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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1278100
審判番号 不服2012-19093  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-10-01 
確定日 2013-08-14 
事件の表示 特願2008-199200「レーザダイオードアレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月30日出願公開、特開2008-263238〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成6年11月11日(パリ条約による優先権主張1993年11月22日、米国)の特許出願である特願平6-278043号(以下「原々出願」という。)の一部を平成15年2月19日に新たな特許出願とした特願2003-40908号(以下「原出願」という。)の一部をさらに平成20年8月1日に新たな特許出願としたものであって、その請求項に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年3月6日に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「第1の平坦な取付面及び第3の平坦な取付面を有するサブマウントと、
第1の検知可能な特徴、第2の平坦な取付面、及び第1のレーザストライプが設けられた面を有する第1のレーザダイオードと、
第2の検知可能な特徴、第4の平坦な取付面、及び第2のレーザストライプが設けられた面を有する第2のレーザダイオードと、
を備え、
前記第1のレーザダイオードの第1の検知可能な特徴が、前記第1のレーザストライプが設けられた面に設けられた第1の溝であり、
前記第2のレーザダイオードの第2の検知可能な特徴が、前記第2のレーザストライプが設けられた面に設けられた第2の溝であり、
前記第1の溝は、前記第2の平坦な取付面と前記第1のレーザストライプが設けられた面との第1の交差線に沿って、前記第1のレーザストライプから予め定められた第1の距離だけ、離間し、
前記第2の溝は、前記第4の平坦な取付面と前記第2のレーザストライプが設けられた面との第2の交差線に沿って、前記第2のレーザストライプから予め定められた第2の距離だけ、離間し、
前記第1のレーザダイオードの第2取付面が前記サブマウントの第1の平坦な取付面に取り付けられかつ前記第2のレーザダイオードの第4取付面が記サブマウントの第3の平坦な取付面に取り付けられ、前記第1の交差線と前記第2の交差線とが平行であり、前記第1の溝と前記第2の溝は互いに、前記第1及び第2の交差線に沿って予め定められた第3の距離だけ離間している
ことを特徴とするレーザダイオードアレイ。」

2 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、原々出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭56-180038号(実開昭58-085368号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。)。

(1)「以下この考案の実施例を図面を参照して説明する。第1図はこの考案の第1の実施例を示す図である。この図において、1,2はレーザダイオードアレイである。このレーザダイオードアレイ1,2は、それぞれ発光部3(レーザダイオード)をピッチPで複数個有する。
この考案の第1の実施例では、これら2つのレーザダイオードアレイ1,2を用いる。これら2つのレーザダイオードアレイ1,2を、放熱体4の両側面にP/2ずらしてダイスボンドすることにより、1つのレーザダイオードアレイ装置を構成する。
このような装置においては、レーザダイオードアレイ1の発光部3のないところにレーザダイオードアレイ2の発光部3が入る。したがって、ピッチP/2配列したレーザダイオードアレイと等価となり、ピッチP/2で配列したのと等価なレーザ発光パターンを得ることができ、第2図に示すように2倍の解像の記録が可能となる。
しかし、レーザダイオードアレイ1,2個々においては、発光部3換言すれば発熱部のピッチはPである。したがって、熱抵抗を大きくせずに、発光部3(発熱部)相互の熱の影響を少なくすることができ、過剰な接合温度の上昇をともなわないで動作させることができる。
なお、放熱体4に対するレーザダイオードアレイ1,2のダイスボンドが、実体顕微鏡下での作業であるから、2つのレーザダイオードアレイ1,2のずれをP/2に合わせることは容易に実行できる。」(3頁3行?4頁12行)
そして、第1図には、レーザダイオードアレイ1,2が放熱体4の両側面にダイスボンドされた様子が示されており、ここで、レーザダイオードアレイ1,2は複数個の発光部3が配列する方向に長い長方形で示され、また、放熱体4は凸形状で示され、放熱体4の凸部の左側にレーザダイオード1、右側にレーザダイオード2がそれぞれ当接している様子が示されている。
ここで、第1図は、次のものである。


(2)「第4図は、レーザダイオードアレイと放熱体とのダイスボンド部を詳細に示す図である。この図において、4は放熱体で、銅ブロック5に、PN分離されたシリコン基板6を保持して構成される。シリコン基板6には、レーザダイオードアレイの各レーザダイオードのピッチに合わせて電極7が設けられている。一方、8がレーザダイオードアレイであり、このレーザダイオードアレイ8は、各レーザダイオードの電極9が、前記シリコン基板6の各電極7にダイスボンドされる。」(5頁5?14行)
そして、第4図には、レーザダイオードアレイと放熱体とのダイスボンド部の詳細が示され、ここで、レーザダイオードアレイ8は、その電極9と電極9の間に溝を有するものであることが見てとれる。
ここで、第4図は、次のものである。


3 引用発明
上記2によれば、引用刊行物には
「発光部3(レーザダイオード)をピッチPで複数個有するレーザダイオードアレイ1,2を放熱体4の両側面にP/2ずらしてダイスボンドしたレーザダイオードアレイ装置であって、
放熱体4の片方の側面にレーザダイオードアレイ1がダイスボンドされ、ピッチP/2配列したレーザダイオードアレイと等価となるように、レーザダイオードアレイ1の発光部3のないところに発光部3が入るようにレーザダイオードアレイ2が放熱体4の他方の側面にダイスボンドされており、
レーザダイオードアレイは、各レーザダイオードの電極9と電極9の間に溝を有しているレーザダイオードアレイ装置。」(以下「引用発明」という。)
が記載されているものと認められる。

4 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明における「放熱体4の片方の側面」及び「放熱体4の他方の側面」がそれぞれ本願発明の「第1の平坦な取付面」及び「第3の平坦な取付面」に相当するところであり、引用発明の「放熱体4」は、本願発明の「第1の平坦な取付面及び第3の平坦な取付面を有するサブマウント」に相当する。

(2)引用発明の「発光部3(レーザダイオード)」は、本願発明の「第1のレーザストライプ」に相当する。
ここで、請求人は、審判請求の理由(平成24年11月9日提出の手続補正書5頁下4?3行)に、「本願の図3に示すように、レーザダイオード12a、12bにおいて、レーザストライプ30a、30bが設けられた面は、図3の紙面に平行な面であることが明確です。」と記載していることに照らすと、本願発明の「第1のレーザストライプが設けられた面」とは、本願の図3の紙面に平行な(第1のレーザダイオードの)面のことであるから、引用発明の「発光部3(レーザダイオード)をピッチPで複数個有するレーザダイオードアレイ1の(引用刊行物第1図において紙面に平行な)面」が本願発明の「第1のレーザストライプが設けられた面」に相当する。

(3)ア また、引用発明における「レーザダイオードアレイ1の(放熱体4の片方の面にダイスボンドされる)面」、すなわち、「引用刊行物第1図におけるレーザダイオードアレイ1の右側の面」が本願発明の「第2の平坦な取付面」に相当する。

イ 請求人は、平成25年2月27日に行った当審との面接において、引用刊行物においては、電極9、7によって、凹凸が生じるので、本願の「平坦な取付面」に対応する面がない旨主張する。
しかるに、本願明細書には、「平坦な取付面」についてそれ以上の説明をする記載はなく、原々出願ないし原出願の願書に最初に添付した明細書には、「平坦な取付面」の記載自体がない。かかる事情のもとにおいては、本願が適法な分割出願であるというためには、本願発明でいう「平坦な取付面」とは、原々出願ないし原出願の願書に添付した図面の図1ないし図4において、その取り付け部が直線で図示されることに基づくものと解されるところであり、それ以上に格別の構成を意味するものと解することはできない。
そして、引用刊行物の第1図においても取り付け部は直線で図示されるものと認められるから、引用発明のレーザダイオードアレイ1も「平坦な取付面」を有するものというべきである。
したがって、「平坦な取付面」に関し、格別の相違点があるとはいえない。

(4)ア さらに、引用発明の「レーザダイオードアレイ」は、電極9と電極9の間に「溝」を有しているところ、この「溝」が検知可能なものであることは明らかであり、引用発明の「(レーザダイオードアレイ1が有する)溝」は、本願発明の「(第1のレーザダイオードが有する)第1の検知可能な特徴」に相当するといえる。

イ 請求人は、平成25年2月27日に行った当審との面接において、引用刊行物の溝は、レーザダイオードアレイの各レーザダイオード間に形成されたものであって、レーザダイオード自体に形成されたものではない旨主張する。
しかし、本願発明の「レーザダイオード」がアレイであってはならないものと認めるべき根拠は見当たらず、引用発明の「レーザダイオードアレイ」は「アレイ状のレーザダイオード」とも表現できるものであるから、レーザダイオードがアレイ状であるとレーザダイオードでなくなるものとも認められない。したがって、上記アのとおり、引用発明の「(レーザダイオードアレイ1が有する)溝」は、本願発明の「(第1のレーザダイオードが有する)第1の検知可能な特徴」に相当するといえるものである。

(5)以上によれば、引用発明の「発光部3(レーザダイオード)をピッチPで複数個有するレーザダイオードアレイ1」は、本願発明の「第1の検知可能な特徴、第2の平坦な取付面、及び第1のレーザストライプが設けられた面を有する第1のレーザダイオード」に相当する。

(6)同じく、引用発明の「レーザダイオードアレイ2」は、本願発明の「第2の検知可能な特徴、第4の平坦な取付面、及び第2のレーザストライプが設けられた面を有する第2のレーザダイオード」に相当するといえる。

(7)上記(4)のとおり、引用発明の「(レーザアレイ1が有する)溝」が本願発明の「(第1のレーザダイオードが有する)第1の検知可能な特徴」に相当するから、引用発明は、本願発明と同様に「前記第1のレーザダイオードの第1の検知可能な特徴が、前記第1のレーザストライプが設けられた面に設けられた第1の溝」となっている。

(8)同じく、引用発明の「レーザアレイ2」についてみれば、引用発明においては、本願発明と同様に「前記第2のレーザダイオードの第2の検知可能な特徴が、前記第2のレーザストライプが設けられた面に設けられた第2の溝」となっている。

(9)ア 引用発明の「(レーザダイオードアレイ1が有する)溝」は、レーザダイオードの電極9と電極9の間に設けられているから、引用刊行物の第1図でいえば、各発光部3(レーザダイオード)の間に設けられていることが明らかであり、溝と発光部3の距離は、引用刊行物第1図における縦方向距離において、1/2P(ピッチ)と認められ、この距離は、本願発明における「予め定められた第1の距離」といえる。
したがって、引用発明は、本願発明と同様に「前記第1の溝は、前記第2の平坦な取付面と前記第1のレーザストライプが設けられた面との第1の交差線に沿って、前記第1のレーザストライプから予め定められた第1の距離だけ、離間し」たものといえる。

イ 請求人は、平成25年2月27日に行った当審との面接において、引用刊行物においては、本願の「平坦な取付面」に対応する面がないから、本願発明の「前記第2の平坦な取付面と前記第1のレーザストライプが設けられた面との第1の交差線」がない旨主張するが、上記3(イ)で検討したように、「平坦な取付面」に対応する面がないとの前提において採用できない。

(10)同じく、引用発明の「レーザダイオードアレイ2」についてみれば、引用発明は、本願発明と同様に「前記第2の溝は、前記第4の平坦な取付面と前記第2のレーザストライプが設けられた面との第2の交差線に沿って、前記第2のレーザストライプから予め定められた第2の距離だけ、離間し」たものといえる。

(11)前記したように、引用発明の「レーザダイオードアレイ1」、「レーザダイオードアレイ2」及び「放熱体4」が本願発明の「第1のレーザダイオード」、「第2のレーザダイオード」及び「サブマウント」にそれぞれ相当しており、引用発明は、引用刊行物の第1図からも明らかなように、本願発明と同様に「前記第1のレーザダイオードの第2取付面が前記サブマウントの第1の平坦な取付面に取り付けられかつ前記第2のレーザダイオードの第4取付面が記サブマウントの第3の平坦な取付面に取り付けられ」ている。
また、引用発明の「放熱体4」の両側面は、第1図に示されるように平行であるから、引用発明は、本願発明と同様に「前記第1の交差線と前記第2の交差線とが平行」であるといえる。
さらに、上記(9)アのとおり、引用発明の「溝」は、発光部3と発光部3の中間(発光部3から1/2Pの位置)に設けられているものと認められるから、引用発明の「(レーザダイオードアレイ1が有する)溝」と「(レーザダイオードアレイ2が有する)溝」の距離も1/2P(ピッチ)と認められ、この距離が本願発明でいう「第3の距離」に相当するところであり、引用発明は、本願発明と同様に「前記第1の溝と前記第2の溝は互いに、前記第1及び第2の交差線に沿って予め定められた第3の距離だけ離間している」といえる。

(12)以上のとおりであって、本願発明の「レーザダイオードアレイ」と引用発明の「レーザダイオードアレイ装置」に格別の相違は認められない。


5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用刊行物に記載された発明と認められ、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-15 
結審通知日 2013-03-19 
審決日 2013-04-01 
出願番号 特願2008-199200(P2008-199200)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 道祖土 新吾  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 松川 直樹
江成 克己
発明の名称 レーザダイオードアレイ  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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