268】及び図25の記載から、電源投入時にRAM消去スイッチがONとなってRAMの初期化処理が行われた後に確率変動(確変)モードとなったときか、電源断前に確率変動(確変)モードでなく、その後、確率変動(確変)モードになったときであることから、第2の態様をとるときは、通常モード時に何らかの条件が成立して確率変動(確変)モードとなったときであるといえ、
また、第3の態様をとることは、特別な教示とされ、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合の態様である。
したがって、先願発明は、本願発明の「通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合には、ランプにより特別な報知を行わず、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合には前記ランプにより特別な報知を行うようにし」に相当する構成を備えているといえる。
なお、本願発明において、特別な報知といっても、通常確率状態における報知態様や、通常確率状態時に所定条件が成立した場合の高確率状態における報知態様と比べて、異なる報知(報知態様)を行うことを含むというべきである。報知が特別であるか特別でないかは主観的な差でしかない。

先願発明の「一旦前記教示(特別な教示)が開始された場合には、原則として遊技モードが通常モードへと切換えられるという所定条件が成立しない限り、前記教示(特別な教示)が継続して実行され」ることは、当該特別な教示は、電源の供給が再開(開始)されたとき、バックアップされた遊技モードが前記確率変動(確変)モードである場合における教示のことであるから、先願発明の「ランプによる特別な報知を高確率状態が終了するまで継続するようにした」に相当する。

以上を総合すると、両発明は、
「遊技盤に設けられたレールの内側に遊技領域を形成し、
該遊技領域内に設けられた始動手段に遊技球が検出されることに起因して抽出される抽出値により、遊技者に有利な状態である特別遊技を実行するか否かを抽選する特別遊技抽選手段と、
前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が通常確率である通常確率状態時に所定条件が成立した場合、前記特別遊技を実行するか否かの抽選確率が高確率である高確率状態に変更させる確率変更手段と、
電源が遮断される際に電源遮断直前の遊技状態を記憶し、電源復帰後に電源遮断直前の遊技状態から遊技が再開できるようにするためのバックアップ手段と、
報知用のランプと、
を備える遊技機において、
通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合には、前記ランプにより特別な報知を行わず、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合には前記ランプにより特別な報知を行うようにし、
さらに、前記ランプによる特別な報知を高確率状態が終了するまで継続するようにした、
遊技機。」
である点で一致し、
以下の点で、一応相違する。

[相違点1]
本願発明1は、「遊技機からホールコンピュータに信号を出力するための外部接続端子」を備え、「通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合でも電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合でも前記外部接続端子からホールコンピュータに信号を出力するようにするが、通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合と電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合とで前記外部接続端子からホールコンピュータに出力される信号の態様を異ならせ」ているのに対して、
先願発明は、「上記教示は、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカを介して遊技者(取締まり関係者)側に行われる構成となっており、この場合において、(a)ホールコンピュータに対し、当該情報(教示の旨)を外部信号として出力することが考えられ、このように構成した場合、例えば連続的に大当たり状態が発生した場合、それが不正行為に基づくものであるのか、確変モード中であることに基づくものであるのかを判断しなければならないところ、確変モード中の情報が得られれば、判断を容易に行うことができるという点でメリットが大きいからであり、すなわち、上記点を鑑みると、本来、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報と、ホール側に教示される情報とは一致しているべきであるところではあり、(b)しかしながら一方で、上記対策を施すことに関してはホール側の不誠実な営業形態を取締まることも目的の1つとしていることを鑑みると、当該情報(教示の旨)を外部信号としてホールコンピュータに出力しない構成とするのが望ましいものである」とされる点。

[相違点2]
通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合に、ランプにより特別な報知を行わず、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合に特別な報知を行うときに使用するランプが、
本願発明は、レールの外側の遊技盤上に設けたランプであるのに対して、 先願発明は、前面枠14に設けられた特別報知電飾部401(大型の高輝度LEDまたはパトロールランプを内蔵)であり、設置位置が異なる点。

5.相違点の検討
そこで相違点について検討する。

(相違点1について)
(1)先願発明の「上記教示は、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカを介して遊技者(取締まり関係者)側に行われる構成となっており、この場合において、(a)ホールコンピュータに対し、当該情報(教示の旨)を外部信号として出力することが考えられ、このように構成した場合、例えば連続的に大当たり状態が発生した場合、それが不正行為に基づくものであるのか、確変モード中であることに基づくものであるのかを判断しなければならないところ、確変モード中の情報が得られれば、判断を容易に行うことができるという点でメリットが大きいからであり、すなわち、上記点を鑑みると、本来、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報と、ホール側に教示される情報とは一致しているべきであるところではあり、(b)しかしながら一方で、上記対策を施すことに関してはホール側の不誠実な営業形態を取締まることも目的の1つとしていることを鑑みると、当該情報(教示の旨)を外部信号としてホールコンピュータに出力しない構成とするのが望ましいものである」(先願明細書の段落【0281】の記載による)には、
情報(教示の旨)を外部信号としてホールコンピュータに出力する構成(例えば連続的に大当たり状態が発生した場合、それが不正行為[先願明細書の段落【0106】【0123】を参照]に基づくものであるのか否かをホール側が判断する観点による)と、出力しない構成(ホール側の不誠実な営業形態を取締まる観点による)との2つの選択肢(上記(a)及び(b))が開示されているものと認められる。

また、先願発明における「上記教示は、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401、スピーカを介して遊技者(取締まり関係者)側に行われる構成となっている。」でいう「教示」とは、
先願発明は「少なくとも遊技モードに関する情報が視聴覚教示手段により視覚態様及び聴覚態様で外部(例えば少なくとも遊技者等)に教示され」るものであり、また、先願明細書の段落【0024】の「・・・この点、手段4によれば、前記第1から第4の態様による教示が、・・・」、段落【0209】の「ここで、本実施形態における特別教示フラグFHKは、第1図柄表示装置42、特別報知電飾部401(ランプ)、スピーカを介して、通常時とは異なる特別な教示を行うか否かを決定づけるためのフラグである。当該フラグFHKが「0」の場合には特別な教示が行われず(第1の態様又は第2の態様をとることに相当し)、「1」の場合には、後述する特別な教示が行われる(第3の態様又は第4の態様をとることに相当する)ようになっている。」等の先願明細書等全体の記載からすると、
視聴覚教示手段で行われる第3の態様及び第4の態様に係る特別な教示だけでなく、視聴覚教示手段で行われる第1,2の態様に係る遊技モードの教示を含むものであると認められる。
ここで、第2の態様による教示、第3の態様による教示は、それぞれ、本願発明の「通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合」の報知、「電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合」の報知に相当する。

そうすると、先願発明は、第2の態様の教示の情報及び第3の態様の教示の情報を外部信号としてホールコンピュータに出力するものであると認められ、本願発明の「通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合でも電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合でも前記外部接続端子からホールコンピュータに信号を出力するようにする」ことに相当する構成を実質的に備えているといえる。

(2)先願発明では、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報である第2の態様と第3の態様とは、互いに異なるものであり、さらに、先願発明は、「上記点を鑑みると、本来、遊技者(取締まり関係者)側に教示される情報と、ホール側に教示される情報とは一致しているべきである」とされるから、先願発明では、ホールコンピュータに出力される信号について、第2の態様に対応する信号の態様と、第3の態様に対応する信号の態様とは、互いに異なるものであることは自明である。
また、先願発明は、ホールコンピュータに信号を出力させるために、遊技機からホールコンピュータに信号を出力するための外部接続端子を備えていることも自明である。
そうすると、先願発明は、本願発明の「遊技機からホールコンピュータに信号を出力するための外部接続端子」に相当する構成、及び「通常確率状態時に所定条件が成立して高確率状態になった場合と電源復帰後に前記バックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合とで前記外部接続端子からホールコンピュータに出力される信号の態様を異ならせ」ることに相当する構成を実質的に備えているといえる。

(3)以上のことから、先願発明は、本願発明の相違点1に係る構成を全て実質的に備えており、相違点1は両発明の相違点ではない。

(相違点2について)
レールの外側の遊技盤上に設けたランプを用いて、遊技状態を報知することは、本願出願前に周知の技術である。例えば、特開平5-305176号公報(確率変動中表示器L3。【0024】、【0052】、図3)、特開平9-271563号公報(レール飾りランプ25。【0011】、【0021】、図1)、特開平8-243228号候補(レールランプ43。【0016】、図3)を参照。
また、先願発明と同様に、前面枠の上方部に設けた枠ランプを用いて、遊技状態を報知することも、本願出願前に周知の技術である。例えば、特開平6-126030号公報(【0033】【0034】、図1,2。なお、この文献には、遊技状態報知ランプ84を、本願出願前に本願発明1と同様にレールの外側の遊技盤上に設ける態様と、前面枠の上方部の枠ランプとして設ける態様の両方がある旨が記載されている。)、特開平7-255916号公報(枠ランプ19。【0018】、図1)、特開平8-98931号公報(枠ランプ21a,21b。【0012】、図11)を参照。
これらを勘案すると、
先願発明において、特定の遊技状態について特別な報知を行うランプとして、
前面枠14のランプ(特別報知電飾部401)に換えて、レールの外側の遊技盤上に設けたランプとすること、あるいは、前面枠14のランプ(特別報知電飾部401)に加えて、レールの外側の遊技盤上に設けたランプを設けて、特別な報知を行うランプとすることは、
周知技術の単なる転換、あるいは、周知技術の単なる付加であって、
請求人が審判請求書等で主張する効果は、周知技術それ自体に備わっている自明な効果であるにとどまり、上記の転換または付加によって新たな効果(いわゆる相乗的な効果)を奏するものではない。

したがって、相違点2は、電源復帰後にバックアップ手段の記憶に基づき高確率状態になった場合に特別な報知を行うという、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎないので、両発明の実質的な相違点ではない。

(まとめ)
よって、本願発明は、先願発明と実質的に同一である。


6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、その出願の日前の他の特許出願であって、その出願後に出願公開された特願2004-228801号(特開2006-43159号)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、両発明の発明者が同一ではなく、また両出願の出願人がその出願の時において同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-12 
結審通知日 2013-06-13 
審決日 2013-06-25 
出願番号 特願2010-118872(P2010-118872)
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 長崎 洋一
吉村 尚
発明の名称 遊技機  

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