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審決分類 |
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1278509 |
審判番号 | 不服2013-7359 |
総通号数 | 166 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-10-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-22 |
確定日 | 2013-08-21 |
事件の表示 | 特願2012- 15828「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-106932〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願は,特許法41条に基づく優先権主張を伴う出願であって,その手続の経緯概要は以下のとおりである。なお、優先権主張に関しては「第3.本願発明」「2.先願発明」「(1)特許法29条の2の規定に関する判断の基準日」において検討する。 平成24年 1月27日 出願 平成24年 2月24日 拒絶理由通知 平成24年 4月10日 手続補正 平成24年 7月12日 拒絶理由通知(最後) 平成24年 8月30日 手続補正A 平成25年 2月 7日 補正却下(手続補正A)、拒絶査定 平成25年 4月22日 本件審判請求、手続補正 第2.平成25年4月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年4月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正内容 平成25年4月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正事項を含むもので、その補正事項は次のとおりである。 (補正事項) 補正前の請求項1の「開始すると共に、複数の図柄列によるフリーズ演出抽選を行って当選すると、停止スイッチの操作を無効にし、複数の図柄列を上方向に回転させて、演出用図柄を一直線に揃えて表示し、フリーズ演出を終了すると複数の図柄列を順方向に回転させる」との記載を 「開始し、全ての図柄列が一定速度で順方向に回転すると、停止スイッチの正規操作を有効にすると共に、複数の図柄列によるフリーズ演出抽選を行って当選している場合には、変動表示ゲームを開始すると、フリーズ演出を行って停止スイッチの正規操作を無効にし、フリーズ演出中に複数の図柄列を上方向に回転させ、停止スイッチを押せば、振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させて表示窓に表示し、フリーズ演出を終了すると複数の図柄列を一定速度で順方向に回転させて停止スイッチの正規操作を有効にする」と補正する。 2.補正の適否 (1)審判請求人は、上記補正事項の根拠として、 (イ)「出願当初の明細書第0392段落の記載、「主制御部100は、ドラム部2を所定回数だけ回転させた後に左ドラム2a及び中ドラム2bを中央ラインに赤7図柄を疑似停止させると共に、副制御部160はこの回転と停止に同期させるようにして、赤7図柄を表示演出装置11に停止させる。また、左ドラム2a及び中ドラム2bの疑似停止中には、赤7図柄が上下に震動させる(図111(B)参照)。ARTが不当選の場合には、右ドラム2cの赤7図柄は振動しながら下段に停止し、表示演出装置11の赤7図柄も他の図柄が停止して、最終的に赤7図柄が共に一直線に揃わない(図111(C)参照)。その一方、ARTが当選の場合には、振動を続ける赤7図柄及び表示演出装置11の赤7図柄も一直線に揃って停止して(図111(D)参照)、フリーズ演出が終了する。その後、再び全リールが一定速度で回転して、停止ボタン部10の操作が有効になる(図111(E)参照)。」、(に基づくものであります。)」(審判請求書3頁27行?4頁12行) (ロ)「同明細書第0394段落の記載、「副制御部160は、主制御部100が第3停止でRT3移行リプレイ?RT5移行リプレイの何れかを作動させると、表示演出装置11の赤7図柄を一直線に揃えて停止させ、ARTゲーム数の50ゲームを表示する(図112(A)参照)。主制御部100は、7RUSH抽選を行って当選すると、副制御部160にその旨を通知して、7RUSHフリーズ演出を行う。主制御部100は、RT3移行リプレイ?RT5移行リプレイの何れかが作動すると、遊技状態がRT3?RT5(複数の異なるAT遊技状態)に移行した最初のゲーム(1ゲーム目)であることを参照し、次ゲームのスタートレバー9の開始操作時にメインリールによる7RUSHフリーズ演出を行って、停止ボタン部10の操作を無効にする。」、及び図111?図112に基づくものであります。」(審判請求書4頁12?22行)と主張している。 また、審判請求人の指摘個所以外において、「7RUSH演出」に関して、本願出願の出願当初の明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0395】には「主制御部100は、ドラム部2を上方向に揃えて回転させ(図112(B)参照)、振動を続ける赤7図柄を中央一直線に揃えて停止させて窓部3に表示し、ART上乗せゲーム数の50ゲームを表示する(図112(C)参照)。この表示は、当選した回数だけ何度も繰り返されるので、遊技者は興奮と感動を覚える。一方、7RUSHが不当選の場合又は7RUSHが終了する場合は、ドラム部2を順方向に回転させる(図112(D)参照)。これらのフリーズ演出をキャンセルさせる場合には、演出中にMAXベットボタンを操作すればよい。また、MAXベットボタンを連打してメインリールを動かす演出を搭載すれば、遊技者は激アツな気分になる。更に、リール演出中に停止ボタンを押せば、赤7図柄を揃えられるようにしてもよい。」と記載されている。 (2)上記補正事項について検討すると、補正後の技術的事項である「複数の図柄列を上方向に回転させ、・・振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させ」は、「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」ことを技術的意義として含むことは明らかである。 そして、本願出願の出願当初の明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0392】には、「チャンス演出」として「中央ラインに赤7図柄を疑似停止させると共に、・・左ドラム2a及び中ドラム2bの疑似停止中には、赤7図柄が上下に震動させる。・・ARTが当選の場合には、振動を続ける赤7図柄及び表示演出装置11の赤7図柄も一直線に揃って停止して」と記載されており、これによれば、演出用図柄(赤7図柄)を疑似停止させるとともに振動させ、振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させるというものであるから、当初明細書等には「一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動する演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」ことが記載されていると認められる。しかしながら、「チャンス演出」において「複数の図柄列を上方向に回転させ」る旨の記載はないから、「チャンス演出」に関して当初明細書等には「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」ことは記載されていない。 一方、当初明細書等の段落【0395】には、「7RUSH演出」として「ドラム部2を上方向に揃えて回転させ(図112(B)参照)」と記載されているから、当初明細書等には「複数の図柄列を上方向に回転させ」ることが記載されていると認められる。しかしながら、上方向に回転しているドラム部2について「振動を続ける赤7図柄を中央一直線に揃えて停止させ」(段落【0395】)るものであるが、赤7図柄を中央一直線に揃える以前においてはドラム部2の上方向回転とともに赤7図柄を振動させることは記載されていないから、「7RUSH演出」に関して当初明細書等には「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」ことは記載されていない。 さらに、段落【0391】?段落【0395】及び【図111】?【図112】以外の当初明細書等においても「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」ことが明示的記載されているとは認められず、当初明細書等から自明な事項とも認められない。 したがって、補正後の技術的事項である「複数の図柄列を上方向に回転させ、・・振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させ」は、当初明細書等に記載のない「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させる」を含むと理解される。 また、当初明細書等の段落【0022】に「疑似確変ART(NS-ART)の当選を遊技者に激しく印象付けるように、赤7図柄などの演出用図柄を表示窓に一直線に揃えて表示し、フリーズ状態中に演出用図柄を用いた激アツ演出を行う技機等を提供することにある。」と記載されているように、本願発明は「赤7図柄などの演出用図柄を表示窓に一直線に揃えて表示し、フリーズ状態中に演出用図柄を用いた激アツ演出を行う技機等を提供する」ことを技術的課題としており、当該「演出用図柄を表示窓に一直線に揃えて表示」することと「複数の図柄列を上方向に回転させ、一直線に揃える前に演出用図柄を振動させ、当該振動を続ける(演出用図柄を一直線に揃えて停止させる)」ことは技術的事項が異質なものである。 そうすると、請求項1に「複数の図柄列を上方向に回転させ、・・振動を続ける演出用図柄を一直線に揃えて停止させ」を加入することは、当初明細書等に開示された発明の技術思想、解決課題とは異質の技術的事項を導入するものであり、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入することになる。 (3)以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明 1.本願発明の認定 平成25年4月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年4月10日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。なお、平成24年8月30日付け手続補正は、平成25年2月7日付けで却下されている。 「規定数量の遊技媒体を投入した投入完了状態でスタート操作されると、演出用図柄を含む複数個の図柄が描かれた図柄列を複数列変動させる変動表示ゲームを開始する遊技機において、 貯留している遊技媒体数量を表示する表示手段と、 スタート操作されるとスタート信号を出力するスタート信号出力手段と、 スタート信号出力手段からのスタート信号に基づいて変動表示ゲームを開始する制御手段と、 変動する複数の図柄列を停止させる停止スイッチとを具備し、 前記制御手段は、表示手段が規定数量以上の遊技媒体を貯留している場合、規定数量の遊技媒体が投入されていない投入未完了状態で、投入信号出力手段から投入信号を受け取ると、規定数量とするのに要した数量を差し引いた遊技媒体数量を表示手段に表示させて投入完了状態とし、該投入完了状態でスタート信号出力手段からスタート信号を受け取ると変動表示ゲームを開始すると共に、複数の図柄列によるフリーズ演出抽選を行って当選すると、停止スイッチの操作を無効にし、複数の図柄列を上方向に回転させて、演出用図柄を一直線に揃えて表示し、フリーズ演出を終了すると複数の図柄列を順方向に回転させること、 を特徴とする遊技機。」 2.先願発明 (1)特許法29条の2の規定に関する判断の基準日 本願は、下記の5つの特許出願を優先権主張の基礎となった先の特許出願(以下「先願」という。)とし、優先権を主張して特許出願(特願2012-15828号(平成24年1月27日))するものである。 先願1:特願2011-29589号(平成23年2月15日) 先願2:特願2011-78258号(平成23年3月31日) 先願3:特願2011-100195号(平成23年4月27日) 先願4:特願2011-119753号(平成23年5月27日) 先願5:特願2011-219512号(平成23年10月3日) 特許法41条2項において、優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明についての29条の2の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時になされたものとみなすものとされている。 そして、本願発明が先願1?5の明細書、特許請求の範囲及び図面のいずれかに記載されたものであったとしても、特許法29条の2の規定に関する判断の基準日は最先の先願1の出願日である平成23年2月15日以降となるから、以下において検討する特願2010-269464号(特開2012-115562号)は、その出願日が平成22年12月2日であることを考慮すると、本願に対して特許法29条の2の先願となり得るものである。 (2)先願発明 原査定の拒絶の理由(平成24年7月12日付け拒絶理由通知書参照)に引用された先願(特願2010-269464号(特開2012-115562号))の願書に最初に添付した明細書には以下の記載がある。 ・記載事項1 「本発明は、たとえば、スロットマシンに関する。詳しくは、1ゲームに対して賭数を設定することによりゲームが開始可能となるとともに、表示状態を変化させることが可能な可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果に応じて入賞が発生可能とされたスロットマシンに関する。」(段落【0001】) ・記載事項2 「リール2L、2C、2Rの外周部には、図3に示すように、それぞれ、「メロン(たとえば、左リール2Lの領域番号20の図柄)」、「バナナ(たとえば、左リール2Lの領域番号19の図柄)」、「白7(たとえば、左リール2Lの領域番号18の図柄)」、「黒BAR(たとえば、左リール2Lの領域番号17の図柄)」、「星(たとえば、左リール2Lの領域番号14の図柄)」、「ブドウ(たとえば、左リール2Lの領域番号13の図柄)」、「黒7(たとえば、左リール2Lの領域番号10の図柄)」、「白BAR(たとえば、左リール2Lの領域番号6の図柄)」、「イチゴ(たとえば、左リール2Lの領域番号5の図柄)」、「星7(たとえば、左リール2Lの領域番号1の図柄)」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で、それぞれ21個ずつ描かれている。」(段落【0038】) ・記載事項3 「各リール2L、2C、2Rは、各々対応して設けられリールモータ32L、32C、32R(図2、図4参照)によって回転させることで、各リール2L、2C、2Rの図柄が透視窓3に連続的に変化しつつ表示されるとともに、各リール2L、2C、2Rの回転を停止させることで、透視窓3に3つの連続する図柄が表示結果として導出表示されるようになっている。」(段落【0040】) ・記載事項4 「また、前面扉1bには、遊技に関する情報を報知する遊技用表示部13が設けられている。遊技用表示部13には、クレジットとして記憶されているメダル枚数が表示されるクレジット表示器11・・が設けられている。」(段落【0044】) ・記載事項5 「スロットマシン1においてゲームを行なう場合には、まず、メダルをメダル投入部4から投入するか、あるいはクレジットを使用して賭数を設定する。」(段落【0050】) ・記載事項6 「遊技状態に応じて定められた規定数の賭数が設定されると、入賞ラインL1?L4(図1参照)の対応するラインが有効となり、スタートスイッチ7の操作が有効な状態、すなわち、ゲームが開始可能な状態となる。」(段落【0051】) ・記載事項7 「ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの図柄が連続的に変動する。この状態でいずれかのストップスイッチ8L、8C、8Rを操作すると、対応するリール2L、2C、2Rの回転が停止し、透視窓3に表示結果が導出表示される。」(段落【0055】) ・記載事項8 「スロットマシン1には、図4に示すように、遊技制御基板40、演出制御基板90、電源基板101が設けられており、遊技制御基板40によって遊技状態が制御され、演出制御基板90によって遊技状態に応じた演出が制御され、電源基板101によってスロットマシン1を構成する電気部品の駆動電源が生成され、各部に供給される。」(段落【0061】) ・記載事項9 「遊技制御基板40には、・・スタートスイッチ7、ストップスイッチ8L、8C、8R、・・投入メダルセンサ31・・が接続されている・・これら接続されたスイッチ類の検出信号が入力されるようになっている。」(段落【0064】) ・記載事項10 「また、遊技制御基板40には、クレジット表示器11、・・BETスイッチ有効LED21、左、中、右停止有効LED22L、22C、22R、・・、リールモータ32L、32C、32Rが接続されているとともに、・・これら電気部品は、遊技制御基板40に搭載された後述のメイン制御部41の制御に基づいて駆動されるようになっている。」(段落【0065】) ・記載事項11 「1ゲームの処理が開始すると、まず、MAXBETスイッチ6を操作することにより、あるいはメダル投入口4からメダルを投入することにより賭数を設定し、スタートスイッチ7を操作することにより当該ゲームの実質的な開始を指示するBET処理を行なう。」(段落【0255】) ・記載事項12 「BET処理により賭数が設定され、スタートスイッチ7が操作されると、内部抽選用の乱数を抽出し、抽出した乱数の値に基づいて遊技状態に応じて定められた各役への入賞を許容するかどうかを決定するといった内部抽選を行なう内部抽選処理を行なう。」(段落【0257】) ・記載事項13 「内部抽選処理が終了すると、次にリール回転処理が行なわれる。リール回転処理では、前回のゲームでのリール2L、2C、2Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(たとえば、4.1秒)経過していることを条件に、リールモータ32L、32C、32Rを駆動させ、左、中、右の全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させる。通常時においては、リールモータ32L、32C、32Rを通常態様で回転駆動させる。本実施の形態では、通常態様として、リールモータ32L、32C、32R各々を、同時にかつ所定速度に到達するまで所定の加速度で回転駆動させる。これにより、通常態様で回転駆動されたときには、左、中、右すべてを同時にかつ所定の加速度で回転開始することができる。」(段落【0259】) ・記載事項14 「リール2L、2C、2Rの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後、リールセンサ33SL、33SC、33SRにより基準位置を検出すること)が成立すると、ストップスイッチ8L、8C、8Rを操作有効とする。その後、ストップスイッチ8L、8C、8Rが遊技者によって操作されることにより、操作されたストップスイッチに対応するリールモータ32L、32C、32Rを駆動停止させ、リール2L、2C、2Rの回転を停止させる。」(段落【0260】) ・記載事項15 「以上のようなゲームの繰り返しにおいて、遊技制御基板40のメイン制御部41は、RT1?RT4、内部中RT、通常遊技状態、ボーナスの間で遊技状態の移行を行なっており、遊技の進行状況に応じてコマンドを演出制御基板90に送信している。これに対して、演出制御基板90のサブ制御部91は、遊技制御基板40から受信したコマンドに基づいて、各種処理を行なう。」(段落【0273】) ・記載事項16 「また、本実施の形態におけるメイン制御部41により実行されるゲーム制御処理では、BB中におけるRBのゲームにおいて、予め定められた特定条件が成立したときにリール2L?2Rを、前述した通常態様と異なる特定態様で回転制御するための特別制御処理や、ストップスイッチ8L?8Rの操作を有効化するタイミングを通常時よりも遅延させることによりフリーズを発生させるためのフリーズ発生処理が行なわれる。」(段落【0274】) ・記載事項17 「まず、図17を参照して、特定条件について説明する。特定条件としては、RTC50が計時した日時に基づき、異なる事象が対応付けられている。RTC50が計時した日時に基づき、10時?13時あるいは18時?21時の時間帯(以下、特定時間帯という)に入賞したBB中においては、内部抽選において、BB強イチゴ、BBメロン、8枚メロンのいずれかに当選したとき、イチゴに当選したときに実行される第1条件抽選で当選したとき、およびいずれの入賞役にも当選せずにはずれとなったときに、特定条件が成立する。なお、第1条件抽選とは、乱数などを用いてランダムに行なわれる抽選であって、所定確率(たとえば、10%)で当選する抽選をいう。」(段落【0276】) ・記載事項18 「逆回転パターンは、特定条件が成立したゲーム開始時において、所定期間に亘りフリーズを発生させるとともに、当該フリーズ中においてリール2L?2Rを通常態様とは逆方向に回転(逆回転)させた後、入賞ラインL1上に図柄を揃えて一旦停止させるリール演出制御を行ない、再び通常態様と同じ方向に回転(正回転)させる制御を行なうパターンをいう。」(段落【0279】) ・記載事項19 「メインCPU41aは、逆回転パターンや正回転パターンに決定されておらずフリーズを発生させない場合で、かつ特定態様で回転制御させない場合には、図19(a)に示すように、ゲームの開始後、リール2L?2Rを通常態様で回転開始させ、全てのリールが定速回転となった時点でリール2L?2Rに対応するストップスイッチ8L、8C、8Rの操作を有効化する。」(段落【0284】) ・記載事項20 「一方、逆回転パターンや正回転パターンに決定されて、フリーズを発生させる場合には、図19(b)に示すように、ゲームの開始後、予め定められたフリーズ期間が経過するまでリール2L?2Rに対応するストップスイッチ8L、8C、8Rを有効化せず、フリーズ期間が経過した時点でリール2L?2Rに対応するストップスイッチ8L、8C、8Rの操作を有効化する。」(段落【0286】) ・記載事項21 「入賞ラインL1上に一旦停止させる制御に用いる制御パターンには、たとえば、「白7」を入賞ラインL1上に揃えて一旦停止させる第1制御パターンと、「メロン」を入賞ラインL1上に揃えて一旦停止させる第2制御パターンとを含む。」(段落【0291】) 以上を含む全記載及び図示、遊技機に関する技術常識によれば、先願明細書には次の発明が記載されていると認められる。 「メダルをメダル投入部4から投入するか、あるいはクレジットを使用し、規定数の賭数が設定されると、ゲームが開始可能な状態となり、ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの外周に描かれた、フリーズ中において一旦停止する「白7」及び「メロン」を含む複数個の図柄が連続的に変動するスロットマシンにおいて、 クレジットとして記憶されているメダル枚数が表示されるクレジット表示器11と、 検出信号を遊技制御基板40に出力するスタートスイッチ7と、 スタートスイッチ7が操作されると、全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させるメイン制御部41と、 複数個の図柄が外周に描かれたリール2L、2C、2Rの回転を停止させるストップスイッチ8L、8C、8Rと、 メイン制御部41は、ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの外周に描かれた複数個の図柄が連続的に変動すると共に、抽選の当選を含む特定条件が成立するとフリーズ発生処理が行なわれ、ゲームの開始後、予め定められたフリーズ期間が経過するまでリール2L?2Rに対応するストップスイッチ8L、8C、8Rを有効化せず、リール2L?2Rを通常態様とは逆方向に回転(逆回転)させた後、入賞ラインL1上に「白7」または「メロン」の図柄を揃えて一旦停止させ、再び通常態様と同じ方向に回転(正回転)させる、スロットマシン。」(以下、「先願発明」という。) 3.対比 先願発明と本願発明を対比する。 先願発明の「メダルをメダル投入部4から投入するか、あるいはクレジットを使用し、規定数の賭数が設定される」は本願発明の「規定数量の遊技媒体を投入した」に相当し、以下同様に、 「ゲームが開始可能な状態」は「投入完了状態」に、 「スタートスイッチ7を操作する」は「スタート操作される」に、 「各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの外周に描かれた、フリーズ中において一旦停止する「白7」及び「メロン」を含む複数個の図柄が連続的に変動する」は「演出用図柄を含む複数個の図柄が描かれた図柄列を複数列変動させる変動表示ゲームを開始する」に、 「スロットマシン」は「遊技機」に、 「クレジットとして記憶されているメダル枚数が表示されるクレジット表示器11」は「貯留している遊技媒体数量を表示する表示手段」に、 「検出信号を遊技制御基板40に出力するスタートスイッチ7」は「スタート操作されるとスタート信号を出力するスタート信号出力手段」に、 「スタートスイッチ7が操作されると、全てのリール2L、2C、2Rを回転開始させるメイン制御部41」は「スタート信号出力手段からのスタート信号に基づいて変動表示ゲームを開始する制御手段」に、 「複数個の図柄が外周に描かれたリール2L、2C、2Rの回転を停止させるストップスイッチ8L、8C、8R」は「変動する複数の図柄列を停止させる停止スイッチ」に、 「ゲームが開始可能な状態でスタートスイッチ7を操作すると、各リール2L、2C、2Rが回転し、各リール2L、2C、2Rの外周に描かれた複数個の図柄が連続的に変動する」は「投入完了状態でスタート信号出力手段からスタート信号を受け取ると変動表示ゲームを開始する」に、 「抽選の当選を含む特定条件が成立するとフリーズ発生処理が行なわれ」は「複数の図柄列によるフリーズ演出抽選を行って当選する」に、 「予め定められたフリーズ期間が経過するまでリール2L?2Rに対応するストップスイッチ8L、8C、8Rを有効化せず」は「停止スイッチの操作を無効にし」に、 「リール2L?2Rを通常態様とは逆方向に回転(逆回転)させ」は「複数の図柄列を上方向に回転させて」に、 「入賞ラインL1上に「白7」または「メロン」の図柄を揃えて一旦停止させ」は「演出用図柄を一直線に揃えて表示し」に、 「再び通常態様と同じ方向に回転(正回転)させる」は「フリーズ演出を終了すると複数の図柄列を順方向に回転させる」に、 それぞれ相当する。 そうすると、両者は、 「規定数量の遊技媒体を投入した投入完了状態でスタート操作されると、演出用図柄を含む複数個の図柄が描かれた図柄列を複数列変動させる変動表示ゲームを開始する遊技機において、 貯留している遊技媒体数量を表示する表示手段と、 スタート操作されるとスタート信号を出力するスタート信号出力手段と、 スタート信号出力手段からのスタート信号に基づいて変動表示ゲームを開始する制御手段と、 変動する複数の図柄列を停止させる停止スイッチとを具備し、 制御手段は、投入完了状態でスタート信号出力手段からスタート信号を受け取ると変動表示ゲームを開始すると共に、複数の図柄列によるフリーズ演出抽選を行って当選すると、停止スイッチの操作を無効にし、複数の図柄列を上方向に回転させて、演出用図柄を一直線に揃えて表示し、フリーズ演出を終了すると複数の図柄列を順方向に回転させる、遊技機。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点> 本願発明では、制御手段は、表示手段が規定数量以上の遊技媒体を貯留している場合、規定数量の遊技媒体が投入されていない投入未完了状態で、投入信号出力手段から投入信号を受け取ると、規定数量とするのに要した数量を差し引いた遊技媒体数量を表示手段に表示させて投入完了状態とするものであるのに対し、先願発明ではそのような構成であるか不明である点。 4.判断 上記相違点について検討する。 従来、制御手段が、表示手段が規定数量以上の遊技媒体を貯留している場合、規定数量の遊技媒体が投入されていない投入未完了状態で、投入信号出力手段から投入信号を受け取ると、規定数量とするのに要した数量を差し引いた遊技媒体数量を表示手段に表示させて投入完了状態とすることは、スロットマシンの機能として普通に採用されている慣用手段に過ぎないものであって、それは特開2010-201181号公報(段落【0548】)を一例として示すことができる。 そうすると、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差であって、本願発明と先願発明は実質的に同一である。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-06-24 |
結審通知日 | 2013-06-26 |
審決日 | 2013-07-10 |
出願番号 | 特願2012-15828(P2012-15828) |
審決分類 |
P
1
8・
16-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫃本 研太郎、東 治企 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
瀬津 太朗 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |