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審決分類 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C10G
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する C10G
管理番号 1279063
審判番号 訂正2013-390099  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2013-07-11 
確定日 2013-09-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5266335号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5266335号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由
第1 手続の経緯

本件訂正審判の請求に係る特許第5266335号(以下、「本件特許」という。)は、2008年12月22日(パリ条約による優先権主張 2008年1月31日 米国)を国際出願日とするものであって、平成25年5月10日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成25年7月11日に訂正審判の請求がなされたものである。

第2 請求の趣旨

本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書、及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容

本件訂正審判の請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。

1 訂正事項1
特許請求の範囲の範囲の請求項4を削除する。

2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?3のいずれか1項」に訂正する。

3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?3及び5のいずれか1項」に訂正する。

4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?6のいずれか1項」とあるのを、「請求項1?3、5及び6のいずれか1項」に訂正する。

5 訂正事項5
本件特許の願書に添付した明細書の段落【0051】及び【0063】にそれぞれ記載された「ヨウ素価」とあるのを、「臭素価」に訂正する。

第4 当審の判断

I 訂正の目的、新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について

本件特許に係る出願(特願2010-544982号)は、特許法第184条の4第1項の「外国語特許出願」である国際出願PCT/US/2008/088029(国際出願日2008年12月22日;国際公開第2009/097069号参照。上記国際出願を、以下「本件国際出願」あるいは「本件外国語特許出願」ともいう。)が、同法第184条の3第1項の規定により特許出願とみなされたものである。

したがって、本件審判に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項だたし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「外国語書面出願」及び「外国語書面」は、同法第184条の19の規定により、それぞれ「第184条の4第1項の外国語特許出願」及び「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となるので、同法第126条第5項で規定する「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、「第184条の4第1項の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」となる。すなわち、本件審判に係る訂正事項のうち、特許法第126条第1項だたし書第2号に掲げる事項を目的とするものについて、同条第5項を適用する際の「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」は、国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面となる(「国際出願日における本件国際出願の明細書、請求の範囲又は図面」を、以下単に「基準明細書」という。)。

以下、これを踏まえて検討する。

1 訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)新規事項の追加 及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び6項の規定に適合する。

2 訂正事項2?4について
(1)訂正の目的
訂正事項2?4は、引用請求項から請求項4を削除してその数を減らすものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(2)新規事項の追加 及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項2?4は、引用請求項を減らすものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2?4は、特許法第126条第5項及び6項の規定に適合する。

3 訂正事項5について
(1)訂正の目的
訂正事項5は、本件特許の願書に添付した明細書の段落【0051】及び【0063】における「ヨウ素価」との記載を、「臭素価」に訂正するものである。
これは、基準明細書における「ヨウ素価」に対応する箇所(基準明細書段落[0052]、[0064])には、「bromine number」又は「bromine numbers」と記載されており、これらは本来、「臭素価」と翻訳されるものであるところ、訂正前は「ヨウ素価」と誤訳していたので、「臭素価」と訂正するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる「誤訳の訂正」を目的とするものである。

(2)新規事項の追加 及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
訂正事項5は、上記のとおり、基準明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。
また、訂正後の請求項1?3、及び5?7に係る発明には、「ヨウ素価」あるいは「臭素価」に関連する事項はなく、訂正事項5は、各請求項の認定に直接影響を与えるものはないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項5は、特許法第126条第5項及び6項の規定に適合する。

II 独立特許要件について
訂正事項1?4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正事項5は、誤訳の訂正を目的とするものであるが、訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3、及び5?7に記載された発明については、いずれも、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1?4は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
メタロセン触媒によるポリ-アルファオレフィン類の生産におけるリニアアルファオレフィン類の改良された利用
【技術分野】
【0001】
(優先権主張)
本出願は、2008年1月31日に提出したUSSN 61/025,200に基づく優先権と恩典(benefit)を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明はメタロセン触媒類を用いたポリアルファオレフィン(PAO)の生産に関する。
【背景技術】
【0003】
オリゴマー化された炭化水素液体の合成により、天然鉱物油をベースとする潤滑油の性能を向上するための努力が石油工業において50年以上に亘る研究開発の重要な主題であった。その努力が比較的最近なされた多くの合成潤滑油の市場導入に結び付いた。
【0004】
潤滑油特性の改良の点では、合成潤滑油を含む工業的研究努力の推進力は、広い温度範囲に亘る有用な粘度、即ち改良された粘度指数(VI)を発揮すると同時に、鉱物油と同等か優れた潤滑性、熱安定性、酸化安定性及び流動点をも示す流体に向けられてきている。
【0005】
潤滑油の粘度-温度相関性は、特定の用途向けに潤滑油を選択する際に考慮される主たる基準の一つである。通常、単一及び複合グレードの潤滑油のベースとして用いられる鉱物油は、温度変化に対して比較的大きな粘度変化を呈する。温度に対して比較的大きな粘度変化を呈する流体は低い粘度指数(VI)を有する、と言われる。VIは、与えられた温度範囲内で、オイル粘度の変化率を示す経験的な数である。例えば、VIが高いオイルは、VIが低いオイルよりもゆっくりと高温で薄化する。通常、高VIオイルは高温でも比較的高粘度を有するので好ましく、それは即ち、好ましくは高温もしくは広い温度範囲で良好な潤滑性と機械要素のより優れた接触防止を意味する。VIはASTMD2270法に従って算出される。
【0006】
PAOはリニアα-オレフィン(LAO)モノマーの触媒的オリゴマー化(低分子量生成物へのポリマー化)によって製造される1群の炭化水素を含む。それらは、典型的には1-オクテンから1-ドデセンの範囲に亘り、1-デセンが好適な原料であるが、米国特許第4,956,122及びここで引用される特許群に記載されている様なエチレンと高級オレフィンとのコポリマーも含み、エチレンやプロピレンの様な低級オレフィンのオリゴマー共重合体を用いてもよい。
【0007】
PAO生成物は潤滑油市場において重要性を増してきた。典型的には、リニアα-オレフィンから製造される2群の合成炭化水素流体(SHF)があり、該2群のSHFは夫々PAO及びHVI-PAO(高粘度指数PAO)と略記される。種々の粘度グレードのPAOは典型的には活性化された(promoted)BF_(3)又はAlCl_(3)触媒を用いて生産される。
【0008】
特に、PAOは、AlCl_(3)、BF_(3)又は活性化されたAlCl_(3)、BF_(3)の様な触媒の存在下でオレフィン原料の重合によって生産してもよい。これらの触媒は分岐オレフィンに対する反応性を示すが、α-オレフィンに対してはより高い反応性を発揮する。これらの触媒によって、リニアα-オレフィン原料をオリゴマー化する際、工程由来の未反応モノマーの副生流が生成する。これらの未反応モノマーをリサイクルすることは不利である、何故ならば、それらは最終的なPAO生成物の性質に悪影響を有するので、通常のPAOの生産には典型的に好ましくない分岐又は内部オレフィンを含むからである。
【0009】
種々のα-オレフィン原料のオリゴマー化において、メタロセン触媒を用いるPAOの製造プロセスは、例えば、PCT/US2006/027591、PCT/US2006/021231、PCT/US2006/027943及びPCT/2007/010215で既に開示されており、これら全ては本発明に対して、付加的な背景を明白に提供するか、又は引用を通じて提供する。理想的には、α-オレフィン原料の全量を潤滑油製品に転換することが望ましい。しかしながら、しばしば、リアクターの効率と容量を最適化するため、部分的なオレフィン転化反応を、α-オレフィン転化率として100%未満に保持することが望ましい。典型的には、α-オレフィンモノマーの潤滑油範囲(C30?C60)のポリα-オレフィンへの転化量は80モル%未満である。
【0010】
当該工業における最も重要な問題の一つは原料α-オレフィンの入手性とコストである。原料α-オレフィンの入手性は過去数年間に亘る大きな課題であった。1-デセンが最も好ましい原料であるが、他のα-オレフィンモノマーで原料を代替したり補充したりすることにより、1-デセンオリゴマーの優良な性質を真似るべく多くの努力がなされてきている。代替原料、例えば、1種又はそれ以上のC3?C18α-オレフィンをベースとする原料を用いる際の主たる問題は、純粋な1-デセン原料で達成される場合と同等な性質を最終PAOにおいても達成することであった。例えば、米国公開特許US2007-022533,US2007-0225534,US2007-0225535を見よ。しかしながら、これらの代替原料も乏しくなってきた。かようにして、PAOオリゴマー化プロセスにおいて全ての原料をより有効に利用することは継続的に研究活動の対象エリアの一つである。
【0011】
更に、潤滑油の性能要件は益々厳しくなってきている。改良された性質、例えば、高い粘度指数(VI)、低流動点、低揮発性、高度なシェア安定性、狭い分子量分布、改良された磨耗特性、上昇した熱安定性、酸化安定性、及び/又はより広い粘度範囲を有する新規なPAOが潤滑油の新規な性能要件を満たすのに必要とされている。この様な新規なPAOに改良された性質を付与するための新しい方法も又、必要とされている。
【0012】
特定のメタロセン触媒系を用いて種々のPAOを合成するための従来の努力としてはUS6,706,828を含み、該特許では、二塩化ラセミ-ジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムとメチルアルミノキサン(MAO)との組合せの様に、PAOがある種のメソ体のメタロセン触媒から、水素の存在下100℃でポリデセンを製造する。;WO02/14384では、特に、実施例JとKにおいて、二塩化ラセミ-エチル-ビス(インデニル)ジルコニウム又は二塩化ラセミ-ジメチルシリル-ビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムとMAOとを40℃(200psi水素もしくは1モルの水素)で組み合せて用い、Tgが-73.8℃、KV_(100)が702cSt、VIが296であると報告されるアイソタクチックポリデセンを生産することを開示し;或いは、Tgが-66℃、KV_(100)が1624、VIが341であるとされるポリデセンを製造することを開示し;そして、WO 99/67347では、例えば実施例1において、二塩化エチリデンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムとMAOとを組合せて50℃で用いてMnが11,400で、ビニリデン性二重結合含有率が94%と報告されるポリデセンを製造することが開示されている。
【0013】
又、PAOは特定の立体規則性を有するポリマーやオリゴマーを生産するため、典型的には知られていないメタロセン触媒を用いて製造もされてきた。その例として次の特許群を含む:WO 96/23751,EP 0 613 873,US 5,688,887,US 6,043,401,WO 03/020856(US 2003/0055184に相当する),US 5,087,788,US 6,414,090,US 6,414,091,US 4,704,491,US 6,133,209,and US 6,713,438。
【0014】
更に、US 6,548,723とUS 6,548,724はある種のメタロセン触媒を、典型的にはメチルアルミノキサンとの組合せで用いてオリゴマーオイルを生産することを開示している。US 6,548,724の20欄、40?44行において、実施例10?11は、メタロセンのシクロペンタジエニル環上に存在するジ-、トリ-又はテトラ-置換は改良された収率で高粘度指数のポリα-オレフィン(100℃で20?5,000cStの範囲)の生産に有用であることを示しており、一方ペンタ-アルキル置換シクロペンタジエニル環の場合は乏しい収率である、としている。更に、実施例12及び13は、水素を共存しない条件でKV_(100)が154及び114.6であるポリデセンの製造を示している。更に、実施例14-では、100℃もしくは110℃で、Cp_(2)ZrMe_(2)又は(iPr-Cp)_(2)ZrCl_(2)とN,N-ジメチルアナリニウム テトラ(フェニル)ボラートを用いるデセンの重合により、KV_(100)値が5.3?11.4cStと報告されているポリデセンの製造を開示している。
【0015】
他の例では、PCT/US06/21231及びWO2007011459 A1で、メタロセンと非配位性アニオンアクチベーター(non-coordinating anion activators)を用いて炭素数5?24のモノマーからの液体の生産について記載しており、WO2007011973 A1ではメタロセンを用いたα-オレフィンから低粘度液体の生産について記載している。
【0016】
メタロセンを用いる多くのPAOの製造プロセスにおいて、最適なプロセス経済性を達成するためには、α-オレフィン原料をフルに活用することが重要である。
【0017】
特に、最高級品質の潤滑油ベースストック(lube base stocks)を安定的に生産するために、多様なモノマー原料を使用して、高効率な種々のメタロセン触媒に適用可能なプロセスであることが要求される。
【0018】
驚くべきことに本発明者らは、適切なプロセス条件下においてα-オレフィンのオリゴマー化に際して生成される未反応モノマーは、適宜これらのリサイクルされたモノマーの部分的パージを維持することによって、最終製品の性質に悪影響を及ぼす事無く、プロセス中にリサイクル可能である事を見出した。かようにして、改良されたオレフィン原料の有効利用が達成されるであろうし、更に驚くべきことには、分子量分布、ノアック揮発性(Noack Volatility)、及びせん断安定性(Shear Stability)の少なくとも1つの様な、PAO生成物の或る重要な特性は、フレッシュな原料を用いる同様なプロセスと同等か或いは改良される。これは従来からの原料が不足している現状に鑑み、非常に重要な結果である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、メタロセン触媒と非配位性アニオンアクチベーターの存在下で、ポリα-オレフィン(PAO)を合成するための連続式、バッチ式、又はセミバッチ式プロセスに関するものであり、リサイクルされる未変換モノマーの一部を適宜パージすることを含む、未変換モノマー原料のリサイクル利用を含む改良に関するものである。
【0020】
実施態様において、本発明プロセスはモノマー原料として、C4?C18α-オレフィンから選択される1種又はそれ以上のモノマーの使用を含む。
【0021】
他の実施態様においては、潤滑油のベースストックに適する生成物と該生成物を生産するためのプロセスがあって、該生成物は、同一プロセス同一条件下で未変換モノマーをリサイクル使用しないか、或いは未変換モノマーをリサイクル使用して且つリサイクルモノマーを適宜パージする場合と比較して、同等かそれ以上の分子量分布(MWD)、ノアック揮発性及びせん断安定性の内1以上を有する。
【0022】
本発明の目的は、入手可能な原料をより効率よく利用したPAOの生産プロセスを提供し、より特別には炭素数C30?C60を有する潤滑油範囲のPAOを生産するためのプロセスを提供する。
【0023】
C4?C16α-オレフィンから選択されるモノマーを用いて望ましい性質を有するPAOを製造するプロセスを提供する事も一つの本発明の目的であり、特に、該性質は分子量分布(MWD)、ノアック揮発性、せん断安定性及びこれらの組合せから選択される。
【0024】
本発明のもう一つの目的は、純粋な1-デセン原料を用いる場合と同等又は類似な特徴を有するPAOの製造プロセスを提供することであり、しかも、より温和な製造条件、改良された分子量分布、ノアック揮発性、せん断安定性、及びモノマー原料の利用、から選択された1以上の改良点を伴うものである。
【0025】
下記の詳細なる説明、好ましい実施態様、実施例及び添付された請求の範囲を引用することにより、これらの及び他の目的、特徴、及び優位性が明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は未変換モノマーをリサイクルしない反応系におけるα-オレフィン原料を供給するプロセスを図解する。
【図2】図2は、未変換モノマーを反応系にリサイクルすると共に、リサイクル流から未変換モノマーをパージさせる反応系における、α-オレフィンの供給プロセスを図解するものである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に依れば、ポリα-オレフィン(PAO)は、非配位性アニオン(NCA)及びコ-アクチベーター及び/もしくはスカベンジャーの存在下で、メタロセン触媒をα-オレフィンを含むモノマー原料と接触させる工程を含むプロセスによって生産され、PAOと未反応モノマー原料を含む生成物を得、モノマー原料をリサイクルする工程と、適宜リサイクルモノマー原料の一部をパージする工程とを含むことに依って、リサイクルされたモノマー原料の一部だけがフレッシュなモノマー原料に含まれることになる。
【0028】
実施態様においては、原料はC4?C18α-オレフィンモノマーの1種又はそれ以上から選択される。好ましい実施態様においては、原料はC6?C16α-オレフィンモノマーから選択される2種以上のモノマーから選択される。他の好ましい実施態様においては、原料はC6?C16α-オレフィンモノマーから選択される3種以上のモノマーから選択される。
【0029】
実施態様においては、同じプロセスで部分的なモノマーリサイクルを伴わないプロセスで得られた潤滑油範囲のベースストックと比較して、類似な又はより狭いMWD、類似な又は改良されたせん断安定性、類似な又は改良された流動点の内1以上を有する潤滑油範囲のベースストックが得られる。他の実施態様では、完全な又は部分的なモノマーリサイクルを伴う同じプロセスで得られた潤滑油範囲のベースストックと比較した場合、類似な又はより狭いMWD、類似な又は改良されたせん断安定性、類似な又は改良された流動点の内1以上を有する潤滑油範囲のベースストックが得られる。
【0030】
好ましい実施態様では、バッチ操作、セミバッチ操作もしくは連続攪拌タンク式リアクター(Continuous Stirred Tank Reactor)(CSTR)操作において、シングルサイトのメタロセン触媒を原料ストックと接触させて、高粘度指数の潤滑油範囲のベースストックを製造する。
【0031】
「高粘度指数PAO」もしくはHVI-PAOという呼称は、3cSt超?約10,000cStのKV_(100)値を有するポリα-オレフィンを意味する。
【0032】
実施態様においては、狭いMWD及び改良されたせん断安定性の内、1以上を有する潤滑油ベースストックが得られる。
【0033】
本発明は図を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【0034】
図1では、未変換モノマーのリサイクルをしない、CSTR系の様な、リアクター内へのα-オレフィン原料の供給プロセスを図解している。本発明に依る触媒系を用いた重合リアクターにおけるオレフィン原料の転化率は約78%である。下記の実施例6に示す様に、100ポンドのフレッシュなα-オレフィン原料から、この図に示されるスキームにより150cStのPAO生成物が約78ポンド製造される。このケースでは、オレフィンの有効利用率は約78%である。
【0035】
図2では、同様なリアクター、例えばCSTRシステムにおけるα-オレフィンの供給プロセスを図解しており、該プロセスでは未変換モノマーを系にリサイクルすると共に、リサイクル流から未変換モノマーを適宜パージする。この例では、フレッシュなα-オレフィン原料とリサイクルされた未変換モノマーとの合計オレフィン原料の転化率は約69%である。未変換モノマーとして約12質量%(?5ポンド)をパージすると、未変換モノマーの残りの約88%は系中にリサイクルされる。下記の実施例7に示す様に、100ポンドのフレッシュなα-オレフィン原料からは150cStのPAO生成物が約95ポンド得られる。
【0036】
これら2つの図は、フレッシュなα-オレフィン原料の利用に依って、約78%から約95%の改良を示している。
【0037】
[連続攪拌タンク式リアクター]
連続攪拌タンク式リアクター(CSTR)自体はよく知られているものである。リアクターの設計と操作による分子量分布への影響は既に研究されているが、どの様にしてリアクター操作がMWDに影響するのか、J.Applied Chem.,1,227[1951]で議論されている様に単純な結論は存在しない。CSTR操作及び他のリアクター操作に関する議論は、次の文献に見つけることが出来る。;Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,7th Ed.23-36 CHEMICAL REACTORS,又はK.G.Denbigh,Trans.Faraday Soc,43,648(1947)又はLevenspiel,Chemical Reaction Engineering,2nd ed.,1972 John Wiley and Sons.p.196。
【0038】
セミバッチ操作モードもしくは連続攪拌タンク式リアクター(CSTR)操作において、反応は0℃?200℃の範囲の重合温度において実施することができ、滞留時間(residence time)は1分?20時間の間で可変である。メタロセンの仕込み量は、1,000gのオレフィン当たり触媒1gから、α-オレフィン600,000g当たり触媒1gの範囲である。操作圧は大気圧から500psigの範囲で可変である。任意には、水素分圧は1psiから200psiの範囲で可変である。実施態様においては、操作条件として:重合温度:40?150℃、滞留時間:1時間?4時間、触媒仕込み量:原料オレフィン10,000g?500,000g当たり1g、である。操作圧:大気圧?500psig。
【0039】
[原料]
PAOは、リニアα-オレフィン(LAO)モノマーの触媒的オリゴマー化(低分子量生成物への重合)によって製造されるよく知られた群の炭化水素を含む。本発明のプロセスにおいては1-ブテンから1-オクタデセンの範囲のα-オレフィン及びそれらの混合物が有用である。
【0040】
好適な実施態様では、プロセスは原料として混合α-オレフィン(即ち、2種以上又は3種以上のα-オレフィン)を利用するが、しかし、1-デセンの単独使用を含む単独α-オレフィンの使用も可能である。好適な実施態様においては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンから選択される1種又は2種以上のα-オレフィンモノマーを含む。
【0041】
特に有利な原料ストックとしては、WO2007/011832に記載されているC4?C18α-オレフィン源を含み、例えば、フィッシャー-トロプシュ合成におけるエチレン成長プロセス(ethylene growth process)、水蒸気又は熱クラッキングプロセス、合成ガス法による合成(syn-gas synthesis)、Raff-1又はRaff-2流の様な精製操作からの1-ブテンを含むC4流、等から誘導されるα-オレフィンである。
【0042】
[触媒系]
触媒系はメタロセン化合物とアクチベーターとを含む。該触媒は架橋されてもされていなくてもよく、メソ-体、ラセミ-体又は他の対称性グループを含むメタロセンであってもよい。本発明の目的としては、「触媒系」なる用語はシングルサイトメタロセン触媒とアクチベーターとの組合せを含む。活性化前のこの様な組合せを記載するのに「触媒系」を用いる場合は、アクチベーター、そして任意にコ-アクチベーター(トリアルキルアルミニウム化合物の様な)、と不活性化触媒(プレ触媒)との併用を意味する。活性化後のこの様な組合せを記載する場合は、活性化触媒及びアクチベーターもしくは他の電荷調整基を意味する。更に又、この活性化された「触媒系」は適宜コ-アクチベーター及び/又は他の電荷調整基を含んでもよい。
【0043】
[シングルサイトメタロセン触媒]
本発明のプロセスに適合する触媒としては、WO2007/011832,WO2007/011459,WO2007/011973に記載されている様なシングルサイトメタロセン触媒系を含む。好適な金属は4族の遷移金属から選択され、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)及びチタニウム(Ti)である。
【0044】
本発明に好適なシングルサイト触媒としては次の様な触媒を含む。即ち、二塩化ラセミ-ジメチル-シリル-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムもしくはラセミ-ジメチル-シリル-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ラセミ-ジメチル-シリル-ビス(インデニル)ジルコニウムもしくはラセミ-ジメチル-シリル-ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ラセミ-エチリデン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムもしくはラセミ-エチリデン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ラセミ-エチリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムもしくはラセミ-エチリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化メソ-ジメチル-シリル-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムもしくはメソ-ジメチル-シリル-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化メソ-ジメチル-シリル-ビス(インデニル)ジルコニウムもしくはメソ-ジメチル-シリル-ビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化メソ-エチリデン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムもしくはメソ-エチリデン-ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、二塩化メソ-エチリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムもしくはメソ-エチリデン-ビス(インデニル)ジルコニウムジメチルである。他の好適なシングルサイト触媒としては、置換度の異なるインデニル配位子を有する、前述のラセミ体又はメソ体である触媒を含む。
【0045】
他の好適なメタロセンとしては下記の様な非架橋メタロセンを含む。即ち、二塩化ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(1,2-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(1,2,3-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(1,2,3,4-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(1,2,3,4-テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、二塩化ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、及び他の置換同族体、である。
【0046】
[アクチベーター]
アクチベーターは非配位アニオン(NCA)アクチベーターかメチルアルミノキサン(MAO)の様なトリアルキルアルミニウム化合物であってもよい。本発明の目的並びに請求の範囲にとっては、非配位アニオン(NCA)は触媒金属カチオンに配位子しないか、或いは金属カチオンにほんの弱く配位するアニオンであることを意味する、と定義される。NCAは、オレフィン性又はアセチレン性不飽和モノマーの様に、中性のルイス塩基が触媒中心からそれを置換できる程度に、弱く配位する。触媒金属カチオンと両立可能で弱く配位した錯体を形成できる如何なる金属やメタロイドも用いてもよいし、非配位アニオン中に含まれてもよい。適当な金属としては、アルミニウム、金、白金を含むが、これらに限定されない。適当なメタロイドとしては、ホウ素、アルミニウム、リン、及びケイ素を含むが、これらに限定されない。一つのサブクラスの非配位アニオンは、中性又はイオン性であり得る化学量論的アクチベーターを含む。「イオン性アクチベーター」と「化学量論的イオン性アクチベーター」は互換性のある用語として用いることができる。同様に、「中性の化学量論的アクチベーター」と「ルイス酸アクチベーター」は互換性がある用語として用いることができる。
【0047】
本発明にとって好適なアクチベーターはNCAであり、好ましくはU.S.7,279,536もしくはWO2007/011832に記載されたものである。これらのアクチベーター自体が良く知られているものである。
【0048】
より好ましいNCAはC_(32)H_(12)BF_(2)2ON(n,n-ジメチルアニリニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。
【0049】
通常、触媒系は、通常トリアルキルアルミニウム化合物であるコ-アクチベーターも含む。このトリアルキルアルミニウム化合物も、リアクターシステムにおいては不純物又は触媒毒スカベンジャーとして、効果的に用いることが可能である。最も好適なトリアルキルアルミニウム化合物としてはトリ-イソブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム又はトリ-n-ヘキシルアルミニウム又はトリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム等である。
【0050】
リアクターシステムにおいて使用される他の化合物は不活性溶媒、触媒希釈剤等である。これらの成分も又、反応操作の際にリサイクルできる。
【0051】
[潤滑油製品の分離]
ポリマー化又はオリゴマー化反応が、α-オレフィンの転化率として例えば70%又は80%又は90%又は95%の様な最終直前段階(pre-determined stage)まで進行する時、反応流出液はリアクターから取り出される。通常、反応生成物は、米国特許出願公開No.2008/0020928(優先権主張日:2006年7月19日;米国仮出願No.60/831,995)に記載されている方法と同様に処理される。好適な方法としては、触媒は空気、CO_(2)又は水又は他の不活性化剤を導入することに依り不活性化して、別な反応容器に移さなければならない。触媒成分は前述の米国特許出願公開No.2008/0020928に記載されている方法か、或いは通常の触媒分離方法の様に、水性塩基又は酸によって洗浄した後、有機層を分離する方法で除去される。触媒除去後、流出液(effluent)は蒸留して、重質なオリゴマー化生成物から未反応の原料オレフィン、不活性溶媒及び他の軽質成分が分離される。ポリマー化反応の条件に依って、このオリゴマー化生成物は、臭素価(ASTM D1159又は相当する方法)によって測定される様に、高い不飽和度を有する可能性がある。もし、臭素価が高すぎると判断されるならば、重質なオリゴマー成分を水素仕上工程に付して、水素仕上条件とPAOベースストックの要求される用途に従って、臭素価を通常3未満又は2未満又は1未満に低下させる。典型的な水素化工程はPAO生産プロセスに関する多くの特許や文献で見つけることが可能である。PAO生成物が非常に高い分子量を有するか、ポリマー化工程で水素を用いる際、しばしば、分離されるPAO生成物は臭素価即ち不飽和度が極めて低くなるので、生成物を別な水素化工程を経なくても直接多くの用途に用いることができる。
【0052】
リアクター流出液から直接分離された軽質留分もしくは軽質留分から更に分取された軽質留分は未変換のα-オレフィンを含む。この軽質留分はパージしても/しなくても、いずれかの方法でポリマー化リアクターにリサイクルされて、潤滑油製品に反応転換される。もしくは、この留分はそのまま、又は適当な留分は、活性化アルミナ、分子篩又は他の活性溶媒の様な典型的な極性成分除去剤を含む原料前処理カラムを通過させて、ポリマー化リアクターにリサイクルさせることができる。この前処理カラムでは触媒残渣からの不純物又は他の不純物を除去できる。代わりに、この留分は原料精製カラムの前にフレッシュな原料オレフィンと組み合わせることができる。
【0053】
[リサイクル原料オレフィン流]
リアクター流出液からの未反応オレフィンを含む留分の量はフレッシュな原料オレフィンの1%?70%であり、反応転化率、反応で使用される不活性成分及び溶媒の量によって決まる。通常、この量はフレッシュな原料オレフィンの5%?50%の範囲であり、より一般的には5%?40%、である。未反応オレフィンを含むこの留分は100%ポリマー化リアクターにリサイクル可能であるが、しばしば、留分のほんの一部、99%?20%、あるいは95%?40%、あるいは90%?50%、がポリマー化リアクターへとリサイクルされる。リサイクルされるこの留分の量は、留分の組成や、ポリマー化リアクターが不活性成分又は溶剤をどれだけの量を許容できるかにかかっている。通常、リサイクル量が多いほど、潤滑油の合計収率が高く、α-オレフィンの有効活用率とプロセス経済性もより良くなる。
【0054】
リアクター流出液からの未反応オレフィンを含む留分はそれ自体ポリマー化リアクターにリサイクルでき、より一般的には、未反応オレフィン留分はフレッシュなα-オレフィンと一緒にポリマー化リアクターにリサイクルされる。リサイクルされる未反応オレフィン留分の質量%は原料全体の内、0%?100%の範囲であり、より一般的には、0.1?70質量%、又は0.5?50質量%、又は1?30質量%、である。もしくは、連続操作の際、この質量%は選択された転化率の程度、生成物粘度、パージ流の度合い等によって変化する。高粘度生成物を製造する際にしばしば、リアクター粘度を低下させ、リアクターでのコントロール性を強化するため、より高いパーセンテージのリサイクル流が用いられる。
【0055】
通常、未反応オレフィンを含む留分は原料であるα-オレフィン、内部オレフィン、ジ-又はトリ-置換オレフィン、出発α-オレフィンの小さいオリゴマー及び溶媒や希釈剤等の様な他の不活性成分を含む。このリサイクル流の中では、内部オレフィン、ジ-又はトリ-置換オレフィン、溶媒や希釈剤の量が、フレッシュな原料オレフィンより高濃度である。換言すると、反応性α-オレフィンの量はフレッシュな原料オレフィンより通常低い。α-オレフィンの量は2%?80%の範囲であり、通常70%を超えない。しかしながら驚くべきことに、少量のα-オレフィンを含有するこの留分が、フレッシュな原料をメタロセン触媒上に通過させて潤滑油を高収率で且つ高い触媒生産性で得られるのと同様に、高品質の潤滑油ベースストックに変換可能である、ことを我々は見出した。更に又、このリサイクルオレフィン流、又はリサイクルオレフィン流とフレッシュ原料との混合物、から得られた生成物品質が100%フレッシュ原料の場合と類似しており、或いは幾つかの場合、生成物は優位により低粘度である。
【0056】
[リサイクルオレフィン原料から得られたPAO製品]
リサイクルオレフィンそれ自体又はフレッシュなα-オレフィンとの併用から製造されたPAO製品は、匹敵するα-オレフィン組成のフレッシュなオレフィン原料から製造された製品と同じ化学組成と構造を有する。より重要な事には、リサイクルオレフィンを含む原料から製造されたPAO生成物がオリゴマー中で実質的に頭-尾結合(head-to-tail connections)を有し、α-オレフィンの炭素骨格の異性化又は原料流中のα-オレフィンの二重結合の異性化から生成する分岐が実質上存在しない、ことである。更に又、リサイクルオレフィンを含む原料からのPAO生成物の分子量分布(MWD)も非常に狭く、同一条件下で、同一組成のフレッシュなα-オレフィンから製造されたPAO生成物のMWDに匹敵するものである。PAO生成物組成に関する詳細な記載は、以下の特許公報に見出すことができる。即ち、WO2007/011832,WO21007/011459,WO2007/011973である。100質量%までのかなりの量のリサイクルオレフィンを含む原料から製造される潤滑油留分の粘度は同一反応条件によるフレッシュなα-オレフィン原料由来の潤滑油留分より、粘度が若干低い。もし、低粘度生成物をより欲するならば、この点は有利である。もし、同じ粘度の生成物がより望ましいならば、同等粘度を達成するために、反応温度及び反応系で用いられる溶媒又は希釈剤の量が調整可能である。これらの点は、本発明による開示を有する当業者であれば、定常的な実験以上の操作を要せずに、調整可能である。
【0057】
リサイクルオレフィンを含む原料流から製造されたPAO生成物は、それと同一組成のフレッシュなオレフィン原料から製造されたPAOに匹敵するVI、流動点、熱酸化安定性、何らかの工業規格による典型的なせん断試験によるせん断安定性、及び他の有利な性質を有する。一般に、これらのPAOは、ここで記載されるTRBテストによって試験される、せん断による粘度低下が10%未満、好ましくは5%未満、3%未満、又は2%未満、である。これは、リサイクルオレフィンとフレッシュなオレフィンとの化学的組成が異なる点を考慮すると、実に予測できないことである。
【実施例】
【0058】
[実験方法]
下記の実施例を参照する事に依り、本発明はより良く理解でき、それによって得られる付加的な利点も了解戴けるであろう。これらの実施例は本発明を限定するというよりは説明として受け取られるべきであり、本発明開示を有する当業者は、ここで列挙されている以外の多くの応用が可能であることを理解するべきである。
【0059】
せん断安定性データ(TRB試験)はテキサス州サンアントニオにある、South West Research Institute社において、CEC L-45-A-99に記載されている方法を用いて得られた。この試験の際、Four-Ball EP試験機に設置されている先細の(tapered)ロールベアリングでオイルはテストされる。先細のロールベアリングは、40mLの試験流体中に沈めて、60℃で5,000ニュートンの負荷をかけて、回転速度1,475rpmで標準の20時間回転耐久テストを行った。該テスト終了後、用いた流体の粘度を測定し、テスト前後のサンプルの粘度から、%粘度損失を算出した。TRBテストは試験時間を100又は200時間へ延長することにより強度を増すことができる。20時間という標準耐久試験は広範囲の潤滑油のせん断安定性を区別してランク付けするには完全に適している。大多数の生成物は20時間耐久試験を行っているが、メタロセン触媒PAOについては100時間でもテストした。
【0060】
重量平均分子量と数平均分子量との比(=Mw/Mn)として定義される分子量分布(MWD)は、下記文献に記載されている様に、既知分子量のポリマーを較正標準としてゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)に依って決定される。文献名;The Molecular Weight of Polymers in “Principles of Polymer Systems”(by Ferdinand Rodrigues,McGraw-Hill Book,1970)第6章、115?144頁。
【0061】
[例1?3]
この一連の実験は連続リアクター方式で実施した。これらの実験では狭い分子量分布のPAO生成物を製造して、アクチベーターとして非配位性アニオン(NCA)を用いて高収率を実証した。これらの実験に用いたオレフィンは3?5オングストロームの分子篩を通過させて精製した。
【0062】
用いたメタロセン触媒はジメチルシリル-ビス[テトラヒドロインデニル]ジルコニウムジメチルであり、用いたアクチベーターはN,N-ジメチルアニリニウム テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボラートである。
【0063】
触媒溶液は、メタロセン触媒とトルエン溶液中のアクチベーターとを予備混合して、溶液1g当たり0.0025gの触媒となる様に調製した。実験は単独のCSTRシステム中において実施した。これらの実験に用いたオートクレーブリアクターのサイズは1リットル?2ガロンであった。全ての仕込み原料は一定の速度で連続的にCSTRに導入した。CSTRは与えられた反応温度に調整した。触媒溶液、スカベンジャーであるトリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)溶液、精製されたオレフィン原料、は反応温度に維持されたCSTRへ連続的にポンプ注入した。反応生成物はオートクレーブから連続的に取り出して、水で不活性化操作(quenched)を行い、ろ過した。更に、不活性化されたPAO生成物は高温で蒸留して、C24以下の軽質留分を除去した後、ろ過した。蒸留後、残留したオイルは、1質量%のKieselguhr上のNi触媒を用い、200℃?232℃、水素圧650?800psi(5.5MPa)、の条件で2?4時間、水素化を行った。水素化後の全てのサンプルの臭素価は1未満であった。反応条件と水素化仕上げを施した潤滑油の性質を下記の表1に纏める。この一連のデータから、広範囲のα-オレフィンを用いて略同一の性質のPAOを製造可能であることが示される。更に、このデータから、GPCによって分析された潤滑油生成物のMWDは全て非常に狭いものであったことが判る。又、表1のデータはプロセスを一度通しただけではオレフィン原料の利用率は低い(転化率として約78%)ことを示している。
【0064】
表1.種々のフレッシュなオレフィン原料を用いたCSTRプロセッシング

【0065】
表2の例4及び5では、未変換モノマーをリサイクルした場合の原料利用率の向上を示している。例4のデータは1-デセンをリサイクルせずに得られた。例4で発生した未変換モノマーをフレッシュな原料と混合して(フレッシュ原料75部とリサイクルモノマー25部)、同一条件でオリゴマー化した。その結果を表2の例5に示す。これらの例は、どちらのPAO生成物も略同等の物理的性質を有し、リサイクルモノマーを用いることにより、76%から85%へ原料利用率が改善される、ことを示している。
【0066】
表2.リサイクルを伴ったCSTRプロセッシング

【0067】
未変換モノマーのリサイクル性を更に実証し、未変換モノマーが連続的にリサイクルされる商業プラントの操作をシミュレートする為に、C6/C10/C14α-オレフィンを含む混合原料を用いて、シングルCSTRの実験を実施した。
【0068】
未変換モノマーを連続的にリサイクルすると、原料中に存在する不活性物質(原料中の非α-オレフィン成分)の量は蓄積する。これらの実験中に、驚くべきことに、ポリマー化温度の低下が不活性物質の蓄積に依る悪影響を克服することが判明した。モノマーリサイクルの場合、適当な生成物粘度を得るためにポリマー化温度の低下が必要であることも判明した。これらの知見を表3(例6及び7)に示す。
【0069】
表3.C_(6)/C_(10)/C_(14)混合オレフィンのフレッシュ原料とリサイクル原料のCSTRプロセッシング

【0070】
又、これらの例から、オレフィン利用率はフレッシュ原料の場合の約78%から未変換モノマーをリサイクルした場合のおよそ93%に改善されることが判る。
【0071】
合成潤滑油のMw/Mnによって測定される分子量分布(MWD)、及び100時間のCEC L-45-A-99先細ロールベアリング(TRB)試験によって測定されるせん断安定性、及びASTM D5950試験法によって測定される流動点は潤滑油ベースストックの重要な属性である。表3(例6及び7)に示す様に、未変換モノマーを複数回リサイクルしてもこれらの重要な性質には悪影響しない。
【0072】
未変換モノマーリサイクルの可能性を検証するために、セミバッチ式反応形式でもラボ実験を実施した。これらの実験に用いたメタロセン触媒系は例1?7で用いたのと同一である。セミバッチ式反応形式においては、オレフィン原料とメタロセン触媒系とを、所望の反応温度に維持された攪拌反応器へ一定時間の間に、連続的に添加する。反応物質と触媒の添加が完了後、オレフィン転化率を上げるために、反応物質を同一温度で更に一定時間保持する。保持時間が終了する時に、反応物質は水を添加して不活性化される。それに引き続いて、不活性化された反応物質を蒸留して未変換モノマーを除去した後、次の工程に進める。セミバッチ式反応形式実験においては、反応物質の添加時間は0.5時間?6時間の範囲であり、一方、保持時間は0.0時間?6時間の間で変化させる。反応温度は30℃?100℃の範囲であった。メタロセン触媒の負荷はオレフィン供給量10,000g当たり触媒1gからオレフィン供給量250,000g当たり触媒1gである。
【0073】
セミバッチ実験結果は表4の例8?11に示す。これらの実験では異なるオレフィン原料及び同じ触媒系を用いた。例8及び9で用いたオレフィンは1-デセンであった。実験8ではフレッシュ原料を用いたが、実験9では実験8で発生した未変換モノマーを100%原料として用いた。この実験8及び9のセットによると、未変換モノマーのリサイクルによってオレフィン利用率は改良される(実験9)が、一方、ポリマー化温度は同等に保持したので、生成物粘度は維持できなかった。
【0074】
表4.セミバッチ式プロセッシング

【0075】
例10及び11はC6/C10/C14(25質量%/60質量%/15質量%)混合オレフィン原料を用いて実施した。実験10はフレッシュなオレフィン原料のみ用いて行った。実験11は実験10で発生した未変換モノマー100%の原料を用いた。この10及び11の実験セットから、未変換モノマー原料のみ用いてポリマー化温度を下げる(実験11)ことに依り、フレッシュ原料を用いる場合と粘度が同じ生成物が製造可能であり、しかも同時にオレフィン原料利用率を改善できる、ことを示している。
【0076】
上記の通り、例1?3は、CSTRプロセッシングとメタロセン触媒との組合せはMWDが非常に狭く且つせん断安定性が相当改良された製品を製造することを示している。それに加えて、これらの例は、当該改良が原料として純粋な1-デセンに限らず、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセンの1種又はそれ以上を含む原料を含む広範囲の混合α-オレフィンにも適用される、ことを示す。
【0077】
上記の例で記載した様に、約1?6質量%の不活性物質を含むC4?C16オレフィンの1種以上を含むオレフィン原料を、支持されたシングルサイトメタロセンを含む触媒リアクターに供給し、次に蒸留工程に付される。PAO生成物はボトムから取り出され、未反応モノマーはトップから取り出される。リサイクルを経ない最初のパスにおいて、典型的には生成物の約50?95質量%はトリマー及びそれ以上(例えば、C26+PAO)であり、残分は未反応モノマー及び望ましくないダイマーである。
【0078】
更に又、同一触媒だがフレッシュなオレフィン原料を用い、リサイクルしないで得られる生成物の粘度と、混合α-オレフィン原料をリサイクル使用した場合に同等の生成物粘度を得るためには、部分的リサイクルと共に、反応温度を数度下げる(例えば、約60℃から約55℃に)ことが有利であることが判明した。
【0079】
動的粘度(K.V.)は、指定された温度(例えば、100℃又は-40℃)で、ASTM D445によって測定した。
【0080】
粘度指数(VI)はASTM D2270に従って決定した。
【0081】
ノアック揮発性は、温度計の較正を2年ごとではなく毎年行う点を除き、ASTM D5800に従って決定した。
【0082】
流動点はASTM D5950に従って決定した。
【0083】
オリゴマー分布は、フレームイオン化検出器(FID)とキャピラリーカラムを具備したHewlett Packard(HP)5890 Series II Plus型ガスクロマトグラフィーを用いて決定した。
【0084】
ここで別記しない限り、ここで用いる用語の意味は当業界での通常の意味を有する。;特に、Synthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids,Second Edition,編集Leslie R.Rudnick and Ronald L.Shubkin,出版Marcel Dekker(1999)を引用する。この引用、及び全ての特許、特許出願、試験方法(ASTM試験法及び類似の様な)、ここで引用されている他の文書、はこの様な開示が本発明に矛盾しない程度に引用に依ってフルに組み込まれ、その様な組み込みが許される全ての司法権と矛盾しない。ここで用いられている商標は^(TM)印又はR印によって示され、例えば、種々の司法権に登録することにより、該商標が商標権によって守られていることに注意せよ。更に又、ここで数値下限及び数値上限が掲示されている場合、下限から上限の間の範囲が意図されていることに注意せよ。
【0085】
本発明について特に図解的実施態様を記載してきたが、他の種々の修正変更も明らかで、当業者にとっては、本発明の精神と視野から乖離すること無しに、容易になされ得ることを理解されるであろう。即ち、ここで追加されるクレームの範囲は例及び記載内容に限定されるものではない。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D445に従って100℃で測定される動的粘度(K.V.)が3cSt?10,000cStの範囲であることにより特徴づけられるPAOベースストックを製造するプロセスであって、シングルサイトメタロセン触媒系と原料ストックとの接触工程を含み、該原料ストックは、C4?C18α-オレフィンから選択される1種又は2種以上のモノマー、及び原料ストックの総量に対して1?30質量%の未反応のα-オレフィンを含むリサイクル流を含み、該リサイクル流は、リアクター流出液から触媒成分とC26以上のPAOを分離することにより生成するものであって、リサイクル流がリアクターに最初に導入された後重合温度を低下させ、該リサイクル流の95質量%以下の量でのパージを含む該プロセス。
【請求項2】
該パージが1.0質量%?30質量%の該リサイクル流から成る、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
該接触工程が水素の存在無しで生じる、請求項1又は2記載のプロセス。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
該接触工程へ供給される該原料ストックが、オレフィン原料とリサイクルされたモノマーとダイマーとの合計質量基準で、80%以下のフレッシュなオレフィン原料を含む、請求項1?3のいずれか1項によるプロセス。
【請求項6】
該接触工程へ供給される該原料ストックが、オレフィン原料とリサイクルオレフィンとを含み、該リサイクルオレフィンがオレフィンモノマーとオレインダイマーとを含み、しかも、該オレフィンモノマーが該原料中のオレフィン全量に対して、20質量%以上のリニア内部オレフィン、ジ-及びトリ-置換のオレフィンを含む、請求項1?3及び5のいずれか1項によるプロセス。
【請求項7】
該プロセスが連続、セミバッチもしくはバッチプロセスである、請求項1?3、5及び6のいずれか1項によるプロセス。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2013-08-23 
出願番号 特願2010-544982(P2010-544982)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (C10G)
P 1 41・ 852- Y (C10G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 康彰  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 小石 真弓
新居田 知生
登録日 2013-05-10 
登録番号 特許第5266335号(P5266335)
発明の名称 メタロセン触媒によるポリ-アルファオレフィン類の生産におけるリニアアルファオレフィン類の改良された利用  
代理人 箱田 篤  
代理人 箱田 篤  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  
代理人 辻居 幸一  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 市川 さつき  
代理人 辻居 幸一  
代理人 市川 さつき  

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