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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20129701 審決 特許
不服201126007 審決 特許
不服201217207 審決 特許
不服201126373 審決 特許
不服2012475 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04D
管理番号 1278145
審判番号 不服2012-5822  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-30 
確定日 2013-08-15 
事件の表示 特願2008-212179「隅棟屋根の葺設方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日出願公開、特開2010- 47947〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成20年8月20日の出願であって、平成23年12月12日付けで手続補正がなされ、平成24年1月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年3月30日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成24年11月12日付けで審尋が通知され、平成25年1月11日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年3月30日付け手続補正の却下の決定

〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年3月30日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成24年3月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1に、
「4寸勾配、4.5寸勾配、又は5寸勾配に対応できる、利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造であり、
この隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとし、
前記4寸勾配、4.5寸勾配、又は5寸勾配に対応して、その利き足寸法を、275mm、280mm、又は285mmに調整して葺設するとともに、前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、306mmを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、204mmを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する隅棟屋根の葺設方法において、
前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設する。」とあったものを、
「4寸勾配、4.5寸勾配、又は5寸勾配に対応できる、利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造であり、
この隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとし、
前記4寸勾配、4.5寸勾配、又は5寸勾配に対応して、その利き足寸法を、275mm、280mm、又は285mmに調整して葺設するとともに、前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、306mmを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、204mmを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する隅棟屋根の葺設方法において、
前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設することで、
前記4寸勾配、前記4.5寸勾配、又は前記5寸勾配の全てに対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして葺設する。」とする補正を含むものである。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を、
「前記4寸勾配、前記4.5寸勾配、又は前記5寸勾配の全てに対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして葺設する」ものに限定するものである。

2 補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-256514号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同様。)

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隅棟瓦及び該隅棟瓦近辺に葺設する瓦を定型化する様にした平板瓦及び該平板瓦の葺設工法に関する。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来技術に基づく、千鳥葺きする瓦の寸法が一般的なものと大きく異なる課題に鑑み、軒先寸法における両端の役瓦を除く寸法を、平板瓦の利き幅の1/3の幅の倍数とすると共に、葺設状態の平板瓦の利き足の水平投影寸法を利き幅の5/6として千鳥葺きし、両側の役瓦と、各列の両端の平板瓦の間に形成される、平板瓦の利き幅の1/3の幅又は2/3の幅の隙間に、平板瓦の利き幅の1/3又は2/3の利き幅の調節瓦を葺設すれば、平板瓦は正方形に近くなって、一般的な平板瓦の形状の近似形にすることが可能になり、而も平板瓦を三角形状に分割して形成する瓦を使用せずに瓦屋根を構築可能にして、上記課題を解決する。
而も、平板瓦の利き幅を300mmにすれば、一般的な平板瓦と略同じ大きさにすることが可能になり、既設の製造ラインの変更が金型を除き略不要になる。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、利き足の水平投影寸法が利き幅の5/6となる様に屋根勾配により重ね寸法を調節可能にしたので、千鳥葺きは下列の瓦の中央に上列の隣接する瓦の境界が位置することから、隅棟瓦を全て同形にすると、上列の役瓦の下方に位置する瓦の利き幅と、その隣に葺設する平板瓦の利き幅の1/2を足して利き幅の5/6を引く、即ち上列の役瓦の下方に位置する瓦の幅から利き幅の1/3を引けば、上列の役瓦の隣に葺設する瓦の利き幅になることから、桁行き方向の葺設列における役瓦を除いた部分の寸法を、利き幅の1/3の倍数にすれば役瓦の隣に葺設する瓦の利き幅は、平板瓦の利き幅の1/3又は2/3のものか、平板瓦そのものになるため、平板瓦と2種類の利き幅の瓦の3種類、場合によっては平板瓦と、該平板瓦の利き幅の1/3の利き幅の瓦の2種類を用意すれば、平板瓦の分割により発生する廃材を皆無にしつつ、完璧な瓦屋根を容易に構築することが出来る。
又、上記平板瓦は正方形に近くなって、一般的な平板瓦の形状の近似形になり、利き幅を300mmとすれば、一般的な平板瓦の利き幅の303?305mmに近似させることが可能になることら、金型を少し修正すれば、従来の製造ラインをそのまま利用することが出来、而も利き足の水平投影寸法は250mmとなるため、寄棟屋根における両側の三角形状の屋根面における軒先寸法を500mm単位の寸法にすることが出来、よって瓦の割付け作業を更に容易に構築することが出来る。
【0007】
軒先寸法における両端の役瓦を除く寸法を、平板瓦の利き幅の1/3の幅の倍数とすると共に、葺設状態の平板瓦の利き足の水平投影寸法を利き幅の5/6として千鳥葺きし、両側の役瓦と、各列の両端の平板瓦の間に形成される、平板瓦の利き幅の1/3の幅又は2/3の幅の隙間に、平板瓦の利き幅の1/3又は2/3の利き幅の調節瓦を葺設する様にしたので、所定個所に所定の平板瓦又は調節瓦を規則的に葺設して行けば完璧な瓦屋根にすることが出来るため、地割り作業及び葺設作業の容易化を図ることが出来る等その実用的効果甚だ大である。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る千鳥葺き用の平板瓦1、1a…にあっては、利き幅Wで、利き足B1が調節可能なものであり、屋根勾配θに拘らず、下記数式(1)の条件で葺設可能なものとしている。
B=B1・cosθ………(1)
つまり、屋根伏図とした場合、桁行方向がW、勾配方向がBの矩形になり、B=5W/6とすれば、葺き幅が1列毎に2B(5W/3)ずつ変化することになる。
従って、n列目の桁行き寸法L_(n)は下記数式(2)の通りである。
Ln =L_(n-1)-2B(n≧2)
=L_(n-1)-5W/3………(2)
W/3=wとすると、下記数式(3)が成立する。
L_(n-1)-L_(n)=-5w………(3)
つまり、1列毎に幅5wだけ狭くなるが、これにより各列に生じる幅W以下の隙間も単位寸法wの倍数になる。
【0009】
第n列の葺設始端側に隙間無く平板瓦1が葺設されている場合、図2に示す様に、
第(n+1)列の葺設始端側には、W+(W/2)-(5W/6)=2W/3、即ち幅2wの隙間が生じるため、利き幅2wの調節瓦2aを葺設し、
第(n+2)列の葺設始端側には、2W/3+(W/2)-(5W/6)=W/3、即ち幅wの隙間が生じるため、利き幅wの調節瓦2を葺設し、
第(n+3)列の葺設始端側には、W/3+(W/2)-(5W/6)=0、即ち隙間無く平板瓦1を葺設する。
つまり、葺設始端側に形成される隙間の幅は単位寸法wの倍数になり、葺設始端側に隙間が無い列の直上列の葺設始端側には幅2wの隙間が、幅2wの隙間のある列の直上列には幅wの隙間が夫々形成されるため、該当する調節瓦2、2aを葺設すると共に、葺設始端側に幅wの隙間のある列の直上列には隙間がないため、そのまま平板瓦1を葺設するというパターンが繰り返される。
そして、葺設終端側に形成される隙間も単位寸法wの倍数になり、而も上記と同様のパターンが繰り返される。
【0010】
寄棟屋根における両側の平面視直角三角形状の屋根面の軒先寸法S1 は、下記数式(4)の通りである。
S1 =(5W/6)・2m (m:瓦葺設列の総数)
=W/3・5m =5w・m………(4)
よって、屋根面両側の役瓦(隅棟瓦)3、3aの頭側幅Cは単位寸法wの倍数にするのが好ましい。
しかし、役瓦(隅棟瓦)3、3aの頭側幅Cが単位寸法wの倍数でない場合は、幅2C以上で該幅2Cに近い単位寸法wの倍数の1/2を仮の幅寸法C’とし、誤差(C’-C)だけ左右に隙間を空けて葺設する様にしている。
【0011】
尚、図面上、屋根面の両側に配置される役瓦3、3aは隅棟瓦であるが、直交する屋根の境界に配置する谷瓦(図示せず)であっても良い。」

エ 「【実施例1】
【0012】
本発明に係る平板瓦1、1a…の利き幅Wは、一般的な平板瓦の寸法に近い300mmにするのが最適であり、この場合、利き足B1の水平投影寸法Bは250mmとなり、単位寸法wは100mmになるため、調節瓦2の利き幅wは100mm、調節瓦2aの利き幅2wは200mmとなり、役瓦(左右隅棟瓦)3、3aの頭側幅Cを300mm以上で300mmに近い400mmにし、屋根下地を、軒先寸法L1 、S1 が100mmの倍数になる様に設計すれば、その他の瓦を使用せずに葺設可能になる。
又、図1に示す様に、寄棟屋根における台形状の屋根面の第1列目に平板瓦1、1a…を17枚、利き幅2wの調節瓦2aを1枚葺設した場合、軒先寸法L1 は
L1 =400mm×2+300mm×17+200mm×1=6100mm
となり、屋根面におけるの瓦葺設列の総数m=8とすると、寄棟屋根における両側の三角形状の屋根面の軒先寸法S1 は、
S1 =250mm×8×2=4000mm
となる。」

オ 上記アないしエからみて、引用例1には、
「隅棟瓦及び該隅棟瓦近辺に葺設する瓦を定型化する様にした平板瓦及び該平板瓦の葺設工法であって、
千鳥葺き用の平板瓦1、1a…は、利き幅Wで、屋根勾配θに拘らず、利き足B1が調節可能なものであり、
桁行き方向の葺設列における両端の役瓦(隅棟瓦3、3a)を除いた部分の寸法を、平板瓦1、1a…の利き幅Wの1/3幅である単位寸法w(=W/3)の倍数にすることにより、役瓦(隅棟瓦3、3a)の隣に葺設する瓦の利き幅は、平板瓦1、1a…の利き幅Wの1/3又は2/3の利き幅の調節瓦2、2aか、平板瓦1そのものを葺設するものであって、
第n列の葺設始端側に隙間無く平板瓦1が葺設されている場合、
第(n+1)列の葺設始端側には、幅2wの隙間が生じるため、利き幅2wの調節瓦2aを葺設し、
第(n+2)列の葺設始端側には、幅wの隙間が生じるため、利き幅wの調節瓦2を葺設し、
第(n+3)列の葺設始端側には、隙間無く平板瓦1を葺設することにより、
葺設始端側に形成される隙間の幅は単位寸法wの倍数になり、葺設始端側に隙間が無い列の直上列の葺設始端側には幅2wの隙間が、幅2wの隙間のある列の直上列には幅wの隙間が夫々形成されるため、該当する調節瓦2、2aを葺設すると共に、葺設始端側に幅wの隙間のある列の直上列には隙間がないため、そのまま平板瓦1を葺設するというパターンが繰り返され、
そして、葺設終端側に形成される隙間も単位寸法wの倍数になり、而も上記と同様のパターンが繰り返されるものであって、
平板瓦1、1a…の利き幅Wは、一般的な平板瓦の寸法に近い300mmにすると、利き足B1の水平投影寸法Bは250mm、単位寸法wは100mm、調節瓦2の利き幅wは100mm、調節瓦2aの利き幅2wは200mmとなる、
平板瓦と2種類の利き幅の瓦の3種類を用意すれば、平板瓦の分割により発生する廃材を皆無にしつつ、完璧な瓦屋根を容易に構築することが出来る、平板瓦の葺設工法。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-88246号公報(以下「引用例2」という。)」には、次の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、寄棟建屋の隅棟を美しく葺上げ得る隅棟部葺工法に関する。」

イ 「【0004】
【課題を解決するための手段】上記に鑑み、本発明は、工場生産された七分平板棧瓦又は五分平板棧瓦を利用して、葺工現場で切断することなく屋根葺工ができること、葺工の簡略化又は美麗な葺上げができること、等を目的として下記の構成を採用する。
【0005】先ず、40枚判平板棧瓦(この40枚判平板棧瓦の寸法の一例は、きき幅303mm?306mm、きき足280mmである。以下同じ)では、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法において、その軒先方向における一列群を前記隅棟瓦に隣接して平板棧瓦を直接葺工し、続いて前記構成の平板棧瓦と同構成の平板棧瓦(同構成の平板棧瓦)を順次葺工して、当該一列群を葺上げる。次いで、この一列群の棟方向における二列群に次の隅棟瓦を葺上げ、この隅棟瓦に七分平板棧瓦を直接葺工し、次いで同構成の平板棧瓦を順次葺工して、当該二列群を葺上げる。その後、この二列群の棟方向における三列群にさらに次の隅棟瓦を葺上げ、この隅棟瓦に七分平板棧瓦を直接葺工するとともに、この七分平板棧瓦に続けてもう一枚の七分平板棧瓦を葺工した後に、同構成の平板棧瓦を順次葺工して、当該三列群を葺上げる。前述した一、二、三列群の葺上げ操作及び作業を1レピートの規格として、順次棟方向に向って葺上げていくことを特徴とする構造である。」

ウ 「【0007】
【作用】次に、本考案の葺上げ状態(作用)を説明する。
【0008】先ず、40枚判平板棧瓦を説明すると、瓦棧(図示せず)に係止した引掛け(掛け止め)、及び屋根地、広小舞等への釘止めを介して、隅棟の軒先(例えば、一列群)に一体形の隅棟瓦Aを葺くとともに、この一体形の隅棟瓦Aの棧側7には、平板棧瓦Bの差込み側(番号なし、以下同じ)が差し込まれる。また前記一体形の隅棟瓦Aの差込み側3には、平板棧瓦Bの棧側(番号なし、以下同じ)が葺かれ、前記差込み側3のアンダーラップ1上に、平板棧瓦Bの棧側をかぶせ葺きする(棧側7と差込み側3は同じ葺工がされるので、棧側7で説明する。)。続いて、この平板棧瓦Bの棧側には同じ構成の平板棧瓦B(以下、この平板棧瓦Bと同じ構成のものを云う。)の差込み側が葺かれ、このような葺工が繰り返され、当該一列群の葺工が終了する。次いで、隅棟の軒先より二列目(例えば、二列群)に一体形の隅棟瓦Aを葺くとともに、この一体形の隅棟瓦Aの棧側7には、七分平板棧瓦B’の差込み側が差し込まれる。続いて、この七分平板棧瓦B’の棧側には同じ構成の平板棧瓦Bの差込み側が葺かれ、このような葺工が繰り返され、当該二列群の葺工が終了する。次いで、隅棟の軒先より三列目(例えば、三列群)に一体形の隅棟瓦Aを葺くとともに、この一体形の隅棟瓦Aの棧側7には、七分平板棧瓦B’の差込み側が差し込んだ後、続いて、この七分平板棧瓦B’の棧側には同じ構成の七分平板棧瓦B’(以下、この七分平板棧瓦B’と同じ構成のものを云う。)の差込み側が葺かれる。そして、続いて、この七分平板棧瓦B’の棧側には同じ構成の平板棧瓦Bの差込み側が葺かれ、このような葺工が繰り返され、当該三列群の葺工が終了する。以上で説明した一列群?三列群を1レピートでかつかぶせ葺きすることにより、寄棟屋根の葺工が終了すると、40枚判平板棧瓦の千鳥葺きの瓦屋根が施工される。尚、一体形の隅棟瓦A、平板棧瓦B、七分平板棧瓦B’の寸法関係の一例は図1に示す通りである。」
【0009】(略)
【0010】以上の葺工順序、同方法、かぶせ葺き方法等は、それぞれ一例を説明したものであり、この説明例、図例に限定されない。また筋葺きもできる。更には隅棟線は原則として、カット頭部で分断されることから、この隅棟線の乱れもなく美麗に葺工できる二次的な効果を有する。
【0011】尚、左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2とでなる切隅瓦Cでは、先ず、隅棟に左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2を葺工するが、この左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2の間に隙間Dを形成し、この左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2を番線又は緊締手段(図示しない)で連係する。このような操作及び作業を繰り返して、隅棟に左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2を葺工して隅棟を葺上げた後、この隅棟に棟冠瓦Eを葺上げ、前記隙間Dを隠蔽するとともに、釘止めして切隅瓦Cと棟冠瓦Eとを同時に固定する。その後、平板棧瓦B、七分平板棧瓦B’、五分平板棧瓦B”を葺工することは、前述の例と同様である。
【0012】以上の葺工順序、同方法、かぶせ葺き方法等は、それぞれ一例を説明したものであり、この説明例、図例に限定されない。また筋葺きもできる。更には異なった屋根勾配に順応できる。更には、平板棧瓦B等のきき足は、原則として瓦棧の設ける位置関係により自在であること、及び屋根勾配等により変更されること、等は従来と同様である。」

エ 「【0013】
【実施例】以下、本発明に一実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】先ず、図1?図5は平面視してほぼ方形状を呈する一体形の隅棟瓦Aを示しており、この一体形の隅棟瓦Aは、水返し突条片2を有するアンダーラップ1を備えた差込み側3と、カット形状の尻側6と、棧側7と、この棧側6と前記差込み側3との頭側縁を結ぶ一対の頭部見付け15、15a及び当該一対の頭部見付け15、15aの連設部位に設けられたカット頭部15bとでなる頭側5と、で構成される。一体形の隅棟瓦Aの頭側5は、その隅角がカットされたカット頭部15bを形成し、このカット頭部15bにより平板棧瓦(後述する)の瓦面積より小さくする。16は尻側6と差込み側3及び棧側7の尻側部分に亘って設けられた山形状の水返し突条である。8は一体形の隅棟瓦Aの表面4aに、その尻側6やや下方より、カット頭部15bと一対の頭部見付け15、15aとの境目に亘って設けられた略三角形状の2条ラインで、これにより、前記表面4aに三つの面体114、114a、114bが形成される(いわゆる、三面体が形成される。)。尚、図中9は釘孔を示す。
【0015】また一体形の隅棟瓦Aの裏面4bには、その棧側7に雨水遮蔽突条10が設けられ、またその頭側5には、前記表面4aの一対の頭部見付け15、15a及びカット頭部15bに対応する一対の頭部見付け突起条11、11a及びカット頭部突起条11bが設けられている。そして、図2の如く、前記一対の頭部見付け突起条11、11aは、下方の平板棧瓦の尻側(図示せず)やや下側の平板棧瓦本体(後述する)に当接され、またカット頭部突起条11bが、下方の隅棟瓦の尻側6やや下側の一体形の隅棟瓦Aに当接される(いわゆる施工される。)。
【0016】図中12は前記裏面4bで、かつ前記アンダーラップ1の裏面部位に設けられたる引掛けで、この引掛け12は、図示しない瓦棧に掛け止めされる。
【0017】また図中13は、前記裏面4bで、かつ前記アンダーラップ1の裏面部位で、しかも前記引掛け12と対峙位置に設けられた凹部(設けない場合も有り得る。)で、この凹部13には後述する平板棧瓦の尻側に設けた水返し突条が挿設される。
【0018】次に、図6は平面視して平板形状を呈する平板棧瓦Bを示しており、この平板棧瓦Bは、水返し突条片20を有するアンダーラップ21を備えた差込み側23と、水返し突条24を有する尻側26と、棧側27と、この頭側25と、で構成される。図7に示す七分平板棧瓦B’、及び図8に示す五分平板棧瓦B”をそれぞれ書するが、この七分平板棧瓦B’、及び五分平板棧瓦B”は、前記平板棧瓦Bと同じ構成となっている。但し、そのきき幅がそれぞれほぼ七分寸法、ほぼ五分寸法となっている。
【0019】続いて、図10?図16は平面視してほぼ三角形状の左側の切隅瓦C1と、ほぼ同形状で対称関係となる右側の切隅瓦C2と、構成されるほぼ方形状を呈する隅棟瓦Cを示している。左側の切隅瓦C1は、水返し突条片42を有するアンダーラップ41を備えた差込み側43と、カット形状の半截尻側46と、立上壁47を有する接合面側48と、頭部見付け49aを有する半截頭側49と、で構成されている。また右側の切隅瓦C2は、立上壁47’を有する接合面側48’と、棧側50と、頭部見付け49a’を有する半截頭側49’と、で構成されている。この左側及び右側の切隅瓦C1、C2とは、図示の如く、隙間Dをもって葺かれ、この隙間Dを隠蔽するように棟冠瓦Eが葺かれる。前記隙間Dを利用して、当該隅棟瓦Cのきき幅を調整したり、又は左側、右側の切隅瓦C1、C2の傾斜角度或いは葺き合わせ位置等の調整に利用する。また前記頭部見付け49a、49a’の半截頭側49、49’には立上壁47、47’の挿入を許す切込み51、51’が設けられている。
【0020】尚、図中52は左側、右側の切隅瓦C1、C2の尻側に設けた釘孔、53、53’は左側、右側の切隅瓦C1、C2の尻側に設けた水返し突条、をそれぞれ示す。また54、54’はそれぞれ左側、右側の切隅瓦C1、C2の裏面に設けた引掛けであり、図示しない瓦棧に係止される。
【0021】前記棟冠瓦Eは前記左側の切隅瓦C1と右側の切隅瓦C2とで形成する隙間Dを隠蔽するものであり、構成される截頭山形状を呈する隅棟瓦Cを示している。前記隙間Dは、例えば、きき幅調整、又は地割り等の要求に対応することを主たる目的とする。」

オ 「【0022】
【発明の効果】本発明は、以上で説明した如く、隅棟瓦を葺工し、1レピートの規格を構成し、この1レピートを繰り返して各寸法の屋根を施工する隅棟部葺工法であるので、葺工現場で切断することなく屋根葺工ができること、葺工の簡略化又は美麗な葺上げができること、等の効果を有する。
【0023】殊に本発明では、軒先を本来の平板棧瓦で葺工し、その次の葺工で、七分平板棧瓦を数枚介在するか、又は五分平板棧瓦を数枚介在するか、の葺工法であり、確実かつ簡易に、千鳥葺き屋根等を施工できる特徴を有する。」

カ 【図10】において、平板桟瓦Bと七分平板桟瓦B’の寸法は、段落【0004】における40枚判平板桟瓦の寸法の単位を考慮すれば、平板桟瓦Bのきき幅は305mm、七分平板桟瓦B’のきき幅は205mmと認められる。

キ 上記アないしカからみて、引用例2には、
「40枚判平板棧瓦(この40枚判平板棧瓦の寸法の一例は、きき幅303mm?306mm、きき足280mmである。)での、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法において、
その軒先方向における一列群は、先ず、隅棟に、平面視してほぼ三角形状の左側の切隅瓦C1と、ほぼ同形状で対称関係となる右側の切隅瓦C2とで構成されるほぼ方形状を呈する隅棟瓦Cを葺工し、該隅棟瓦Cに隣接して平板棧瓦Bを直接葺工し、
次いで、この一列群の棟方向における二列群に次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工し、
その後、この二列群の棟方向における三列群にさらに次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工するとともに、この七分平板棧瓦B’に続けてもう一枚の七分平板棧瓦B’を葺工し、
前述した一、二、三列群の作業を1レピートの規格として、順次棟方向に向って葺上げていくものであって、
平板桟瓦Bのきき幅は305mm、七分平板桟瓦B’のきき幅は205mmであり、
異なった屋根勾配に順応でき、更には、平板棧瓦B等のきき足は、屋根勾配等により変更される、
葺工現場で切断することなく屋根葺工ができ、葺工の簡略化又は美麗な葺上げができ、そして軒先を本来の平板棧瓦で葺工し、その次の葺工で、七分平板棧瓦を数枚介在させる葺工法であり、確実かつ簡易に、千鳥葺き屋根等を施工できる、隅棟部葺工法。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

4 引用発明1を主引用発明として、本件補正発明の容易想到性を検討する。
(1)対比
本件補正発明と引用発明1を対比する。
ア 引用発明1は「隅棟瓦及び該隅棟瓦近辺に葺設する瓦を定型化する様にした平板瓦及び該平板瓦の葺設工法」であるので、当該「平板瓦の葺設工法」は、本件補正発明の「隅棟屋根の葺設方法」に相当し、さらに当該「平板瓦の葺設工法」により葺設された隅棟の構造は、本件補正発明の「隅棟屋根構造」に相当する。
また、当該「平板瓦の葺設工法」により葺設された隅棟の構造と、本件補正発明の「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造」とは、「平板瓦を使用する隅棟屋根構造」で共通している。

イ 引用発明1の「利き幅」,「利き足」,「葺設始端側に隙間無く葺設された『平板瓦1』」及び「調節瓦2a」は、それぞれ本件補正発明の「利き幅寸法」,「利き足寸法」,「隅棟平板瓦A」及び「隅棟平板瓦B」に相当する。

ウ 引用発明1は、「平板瓦の葺設工法」であるから、全体的に平板状の瓦を用いるものなので、引用発明1の桁行方向の葺設列の両端の「役瓦(隅棟瓦)3、3a」も、全体的には平板状であることは自明である。
そして、本件補正発明の「隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)」も、その構成からすると、桁行方向の葺設列の両端にある役瓦と言えるから、引用発明1の「役瓦(隅棟瓦)3、3a」と、本件補正発明の「隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)」とは、「隅棟平板役瓦」である点で共通している。

エ 引用発明1において、「調節瓦2a」の利き幅2w(=200mm)は、「平板瓦1」の利き幅W(=300mm)の2/3である。
そして本件補正発明においても、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法が306mm、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法が204mm、つまりは隅棟平板瓦Bの利き幅寸法は、隅棟平板瓦Aの利き幅の2/3の比率であるから、引用発明1の「利き幅Wの平板瓦1」及び「利き幅2wの調整瓦2a」と、本件補正発明の「利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦A」及び「利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦B」とは、それぞれ「利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦A」及び「利き幅寸法が、所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦B」で共通している。

オ 引用発明1の「桁行き方向の葺設列における両端の役瓦(隅棟瓦3、3a)を除いた部分の寸法を、平板瓦1、1a…の利き幅Wの1/3幅である単位寸法w(=W/3)の倍数にすることにより、役瓦(隅棟瓦3、3a)の隣に葺設する瓦の利き幅は、平板瓦1、1a…の利き幅Wの1/3又は2/3の利き幅の調節瓦2、2aか、平板瓦1そのものを葺設する」ことと、本件補正発明の「隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとし」たこと、及び「前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、306mmを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、204mmを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する」こととは、それぞれ「隅棟屋根構造の隅棟平板役瓦の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bを含むものと」すること、及び「前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、所定寸法Xを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、上記所定寸法Xの2/3の寸法を基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する」ことで、共通している。

カ 引用発明1の「第n列の葺設始端側に隙間無く平板瓦1が葺設されている場合」において、n=1となる第1列は軒先を表していることからすると、引用発明1の「第n列の葺設始端側に隙間無く平板瓦1が葺設されている場合、第(n+1)列の葺設始端側には、幅2wの隙間が生じるため、利き幅2wの調節瓦2aを葺設し、第(n+2)列の葺設始端側には、幅wの隙間が生じるため、利き幅wの調節瓦2を葺設し、第(n+3)列の葺設始端側には、隙間無く平板瓦1を葺設することにより、
葺設始端側に形成される隙間の幅は単位寸法wの倍数になり、葺設始端側に隙間が無い列の直上列の葺設始端側には幅2wの隙間が、幅2wの隙間のある列の直上列には幅wの隙間が夫々形成されるため、該当する調節瓦2、2aを葺設すると共に、葺設始端側に幅wの隙間のある列の直上列には隙間がないため、そのまま平板瓦1を葺設するというパターンが繰り返され」ることと、
本件補正発明の「前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設すること」とは、
「利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bとを、下記の様に葺設する隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、前記所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、利き幅寸法が、所定寸法Xと異なる瓦を葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に、葺設する」ことで共通している。

キ 上記アないしカからみて、本件補正発明と引用発明1とは、以下の一致点及び4つの相違点を有している。

一致点:平板瓦を使用する隅棟屋根構造であり、
この隅棟屋根構造の隅棟平板役瓦の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bとを含むものとし、
前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、所定寸法Xを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、上記所定寸法Xの2/3の寸法を基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する隅棟屋根の葺設方法において、
前記利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、前記所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bとを、下記の様に葺設する隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Xの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、前記所定寸法Xの2/3の隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、利き幅寸法が、所定寸法Xと異なる瓦を葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に、葺設する。

相違点1:本件補正発明の平板瓦は、「4寸勾配、4.5寸勾配、又は5寸勾配のすべてに対応でき、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして」いるのに対し、引用発明1は、どの勾配に対応できるのか不明であって、さらに利き足寸法も不明な点。

相違点2:本件補正発明の隅棟平板役瓦は、隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)であって、その名称から三角形であるのに対し、引用発明1の隅棟平板役瓦は、三角形かどうか不明である点。

相違点3:本件補正発明の隅棟平板瓦Aの利き幅寸法は306mm、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法は204mmであって、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、306mmを基準に調整し、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、204mmを基準に調整して各段に葺設しているのに対し、
引用発明1の隅棟平板瓦Aの利き幅寸法は300mm、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法は、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法の2/3、つまりは200mmである点。

相違点4:本願補正発明は、
隅棟平板瓦Aと、隅棟平板瓦Bとを、
1 軒先には、隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、隅棟平板瓦Bを、併設して葺設すること、
の順番で葺設し、前記1?3の葺設を屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設するのに対し、
引用発明1では、
隅棟平板瓦Aと、隅棟平板瓦Bと、利き幅寸法が、100mmの調節瓦2とを、
1 軒先には、隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次の段は、隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、その次の段には、前記利き幅寸法が、100mmの調節瓦2を葺設するものであって、
しかも前記1?3の葺設を屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設するかどうかも不明な点。

(2)判断
上記相違点1ないし4について検討する。
ア 引用例2には、上記3(2)キのとおり、引用発明2が記載されている。

イ 引用発明2の「きき幅」,「きき足」,「40枚判平板桟瓦」,「平面視してほぼ三角形状の『切隅瓦C1』と『切隅瓦C2』」,「平板桟瓦B」,「七分平板桟瓦B’」及び「寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法」は、それぞれ本件補正発明の「利き幅寸法」,「利き足寸法」,「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判」、「隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)」,「隅棟平板瓦A」,「隅棟平板瓦B」及び「隅棟屋根の葺設方法」に相当する。

ウ 引用発明2において、「40枚判平板棧瓦での、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法」で葺工された隅棟の構造は、本件補正発明の「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造」に相当する。

エ 引用発明2の「その軒先方向における一列群は、先ず、隅棟に、平面視してほぼ三角形状の左側の切隅瓦C1と、ほぼ同形状で対称関係となる右側の切隅瓦C2とで構成されるほぼ方形状を呈する隅棟瓦Cを葺工し、該隅棟瓦Cに隣接して平板棧瓦Bを直接葺工し、
次いで、この一列群の棟方向における二列群に次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工し、
その後、この二列群の棟方向における三列群にさらに次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工するとともに、この七分平板棧瓦B’に続けてもう一枚の七分平板棧瓦B’を葺工し、
前述した一、二、三列群の作業を1レピートの規格として、順次棟方向に向って葺上げていく」ことと、
本件補正発明の
「前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設すること」とは、
「前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設すること」で共通している。

オ 引用発明2の「40枚判平板棧瓦での、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法において」、「異なった屋根勾配に順応でき、更には、平板棧瓦B等のきき足は、屋根勾配等により変更される」ことと、本件補正発明の「前記4寸勾配、前記4.5寸勾配、又は前記5寸勾配の全てに対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして葺設する。」こととは、「異なった屋根勾配に対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法は、屋根勾配により変更して葺設する。」ことで共通している。

カ 上記アないしオからみて、引用発明2は、本件補正発明に沿えば、
「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造であり、
この隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとし、
前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、所定寸法Yを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、他の所定寸法Zを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する隅棟屋根の葺設方法において、
前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設することで、
異なった屋根勾配に適用でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法は、屋根勾配等により変更して葺設する。」といえる。

キ そして引用発明1及び引用発明2は、共に隅棟屋根構造に関するものであって、用意する瓦の種類少なくして、現場で切断することなく、葺工を簡略化する課題を有する点で共通していることから、引用発明1に引用発明2を適用することに格別の困難性は無い。

ク その際、引用発明1の隅棟平板瓦Aや隅棟平板瓦Bの利き幅寸法は、当業者が適宜選択し得る事項であって、引用発明1では、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法が、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法の2/3であること、また引用発明2では、40枚判平板棧瓦の寸法の一例は、きき幅303mm?306mmであること、引用発明2の隅棟平板瓦Aの利き幅寸法が305mm、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法が205mmと、本件補正発明の隅棟平板瓦A及び隅棟平板瓦Bとそれぞれ1mmの違いしかないことからすると、それらの数値に近く、2/3の比率となるような、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を306mmに、隅棟片判瓦Bの利き幅寸法を204とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

ケ さらに屋根勾配や平板瓦の利き幅寸法についても、利き幅寸法と同様に、当業者が適宜選択し得る事項であるので、引用発明2の「異なった屋根勾配に適用でき、かつ前記40枚判(この40枚判平板棧瓦の寸法の一例は、きき足280mmである。)を使用し、隅棟平板瓦A等のきき足は、屋根勾配等により変更して葺設する。」ことを引用発明1に適用する際に、平板瓦を葺設した屋根の勾配として一般的なものである4寸勾配,4.5寸勾配及び5寸勾配のすべてに対応するものとし、そしてきき足寸法は、上記各勾配の中間値である4.5寸勾配では、40枚判の一例である280mmを、4寸勾配では275mmを、5寸勾配では285mmを選択することは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

コ なお上記ケに関してさらに述べると、平板状の屋根瓦を用いた屋根の勾配が、4寸,4.5寸及び5寸程度であること、及びこれらの勾配に対して平板状の屋根瓦の利き足を、5?6mm程度の差をつけて適宜設定することは、本件出願前に周知の事項である(例:特開2007-107239号公報(【0034】参照)、特開平8-109708号公報(【0012】参照))ことからみても、引用発明1において、4寸勾配,4.5寸勾配,5寸勾配のすべてに対応するものとし、それぞれの利き足寸法を275mm,280mm,285mmを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。

サ 上記アないしコからみて、引用発明1に上記相違点1ないし4に係る本件補正発明の構成を採用することは、引用発明2から、または引用発明2及び周知事項から、当業者が容易になし得たものと認める。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する効果、周知事項の奏する効果から当業者が容易に予測できたものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 引用発明2を主引用発明として、本件補正発明の容易想到性を検討する。
(1)対比
ア 引用発明2の「きき幅」,「きき足」,「40枚判平板桟瓦」,「平面視としてほぼ三角形状の『切隅瓦C1』と『切隅瓦C2』」,「平板桟瓦B」,「七分平板桟瓦B’」及び「寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法」は、それぞれ本件補正発明の「利き幅寸法」,「利き足寸法」,「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判」、「隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)」,「隅棟平板瓦A」,「隅棟平板瓦B」及び「隅棟屋根の葺設方法」に相当する。

イ 引用発明2において、「40枚判平板棧瓦での、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法」で葺工された隅棟の構造は、本件補正発明の「利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造」に相当する。

ウ 引用発明2の
「その軒先方向における一列群は、先ず、隅棟に、平面視してほぼ三角形状の左側の切隅瓦C1と、ほぼ同形状で対称関係となる右側の切隅瓦C2とで構成されるほぼ方形状を呈する隅棟瓦Cを葺工し、該隅棟瓦Cに隣接して平板棧瓦Bを直接葺工し、
次いで、この一列群の棟方向における二列群に次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工し、
その後、この二列群の棟方向における三列群にさらに次の隅棟瓦Cを葺上げ、この隅棟瓦Cに七分平板棧瓦B’を直接葺工するとともに、この七分平板棧瓦B’に続けてもう一枚の七分平板棧瓦B’を葺工し、
前述した一、二、三列群の作業を1レピートの規格として、順次棟方向に向って葺上げていく」ことと、
本件補正発明の
「隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bと」すること、
「前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、306mmを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、204mmを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する」こと、
及び「前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、306mmの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、204mmの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設すること」とは、
それぞれ「隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bと」すること、
「前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、所定寸法Yを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、他の所定寸法Zを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する」こと、
及び「前記利き幅寸法が、所定寸法Aの隅棟平板瓦Yと、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設すること」で共通する。

エ 引用発明2の「40枚判平板棧瓦での、寄棟建屋の隅棟部をほぼ方形状の隅棟瓦を用いて葺工する隅棟部葺工法において」、「異なった屋根勾配に順応でき、更には、平板棧瓦B等のきき足は、屋根勾配等により変更される」ことと、本件補正発明の「前記4寸勾配、前記4.5寸勾配、又は前記5寸勾配の全てに対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして葺設する。」こととは、「異なった屋根勾配に対応でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法は、屋根勾配により変更して葺設する。」ことで共通している。

オ 上記アないしエからみて、本件補正発明と引用発明2とは、以下の一致点及び2つの相違点を有している。

一致点:利き幅寸法と、利き足寸法が、JIS規格化された平板瓦40枚判を使用する隅棟屋根構造であり、
この隅棟屋根構造の隅棟平板三角(隅棟平板三角瓦C)の内側に、順次、葺設される隅棟平板瓦は、利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとし、
前記隅棟平板瓦Aと、前記隅棟平板瓦Bを、屋根の棟方向の各段に対応して、必要により、この隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を、所定寸法Yを基準に調整し、かつこの隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、他の所定寸法Zを基準に調整し、この調整を介して、この隅棟平板瓦A・Bを、前記各段にそれぞれ葺設する隅棟屋根の葺設方法において、
前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aと、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bとを、下記の順番で、葺設することを特徴とした隅棟屋根の葺設方法。
1 軒先には、前記利き幅寸法が、所定寸法Yの隅棟平板瓦Aを葺設し、
2 次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを葺設し、
3 そして、次には、前記利き幅寸法が、他の所定寸法Zの隅棟平板瓦Bを、併設して葺設し、
前記、1?3の葺設を、前記屋根の棟方向の各段に向って、順次、葺設することで、
異なった屋根勾配に適用でき、かつ前記40枚判を使用し、利き足寸法は、屋根勾配等により変更して葺設する。

相違点5:本件補正発明の隅棟平板瓦A及び隅棟平板瓦Bの利き足寸法は、それぞれ306mm及び204mmであるのに対し、引用発明2の隅棟平板瓦A及び隅棟平板瓦Bの利き足寸法は、それぞれ305mm及び205mmである点。

相違点6:本件補正発明は、4寸勾配、前記4.5寸勾配、又は前記5寸勾配の全てに対応でき、利き足寸法を、この4寸勾配では275mm、この4.5寸勾配では280mm、又はこの5寸勾配では285mmとして葺設するのに対し、引用発明2は、異なった屋根勾配に適用でき、利き足は、屋根勾配等により変更して葺設するが、勾配の数値及び利き足寸法の数値の規定が無い点。

(2)判断
上記相違点5ないし6について検討する。
ア 相違点5
(ア)引用例1には、上記「第2〔理由〕3(1)オ」のとおり、調節瓦2a(本件補正発明の「隅棟平板瓦B」に相当。)の利き幅寸法を、平板瓦1(本件補正発明の「隅棟平板瓦A」に相当。)の利き幅寸法の2/3とする引用発明1が記載されている。
引用発明2及び引用発明1は、共に隅棟屋根構造に関するものであって、用意する瓦の種類少なくして、現場で切断することなく、葺工を簡略化する課題を有する点で共通していることから、引用発明2の「隅棟平板瓦A,B」に、引用発明1の「調節瓦2a(本件補正発明の「隅棟平板瓦B」に相当。)の利き幅寸法を、平板瓦1(本件補正発明の「隅棟平板瓦A」に相当。)の利き幅寸法の2/3とする」ことを適用することに格別の困難性は無い。

(イ)そして瓦の利き幅寸法は、当業者が適宜選択すべき事項であって、引用発明2の隅棟平板瓦A及び隅棟平板瓦Bの利き幅寸法が、それぞれ305mm及び205mmであること、引用発明1の「隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法の2/3とする」ことからみれば、上記305mmと205mmに近く、利き幅寸法が2/3の関係となるような、隅棟平板瓦Aの利き幅寸法を306mm、隅棟平板瓦Bの利き幅寸法を204mmとすることは、当業者ならば適宜なし得た程度のことである。

イ 相違点6
(ア)引用発明2は、「異なった屋根勾配に適用でき、かつ前記40枚判(この40枚判平板棧瓦の寸法の一例は、きき足280mmである。)を使用し、隅棟平板瓦A等のきき足は、屋根勾配等により変更して葺設する。」ものであって、屋根勾配や平板瓦の利き幅寸法についても、利き幅寸法と同様に、当業者が適宜選択し得る事項であることから、引用発明2を、平板瓦を葺設した屋根の勾配として一般的な4寸勾配,4.5寸勾配及び5寸勾配のすべてに対応するものとし、そして利き足寸法は、上記各勾配の中間値である4.5寸勾配では、40枚判の一例である280mmを、4寸勾配では275mmを、5寸勾配では285mmを選択することは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

(イ)なお上記(ア)に関してさらに述べると、平板状の屋根瓦を用いた屋根の勾配が、4寸,4.5寸及び5寸程度であること、及びこれらの勾配に対して平板状の屋根瓦の利き足を、5?6mm程度の差をつけて適宜設定することが、本件出願前に周知の事項である(例:特開2007-107239号公報(【0034】参照)、特開平8-109708号公報(【0012】参照))ことからみても、引用発明2において、4寸勾配,4.5寸勾配,5寸勾配のすべてに対応するものとし、それぞれの利き足寸法を275mm,280mm,285mmを選択することは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明2及び引用発明1の奏する効果、周知事項の奏する効果から当業者が容易に予測できたものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、当業者が引用例2及び引用例1に記載された発明、周知事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成23年法律第63号改正附則第2条第18項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成23年12月12日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4及び5」に記載したとおり、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知事項に基いて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1及び引用例2に記載された発明、周知事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-10 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-07-03 
出願番号 特願2008-212179(P2008-212179)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04D)
P 1 8・ 575- Z (E04D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 直史  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 住田 秀弘
中川 真一
発明の名称 隅棟屋根の葺設方法  
代理人 毛受 隆典  
代理人 田▲崎▼ 哲也  
代理人 大矢 広文  
代理人 毛受 隆典  
代理人 砂場 哲郎  
代理人 竹中 一宣  
代理人 大矢 広文  
代理人 砂場 哲郎  
代理人 竹中 一宣  
代理人 毛受 隆典  
代理人 砂場 哲郎  
代理人 木村 満  
代理人 木村 満  
代理人 田▲崎▼ 哲也  
代理人 竹中 一宣  
代理人 木村 満  
代理人 田▲崎▼ 哲也  
代理人 大矢 広文  

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