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審決分類 審判 一部無効 特174条1項  H01L
審判 一部無効 2項進歩性  H01L
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1277995
審判番号 無効2011-800124  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-13 
確定日 2013-07-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3503139号「発光装置と表示装置」の特許無効審判事件についてされた平成24年 5月 8日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において請求項1に係る発明に対する部分の審決取消しの決定(平成24年(行ケ)第10193号、平成24年 9月 4日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3503139号(以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は4である。)の請求項1に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。


第2 手続の経緯
1 出願の経緯
本件特許の出願の経緯は、以下のとおりである。

平成 9年 7月29日 国際特許出願(特願平10-508693号)
特願平8-198585号に基づく優先権主張
(平成8年7月29日(以下「本件第1優先日」という。))
特願平8-244339号に基づく優先権主張(平成8年9月17日)
特願平8-245381号に基づく優先権主張(平成8年9月18日)
特願平8-359004号に基づく優先権主張(平成8年12月27日)
特願平9-81010号に基づく優先権主張(平成9年3月31日)
平成13年10月11日 手続補正
平成14年 9月26日 手続補正
平成15年 8月 1日 補正の却下の決定、拒絶査定
平成15年 9月18日 拒絶査定不服審判請求
平成15年10月16日 手続補正
平成15年11月 7日 特許査定
平成15年12月19日 特許第3503139号として設定登録
平成16年 3月 2日 特許公報発行

2 本件審判の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成23年 7月13日 特許無効審判請求
平成23年10月 7日 訂正請求、答弁書
平成23年11月11日 審尋
平成23年11月29日 回答書
平成24年 1月26日 弁駁書
平成24年 4月10日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年 4月10日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年 4月24日 口頭審理
平成24年 5月 8日 審決
平成24年 5月17日 審決謄本送達
平成24年 6月 1日 審決取消訴訟出訴
平成24年 8月 6日 訂正審判請求(訂正2012-390103)
平成24年 9月 4日 審決取消決定(差戻)
平成24年 9月 7日 通知書(審理開始)
平成25年 1月18日 弁駁書


第3 訂正請求について
1 訂正請求の内容
被請求人が平成24年8月6日にし、本件特許無効審判の訂正請求とみなされる訂正審判請求(以下、上記訂正審判請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」という。)について、(訂正)審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを請求するものであって、以下の事項をその訂正内容とするものである(訂正による変更部分に下線を付した。)。

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置。」とあるのを、
『発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置。』と訂正する(下線は訂正箇所)。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2において、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「前記発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体の単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造からなるLEDチップであり、450?475nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。」とあるのを、
『発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、 a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、 c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、 前記発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体の単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造からなるLEDチップであり、450?475nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であることを特徴とする発光装置。』と訂正する(下線は訂正箇所)。

(3)訂正事項c
特許請求の範囲の請求項3において、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「前記セリウム付活ガーネット蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であって、互いに組成の異なる2以上を含む請求項1記載の発光装置。」とあるのを、
『発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、 b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、 c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、 前記セリウム付活ガーネット蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であって、互いに組成の異なる2以上を含む発光装置。』と訂正する(下線は訂正箇所)。

2 訂正の適否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは、訂正前の請求項1において、
ア 「フォトルミネセンス蛍光体」の発光可能な発光スペクトルにつき、
(ア)「510?600nm付近にピーク波長を有し」とあるものを『530?570nm付近にピーク波長を有し』と訂正し、
(イ)「700?750nmまで裾をひく」とあるものを『700nmまで裾をひく』と訂正し、
イ 「セリウム付活ガーネット系蛍光体」を、『Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体』と訂正する
ものである。
そして、上記ア(ア)の訂正は、「フォトルミネセンス蛍光体」の発光可能な発光スペクトルのピーク波長の範囲を、「510?600nm付近」から『530?570nm付近』へと減縮するものであり、また、上記ア(イ)の訂正は、同発光スペクトルの裾をひく範囲を、「700?750nmまで」から『700nmまで』へと減縮するものであり、さらに、上記イの訂正は、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」を、『Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体』へと減縮するものであるから、上記訂正事項aは、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項aは、本件特許明細書に、「一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。」(本件特許掲載公報(乙第12号証)8頁右欄45行?9頁左欄1行)と記載され、また、「実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は…励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、…700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。」(同公報7頁右欄29?34行)と記載され、さらに、「本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。」(同公報7頁左欄27?35行)と記載されていることから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかである。
また、上記訂正事項aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、上記訂正事項aによって請求項1の記載に変更が生じたところ、訂正前の請求項1に従属していた請求項2を、独立形式に書き改め、訂正前の請求項2に実質的な訂正を行わないことを明瞭に記載したものといえ、特許法第134条の2第1項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、上記訂正事項bは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、上記訂正事項aによって請求項1の記載に変更が生じたところ、訂正前の請求項1に従属していた請求項3を、独立形式に書き改め、訂正前の請求項3に実質的な訂正を行わないことを明瞭に記載したものといえ、特許法第134条の2第1項第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、上記訂正事項cは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであることは明らかであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)請求人の主張に対して
ア 上記訂正事項b及び訂正事項cについて、請求人は、平成25年1月18日付け審判事件弁駁書において、「複数の請求項に係る訂正請求は、複数の請求項に係る特許出願の手続と同様、その全体を一体不可分のものとして取り扱うべきであり」、「一部の請求項に係る訂正事項が訂正要件に適合しないのであれば、すべて認められないとすべきであ」って、「本件訂正後の請求項2、3に係る発明は、(審決注:○で囲まれた数字を、以下便宜上「○1」等と表記する。)○1新規事項の追加(特許法第17条の2第3項違反)、○2サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号違反)、○3新規性進歩性の欠如(特許法第29条第1項第3号・第2項違反)があることから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでな」く、「本件訂正は、平成23年改正前特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定(いわゆる独立特許要件)に適合せず、すべて認められない。」(3、4頁)と主張する。
イ しかしながら、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないのは、その訂正が、特許請求の範囲の減縮または誤記又は誤訳の訂正を目的とする場合であって(第126条)、「本件訂正後の請求項2、3に係る発明は、○1新規事項の追加…、○2サポート要件違反…、○3新規性進歩性の欠如…があることから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでな」いとの請求人の上記主張は、そもそも、その前提において失当である。

(5)まとめ
以上のとおり、上記訂正事項aないしcは、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮あるいは同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められ、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもないから、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

3 本件訂正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件訂正を認める。


第4 本件訂正発明
上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許第3503139号の請求項1ないし4に係る発明は、次の各請求項に記載したとおりのものと認められる。

「【請求項1】発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項2】発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくプロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、
前記発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体の単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造からなるLEDチップであり、450?475nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、
前記セリウム付活ガーネット蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸
収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であって、互いに組成の異なる2以上を含む発光装置。
【請求項4】組成の異なる2以上のセリウム付活ガーネット蛍光体がセリウム付活イットリウム・アルミニウムガーネット系蛍光体であって、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510nm?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるそれぞれイットリウムの一部がガドリウムに置換された第1の蛍光体と第2の蛍光体を含んでなり、該第1と第2の蛍光体のイットリウム・アルミニウムガーネット系蛍光体におけるガドリウムによる置換量がお互いに異なる請求項3記載の発光装置。」(以下、請求項1に係る発明を「本件訂正発明」という。)


第5 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 (特許無効)審判請求書
(1)特許無効の理由の要点
本件特許の請求項1に係る発明(本件発明)は、特許法第29条第2項の規定に該当し特許を受けることができないものであり(無効理由1及び2)、また、本件特許の請求項1に記載されている事項は、平成15年10月16日付手続補正書により新たに加えられた新規事項であるため、本特許出願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであり(無効理由3)、さらに、本件特許の請求項1に記載されている事項は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていない構成を含み、また、本件明細書の発明の詳細な説明において、当業者にとって実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない構成を含むものであるため、本特許出願は特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである(無効理由4及び5)から、同法第123条第1項第2号、同第1号及び同第4号の規定により無効とされるべきである(3?4頁)。

(2)本件発明の進歩性新規性の判断の基準日
本件発明について、最先の優先日を基礎づける平成8年7月29日付優先権主張出願の願書に添付された明細書(図面を含む)、特許請求の範囲(以下、「第1基礎出願明細書等」という)には、構成要件1C(前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって)及び1D(上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置)の一部が記載されていない(5頁)。
ア 第1基礎出願明細書等における構成要件1Cの一部不記載
本件発明の構成要件1Cは、次のように分説できる(5頁)。
「C-1 上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、
C-2 700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である
C-3 セリウム付活ガーネット系蛍光体」
(ア)構成要件C-3の全部不記載
第1基礎出願明細書等には、フォトルミネセンス蛍光体として、「RE_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Ce」及び「(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12)」という2種類の一般式が記載されているが、前者については、「REは、Y、Gd、Smから選択される少なくとも一種である」とされ、また、後者は、各構成元素の組成比のみが変更可能であるに過ぎない。要するに、第1基礎出願明細書等に記載されたフォトルミネセンス蛍光体の構成元素は、Y、Gd、Sm、Ceという4種の希土類元素、Al、Ga及びOに限定されているのであり、その他の構成元素の組み合わせからなるガーネット系蛍光体についての開示は一切ないばかりか、当業者にとって、第1基礎出願明細書等に明示的に記載された蛍光体以外の蛍光体を用いた場合に、第1基礎出願明細書等に記載された発明の作用・効果と同等のものを得られるか明らかであるとはいえない。したがって、第1基礎出願明細書等には、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成は、まったく記載されていない(5?6頁)。
(イ)構成要件C-1の一部不記載
構成要件C-1では、「上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、」と記載されているが、第1基礎出願明細書等には、フォトルミネセンス蛍光体の発光ピーク波長は530nmから570nmまで可変であること、及び530nmより短波長にシフトすることができることの記載があるに過ぎない(6?7頁)。
(ウ)構成要件C-2の全部不記載
フォトルミネセンス蛍光体のブロードな発光スペクトルについて、第1基礎出願明細書等には、700nmまで裾を引く発光スペクトルが開示されているに過ぎず、「700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である」について具体的な記載がない(8頁)。
イ 構成要件1Dの一部不記載
第1基礎出願明細書等には、構成要件1Dの「上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトル」のうち、510nm?530nmにピーク波長を有するフォトルミネセンス蛍光体に関する具体的な記載、及び570nm?600nm付近にピーク波長を有するフォトルミネセンス蛍光体に関する記載がない(9頁)。
ウ 小括
以上から明らかなとおり、本件発明は、第1基礎出願明細書等に記載された発明ではなく、本件発明の進歩性新規性の判断の基準日は、平成8年7月29日まで遡及することがなく、その基準日は、早くとも、特願平8-244339に基づく優先権主張日である平成8年9月17日(最先の優先日)となる(9頁)。

(3)特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如(無効理由1)
本件特許の請求項1にかかる発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第13号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(9頁)。
ア 平成8年9月13日付日経産業新聞記事(甲第1号証)に記載の発明
甲第1号証には、「被請求人である日亜化学工業株式会社が平成5年(1993年)に開発した青色LEDチップ上に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体の層が設けられた構造を有するものであって、上記蛍光体が上記青色LEDチップからの発光を色変換する作用を有し、上記蛍光体の発光する発光スペクトルと、上記青色LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルに白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置。」の発明(引用発明1)が記載されている(11?12頁)。
イ 引用発明1の青色LEDが「前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップ」(構成要件1B)であることについて
引用発明1の「日亜化学工業株式会社が平成5年(1993年)に開発した青色LEDチップ」が、発光層(活性層)にInGaN、クラッド層にAlGaNを配した構造(InGaN/AlGaNダブルへテロ構造)の発光波長が450nmの青色LEDを指していることは、甲第3号証及び甲第4号証から明らかである(12頁)。
ウ 引用発明1の蛍光体が発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体であることについて
引用発明1の「蛍光体が青色LEDチップからの発光を色変換する」ということは、「蛍光体が青色LEDチップから発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する」ということに換言できるから、引用発明1の蛍光体が発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体であることは明らかである(14?15頁)。
エ 引用発明1と本件発明との対比・相違点
引用発明1と本件発明の構成要件とを対比すると、両者の相違点は、
フォトルミネセンス蛍光体について、本件発明では、ガーネット系蛍光体がセリウム付活であるのに対し、引用発明1のYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体がセリウム付活であることが明示されていないこと(相違点○1)、及び、
本件発明では、蛍光体が510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるとされているのに、引用発明1では、かかる明示の記載がないこと(相違点○2)
であるといえる(15?17頁)。
オ 相違点○1及び○2の検討
相違点○1にかかる構成は、特公昭49-1221号公報(甲第5号証)に開示されているだけではなく、最先の優先日当時、周知技術であり(甲第6?10号証)、かつ、相違点○2に係る構成も、甲第5号証に開示されているだけではなく、最先の優先日当時、周知技術(甲第6、7、9、11、12号証)である(請求項17?37頁)。

(4)特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如(無効理由2)
本件特許の請求項1にかかる発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証乃至甲第13号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(37?38頁)。
ア 甲第2号証(特開平5-152609号公報)に記載された発明
甲第2号証に記載された発明(引用発明2)は、ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、又は蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオードである(39頁)。
イ 引用発明2の発光素子である窒化ガリウム系化合物半導体について
引用発明2の目的は、「発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有する発光ダイオードの視感度を良くし、またその輝度を向上させる」ことであるから、引用発明2の「窒化ガリウム系化合物半導体」が、発光ピークが430nm付近、及び370nm付近にあるLEDチップであることは明らかである。そして、その発光ピークが430nm付近、及び370nm付近にあるLEDチップが、青色発光又は紫外発光が可能であることも明らかである(40頁)。
ウ 引用発明2の蛍光染料又は蛍光顔料について
引用発明2の「発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料」は、「その発光素子の発光色を変換する目的」を有するのであるから、「該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体」であるということができる。
さらに、引用発明2の効果は、「蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる」のであるから、引用発明2は、フォトルミネセンス蛍光体の発光する発光スペクトル、及びフォトルミネセンス蛍光体に吸収されない窒化ガリウム系化合物半導体からの発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、合成スペクトルの発光が発光可能であることを特徴とする発光装置ということができる。特に、「例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」と記載されているように、発光素子の発光色と補色になる蛍光体を添加することで白色にすることについても開示されているということができる(40頁)。
エ 引用発明2と本件発明との対比・相違点
引用発明2と本件発明の構成要件とを対比すると、両者の相違点は、以下の点である(42頁)。
(ア)相違点2A:発光素子の発光層である窒化ガリウム系半導体について、本件発明の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体であるのに対し、引用発明2の発光層は、必ずしもInを含まないGa_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)とされている点。
(イ)相違点2B:フォトルミネセンス蛍光体について、本件発明は、510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であるのに対し、引用発明2は、かかる構成が明記されていない点。
オ 相違点2Aの検討
甲第4号証、及び甲第13号証によれば、最先の優先日当時、InGaNを発光層とする発光波長450nmの青色LEDという構成が周知技術であったことが明らかである(42頁)。
カ 相違点2Bの検討
本件発明の「フォトルミネセンス蛍光体」に関する相違点2Bに係る「510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成は、周知技術である(甲第5号証?甲第12号証)(45頁)。

(5)特許法第17条の2第3項の規定に反する不適法な補正(無効理由3)
本件特許の請求項1に記載されている事項は、平成15年10月16日付手続補正書により新たに加えられた新規事項であるため、本特許出願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである(46頁)。
ア 平成15年10月16日付手続補正書の記載
平成15年10月16日付手続補正書には、本件発明の構成要件C-3「b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって」と記載されている。上記の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」は、「RE_(3)A_(5)O_(12)」という一般式で表記される結晶に付活剤としてセリウムが添加された蛍光体を指し、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体のみでなく、極めて広範囲な蛍光材料を包含しており、例えば、近年実用化されたTAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光材料も、セリウム付活されれば、これに包含される(46頁)。
イ 平成15年10月16日付手続補正書が新規事項を追加するものであること
平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書(国際出願番号:PCT/JP97/02610)及び手続補正書には、フォトルミネセンス蛍光体について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」のみが記載されており、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成は記載されていなかった(46?47頁)。
平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書及び手続補正書の記載から、テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG)系蛍光材料等その他「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」に包含されない蛍光体が、当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない(52頁)。
よって、平成15年10月16日付手続補正書による補正により、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を「セリウム付活ガーネット系蛍光体」にした補正は、新規事項を追加するものに他ならない(52?53頁)。

(6)特許法第36条第6項第1号の規定違反に基づく記載不備(無効理由4)
当初明細書及び手続補正書には、発明の詳細な説明において、フォトルミネセンス蛍光体について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」のみが記載されており、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成は記載されていなかった。
よって、本件特許の請求項1は、本件明細書においてサポートされていない事項を含むものであるため、本特許出願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである(53?54頁)。

(7)特許法第36条第4項第1号の規定違反に基づく記載不備(無効理由5)
構成要件1Cについて、本件明細書において記載されたセリウム付活ガーネット系蛍光体以外のセリウム付活ガーネット系蛍光体について、「510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能」とすることが不明であり、当業者にとって実施可能とは認められないから、本件特許出願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
すなわち、本件発明の構成要件1Cについて、無数の存在しうるセリウム付活ガーネット系蛍光体について、どのようにすれば、「510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトル」となるのか不明であるため、当業者が実施できない(54?55頁)。

2 平成24年1月26日付け審判事件弁駁書
(1)無効理由1について
ア 本件発明における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成(構成要件C-3)が乙10(平成8年7月29日付優先権主張出願の願書に添付された明細書等)の記載事項の範囲内であるという被請求人の主張は、全く誤りである(3頁)。
イ 願書に添付された明細書等の記載から自明な事項といえるのは、現実に記載されたものに接した当業者であれば、誰もが、当該事項がそこに記載されていると同然であると理解するような事項のみである。本件発明の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」には、極めて広範囲の化合物が含まれるのみならず、その構成元素の種類・組合せの限界は必ずしも明瞭ではない。
しかるに、乙10には、構成元素が限定された2種の一般式で表される蛍光体のみの記載しかなく、その他の蛍光体について、明示的な記載は皆無である(3頁)。
本件発明における「セリウム付活ガーネット蛍光体」という構成が乙10に記載されていないことは明白であり、本件発明における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が乙10に記載されていると同然であると理解することはできない(4頁)。
ウ 仮に、被請求人が指摘するガーネット構造の蛍光体が熱、光及び水分に強い旨の記載(乙10【0021】)が、乙10に明示的な記載のない蛍光体に係る構成について何らかの示唆・開示を含むと解する余地があるとしても、本件発明における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が記載されていると同然であると理解することはできない。
すなわち、乙10には、フォトルミネセンス蛍光体について、熱、光及び水分に強いことのみならず、発光効率、発光色、温度特性、連続的な色調調節その他の種々の条件を満たすものとしてRE_(3)(Al、Ga)_(5)O_(12):Ce蛍光体が選択されたことが記載されている。
被請求人は、乙10の「本件発明で用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く」(【0021】)の記載を根拠に、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成が乙10の記載事項の範囲内であると主張しているが、かかる記載のみでは、上記の種々の条件を満たしているかどうかは当業者に不明である(4?5頁)。

(2)無効理由2について
ア 甲2【0003】に発光色の変換の一例として白色光が挙げられており、青色光と補色関係にある黄色発光が可能な蛍光体(例えばYAG系蛍光体)が実用化されていることは技術常識であるから、「白色光が発光可能である」に係る構成は、当業者が技術常識を参酌することにより甲2の記載事項から導き出すことができる(6?7頁)。
青色LEDと蛍光体の組合せにより青色光と蛍光を混合して白色光を得るという構成は、最先の優先日当時、甲2、甲15?甲17等により、周知慣用技術となっていた(9頁)。
イ 最先の優先日当時、InGaNを発光層とする青色LED自体が周知慣用技術となっていたのであるから、InGaNを発光層とする青色LED(甲4、甲13)を引用発明2に適用することは極めて容易である(9頁)。
ウ 甲5?甲12に開示された蛍光体(以下「YAGその他セリウム付活ガーネット系蛍光体」ということがある。)は、発光ダイオードとの関連性が強く、両者の間に作用・機能における共通性があり、技術分野の関連性が強い(15頁)。
したがって、YAGその他セリウム付活ガーネット系蛍光体は発光ダイオードと技術分野が異なり、発光ダイオードとの関係では周知技術ではないという被請求人の主張は明白な誤りである。
青色LEDと蛍光体の組合せにより白色光を得るという構成が周知技術である以上、青色LEDと蛍光体を組み合わせようとすること自体に動機付けが存在することは明らかである(16頁)。
エ 引用発明2は、主に430nmの発光波長の発光の高輝度化や種々の波長変換を目的とするから、単に白色発光を可能とするのみでなく、430nm付近の発光波長により効率よく励起され、高輝度であり、発光波長の調節が容易な蛍光体を用いることが適当である。
また、引用発明2は、青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲する構成を採るから、劣化が少なく光出力の高い蛍光体を選択することが適当である。そして、YAGその他セリウム付活ガーネット系蛍光体は、上記の条件を満たす(16?17頁)。

(3)無効理由3について
ア 平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書(乙11)には、「本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、…具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。」(17頁)との記載があり、構成元素を明確に限定している。それゆえ、「セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」との記載は、本件発明における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」を意味するわけではない(19?20頁)。
イ 被請求人が指摘するガーネット構造の蛍光体が熱、光及び水分に強い旨の記載(乙11、18?19頁)に基づいて、本件発明における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が記載されていると同然であると理解することはできない。
すなわち、乙11には、フォトルミネセンス蛍光体について、熱、光及び水分に強いことのみならず、発光効率その他の条件を満たすものとして、Y、Lu、Sc、La、Gd、又はSmと、Al、Ga、又はInを構成元素として含むセリウム付活ガーネット系蛍光体が選択されたことが記載されている。
そして、本件発明の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」に含まれる化合物は、極めて広範囲であるから、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成を採った場合、上記のような種々の条件を必ず満たすということは、乙11の出願当時に当業者に自明とはいえない(20?21頁)。

(4)無効理由4について
ア 被請求人が指摘する「セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」を用いた構成(実施の形態1)に係る記載(乙12、第13欄6?23行)に関し、発明の詳細な説明中に「本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、…具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。」(乙12、第13欄)との記載があり、構成元素を明確に限定している。
被請求人が指摘するガーネット構造の蛍光体が熱、光及び水分に強い旨の記載(乙11の第4欄、第14欄)に基づいて、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が発明の詳細な説明中に記載されているということはできない。
すなわち、フォトルミネセンス蛍光体については、熱、光及び水分に強いことのみならず、白色発光、発光効率その他の種々の課題を満たすことが必要である。しかるに、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」に含まれる蛍光体は広範囲であり、かつ構成元素の種類・組合せの限界が必ずしも明瞭でない。
それゆえ、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成により上記のような発明の課題を解決できることを当業者が認識できるとはいえない(22頁)。
イ 平成23年10月7日付訂正請求書により、「700?750nmまで裾を引くブロードな発光スペクトル」という構成が「700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトル」という構成に訂正されているが、上記訂正後の構成は、本件明細書においてサポートされていない事項を含んでいる。すなわち、訂正後の「700nmまで裾を引く」は、上限が700nm以上であるという意味ではなく、上限が丁度700nmであるという意味であると解される。
しかるに、発明の詳細な説明中には、発光スペクトルの上限が丁度700nmである蛍光体の記載は皆無である(23頁)。

(5)無効理由5について
平成23年10月7日付訂正請求書による訂正後の「700nmまで裾を引く」なる構成は、当業者が実施することが不可能である。
セリウム付活及びガーネット構造の蛍光体を用いる構成を採る限り、上限が丁度700nmである発光スペクトルを得ることはできない(24頁)。

3 口頭弁論陳述要領書
(1)特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如(無効理由1)について
ア 本件発明の進歩性新規性の判断の基準日について
「セリウム付活ガーネット系蛍光体」には極めて広範囲の化合物が含まれ、その構成元素の種類・組合せの限界も必ずしも明瞭でないにも拘わらず、乙10は、蛍光体の構成元素をごく少数に限定し、他の元素を含む蛍光体につき一切記載がないばかりか、積極的に排除しているとすらいえる。それゆえ、本件発明の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が乙10に記載されていないことは、明白である(2頁)。
イ 甲第1号証に基づく進歩性について
数値限定を狭めて「700nmまで裾をひく」なる構成を採ることは、サポート要件違反及び実施可能要件違反という無効理由を新たに生じるから、進歩性を肯定する理由たり得ない。
「700nmまで裾をひく」なる構成を採ることにより、何ら有利な効果を生じるものではなく、当業者にとっては、単なる設計事項のレベルでの違いが生じるだけだから、進歩性を肯定する理由にはならない(3頁)。
(2)特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如(無効理由2)について
甲2の発明との一致点・相違点に関し、訂正の前後で違いが生じるのは、審判請求書42頁に述べた相違点2Bのみであり、訂正後の相違点2Bは、「フォトルミネセンス蛍光体について、本件発明は、530?570nm付近にピーク波畏を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付きガーネット系蛍光体であるのに対し、引用発明2は、かかる構成が明記されていない点」となるが、ピーク波長及び長波長の上限について数値限定を狭めた構成を採ることは、進歩性を肯定する理由とはならない(4頁)。
また、甲18(特開平9-27642号公報)の段落【0007】には、「…従来例として、図5に示すような青色LEDl3を用いた照明装置が提案されている。この照明装置は、…青色LEDチップ13aを封止する樹脂14内に蛍光顔料15を混入させた点を特徴としている。蛍光顔料15は前記蛍光顔料11aと同様、青色発光の波長を白色発光の波長に変えるようになっている。」と記職されており、この従来例の構成とは、まさに甲2記載の発明そのものであり、本件特許の最先の優先日当時、当業者が甲2を白色光のLEDであると認識していたことを示すものである(4?5頁)。
(3)特許法第17条の2第3項の規定に反する不適法な補正(無効理由3)について
本件発明の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成が乙11(平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書)に記載されていないことは明白である(5頁)。
(4)特許法第36条第6項第1号の規定違反に基づく記載不備(無効理由4)について
発明の詳細な脱明は、蛍光体の構成元素をごく少数に限定している。それゆえ、「セリウム付活ガーネット系蛍光体」という構成により本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるような記載がないことは、発明の詳細な説明の記載上明白である(6頁)。

4 平成25年1月18日付け審判事件弁駁書
本件訂正後の請求項2、3に係る発明は、○1新規事項の追加(特許法第17条の2第3項違反)、○2サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号違反)、○3新規性進歩性の欠如(特許法第29条第1項第3号・第2項違反)があることから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。
したがって、本件訂正は、平成23年改正前特許法第134条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定(いわゆる独立特許要件)に適合せず、すべて認められない(2、3頁)。
(1)訂正請求は、一体不可分の一個の訂正事項として許否を判断すべきこと
特許法は、一つの特許出願に対し、一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ、これに基づいて一つの特許が付与され、一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており、請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき、複数の請求項に係る特許出願であっても、特許出願の分割をしない限り、当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく、一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし、他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。…
そして、訂正審判の審決が確定したときは訂正後の明細書等により特許出願されたものとみなす旨を定める特許法第128条や訂正審判を請求するときは、請求書に訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を添付すべき旨定める特許法第131条第3項は、訂正請求に準用されるから…、訂正請求は、一種の新規出願としての実質を有するといえる。
それゆえ、複数の請求項に係る訂正請求は、複数の請求項に係る特許出願の手続と同様、その全体を一体不可分のものとして取り扱うべきである(3、4頁)。
(2)本件訂正発明2、3は、新規事項を含んでおり、独立特許要件に適合しないこと(訂正否認の理由1)
審判請求書46頁?53頁、平成24年1月26日付弁駁書19頁?21頁に述べたように、本件手続補正書以前の当初明細書(乙11)及び手続補正書には、構成元素が限定された蛍光体(「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びlnからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」。以下、かかる蛍光体を「特定の蛍光体」ということがある。)のみが記載されており、その他の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」についての記載がないから、フォトルミネセンス蛍光体を「セリウム付活ガーネット系蛍光体」に補正することは、新規事項の追加となる(6、7頁)。
(3)本件訂正発明2、3は、サポート要件を満たさず、独立特許要件に適合しないこと(訂正否認の理由2)
本件手続補正書以前の当初明細書及び手続補正書には、フォトルミネセンス蛍光体について、特定の蛍光体のみが記載されている。そのため、本件明細書の発明の詳細な説明においても、フォトルミネセンス蛍光体について、特定の蛍光体のみが記載されており、その他の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」についての記載はない。それゆえ、本件訂正発明2、3の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」なる構成は、本件明細書においてサポートされていない構成を含むものといえる。
なお、本件訂正後の請求項1は、フォトルミネセンス蛍光体について、「Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体」と開放形式の記載としており、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等その他本件明細書に記載されていない元素を含み得るから、…サポート要件違反を免れない(7?9頁)。
(4)本件訂正発明2、3は、新規性又は進歩性が欠如しており、独立特許要件に適合しないこと(訂正否認の理由3)
新規性進歩性の判断の基準日が現実の出願日であること
平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書及び手続補正書には、フォトルミネセンス蛍光体について、特定の蛍光体のみが記載されており、その他の「セリウム付活ガーネット系蛍光体」については記載がない。…本件発明の各優先日(平成8年7月29日、平成8年9月17日、平成8年9月18日、平成8年12月27日、平成9年3月31mを其礎づける、価先権主張出願の願書に添付された明細書(図面を含む)、特許請求の範囲においては、…特定の蛍光体のみが記載されており、それ以外のフォトルミネセンス蛍光体は記載されておらず、特定の蛍光体以外のフォトルミネセンス蛍光体を用いた場合に同等の作用・効果が得られるか明らかではない(9、10頁)。
したがって、本件訂正発明2、3の新規性進歩性の判断の基準日は、いずれの優先権基礎出願日にも遡及せず…、本件特許の現実の出願日である平成9年7月29日となる(11頁)。
イ 本件訂正発明2に新規性進歩性がないこと
甲第20号証(第264回蛍光体同学会講演予稿「白色LEDの開発と応用」)には本件訂正発明2の構成要件がすべて開示されており、甲第20号証に記載された発明と本件訂正発明2との間に相違点はない(19頁)。
なお、本件特許出願当時、発光素子の発光層がlnを含む窒化ガリウム系半導体において、単一量子井戸構造及び多重量子井戸構造は、周知慣用技術であり、当業者は、かかる周知慣用技術を適用することで、本件訂正発明2を容易に想到することができた(21頁)。
ウ 本件訂正発明3に新規性進歩性がないこと
甲第20号証には本件訂正発明3の構成要件がすべて開示されており、甲第20号証に記載された発明と本件訂正発明3との間に相違点はない。
なお、仮に、甲第20号証に「互いに組成の異なる2以上を含む」(構成要件3E’)の開示がないと解する何らかの余地があるとしても、組成の異なる複数の蛍光体を組み合わせることは、当業者が容易に想到することができた(22頁)。

5 甲号証
請求人が平成23年7月13日にした審判請求に際して提出した甲号証は、以下のとおりである。

甲第1号証:平成8年9月13日付け「日経産業新聞」記事
甲第2号証:特開平5-152609号公報
甲第3号証:平成5年11月30日付け「日経産業新聞」記事
甲第4号証:「日経エレクトロニクス」No.602(1994年2月28日)93?102頁
甲第5号証:特公昭49-1221号公報
甲第6号証:「APPLIED PHYSICS LETTERS」Vol.11,No.2(1967年7月15日)53?55頁
甲第7号証:「JOURNAL of the OPTICAL SOCIETY of AMERICA」Vol.59,No.1(1969年1月)60?63頁
甲第8号証:特開昭50-43913号公報
甲第9号証:「JOURNAL of the Illuminating Engineering Society」Vol.6,No.2(1977年1月)89?91頁
甲第10号証:蛍光体同学会編「蛍光体ハンドブック」オーム社(昭和62年12月25日)237頁
甲第11号証:「三菱電機技報」Vol.48,No.9(1974年9月)1121?1124頁
甲第12号証:「Philips Journal of Research」Vol.36,No.1(1981年)15?30頁
甲第13号証:「電子雑誌エレクトロニクス」1994年6月号、34?37頁

また、請求人は、平成24年1月26日提出の弁駁書に添付して、以下の甲号証を提出した。

甲第14号証:被請求人のウェブサイトを印刷したもの(プレスリリース「白色LED特許網の構築について」)
甲第15号証:特開平7-176794号公報
甲第16号証:特開平8-7614号公報
甲第17号証:「電子技術」1996年 Vol.38、No.7、55?59頁

また、請求人は、平成24年4月10日提出の口頭審理陳述要領書に添付して、以下の甲号証を提出した。

甲第18号証:特開平9-27642号公報
甲第19号証:「電子技術」1996年 Vol.38、No.6、104頁

また、請求人は、平成25年1月18日提出の審判事件弁駁書に添付して、以下の甲号証を提出した。

甲第20号証:第264回蛍光体同学会講演予稿「白色LEDの開発と応用」(5?15頁)
甲第21号証:特開平8-228025号公報
甲第22号証:「蛍光体ハンドブック」(昭和62年12月25日)236?239頁、248?249頁


第6 被請求人の反論の概要及び証拠方法
請求人が主張する上記5つの無効理由に対して、被請求人は、以下のように反論している。
1 答弁書
(1)無効理由1(進歩性欠如1)に対する反論
ア 本件発明の進歩性新規性の判断の基準日
平成23年10月7日付訂正請求書により、請求項1に記載された、
(C-1)上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、
(C-2)700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である
(C-3)セリウム付活ガーネット系蛍光体
は、以下の通り訂正された。
(C-1’)上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、
(C-2’)700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である
(C-3’)セリウム付活ガーネット系蛍光体(13頁)
(ア)(C-1’)及び(C-2’)は、第1基礎出願明細書に記載されている
第1基礎出願の明細書(乙第10号証、段落0024)には、フォトルミネセンス蛍光体の発光ピーク波長が530nmから570nmまで可変であることが開示されている(13頁)。
また、第1基礎出願の明細書(乙第10号証、段落0021)には、フォトルミネセンス蛍光体のブロードな発光スペクトルについて、700nmまで裾を引くことが開示されている(14頁)。
(イ)(C-3’)は、第1基礎出願明細書に記載されている
「ガーネット構造」とは、結晶構造が「A_(3)B_(5)O_(12)」という一般式で表される結晶構造をもった蛍光体を指すが、A元素の位置やB元素の位置を占めることが可能であるのは、一定の元素に限定されている(15頁)。
そして、本件の第1基礎出願明細書(段落0009、0020及び0021)には、LEDチップの周辺に配置された蛍光体が強い光、熱、水分にさらされて劣化することが課題であるところ、本件発明のフォトルミネセンス蛍光体が、組成中に含まれるA元素、B元素の種類ではなく、「ガーネット構造」という特定の結晶構造を持つことによって、LEDチップと組み合わせても十分な耐光性を有する発光ダイオードとできることが明確に記載されている(16?17頁)。
したがって、第1基礎出願明細書の記載に基づけば、本件発明の課題を「セリウム付活ガーネット系蛍光体」によって解決できることが当業者に自明であり、構成(C-3’)も第1基礎出願明細書に記載した事項の範囲内である(17頁)。
(ウ)小括
以上の通り、本件発明の各構成要件は、第1基礎出願明細書に記載された事項か、記載された事項から自明な範囲内であり、本件発明の新規性進歩性の基準日は、第1基礎出願の出願日である平成8年7月29日である(18頁)。
イ 本件発明の新規性進歩性の基準日に甲第1号証は公知ではないため、無効理由1は成り立たない(18頁)。

(2)無効理由2(進歩性欠如2)に対する反論
ア 本件発明1と甲第2号証発明との相違点
(ア)本件発明1と甲第2号証発明とでは、請求人が認定する2つの相違点(相違点2A、2B)のみならず、
「本件発明1は、『上記蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である』であるのに対し、甲第2号証発明では、青色発光素子の色補正ないし波長変換をする発光ダイオードとされており、蛍光体の発光スペクトルとLEDチップからの発光スペクトルの混合により、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能とはされていない点」(以下、「相違点2C」とする。)
との重要な相違点がある。したがって、請求人の主張は、一致点・相違点の認定からして誤っているから、請求人による進歩性欠如の主張には理由がない(27頁)。
(イ)請求人が指摘する甲第2号証の『例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる』との記載にしても、「緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加する」というものであって、赤色と緑色を混ぜれば白色になることは記載しているものの、これは単に2種類の色を混ぜれば色が変わるというに過ぎない。当該記載は、請求人が認定する甲第2号証発明のように「青色発光素子と蛍光染料・蛍光顔料」に関する記載でない(28頁)。
相違点の判断について
(ア)請求人の主張は、相違点の認定においてすでに誤りである。
請求人は「相違点2C」の存在を見逃している。甲第2号証には、「上記蛍光体の発光する・・発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない・・発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である」発光装置は開示も示唆もされていないのであるから、甲第2号証発明の「蛍光体」として「セリウム付活ガーネット系蛍光体」を選択して組み合わせる動機付けはない(29?30頁)。
(イ)甲第2号証発明には本件発明とは相違点が3つもあるうえに、本件発明の基本的な技術思想の開示さえない。
本件では、「論理づけに最も適した」引例であるはずの甲第2号証の発明とでさえ、本件発明の4つの構成要件中、3つもの構成要件が相違している。
相違点2B(蛍光体の組成の点)についての証拠は、本件とはまったく技術分野の異なる技術を五月雨式に提出しているだけのことであるし、相違点2C(連続した合成スペクトルの白色光を発光可能)についてはまったく関連する証拠は提出されていない(33頁)。
(ウ)相違点相互の関係を考慮した進歩性の検討が求められる。
進歩性の判断を行う際には、相違点を個別に認定することまではよいとしても、各相違点の容易推考性を検討する際には、それぞれをばらばらに検討するのではなく、各相違点の関係を考慮した判断が求められる。これを本件についていえば、本件では、少なくとも、相違点2A?2Cにかかる構成が一体となって照明にも使用できる白色光を発光可能な発光装置、すなわち、白色光源として使用しうる高演色、高効率、かつ耐久性に優れた白色LEDを実現しているのであるから、これらの構成を一体とした相違点の検討が必要となる。本件における相違点同士の関係についてみれば、これらの相違点は、相違点2C、すなわち、「上記蛍光体の発光する・・発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない・・発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である」発光装置において、適切な白色系発光を得るために必要な要素として、相違点2A(発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体)、及び、相違点2B(フォトルミネセンス蛍光体は、所定のスペクトルを有するセリウム付活ガーネット系蛍光体)が求められるという関係にある。したがって、これらの相違点を検討する際には、このような意味における相違点2Aや2Bにかかる構成が公知(請求人によれな周知)であるか否かが問われなければならないところ、このような構成は公知でもないし、まして、周知でもないから、なんの動機付けもなく、甲第2号証発明にこれらの構成を組み合わせることはできない(34頁)。
(エ)本件発明と相違点2A?2Cに関係する各引用例記載の発明
a 相違点2Aに関する証拠について
甲第4号証には、相違点2Cにおいて、適切な白色光を得るために必要な要素として発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体(相違点2A)が求められることについての開示も示唆もない。
甲第13号証は、相違点2Cとの関係における相違点2Aは開示も示唆もしていない(36頁)。
b 相違点2Bについての証拠
本件発明の技術分野は「発光ダイオード」である。しかるところ、請求人が提出している各証拠は、いずれもこれとまったく無関係な技術分野における文献であって、およそ、本件の技術分野において、「一般的に知られている技術」でもなく、「これに関し、相当多数の公知文献が存在し、又は業界に知れわたり、あるいは、例示する必要がない程よく知られている技術」でないことは明らかである(37頁)。

(3)無効理由3(新規事項追加)に対する反論
ア 本件の当初明細書(乙第11号証:WO98/05078(本件の出願当初明細書の基づく国際公開公報))には、以下の示す通り、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」に関して、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体発光素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、「セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」を組み合わせることによって白色系の発光が可能となると共に、色ずれや発光輝度の低下の少ない白色系が発光できることが記載されている(41?42頁)。
「実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。
また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における光エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。」(乙第11号証:第16頁下から8行?第17頁6行)
イ また、当初明細書には、以下の通り、発光素子の周辺に配置された蛍光体が強い光、熱、水分にさらされて劣化することが課題であるところ、本件発明のフォトルミネセンス蛍光体が、組成中に含まれる元素の種類ではなく、「ガーネット構造」という特定の結晶構造を持つことによって、発光素子と組み合わせても十分な耐光性を有する発光ダイオードとできることが記載されている(42頁)。
「しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。・・特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。
また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。
さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。」(乙第11号証、第3頁1行?下から3行)
「また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3Aに示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3Bに示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。」(乙第11号証、第18頁下から3行?第19頁2行)
ウ したがって、本件の当初明細書には、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」を用いることによって本件発明の課題が解決できることが記載されているから、平成15年10月16日付手続き補正書により請求項1に記載した「セリウム付活ガーネット系蛍光体」は新規事項ではない(43?44頁)。

(4)無効理由4(サポート要件違反)に対する反論
本件の当初明細書(乙第11号証)の発明の詳細な説明欄には、個別の構成元素に限定されない「セリウム付活ガーネット系蛍光体」に関して、青色系の発光可能な窒化ガリウム系化合物半導体発光素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、「セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」を組み合わせることによって白色系の発光が可能になると共に、色ずれや発光輝度の低下の少ない白色光が発光できると記載されている。また、本件発明において、発光素子の周辺に配置された蛍光体の強い光、熱、水分にさらされて劣化することが課題であるところ、本件発明のフォトルミネセンス蛍光体が、組成中に含まれる元素の種類ではなく、「ガーネット構造」という特定の結晶構造を持つことによって、発光素子と組み合わせても十分な耐光性を有する発光ダイオードとできることも記載されている(44頁)。

(5)無効理由5(実施可能要件違反)に対する反論
ア 平成23年10月7日付訂正請求により、「510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能」との構成要件は、『530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能』と訂正された(45頁)。
イ 本件明細書における「セリウム付活ガーネット系蛍光体」とは、セリウムを付活剤としたガーネット構造を持つ蛍光体であり、セリウムが付活剤であって、蛍光体の母材が「A_(3)B_(5)O_(12)」という一般式で表される結晶構造を持った蛍光体を指す。自然的な制約により、A元素の位置は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd等の希土類元素が占め、B元素の位置は、Al、Ga等の元素が占める。付活剤であるセリウムも、A元素の位置を占める(45?46頁)。
ウ 本件発明におけるセリウム付活ガーネット系蛍光体は、700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルの形は、セリウムという付活剤の種類と、ガーネット構造という結晶構造でほぼ決まっており、ガーネット構造における金属元素A、Bの種類によって発光ピークのシフトが起きるに過ぎない。このことは本件明細書にも示されており、セリウム付活ガーネット系蛍光体の発光スペクトルの例が多数示されているが、いずれも700nm付近まで裾を引くブロードな発光スペクトルを持ち、A元素、B元素の種類によって発光ピークが凡そ500?600nmの間で変化している(46頁)。
エ また、このような発光ピーク波長のシフトをA元素やB元素の選択によって制御できることは、本件明細書にも明記されている(47頁)。
オ 本件明細書の記載に基づいて、本件明細書に記載されていないA元素、B元素についても、発光ピークが短波長に移動するか、長波長に移動するかの傾向を確認した上で、適宜組成比を変えて530nm?570nmに発光ピーク波長がくるように制御する程度のことは当業者にとって容易であり、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験等を行わなければ実施できないものではない(48頁)。
カ したがって、本件明細書には、本件明細書に具体例が記載されたセリウム付活ガーネット系蛍光体以外のセリウム付活ガーネット系蛍光体について、「530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能」とする発明を当業者が実施可能な程度に記載されている(48頁)。

2 回答書
(1)本件の第1基礎出願明細書の段落0021には、「本願発明で用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く」と記載されている(3頁)。
(2)第1基礎出願明細書において、熱、光及び水分への耐久性は、蛍光体がガーネットであるという事実によって担保されることが教示されている(4頁)。
(3)ガーネット構造をとる、セリウム付活ガーネット系蛍光体であれば、熱、光及び水分に強いないしは強いであろうと、当業者が当然に理解できる(5頁)。

3 口頭審理陳述要領書
通知書の第7「被請求人に対して」において示された合議体の判断に対しては、平成23年11月29日付け回答書において既に反論を尽くしている(3頁)。

4 (訂正)審判請求書
フォトルミネセンス蛍光体を、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体に限定する訂正を行った。Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体は、国際出願日における明細書に記載されている…。なお、これらの元素を含むセリウム付活ガーネット系蛍光体は、第1基礎出願明細書等にも記載されている。
したがって、かかる訂正により、本件特許出願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものとなり、また、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとなった(14頁)。

5 乙号証
被請求人は、平成23年10月7日提出の審判事件答弁書に添付して、以下の乙号証を提出した。

乙第1号証:「改訂版物理学辞典」培風館(1992年10月30日)362?365頁
乙第2号証:F.S.ガラッソー著「図解ファインセラミックスの結晶化学」アグネ技術センター(1987年8月31日)277?278頁
乙第3号証:「TREATISE ON MATERIALS SCIENCE AND TECHNOLOGY」Vol.2(1973年)279-291頁、抄訳
乙第4号証:足立吟也外2名共編「新無機材料科学」化学同人(1990年9月10日)29?40頁、121?127頁
乙第5号証:佐佐木行美外4名著「新教養無機化学」朝倉書店(1986年10月20日)144-146頁
乙第6号証:J.D.Lee著「無機化学」東京化学同人(1982年4月15日)306?309頁、316?321頁、411?423頁
乙第7号証:加納剛外1名編「レア・アース」技報堂出版(1980年4月30日)172?177頁
乙第8号証:足立吟也監修「希土類物語」産業図書(平成3年4月15日)38?41頁
乙第9号証:荒川剛外4名共著「無機材料化学」三共出版(1994年4月25日)72?77頁
乙第10号証:本件特許の第1の優先権主張出願である特願平8-198585号の願書および願書に添付された明細書、図面および要約書
乙第11号証:WO98/05078(本件の出願当初明細書に基づく国際公開公報)
乙第12号証:特許3503139号公報(本件特許公報)
乙第13号証:宮原諄二著「『白い光』のイノベーション」朝日新聞社(2005年12月25日)204?205頁、234?239頁
乙第14号証の1:佐久間健著「サイアロン系蛍光体と発光素子への応用」1?25頁、126?141頁
乙第14号証の2:東京大学学術機関リポジトリー 検索結果(http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/15750)
乙第15号証:第20回櫻井健二郎氏記念賞受賞者紹介記事(2004年12月9日掲載)(http://www.oitda.or.jp/main/sakurai/sakurai04-j.html)
乙第16号証:「電気設備学会誌」Vol.22,No.1 オーム社(平成14年1月10日)26?29頁
乙第17号証:稲葉文男外7名編「レーザーハンドブック」朝倉書店(昭和48年2月20日)639?647頁
乙第18号証:中山信弘外1名編「新・注解特許法【上巻】」青林書院(2011年4月26日)672?675頁
乙第19号証:甲第12号証の追加部分訳
乙第20号証:甲第7号証の追加部分訳

また、請求人は、平成23年11月29日提出の回答書に添付して、以下の乙号証を提出した。

乙第21号証:応用物理学会編「応用物理用語大事典」オーム社(平成10年4月30日)198?199頁


第7 無効理由についての当審の判断
1 無効理由1(特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如)について
(1)本件訂正発明の進歩性新規性の判断の基準日について
ア 請求人は、本件発明について、「最先の優先日を基礎づける平成8年7月29日付優先権主張出願の願書に添付された明細書(図面を含む)、特許請求の範囲…には、構成要件1C…及び1Dの一部が記載されていない」、すなわち、具体的には、「第1基礎出願明細書等に記載されたフォトルミネセンス蛍光体の構成元素は、Y、Gd、Sm、Ceという4種の希土類元素、Al、Ga及びOに限定されているのであり、その他の構成元素の組み合わせからなるガーネット系蛍光体についての開示は一切な」く、「第1基礎出願明細書等には、フォトルミネセンス蛍光体の発光ピーク波長は530nmから570nmまで可変であること、及び530nmより短波長にシフトすることができることの記載があるに過ぎ」ず、「第1基礎出願明細書等には、700nmまで裾を引く発光スペクトルが開示されているに過ぎず」、また、「第1基礎出願明細書等には、構成要件1Dの『上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトル』のうち、510nm?530nmにピーク波長を有するフォトルミネセンス蛍光体に関する具体的な記載、及び570nm?600nm付近にピーク波長を有するフォトルミネセンス蛍光体に関する記載がない」から、「本件発明の進歩性新規性の判断の基準日は、平成8年7月29日まで遡及することがなく、その基準日は、早くとも、特願平8-244339に基づく優先権主張日である平成8年9月17日…となる」(審判請求書5?9頁、上記第5の1(2))と主張する。
イ そこで、この点につき検討するに、上記第3のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明に関する本件訂正は認められるものであり、本件特許の請求項1に係る本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」は、上記第4のとおり、「上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であ」るから、本件訂正発明は、特願平8-198585号(第1基礎出願、本件第1優先日(平成8年7月29日)出願)の明細書に記載されていたと認められるものである。
したがって、請求人が主張するように、「本件発明の進歩性新規性の判断の基準日は、平成8年7月29日まで遡及することがなく、その基準日は、早くとも、特願平8-244339に基づく優先権主張日である平成8年9月17日…となる」ということはできない。
ウ 小括
よって、本件訂正発明の進歩性新規性の判断の基準日は、平成8年7月29日(本件第1優先日)である。

(2)甲第1号証に記載された発明に基づく進歩性(特許法第29条第2項)
ア 請求人は、本件(訂正)発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第13号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(審判請求書9頁、上記第5の1(3))。
イ しかしながら、上記(1)ウのとおり、本件訂正発明の進歩性新規性の判断の基準日は、平成8年7月29日(本件第1優先日)であると認められるところ、甲第1号証は、平成8年9月13日、すなわち、本件第1優先日以降に頒布された刊行物であって、本件第1優先日以前に頒布されたものではなく、特許法第29条第1項第3号でいう「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」には当たらない。
ウ よって、本件訂正発明が、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第13号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 無効理由2(特許法第29条第2項の規定に反する進歩性欠如)について
請求人は、本件訂正発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証乃至甲第13号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので(審判請求書37?38頁、上記第5の1(4))、以下この点につき検討する。
(1)甲号証の記載事項
ア 本件第1優先日前に頒布された刊行物と認められる甲第2号証(特開平5-152609号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。」
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本考案は発光素子を樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオード(以下LEDという)に係り、特に一種類の発光素子で多種類の発光ができ、さらに高輝度な波長変換発光ダイオードに関する。」
(ウ)「【0002】
【従来の技術】一般に、LEDは図1に示すような構造を有している。1は1mm角以下に切断された例えばGaAlAs、GaP等よりなる発光素子、2はメタルステム、3はメタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。…
【0003】通常、樹脂モールド4は、発光素子の発光を空気中に効率よく放出する目的で、屈折率が高く、かつ透明度の高い樹脂が選択されるが、他に、その発光素子の発光色を変換する目的で、あるいは色を補正する目的で、その樹脂モールド4の中に着色剤として無機顔料、または有機顔料が混入される場合がある。例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」
(エ)「【0006】本発明はこのような事情を鑑みなされたもので、その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにある。」
(オ)「【0008】図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。発光素子11の裏面はサファイアの絶縁基板であり裏面から電極を取り出せないため、GaAlN層のn電極をメタルステム2と電気的に接続するため、GaAlN層をエッチングしてn型層の表面を露出させてオーミック電極を付け、金線によって電気的に接続する手法が取られている。また他の電極は図1と同様にメタルポスト3から伸ばした金線によりp型層の表面でワイヤボンドされている。さらに樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。」
(カ)「【0009】
【発明の効果】…前記したように窒化ガリウム系化合物半導体はLEDに使用される半導体材料中で最も短波長側にその発光ピークを有するものであり、しかも紫外域にも発光ピークを有している。そのためそれを発光素子の材料として使用した場合、その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料、蛍光顔料を添加することにより、最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。さらに、短波長の光を長波長に変え、エネルギー効率がよい為、添加する蛍光染料、蛍光顔料が微量で済み、輝度の低下の点からも非常に好都合である。」
(キ)上記(オ)に照らして図2をみると、図2に示された発光ダイオード(LED)は、以下のa及びbの構成を備えることがみてとれる。
a メタルステム2上部に形成された凹部に、青色発光素子11が配置されていること
b メタルステム2上部、青色発光素子11、メタルポスト3上部、前記メタルステム2と前記青色発光素子11とを電気的に接続する金線及び前記メタルポスト3と前記青色発光素子11とを電気的に接続する金線が、樹脂モールド4によってモールドされていること
イ 同じく、甲第3号証(平成5年11月30日付け「日経産業新聞」記事)には、以下の記載がある。
(ア)「日亜化学、窒化ガリウム使う」(右上見出し)
(イ)「【徳島】蛍光体の製造で国内最大手の日亜化学工業(徳島県阿南市、小川英治社長)は明るさ千ミリカンデラの青色発光ダイオード(LED)を開発し、九四年一月から量産に乗り出す。」(前文)
(ウ)「日亜化学の開発した青色LEDは電流二十ミリアンペア、電圧三・六ボルトで、光度千ミリカンデラ、発光する波長は四百五十ナノ(一ナノは十億分の一)メートルで純度の高い青色をしている。素材には窒化ガリウムを使った。同ガリウムは青色を発し、かつ電圧に対する発光効率が高いという。」(本文)
ウ 同じく、甲第4号証(「日経エレクトロニクス」No.602(1994年2月28日)93?102頁)には、以下の記載がある。
(ア)「日亜化学工業が光度1cdのGaN青色発光ダイオードを開発した。発光波長は450nm,光出力は1.2mW,寿命は数万時間である。」(93頁)
(イ)「今回われわれは,GaN系の材料を使って青色発光ダイオードで1cdの明るさを実現した。…すでに1994年1月から量産に入っている。」(94頁)
(ウ)「開発したInGaN/AlGaNダブルへテロ構造高輝度青色発光ダイオードの構造を図8に示す。まずサファイア基板上にGaNバッファ層を+550℃で成長させ,その上に約+1000℃でn型GaN,n型AlGaN,ZnドープInGaN,p型AlGaN,p型GaNを順次成長させる。…開発した発光ダイオードのピーク波長は450nmで,半値幅は70nmである(図9)。」(99頁)
エ 同じく、甲第5号証(特公昭49-1221号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「本発明は投射デイスプレイ装置に関し、主として非コヒーレントは(審決注:「非コヒーレントな」の誤りと認める。)照射による黒白像を作る装置に関する。
可視或は紫外領域でのレーザ・ビームの走査及び、可視領域に発光する光ルミネツセンス・スクリーンを用いる投射法によつて単色デイスプレイが作られる。燐光の結合によつて白色或は所望の色を出すことができる。」(1頁右欄2?9行)
(イ)「レーザ・デイスプレイ装置によつて、斑点形成を排除した黒白画像が得られる。本発明の装置はスクリーンからの発光光よりいくらか短い波長での可視領域で発光するレーザによりエネルギーを付与されたセリウム活性化ガーネツトの燐光体スクリーンを用いることによる。一つの構成にはセリウムを含有するイツトリウム・アルミニウム・ガーネツトを用いる。肉眼には、この燐光性物質からの発光は帯黄色である特性であり、レーザ発光の一部を故意に反射させることによつてより白色に近いように修正される。
構成分に関する観点から、本発明の一具体例は、4880Åに発光するように配置されたアルゴン・イオン・レーザによつてエネルギー付与されたセリウム・ドープのイツトリウムアルミニウム・ガーネツト(YAG)で被膜されたスクリーンを用いる。
セリウム-活性化燐光物質は約5500Åに中心を持つ広い波長領域にわたつて発光する。
変更例は、4416Åに発光できるカドミウム-イオンレーザのような他のレーザ源を、燐光物質の組成分の変更と同じように包含する。そのようなすべての組成物はセリウム活性化されて、ガーネツト構造(即ちY_(3)Al_(5)O_(12)の構造)のホストを利用する。これは適当な色と輝度の再発光を与えると知られている結合であるからである。燐光物質の吸収ピークは特殊なエネルギー付与源によりよく順応するように移動させることができる。そしてこの目的の為に、アルミニウムの一部をガリウムで置換して吸収波長をより短い方へ移動させる。或るいはイツトリウムの全部又は一部をガドリウムで置換しより長い波長へ吸収ピークを移動させる。吸収ピークの移動は同方向での相当する発光変化を起こし、レーザ・ビームの一部の反射による色修正(例えば、白色像を作るため)が容易に続けられる。」(1頁右欄30行?2頁左欄28行)
(ウ)「本発明の他の配置構成では、燐発光組成物の範囲は少なくとも一部が有機物であるものを利用する。本発明装置は1以上の波長の、そのうち少なくとも一つは可視或は紫外スペクトル内で、燐発光の主要部分の波長よりいくらか短かい波長で発光するレーザ・エネルギの利用に依存している。
利用するに適する有機燐光物質の多くの種類により、エネルギ付与しレーザの性質に関する制限はほとんどない。適当なレーザは4880Åで発光するアルゴン・イオン及び4416Åで発光するカドミウム・イオン・レーザを包含する。有用な単色デイスプレイの為の適当な励起波長領域は約2500?5500Åである。
この広い範囲の特定波長は燐光特性に従つて選択される。」(2頁左欄29?43行)
(エ)「第1図について説明すると、示されたデータはセリウム・ドープYAGによる発光及び励起スペクトルである。
発光スペクトルは破線により、約0.55ミクロンの波長に最大値を有する広いピークを持つ。黒線で示す励起スペクトルは多種のポンプ周波数に示される発光強度の測定である。最大の励起ピークは約0.46ミクロンのポンプ波長に一致している。」(2頁右欄28?36行)
(オ)「多くの燐光体を用いるにもかかわらず、色度図から、本当の白色光を得るに要する条件は、照射レーザ・ビームは約4950Åより短い波長を有することである…。」(3頁右欄24?27行)
(カ)「Ce^(3+)の発光は一般的に近紫外領域である。しかし、多分YAGのようなガーネツト中の大きな結晶場分裂により、発光が可視に変化されうることが知られている。第1図に示されるように、YAG:Ce^(3+)の発光は約0.55ミクロン(帯黄白色)にピークのある非常に広いバンドを有する。約0.46ミクロンに中心を持つ格子のピーク吸収及びこの吸収スペクトルはアルゴン(0.488μ)或は、カドミウム(0.4416μ)レーザの両方に適している。」(4頁左欄30?39行)
(キ)「セリウム-ドープ・ガーネツト中の励起スペクトルは上記のレーザに適応するように、或は他のレーザ源をより効率よく利用するように変動しえる。この目的の為、原型組成Y_(3)Al_(5)O_(12)はアルミニウムに対して一部又は全部ガリウムに置換し、及び/又はイツトリウムに対してガドリニウムで置換することにより変更しえる。
前者は励起ピークを短い波長に移動する効果があり、後者は逆の効果がある。このような方法で励起スペクトルのピークは、約0.33ミクロンから約0.48ミクロンの範囲内で、任意に変化できる…。
励起スペクトルの変動は約0.51?約0.61ミクロンの範囲にある発光範囲内の発光スペクトルに変動を与える。白色又は近白色像を得るための好適な設計具体例には、発光ピークは約0.52ミクロン…以下の波長にすべきではない。この好適な具体例と同じ観点から燐光体は約0.58μ以上の波長の励起ピークを得るように変更されるべきでない」(4頁右欄4?26行)
オ 同じく、甲第6号証(「APPLIED PHYSICS LETTERS」Vol.11,No.2(1967年7月15日)53?55頁)には、以下の記載がある(かっこ書きで和訳を付した。以下同じ。)。
(ア)「In this Letter we report on a Ce^(3+)-activated phosphor with an emission at considerably longer wavelengths, viz. Y_(3)Al_(5)O_(12)-Ce.」(53頁左欄4?6行)
(本稿では、発光波長がかなり長いCe^(3+)付活の蛍光体、すなわちY_(3)Al_(5)O_(12)-Ceについて報告する。)
(イ)「…Y_(3)Al_(5)O_(12)-Ce is most efficiently excited by 460nm radiation.」(54頁右欄16?17行)
(Y_(3)Al_(5)O_(12)-Ceは、460nmの放射光によって最も効率的に励起される。)
カ 同じく、甲第7号証(「JOURNAL of the OPTICAL SOCIETY of AMERICA」Vol.59,No.1(1969年1月)60?63頁)には、以下の記載がある。
(ア)「The optical properties of cerium-activated garnet crystals have been investigated. In the garnet crystals showing luminescence, a bright-yellow fluorescence has been observed.」(60頁前文)
(セリウムにより付活されたガーネット結晶の光学特性が調査されてきた。発光を示すガーネット結晶においては、明るい黄色の蛍光が観察されてきた。)
(イ)「In this paper, we report additional measurements of fluorescence spectra of the cerium ion in garnet materials.」(60頁右欄2?4行)
(本稿では、ガーネット材料におけるセリウムイオンの蛍光スペクトルのさらなる測定について報告する。)
(ウ)「Comparison of the room-temperature fluorescence of the cerium ion flux-grown crystals of Y_(3)Al_(5)O_(12)(???),Y_(3)Al_(4)Sc_(1)O_(12)(---),Y_(3)Al_(3.5)Ga_(1.5)O_(12)(?‐?),Y_(3)Al_(4)Ga_(1)O_(12)(?・?・?), and Y_(3)Al_(2.5)Ga_(2.5)O_(12)(?・・・?・・・?).」(61頁左欄図4の説明)
(融剤法で成長させたY_(3)Al_(5)O_(12)(???)、Y_(3)Al_(4)Sc_(1)O_(12)(---)、Y_(3)Al_(3.5)Ga_(1.5)O_(12)(?‐?)、Y_(3)Al_(4)Ga_(1)O_(12)(?・?・?)、及びY_(3)Al_(2.5)Ga_(2.5)O_(12)(?・・・?・・・?)の各結晶内部におけるセリウムイオンの室温蛍光の比較)
(エ)「Comparison of the room-temperature fluorescence of the cerium ion flux-grown crystals of Gd_(2)Y_(1)Al_(5)O_(12)(???),La_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(---),Y_(3)Al_(5)O_(12)(?・?・?),Lu_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?‐?‐?), and Lu_(3)Al_(5)O_(12)(?・・・?・・・?).」(61頁右欄図6の説明)
(融剤法で成長させたGd_(2)Y_(1)Al_(5)O_(12)(???)、La_(1.5)Al_(4)O_(12)(---)、Y_(3)Al_(5)O_(12)(?‐?)、Lu_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?・?・?)、及びLu_(3)Al_(5)O_(12)(?・・・?・・・?)の各結晶内部におけるセリウムイオンの室温蛍光の比較)
(オ)「The fluorescence profiles of several garnet-host materials containing cerium are shown in Fig.4 through 8.」(62頁左欄3?5行)
(セリウムを含むいくつかのガーネットホスト材料の蛍光プロファイルが図4から図8に示されている。)
(カ)「Comparison of the room-temperature fluorescence of the cerium ion flux-grown crystals of La_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?‐?),Gd_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?・?・?),Gd_(1.5)Y_(1.5)Al_(4)Ga_(1)O_(12)(???), and La_(1.5)Y_(1.5)Al_(2.5)Ga_(2.5)O_(12)(?・・?).」(62頁右欄図8の説明)
(融剤法で成長させたLa_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?‐?)、Gd_(1.5)Y_(1.5)Al_(5)O_(12)(?・?・?)、Gd_(1.5)Y_(1.5)Al_(4)Ga_(1)O_(12)(???)、及びLa_(1.5)Y_(1.5)Al_(2.5)Ga_(2.5)O_(12)(?・・?)の各結晶内部におけるセリウムイオンの室温蛍光の比較)
キ 同じく、甲第8号証(特開昭50-43913号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「本発明はすぐれた演色性を有するストロボ装置に関する。」(1頁左下欄10?11行)
(イ)「本発明は、従来有害光として排除することに主眼を置かれてきたクセノンガス放電管の紫外発光または可視青色発光の一部をけい体の励起に利用し、けい光体による吸収と発光の両方の効果でクセノンガス放電管の発光の色補正を行うものである。
具体的には、300?400nmの近紫外光、あるいは400?500nmの青色光によって効率よく黄?赤色の発光が励起されるけい光体(例えば、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce,YVO_(4):Euなど)を選んで、クセノンの放電光がよく当たる位置に配置すればよい。」(1頁右下欄最下行?2頁左上欄10行)
(ウ)「青色光励起用けい光体としてはY_(3)Al_(5)O_(12):Ce,Y_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Ceなどが適している。」(2頁右上欄1?2行)
(エ)「Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceけい光体は丁度450?500nm附近の波長領域に強い励起バンドを持ちそれに対し560?580nmをピークとする発光バンドを示し、キセノン放電光の色補正には最も適している。」(2頁左下欄1?5行)
ク 同じく、甲第9号証(「JOURNAL of the Illuminating Engineering Society」Vol.6,No.2(1977年1月)89?91頁)には、以下の記載がある。
(ア)「We have found another phosphor, cerium-activated yttrium aluminate garnet(YAG:Ce) which is useful in improving color rendition by absorbing the blue Hg radiation and also adds to the total emission of the lamp by converting this blue radiation into emission centered at 560 nanometers.」(89頁右欄3?8行)
(我々は、他の蛍光体として、セリウム付活イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)を見いだした。これは、青色のHg放射光を吸収することにより演色性の改善に有効であり、この青色放射光を560nmに中心を有する発光に変換することによってランプ全体の発光も増加する。)
(イ)「The color shift is due largely to the absorption of the 436 nanometer Hg line, …. This is due to the efficient conversion of the 436 Hg line into visible emission.」(89頁右欄最下行?90頁左欄6行)
(色シフトは、436nmのHg線の吸収に起因するところが大きく、…。これは436nmのHg線を効率良く可視光に変換することによる。)
ケ 同じく、甲第10号証(蛍光体同学会編「蛍光体ハンドブック」オーム社(昭和62年12月25日)237頁)には、以下の記載がある。
「(f)Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce^(3+)(YAG:Ce^(3+))
(1)発光特性 発光スペクトルを図3・2・66に示す.発光ピークは室温で約540nmにあるが,高温では長波長側へ移動する.…436nmの可視水銀ラインによって強く励起される。」
コ 同じく、甲第11号証(「三菱電機技報」Vol.48,No.9(1974年9月)1121?1124頁)には、以下の記載がある。
(ア)「ここで述べるPYGけい光体はY_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12);Ceであらわされ…。」(1121頁左欄下から8?7行)
(イ)「Y_(3)Al_(5)O_(12);Ce中のAlをGaで置換するとその量に応じて発光ピーク波長が540nmから500nm付近へ連続的に変化する。」(1121頁右欄7?8行)
(ウ)「また刺激スペクトルも二つのピークがあり約450nmにある長波長側のものについては…。」(1121頁右欄15?17行)
(エ)「PYGけい光体の発光スペクトルは図5.に示すように比較的広い波長域にわたっている上に同用途の他種けい光体にくらべて光出力もきわめて高い。」(1122頁右欄13?15行)
(オ)「PYGけい光体は非常に劣化の少ないことが大きな特長の一つでもある。」(1123頁左欄30?31行)
サ 同じく、甲第12号証(「Philips Journal of Research」Vol.36,No.1(1981年)15?31頁)には、以下の記載がある。
(ア)「Starting with Ce-doped Y_(3)Al_(5)O_(12) grown by liquid-phase epitaxy, the colour of the cerium emission was shifted by making various substitutions in the garnet lattice.」(15頁Abstract)
(液相エピタキシ-で成長されたCeドープされたY_(3)Al_(5)O_(12)から出発して、ガーネット格子に様々な置換を行うことにより、セリウム発光をシフトさせた。)
(イ)「The emission spectrum of sample 8 (doped with the highest quantity of Lu and Ga)is compared with that of Ce^(3+) in pure YAG in fig.1.」(17頁最下行?18頁2行)
(図1において、(最も多量にLuとGaをドープさせた)サンプル8の発光スペクトルと純粋なYAG中のCe^(3+)のそれとが比較されている。)
(ウ)「In fig.10 the Ce^(3+) emission is shown in YAG, YAG+Gd and in Gd_(3)Al_(5)O_(12).」(27頁4行)
(図10に、YAG、YAG+Gd及びGd_(3)Al_(5)O_(12)中におけるCe^(3+)の発光が示されている。)
シ 同じく、甲第13号証(「電子雑誌エレクトロニクス」1994年6月号、34?37頁)には、以下の記載がある。
(ア)「…この高品質のInGaN膜を使用してダブルへテロ構造の発光ダイオードの成長が試みられ、1993年に初めてInGaN/GaNダブルへテロ構造発光ダイオードができた。…発光ピーク波長は450nmである。」(35頁右欄下から2行?36頁左欄7行)
(イ)「1cd青色LEDを製品化できたが、信号機への応用を考えると、波長が少し短いため長波長にする必要がでてきた。この目的のために開発されたのが、ピーク波長500nmの青緑色LEDで、光度は2cdである。
構造は第2図と同一であるが、ただ活性層のInGaN層のIn組成比を増加して、ピーク波長を450nmから500nmにしている。」(36頁右欄13?19行)
ス 同じく、甲第14号証(被請求人のウェブサイトを印刷したもの(プレスリリース「白色LED特許網の構築について」)には、日亜化学工業株式会社が取得した、窒化ガリウム系半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせた白色LED等に関する様々な特許権の例として、特許第2900928号、特許第3724490号、特許第3724498号等があることが記載されている。
セ 同じく、甲第15号証(特開平7-176794号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0004】また白色発光、あるいはモノクロの光源として、一部では青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みもあるが、チップ周辺は太陽光よりも強い放射強度の光線にさらされるため、蛍光物質の劣化が問題となり、特に有機蛍光顔料で顕著である。」
(イ)「【0010】まず図2の矢印で示すように、青色LED1から出た光は、チップ近傍で一部導光板以外の外部に放射されるが、大部分の光は導光板2の中を全反射を繰り返しながら、導光板の端面に達する。端面に達した光は端面全てに形成された反射膜4に反射されて、全反射を繰り返す。この時、導光板2の第二の主面側に設けられた蛍光散乱層3により一部の光は散乱され、また一部の光は蛍光物質により吸収され同時に波長変換されて放射され、導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できる。例えば橙色の蛍光顔料と白色顔料からなる蛍光散乱層3を設けた面状光源では、先に述べた作用により、青色LEDからの発光色が白色となって観測できる。また色調は蛍光物質の種類と白色顔料の混合比により任意に調整できる。」
(ウ)「【0013】前記導光板2の端面に二箇所、穴を設け、その穴に発光波長480nm。発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LEDをそれぞれ1個づつ埋め込むことにより、本発明の面状光源を得た。この面状光源の青色LEDを同時に点灯させたところ、導光板2の発光観測面側からはやや黄色みを帯びた白色のほぼ均一な面状発光が得られた。」
ソ 同じく、甲第16号証(特開平8-7614号公報)には、以下の記載がある。
(ア)「【0004】また白色発光、あるいはモノクロの光源として、一部では青色LEDチップの周囲を蛍光物質を含む樹脂で包囲して色変換する試みもあるが、チップ周辺は太陽光よりも強い放射強度の光線にさらされるため、蛍光物質の劣化が問題となり、特に有機蛍光顔料で顕著である。」
(イ)「【0010】まず図2の矢印で示すように、青色LED1から出た光は、チップ近傍で一部導光板2以外の外部に放射されるが、大部分の光は導光板2の中を全反射を繰り返しながら、導光板2の端面に達する。端面に達した光は端面全てに形成された反射膜4に反射されて、全反射を繰り返す。この時、導光板2の第二の主面側に設けられた散乱層3により光は散乱され、散乱された光の一部は蛍光層5により吸収され同時に波長変換されて放射され、導光板2の第一の主面側から観測する発光色はこれらの光を合成した光が観測できる。例えば橙色の蛍光顔料からなる蛍光層5を設けた面状光源では、先に述べた作用により、青色LED1からの発光色が白色となって観測できる。」
(ウ)「【0017】前記導光板2の端面に六箇所、穴を設け、その穴に発光波長480nm、発光出力1200μWを有する窒化ガリウム系化合物半導体よりなる青色LED1をそれぞれ1個づつ埋め込んだ。続いて、発光観測面側には上記のように蛍光層5が形成されたフィルム6を、散乱層3側にはAlベース8上にチタン酸バリウム層7が塗布された反射板を設置して、バックライト用光源としたところ、第一の主面側から完全に面状均一な白色発光が得られた。」
タ 同じく、甲第17号証(「電子技術」1996年 Vol.38、No.7、55?59頁)には、以下の記載がある。
「高輝度白色バックライトの開発
1993年に日亜化学工業から画期的な高輝度の青色LEDが発表された。このLEDは波長450nmの純青色で、従来の青色LEDよりも100倍も明るい、1000mcd/m^(2)の輝度をもっている。
…効率を落とさずに、白色をつくるフィルタができないものか、いろいろ試行するなかで、青色のもつ波長帯で励起発光する蛍光体の存在が確認された。この原理を応用して、色変換材を混合し、白色発光が可能な色変換シート(CCS)を開発することができた。 …図4に青色LED光源の白色バックライト照明構造、図5にCCS(色変換シート)の構造を示す。
基本的な構造は小型電球光源のバックライト照明と同様である。アクリル導光板に青色LEDを配置し、エッジライト方式で均一に反射された青色光はCCSで白色に変換されるとともに、輝度アップされてLCDを透過する。」(57頁)
チ 請求人が提出し、本件第1優先日前に出願され、当該本件第1優先日後に公開された刊行物である甲第18号証(特開平9-27642号公報)には、以下のような記載がある。
「【0007】…従来例として、図5に示すような青色LED13を用いた照明装置が提案されている。この照明装置は、蛍光フィルムを青色LED13の上方に配置するのでなく、青色LEDチップ13aを封止する樹脂14内に蛍光顔料15を混入させた点を特徴としている。蛍光顔料15は前記蛍光顔料11aと同様、青色発光の波長を白色発光の波長に変えるようになっている。」
ツ 請求人が提出する甲第19号証(「電子技術」1996年6月号104頁)には、「電子技術」1996年7月号(甲第17号証)が、同年6月12日に発売予定であることが記載されている。

(2)甲第2号証発明
上記(1)アを総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲第2号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「メタルステム2上部に形成された凹部に、青色発光素子11が配置され、前記メタルステム2上部、前記青色発光素子11、メタルポスト3上部、前記メタルステム2と前記青色発光素子11とを電気的に接続する金線及び前記メタルポスト3と前記青色発光素子11とを電気的に接続する金線が、樹脂モールド4によってモールドされている発光ダイオードであって、
前記青色発光素子11は、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなるものであり、サファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなり、、
樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されており、
その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにあり、
一実施例において、420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されており、
青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができ、さらに、短波長の光を長波長に変える、発光ダイオード。」
(3)本件訂正発明について
ア 対比
本件訂正発明と甲第2号証発明を対比する。
(ア)甲第2号証発明の「青色発光素子11」は、「発光ピークが430nm付近…にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりな」り、「サファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてな」るものであるから、
a 甲第2号証発明の「青色発光素子11」は、本件訂正発明の「(発光層が半導体である)発光素子」に相当し、
b 甲第2号証発明の「『青色発光素子11』は、発光ピークが430nm付近…にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなり、サファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる」との事項と、本件訂正発明の「前記発光素子はその発光層はInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり」との事項とは、「前記発光素子はその発光層は窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり」との点で一致する。
(イ)甲第2号証発明は、「樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されて」いるから、
a 甲第2号証発明の「蛍光染料5」は、本件訂正発明の「(該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光する)フォトルミネセンス蛍光体」に相当し、
b 甲第2号証発明の「樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されて」いるとの事項と、本件訂正発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であって」との事項とは、「前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収してピーク波長光を発光し」との点で一致する。
(ウ)甲第2号証発明の「発光ダイオード」は、本件訂正発明の「発光装置」に相当する。
(エ)a 甲第2号証発明の「発光ダイオード」は、「その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにあり、一実施例において、420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されており、青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができ、さらに、短波長の光を長波長に変える」ものであって、本件訂正発明の「蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である発光装置」とは、そもそもその目的、果たす機能が全く異なるものである。すなわち、甲第2号証発明は、本件訂正発明のような、「蛍光体の発光する…発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない…発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である」ものではない。
b この点に関し、請求人は、「(甲第2号証には)『例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。』と記載されているように、発光素子の発光色と補色になる蛍光体を添加することで白色にすることについても開示されているということができる。」(請求項40頁、上記第5の1(4)ウ)、「甲2【0003】に発光色の変換の一例として白色光が挙げられており、青色光と補色関係にある黄色発光が可能な蛍光体(例えばYAG系蛍光体)が実用化されていることは技術常識であるから、『白色光が発光可能である』に係る構成は、当業者が技術常識を参酌することにより甲2の記載事項から導き出すことができる(弁駁書6?7頁、上記第5の2(2)ア)などと主張する。
c 確かに、甲第2号証(【0003】)には、「例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」との記載がある。しかしながら、この記載は、単に「緑色発光素子の樹脂モールド中」に「赤色顔料」を添加すれば発光色を「白色」とすることができるということを述べただけのものであって、蛍光染料あるいは蛍光顔料を添加して「白色」を得ることまで示唆するものではない。
(オ)よって、両者は、
「発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層が窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収してピーク波長を発光する、発光装置。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

本件訂正発明は、「(発光素子の)発光層」が、Inを含む窒化ガリウム系半導体であり、「フォトルミネセンス蛍光体」が、発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であり、「発光装置」が、上記蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であるものであるのに対し、甲第2号証発明は、「(発光素子の)発光層」が、窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなるものではあるが、Inを含むものであるか否か明らかではなく、「フォトルミネセンス蛍光体」が、480nmに発光ピークを有する波長を発光するものであり、「発光装置」が、その目的とするところが、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることであり、一実施例において、420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されており、青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができ、さらに、短波長の光を長波長に変えるものであって、蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能なものであるとはいえない点(以下「相違点1」という。)。

イ 判断
上記相違点1につき検討する。
(ア)請求人が提出した他の甲号証のいずれをみても、甲第2号証発明の「(青色発光素子からの短波長の光をより長波長の光に変換する)発光ダイオード」を、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成(蛍光体の発光する…発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない…発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能である発光装置)となす動機を開示あるいは示唆する記載は見当たらない。
(イ)上記相違点1に関連して、請求人は、「青色LEDと蛍光体の組合せにより青色光と蛍光を混合して白色光を得るという構成は、最先の優先日当時、甲2、甲15?甲17等により、周知慣用技術となっていた。」(弁駁書9頁、上記第5の2(2)ア)などと主張する。
しかしながら、甲第2号証発明の「発光ダイオード」は、上述したとおり、青色発光素子からの短波長の光をより長波長の光に変換するためのものであって、そもそも請求人が主張するような上記の周知慣用技術を適用し得ないものというべきである。
したがって、甲第2号証発明及び周知技術に基づいて、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成となすことを当業者は容易になし得たということはできない。

ウ 小括
上記ア及びイのとおり、甲第2号証発明は、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成を備えるものではなく、また、甲第2号証発明において、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成となす動機も認められないから、本件訂正発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証?甲第13号証等に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 無効理由3(特許法第17条の2第3項)について
(1)請求人は、「平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書(国際出願番号:PCT/JP97/02610)及び手続補正書には、フォトルミネセンス蛍光体について、『Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体』のみが記載されており、個別の構成元素に限定されない『セリウム付活ガーネット系蛍光体』なる構成は記載されていなかった。平成15年10月16日付手続補正書以前の当初明細書及び手続補正書の記載から、テルビウム・アルミニウム・ガーネット(TAG)系蛍光材料等その他『Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体』に包含されない蛍光体が、当初明細書等の記載から自明な事項とはいえない。よって、平成15年10月16日付手続補正書による補正により、『Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体』を『セリウム付活ガーネット系蛍光体』にした補正は、新規事項を追加するものに他ならない。」(請求項46?53頁、上記第5の1(5)イ)と主張する。
(2)そこで、この点につき検討するに、上記第3のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明に関する本件訂正は認められるものであり、本件特許の請求項1に係る本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」は、上記第4のとおり、「Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であ」る。そして、本件の出願当初明細書(乙第11号証。以下「本願当初明細書」という。)には、「…本発明の発光装置は、…フォトルミネセンス蛍光体が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、かつセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む…」(4頁18行?5頁1行)との記載があることに照らせば、「フォトルミネセンス蛍光体が、…Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であ」るとする本件訂正発明は、本願当初明細書に記載されたものと認められる。
(3)よって、新規事項に関する請求人の上記主張を認めることはできない。

4 無効理由4(特許法第36条第6項第1号)について
(1)ア 請求人は、「当初明細書及び手続補正書には、発明の詳細な説明において、フォトルミネセンス蛍光体について、『Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体』のみが記載されており、個別の構成元素に限定されない『セリウム付活ガーネット系蛍光体』なる構成は記載されていなかった」から、「本件特許の請求項1は、本件明細書においてサポートされていない事項を含むものであ」り、「本特許出願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない」(審判請求書53?54頁、上記第5の1(6))と主張する。
イ しかしながら、上記第3のとおり、本件特許の請求項1?3に係る発明に関する本件訂正は認められ、本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」は、上記第4のとおり、「Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であ」るところ、本件当初明細書等には、…本発明の発光装置は、…フォトルミネセンス蛍光体が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、かつセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含む…」(4頁18行?5頁1行)との記載があることに照らせば、本件訂正発明は、本件特許明細書にサポートされたものであると認められる。
(2)ア また、請求人は、「…本件訂正後の請求項1は、フォトルミネセンス蛍光体について、『Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体』と開放形式の記載としており、Pr、Nd、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等その他本件明細書に記載されていない元素を含み得るから、…サポート要件違反を免れない。」(平成25年1月18日付け審判事件弁駁書9頁、上記第5の4(3))と主張する。
イ しかしながら、本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」は、本件特許の請求項1の記載のとおり、「Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体」であれば足ると理解されるものであって、それ以外の元素として如何なるものが含まれ得るかにつき本件特許明細書に具体的な記載がされていなくても、そのこと自体がサポート要件違反に当たるということはできない。
(3)よって、サポート要件に関する請求人の上記主張を認めることはできない。

5 無効理由5(特許法第36条第4項第1号)について
(1)請求人は、「本件発明の構成要件1Cについて、無数の存在しうるセリウム付活ガーネット系蛍光体について、どのようにすれば、『510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトル』となるのか不明であるため、当業者が実施できない」(審判請求書54?55頁、上記第5の1(7))と主張し、また、「平成23年10月7日付訂正請求書による訂正後の『700nmまで裾を引く』なる構成は、当業者が実施することが不可能である」(弁駁書24頁、上記第5の2(5))と主張する。
そこで、上記の点に関し、本件特許明細書の記載を検討する。
なお、本件発明の構成要件1Cについては、上記第3のとおり、被請求人が平成24年8月6日にし、本件特許無効審判の訂正請求とみなされる訂正審判請求により、「前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能である、Y、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al及びGaから選択された少なくとも1つの元素とを含むセリウム付活ガーネット系蛍光体であって」と訂正することが認められた。
(2)本件特許明細書(乙第12号証)には、以下の記載がある。
ア 「また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、…図3Aに示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3Bに示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。…Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。…
特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。」(7頁右欄29?46行)
イ 「 一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。」(8頁右欄45行?9頁左欄3行)
(3)上記(2)によれば、本件特許明細書には、フォトルミネセンス蛍光体の構成元素を選択することにより、その発光ピーク波長のシフト量を制御し得ることが記載されていると認められる。
そして、上記記載に基づけば、本件訂正発明のセリウム付活ガーネット系蛍光体に関し、その構成元素を選択することにより、発光ピーク波長を適宜シフトすることが可能であり、その実施をすることが可能であることを当業者は理解し得るということができる。
すなわち、請求人が主張するように、「どのようにすれば、『510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトル』となるのか不明であるため、当業者が実施できない」、あるいは、「『700nmまで裾を引く』なる構成は、当業者が実施することが不可能である」ということはできない。
(4)よって、本件特許の請求項1に記載されている事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、当業者にとって実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていない構成を含むものである、ということはできない。


第8 むすび
以上のとおりであって、本件訂正発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものではない。
また、本件訂正発明についての特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第1号に該当するものではない。
さらに、本件訂正発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するものでもない。

したがって、請求人が主張する無効理由によっては、本件訂正発明についての特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光装置と表示装置
【発明の詳細な説明】
技術分野
本願発明は、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し、特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光装置及びそれを用いた表示装置に関する。
背景技術
発光ダイオードは、小型で、効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で、半導体素子であるため、球切れの心配がなく、初期駆動特性及び耐震性に優れ、さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また、最近では、超高輝度、高効率なRGB(赤、緑、青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され、これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは、少ない電力で動作させることができ、軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し、今後益々使用されるものと期待される。
さらに、最近では、発光ダイオードを用いて、白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには、発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので、例えば、R、G、Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合、発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また、発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合、各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり、駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに、発光素子が半導体発光素子であるため、個々に温度特性や経時変化が異なり、色調が使用環境によって変化したり、各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち、発光ダイオードは、個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが、発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。
そこで、本出願人は先に発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり、以下のように構成される。
上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。
上述の開示された発光ダイオードにおいて、発光素子として、青色系の発光が可能な発光素子を用いて、該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより、混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。
しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。ここで、黒ずむというのは、例えば、(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には、この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり、また、有機系の蛍光体材料を用いた場合には、2重結合が切れる等により着色することをいう。特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。
また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。
さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。
発明の開示
したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、この目的を達成するために、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考え、鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の発光装置は、発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
前記発光素子の発光層が窒化物系化合物半導体からなり、かつ前記フォトルミネセンス蛍光体が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、かつセリウムで付活されたガーネット系蛍光体を含むことを特徴とする。
ここで、窒化物系化合物半導体(一般式In_(i)Ga_(j)Al_(k)N、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。
また、前記フォトルミネセンス蛍光体としては、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Gd_(3)In_(5)O_(12):Ceを始め、上述のように定義される種々のものが含まれる。
この本願発明の発光装置は、高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので、高輝度の発光をさせることができる。また、該発光装置において、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は、長時間、強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって、長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき、発光素子からの強い光のみならず、野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき、色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また、この本願発明の発光装置は、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が、短残光であるため、例えば、120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、これによって、発光装置の輝度を高くできる。
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(S))_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。
また、本発明の発光装置において、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって、発光素子の特性(発光波長)に対応して、フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して、所望の発光色の発光をさせることができる。
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。
さらに、本発明の発光装置において、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。
またさらに、前記発光素子において、該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体を含んでなり、前記フォトルミネセンス蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは、発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し、変換効率(発光効率)を良くできる。また、該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり、その点で極めて優れた発光装置を提供できる。
本発明の1つの態様の発光装置は、その一側面に前記フォトルミネセンス蛍光体を介して前記発光素子が設けられ、かつその一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を前記フォトルミネセンス蛍光体と導光板とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
本発明の別の態様の発光装置は、その一側面に前記発光素子が設けられ、その一主表面に前記フォトルミネセンス蛍光体が設けられかつ該一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を導光板と前記フォトルミネセンス蛍光体とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
また、本発明のLED表示装置は、本発明の発光装置をマトリックス状に配置したLED表示器と、該LED表示器を入力される表示データに従って駆動する駆動回路とを備える。これによって、高精細表示が可能でかつ視認角度によって色むらの少ない、比較的安価なLED表示装置を提供できる。
発明の一態様の発光装置は、カップ部とリード部とを有するマウント・リードと、
前記マウント・リードのカップ内に載置されかつ一方の電極がマウント・リードに電気的に接続されたLEDチップと、
該LEDチップの他方の電極に電気的に接続させたインナー・リードと、
前記LEDチップを覆うように前記カップ内に充填された透光性のコーティング部材と、
前記マウント・リードのカップ部と、前記インナーリードと該LEDチップの他方の電極との接続部分とを含み、前記コーティング部材で覆われたLEDチップを被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、
前記LEDチップが窒化物系化合物半導体であり、かつ前記コーティング部材が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体からなるフォトルミネッセンス蛍光体を含むことを特徴とする。
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(S))_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。
本発明の発光ダイオードにおいては、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。
また、一般的に蛍光体では、短波長の光を吸収して長波長の光を発光するものの方が、長波長の光を吸収して短波長の光を発光するものに比較して効率がよい。発光素子としては、樹脂(モールド部材やコーティング部材等)を劣化させる紫外光を発光するものより可視光を発光するものを用いる方が好ましい。従って、本発明の発光ダイオードにおいては、発光効率の向上及び長寿命化のために、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークを、可視光のうちで比較的短波長の400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長を前記発光素子の主ピークより長く設定することが好ましい。また、このようにすることにより、蛍光体により変換された光は、発光素子が発光する光よりも長波長であるため、蛍光体等により反射された変換後の光が発光素子に照射されても、発光素子によって吸収されることはない(バンドギャップエネルギーより変換された光のエネルギーの方が小さいため)。このように、蛍光体等により反射された光は、発光素子を載置したカップにより反射され、さらに効率のよい発光が可能になる。
図面の簡単な説明
図1は、本発明に係る実施の形態のリードタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
図2は、本発明に係る実施の形態のチップタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
図3Aは実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。
図3Bは実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
図4は、実施の形態1の発光ダイオードの発光スペクトルを示すグラフである。
図5Aは実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。
図5Bは実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
図6は、実施形態2の発光ダイオードの発光色を説明するための色度図であり、図中、A及びB点は発光素子が発光する光の発光色を示し、C点、D点は、それぞれ2種類のフォトルミネッセンス蛍光体からの発光色を示す。
図7は、本発明に係る別の実施形態の面状発光光源の模式的な断面図である。
図8は、図7とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
図9は、図7及び図8とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
図10は、本願発明の応用例である表示装置のブロック図10である。
図11は、図10の表示装置のLED表示器の平面図である。
図12は、本願発明の発光ダイオード及びRGBの4つの発光ダイオードを用いて一絵素を構成したLED表示器の平面図である。
図13Aは、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、25℃における結果であり、図13Bは、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、60℃,90%RHにおける結果である。
図14Aは、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、経過時間に対する輝度保持率を示す。
図14Bは、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、試験前後の色調の変化を示す。
図15Aは、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における輝度保持率と時間との関係を示すグラフであり、図15Bは、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における色調と時間との関係を示したグラフである。
図16は、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにより実現できる色再現範囲を示す色度図である。
図17は、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させたときの発光色の変化を示す色度図である。
図18Aは、(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例2のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図18Bは、発光ピーク波長460nmを有する実施例2の発光素子の発光スペクトルを示す。
図18Cは、実施例2の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
図19Aは、(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例5のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図19Bは、発光ピーク波長450nmを有する実施例5の発光素子の発光スペクトルを示す。
図19Cは、実施例5の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
図20Aは、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例6のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図20Bは、発光ピーク波長450nmを有する実施例6の発光素子の発光スペクトルを示す。
図20Cは、実施例6の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
図21Aは、Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される実施例7のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図21Bは、発光ピーク波長450nmを有する実施例7の発光素子の発光スペクトルを示す。
図21Cは、実施例7の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
図22Aは、(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図22Bは、(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示す。
図22Cは、発光ピーク波長470nmを有する実施例11の発光素子の発光スペクトルを示す。
図23は、実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して本発明の実施形態の説明をする。
図1の発光ダイオード100は、マウント・リード105とインナーリード106とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって、マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設られ、カップ部105a内に、発光素子102を覆うように、所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に、樹脂モールドされて構成される。ここで、発光素子102のn側電極及びp側電極はそれぞれ、マウント・リード105とインナーリード106とにワイヤー103を用いて接続される。
以上のように構成された発光ダイオードにおいては、発光素子(LEDチップ)102によって発光された光(以下、LED光という。)の一部が、コーティング樹脂101に含まれたフォトルミネッセンス蛍光体を励起してLED光と異なる波長の蛍光を発生させて、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体の励起に寄与することなく出力されるLED光とが混色されて出力される。その結果、発光ダイオード100は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
また、図2に示すものはチップタイプの発光ダイオードであって、筺体204の凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ、該凹部に所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成されて構成される。ここで、発光素子202は、例えばAgを含有させたエポキシ樹脂等を用いて固定され、該発光素子202のn側電極とp側電極とをそれぞれ、筺体204に設けられた端子金属205に、導電性ワイヤー203を用いて接続される。以上のように構成されたチップタイプの発光ダイオードにおいて、図1のリードタイプの発光ダイオードと同様に、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体に吸収されることなく伝搬されたLED光とが混色されて出力され、その結果、発光ダイオード200は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
以上説明したフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光ダイオードは、以下のような特徴を有する。
1,通常、発光素子(LED)から放出される光は、発光素子に電力を供給する電極を介して放出される。放出された光は、発光素子に形成された電極の陰となり、特定の発光パターンを有し、そのために全ての方向に均一に放出されない。しかしながら、蛍光体を備えた発光ダイオードは、蛍光体により発光素子からの光を散乱させて光を放出するので、不要な発光パターンを形成することなく、広い範囲に均一に光を放出することができる。
2.発光素子(LED)からの光は、単色性ピークを有するといっても、ある程度のスペクトル幅をもつので演色性が高い。このことは、比較的広い範囲の波長を必要とする光源として使用する場合には欠かせない長所になる。例えば、スキャナーの光源等に用いる場合は、スペクトル幅が広いほうが好ましい。
以下に説明する実施形態1,2の発光ダイオードは、図1又は図2に示す構造を有する発光ダイオードにおいて、可視光域における光エネルギーが比較的高い窒化物系化合物半導体を用いた発光素子と、特定のフォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたことを特徴とし、これによって、高輝度の発光を可能にし、長時間の使用に対して発光効率の低下や色ずれが少ないという良好な特性を有する。
一般的に蛍光体においては、短い波長の光を吸収して長い波長の光を放出する蛍光体の方が、長い波長の光を吸収して短い光を放出する蛍光体に比較して変換効率が優れているので、本発明の発光ダイオードにおいては、短い波長の青色系の発光が可能な窒化ガリウム系半導体発光素子(発光素子)を用いることが好ましい。また、高い輝度の発光素子を用いることが好ましいことは言うまでもない。
このような窒化ガリウム系半導体発光素子と組み合わせて用いるのに適したフォトルミネセンス蛍光体としては、
1.発光素子102,202に近接して設けられ、太陽光の約30倍から40倍にもおよぶ強い光にさらされることになるので、強い強度の光の照射に対して長時間耐え得るように、耐光性に優れていること。
2.発光素子102,202によって励起するために、発光素子の発光で効率よく発光すること。特に、混色を利用する場合、紫外線ではなく青色系発光で効率よく発光すること。
3.青色系の光と混色されて白色になるように、緑色系から赤色系の光が発光可能なこと。
4.発光素子102,202に近接して設けられ、該チップを発光させる際の発熱による温度変化の影響を受けるので、温度特性が良好であること。
5.色調が組成比あるいは複数の蛍光体の混合比を変化させることにより、連続的に変化させることができること。
6.発光ダイオードが使用される環境に応じた耐候性があること、
などの特性が要求される。
実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。
また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくともー種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。
本実施形態1において、このフォトルミネセンス蛍光体は、上述したように、コーテイング樹脂101,コーテイング部201を形成する樹脂(詳細は後述する)に混合して使用されるので、窒化ガリウム系発光素子の発光波長に対応させて、樹脂などとの混合比率、若しくはカップ部105又は筺体204の凹部への充填量を種々調整することにより、発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。
このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。例えば、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき、水分による劣化を防止することができる。他方、フォトルミネセンス蛍光体を、発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると、外部環境からの水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱、照射強度などの影響をより少なくでき、フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような、フォトルミネセンス蛍光体の分布は、フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ、発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。
実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、発光素子102,202と接したり、あるいは近接して配置され、照射強度(Ee)として、3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下においても高効率でかつ十分な耐光性を有するので、該蛍光体を用いることにより、優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる。
また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3Aに示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3Bに示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また、実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。一方、Gdが増加するするとともに、青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。
特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。
表1に一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。

表1に示した各特性は、460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は▲1▼の材料を100として相対値で示している。
AlをGaによって置換する場合、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に、Yの一部をGdで置換する場合は、Y:Gd=9:1?1:9の範囲の比率に設定することが好ましく、4:1?2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり、Gdの置換量が6割以上になると、赤み成分を増やすことができるが、輝度が急激に低下する。特に、発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。尚、Ceの含有量(置換量)は、0.003?0.2の範囲に設定することにより、発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では、Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し、逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。
以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。また、波長が254nmや365nmであるHg輝線ではほとんど励起されず450nm付近の青色系発光素子からのLED光による励起効率が高い。さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。
また、実施形態1では、窒化ガリウム系半導体を用いた発光素子と、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG)に希土類元素のサマリウム(Sm)を含有させたフォトルミネセンス蛍光体とを組み合わせることにより、発光ダイオードの発光効率をさらに向上させることができる。
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、Sm、Al及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを所定の化学量論比で十分に混合して混合原料を作製し、作製された混合原料に、フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でポールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことにより作製できる。
上述の作製方法において、混合原料は、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合することにより作製してもよい。
一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。
また、一般式(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値(%)のことである。
Smの含有量rは0.0003≦r≦0.08の範囲であることが好ましく、これによって温度特性を60%以上にすることができる。この範囲よりrが小さいと、温度特性の改良効果が小さくなる。また、この範囲よりrが大きくなると温度特性は逆に低下してくる。また、Smの含有量rは0.0007≦r≦0.02の範囲であることがさらに好ましく、これによって温度特性は80%以上にできる。
Ceの含有量qは、0.003≦q≦0.2の範囲であることが好ましく、これによって、相対発光輝度が70%以上にできる。ここで、相対発光輝度とは、q=0.03の蛍光体の発光輝度を100パーセントとした場合における発光輝度のことをいう。
Ceの含有量qが0.003以下では、Ceによるフォトルミネセンスの励起発光中心の数が減少するために輝度が低下し、逆に、0.2より大きくなると濃度消光が生ずる。ここで、濃度消光とは、蛍光体の輝度を高めるために付活剤の濃度を増加していくとある最適値以上の濃度では発光強度が低下することである。
本願発明の発光ダイオードにおいては、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y_(1-p-q-r)Gd_(p)Ce_(q)Sm_(r))_(3)Al_(5)O_(12)フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって、蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ、これに、例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。
(発光素子102、202)
発光素子は、図1及び図2に示すように、モールド部材に埋設されることが好ましい。本願発明の発光ダイオードに用いられる発光素子は、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率良く励起できる窒化ガリウム系化合物半導体である。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子102,202は、MOCVD法等により基板上にInGaN等の窒化ガリウム系半導体を発光層として形成することにより作製される。発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる程度に薄く形成した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。特に、本願発明においては、発光素子の活性層をInGaNの単一量子井戸構造とすることにより、フォトルミネセンス蛍光体の劣化がなく、より高輝度に発光する発光ダイオードとして利用することができる。
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、半導体基板にはサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が用いることができるが、結晶性の良い窒化ガリウムを形成させるためにはサファイヤ基板を用いることが好ましい。このサファイヤ基坂上にGaN、AlN等のバッファー層を介してPN接合を形成するように窒化ガリウム半導体層を形成する。窒化ガリウム系半導体は、不純物をドーブしない状態でN型導電性を示すが、発光効率を向上させるなど所望の特性(キャリヤ濃度等)のN型窒化ガリウム半導体を形成するためには、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜ドープすることが好ましい。一方、p型窒化ガリウム半導体を形成する場合は、p型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープする。尚、窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドーブしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱、低速電子線照射やプラズマ照対等によりp型化させることが好ましい。エッチングなどによりp型及びN型の窒化ガリウム半導体の表面を露出させた後、各半導体層上にスバッタリング法や真空蒸着法などを用いて所望の形状の各電極を形成する。
次に、以上のようにして形成された半導体ウエハー等を、ダイシングソーにより直接フルカットする方法、又は刃先幅よりも広い幅の溝を切り込んだ後(ハーフカット)、外力によって半導体ウエハーを割る方法、あるいは、先端のダイヤモンド針が往復直線運動するスクライバーにより半導体ウエハーに極めて細いスクライブライン(経線)を例えば碁盤目状に引いた後、外力によってウエハーを割る方法等を用いて、半導体ウエハーをチップ状にカットする。このようにして窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光素子を形成することができる。
本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。発光素子とフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下に設定することがさらに好ましい。実施形態1の白色系発光ダイオードの発光スペクトルの一例を図4に示す。ここに例示した発光ダイオードは、図1に示すリードタイプのものであって、後述する実施例1の発光素子とフォトルミネッセンス蛍光体とを用いたものである。ここで、図4において、450nm付近にピークを持つ発光が発光素子からの発光であり、570nm付近にピークを持つ発光が発光素子によって励起されたフォトルミネセンスの発光である。
また、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで、実現できる色再現範囲を図16に示す。この白色系発光ダイオードの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点とを結ぶ直線上のいずれかに位置するので、表1の▲1▼?▲7▼の蛍光体を使用することにより、色度図中央部の広範な白色領域(図16中斜線を付した部分)をすべてカバーすることができる。図17は、白色系発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させた時の発光色の変化を示したものである。ここで、蛍光体の含有量は、コーティング部に使用する樹脂に対する重量パーセントで示している。図17から明らかなように、蛍光体の量を増やせば蛍光体の発光色に近付き、減らすと青色LEDに近付く。
なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子をー緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。
以下、図1及び図2の発光ダイオードの他の構成要素について説明する。
(導電性ワイヤー103、203)
導電性ワイヤー103、203としては、発光素子102、202の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.0lcal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。また、作業性を考慮すると導電性ワイヤーの直径は、10μm以上、45μm以下であることが好ましい。特に、蛍光体が含有されたコーティング部とモールド部材とをそれぞれ同一材料を用いたとしても、どちらか一方に蛍光体が入ることによる熱膨張係数の違いにより、それらの界面においては、導電性ワイヤーは断線し易い。そのために導電性ワイヤーの直径は、25μm以上がより好ましく、発光面積や取り扱い易さの観点から35μm以下が好ましい。導電性ワイヤーの材質としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。このような材質、形状からなる導電性ワイヤーを用いることにより、ワイヤーボンディング装置によって、各発光素子の電極と、インナー・リード及びマウント・リードとを容易に接続することができる。
(マウント・リード105)
マウント・リード105は、カップ部105aとリード部105bとからなり、カップ部105aに、ダイボンディング装置で発光素子102を載置する十分な大きさがあれば良い。また、複数の発光素子をカップ内に設け、マウント・リードを発光素子の共通電極として利用する場合においては、異なる電極材料を用いる場合があるので、それぞれに十分な電気伝導性とボンディングワイヤー等との接続性が求められる。また、マウント・リード上のカップ内に発光素子を配置すると共に蛍光体をカップ内部に充填する場合は、蛍光体からの光が当方的に放出されたとしても、カップにより所望の方向に反射されるので、近接して配置させた別の発光ダイオードからの光による疑似点灯を防止することができる。ここで、擬似点灯とは、近接して配置された別の発光ダイオードに電力を供給していなくても発光しているように見える現象のことをいう。
発光素子102とマウント・リード105のカップ部105aとの接着は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いて行うことができる。また、フェースダウン発光素子(基板側から発光を取り出すタイプであって、発光素子の電極をカップ部105aに対向させて取り付けるように構成されたもの)を用いる場合は、該発光素子をマウント・リードと接着させると共に電気的に導通させるために、Agペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。さらに、発光ダイオードの光利用効率を向上させるために発光素子が配置されるマウント・リードのカップ部の表面を鏡面状とし、表面に反射機能を持たせても良い。この場合の表面粗さは、0.1S以上0.8S以下が好ましい。また、マウント・リードの具体的な電気抵抗としては300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。また、マウント・リード上に複数の発光素子を積置する場合は、発光素子からの発熱量が多くなるため熱伝導度がよいことが求められ、その熱伝導度は、0.0lcal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、メタライズパターン付きセラミック等が挙げられる。
(インナー・リード106)
インナー・リード106は、マウント・リード105上に配置された発光素子102の一方の電極に、導電性ワイヤー等で接続される。マウント・リード上に複数の発光素子を設けた発光ダイオードの場合は、インナーリード106を複数設け、各導電性ワイヤー同士が接触しないよう各インナーリードを配置する必要がある。例えば、マウント・リードから離れるに従って、各インナー・リードのワイヤーボンディングされる各端面の面積を順次大きくすることによって、導電性ワイヤー間の間隔を開けるようにボンディングし、導電性ワイヤー間の接触を防ぐことができる。インナーリードの導電性ワイヤーとの接続端面の粗さは、密着性を考慮して1.6S以上1OS以下に設定することが好ましい。
インナー・リードは、所望の形状になるように型枠を用いた打ち抜き加工等を用いて形成することができる。さらには、インナー・リードを打ち抜き形成後、端面方向から加圧することにより所望の端面の面積と端面高さを調整するようにしても良い。
また、インナー・リードは、導電性ワイヤーであるボンディングワイヤー等との接続性及び電気伝導性が良いことが求められる。具体的な電気抵抗としては、300μΩ・cm以下であることが好ましく、より好ましくは3μΩ・cm以下である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅及び銅、金、銀をメッキしたアルミニウム、鉄、銅等が挙げられる。
(コーティング部101)
コーティング部101は、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものであり、本実施の形態1では、発光素子の発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐侯性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。また、フォトルミネセンス蛍光体と共に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることが好ましい。さらに、蛍光体をスパッタリングにより形成する場合、コーティング部を省略することもできる。この場合、膜厚を調整したり蛍光体層に開口部を設けることで混色表示が可能な発光ダイオードとすることができる。
(モールド部材104)
モールド部材104は、発光素子102、導電性ワイヤー103、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する。本実施形態1では、モールド部材104にさらに拡散剤を含有させることが好ましく、これによって発光素子102からの指向性を緩和させることができ、視野角を増やすことができる。また、モールド部材104は、発光ダイオードにおいて、発光素子からの発光を集束させたり拡散させたりするレンズ機能を有する。従って、モールド部材104は、通常、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状に形成される。また、モールド部材104は、それぞれ異なる材料を複数積層した構造にしてもよい。モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。また、拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。さらに、本願発明では、拡散剤に加えてモールド部材中にフォトルミネセンス蛍光体を含有させてもよい。すなわち、本願発明では、フォトルミネセンス蛍光体をコーティング部に含有させても良いし、モールド部材中に含有させてもよい。モールド部材にフォトルミネセンス蛍光体を含有させることにより、視野角をさらに大きくすることができる。また、コーティング部とモールド部材の双方に含有させてもよい。またさらに、コーティング部をフォトルミネセンス蛍光体が含有された樹脂とし、モールド部材を、コーティング部と異なる部材である硝子を用いて形成しても良く、このようにすることにより、水分などの影響が少ない発光ダイオードを生産性良く製造できる。また、用途によっては、屈折率を合わせるために、モールド部材とコーティング部とを同じ部材を用いて形成してもよい。本願発明においてモールド部材に拡散剤や着色剤を含有させることによって、発光観測面側から見た蛍光体の着色を隠すことができると共により混色性を向上させることができる。すなわち、蛍光体は強い外光のうち青色成分を吸収し発光し、黄色に着色しているように見える。しかしながら、モールド部材に含有された拡散剤はモールド部材を乳白色にし、着色剤は所望の色に着色する。これによって、発光観測面から蛍光体の色が観測されることはない。さらに、発光素子の主発光波長が430nm以上では、光安定化剤である紫外線吸収剤を含有させることがより好ましい。
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。
蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re_(1-r)Sm_(r))_(3)(Al_(1-s)Ga_(s))_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。
(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)
実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては、上述したように、フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。
また、実施形態1と同様に、フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々変える(発光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強い特性を発光ダイオードに持たせることができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々調整することができる。したがって、実施形態2では、使用条件などに対応させて、蛍光体の分布濃度が設定される。また、実施の形態2では、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子から出力される光に対応して配置を工夫(例えば、発光素子に近い方から順番に配置する等)することによって発光効率を高くすることができる。
以上のように構成された実施形態2の発光ダイオードは、実施形態1と同様、照度強度として(Ee)=3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下の比較的高出力の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率でかつ十分な耐光性を有する発光ダイオードを構成できる。
実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、実施形態1と同様、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強い。また、実施形態2のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、図5Aの実線に示すように励起スペクトルのピークを450nm付近に設定でき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5Bの実線に示すように510nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを700nmまで裾を引くようにブロードにできる。これによって、緑色系の発光をさせることができる。また、実施形態2の別のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、励起スペクトルのピークを図5Aの破線に示すように450nm付近にでき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5Bの破線に示すように600nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを750nmまで裾を引くブロードにできる。これによって、赤色系の発光が可能となる。
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光波長が長波長側へシフトする。AlのGaへの置換は、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6が好ましい。同様に、Yの一部をGd及び/又はLaで置換することは、Y:Gd及び/又はLa=9:1から1:9であり、より好ましくは、Y:Gd及び/又はLa=4:1から2:3である。置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなる。また、6割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。本実施形態2において、組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合して用いても良いし、それぞれ独立して配置(例えば、積層)して用いても良い。2種類以上の蛍光体を混合して用いた場合、比較的簡単に量産性よく色変換部を形成することができ、2種類以上の蛍光体を独立して配置した場合は、所望の色になるまで重ね合わせることにより、形成後に色調整をすることができる。また、蛍光体をそれぞれ独立して配置して用いる場合、LED素子に近いほうに、光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体を設け、LEDより離れた所に、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体を配置することが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
以上のように本実施形態2の発光ダイオードは、蛍光物質として、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いている。これによって、所望の発光色が効率よく発光可能な発光ダイオードを構成することができる。即ち、半導体発光素子が発光する光の発光波長が、図6に示す色度図のA点からB点に至る線上に位置する場合、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の色度点(C点及びD点)である図6のA点,B点,C点及びD点で囲まれた斜線内にある任意の発光色を発光させることができる。実施形態2では、LED素子、蛍光体の組成若しくはその量を種々選択することによって調節することができる。特に、LED素子の発光波長に対応して、所定の蛍光体を選択することによりLED素子の発光波長のバラツキを補償することにより、発光波長のバラツキが少ない発光ダイオードを構成することができる。また、蛍光物質の発光波長を選択することにより、RGBの発光成分を高輝度に含んだ発光ダイオードを構成することができる。
さらに、実施形態2に用いるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG系)蛍光体は、ガーネット構造を有するので、実施形態2の発光ダイオードは、長時間高輝度に発光させることができる。また、実施形態1及び2の発光ダイオードは、発光観測面からみて蛍光体を介して発光素子を設ける。また、発光素子からの光よりもより長波長側に発光する蛍光物質を用いているので、効率よく発光させることができる。さらに、変換された光は発光素子から放出される光よりも長波長側になっているために、発光素子の窒化物半導体層のバンドギャップよりも小さく、該窒化物半導体層に吸収されにくい。従って、蛍光体が等方的に発光するために発光された光はLED素子にも向かうが、蛍光体によって発光された光はLED素子に吸収されることはないので、発光ダイオードの発光効率を低下させることはない。
(面状発光光源)
本発明に係る別の実施形態である面状発光光源の例を図7に示す。
図7に示す面状発光光源では、実施形態1又は2で用いたフォトルミネセンス蛍光体が、コーティング部701に含有されている。これによって、窒化ガリウム系発光素子が発生する青色系の光を、コーティング部で色変換した後、導光板704及び散乱シート706を介して面状にして出力する。
詳細に説明すると、図7の面状発光光源において、発光素子702は、絶縁層及び導電性パターン(図示せず)が形成されたコの字形状の金属基板703内に固定される。発光素子の電極と導電性パターンとを導通させた後、フォトルミネセンス蛍光体をエポキシ樹脂と混合して発光素子702が積載されたコの字型の金属基板703の内部に充填する。こうして固定された発光素子702は、アクリル性の導光板704の一方の端面にエポキシ樹脂などで固定される。導光板704の一方の主面上の散乱シート706が形成されていない部分には、点状に発光する蛍現象防止のため白色散乱剤が含有されたフィルム状の反射部材707が形成される。
同様に、導光板704の他方の主表面(裏面側)全面及びや発光素子が配置されていない他方の端面上にも反射部材705を設け発光効率を向上させるように構成する。これにより、例えば、LCDのバックライト用として十分な明るさを有する面状発光の発光ダイオードを構成することができる。
この面状発光の発光ダイオードを用いた液晶表示装置は、例えば、導光板704の一方の主面上に、透光性導電性パターンが形成された硝子基板間(図示せず)に液晶が注入された液晶装置を介して偏光板を配し構成する。
本発明に係る別の実施形態である面状の発光装置の例を、図8、図9とに示す。図8に示す発光装置は、発光ダイオード702によって発生された青色系の光を、フォトルミネセンス蛍光体が含有された色変換部材701を介して白色系の光に変換した後、導光板704によって面状にして出力するように構成されている。
図9に示す発光装置は、発光素子702が発光する青色系の光を、導光板704によって面状にした後、導光板704の一方の主表面に形成された、フォトルミネッセンス蛍光体を有する散乱シート706によって白色光に変換して面状の白色光を出力するように構成されている。ここで、フォトルミネッセンス蛍光体は、散乱シート706に含有させても良いし、或いはバインダー樹脂と共に散乱シート706に塗布してシート状に形成してもよい。さらには、導光板704上にフォトルミネセンス蛍光体を含むバインダーを、シート状ではなく、ドット状に直接形成してもよい。
<応用例>
(表示装置)
次に、本願発明に係る表示装置について説明する。図10は本願発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。該表示装置は、図10に示すように、LED表示器601と、ドライバー回路602、画像データ記憶手段603及び階調制御手段604を備えた駆動回路610とからなる。ここで、LED表示器601は、図11に示すように、図1又は図2に示す白色系の発光ダイオード501が、筺体504にマトリクス状に配列され、白黒用のLED表示装置として使用される。ここで、筺体504には遮光部材505が一体で成形されている。
駆動回路610は、図10に示すように、入力される表示データを一時的に記憶する画像データ記憶手段(RAM)603と、RAM603から読み出したデータに基づいてLED表示器601のそれぞれの発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算して出力する階調制御手段604と、階調制御手段604から出力される信号によってスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバー602とを備える。階調制御回路604は、RAM603に記憶されるデータを取り出してLED表示器601の発光ダイオード点灯時間を演算して点滅させるパルス信号をLED表示器601に出力する。以上のように構成された表示装置において、LED表示器601は、駆動回路から入力されるパルス信号に基づいて表示データに対応した画像を表示することができ、以下のような利点がある。
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなけれはならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる
また、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、1画素毎に、RGBの3つの発光ダイオードを組み合わせて白色表示させるためには、3つの各発光ダイオードをそれぞれ同時に発光させて混色する必要があり、一画素あたりの表示領域が大きくなり、高精細に表示させることができなかった。しかしながら、本願発明の表示装置におけるLED表示器は、1個の発光ダイオードで白色表示できるので、より高精細に白色系表示させることができる。さらに、3つの発光ダイオードの混色によって表示するLED表示器は、見る方向や角度によって、RGBの発光ダイオードのいずれかが部分的に遮光され表示色が変化する場合があるが、本願発明のLED表示器ではそのようなことはない。
以上のように本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオードを用いたLED表示器を備えた表示装置は、より高精細化が可能であり、安定した白色系の表示ができ、さらに、色むらを少なくできる特長がある。また、本願発明に係る白色表示が可能なLED表示器は、従来の赤色、緑色のみを用いたLED表示器に比べ人間の目に対する刺激が少なく長時間の使用に適している。
(本願発明の発光ダイオードを用いた他の表示装置の例)
本願発明の発光ダイオードを用いることにより、図12に示すように、RGBの3つの発光ダイオードに本願発明の発光ダイオードを加えたものを1絵素とするLED表示器を構成することができる。そして、このLED表示器と所定の駆動回路とを接続することにより種々の画像を表示することができる表示装置を構成できる。この表示装置における駆動回路は、モノクロームの表示装置と同様に、入力される表示データを一時的に記憶する画像データー記憶手段(RAM)と、RAMに記憶されたデータに基づいて各発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と、階調制御回路の出力信号でスイッチングされて、各発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備える。ただし、この駆動回路は、RGBと白色系に発光する各発光ダイオードをそれぞれ制御する専用の回路を必要とする。階調制御回路は、RAMに記憶されるデータから、それぞれの発光ダイオードの点灯時間を演算して、点滅させるパルス信号を出力する。ここで、白色系の表示を行う場合は、RGB各発光ダイオードを点灯するパルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しないようにする。他方、それを補償するように(すなわち、パルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しない分を補うように)白色系発光ダイオードにパルス信号を供給する。これにより、LED表示器の白色を表示する。
このように、RGBの発光ダイオードに白色発光ダイオードを追加することによって、ディスプレーの輝度を向上させることができる。また、RGBの組合せで白色を表示しようとすると、見る角度によってRGBのうちのいずれか1つ又はいずれか2つの色が強調され、純粋な白を表現することができないが、本表示装置のように白色の発光ダイオードを追加することにより、そのような問題を解決することができる。
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバーに入力されてドライバをスイッチングさせる。ドライバーがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筺体の裏面から筺体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筺体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となるり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。
<実施例>
以下、本願発明の実施例について説明するが、本願発明は、以下に示す実施例のみに限定されるものではないことを念のために言っておく。
(実施例1)
実施例1は、発光素子として、GaInN半導体を用いた発光ピークが450nm、半値幅30nmの発光素子を用いた例である。実施例1の発光素子は、洗浄されたサファイ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーバントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより作製される。成膜時に、ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成する。実施例1のLED素子は、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体層であるコンタクト層を備え、N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmの、単一量子井戸構造を構成するためのノンドープInGaNからなる活性層が形成されている。尚、サファイア基板上には、バッファ層として低温で窒化ガリウム半導体層が形成されている。また、P型窒化ガリウム半導体は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
エッチングによりP型及びN型の各半導体表面を露出させた後、スパッタリングによりn側p側の各電極がそれぞれ形成される。こうして作製された半導体ウエハーにスクライブラインを引いた後、外力を加えて個々の発光素子に分割した。
以上のようにして作製された発光素子を、銀メッキした鋼製のマウント・リードのカップ部にエポキシ樹脂でダイボンディングした後、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ直径が30μmの金線を用いてワイヤーボンディングして、リードタイプの発光ダイオードを作製した。
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を所定の化学量論比で酸に溶解した溶解液を修酸で共沈させ、沈澱物を焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムを混合して、この混合原料にフラックスとしてフツ化アンモニウムを混合して坩堝に詰めて、空気中1400℃の温度で3時間焼成した後、その焼成品をボールミルを用いて湿式粉砕して、洗浄、分離、乾燥後、最後に篩を通すことにより作製した。その結果、フォトルミネセンス蛍光体は、YがGdで約2割置換されたイットリウム・アルミニウム酸化物として(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceが形成された。尚、Ceの置換は0.03であった。
以上のようにして作製した(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体80重量部とエポキシ樹脂100重量部とをよく混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が載置されたマウント・リードのカップ内に注入した後、130℃の温度で1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μmのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部を形成した。なお、本実施例1では、コーティング部においては、発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布するように構成した。照射強度は、約3.5W/cm^(2)である。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。ここで、モールド部材は、砲弾型の型枠の中に、リードフレームにボンディングされ、フォトルミネセンス蛍光体を含んだコーティング部に覆われた発光素子を挿入して、透光性エポキシ樹脂を注入した後、150℃5時間にて硬化させて形成した。
この要に形成した発光ダイオードは、発光観測正面から見ると、フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、それぞれ、色度点は、(x=0.302、y=0.280)、色温度8080K、演色性指数(Ra)=87.5と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は9.51m/wと白色電球並であった。さらに、温度25℃60mA通電、温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の各寿命試験においても蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
(比較例1)
フォトルミネセンス蛍光体を(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu、Alとした以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後、実施例1と同様、白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また、寿命試験においては、約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果、蛍光体が黒化していた。
これは、発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色したものと考えられる。温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の寿命試験結果を実施例1の結果と共に図13に示す。輝度は初期値を基準にしそれぞれの相対値を示す。図13において、実線が実施例1であり波線が比較例1を示す。
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは、発光素子における窒化物系化合物半導体のInの含有量を実施例1の発光素子よりも増やすことにより、発光素子の発光ピークを460nmとし、フォトルミネセンス蛍光体のGdの含有量を実施例1よりも増やし(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceとした以外は実施例1と同様にして発光ダイオードを作製した。
以上のようにして作製した発光ダイオードは、白色系の発光可能であり、その色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.375、y=0.370)、色温度4400K、演色性指数(Ra)=86.0であった。
図18A、図18B及び図18Cにそれぞれ、実施例2のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、この実施例2の発光ダイオードを100個作製し、初期の光度に対する1000時間発光させた後における光度を調べた。その結果、初期(寿命試験前)の光度を100%とした場合、1000時間経過後における平均光度は、平均して98.8%であり特性に差がないことが確認できた。
(実施例3)
実施例3の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体としてY、Gd、Ceの希土類元素に加えSmを含有させた、一般式(Y_(0.39)Gd_(0.57)Ce_(0.03)Sm_(0.01))_(3)Al_(5)O_(12)蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様に作製した。この実施例3の発光ダイオードを100個作製し、130℃の高温下において評価した結果、実施例1の発光ダイオードと比較して平均温度特性が8%ほど良好であった。
(実施例4)
実施例4のLED表示器は、実施例1の発光ダイオードが、図11に示すように銅パターンを形成したセラミックス基坂上に、16×16のマトリックス状に配列されて構成される。尚、実施例4のLED表示器では、発光ダイオードが配列された基板は、フェノール樹脂からなり遮光部材505が一体で形成された筺体504内部に配置され、発光ダイオードの先端部を除いて筺体、発光ダイオード、基板及び遮光部材の一部をピグメントにより黒色に着色したシリコンゴム506が充填される。また、基板と発光ダイオードとの接続は、自動ハンダ実装装置を用いてハンダ付けを行った。
以上のように構成されたLED表示器を、入力される表示データを一時的に記憶するRAM及びRAMに記憶されるデータを取り出して発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と階調制御回路の出力信号でスイッチングされて発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備えた駆動手段によって駆動することにより白黒LED表示装置として使用できることを確認した。
(実施例5)
実施例5の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり、電球色の光を発光することができた。
図19A、図19B及び図19Cにそれぞれ、実施例5のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例5の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
(実施例6)
実施例6の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例6の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例1に比較してやや黄緑色がかった白色の光を発光することができた。
図20A、図20B及び図20Cにそれぞれ、実施例6のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例6の発光ダイオードは、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
(実施例7)
実施例7の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例7の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例7の発光ダイオードは、輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
図21A、図21B及び図21Cにそれぞれ、実施例7のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
(実施例8)
実施例8の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式Gd_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例8の発光ダイオードは、輝度は低いが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
(実施例9)
実施例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置である。
発光素子として発光ピークが450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。半導体発光素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、N型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するクラッド層とP型導電性を有するクラッド層との間にダブルヘテロ接合となるZnドープInGaNの活性層を形成した。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体を形成し、バッファ層として用いた。P型窒化物半導体層は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
各半導体層を成膜した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成し、こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径が30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成させた。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続させた。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものでスクリーン印刷及び硬化させた。
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ce、Laの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
以上のようにして作製された、一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体120重量部と、同様にして作製された、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体100重量部とを、エポキシ樹脂100重量部とよく混合してスラリーとし、このスラリーを厚さ0.5mmのアクリル層上にマルチコーターを用いて均等に塗布、乾燥し、厚さ約30μmの色変換部材として蛍光体膜を形成した。蛍光体層を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより面状の発光装置を作製した。以上のように作製した発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.29,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)は、92.0と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は12lm/wと白色電球並であった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。
(比較例2)
実施例9の一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体、及び一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からなるフォトルミネセンス蛍光体に代えて、それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は、実施例9と同様にして発光ダイオードを作製して実施例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は、(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として、カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また、信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を実施例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなように、いずれの試験においても、実施例9は、比較例2より劣化が少ない。
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。
実施例10の発光ダイオードでは、実施例9と同様にして作製した450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウントリードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。
以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された実施例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
以上のように作製した実施例10の発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.32,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=89.0、発光効率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
(実施例11)
LED素子として発光ピークが470nmのIn_(0.4)Ga_(0.6)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。LED素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmのノンドープInGaNの活性層を形成することにより単一井戸構造とした。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体をバッファ層として形成した。
以上のように各層を形成した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させ、スパッタリングによりp側及びn側の各電極を形成した。こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
この発光素子を銀メッキした銅製のマウントリードのカップにエポキシ樹脂を用いてダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成した。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続した。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものをスクリーン印刷及び硬化して膜状に形成した。
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的短波長側の黄色系が発光可能な蛍光体と、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的長波長側の黄色系が発光可能な蛍光体とを以下のようにして作製して混合して用いた。これらの蛍光体は、それぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
以上のように作製した比較的短波長側の黄色系蛍光体100重量部と比較的長波長側の黄色系蛍光体100重量部とを、アクリル樹脂1000重量部とよく混合して押し出し成形し、厚さ約180μmの色変換部材として用いる蛍光体膜を形成した。蛍光体膜を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより発光装置を作製した。このようにして作製した実施例11の発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、
(x=0.33,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=88.0を示した。また、発光効率は10lm/wであった。
図22A、図22B及び図22Cにはそれぞれ、実施例11に使用した、式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体、式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体及び発光素子の各発光スペクトルを示す。また、図23には、実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。同様に、この蛍光体の含有量を種々変えることによって発光素子からの波長が変化しても所望の色度点を維持させることができる。
(実施例12)
実施例12の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)In_(5)O_(12):Ceで表されるAlを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードを100個作製した。実施例9の発光ダイオードは、輝度は低いが寿命試験において実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明に係る発光ダイオードは、所望の色を有する光を発光することができ、長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って、一般的な電子機器に限られず、高い信頼性が要求される車載用、航空産業用、港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。
(57)【特許請求の範囲】
1.発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して530?570nm付近にピーク波長を有し、700nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する530?570nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であることを特徴とする発光装置。
2.発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、
前記発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体の単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造からなるLEDチップであり、450?475nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であることを特徴とする発光装置。
3.発光層が半導体である発光素子と、該発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体とを備えた発光装置において、
a)前記発光素子はその発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体で、420?490nmの範囲にピーク波長を有する青色発光が可能であるLEDチップであり、
b)前記フォトルミネセンス蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるセリウム付活ガーネット系蛍光体であって、
c)上記蛍光体の発光する510?600nm付近にピーク波長を有する発光スペクトルと、上記LEDチップからの上記蛍光体に吸収されない、420?490nmの範囲にピーク波長を有する幅をもった発光スペクトルとの混合により、両スペクトルが重なり合い、連続した合成スペクトルの白色光が発光可能であり、
前記セリウム付活ガーネット蛍光体が、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であって、互いに組成の異なる2以上を含む発光装置。
4.組成の異なる2以上のセリウム付活ガーネット蛍光体がセリウム付活イットリウム・アルミニウムガーネット系蛍光体であって、上記発光素子の青色発光スペクトルの一部を吸収して510?600nm付近にピーク波長を有し、700?750nmまで裾をひくブロードな発光スペクトルを発光可能であるそれぞれイットリウムの一部がガドリウムに置換された第1の蛍光体と第2の蛍光体を含んでなり、該第1と第2の蛍光体のイットリウム・アルミニウムガーネット系蛍光体におけるガドリウムによる置換量がお互いに異なる請求項3記載の発光装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-01-28 
結審通知日 2013-01-30 
審決日 2013-02-15 
出願番号 特願平10-508693
審決分類 P 1 123・ 121- YA (H01L)
P 1 123・ 55- YA (H01L)
P 1 123・ 536- YA (H01L)
P 1 123・ 537- YA (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柏崎 康司門田 かづよ  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 江成 克己
服部 秀男
登録日 2003-12-19 
登録番号 特許第3503139号(P3503139)
発明の名称 発光装置と表示装置  
代理人 古城 春実  
代理人 加治 梓子  
代理人 吉村 誠  
代理人 鮫島 睦  
代理人 黒田 健二  
代理人 古城 春実  
代理人 池上 慶  
代理人 言上 恵一  
代理人 田村 啓  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 田村 啓  
代理人 ▲高▼橋 綾  
代理人 ▲高▼橋 綾  
代理人 加治 梓子  
代理人 鮫島 睦  
代理人 牧野 知彦  
代理人 牧野 知彦  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 言上 恵一  
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