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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1278490
審判番号 不服2011-28273  
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-28 
確定日 2013-08-21 
事件の表示 特願2007- 92272「大容量媒体上の記録及び読み出しの方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日出願公開、特開2007-259460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年7月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年7月13日、フランス国)を出願日とする特願平8-181030号の特許出願の一部を、平成19年3月30日に分割出願した特願2007-92272号であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成22年 1月15日(起案日)
手続補正 :平成22年 7月20日
拒絶理由通知(最後) :平成22年11月17日(起案日)
手続補正 :平成23年 5月24日
拒絶査定 :平成23年 8月22日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成23年12月28日
手続補正 :平成23年12月28日
拒絶理由(当審) :平成24年 7月18日(起案日)
手続補正 :平成25年 1月24日

第2 本願発明
本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成25年1月24日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法であって:
- サーバからネットワークを介して第1の複数の番組をダウンロードする段階と;
- 上記第1の複数の番組を個人的なデータ媒体に格納する段階と;
- 上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階と;
- ユーザ特定のコードの入力により、上記決定された番組の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された番組に対して支払うことを可能にする段階と;
を有する方法。
【請求項2】
上記決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、上記決定された番組に安全措置を施す段階を更に有する、請求項1記載の方法。

第3 刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由の通知において引用された特開平7-74744号公報(平成7年3月17日出願公開。以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

【0007】さらに詳しくは、本発明は、情報源が提供する情報を多数の端末で利用するシステムにおいて、特にマルチメディア情報などの大量情報を扱う場合の情報配送手段として、例えば、従来の放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法や、従来の衛星通信システムを一般のトラヒックが少ない時間帯に空いている電波チャンネルを用いて情報の同報配送に用いる方法や、光ファイバーによるB-ISDNを一般のトラヒックが少ない時間帯にオフトーク通信の原理を用いて情報の同報配送に用いる方法、N-ISDNまたは電話網を一般のトラヒックが少ない時間帯にオフトーク通信の原理を用いて映像情報などを実時間再生の数倍の時間をかけて同報配送てる方法などをとることができ、配送された情報を端末側に蓄積し、情報利用時は端末においてその蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用す方法などが利用できるようにし、効率的な情報配送を可能とすることにより、情報配送に係わる時間と費用を削減するとともに、情報内容に関して利用者毎の独自の要求を満たすため、配送された情報の再編集、再加工を可能にし、利用された情報のみに対する課金を可能にすることを目的とする。
(上記の「その蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用す方法」は「その蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用す(る)方法」の誤記であると認める。)

【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、情報源(例えば情報提供センタ)から複数の利用者がディジタル情報を受信し、それを利用する情報提供システムであって、利用者への提供情報に対し、発信者識別情報、画像、音声、文書などの属性識別情報、情報内容に対応した識別情報、さらには情報内容に応じた順序情報あるいは情報発生の順序に応じた時系列情報などからなるインデクス情報を情報源側で付加することにより、可能な場合には複数の情報配送手段を同時に用いて前記提供情報を配送できるようにする。利用者側では、前記提供情報を受信した後、ある長さと形式のセル状にして端末装置側の記憶装置に格納し、前記インデクス情報をもとにして、蓄積された情報の中から必要なものを検索して取り出し、その情報を各利用者の個別の要求に合致するように情報の編集を可能とする。さらには、前記記憶装置に格納された情報の再生読み出しに必須な手順の実行または鍵情報の使用を検知し、再生読み出しされた情報にのみ課金することを特徴する。
【0009】すなわち、本発明は、情報源と、多数の端末装置と、この情報源から情報を端末装置に配送する配送手段とを備え、端末装置は配送された情報を蓄積する記憶手段を備え、情報源から配送される情報にはその内容に対応して端末装置で検索可能なインデクス情報が情報源の側で付されている。その配送手段は、通信網および放送網を含み、端末側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】端末装置は、配送され自装置内に蓄積された情報を前記インデクス情報にもとづき編集加工する手段を備え、情報源から端末に配送される情報の少なくとも一部は、端末の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態であり、さらに、端末装置は、その記憶手段に蓄積された情報を当該利用者が利用できる形態に復号化された情報もしくは復号化可能な状態に設定された情報について課金情報を処理する手段を備え、前記復号化可能な状態に設定された情報は、復号化のための鍵情報を利用者側に引き渡した情報であることが望ましい。

【0012】配送される情報の少なくとも一部は、端末側に記憶された状態では当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態にあるので、蓄積された情報を当該利用者が利用できる形態に復号化された情報もしくは復号化可能な状態に設定された情報について課金情報を処理する。暗号化しておく少なくとも一部の情報は、利用者にとって主要な情報であり、暗号化されていない情報は、利用者がその情報を利用するためのインストラクションその他である。
【0013】すなわち、情報源において、利用者への提供情報に対し、発信者識別情報、音声、画像、文書などの属性識別情報、情報内容に対応した検索キー情報、さらには情報内容に応じた順序情報、あるいは情報発生の順序に応じた時系列情報などから成るインデクス情報を付加し、各種通信メディアおよび放送メディアなどの複数の伝送系を可能な場合には同時に用いて各端末へ前記情報の配送を行い、利用者端末では、前記配送情報を各種処理に適した形のセルにして蓄積し、利用者側の要求発生時には、前記インデクス情報をもとに前記蓄積情報を読み出して、利用者個別の要求に沿った検索、編集、加工を施して利用した後、読み出し利用した情報に対して課金する。
【0014】これにより、情報源が提供する情報の配送に要する時間および費用を削減するとともに、情報内容に関して利用者毎の独自の要求を満たすため、配送された情報の再編集、再加工を可能にすることができ、利用された情報に対して合理的に課金することができる。
【0015】
【実施例】次に、本発明実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明実施例のシステム構成を示す図である。
【0016】本発明実施例は、情報源1に蓄積された少数の情報源と、多数の端末装置2と、情報源から情報を端末装置2に配送する配送手段3とを備え、端末装置2は配送された情報を蓄積する記憶手段を備え、情報源から配送される情報にはその内容に対応して端末装置で検索可能なインデクス情報が付され、本発明の特徴として、前記配送手段3は、通信網および放送網を含み、端末装置2側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置2に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく制御手段を備える。
【0017】端末装置2は、配送され自装置内に蓄積された情報を前記インデクス情報にもとづき編集加工する手段を備え、情報源から端末装置2に配送される情報の少なくとも一部は、端末装置2の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態であり、さらに、端末装置2は、その記憶手段に蓄積された情報を当該利用者が利用できる形態に復号化された情報もしくは復号化可能な状態に設定された情報について課金情報を処理する手段を備え、前記復号化可能な状態に設定された情報は、復号化のための鍵情報を利用者側に引き渡した情報である。
【0018】情報源1から端末装置2への暗号化された情報は配送手段3を介して行われ、情報源1と端末装置2との間の制御情報の送受は個別制御網4を介して行われる。配送手段3の運用は次のように行われる。すなわち、配送手段3の側では、個々の端末装置2を意識することなく、情報源1から各端末装置2へ効率的に情報配送を行い、同報による情報配送が主体となる。配送手段3としては、B-ISDN、N-ISDN、衛星通信網、衛星放送網、CATV網などの各種の通信および放送メディアを可能な場合には複数同時に使用できる構成とするが、縮退形として単一のメディアでシステムを構成することもできる。一方、個別制御網4は、情報源1が、例えば課金制御などの個々の端末装置2を区別した制御を行う手段を提供する。個別制御網4としては、情報源1が多数の端末装置2中の特定の端末装置2を選択できる必要があるため、放送メディアではなく、相手選択機能を持つ通信メディアを用いる。個別制御網4としては、例えば、網機能として端末IDが利用できるN-ISDNが望ましい。

【0024】次に、本発明実施例における端末装置について説明する。まず、端末装置の構成および全体機能について説明する。図6は本発明実施例における端末装置の構成を示す図、図7は本発明実施例における情報源と端末装置間のインタラクションおよび処理の概要を示す図である。
【0025】図6において、21は配送手段3から配送情報データブロックを受信する配送受信部、22は配送された情報データブロックの主情報を記憶する主情報記憶部、221、222、223は、それぞれ、主情報記憶部22内のメモリ制御手段、アドレス生成手段、およびメモリ部、23は配送された情報データブロックのインデクス情報を記憶するインデクス情報記憶部、24は利用者の要求に従って主情報記憶部22内の情報を検索する検索制御部、25は利用者の要求に従って主情報記憶部22内の情報を編集・加工する主情報編集・加工部、26は個別制御網4とインタフェースする個別制御網インタフェース部、27は端末装置2全体の制御を行う制御部、28は利用者とのマンマシンインタフェースを受け持つマンマシンインタフェース部である。
【0026】次に、端末装置2の全体機能を図7を参照して説明する。
【0027】情報源1は、配送手段3を介して端末装置2に配送情報データブロックを配送する。これは、端末装置2からの要求の有無には関係無く、情報源1の側のスケジュールに沿って常時、定常的に行われている。端末装置2の配送受信部21は受信された配送情報データブロックのインデクス情報を常時監視し、必要なデータブロックの情報は蓄積し、不要なものは廃棄する。データブロック情報のうち主情報は主情報記憶部22に蓄積し、インデクス情報はインデクス情報記憶部23に蓄積する。
【0028】利用者は、情報を利用する場合、マンマシンインタフェース部28を操作し、端末装置2全体に対して必要な指示を行う。
【0029】情報利用要求があった場合、検索制御部24はマンマシンインタフェース部28からの指示に従い、インデクス情報記憶部23に蓄積されたインデクス情報を用いて主情報記憶部22の内容を検索する。要求された情報が存在しなければ、情報源1に対して当該情報の提供を依頼するのは従来方式と変わりはない。要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す一方、当該情報のインデクス情報を個別制御網インタフェース部26および個別制御網4を介して情報源1へ送信することにより、情報源1に対して暗号解読キーの提供を依頼する。
【0030】情報源1は端末装置2のID(identification, 端末識別符号)を試験的に送受信して、当該端末装置2からの依頼が正当と認められた場合は、暗号解読キーを提供するとともに、端末装置2に対して受信したインデクス情報をもとに課金し通知する。
【0031】端末装置2では、主情報記憶部22から読み出された情報は、主情報編集・加工部25に転送され、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、ここで解読作業が行われ、必要な編集加工を施した後、マンマシンインタフェース部28を介して利用者に提供される。

第4 刊行物に記載された発明
以上の記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、刊行物1発明という。)が記載されている。

a.情報利用方法
上記刊行物1の【0007】によれば、刊行物1には「情報源が提供する情報を多数の端末で利用するシステムにおいて、特にマルチメディア情報などの大量情報を扱う場合の情報配送手段として、例えば、従来の放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法や・・・方法などをとることができ、配送された情報を端末側に蓄積し、情報利用時は端末においてその蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用す(る)方法」とあるから、刊行物1発明は「情報源が提供する情報を多数の端末で利用するシステムにおいて、特にマルチメディア情報などの大量情報を扱う場合の情報配送手段として、例えば、従来の放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法をとることができ、配送された情報を端末側に蓄積し、情報利用時は端末においてその蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用す(る)方法」に関する発明が記載されている。

b.転送しておく段階
上記刊行物1の【0016】によれば、刊行物1には「前記配送手段3は、通信網および放送網を含み、端末装置2側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置2に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく」とあるから、刊行物1発明は、「配送手段3は、通信網および放送網を含み、端末装置2側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置2に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく段階」を有しているということができる。

c.蓄積される段階
上記刊行物1の【0016】、【0017】によれば、刊行物1には「端末装置2は配送された情報を蓄積する記憶手段を備え・・情報源から端末装置2に配送される情報の少なくとも一部は、端末装置2の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態であり、さらに、端末装置2は、その記憶手段に蓄積された情報を当該利用者が利用できる形態に復号化された情報もしくは復号化可能な状態に設定された情報について課金情報を処理する手段を備え、前記復号化可能な状態に設定された情報は、復号化のための鍵情報を利用者側に引き渡した情報である」とあるから、刊行物1発明は、「端末装置2の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態で配送された情報を蓄積する」段階を有しているということができる。

d.情報を読み出す段階
上記刊行物1の【0027】、【0028】、【0029】によれば、刊行物1には「情報源1は、配送手段3を介して端末装置2に配送情報データブロックを配送する。これは、端末装置2からの要求の有無には関係無く、情報源1の側のスケジュールに沿って常時、定常的に行われている。端末装置2の配送受信部21は受信された配送情報データブロックのインデクス情報を常時監視し、必要なデータブロックの情報は蓄積し、・・・データブロック情報のうち主情報は主情報記憶部22に蓄積し、インデクス情報はインデクス情報記憶部23に蓄積する。利用者は、情報を利用する場合、マンマシンインタフェース部28を操作し、端末装置2全体に対して必要な指示を行う。情報利用要求があった場合、検索制御部24はマンマシンインタフェース部28からの指示に従い、インデクス情報記憶部23に蓄積されたインデクス情報を用いて主情報記憶部22の内容を検索する。要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す」とあるから、刊行物1発明は、「配送手段3を介して端末装置2に配送された、主情報を蓄積する主情報蓄積部を有し、利用者は、情報を利用する場合、マンマシンインタフェース部28を操作し、端末装置2全体に対して必要な指示を行い、情報利用要求があった場合、検索制御部24はマンマシンインタフェース部28からの指示に従い、インデクス情報記憶部23に蓄積されたインデクス情報を用いて主情報記憶部22の内容を検索し、要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す」段階を有しているということができる。

e.利用者に提供される段階
上記刊行物1の【0029】、【0030】、【0031】によれば、刊行物1には「要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す一方、当該情報のインデクス情報を個別制御網インタフェース部26および個別制御網4を介して情報源1へ送信することにより、情報源1に対して暗号解読キーの提供を依頼する。情報源1は端末装置2のID(identification, 端末識別符号)を試験的に送受信して、当該端末装置2からの依頼が正当と認められた場合は、暗号解読キーを提供するとともに、端末装置2に対して受信したインデクス情報をもとに課金し通知する。端末装置2では、主情報記憶部22から読み出された情報は、主情報編集・加工部25に転送され、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、ここで解読作業が行われ、必要な編集加工を施した後、マンマシンインタフェース部28を介して利用者に提供される。」とあるから、刊行物1発明は、「当該情報のインデクス情報を個別制御網インタフェース部26および個別制御網4を介して情報源1へ送信することにより、情報源1に対して暗号解読キーの提供を依頼し、情報源1は端末装置2のID(identification, 端末識別符号)を試験的に送受信して、当該端末装置2からの依頼が正当と認められた場合は、暗号解読キーを提供するとともに、端末装置2に対して受信したインデクス情報をもとに課金し通知し、端末装置2では、主情報記憶部22から読み出された情報は、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、ここで解読作業が行われ、必要な編集加工を施した後、マンマシンインタフェース部28を介して利用者に提供される段階」を有しているということができる。

f.まとめ
以上まとめると、刊行物1に記載された発明(以下「刊行物1発明」という。)として、以下のとおりのものを認定することができる。

情報源が提供する情報を多数の端末で利用するシステムにおいて、特にマルチメディア情報などの大量情報を扱う場合の情報配送手段として、例えば、従来の放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法をとることができ、配送された情報を端末側に蓄積し、情報利用時は端末においてその蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用する方法に関する発明であって、
配送手段3は、通信網および放送網を含み、端末装置2側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置2に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく段階と、
端末装置2の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態で配送された情報を蓄積する段階と、
配送手段3を介して端末装置2に配送された、主情報を蓄積する主情報蓄積部を有し、利用者は、情報を利用する場合、マンマシンインタフェース部28を操作し、端末装置2全体に対して必要な指示を行い、情報利用要求があった場合、検索制御部24はマンマシンインタフェース部28からの指示に従い、インデクス情報記憶部23に蓄積されたインデクス情報を用いて主情報記憶部22の内容を検索し、要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す段階と、
当該情報のインデクス情報を個別制御網インタフェース部26および個別制御網4を介して情報源1へ送信することにより、情報源1に対して暗号解読キーの提供を依頼し、情報源1は端末装置2のID(identification, 端末識別符号)を試験的に送受信して、当該端末装置2からの依頼が正当と認められた場合は、暗号解読キーを提供するとともに、端末装置2に対して受信したインデクス情報をもとに課金し通知し、端末装置2では、主情報記憶部22から読み出された情報は、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、ここで解読作業が行われ、必要な編集加工を施した後、マンマシンインタフェース部28を介して利用者に提供される段階、
を有する方法。

第5 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

a.「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法であって」
本願発明の「個人的なビデオ又はオーディオライブラリ」については、その構成が明確でないと、平成24年7月18日付け拒絶理由通知書にて指摘したところ、請求人は、以下のとおり、意見書で主張している。
「本願発明は、支払いによって番組を読み出すことができる装置を対象としています。番組がダウンロードされた場合、番組は、個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する装置において、個人的なデータ媒体に格納されます。「個人的なデータ媒体」とは、個人的なビデオ又はオーディオライブラリが構築される記録媒体を示し、図1の4aに対応します。例えば、明細書段落0037に示すように、ユーザは安全鍵を用いて保護することにより、個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築することができます。このように、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリ」、「個人的なデータ媒体」は、明細書を参照することにより、当業者に明瞭に理解できるものと思料します。
なお、明細書段落0036?0038には、安全措置が施された番組であるコレクションに関する記載があります。請求項1に記載の個人的なビデオ又はオーディオライブラリには、安全措置が施された番組だけでなく、安全措置が施されていない番組も含まれます。」
上記主張によれば、「ユーザは安全鍵を用いて保護することにより、個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築することができます。」とあるから、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する」ことは、実施例において「安全鍵を用いて保護すること」により実現している構成を含んでいるといえる。
これに対して、刊行物1発明は、「情報源が提供する情報を多数の端末で利用するシステムにおいて、特にマルチメディア情報などの大量情報を扱う場合の情報配送手段として、例えば、従来の放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法をとることができ、配送された情報を端末側に蓄積し、情報利用時は端末においてその蓄積された情報を必要な速度で読み出し実時間再生して利用する方法に関する発明」であり、情報源から、端末側に情報を配信し、端末は、上記配信された情報を蓄積し、情報利用時は、端末において蓄積された情報を読み出しているから、端末側において、情報のライブラリを構築しているということができる。
上記情報は、「マルチメディア情報」であり、刊行物1には、
「特に映像などの大量のデータを扱う場合にそれが顕著であった。」【0004】
「一般のトラヒックが少ない時間帯にオフトーク通信の原理を用いて映像情報などを実時間再生の数倍の時間をかけて同報配送」【0007】
「本発明は、情報源(例えば情報提供センタ)から複数の利用者がディジタル情報を受信し、それを利用する情報提供システムであって、利用者への提供情報に対し、発信者識別情報、画像、音声、文書などの属性識別情報、」【0008】
の記載があるから、マルチメディア情報に映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報を含むことが想定されている。
したがって、刊行物1発明は「ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」である点で本願発明と相違がない。
もっとも、本願発明の「ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」は「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」であって、上記「ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」は「安全鍵を用いて保護すること」を要件とするものであるが、刊行物1発明は、「安全鍵を用いて保護する」構成は有しておらず、したがって、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」といえない点で本願発明と相違する。

b.「サーバからネットワークを介して第1の複数の番組をダウンロードする段階」
本願発明の上記構成について、発明の詳細な説明を参酌すると、
「本発明の装置は、テレビジョンの復号化器又はテレビジョン受像機に組み込まれる。図1に示されたように、本発明の装置は、無線又は衛星放送の場合にはアンテナ2によって捕捉され、或いは、ケーブルネットワークを介して受信された少なくとも一つのチャンネルからの信号を並列的に供給可能である周波数選択手段1を含む。上記周波数選択手段1は、幾つかの番組のチャンネルを並列的に提供するため、少なくとも一つのアナログ及び/又はディジタル方式“チューナ”を含む。上記周波数選択手段1によって出力された信号は、ディジタル符号化器3により処理される。ディジタル符号化器3は、必要に応じて、アナログ信号をディジタル信号に変換し、場合によっては、受信された信号のディジタル圧縮及び/又は多重化を保証する。符号化されたディジタル信号は、大容量記録媒体4a上に記録されるべく記録及び読み出し手段4に供給される。」(【0024】)とあるから、サーバから、無線又は衛星放送を介して装置に番組を受信することを、「ネットワークを介して第1の複数の番組をダウンロードする」と称しているといえる。
また、本願発明のサーバは、発明の詳細な説明を参酌すると、
「例えば、“オンデマンドビデオ”サービスによれば、顧客はサーバーシステム内の映画を選択し得るようになり、次いで、支払いと引換えに番組がユーザに送られ始める。このようなシステムは、多数の顧客からの別々の映画に対する同時的な要求に答えるため大容量サーバーと、広帯域ネットワークとを必要とする。顧客は、ネットワークの動作状態と、サーバーによって提供される映画の分類に完全に依存する。」(【0005】)
「次いで、支払い管理モジュール11は、この金融取引を有効にするため、モデム13を介してサーバーセンター(図示しない)を呼び出す。」(【0029】)
とあるのみであるから、“オンデマンドビデオ”サービスに用いられるような、番組を蓄積し、蓄積した番組を顧客に提供するものをサーバと称していると理解できる。
刊行物1発明は「配送手段3は、通信網および放送網を含み、端末装置2側での利用の有無にかかわらず情報源にある情報を端末装置2に対してその通信網およびその放送網のトラヒックが小さい時間を含む安価な時間に転送しておく段階」を有している。
刊行物1発明の配送手段は、通信網および放送網を含み、情報源から(情報源にある)情報を端末に転送するものであるといえ、
本願発明のネットワークも、(番組という)情報を、装置にダウンロード(転送)しているといえるから、この点で相違がない。
刊行物1発明の情報には映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報を含むものであり、この点で、本願発明の番組と共通するものの、第1の複数の番組であるかは明らかではない。
また、刊行物1発明において、上記転送された情報は、端末にて、「検索」することが前提としてあり、検索するのは、複数の情報から検索するのであるから、転送される情報が複数あることは明らかである。
刊行物1発明の情報源は、情報を蓄積し、端末に対して情報を提供しているから、この点で本願発明のサーバと相違がない。
以上まとめると、刊行物1発明は「サーバからネットワークを介して映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報をダウンロードする段階」を有している点で、本願発明と相違がない。
もっとも、本願発明の「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」は「第1の複数の番組」であるのに対し、刊行物1発明は、第1の複数の番組であるかは明らかではない点で相違する。

c.「上記第1の複数の番組を個人的なデータ媒体に格納する段階」
刊行物1発明は「端末装置2の記憶手段に記憶された状態ではその情報は当該利用者が利用できない形態に暗号化された状態で配送された情報を蓄積する段階」を有している。
刊行物1発明の情報は「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」であるものの、第1の複数の番組であるかは明らかではない点で本願発明と相違することは、上記b.で検討したとおりである。
また、本願発明の「個人的なデータ媒体」は、意見書によれば、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリが構築される記録媒体」であり、刊行物1発明においては「ビデオ又はオーディオライブラリが構築される」構成は有するものの、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリが構築される」とはいえない点で、本願発明とは相違することは、上記a.で検討したとおりである。
以上のことからみて、刊行物1発明は「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報をデータ媒体に格納する段階」を有しているといえる。
もっとも、上記b.、a.で検討したように、
刊行物1発明は「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」が、第1の複数の番組であるかは明らかではない点、
刊行物1発明は、「個人的なデータ媒体に格納する段階」とはいえない点、
で相違する。

d.「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階」
刊行物1発明は「配送手段3を介して端末装置2に配送された、主情報を蓄積する主情報蓄積部を有し、利用者は、情報を利用する場合、マンマシンインタフェース部28を操作し、端末装置2全体に対して必要な指示を行い、情報利用要求があった場合、検索制御部24はマンマシンインタフェース部28からの指示に従い、インデクス情報記憶部23に蓄積されたインデクス情報を用いて主情報記憶部22の内容を検索し、要求された情報が存在した場合は、当該情報を読み出す段階」を有している。
刊行物1発明の「配送された情報」が、「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」である点で本願発明の番組情報と対応し、第1の複数の番組であるかは明らかではない点で相違していることは、上記b.で検討したとおりである。
刊行物1発明は、上記配送された主情報を検索し利用するため、読み出しているから、上記検索は、格納された情報から、利用したい映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報を決定し選択しているといえる。
したがって、刊行物1発明は「上記格納された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報の中から決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報を選択する段階」を有している点で、本願発明と相違がない。
もっとも、刊行物1発明の映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報が番組であるか明らかでない点で本願発明と相違する。

e.「ユーザ特定のコードの入力により、上記決定された番組の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された番組に対して支払うことを可能にする段階」
本願発明の上記構成について、発明の詳細な説明を参酌すると、
「上記装置は、スマートカードリーダー12、モデム13及び制御手段5に接続された支払い管理モジュール11を含む。ユーザが符号化された番組の視聴を望むとき、例えば、銀行カード上に記憶されている特定のコードをスマートカードリーダー12によって入力する。次いで、支払い管理モジュール11は、この金融取引を有効にするため、モデム13を介してサーバーセンター(図示しない)を呼び出す。支払い管理モジュール11は、制御手段5にその取引の有効性を通知するので、復号化手段8による番組の復号化を開始させ得る。ユーザは対応する復号化された番組を観ることが可能である。」(【0029】)
「選択肢“読出”が選択された場合(図3を参照)、次のスクリーンには、二つの選択肢:“確認”或いは“取消”が同様に含まれている。・・・ユーザが“確認”を選択した場合、制御手段5は、選択された番組の直接的な読み出しが許可されているかどうかを検査する。許可されている場合、上記番組が読み出され、一方、許可されていない場合、ユーザは、読み出しが開始可能になる前に正しいアクセスコードを入力しなければならない。アクセスコードが認容されなかった場合には、システムは、選択肢“読出”の二次的な選択肢“確認”及び“取消”を提供する。番組が符号化されている場合、ユーザは、そのことに気付き、(例えば、銀行カードを用いて)特別のコードを入力する。上記特別のコードは、照合の後、番組の復号化を許可する。上記特別のコードが認容されないならば、システムは、選択肢“読出”の二次的な選択肢“確認”及び“取消”を提供する。」(【0034】)
とあり、支払い管理モジュールにより、有効性が通知されると復号化手段8による番組の復号化を開始させる構成であって、上記復号化は、番組が符号化されている場合、(例えば、銀行カードを用いて)特別のコードを入力することで許可される復号化のことであるといえる。
すなわち、本願発明の「ユーザ特定のコードの入力により、上記決定された番組の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された番組に対して支払うことを可能にする段階」とは、「特別のコードを入力することで許可される復号化に対応する符号化がなされている場合、ユーザ特定のコード(特別のコード)の入力により、上記決定された番組の内容を読み出すことができるように、上記符号化された番組を復号化するために、支払い機構が決定された番組に対して支払うことを可能にする」ことであるといえる。
刊行物1発明は「当該情報のインデクス情報を個別制御網インタフェース部26および個別制御網4を介して情報源1へ送信することにより、情報源1に対して暗号解読キーの提供を依頼し、情報源1は端末装置2のID(identification, 端末識別符号)を試験的に送受信して、当該端末装置2からの依頼が正当と認められた場合は、暗号解読キーを提供するとともに、端末装置2に対して受信したインデクス情報をもとに課金し通知し、端末装置2では、主情報記憶部22から読み出された情報は、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、ここで解読作業が行われ、必要な編集加工を施した後、マンマシンインタフェース部28を介して利用者に提供される段階」を有している。
刊行物1発明の端末装置のIDは端末装置を特定するコードといえることは明らかであり、特定のコードという点で、本願発明のユーザ特定のコードに対応している。
もっとも、刊行物1発明の特定のコードは「端末」特定のコードであるのに対し、本願発明の特定のコードは、「ユーザ」特定のコードである点で相違する。
刊行物1発明の暗号化された情報は、端末装置のIDを送信し正当と認められた場合、情報源1から提供された暗号解読キーをもとに、解読作業が行われ利用者に提供されるといえる。
したがって、刊行物1発明は、端末IDを送信することで解読される暗号化がなされている情報の場合、端末IDを送信することで、(利用者が利用できるように)解読をして利用者に提供されるといえる。
上記暗号化された情報は、暗号化という特殊な処理により、通常の符号列とは異なる符号列に変換された(特殊な符号化がされた)情報といえ、上記解読作業は、上記暗号化という符号化に対応する、端末のIDを送信することで許可される復号化といえる。
刊行物1発明の「当該情報」は、上記d.で検討した読み出す段階の、決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報であることは明らかである。
刊行物1発明は、上記特定のコードである端末IDを送受信し、正当と認められると、課金し通知し、暗号解読キーが提供されることにより情報が利用可能となるといえるから、端末IDを送信することで、暗号の解読が行われるために、課金がなされ(すなわち支払いのための処理が行われる)、情報に対して支払うことを可能にしているといえる。
本願発明は、特別のコードの「入力」であるが、刊行物1発明の端末IDは送信しているが入力しているということはできない。
以上まとめると、刊行物1発明は、特別のコード(端末のID)を送信することで許可される解読(復号化)に対応する暗号化(符号化)がなされている場合、特定のコードにより、上記決定された情報の内容を読み出すことができるように、上記暗号化(符号化)された情報を解読(復号化)するために、支払い機構が決定された情報に対して支払うことを可能にする」構成を有している点で本願発明と共通しているといえる。
すなわち、刊行物1発明は「特定のコードにより、上記決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報に対して支払うことを可能にする段階」を有している点で本願発明と相違がない。
もっとも、
特定のコードが、本願発明では「ユーザ特定のコードの入力」であるのに対し、刊行物1発明では「端末のIDの送信」である点、および、
映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報が、本願発明では「番組」であるのに対し、刊行物1発明は、番組であるか明確でない点で相違する。

f.「上記決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、上記決定された番組に安全措置を施す段階を更に有する」
刊行物1発明は、安全措置に関する構成を有していない。

g.まとめ
上記a.ないしf.の対比結果によれば、本願発明と刊行物1発明とは以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法であって:
- サーバからネットワークを介して映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報をダウンロードする段階と;
- 映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報をデータ媒体に格納する段階と;
- 上記格納された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報の中から決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報を選択する段階と;
- 特定のコードにより、上記決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報に対して支払うことを可能にする段階と;
を有する方法。

[相違点]
相違点1
本願発明の「ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」は「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」であって、上記「ビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」は「安全鍵を用いて保護すること」を要件とするものであるが、刊行物1発明は、「安全鍵を用いて保護する」構成は有しておらず、したがって、「個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築する方法」といえない点。

相違点2
本願発明の「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」は「第1の複数の番組」であるのに対し、刊行物1発明は、第1の複数の番組であるかは明らかではない点。

相違点3
特定のコードが、本願発明では「ユーザ特定のコードの入力」であるのに対し、刊行物1発明では「端末のIDの送信」である点。

相違点4
刊行物1発明は、上記決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、上記決定された番組に安全措置を施す段階を更に有していない点。

第5 判断
a.相違点1、相違点4について
本願発明の「安全鍵を用いて保護する」ことと「個人的な・・・ライブラリを構築」について、検討する。
意見書によれば「明細書段落0037に示すように、ユーザは安全鍵を用いて保護することにより、個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築することができます。」とあるから、【0037】の記載を参酌すると
「ユーザは、安全鍵を用いて保護することによりビデオ貯蔵器内に個人的な映画のコレクションを構築することができる。映画が放送されたとき、ビデオ貯蔵器に格納された50本の映画の中で個人的なコレクションを含まない1本の映画が消去され、新しい映画が開放されたスペースを使用する。このような態様で、サービス提供者は、上位50本の映画を定期的に更新し、毎週又は毎月、更新されたリストを加入者に送る。」

また、安全鍵については、以下のとおりの記載がある。

【0017】
本発明の方法は、好ましくは、ユーザによって指定された番組が消去できないように安全機構が設けられる。このような態様によって、ユーザは保護された記録の個人的なコレクションを構築することが可能である。記録の中の一つを削除するため、ユーザは最初に安全機構を解除し、次いで、記録媒体から削除すべき記録を消去する。

【0031】
次いで、制御手段5は、ユーザの個人的なコレクションに選択された番組が含まれている(この場合、番組は安全鍵によって保護されている)かどうかを検査する。既にその番組に安全処置が施されている場合、次のスクリーンに二つの選択肢:“消去”及び“読出”が表示される。上記番組に安全処置が施されていない場合、次のスクリーンには、上記二つの選択肢に加えて“収集”が含まれている。“収集”は、ユーザが制御手段5を介して安全鍵を関連付けることにより、上記番組を自分の個人的なコレクションに追加できるようにする。
【0032】
選択肢“消去”が選択された場合、次のスクリーンは、ユーザがその選択肢を“確認”或いは“取消”(“消去”が誤って選択された場合)することを要求する。ユーザが“取消”を選択した場合、システムは番組選択スクリーンに戻る。ユーザが“確認”を選択した場合、装置は、番組が安全鍵によって保護されていないならば、その番組を消去する。番組が保護されている場合、ユーザはその番組を消去することが可能であるが、最初に、制御手段5を介して番組の安全処置を解除しなければならない。或いは、最終的に、番組を消去しないように決めることができる。システムは、次に、初期メニューに戻る。
【0033】
選択肢“収集”が選択された場合、次のスクリーンには、二つの別の選択肢:“確認”或いは“取消”が含まれている。ユーザが“収集”の選択を確認した場合、制御手段5は、番組が直接的に消去されるのを防止するため、安全鍵を番組に割り当てる。次に、システムは初期メニューに戻る。選択肢“取消”が選択された場合、システムは初期メニューに戻るだけである。

以上の記載によれば、ユーザは安全鍵を用いて、消去されるのを防ぐ処理を行うと、当該処理を行われた番組は、消去されずにライブラリに残る。(上記安全鍵を用いて、消去されるのを防ぐ処理を安全処置とも記載している。また、請求項2の「安全措置」なる記載は、発明の詳細な説明になく、発明の詳細な説明には、「安全処置」の記載があるから、請求項2の「安全措置」は上記「安全処置」のことであると認める。)
ビデオ貯蔵器の容量には限りがあるから、定期的に映画(番組)が更新されると、容量がいっぱいになったとき、いずれか貯蔵されている番組を削除する必要がある。この削除をするとき、上記安全処置がなされていると、安全処置がなされている番組は削除されることがないから、ビデオ貯蔵器に残され、安全処置がなされていない番組が削除され、新たな番組が貯蔵される。
このような定期的な更新を繰り返すと、結果として、ユーザによって、安全処置を行う番組が異なることから、ユーザごとに異なるビデオライブラリが構築されることを、「ユーザは安全鍵を用いて保護することにより、個人的なビデオ又はオーディオライブラリを構築することができ」ると記載しているものと認めることができる。
すなわち、相違点4の「上記決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、上記決定された番組に安全措置を施す段階」を有することで、結果として、「個人的な・・・ライブラリを構築」することが可能(相違点1の構成)な構成といえる。
さらに、請求項2の「上記決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、上記決定された番組に安全措置を施す段階を更に有する、請求項1記載の方法」の「上記決定された番組」について検討する。
請求項2の「上記決定された番組」とは、請求項1の「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階と」のことであることは明らかである。
請求項1では、「ユーザ特定のコードの入力により、上記決定された番組の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された番組に対して支払うことを可能にする段階」であるから、「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階」で選択された番組に対して支払うとし、
請求項2では「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階」で選択された番組は、安全措置を施すとしている。
これらの記載をみると、支払う番組と安全措置を施す番組とが共通していると捉えることもできるが、発明の詳細な説明には、そのような説明はない。
すなわち、本願の図2を見れば明らかであるが、番組を選択した後、消去、読み出し(図3に続き、請求項1の支払いの処理)、収集(請求項2の構成)は、別の処理となっているから、「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階」を有し、決定された番組は、支払いをされることもあれば、安全措置を施されることもある、いいかえれば、読み出し(支払う)ため、または、安全措置を施すために必要な「上記格納された番組の中から決定された番組を選択する段階」を有するという意味であることは明らかである。
刊行物1発明は、発明の詳細な説明を参酌すると、【0027】に「情報源1は、配送手段3を介して端末装置2に配送情報データブロックを配送する。これは、端末装置2からの要求の有無には関係無く、情報源1の側のスケジュールに沿って常時、定常的に行われている。」とあるように、情報(映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報)が繰り返し端末装置に配送されるから、いずれかの時点で、端末装置の主情報記憶部は、容量がいっぱいになり、記憶することができなくなることが当然想定され、そのような場合、過去に配送された情報を削除することも当然想定されることである。
すなわち、刊行物1発明においても端末装置に記憶された情報は削除されることが想定されるといえる。
記憶された情報のうち、削除したくない情報を、ユーザが自身を特定するコード(パスワード)を利用して、自分以外は削除できないようにすることは、拒絶理由通知書に記載した引用刊行物3(特開平4-366487号公報、特に【0040】、以下刊行物3という。)にあるとおり、当業者に普通に知られたことである。
そして、上記刊行物3のように消したくない情報について削除するためには、当該情報を決定することが必要であることは明らかであるから、刊行物3の構成が「決定された番組が上記データ媒体から消去できないように、決定された番組に安全措置を施す段階」に相当することは明らかである。
刊行物1発明の端末装置は、「放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法や、・・・光ファイバーによるB-ISDNを一般のトラヒックが少ない時間帯にオフトーク通信の原理を用いて情報の同報配送に用いる方法」等を前提としていることからみて、家庭に置かれて、家族等で共用するようなものが想定されるが、そのような端末において、配送され、記憶された情報について、削除の必要があるとき、自分以外の家族に削除されたくないといった要望は普通に想定できるから、当該目的を実現するため、同じ目的を実現する、刊行物3に記載された構成を刊行物1発明に適用することは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
そして、刊行物1発明において、上記刊行物3に記載された構成を適用するとき、まず決定する段階を有し、番組を選択した後、刊行物1発明の支払いの確認と読み出しを行う、あるいは、消去できないように安全措置を施すようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
さらに、削除することができないような処理を行う情報は、ユーザが選択した情報であって、当該ユーザが選択した情報が削除されることなく残り、新たな情報(映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報)が繰り返し端末装置に配送され、容量がいっぱいになると、上記削除されない情報以外が削除され、新たな情報と置き換わることは、明らかであり、そのような処理が繰り返されことによって、ユーザごとに異なる情報が残ることで、「個人的な・・・ライブラリを構築」することができることは明らかである。
したがって、上記相違点1、相違点4の構成は、刊行物1発明に刊行物3に記載された事項を適用することにより、当業者が容易になし得たことであるといえる。

b.相違点2について
本願発明の「第1の複数の番組」の「第1の」について検討する。
上記記載について、平成25年1月24日付け意見書を参酌すると『請求項3の「第2の複数の番組」は、第1の複数の番組と区別するために、そのように記載しています。請求項3は、単に、第1の複数の番組に加えて、第2の番組をダウンロードし、データ媒体に格納することを特定しています。』と述べている。
すなわち、本願発明のダウンロードは、繰り返し行われることから、先にダウンロードされた番組(第1の番組)と、上記先にダウンロードされた番組が存在する状態で、新たにダウンロードされる番組(第2の番組)とを区別するためのものと認める。
してみると、刊行物1発明においても情報の配送は、繰り返し行われることは、上記a.で検討したとおりであり、先に配送される情報を「第1の情報」と称してもよいことは明らかである。
次に「複数の」について検討する。
刊行物1発明では、配送される情報が、複数であるか明らかでない。しかし、刊行物1発明は、「放送システムを放送に利用していない時間帯に空いている電波帯域を用いて情報の同報配送に用いる方法や、・・・光ファイバーによるB-ISDNを一般のトラヒックが少ない時間帯にオフトーク通信の原理を用いて情報の同報配送に用いる方法」であり、空き帯域を効率よく利用しようとするものであり、配送する情報は、情報源にある限る、なるべく早く配送したいことは常識であり、上記空き帯域に余裕があれば、配送する情報を複数配送することは当業者が当然行うことといえるから、刊行物1発明において配送する情報を「複数の情報」とすることは当業者が普通になし得たことである。
「番組」について検討する。
本願発明の番組について、特に定義はないが、サーバから配信される情報であって、例えば、映画を含むものであることは、発明の詳細な説明を参酌すると明らかである。
刊行物1発明の「情報」は、発明の詳細な説明を参酌すると「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」を含むものであることは、上記第5 a.で検討したとおりである。
そして、上記「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」に映画のようなものが含まれることは、当業者であれば、普通に想起し得たことであり、また、刊行物1の図4を見れば情報の内容として、「映画」とあるように、映画のようなコンテンツを想定していたことが想起できる記載がある。
したがって、刊行物1発明の「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」を番組とすることは当業者が容易になし得たことである。
以上のことからみて、刊行物1発明の「映像(ビデオ)又は音声(オーディオ)情報」を「第1の複数の番組」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

c.相違点3について
当審が拒絶理由通知書に記載した引用刊行物2(特開昭63-59083号公報)には以下の記載がある。

「〔従来技術〕
上記の如きCATVシステムは、従来第3図に示す様に構成されている。
すなわち、CATVセンター(1)と各家庭に配置したホームターミナル7間を同軸、光などの双方向伝送路3で結合している。
そして、例えばある番組を見聴したい時は、その番組を放送しているチャンネルをホームターミナル7より指定すると、送受信制御部4は双方向伝送路3からそのチャンネルを取り出して、モニタに入力する様にしている。
そして、ホームターミナル7において、有料チンネルを受信したことの通知が、双方向伝送路3の空チャンネルを利用してCATVセンター1に設置された課金登録ファイルに書込まれる。
〔従来技術の問題点〕
ここで、従来の課金はホームターミナル毎に行なわれていることから、例えば友人宅で自分の見たい番組を見るとその家庭に課金され、真の視聴者には課金されないという問題があった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、この様な問題点を解決するために、第1図に示す様にホームターミナル7にカード読取装置6を付加し、このカード読取装置6からの制御データにより、送受信制御部4により有料チャンネルの受信を開始するとともに、カードに記憶されたID番号データをCATVセンターに通知し、課金登録ファイル2に、ID番号毎に課金情報を書込む様にした。
〔作用〕
有料チャンネルを視聴したい利用者は自分のカードをカード読取装置6にセットする。
これにより、カード読取装置6は内容を読み取り、送受信制御部4へ制御データID番号データを入力する。
送受信制御部4では制御データを受けて、指定された有料チャンネルを受信して、モニタ5へ出力するとともに、ID番号データをCATVセンター1へ通知する。
CATVセンター1では受信したID番号に対して課金登録ファイル2に課金情報を書込む様にした。
この様にID番号毎に課金を行なうので、真の利用者に課金を行なうことが可能となる。」(公報2頁左上欄8行-左下欄15行)

すなわち、CATVセンターから、番組を受信し、視聴する際、見たい番組を見る際に課金を行う必要がある場合があるが、このとき、ホームターミナル毎(すなわち、端末毎)に課金を行うと、真の視聴者には課金が行われないから、真の利用者に課金を行なうため、利用者は、自分のカードを(ホームターミナルの)読取装置にセットし、カード読取装置6は内容を読み取り、送受信制御部4へ制御データID番号データを入力し、カード毎のID番号に対して、課金を行うようにした構成が開示されているといえる。
刊行物1発明は、家庭に置かれて、家族等で共用するようなものが想定されることは、上記a.にて検討したとおりであって、刊行物2のホームターミナルも家庭に置かれて、家族等で共用するようなものが想定されるものである点で共通している。
そして、さらに、刊行物1発明において、番組を視聴することが容易に想定できることは、上記b.で検討したとおりであることも踏まえると、刊行物1発明において、刊行物2に記載された、課題があることは、刊行物1発明および刊行物2に触れた当業者であれば、容易に想起し得たことであり、当該課題を解決するため、刊行物2に記載された構成を適用し、相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるといえる。
請求人は、意見書にて、
「本願発明は、請求項1に記載の通り、「ユーザ特定のコードの入力により、上記決定された番組の内容を読み出すために、支払い機構が上記決定された番組に対して支払うことを可能にする段階」を特徴の1つとします。他の請求項も同様の特徴を含みます。
本願発明では、ユーザ特定のコードの入力により、支払いが可能になりますが、引用文献1では、端末装置のIDが課金のために利用されます。本願発明では、ユーザ特定のコードの入力により、例えば、他人が端末を使用したとしても、ユーザが支払いを管理できるという点で、セキュリティを向上させることが可能になります。
本願発明のこの特徴に対して引用されている引用文献2では、カードに記憶されたIDデータ番号毎に課金が行われますが、引用文献2の課金は、有料チャンネルを受信するために用いられ、格納されたファイルを読み出すために用いられるのではありません。
このように、引用文献2は、本願発明の「ユーザ特定のコード」とは異なる目的で用いられているため、引用文献2の「IDデータ番号」を引用文献1の「端末装置のID」に置き換えて、本願発明のように構成することはできないものと思料します。」
と述べているが、上記主張の「本願発明では、ユーザ特定のコードの入力により、例えば、他人が端末を使用したとしても、ユーザが支払いを管理できるという点で、セキュリティを向上させることが可能になります。」という効果は、刊行物2に記載された構成が有する効果であり、刊行物1発明と刊行物2に記載された構成とを組み合わせたことによる格別な効果ということはできない。
また、「本願発明のこの特徴に対して引用されている引用文献2では、カードに記憶されたIDデータ番号毎に課金が行われますが、引用文献2の課金は、有料チャンネルを受信するために用いられ、格納されたファイルを読み出すために用いられるのではありません。
このように、引用文献2は、本願発明の「ユーザ特定のコード」とは異なる目的で用いられているため、引用文献2の「IDデータ番号」を引用文献1の「端末装置のID」に置き換えて、本願発明のように構成することはできないものと思料します。」
との主張については、そもそも刊行物1発明は「読み出す情報(番組)が、情報源(例えば放送局等)から放送を介してダウンロード(提供)された情報(番組)であり、上記情報源が提供した情報(番組)を、ユーザが利用(視聴)した時に支払う」ことを前提とする発明であり、刊行物2の構成も、CATVセンター(放送局等)が放送を介して提供する番組を、ユーザが利用したときのみ支払うことを前提としているから、この点で共通し、当該支払いを、刊行物1発明では、端末IDで行うから、実際に端末を利用する利用者と、端末の所有者(契約者)とが異なる課題が存在していることは、刊行物2に触れた当業者であれば、容易に想起し得たことであり、当該課題を解決するために、刊行物1発明に対して、刊行物2の構成を適用することは、当業者であれば、容易になし得たことであって、上記請求人の主張は採用することができない。

d.効果
以上のように、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものと認められ、本願発明全体としてみても格別のものはなく、その作用効果も、上記相違点に係る構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項1、3ないし10に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-22 
結審通知日 2013-03-26 
審決日 2013-04-10 
出願番号 特願2007-92272(P2007-92272)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小田 浩岡本 正紀曽我 亮司  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 小池 正彦
千葉 輝久
発明の名称 大容量媒体上の記録及び読み出しの方法及び装置  
代理人 伊東 忠彦  

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