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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1279823 |
審判番号 | 不服2013-3223 |
総通号数 | 167 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2013-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-02-19 |
確定日 | 2013-10-03 |
事件の表示 | 特願2007-187870「非水電解質電池及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月 6日出願公開、特開2008- 53220〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年7月19日(優先権主張、2006年7月25日、日本)の出願であって、平成24年8月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月30日付けで手続補正がされ、同年11月15日付けで拒絶査定がなされ、平成25年2月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に手続補正がされ、同年3月18日付けで前置報告がなされ、これに基づく審尋が同年4月9日付けで発せられたところ、同年6月7日に回答書が提出されたものである。 第2 平成25年2月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 【補正却下の決定の結論】 本件補正を却下する。 【理由】 1.手続補正の内容 本件補正は、平成24年10月30日付けで補正された特許請求の範囲の 「【請求項1】 リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質と、Co、Al又はNiの水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物とを含有し、前記水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物を前記活物質の質量に対して5wt%以下含有する電極を備えた非水電解質電池。(但し、水を主成分とする溶媒に、リチウム(Li)成分、リン(P)成分、A成分、D成分及び酸化アルミニウムを加えて溶液とし、次いで、この溶液を反応させることにより生成したLi_(x)A_(y)D_(z)PO_(4)(但し、AはCo、Ni、Mn、Fe、Cu、Crから選択された1種、DはMg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素から選択された1種または2種以上かつ前記Aと異なる、0≦_(x)<2、0<_(y)<1.5、0≦_(z)<1.5)を正電極に用いてなるリチウム電池、を除く。)」を、 「【請求項1】 リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質と、Co又はNiの水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物とを含有し、前記水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物を前記活物質の質量に対して5wt%以下含有する電極を備えた非水電解質電池。」とするもの(以下、「補正事項a」という)を含むものである。 2.当審の判断 (1)(ア)特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえるためには、少なくとも、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)を限定するものであることが必要である。 そして、発明特定事項を限定するとは、補正前のある発明特定事項を概念的により下位のものに限定するとか、補正前の発明特定事項が選択肢として表現されている請求項において、その選択肢の一部を削除する等、当該補正前の発明特定事項を技術的に特定するものと解される。 (イ)これを本件についてみるに、本件補正は、補正前の「(但し、水を主成分とする溶媒に、リチウム(Li)成分、リン(P)成分、A成分、D成分及び酸化アルミニウムを加えて溶液とし、次いで、この溶液を反応させることにより生成したLi_(x)A_(y)D_(z)PO_(4)(但し、AはCo、Ni、Mn、Fe、Cu、Crから選択された1種、DはMg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素から選択された1種または2種以上かつ前記Aと異なる、0≦_(x)<2、0<_(y)<1.5、0≦_(z)<1.5)を正電極に用いてなるリチウム電池、を除く。)」(以下、「除く部分」という。)という発明特定事項を削除するものを含む。 しかるところ、「除く部分」がそれ自体、技術的に広範囲であるのみならず、「除く部分」を削除することは、補正前の「リン酸塩のポリアニオン活物質」を技術的に何ら特定するものではなく、むしろ拡張するものとさえいえるから、本件補正は、補正前の発明特定事項を技術的に特定するものであるとはいえない。 そうとすれば、補正事項aは、発明特定事項を限定するものでなく、当該要件を満たさないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものといえない。 また、補正事項aが、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当しないことも明らかである。 (ウ)以上のとおり、補正事項aを含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (2)仮に、本件補正が限定的減縮にあたるとしても、本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願補正後発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないから、この点を検討する。 ア 特願2006-092675号(特開2007-305585号公報)(以下、「先願」という。)の明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された事項 1-1 「【請求項1】 正極活物質として一般式Li_(x)MPO_(4)(式中、Mは、Co,Ni・・・から選択される少なくとも1種以上の元素であり、0<x<1.3の条件を満たす。)で表されるオリビン型リチウム含有リン酸塩を含む正極と、負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、上記の正極に、リチウムを含有しない金属酸化物を添加させたことを特徴とする非水電解質二次電池。 【請求項2】 請求項1に記載の非水電解質二次電池において、前記のリチウムを含有しない金属酸化物が、Ni,Co及びMnから選択される少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする非水電解質二次電池。」 1-2 「【0015】 また、正極に上記のようなリチウムを含有しない金属酸化物を添加させるにあたり、その量が少なすぎると、大電流での充放電特性や高温状態での熱安定性を充分に向上させることが困難になる一方、その量が多くなりすぎると、正極中における正極活物質の割合が少なくなって充放電容量が低下し、十分な電池特性が得られなくなるため、オリビン型リチウム含有リン酸塩とこのリチウムを含有しない金属酸化物との合計量に対して、リチウムを含有しない金属酸化物の量が1?50重量%、好ましくは1?40重量%、より好ましくは1?20重量%の範囲内になるようにする。」 イ 先願明細書に記載された発明 先願明細書には、「正極活物質として一般式Li_(x)MPO_(4)(式中、Mは、Co,Ni・・・から選択される少なくとも1種以上の元素であり、0<_(x)<1.3の条件を満たす。)で表されるオリビン型リチウム含有リン酸塩を含む正極と、負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、上記の正極に、リチウムを含有しない1?20重量%の金属酸化物を添加させた非水電解質二次電池」(以下、「先願発明」という。)が記載されている(2-1、2-2)。 ウ 対比・判断 先願発明の「正極活物質として一般式Li_(x)MPO_(4)(式中、Mは、Co,Ni・・・から選択される少なくとも1種以上の元素であり、0<_(x)<1.3の条件を満たす。)で表されるオリビン型リチウム含有リン酸塩」、「リチウムを含有しない1?5重量%の金属酸化物」、「非水電解質二次電池」は、本願補正後発明の「リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質」、「活物質の質量に対して5wt%以下のCo又はNiの酸化物」、「非水電解質電池」に相当する。 よって、両者に異なるところがないから、両者は、同一の発明というべきであるから、本願補正後発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 エ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (3)まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、仮に、本件補正が限定的減縮にあたるとしても、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成25年2月19日付けの手続補正は、上記第2に記載したとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年10月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質と、Co、Al又はNiの水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物とを含有し、前記水酸化物、酸化物又はオキシ水酸化物を前記活物質の質量に対して5wt%以下含有する電極を備えた非水電解質電池。(但し、水を主成分とする溶媒に、リチウム(Li)成分、リン(P)成分、A成分、D成分及び酸化アルミニウムを加えて溶液とし、次いで、この溶液を反応させることにより生成したLi_(x)A_(y)D_(z)PO_(4)(但し、AはCo、Ni、Mn、Fe、Cu、Crから選択された1種、DはMg、Ca、Fe、Ni、Co、Mn、Zn、Ge、Cu、Cr、Ti、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Si、B、希土類元素から選択された1種または2種以上かつ前記Aと異なる、0≦_(x)<2、0<_(y)<1.5、0≦_(z)<1.5)を正電極に用いてなるリチウム電池、を除く。)」 2.原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 刊行物 特開2004-327078号公報 3.刊行物の記載事項 1-1 「【請求項1】 正極活物質及び導電材を含んで成る非水電解質二次電池用電極であって、 上記正極活物質は、次の一般式・・・ Li_(R)Fe_(1-w)M’’_(W)PO_(4) …(2) (式中のM’’はコバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ガリウム、クロム、バナジウム、チタン、マンガン、カルシウム、ストロンチウム及びシリコンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素又は合金を示し、_(R)は_(R)≧0.9、_(W)は0.5≧_(W)≧0を満足する)・・・ で表される・・・リチウム複合酸化物を含み、 上記導電材は、下記の酸化物・・・を含み、 該酸化物は・・・アルミニウム・・・を含んで成り、 上記導電材は、上記正極活物質が形成する二次粒子の表面及び/又は内部に担持されて成る非水電解質二次電池用電極。」 1-2 「【0016】 ・・・導電材の重量C_(w)と上記正極活物質の重量P_(w)は、次の一般式(4) 0.0001≦C_(w)/P_(w)<0.2 …(4) で表される関係を満たすことが好適である。かかる混合比率とすることにより、全ての正極活物質の導電性を確保できるので有効である。」 1-3 「【0037】 【発明の効果】 以上説明してきたように、本発明によれば、正極活物質を二次粒子として導電材を担持させることとしたため、初期放電容量及び負荷特性に優れる非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池を提供することができる。」 3.刊行物に記載された発明について 「正極活物質及び導電材を含んで成る非水電解質二次電池用電極であって、 上記正極活物質は、Li_(R)Fe_(1-w)M’’_(W)PO_(4)(式中のM’’はコバルト、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、ホウ素、ガリウム、クロム、バナジウム、チタン、マンガン、カルシウム、ストロンチウム及びシリコンから成る群より選ばれた少なくとも1種の元素又は合金を示し、_(R)は_(R)≧0.9、_(W)は0.5≧_(W)≧0を満足する) で表されるリチウム複合酸化物を含み、 上記導電材は、アルミニウムの酸化物であり、前記アルミニウムの酸化物を前記正極活物質の質量に対して0.01?20wt%含有する非水電解質二次電池用電極を含む非水電解質二次電池」(1-1、1-2)の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明」という。)。 4.対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明を比較すると、引用発明の「正極活物質」、「アルミニウムの酸化物」、「電極を含む非水電解質二次電池」は、本願発明の「リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質」、「Alの酸化物」、「電極を備えた非水電解質電池」にそれぞれ相当する。 そうすると、両者は、「リチウムイオンを吸蔵・放出しうるリン酸塩のポリアニオン活物質と、Alの酸化物とを含有し、前記酸化物を前記活物質の質量に対して0.01?5wt%含有する電極を備えた非水電解質電池」で一致している。 しかしながら、本願発明では、水を主成分とする溶媒に、リチウム(Li)成分、リン(P)成分、A成分、D成分及び酸化アルミニウムを加えて溶液とし、次いで、この溶液を反応させることにより生成した(以下、「本願発明に係る生成法」という。)リン酸塩のポリアニオン活物質を正電極に用いてなるリチウム電池を除いているのに対して、引用発明では、リン酸塩のポリアニオン活物質を生成する方法が明らかでなく、本願発明に係る生成法によらずに、リン酸塩のポリアニオン活物質を生成する方法を採用できるかが明らかでない点(相違点)で相違する。 (2)判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明の技術分野において、リン酸塩のポリアニオン活物質を生成する方法として、従来から「固相法」等が採用されていたのであるから(特開2006-48991号公報【0006】、特開2006-66085号公報【0046】、特開2005-276476号公報【0006】、特開2004-362837号公報【0036】、特開2004-95385号公報【0006】、特開2000-294238号公報【0053】)、引用発明において、本願発明に係る生成法によらずに、例えば、固相法という方法でリン酸塩のポリアニオン活物質を生成することは、当業者が適宜成し得ることである。 そうすると、上記相違点は、当業者が容易に推考できる範囲にとどまるというべきである。 そして、引用発明も、初期放電容量及び負荷特性に優れる非水電解質二次電池を提供するものであるから(1-3)、本願発明の作用効果が引用発明に比して格別顕著であるとまではいえない。 第4 結論 以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-08-02 |
結審通知日 | 2013-08-06 |
審決日 | 2013-08-19 |
出願番号 | 特願2007-187870(P2007-187870) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松嶋 秀忠 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
山田 靖 小川 進 |
発明の名称 | 非水電解質電池及びその製造方法 |