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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1279704
審判番号 不服2011-26960  
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-13 
確定日 2013-09-26 
事件の表示 特願2005-314408「ICカード」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月17日出願公開、特開2007-122451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成17年10月28日の出願であって、平成20年9月18日付けで審査請求がなされ、同年10月3日付けで手続補正がなされ、平成23年6月14日付けで拒絶理由通知(同年6月21日発送)がなされ、同年8月22日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年9月9日付けで拒絶査定(同年9月13日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成23年12月13日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年2月22日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年10月22日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年10月23日発送)がなされ、同年12月25日付けで回答書の提出があったものである。


第2 平成23年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年12月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成23年12月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年8月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8の記載

「 【請求項1】
外部機器と通信しデータを送受信する通信手段と、
前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータを一時的に記憶し、前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータを一時的に記憶するバッファと、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えたICカード。
【請求項2】
前記記憶手段は、複数の記憶エリアを含み、
前記制御手段は、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して受信したデータを所定サイズに分割して所定数の前記記憶エリアへ書き込む請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記記憶手段は、複数の記憶エリアを含み、
前記制御手段は、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して送信するデータを所定数の記憶エリアから分割して読み出す請求項1に記載のICカード。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1のデータサイズより大きい第2のデータサイズを上限としたデータ誤り訂正符号を付加したデータの送受信を制御する請求項1記載のICカード。
【請求項5】
外部機器と通信しデータを送受信する通信手段と、
前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータを一時的に記憶し、前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータを一時的に記憶するバッファと、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えた通信媒体。
【請求項6】
通信媒体と通信しデータを送受信する通信手段と、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記通信媒体のデータ送受信バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えたICカード処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1のデータサイズより大きい第2のデータサイズを上限としたデータ誤り訂正符号を付加したデータの送受信を制御する請求項6記載のICカード処理装置。
【請求項8】
通信媒体と通信しデータを送受信する通信手段と、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記通信媒体のデータ送受信バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えた通信媒体処理装置。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
外部機器と通信しデータを送受信する通信手段と、
前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータを一時的に記憶し、前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータを一時的に記憶するバッファと、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により、前記外部機器との通信方式を決定するとともに、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定し、また、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により通信方式を決定するとともに、前記発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定せず、
前記記憶手段は、複数の記憶エリアを含み、
前記制御手段は、前記複数の記憶エリアのうちの第1及び第2の記憶エリアを使用する場合、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限として分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込み、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して受信したデータを分割し、分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込むICカード。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して送信するデータを前記第1及び第2の記憶エリアから分割して読み出す請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1のデータサイズより大きい第2のデータサイズを上限としたデータ誤り訂正符号を付加したデータの送受信を制御する請求項1記載のICカード。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件

(1)新規事項の有無

本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

(2)補正の目的要件

次に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。

補正後の請求項1は、その記載からして、次の事項(a)及び(b)を含んでいる。

(a)制御手段が、「初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により、前記外部機器との通信方式を決定する」態様
(b)制御手段が、「前記複数の記憶エリアのうちの第1及び第2の記憶エリアを使用する場合、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限として分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込み、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して受信したデータを分割し、分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込む」態様

しかしながら、前記(a)及び(b)を追加する本件補正は、

補正前の請求項1における制御手段が有する
「運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御」する機能、
「前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する」機能
のいずれかを限定した下位概念の補正ではなく、新たな機能を追加した補正であるものと認められる。

したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものとは認められない。

なお、前記補正前の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものではない。

3.独立特許要件

以上のように、補正前の請求項1についてする補正は、前記「2.新規事項の有無、補正の目的要件 」の「(2)補正の目的要件」で指摘したとおり、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当せず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(2-1)引用文献1

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月14日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-348234号公報(平成16年12月9日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係るICカード発行システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、ICカード発行システムは、上位装置としての発行装置1とICカード2から構成される。
上記発行装置1は、図1に示すように、制御部11、記憶部12、ROM13、表示部14、操作部15及び外部インターフェース16などを有している。
…(中略)…
【0017】
また、上記ICカード2は、図1に示すように、カード状の筐体内に内蔵される制御部(制御素子)21、不揮発性メモリ22、及び外部インターフェース23等から構成されている。上記制御部21、及び不揮発性メモリ22等は、ICチップ(図示しない)により構成され、ICカード本体内に埋設されている。
【0018】
上記制御部21は、CPU25、RAM26、ROM27などから構成され、ICカード全体の制御を司るものである。上記CPU25は、上記ROM27あるいは不揮発性メモリ22に記憶された制御プログラムに基づいて動作する。上記RAM26は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。上記RAM26は、上記CPUが処理中のデータなどを一時保管するバッファとして機能する。
…(中略)…
【0020】
上記不揮発性メモリ22は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどにより構成される。上記不揮発性メモリ22は、ICカードの発行処理などにおいてデータの書込みが可能な不揮発性のメモリである。例えば、製造時の発行処理時において、上記不揮発性メモリ22には、当該ICカードの仕様に応じたプログラムファイルやデータファイルなどが定義され、それらのファイルに初期データとして必要なデータが書込まれるようになっている。
【0021】
上記外部インターフェース23は、上記上位装置1とのデータ通信を行うインターフェースである。例えば、当該ICカード2が接触式ICカードである場合、上記外部インターフェース23は、上記ICチップと一体的にモジュール化されたコンタクト部等により構成される。また、当該ICカード2が非接触式ICカード(無線カード)である場合、上記外部インターフェース23は、本体内に設けられたアンテナとそのアンテナにより情報を送受信する送受信回路などにより構成される。」

B 「【0022】
また、上記不揮発性メモリ22には、当該ICカード2の動作モードを切替えるスイッチ的な役割を果たす動作定義情報が記録される動作定義領域28が設けられている。上記動作定義領域28は、上記ROM27に記憶されている制御プログラムにより予め定義されている。上記動作定義領域28に記録されている動作定義情報は、当該ICカード2が製造時の状態であるか運用時の状態であるかを示す情報である。
【0023】
従って、上記動作定義情報は、製造時の発行処理の最終段階で、製造時の状態を示すものから運用時の状態を示すものに書き換えられる。また、上記動作定義情報は、起動時に上記ROM27内の制御プログラムに基づいて上記CPU25により読み込まれる。これにより、上記CPU25は起動時に当該ICカード2の現在の動作モード(製造時の状態か運用時の状態か)を判断するようになっている。」

C 「【0057】
また、上述した第1の動作例では、1つの製造用書込みコマンドを用いた製造時の発行処理の例について説明したが、複数の製造用書込みコマンドを用いて上記第1の動作例による製造時の発行処理を行うようにしても良い。この場合、複数の製造用書込みコマンドを用いて上記第1の動作例を繰り返し実行するようにすれば良い。
【0058】
例えば、書込みデータが長い場合(書込みデータのデータ量が多い場合)、ICカードの受信容量などの制限により、1つの製造用書込みコマンドでは、発行イメージが転送できないことがある。このような場合、上位装置は、作成した発行イメージを最も効率の良い長さで分割し、分割したそれぞれのデータを製造用書込みコマンドにて順次ICカードへ転送する。ICカードは、上記動作定義情報が書換えられるまで、上記製造用書込みコマンドを受付けることが可能であるため、上位装置から順供給される製造用書込みコマンドに基づいて分割された書込みデータを順次書込む。これにより、1つの製造用書込みコマンドで送信できないような大きなサイズの書込みデータであっても、上記ICカードの不揮発性メモリ内に書き込むことが可能となる。」

ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「ICカード2は・・・外部インターフェース23等から構成されている」、「外部インターフェース23は、上記上位装置1とのデータ通信を行うインターフェース」との記載からすると、引用文献1には、ICカードが、
「上位装置とのデータ通信を行う外部インターフェース」
を備える態様が記載されている。

(イ)上記Aの「ICカード2は・・・不揮発性メモリ22・・・等から構成されている」、「不揮発性メモリ22は、ICカードの発行処理などにおいてデータの書込みが可能な不揮発性のメモリ」との記載からすると、引用文献1には、ICカードが、
「データの書込みが可能な不揮発性メモリ」
を備える態様が記載されている。

(ウ)上記Aの「ICカード2は・・・カード状の筐体内に内蔵される制御部(制御素子)21・・・等から構成されている」、「制御部21は・・・RAM26・・・などから構成され・・・RAM26は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリ・・・RAM26は、上記CPUが処理中のデータなどを一時保管するバッファとして機能する」との記載からすると、引用文献1には、ICカードが、
「ワーキングメモリとして処理中のデータなどを一時保管するバッファとして機能するRAM」
を備える態様が記載されている。

(エ)上記(ア)における検討内容、上記Aの「ICカード2は・・・カード状の筐体内に内蔵される制御部(制御素子)21・・・等から構成されている」、「制御部21は、CPU25・・・などから構成され、ICカード全体の制御を司る」との記載、上記Bの「不揮発性メモリ22には、当該ICカード2の動作モードを切替えるスイッチ的な役割を果たす動作定義情報が記録される動作定義領域28が設けられている」、「動作定義領域28に記録されている動作定義情報は、当該ICカード2が製造時の状態であるか運用時の状態であるかを示す情報」、「動作定義情報は、起動時に上記ROM27内の制御プログラムに基づいて上記CPU25により読み込まれる。これにより、上記CPU25は起動時に当該ICカード2の現在の動作モード(製造時の状態か運用時の状態か)を判断する」との記載からすると、当該CPUは、
「運用時の状態との判断に基づき運用時のデータ通信を制御し、製造時の状態との判断に基づき製造時のデータ通信を制御する」
ものであることが読み取れる。
そして、上記Cの「製造時の発行処理を行うようにしても良い・・・書込みデータが長い場合・・・発行イメージを最も効率の良い長さで分割し・・・順次ICカードへ転送する」との記載からすると、製造時のデータ通信の制御に関して、発行処理時に、
「発行時における最も効率の良いデータの長さでデータ通信を行う」
態様が読み取れる。
してみると、引用文献1には、ICカードが、
「運用時の状態との判断に基づき運用時におけるデータ通信を制御し、製造時の発行処理の状態との判断に基づき発行時における最も効率の良いデータの長さでデータ通信を制御するCPU」
を備える態様が記載されているものと解される。

以上、(ア)ないし(エ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

上位装置とのデータ通信を行う外部インターフェースと、
データの書込みが可能な不揮発性メモリと、
ワーキングメモリとして処理中のデータなどを一時保管するバッファとして機能するRAMと、
運用時の状態との判断に基づき運用時におけるデータ通信を制御し、製造時の発行処理の状態との判断に基づき発行時における最も効率の良いデータの長さでデータ通信を制御するCPUと、
を備えたICカード。

(2-2)引用文献2

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月14日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開2004/36440号(2004年4月29日国際公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

D 「図2は、本発明の実施の形態のデータパケットの構成を示す。データ転送装置101とICカード102との間で送受信するデータパケット201(SD I/O Bluetooth規格)のデータ長をLバイトとする。Lの値はデータの内容に応じて異なる。データパケット201の先頭には4バイトの管理情報211が配置されている。管理情報211はデータパケット長に関する情報212(3バイト)とサービスID(Identification)213(1バイト)を含む。サービスID213は、データの種類に関する情報を含むことができる。データパケット201の中で、管理情報211を除く部分は、全て通常のデータである。なお、「データ長」はデータパケットの情報量を表す任意の値(実施の形態では、バイト数)である。
データ転送装置101とICカードとの間では、データパケット201を分割した、データブロック202?204が送受信される。データ転送装置101は、ICカード102の初期化を行う時、ICカード102の接続時又は起動時に、ICカード102との間で送受信するデータブロック202?204の最大データサイズ(Nバイト)を以下に述べる方法によって定める。
図3は、データ転送装置101とICカード102との間で送受信するデータブロックの最大サイズを決定する方法を示すフローチャートである。ステップ301でデータ転送装置101はICカード102に、ICカード102の送受信用バッファメモリ123の記憶容量を問い合わせる送信指令を送信する。ステップ311でICカード102は、ICカード102の送受信用バッファメモリ123の記憶容量を問い合わせる送信指令を受信する。ステップ312でICカード102はデータ転送装置101に、送受信用バッファメモリ123の記憶容量を送信する。ステップ302でデータ転送装置101は、ICカード102の送受信用バッファメモリ123の記憶容量を受信する。ステップ303でデータ転送装置101は、ICカード102の送受信用バッファメモリ123の記憶容量とデータ転送装置101の送受信用バッファメモリ113の記憶容量とを超えない値を、データブロックの最大サイズ(Nバイト)として定める。」(13頁21行?15頁7行)

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

本願の出願前に頒布された刊行物である、国際公開第2005/081180号(2005年9月1日国際公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「[0002]
非特許文献1にはICカードのデバイス間におけるインタフェース端子及び転送プロトコルについて記載される。ここには、例えば、ATR(Answer To Reset)等について記載がある。ATRは、リセット処理に対する応答としてリセット処理後にICカードからインタフェースデバイスに向けて送られる通信プロトコルを示すための値である、とされる。非特許文献2にはICカードの情報交換のためのコマンド仕様が記載される。」

F 「[0006]
通常、ICカードとカードホスト間でICカードリセット時に、カードホストはICカードから出力されるリセット応答としてATR情報を直接読み取り、このATRの情報を使用して必要な通信設定を行い、設定された通信条件にて、それ以降、前記非特許文献2の記載に準拠したコマンド処理を行う。・・・(後略)」

(3-2)参考文献2

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2000-11100号公報(平成12年1月14日出願公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0044】次に制御ユニット15はICカード9に電源及びリセット信号を供給しICカード9からの初期応答を待つ(ステップ203、204)。そしてICカード9から初期応答が受信されると(ステップ204のYesの場合)、制御ユニット15は受信した初期応答からICカードのプロトコルを判断する(ステップ205)。以下、このプロトコルに従ってICカード9との通信が行われる。」

(3-3)参考文献3

本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-355476号公報(平成16年12月16日出願公開。以下、「参考文献3」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「【0014】
一方、本発明は、コンピュータ装置により実行されるカード媒体制御方法として把握することができる。すなわち、本発明は、接続されたカード媒体が第1の動作モードで動作するかどうかを検査するステップ(ステップ104?105)と、検査するステップにて動作しないと判断された場合に、カード媒体が第1の動作モードとは異なる第2の動作モードで動作するよう設定を行うステップ(ステップ107?108)とを含んでいる。
ここで、第1の動作モードで動作した場合の方が、第2の動作モードで動作した場合よりもカード媒体から高速にデータを転送することが可能なように構成することができる。また、検査するステップでは、カード媒体にテストコマンドを発行し、その応答を検証することにより、検査を行うように構成することもできる。」

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「上位装置」及び「外部インターフェース」は、それぞれ、本願補正発明の「外部機器」及び「通信手段」に相当する。そして、上記Aに「外部インターフェース23は、本体内に設けられたアンテナとそのアンテナにより情報を送受信する送受信回路などにより構成される」と記載されることから、引用発明におけるデータ通信が、上位装置とデータを送受信するものであることは自明の事項である。
してみると、引用発明の「上位装置とのデータ通信を行う外部インターフェース」は、本願補正発明の「外部機器と通信しデータを送受信する通信手段」に相当する。

(4-2)上記(4-1)における検討内容、上記Aの「ICカードの発行処理などにおいてデータの書込みが可能な不揮発性のメモリ」との記載、上記Cの「発行イメージを最も効率の良い長さで分割し・・・順次ICカードへ転送する」等の記載からすると、引用発明においても、外部インターフェースを介して送受信されるデータを不揮発性メモリに書き込むことは自明の事項である。
してみると、引用発明の「データの書込みが可能な不揮発性メモリ」は、本願補正発明の「前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段」に相当する。

(4-3)引用発明の「ワーキングメモリとして処理中のデータなどを一時保管するバッファとして機能するRAM」と、本願補正発明の「前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータを一時的に記憶し、前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータを一時的に記憶するバッファ」とは、ともに、“データを一時的に記憶するバッファ”である点で共通する。

(4-4)引用発明の「運用時の状態との判断」及び「製造時の発行処理の状態との判断」は、それぞれ、本願補正発明の「運用動作中の認識」及び「発行動作中の認識」に相当する。そして、上記(4-1)における検討内容を参酌すると、引用発明の「運用時の状態との判断に基づき運用時におけるデータ通信を制御し、製造時の発行処理の状態との判断に基づき発行時における最も効率の良いデータの長さでデータ通信を制御する」とは、運用時の状態との判断に基づき運用時におけるデータの送受信を制御し、製造時の発行処理の状態との判断に基づき発行時における最適なデータの長さでデータの送受信を制御することに他ならない。また、本願補正発明の「運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する」とは、運用動作中の認識に基づき運用時におけるデータの送受信を制御し、発行動作中の認識に基づき発行時における最適なデータサイズでデータの送受信を制御することに他ならない。
してみると、引用発明の「運用時の状態との判断に基づき運用時におけるデータ通信を制御し、製造時の発行処理の状態との判断に基づき発行時における最も効率の良いデータの長さでデータ通信を制御するCPU」と、本願補正発明の「運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段」とは、ともに、“運用動作中の認識に基づき運用時におけるデータの送受信を制御し、発行動作中の認識に基づき発行時における最適なデータサイズでデータの送受信を制御する制御手段”である点で共通する。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

外部機器と通信しデータを送受信する通信手段と、
前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段と、
データを一時的に記憶するバッファと、
運用動作中の認識に基づき運用時におけるデータの送受信を制御し、発行動作中の認識に基づき発行時における最適なデータサイズでデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えたICカード。

(相違点1)

バッファに記憶するデータに関して、本願補正発明が、「前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータ」及び「前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータ」であるのに対して、引用発明は、「処理中のデータ」ではあるが、外部インターフェースにより送受信されるデータであるか不明である点。

(相違点2)

運用動作中に送受信されるデータに関して、本願補正発明が、「第1のデータサイズを上限としたデータ」であるのに対して、引用発明は、運用時に送受信されるデータについて、具体的に記載されていない点。

(相違点3)

発行動作中に送受信されるデータサイズに関して、本願補正発明が、「前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズ」であるのに対して、引用発明は、最も効率の良いデータの長さである点。(すなわち、引用発明においては、運用時のデータの長さとの大小関係、バッファサイズとの関係が不明である点。)

(相違点4)

初期化シーケンスにおける処理に関して、本願補正発明が、「前記制御手段は、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により、前記外部機器との通信方式を決定するとともに、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定し、また、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により通信方式を決定するとともに、前記発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定」しないものであるのに対して、引用発明は、初期化シーケンスにおける処理に関して、特に明記されていない点。

(相違点5)

記憶手段の構成に関して、本願補正発明が、「前記記憶手段は、複数の記憶エリアを含み」、「前記制御手段は、前記複数の記憶エリアのうちの第1及び第2の記憶エリアを使用する場合、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限として分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込み、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して受信したデータを分割し、分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込む」ものであるのに対して、引用発明は、「データの書込みが可能な不揮発性メモリ」を備えているものの、当該不揮発性メモリの構成等に関して、特に明記されていない点。

(5)当審の判断

上記相違点1ないし相違点5について検討する。

(5-1)相違点1について

外部機器と送受信されるデータを一時的にバッファに記憶する技術については、周知文献をあげるまでもなく、当該技術分野において、当業者が普通に採用している周知慣用技術に他ならない。
してみると、引用発明においても、“不揮発性メモリから読み出され通信インターフェースにより送信するためのデータ”及び“通信インターフェースにより受信され不揮発性メモリに書き込むためのデータ”を、バッファとして機能するRAMに一時保管するように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

一般に、通常運用時において、通信で用いるデータサイズ等を確定する際に、ISO/IEC等の標準的な通信規約に基づいたものの中で、最も効率の良いものを採用することは、情報処理の技術分野における常とう手段である。
そして、本願補正発明においても、発明の詳細な説明の段落【0024】に、
「【0024】
非接触式ICカード2の制御部26は、第1の動作状態(運用動作中)の認識に基づき第1のデータサイズ(ISO/IEC14443-3 TypeBにより規定された通信データの最大値)を上限としたデータの送受信を制御し、・・・(後略)」
と記載されるように、運用動作中における「第1のデータサイズ」は、標準的な通信規約(ISO/IEC14443-3 TypeB)に規定された通信データの最大値を上限として決めるものである。
してみると、引用発明においても、運用時に送受信されるデータとして、標準的な通信規約に規定された通信データの中で最も効率の良いもの(本願補正発明の「通信データの最大値」に相当)とすること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)相違点3について

製造時等の非運用時において送受信されるデータサイズを確定する際に、標準的な通信規約に拘る必要はなく、最も効率の良いデータサイズを採用するように構成することは、当該技術分野において、当業者が普通に採用していることである。
そして、送受信されるデータサイズとして、バッファの記憶容量を超えない値を、データの最大サイズとする技術についても周知技術(必要であれば、上記引用文献2の上記D参照)に過ぎない。
してみると、引用発明においても、運用時よりも大きいデータサイズを採用し、バッファ機能を有するRAMによりバッファリング可能な上限のデータサイズとすること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3は格別なものではない。

(5-4)相違点4について

ICカードの初期化シーケンスにおいて、外部機器との通信方式を設定するようにすることについては、当該技術分野において、当業者が普通に採用している周知慣用技術(必要であれば、上記参考文献1の上記E及びF、上記参考文献2の上記G等参照。)に他ならない。
してみると、引用発明における初期化シーケンスにおいても、当該周知技術を適用し、上位装置とのコマンドの送受信により上位装置との通信方式を決定するとともに、通信時のデータサイズを決定するように構成すること、すなわち、上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点4は格別なものではない。

(5-5)相違点5について

ICカードの記憶手段を複数の記憶エリアに区分するように構成することは、引用文献等を示すまでもなく、当該技術分野において、当業者が普通に採用していることである。また、ICカードを転送速度が異なる複数のモードで切り替えて使用する技術も周知技術(必要であれば、上記参考文献3の上記H等参照。)であり、そして、転送速度が異なる複数のモードで書き込みを行うに際して、それぞれの転送速度に応じた最も効率の良い書き込み方法で書き込みを行うように設定することについても、当業者が普通に実施していることである。
してみると、引用発明の不揮発性メモリにおいても、複数の記憶エリアを含むように構成し、当該複数の記憶エリアに対して、複数の動作モード(運用時と製造時の発行処理)毎に、それぞれ最も効率の良い書き込み方法を設定するように構成すること、すなわち、上記相違点5に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点5は格別なものではない。

(5-6)小括

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点5は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび

以上、前記「2.新規事項の有無、補正の目的要件」で指摘したとおり、補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合であっても、前記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成23年12月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年8月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「外部機器と通信しデータを送受信する通信手段と、
前記通信手段を介して送受信されるデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から読み出され前記通信手段により送信するためのデータを一時的に記憶し、前記通信手段により受信され前記記憶手段へ書き込むためのデータを一時的に記憶するバッファと、
運用動作中の認識に基づき第1のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御し、前記外部機器と安定通信可能な発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズより大きく、前記バッファによりバッファリング可能な上限のデータサイズである第2のデータサイズを上限としたデータの送受信を制御する制御手段と、
を備えたICカード。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成23年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」で検討した本願補正発明から、

「前記制御手段は、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により、前記外部機器との通信方式を決定するとともに、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定し、また、初期化シーケンスにおける前記外部機器から送信されるコマンドの受信及び前記コマンドに対するレスポンスの送信により通信方式を決定するとともに、前記発行動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限に決定せず」、
「前記記憶手段は、複数の記憶エリアを含み」、
「前記制御手段は、前記複数の記憶エリアのうちの第1及び第2の記憶エリアを使用する場合、前記運用動作中の認識に基づき前記第1のデータサイズを上限として分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込み、前記発行動作中の認識に基づき前記通信手段を介して受信したデータを分割し、分割された分割データを前記第1及び第2の記憶エリアへ書き込む」、

を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年12月13日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-24 
結審通知日 2013-07-30 
審決日 2013-08-12 
出願番号 特願2005-314408(P2005-314408)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 浩  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 仲間 晃
田中 秀人
発明の名称 ICカード  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  

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