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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1279441
審判番号 不服2011-3635  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-18 
確定日 2013-09-18 
事件の表示 特願2006-524797「データベースにおけるXMLスキーマの現場での発展」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日国際公開、WO2005/022415、平成19年11月22日国内公表、特表2007-534036〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2003年8月25日(以下「優先日」という。)の米国特許庁への出願を基礎とするパリ条約による優先権主張をともない,
2004年8月23日を国際出願日とする出願(国際出願番号:PCT/US2004/027464)であって,
平成18年2月24日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面が提出され,
平成18年4月18日付けで特許法第184条の4第1項の規定による明細書,図面,要約書の日本語による翻訳文,及び特許法第184条の8第1項の規定による特許協力条約第34条補正の日本語による翻訳文が提出され,
平成19年8月2日付けで審査請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,
平成22年2月19日付けで拒絶理由通知(同年同月23日発送)がなされ,
同年6月15日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,
同年10月8日付けで拒絶査定(同年同月19日謄本送達)がなされ,
平成23年2月18日付けで審判請求がされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,
同年3月10日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,
平成24年4月24日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年5月8日発送)がなされ,
同年8月7日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年2月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.本件補正

本件補正は,平成22年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】
スキーマイボルバが実行されるコンピュータシステムを用いて,拡張可能なマークアップ言語(XML)スキーマを発展させるための方法であって,
前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらし,さらに
前記コンピュータシステムが,前記第1のXMLスキーマおよび前記ドキュメントに基づく動作を行なうことにより,第2のXMLスキーマを生成するステップと,
前記コンピュータシステムが,前記第2のXMLスキーマに基づき,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを生成するステップとを含む,方法。」(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正前の請求項1」という。)

を,

「【請求項1】
スキーマイボルバが実行されるコンピュータシステムを用いて,拡張可能なマークアップ言語(XML)スキーマを発展させるための方法であって,
前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらすとともに,オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求し,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有しており,前記ドキュメントに含まれる表現は,以下に示す(a)?(c)のうち少なくとも1つを指定し,
(a)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに付加するためのコマンド
(b)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに挿入するためのコマンド
(c)前記第1のXMLスキーマに含まれる指定されたノードを削除するためのコマンド
前記方法は,さらに,前記コンピュータシステムが,前記第1のXMLスキーマおよび前記ドキュメントに基づく動作を行なうことにより,第2のXMLスキーマを生成するステップを含み,
さらに,前記第1のXMLスキーマ,および,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定する前記ドキュメントに基づいて,
前記第2のXMLスキーマに適合させるために,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかを判断するステップと,
前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかの判断に基づいて,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造を前記第2のXMLスキーマに適合させるために改変する,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを前記コンピュータシステムが生成するステップとを含み,前記1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントは,少なくとも,
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の削除
のうち1つを指定する,方法。」以下,この特許請求の範囲に記載された請求項1を「補正後の請求項1」という。)
と補正するものである。

上記補正は,
補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらし」を,
「前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらすとともに,オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求し,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有しており,前記ドキュメントに含まれる表現は,以下に示す(a)?(c)のうち少なくとも1つを指定し,
(a)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに付加するためのコマンド
(b)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに挿入するためのコマンド
(c)前記第1のXMLスキーマに含まれる指定されたノードを削除するためのコマンド」に,
同じく,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記コンピュータシステムが,前記第2のXMLスキーマに基づき,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを生成するステップ」を,実質的に,
「前記第1のXMLスキーマ,および,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定する前記ドキュメントに基づいて,
前記第2のXMLスキーマに適合させるために,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかを判断するステップと,
前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかの判断に基づいて,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造を前記第2のXMLスキーマに適合させるために改変する,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを前記コンピュータシステムが生成するステップとを含み,前記1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントは,少なくとも,
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の削除
のうち1つを指定する」に,それぞれ限定するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。


2.独立特許要件についての検討

(1)引用文献等

1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年2月19日付けの拒絶理由通知で引用された,国際公開第03/030031号(2003年4月10日公開,以下,「引用文献」という。)には,関連する図とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

A.「1. A method for managing data in a database system, the method comprising the steps of: determining, within a database system, an appropriate database representation for storing within said database system documents that conform to an XML schema; generating mapping data that indicates correlations between elements of said XML schema and elements of said appropriate database representation.
・・・(中略)・・・
21. The method of Claim 1 further comprising the steps of: creating structures within a database based on said appropriate database representation; and storing in said structures data from XML documents that conform to said XML schema.
22. The method of Claim 21 wherein the step of storing data from XML documents includes the steps of: receiving an XML document at said database system; identifying data, from said XML document, that is associated with individual elements of said XML schema; storing the data associated with individual elements at locations within said structures based on the elements associated with the data, and the mapping data. 」(111頁?114頁のCLAIMS)
(訳:上記引用文献の対応ファミリー出願である特表2005-505058号公報の記載に一部修正を加えたもの。以下,同じ。
「【請求項1】
データベースシステムでデータを管理するための方法であって,データベースシステム内で,XMLスキーマに準拠する文書を前記データベースシステム内に格納するための適切なデータベース表現を決定するステップと,前記XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータを生成するステップとを含む,方法。
・・・(中略)・・・
【請求項21】
前記適切なデータベース表現に基づいてデータベース内に構造を作成するステップと,前記構造に,前記XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納するステップとをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項22】
XML文書からのデータを格納する前記ステップは,前記データベースシステムにおいてXML文書を受信するステップと,前記XML文書から,前記XMLスキーマの個々の要素に関連するデータを識別するステップと,前記データに関連する要素および前記マッピングデータに基づき,前記構造内の位置に,個々の要素に関連する前記データを格納するステップとを含む,請求項21に記載の方法。」)

B.「FUNCTIONAL OVERVIEW
Various techniques are described herein for managing XML data within a database system in a manner that increases the correlation between the structure imposed on the data by the database containers used to hold the data, and the structure of the XML documents from which the data originates. According to one aspect, a mechanism is provided to allow users of a database system to register XML schemas with the database system. An XML schema may be registered explicitly (via an API call) or implicitly (when an instance document conforming to the XML schema is first inserted into the database).
During the registration process for a given XML schema, the database system determines (1) an appropriate database representation for the XML schema and (2) mapping information. The "appropriate database representation" determination is a determination about how data that conforms to the XML schema should be managed by the database system. Determining the appropriate database representation for a given XML schema may involve, for example, determining the database objects, collection types, constraints, and even the indexes that are to be used by the database system to store data from XML documents that conform to the given XML schema. The mapping information indicates the mapping between the constructs included in the XML schema and the constructs included in the appropriate database representation.
The mapping information may indicate, for example, that data associated with a specific element of the XML schema should be stored in a particular column of a table that is generated as part of the appropriate database representation. Typically, the appropriate database representation and the mapping information are generated so as to create a high correlation between the structure described in the XML schema and the structure imposed on the data by the database containers in which the XML data is stored.」(4頁16行?5頁8行)
(訳:「【0012】
機能的な概観
この明細書では,データを保持するために用いられるデータベースコンテナがデータに課す構造と,そこからデータが生じるXML文書の構造との間の相関関係を高める態様で,XMLデータをデータベースシステム内で管理するためのさまざまな技術を説明する。一局面によると,データベースシステムのユーザがデータベースシステムにXMLスキーマを登録可能にする機構が設けられる。XMLスキーマは,明示的に(API呼出しを介して),または暗黙的に(XMLスキーマに準拠するインスタンス文書がデータベース内に最初に挿入される際に)登録され得る。
【0013】
データベースシステムは,所定のXMLスキーマに対する登録プロセス中に,(1)XMLスキーマに対する適切なデータベース表現,および(2)マッピング情報を決定する。「適切なデータベース表現」の決定とは,XMLスキーマに準拠するデータがデータベースシステムによってどのように管理されるべきかについての決定である。所定のXMLスキーマに対する適切なデータベース表現の決定は,たとえば,データベースのオブジェクト,集合型,および制約の決定,ならびに所定のXMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納するためにデータベースシステムが用いるべきインデックスの決定さえも含み得る。
【0014】
マッピング情報は,XMLスキーマに含まれる構成体と適切なデータベース表現に含まれる構成体との間のマッピングを示す。マッピング情報は,たとえば,XMLスキーマの特定の要素に関連するデータが,適切なデータベース表現の一部として生成されたテーブルの特定の列に格納されるべきであることを示し得る。一般に,適切なデータベース表現およびマッピング情報は,XMLスキーマに記述されている構造と,XMLデータが格納されているデータベースコンテナがデータに課す構造との間に高い相関関係を生じるように生成される。」)

C.「SYSTEM OVERVIEW
FIG. 1 is a block diagram of a system that includes a mechanism for mapping XML schemas to object-relational database systems. Specifically, a database server 104 (also referred to herein as "XDB") includes an XML schema mapper 106. When an XML schema 102 is registered with database server 104, XML schema mapper 106 determines the appropriate database representation 108 for documents that conform to the XML schema 102, and generates mapping information 110 that indicates the correlation between the elements of the XML schema and the elements of the appropriate database representation 108.
According to one embodiment, database server 104 is configured to:
・Register any W3C compliant XML schema
・Perform validation of XML documents against a registered XML schema
・Register both local and global schemas
・Generate XML schemas from object types
・Support re-registering a XML schema (as a mechanism for manual schema evolution)
・Support implicit registration of XML schema when documents are inserted via certain APIs (e.g. FTP, HTTP)
・Allow a user to reference a schema owned by another user
・Allow a user to explicitly reference a global schema when a local schema exists with the same name.
・Support XML schema evolution.」(5頁9行?6頁1行)
(訳:「【0015】
システムの概観
図1は,オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含むシステムのブロック図である。具体的には,データベースサーバ104(この明細書では「XDB」とも呼ばれる)は,XMLスキーママッパー106を含む。XMLスキーマ102がデータベースサーバ104に登録されると,XMLスキーママッパー106は,XMLスキーマ102に準拠する文書に対して適切なデータベース表現108を決定して,XMLスキーマの要素と適切なデータベース表現108の要素との間の相関関係を示すマッピング情報110を生成する。
【0016】
一実施例によると,データベースサーバ104は,
・W3C準拠の任意のXMLスキーマを登録し,
・登録されたXMLスキーマに対してXML文書の妥当性検証を行ない,
・ローカルスキーマおよびグローバルスキーマの両方を登録し,
・オブジェクト型からXMLスキーマを生成し,
・(手動によるスキーマ発展のための機構として)XMLスキーマの再登録をサポートし,
・或るAPI(FTP,HTTP等)を介して文書が挿入される際にXMLスキーマの暗黙的な登録をサポートし,
・別のユーザが所有するスキーマをユーザが参照できるようにし,
・同じ名前を有するローカルスキーマが存在している場合,ユーザがそのグローバルスキーマを明示的に参照できるようにし,
・XMLスキーマの発展をサポートする,
ように構成される。」)

D.「According to one embodiment, XML schema mapper 106 is configured to:
・Generate structured database mapping from XML Schemas (typically during schema registration) - this may include, for example, generation of SQL object types, collection types, etc and capturing the mapping information via schema annotations.
・Allow a user to specify a particular SQL type mapping when there are multiple legal mappings
・Create XMLType tables and columns based on registered XML schemas
・DML and query support for schema-based XMLType tables」(6頁2行?10行)
(訳:「【0017】
一実施例によると,XMLスキーママッパー106は,
・構造化されたデータベースマッピングを(一般にスキーマ登録中に)XMLスキーマから生じるように構成され,このことは,たとえば,SQLオブジェクト型,集合型等の生成と,スキーマ注釈を介したマッピング情報の入手とを含むことが考えられ,XMLスキーママッパー106はさらに,
・複数の正当なマッピングが存在する場合に,ユーザが特定のSQL型マッピングを特定できるようにし,
・登録されたXMLスキーマに基づいてXMLTypeのテーブルおよび列を作成し,
・スキーマベースのXMLTypeテーブルに対するDMLおよびクエリーのサポートを行なうように構成される。」)

E.「XML SCHEMA REGISTRATION
According to one embodiment, an XML schema has to be first registered with database server 104 before it can be used or referenced within database server 104. After the registration process is completed, XML documents conforming to this schema (and referencing it via the schema URL within the document) can be handled by database server 104. Tables and/or columns can be created for root XML elements defined by this schema to store the conforming documents.
According to one embodiment, a schema is registered using a DBMS_XMLSCHEMA package by specifying the schema document and its URL (also known as schema location). Note that the URL used here is simply a name that uniquely identifies the registered schema within the database - and need not be the physical URL at which the schema document is located. Further, the target namespace of the schema is another URL (different from the schema location URL) that specifies an "abstract" namespace within which the elements and types get declared. An instance document should specify both the namespace of the root element and the location (URL) of the schema that defines this element.
For example consider the XML Schema shown below. It declares a complexType called "PurchaseOrderType" and an element "PurchaseOrder" of this type.
targetNamespace="http: //www. oracle .com/PO.xsd">

















The following statement registers this schema at URL "http://www.oracle.com/PO.xsd". (doc is a variable holding the above schema text).」(6頁11行?7頁19行)
(訳:「【0018】
XMLスキーマ登録
一実施例によると,XMLスキーマは,データベースサーバ104内で使用または参照され得る前に,まずデータベースサーバ104に登録されなければならない。登録プロセスが完了した後,このスキーマに準拠する(および,文書内のスキーマURLを介してこのスキーマを参照する)XML文書は,データベースサーバ104によって処理され得る。このスキーマが定義したルートXML要素用のテーブルおよび/または列を作成して,準拠する文書を格納できる。
【0019】
一実施例によると,スキーマは,スキーマ文書およびそのURL(スキーマ位置としても公知)を特定することによってDBMS_XMLSCHEMAパッケージを用いることにより登録される。ここで用いられるURLは,登録されたスキーマをデータベース内で一意に識別する名前にすぎず,スキーマ文書が位置付けられている物理的なURLである必要がないことに注意されたい。さらに,スキーマのターゲット名前空間は,その中で要素および型が宣言された「抽象的な」名前空間を特定する別のURL(スキーマ位置URLとは異なる)である。インスタンス文書は,ルート要素の名前空間と,この要素を定義するスキーマの位置(URL)との両方を特定すべきである。
【0020】
たとえば,以下に示すXMLスキーマを考えられたい。このスキーマは,「PurchaseOrderType」と呼ばれるcomplexTypeと,この型の要素「PurchaseOrder」とを宣言している。
【0021】
【数1】
targetNamespace="http: //www. oracle .com/PO.xsd">

















【0022】
以下のステートメントは,URL「http://www.oracle.com/PO.xsd」にこのスキーマを登録する(docは上述のスキーマのテキストを保持する変数である)。」)

F.「According to one embodiment of the invention, XML schema registration includes (1) schema validation, (2) determination of appropriate data structures, and (3) generation of mapping information. Each of these phases shall be described in greater detail hereafter.
XML SCHEMA VALIDATION
XML schemas describe the structure of a particular type of XML document. However, XML schemas are themselves XML documents that must conform to the structure specified in an XML schema. Specifically, each XML schema must conform to the structure described in the XML schema document associated with the XML schema document type. During the schema validation phase of XML schema registration, the XML schema that is being registered is inspected to verify that the XML schema conforms to the structure specified in the XML schema associated with the XML schema document type.
DETERMINATION OF APPROPRIATE DATABASE REPRESENTATION
As mentioned above, the appropriate database representation determination is a determination about how data that conforms to an XML schema should be managed by the database system. According to one embodiment, the appropriate database representation is selected to achieve a high correlation between (1) the structure imposed on data by the XML document in which the data is contained, and the (2) the structure imposed on the data by a database system.」(8頁4行?24行)
(訳:「【0026】
この発明の一実施例によると,XMLスキーマ登録は,(1)スキーマの妥当性検証,(2)適切なデータ構造の決定,および(3)マッピング情報の生成を含む。これらの段階の各々を,より詳細に以下に説明する。
【0027】
XMLスキーマの妥当性検証
XMLスキーマは,特定の型のXML文書の構造を記述する。しかしながら,XMLスキーマは,それ自体が,XMLスキーマで特定された構造に準拠しなければならないXML文書である。具体的に,各XMLスキーマは,XMLスキーマ文書型に関連するXMLスキーマ文書に記述された構造に準拠しなければならない。XMLスキーマ登録におけるスキーマの妥当性検証の段階で,登録中のXMLスキーマが検査されて,そのXMLスキーマがXMLスキーマ文書型に関連するXMLスキーマで特定された構造に準拠していることが確認される。
【0028】
適切なデータベース表現の決定
上で述べたように,適切なデータベース表現の決定は,XMLスキーマに準拠するデータがデータベースシステムによってどのように管理されるべきであるかに関する決定である。一実施例によると,適切なデータベース表現は,(1)その中にデータが含まれているXML文書がデータに課す構造と,(2)データベースシステムがデータに課す構造との間に高い相関関係を得るように選択される。」)

G.「XML SCHEMA EVOLUTION
A user may evolve a registered XML schema by re-registering it and providing the new XML schema document. The dbms_xmlschema.registerSchema function can be used to re-register the XML schema. This operation always succeeds if there are no XMLType tables that depend on this schema (XMLType views are okay). According to one embodiment, if there are any dependent XMLType tables, database server 104 requires that the input schema document contain the complete SQL mapping annotations - and that they represent a valid mapping applicable to all such XMLType tables.
Example - Changing the names of elements or attributes: The user retrieves the registered schema document, makes the needed modifications and re -registers it. Note that this alteration does not affect the underlying tables.
Example - Adding a new element or attribute: Since this alteration affects underlying tables, it has to be performed in multiple steps. The user first uses the ALTER TYPE and/or ALTER TABLE commands to evolve the underlying tables. This marks the XML schema as invalid. The user then modifies the XML schema document as appropriate and re-registers it.
According to one embodiment, a 1-step XML schema evolution is provided, i.e. a user simply inputs a new XML schema and all underlying type and table alterations are determined implicitly.」(12頁23行?13頁13行)
(訳:「【0050】
XMLスキーマの発展
ユーザは,登録されたXMLスキーマを再登録して新規のXMLスキーマ文書を与えることにより,その登録されたXMLスキーマを発展させることができる。dbms_XMLschema.registerSchema関数を用いてXMLスキーマを再登録することができる。このスキーマに従属するXMLTypeテーブルが存在しない場合(XMLTypeビューは可能),この動作は常に成功する。一実施例によると,従属するXMLTypeテーブルが存在する場合,データベースサーバ104は,入力されるスキーマ文書が完全なSQLマッピング注釈を含んで,かつ,それらがこのようなXMLTypeテーブルのすべてに適用され得る妥当なマッピングを表わすことを要求する。
【0051】
例-要素名または属性名の変更:ユーザは登録されたスキーマ文書を取出して,必要な変更を行なってそれを再登録する。この変更が下位のテーブルに影響を及ぼさないことに注意されたい。
【0052】
例-新規の要素または属性の追加:この変更は下位のテーブルに影響を及ぼすため,複数のステップで行われなければならない。ユーザはまず,ALTER TYPEおよび/またはALTER TABLEのコマンドを用いて下位のテーブルを発展させる。これにより,XMLスキーマは妥当でないものとしてマークされる。次に,ユーザはXMLスキーマ文書を適宜変更して,それを再登録する。
【0053】
一実施例によると,1ステップのXMLスキーマ発展がもたらされる。すなわち,ユーザが新規のXMLスキーマを入力するだけで,下位の型およびテーブルの変更がすべて暗黙的に決定される。」)

H.「Creation of SQL object types
According to one embodiment, when an XML schema is registered, database server 104 creates the appropriate SQL object types that enable a structured storage of XML documents conforming to this schema. All SQL object types are created in the current user's schema (by default). For example, when PO.xsd is registered, the following SQL types are created.
create type Item_t as object
(
part varchar2 ( 1000 ) ,
price number
) ;
create type Item_varray_t as varray ( lOOO ) of OBJ_Tl ;
create type PurchaseOrder_t as object
(
purchasedate date,
ponum number,
company varchar2 ( 100 ) ,
item Item_varray_t
) ;
The names of the object types and attributes above may actually be system- generated. If the schema already contains the SQLName attribute filled in, this name is used as the object attribute's name. Else, the name is derived from the XML name - unless it cannot be used because of length, or conflict reasons. If the SQLSchema attribute is filled in, Oracle will attempt to create the type in the specified schema. The current user must have any necessary privileges to perform this operation.」(14頁10行?24行)
(訳:「【0060】
SQLオブジェクト型の作成
一実施例によると,XMLスキーマが登録されるとき,データベースサーバ104は,このスキーマに準拠するXML文書の構造化された格納を可能にする適切なSQLオブジェクト型を作成する。SQLオブジェクト型はすべて,現時点でのユーザのスキーマにおいて(デフォルトによって)作成される。たとえば,PO.xsdが登録されている場合,以下のSQL型が作成される。
【0061】
【数6】
create type Item_t as object
(
part varchar2 ( 1000 ) ,
price number
) ;
create type Item_varray_t as varray ( lOOO ) of OBJ_Tl ;
create type PurchaseOrder_t as object
(
purchasedate date,
ponum number,
company varchar2 ( 100 ) ,
item Item_varray_t
) ;
【0062】
上述のオブジェクトの型および属性の名前は,実際にシステムにより生成可能である。スキーマが,記入されたSQLName属性を既に含んでいる場合,この名前がオブジェクトの属性名として用いられる。そうでない場合,長さまたは矛盾の理由から使用できない場合を除き,名前はXML名から導出される。SQLSchema属性が記入されている場合,オラクル(Oracle)は,特定されたスキーマに型を作成しようとする。現時点でのユーザはこの動作を行なうために,何らかの必要な特権を有していなければならない。」)

J.Fig1には,オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含むデータベースシステムが示されるとともに,システムの構成として,「database server 104(訳:「データベースサーバ104」)」と,その中に「XML schema mapper 106(訳:「XMLスキーママッパー106」)」が含まれる態様が示されている。

以下に,上記引用文献の記載事項について検討する。

(ア)引用文献は,上記A.に記載の「A method for managing data in a database system(「データベースシステムでデータを管理するための方法」)」である発明について説明するものであり,
また,上記C.の「system that includes a mechanism for mapping XML schemas to object-relational database systems(「オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含むシステム」)」との記載から,上記“データベースシステム”は,“オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含む”ものであることがよみとれ,
また,当該「データベースシステム」に関し,上記J.に示された,システムがデータベースサーバを有する態様,及び,上記B.の「According to one embodiment, database server 104 is configured to:・・・Support XML schema evolution.(「一実施例によると,データベースサーバ104は,・・・XMLスキーマの発展をサポートするように構成される。」)」との記載から,上記「方法」は,“XMLスキーマの発展をサポートした”ものであるといえる。
してみると,引用文献には,
“XMLスキーマの発展をサポートした,
オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含むデータベースシステムでデータを管理するための方法”が記載されているといえる。

(イ)当該“データベースシステム”に関し,
上記J.の記載から,“前記データベースシステムは,データベースサーバ,及びその中に含まれるXMLスキーママッパーを有”することが,よみとれる。

(ウ)上記「方法」の発明に関し,
上記A.に「1. A method for managing data in a database system, the method comprising the steps of: determining, within a database system, an appropriate database representation for storing within said database system documents that conform to an XML schema; generating mapping data that indicates correlations between elements of said XML schema and elements of said appropriate database representation.
・・・(中略)・・・
21. The method of Claim 1 further comprising the steps of: creating structures within a database based on said appropriate database representation; and storing in said structures data from XML documents that conform to said XML schema.
22. The method of Claim 21 wherein the step of storing data from XML documents includes the steps of: receiving an XML document at said database system; identifying data, from said XML document, that is associated with individual elements of said XML schema; storing the data associated with individual elements at locations within said structures based on the elements associated with the data, and the mapping data.(「【請求項1】
データベースシステムでデータを管理するための方法であって,
データベースシステム内で,XMLスキーマに準拠する文書を前記データベースシステム内に格納するための適切なデータベース表現を決定するステップと,
前記XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータを生成するステップとを含む,方法。
・・・(中略)・・・
【請求項21】
前記適切なデータベース表現に基づいてデータベース内に構造を作成するステップと,
前記構造に,前記XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納するステップとをさらに含む,請求項1に記載の方法。
【請求項22】
XML文書からのデータを格納する前記ステップは,
前記データベースシステムにおいてXML文書を受信するステップと,
前記XML文書から,前記XMLスキーマの個々の要素に関連するデータを識別するステップと,
前記データに関連する要素および前記マッピングデータに基づき,前記構造内の位置に,個々の要素に関連する前記データを格納するステップとを含む,請求項21に記載の方法。」)」との記載があることから,
引用文献には,
“前記方法”が,
“データベースシステム内で,XMLスキーマに準拠する文書を前記データベースシステム内に格納するための適切なデータベース表現を決定するステップと,
前記XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータを生成するステップと,
前記適切なデータベース表現に基づいてデータベース内に構造を作成するステップと,
前記構造に,前記XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納するステップと,を含み,
前記XML文書からのデータを格納する前記ステップは,
前記データベースシステムにおいてXML文書を受信するステップと,
前記XML文書から,前記XMLスキーマの個々の要素に関連するデータを識別するステップと,
前記データに関連する要素および前記マッピングデータに基づき,前記構造内の位置に,個々の要素に関連する前記データを格納するステップとを含む,方法”であることが記載されているといえる。

(エ)上記「方法」における「適切なデータベース表現を決定するステップ」及び「マッピングデータを生成するステップ」に関し,
上記B.の「During the registration process for a given XML schema, the database system determines (1) an appropriate database representation for the XML schema and (2) mapping information.(「データベースシステムは,所定のXMLスキーマに対する登録プロセス中に,(1)XMLスキーマに対する適切なデータベース表現,および(2)マッピング情報を決定する。」)」との記載,及び,上記F.の「According to one embodiment of the invention, XML schema registration includes (1) schema validation, (2) determination of appropriate data structures, and (3) generation of mapping information. (「この発明の一実施例によると,XMLスキーマ登録は,(1)スキーマの妥当性検証,(2)適切なデータ構造の決定,および(3)マッピング情報の生成を含む。」)」との記載から,上記「適切なデータベース表現を決定するステップ」及び「マッピングデータを生成するステップ」は,“XMLスキーマを登録する処理の中で行われ”るものであることがよみとれ,
また,上記E.に「According to one embodiment, an XML schema has to be first registered with database server 104 before it can be used or referenced within database server 104. (「XMLスキーマは,データベースサーバ104内で使用または参照され得る前に,まずデータベースサーバ104に登録されなければならない。」)」,「According to one embodiment, a schema is registered using a DBMS_XMLSCHEMA package by specifying the schema document and its URL (also known as schema location). (「一実施例によると,スキーマは,スキーマ文書およびそのURL(スキーマ位置としても公知)を特定することによってDBMS_XMLSCHEMAパッケージを用いることにより登録される。」)」との記載があり,これより,“XMLスキーマを登録する処理”は“スキーマ文書およびそのURLを特定して,データベースサーバに対し”行われるものであることがよみとれる。
してみると,引用文献には,
“前記適切なデータベース表現を決定するステップ,及び,前記マッピングデータを生成するステップは,スキーマ文書およびそのURLを特定して,データベースサーバに対しXMLスキーマを登録する処理の中で行われ”ることが記載されているといえる。

(オ)上記「XMLスキーマを登録する処理」に関し,
上記C.に「Support XML schema evolution(「XMLスキーマの発展をサポートする」)」との記載があるとおり,“XMLスキーマの発展をサポートする”ものであることから,上記“XMLスキーマを登録する処理”は,“発展させたXMLスキーマも対象として含”むことがよみとれ,
そして,上記G.に「A user may evolve a registered XML schema by re-registering it and providing the new XML schema document. ・・・ According to one embodiment, if there are any dependent XMLType tables, database server 104 requires that the input schema document contain the complete SQL mapping annotations - and that they represent a valid mapping applicable to all such XMLType tables.(「ユーザは,登録されたXMLスキーマを再登録して新規のXMLスキーマ文書を与えることにより,その登録されたXMLスキーマを発展させることができる。・・・一実施例によると,従属するXMLTypeテーブルが存在する場合,データベースサーバ104は,入力されるスキーマ文書が完全なSQLマッピング注釈を含んで,かつ,それらがこのようなXMLTypeテーブルのすべてに適用され得る妥当なマッピングを表わすことを要求する。」)」との記載があり,これによれば,前記“XMLスキーマを登録する処理は,登録されたXMLスキーマを再登録し,新規のXMLスキーマ文書を与えることで発展させたXMLスキーマも対象として含”むこと,及び,当該“新規のXMLスキーマ文書”は,“SQLマッピング注釈を含”むものであることがよみとれ,
また,上記“SQLマッピング注釈”について,上記D.に「According to one embodiment, XML schema mapper 106 is configured to: ・Generate structured database mapping from XML Schemas (typically during schema registration) - this may include, for example, generation of SQL object types, collection types, etc and capturing the mapping information via schema annotations.(「XMLスキーママッパー106は, ・構造化されたデータベースマッピングを(一般にスキーマ登録中に)XMLスキーマから生じるように構成され,このことは,たとえば,SQLオブジェクト型,集合型等の生成と,スキーマ注釈を介したマッピング情報の入手とを含むことが考えられ」)」との記載があることから,上記“SQLマッピング注釈”は“マッピングに用いられる”ものであることがよみとれる。
してみると,引用文献には,
“前記XMLスキーマを登録する処理は,登録されたXMLスキーマを再登録し,マッピングに用いられるSQLマッピング注釈を含んだ新規のXMLスキーマ文書を与えることで発展させたXMLスキーマも対象として含”むことが記載されているといえる。

(カ)上記“XMLスキーマ”の“発展”に関し,
上記G.に「Example - Adding a new element or attribute: Since this alteration affects underlying tables, it has to be performed in multiple steps. The user first uses the ALTER TYPE and/or ALTER TABLE commands to evolve the underlying tables. This marks the XML schema as invalid. The user then modifies the XML schema document as appropriate and re-registers it.(「例-新規の要素または属性の追加:この変更は下位のテーブルに影響を及ぼすため,複数のステップで行われなければならない。ユーザはまず,ALTER TYPEおよび/またはALTER TABLEのコマンドを用いて下位のテーブルを発展させる。これにより,XMLスキーマは妥当でないものとしてマークされる。次に,ユーザはXMLスキーマ文書を適宜変更して,それを再登録する。」)」との記載があり,当該記載における「新規の要素または属性の追加」は「XMLスキーマ」に対する「新規の要素または属性の追加」であり,また,同じく「再登録」は「XMLスキーマ」の「再登録」であると解される。
してみると,引用文献には,
“前記XMLスキーマの発展は,XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加することを含み,当該新規の要素または属性を追加することは,ALTER TYPEおよび/またはALTER TABLEのコマンドを用いて下位のテーブルを発展させ,XMLスキーマ文書を変更してXMLスキーマを再登録することで行うものであ”ることが記載されているといえる。

(キ)上記H.に「when an XML schema is registered, database server 104 creates the appropriate SQL object types that enable a structured storage of XML documents conforming to this schema. All SQL object types are created in the current user's schema (by default).(「XMLスキーマが登録されるとき,データベースサーバ104は,このスキーマに準拠するXML文書の構造化された格納を可能にする適切なSQLオブジェクト型を作成する。SQLオブジェクト型はすべて,現時点でのユーザのスキーマにおいて(デフォルトによって)作成される。」)」との記載があり,この記載から,引用文献には,
“前記XMLスキーマを登録する処理により,XML文書の構造化された格納を可能にする適切なSQLオブジェクト型が作成される”ことが記載されているといえる。

以上,(ア)?(キ)で指摘した事項から,引用文献には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

XMLスキーマの発展をサポートした,
オブジェクト-リレーショナルデータベースシステムにXMLスキーマをマッピングするための機構を含むデータベースシステムでデータを管理するための方法であって,
前記データベースシステムは,データベースサーバ,及びその中に含まれるXMLスキーママッパーを有し,
前記方法は,
データベースシステム内で,XMLスキーマに準拠する文書を前記データベースシステム内に格納するための適切なデータベース表現を決定するステップと,
前記XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータを生成するステップと,
前記適切なデータベース表現に基づいてデータベース内に構造を作成するステップと,
前記構造に,前記XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納するステップと,を含み,
前記XML文書からのデータを格納する前記ステップは,
前記データベースシステムにおいてXML文書を受信するステップと,
前記XML文書から,前記XMLスキーマの個々の要素に関連するデータを識別するステップと,
前記データに関連する要素および前記マッピングデータに基づき,前記構造内の位置に,個々の要素に関連する前記データを格納するステップとを含み,
前記適切なデータベース表現を決定するステップ,及び,前記マッピングデータを生成するステップは,スキーマ文書およびそのURLを特定して,データベースサーバに対しXMLスキーマを登録する処理の中で行われ,
前記XMLスキーマを登録する処理は,登録されたXMLスキーマを再登録し,マッピングに用いられるSQLマッピング注釈を含んだ新規のXMLスキーマ文書を与えることで発展させたXMLスキーマも対象として含み,
前記XMLスキーマの発展は,XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加することを含み,当該新規の要素または属性を追加することは,ALTER TYPEおよび/またはALTER TABLEのコマンドを用いて下位のテーブルを発展させ,XMLスキーマ文書を変更してXMLスキーマを再登録することで行うものであり,
前記XMLスキーマを登録する処理により,XML文書の構造化された格納を可能にする適切なSQLオブジェクト型が作成される,方法。

2)参考文献

本願の出願前であって,上記優先日よりも前の日に頒布された,特開2002-123451号公報(平成14年4月26日出願公開,以下,「参考文献」という。)には,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。)

K.「【0005】本発明は,XML記述及びデータベース中のページ構成情報とコンテンツ等を使用し,コンテンツとそのレイアウトを自由に設定でき,携帯電話やPDAにも対応できるウェブスィートシステムを提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題は,請求項1記載の発明によれば,データベースにコンテンツとページ構成情報を記憶する記憶処理と,該処理によってデータベースに記憶した前記コンテンツとページ構成情報を使用し,ページデータを作成するページデータ作成処理と,該ページデータ作成処理によって作成されたページデータをユーザの端末装置に表示する表示処理とを行うアドバンスドウェブスィートシステムを提供することによって達成できる。
【0007】ここで,上記データベースとして,各種アプリケーションが使用可能であり,コンテンツも請求項2に記載するように,文字,画像,音声,バイナリーコード等の各種コンテンツを使用できる。
【0008】また,ページ構成情報についても上記自由にレイアウトが可能であり,このように構成することにより,ダイナミックにコンテンツとそのレイアウトを設定することができる。したがって,Webブラウザよりデータ入力をサポートするフォームを自由に組み合わせることができ,インタラクティブなコンテンツの提供が可能となる。」

L.「【0037】一方,図6はデータベース(DATA BASE )13をアクセスする際のシステム構成であり,図5と同様PageXML61,ContentsXML62,SQLStatement63,DATA BASE SchemaXML64,DATA BASE Access RulesXML65に記述された情報に基づいて処理を行い,データベース(DATA BASE )13をアクセスする。尚,WS View Element 53及びWS Contents Data54については,上記図5と同様である。」

M.「【0055】次に,図16は上記「アドレス帳」を選択した場合を説明する図である。先ず,「アドレス帳」の初期画面は過去の表示順にアドレス表示される。尚,本例による変更前は,表示順の他に登録順,ユーザID順の表示があり,例えば図16に示す「登録順」のボタンをクリックすることによって,次に登録順の表示を行い,登録順表示に現れる不図示の「ユーザID順」のボタンをクリックすることによって,ユーザID順の表示を行う。
【0056】上記のように,図16に示す表示は表示順であり,過去の表示履歴が「山田太郎」,「高橋一郎」,「佐藤由美子」の順であることを示す。上記構成のデータベースにおいて,日本では氏名欄が漢字入力される場合が多く,氏名順表示にしてもその順序は漢字コード順になるため,検索し難い。そこで,本例ではニックネーム欄を追加し,当該ニックネーム欄に仮名,又はローマ字入力を行い,当該ニックネーム順に表示できるようにする。以下,具体的に説明する。
【0057】図17はこの場合の「アドレス帳」の変更イメージを示す図である。同図(a)は前述の図16に示す変更前のアドレス一覧画面の例であり,同図(b)は変更前のアドレス登録更新画面の例である。この状態から,XML文書を変更し,データベースへの「ニックネーム」の追加,更新,データベースの再生成を行う。
【0058】図18はこの処理を説明するフローチャートであり,例えばJavaプログラムのコーティングを変更せずに,機能変更を行うものである。先ず,アドレス管理データベースのスキーマ定義XML(図3に示す34,図4に示す71,図6に示す64)に「ニックネーム」を追加する(ステップ(以下STで示す)1)。
【0059】次に,アドレス管理データベースに「ニックネーム」の項目を設け,データベースを再編成する(ST2)。すなわち,次に,アドレス一覧画面のページ定義データベースに「ニックネーム」欄を追加する(ST3)。」


(2)本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(2-1)引用発明の「XMLスキーマ」の「発展」は,本願補正発明の「拡張可能なマークアップ言語(XML)スキーマ」の「発展」に相当し,
また,引用発明の「データベースサーバ」はコンピュータであるといえることから,引用発明の「データベースサーバ」を含む「データベースシステム」は,本願補正発明の「コンピュータシステム」に相当する。
また,引用発明の「データベースシステム」は,「XMLスキーマの発展」を行わせるものであり,そのために「XMLスキーマ」の「発展」を実行しているといえ,一方,本願補正発明の「スキーマイボルバ」も,「スキーマ」を発展させるため「コンピュータシステム」において実行されるものであるから,引用発明の「XMLスキーマの発展」が実行される「データベースシステム」は,本願補正発明の「スキーマイボルバが実行されるコンピュータシステム」に相当するといえる。
してみると,引用発明の「XMLスキーマの発展」が実行される「データベースシステム」による「XMLスキーマの発展をサポート」する「方法」は,本願補正発明の「スキーマイボルバが実行されるコンピュータシステムを用いて,拡張可能なマークアップ言語(XML)スキーマを発展させるための方法」に相当するといえる。

(2-2)
ア.引用発明の「データベースサーバに」「登録された」「発展」前の「XMLスキーマ」,「発展」後の「XMLスキーマ」,「発展」のための「XMLスキーマ文書」は,本願補正発明の「コンピュータシステムに保持されている」「発展」前の「第1のXMLスキーマ」,「発展」後の「第2のXMLスキーマ」,「ドキュメント」にそれぞれ相当し,
また,引用発明の「XMLスキーマ文書」は,「XMLスキーマ」を「発展」させるためのものであり,「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」ことを当該「XMLスキーマ文書」の「変更」をもとに行っていて,また,当該「XMLスキーマ文書」の「変更」に基づいて上記「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」ことは「XMLスキーマ」に行われるべき「動作」であるといえ,よって「XMLスキーマ文書」は上記「XMLスキーマ」に行われるべき「動作」を指定するものに他ならず,また,当該「XMLスキーマ文書」を「データベースサーバ」に与えることは受け付けることであるといえる。
してみると,引用発明の「データベースサーバ」が,「データベースサーバに」「登録された」「XMLスキーマ」を「発展」させるための,「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」こと含む「XMLスキーマ」の「発展」のもととなる「XMLスキーマ文書」を受け付けることは,本願補正発明の「前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップ」に相当するといえる。

イ.引用発明の「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」こと含む「XMLスキーマ」を「発展」させることは,「データベースサーバに」「登録された」「発展」前の「XMLスキーマ」を変更することに他ならないから,引用発明の「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」こと含む「XMLスキーマ」を「発展」させることが,「発展」前の「XMLスキーマ」に変更をもたらすことは,本願補正発明の「1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらす」ことに相当する。
してみると,引用発明の「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」こと含む「XMLスキーマ」を「発展」させることが,「発展」前の「XMLスキーマ」に変更をもたらすものであることと,本願補正発明の「1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらすとともに,オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求」するものであることとは,“1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらす”ものである点で共通するといえる。

ウ.引用発明の「適切なデータベース表現に基づいてデータベース内に構造を作成するステップ」における「データベース」とは「オブジェクト-リレーショナルデータベース」であり,当該「データベース」はまた,「XMLスキーマに準拠する文書を前記データベースシステム内に格納するための適切なデータベース表現」に「基づいて」「構造を作成する」ものであって,「XMLスキーマに準拠する文書」が「格納」可能なように規定された「適切なデータベース表現」は「XMLスキーマ」に基づくものであるから,上記「データベース」は「XMLスキーマ」に基づくものであるといえ,さらに,当該「データベース」は,その「構造に,前記XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納する」ものであって,前記「XMLスキーマに準拠する」とは「XMLスキーマ」によって「定義される」ことであり,XML文書を“複数”格納することは必要により適宜行う程度の事項であることを考慮すれば,前記「XML文書」は,XMLドキュメントのセットからなるコンテンツに相当するといえる。
してみると,引用発明の「オブジェクト-リレーショナルデータベース」である「データベース」の「構造」は,「XMLスキーマ」に基づくとともに,当該「XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納」していることは,本願補正発明の「前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有して」いることに相当するといえる。

エ.以上から,引用発明の「データベースサーバ」が「XMLスキーマ文書」を与えられることであり,前記「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」こと含む「XMLスキーマ」を「発展」させることが「発展」前の「XMLスキーマ」に変更をもたらすものであり,「オブジェクト-リレーショナルデータベース」である前記「データベース」の「構造」は,「XMLスキーマ」に基づくとともに,当該「XMLスキーマに準拠するXML文書からのデータを格納」していることと,
本願補正発明の「前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらすとともに,オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求し,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有しており,前記ドキュメントに含まれる表現は,以下に示す(a)?(c)のうち少なくとも1つを指定し,
(a)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに付加するためのコマンド
(b)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに挿入するためのコマンド
(c)前記第1のXMLスキーマに含まれる指定されたノードを削除するためのコマンド」とは,
“前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらし,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有して”いることである点で共通するといえる。

以上(2-1),及び,(2-2)から,本願補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。

(一致点)
スキーマイボルバが実行されるコンピュータシステムを用いて,拡張可能なマークアップ言語(XML)スキーマを発展させるための方法であって,
前記コンピュータシステムが,前記コンピュータシステムに保持されている第1のXMLスキーマを第2のXMLスキーマに発展させるための,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントの入力を受付けるステップを含み,1つ以上の動作を行なうことは前記第1のXMLスキーマへの1つ以上の変更をもたらし,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造は,前記第1のXMLスキーマに基づくとともに,前記第1のXMLスキーマによって定義される構造を有するXMLドキュメントのセットからなるコンテンツを有している,方法。

(相違点1)
第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定するドキュメントに関し,
本願補正発明の「ドキュメント」が,「(a)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに付加するためのコマンド
(b)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに挿入するためのコマンド
(c)前記第1のXMLスキーマに含まれる指定されたノードを削除するためのコマンド 」のうち「少なくとも1つを指定」する「表現」を含むものであるのに対し,
引用発明の「XMLスキーマ文書」は,それをもとに「XMLスキーマに対する新規の要素または属性を追加する」ことを含む「XMLスキーマの発展」が行われるが,当該「XMLスキーマに対する新規の要素」の「追加」を行わせることが,「ノード」に対する「コマンド」により表現される処理に当たるかについては,明りょうでない点。

(相違点2)
ドキュメントにより指定される動作に関し,
本願補正発明が,「オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求」することを含むのに対し,
引用発明は,「XMLスキーマの発展」に伴って,「XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータ」を新たに生成するものであるが,「データベース」「構造」の「変更」を求めるものであるかは明りょうでない点。

(相違点3)
本願補正発明が,「第1のXMLスキーマ,および,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定する前記ドキュメントに基づいて」,「前記第2のXMLスキーマに適合させるために,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかを判断するステップ」を有するのに対し,
引用発明は,「発展」前の「XMLスキーマ」及び「XMLスキーマ文書」による「XMLスキーマの発展」に伴って,「XMLスキーマの要素と前記適切なデータベース表現の要素との間の相関関係を示すマッピングデータ」を新たに生成しているが,「データベース」「構造」の「改変」の判断を行っているかは明りょうでない点。

(相違点4)
本願補正発明が,「オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかの判断に基づいて,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造を前記第2のXMLスキーマに適合させるために改変する,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを前記コンピュータシステムが生成するステップ」であり,「前記1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントは,少なくとも,
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更
特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の削除
のうち1つを指定する」ステップを有するのに対し,
引用発明は,「XMLスキーマ」の「登録」により,「XML文書の構造化された格納を可能にする適切なSQLオブジェクト型が作成」されているが,「データベース」「構造」の「改変」のためにSQLオブジェクト型を作成しているかは明りょうでない点。

(相違点5)
本願補正発明が,「コンピュータシステムが,前記第1のXMLスキーマおよび前記ドキュメントに基づく動作を行なうことにより,第2のXMLスキーマを生成するステップ」を有しているのに対し,
引用発明は,「データベースシステム」において,「XMLスキーマ」に対する「新規の要素または属性を追加」等は行っているが,それが「XMLスキーマ」を「生成」することに当たるか明りょうでない点。

(3)判断

上記相違点1ないし相違点5について検討する。

(3-1)相違点1について
本願補正発明における「ノード」とは,本願発明の詳細な説明の【0042】における記載「xdiffスキーマは,XMLで,ユーザが発展コマンドを表わすことができる基本要素を定義する。このようなコマンドは“node”(ノード)に相関する動作を表わし得る。ここで使用される“node”は,XML要素のようなXML構造のなんらかの態様である。・・・(後略)」によれば,「XML要素のようなXML構造のなんらかの態様」を指すものとされているところ,
引用発明における「XMLスキーマ文書」も,それをもとに「XMLスキーマに対する新規の要素」が「追加」されるものであり,これは,指定した新規の「要素」を「XMLスキーマ」に「付加」または「挿入」するものであるといえ,
また,上記のように引用発明の「XMLスキーマ文書」に含まれる情報は,「XMLスキーマに対する新規の要素」の「追加」という処理を「データベースシステム」に実行させるためのものであり,当該スキーマ文書に含まれる情報を,コンピュータを実行するための命令,すなわちコマンドとして処理することは,コンピュータ処理の分野における常套手段である。
してみると,引用発明の「XMLスキーマ文書」を,「(a)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに付加するためのコマンド(b)指定されたノードを前記第1のXMLスキーマに挿入するためのコマンド(c)前記第1のXMLスキーマに含まれる指定されたノードを削除するためのコマンド」のうち「少なくとも1つを指定」する「表現」を含むように構成すること,すなわち,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点1は格別なものではない。

(3-2)相違点2ないし相違点4について
XML文書に係る情報のデータベースでの管理において,XMLスキーマの変更により,データベースへの項目の追加等のデータベースの構造変更を要求することは,周知技術(例えば,上記KないしMの記載を参照。)であり,当該要求をもとに構造変更を実行する際に,どのように変更するかの判断を行うことは,必然的に実施する自明な事項である。
してみると,引用発明の,XMLスキーマ文書に基づいたXMLスキーマの再登録に伴うSQL生成によるデータベースに係る変更に対し,当該周知技術を採用し,上記XMLスキーマ文書を,「ドキュメントにより指定される動作」に「オブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更を要求」することを含むものとし,また,上記データベースに係る変更の要求について,「第1のXMLスキーマ,および,前記第1のXMLスキーマに行なわれるべき動作を指定する前記ドキュメントに基づいて」,「前記第2のXMLスキーマに適合させるために,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかを判断するステップ」を有するものとし,また,データベースに係る変更のためのSQL生成について,「オブジェクトリレーショナルデータベース構造をどのように改変すべきかの判断に基づいて,前記オブジェクトリレーショナルデータベース構造を前記第2のXMLスキーマに適合させるために改変する,1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントを前記コンピュータシステムが生成するステップ」であり,「前記1つ以上の第1の構造化クエリー言語(SQL)ステートメントは,少なくとも,特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の変更 特定のオブジェクトリレーショナルデータベース構造の削除 のうち1つを指定する」ステップを有するものとすること,すなわち,相違点2ないし相違点4に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点2ないし相違点4は格別なものではない。

(3-2)相違点5について
引用発明における「XMLスキーマの発展」は,「発展」前の「XMLスキーマ」に対し「新規の要素または属性を追加することを含」むことから,「XMLスキーマ」自体を変更し出力するものであるといえ,また,引用文献1の上記Cに「Generate XML schemas from object types(「オブジェクト型からXMLスキーマを生成し」)」との記載があるように,引用発明においてもスキーマの作成が行えることを考慮すれば,「XMLスキーマ」自体を変更することで新たな「XMLスキーマ」として生成することに,技術上格別な困難性は認められない。
してみると,引用発明の当該「XMLスキーマ」を変更し出力することに代えて,「XMLスキーマ」を「生成するステップ」を有するようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
よって,相違点5は格別なものではない。

(3-4)小括

上記で検討したごとく,相違点1?相違点5は格別のものではなく,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本願補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本願補正発明は,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.本件補正についての結び

上記2.で検討した通り,本願補正発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成23年2月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願に係る発明は,平成22年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定されるものであるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記「第2 平成23年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.本件補正」の本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.引用文献等

原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献およびその記載事項は,前記「第2 平成23年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2.独立特許要件についての検討」の「(1)引用文献等」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願補正発明は,本願発明に対し前記「第2 平成23年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」「1.本件補正」で述べた限定的減縮をしたものであるから,本願発明は,上記本願補正発明から当該限定的減縮により限定される要件を無くしたものに相当する。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに特定の構成要件に限定要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 平成23年2月18日付けの手続補正についての補正却下の決定」「2.独立特許要件についての検討」の「(3)判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当該引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項について言及するまでもなく,本願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-03-28 
結審通知日 2013-04-02 
審決日 2013-05-08 
出願番号 特願2006-524797(P2006-524797)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨松田 直也  
特許庁審判長 仲間 晃
特許庁審判官 石井 茂和
酒井 伸芳
発明の名称 データベースにおけるXMLスキーマの現場での発展  
代理人 堀井 豊  
代理人 森田 俊雄  
代理人 酒井 將行  
代理人 仲村 義平  
代理人 野田 久登  
代理人 深見 久郎  

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