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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
管理番号 1280463
審判番号 不服2010-135  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-05 
確定日 2013-10-11 
事件の表示 特願2005- 77208「可塑性注入材および地盤強化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-257281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成17年3月17日の出願であって,以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成17年 3月18日 手続補正書
平成21年 3月 5日付け 拒絶理由通知書
平成21年 5月12日 意見書・手続補正書
平成21年 6月22日付け 拒絶理由通知書(最後)
平成21年 8月27日 意見書・手続補正書
平成21年 9月29日付け 補正却下の決定(平成21年8月27日付
けの手続補正)・拒絶査定
平成22年 1月 5日 審判請求書・手続補正書
平成23年 9月21日付け 審尋
平成23年11月25日 回答書
平成24年 8月 7日 補正却下の決定(平成22年1月5日付け
の手続補正)・拒絶理由通知書(最後)
平成24年10月12日 意見書・手続補正書
平成25年 1月18日付け 審尋
平成25年 3月29日 回答書

第2 平成24年10月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成24年10月12日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成24年8月7日付けの最後の拒絶理由通知に係る特許法第50条に規定による指定期間内にしたものであって,平成21年5月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲(以下,「補正前の特許請求の範囲」という。)を以下のとおり補正する補正を含むものである。

補正前の請求項5である
「【請求項5】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して可塑性地盤注入材を圧入し、該注入材が時間とともに、或いは脱水によって可塑状ゲルを経て固化し、
(1)フライアッシュ(F材)
(2)カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
の三成分を有効成分として含む地盤強化方法において、前記地盤注入材として硬化発現材比C/(F+C)×100(%)が1?40重量%であり、水粉体比W/(F+C)×100(%)が20?150重量%であり、スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである地盤注入材を用い、前記地盤注入材のゲル化物によって土粒子を周辺に押しやり、地盤中に該地盤注入材のゲル化物からなる複数の塊状固結体を形成するとともに、該複数の注入孔間の地盤の密度を増加して地盤強化することを特徴とする地盤強化方法。」を,
補正後の請求項1である
「【請求項1】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して可塑性地盤注入材を圧入し、地盤強化する地盤強化方法であって、該可塑性地盤注入材が
(1)フライアッシュ(F材)
(2)セメント、石灰、石こう、およびスラグの群から選択される一種または複数種のカルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
の三成分を有効成分として含み、かつ硬化発現材比C/(F+C)×100(%)が1?20%であり、水粉対比W/(F+C)×100(%)が20?150%である地盤強化方法において、
(A)該可塑性注入材が地盤中に注入する前、あるいは地盤中で時間とともに、あるいは加圧脱水によって可塑状ゲルを経て、非可塑状ゲルとなって固化する注入材であって、
(B)可塑性注入材の注入に当たり、複数の注入ポイントから同時注入方式、連続注入方式、インターバル注入方式、間欠注入方式またはこれらの組み合わせ方式により注入して地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し、
(C)注入孔間隔を0.5?3.0mとし、注入管を上方または下方に移動させながら、該注入管を通して地盤注入材を圧入し、
(D)これによって、可塑状ゲルによる土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し拡げて地盤の密度を増大させ、地盤を強化することを特徴とする地盤強化方法。ただし、F、C、Wはいずれも重量である。」と補正する。

2 補正の適否
(1)目的要件について
本件補正は,最後の拒絶理由通知に対して,特許請求の範囲について補正するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項の第1号から第4号に掲げるいずれかの事項を目的とするものに限られる。
そこで,本件補正の目的要件について検討する。

補正後の請求項1に関する本件補正は,補正前の請求項5の「地盤強化方法」について,以下の補正事項(a)?(c)を含むものである。
(a)補正前の請求項5の「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである地盤注入材を用い」との発明特定事項を削除している点
(b)「(A)該可塑性注入材が地盤中に注入する前、あるいは地盤中で時間とともに、あるいは加圧脱水によって可塑状ゲルを経て、非可塑状ゲルとなって固化する注入材であって」との発明特定事項,特に,「可塑性注入材が地盤中に注入する前」の時点で「可塑状ゲル」とする発明特定事項を追加している点
(c)「地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し」との発明特定事項を追加している点

ア 補正事項(a)について
補正事項(a)は,補正前の請求項5の「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cm」という発明特定事項を削除するもので,この条件を満たさない地盤注入材も補正後の請求項1に係る発明に含まれるから,そもそも,特許請求の範囲を減縮するものではなく,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮には該当しないことは,明らかである。
また,平成24年8月7日付けの拒絶理由通知書では,補正前の請求項5の「スランプ(cm)が4?26cm」,「フロー(cm)が13?30cmであること」について,本願で用いる「地盤注入材」は,経時的に当該スランプ値,当該フロー値が減少すると考えられるので,いかなる時点でのスランプ測定値,フロー測定値を特定した地盤注入材を用いるのか不明であるから,当該記載は特許を受けようとする発明が明確でないとの拒絶理由が示されていると認められるところ,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである地盤注入材を用い」との発明特定事項を,どの時点のスランプ測定値,フロー測定値かを特定して明確にすることなく,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである地盤注入材を用い」との発明特定事項そのものを削除する補正は,同条同項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものにも該当しない。
そして,補正事項(a)が同条同項第1号の「請求項の削除」,同条同項第3号の「誤記の訂正」のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

イ 補正事項(b)について
補正事項(b)は,方法の発明に係る補正前の請求項5?11に記載されていなかった,地盤注入材が地盤中に注入される前に可塑状ゲルにするという発明特定事項の追加,並びに,地盤注入材を「地盤中に注入する前」に可塑状ゲルにする場合の地盤強化方法という発明特定事項の追加するものと解される。
そして,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「限定的減縮」とは,特許請求の範囲を減縮するだけでなく,発明を特定するために必要な事項を限定するものでなければならないと解され,「発明を特定するために必要な事項」とは,特許請求の範囲中の事項であって特許を受けようとする発明を特定している事項であると解される(知財高裁平成19年行(ケ)第10055号参照)。
そこで,補正前の請求項5をみると,「地盤中に設けた複数の注入孔を介して可塑性地盤注入材を圧入し、該注入材が時間とともに、或いは脱水によって可塑状ゲルを経て固化し」との発明特定事項はあるが,「可塑性地盤注入材」が「可塑状ゲル」にどの時点でなるかという概念に対応する発明特定事項はなく,「地盤中に注入する前に可塑状ゲルにする」との下位概念の上位概念に当たる発明特定事項がないから,「地盤注入材が地盤中に注入される前に可塑状ゲルにする」との発明特定事項を含む補正後の請求項1に係る発明は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当するとは認められない。
また,補正事項(b)が同条同項第1号の「請求項の削除」,同条同項第3号の「誤記の訂正」,同条同項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

ウ 補正事項(c)について
補正事項(c)は,方法の発明に係る補正前の請求項5?11に記載されていなかった,「地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し」との発明特定事項を追加するものである。
補正前の請求項5には,「該地盤注入材のゲル化物によって土を周辺に押しやり」との発明特定事項があるが,地面の隆起あるいは,地盤のどの部分を圧縮するのかという概念に対応する発明特定事項はなく,「地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し」との下位概念の上位概念に当たる発明特定事項がないから,「地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し」との発明特定事項を含む補正後の請求項1に係る発明は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当するとは認められない。
また,補正事項(c)が同条同項第1号の「請求項の削除」,同条同項第3号の「誤記の訂正」,同条同項第4号の「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

エ まとめ
以上のとおり,上記補正事項(a)?(c)は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから,上記補正事項(a)?(c)を含む本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3)独立特許要件(特許法第36条第6項第1号)について
仮に,上記補正事項(a)?(c)がすべて目的要件を満たし,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮を目的とする補正を含むものであったとしても,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないので,その点について以下に検討する。

ア 明細書のサポート要件について
特許法第36条第6項は,「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号に規定する要件(いわゆる,「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは,「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」(知財高裁特別部平成17年(行ケ)第10042号判決)である。以下この観点に立って検討する。

イ 特許請求の範囲の記載
補正後の請求項1には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
地盤中に設けた複数の注入孔を介して可塑性地盤注入材を圧入し、地盤強化する地盤強化方法であって、該可塑性地盤注入材が
(1)フライアッシュ(F材)
(2)セメント、石灰、石こう、およびスラグの群から選択される一種または複数種のカルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
の三成分を有効成分として含み、かつ硬化発現材比C/(F+C)×100(%)が1?20%であり、水粉対比W/(F+C)×100(%)が20?150%である地盤強化方法において、
(A)該可塑性注入材が地盤中に注入する前、あるいは地盤中で時間とともに、あるいは加圧脱水によって可塑状ゲルを経て、非可塑状ゲルとなって固化する注入材であって、
(B)可塑性注入材の注入に当たり、複数の注入ポイントから同時注入方式、連続注入方式、インターバル注入方式、間欠注入方式またはこれらの組み合わせ方式により注入して地面の隆起を低減し、あるいは地表面に近い領域の地盤を圧縮し、
(C)注入孔間隔を0.5?3.0mとし、注入管を上方または下方に移動させながら、該注入管を通して地盤注入材を圧入し、
(D)これによって、可塑状ゲルによる土粒子間浸透と地盤の割裂による逸脱を防ぎながら土粒子を周辺に押し拡げて地盤の密度を増大させ、地盤を強化することを特徴とする地盤強化方法。ただし、F、C、Wはいずれも重量である。」

ウ 本願の発明の詳細な説明の記載について
補正後の本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。
(a)「【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、地盤強化用可塑状グラウトとしては数十mもの長いホース中の送液流動性が必要な一方地盤中に圧入されたら土粒子間浸透せず、かつ、所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くするという相反する特徴を同時に満たす事が要求される。」
(b)「【0037】
12)フライアッシュモルタルの混練や圧送に適したワーカビリティは、テーブルフローで25cm付近、スランプ20cm付近が最も好ましい。スランプやフローを支配する混練水量の決定が、ワーカビリティを大きく左右させる。時間と共に逐次変化するこれらの流動性を的確に判断し、迅速に配合並びに水紛体比を調整することが地盤中に塊状の可塑状ゲルを形成するために重要である。フローによって水粉体比と硬化発現材比を管理して地盤中における可塑状ゲルの成長をはかることが出来る。」
(c)「【0069】
地盤中の塊状の固結物は、加圧することにより移動できるものの、土粒子間には浸透せず、かつ脈状に割裂しない程度の可塑状ゲルを形成する可塑性注入材であって、フローで現すと注入後の地盤中あるいは注入前の状態で13?28cm、好ましくは15?25cm、スランプでは26cm以下好ましくは4?26cmの範囲を示す可塑性ゲルを形成する可塑性注入液であることが好ましい。また、前述したように、地盤中で脱水することによって、注入前の状態でフローが28cm以上、スランプが26cm以上でも地盤中で可塑状ゲルを形成する。
【0070】
フロー値やスランプがこれ以下だと、地盤中で可塑状ゲルの塊状固結体の成長が困難になるが大きな空隙が存在したり地盤が極めて軟弱な場合は必要に応じてゲル化促進材の量を増やしてフローやスランプをこれ以下にして適用できる。」
(d)「【実施例2】
【0195】
本発明の特徴である塊状固結体の造成について、従来の水ガラス系懸濁型瞬結配合(以下、瞬結配合)、水ガラス-セメント系のLW、また可塑性注入材を用いて検討した結果を下記の表14に示す。表14における比較例1は瞬結配合であり、比較例2はLWである。比較例1、比較例2の配合はそれぞれ表15、表16に示す。比較例2、比較例3、実用例は本発明における2種類の粉状素材と水を表14に示した水粉体比、硬化発現材比で混合したものである。下記の配合では粉状素材の主材としてフライアッシュ、硬化発現材としてセメントを使用した。対象とした地盤はおよそN値が7、相対密度が40%、細粒分含有率が20%未満である砂質土地盤である。
【0196】
【表14】

・・・
【0199】
比較例1?3は地盤中に脈状となって注入されていた。比較例4および実用例は水粉体比が少なく、スランプ26以下、フロー値13?28cmの可塑状となり、地盤中に圧入することにより、地盤に塊状固結体が造成されることが確認された。また比較例4では硬化発現材比が大きいためグラウトの固結が早まり、厚さ15cm以下の脈状固結体となった。よって地盤中に20cm以上の大きな固結体を造成するには、水粉体比20?150%、硬化発現材比が1?40%、好ましくは1?20%、およびフローが13?28cmの本発明の可塑性注入材が適している事が判る。」

ウ 本願補正発明の解決しようとする課題
本願補正発明の解決しようとする課題は,「地盤強化用可塑状グラウトとしては数十mもの長いホース中の送液流動性が必要な一方地盤中に圧入されたら土粒子間浸透せず、かつ、所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くするという相反する特徴を同時に満たす事」(摘記a参照)とあるように,
「地盤強化用可塑状グラウト」(可塑性地盤注入材)が「送液流動性」をもつとともに,「所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くする」ことができる「地盤強化方法」を提供することにあるものと認められる。

エ 判断
発明の詳細な説明の記載には,「フライアッシュモルタルの混練や圧送に適したワーカビリティは、テーブルフローで25cm付近、スランプ20cm付近が最も好ましい。スランプやフローを支配する混練水量の決定が、ワーカビリティを大きく左右させる。」と記載される(摘記b参照)ように,本願補正発明の「可塑性地盤注入材」である「フライアッシュモルタル」の圧送には,フローが25cm付近,スランプが20cmが好ましいことが理解できる。
また,発明の詳細な説明には,「地盤中の塊状の固結物は、加圧することにより移動できるものの、土粒子間には浸透せず、かつ脈状に割裂しない程度の可塑状ゲルを形成する可塑性注入材であって、フローで現すと注入後の地盤中あるいは注入前の状態で13?28cm、好ましくは15?25cm、スランプでは26cm以下好ましくは4?26cmの範囲を示す可塑性ゲルを形成する可塑性注入液であることが好ましい。」,「フロー値やスランプがこれ以下だと、地盤中で可塑状ゲルの塊状固結体の成長が困難になる」と記載されている(摘記c参照)ので,「所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くする」には,フローが13?28cm,スランプは4?26cmが好ましいことが理解できる。
さらに,発明の詳細な説明には,水粉体比が20?150%,硬化発現材比1?20%,かつ,フロー値が15?28cmである「可塑性地盤注入材」を使用した実施例では,塊状で注入され,脈状にならないことが記載されている(摘記d参照)ものの,フローが13?28cm,スランプは4?26cm以外の範囲でも,同様に,塊状で注入され,脈状にならないことについては記載されていない。
そして,スランプ値は,高さ30cmのスランプコーンに生コンクリートを入れ,突棒で撹拌したあとでスランプコーンを垂直上に抜き取った場合のコンクリート頂部の高さが何cm下がったかを測定するものであるから,流動性の指標であることは明らかであって,この値が4cm未満であれば,流動性がかなり低いと解されるところ,このような可塑性地盤注入材についてまで,地盤に圧入できるほどの送液流動性を有するとは認められない。
また,フロー値もスランプ値と同様流動性の指標であるところ,流動性が高すぎれば,たとえ,地盤中で脱水されるとしても,可塑性地盤注入材が土粒子間には浸透せず,かつ脈状に割裂しない程度の可塑状ゲルを形成するということができないと解されるから,「可塑性地盤注入材」のフローが13?28cm,スランプは4?26cm以外の範囲においても,実施例と同様に,塊状で注入され,脈状にならないとの効果を得られると認めることができない。

そうすると,本願補正発明については,「可塑性地盤注入材」の「フローが13?28cm,スランプは4?26cm」の範囲を満たすことによって,「送液流動性」をもつとともに,「所定の改良受け持ち範囲以外に割裂現場により逸脱する事なく所定の位置に塊状にゲル化物を形成し、かつ、出来るだけ大きな注入液自体によるゲル化物を形成して、しかも固化に到る迄の間に周辺の土粒子を押しやって大きな塊状ゲルを形成してその分周辺の土砂の密度を高くする」との課題を解決できると当業者に理解できるように発明の詳細な説明に記載されているとはいえるが,本願補正発明においては,「可塑性地盤注入材」の「フローが13?28cm,スランプは4?26cm」であることの発明特定事項がないのであるから,「可塑性地盤注入材」のフローが13?28cm,スランプが4?26cm以外の範囲のものについてまで,本願補正発明の課題を解決できると当業者が認識できるとは認められない。

オ まとめ
以上のとおり,補正後の請求項1の記載は,その請求項1に記載される特許を受けようとする発明が,発明の詳細な説明に記載されていたとはいえず,特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく,特許法第36条第6項の規定を満たすものではないから,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3 むすび
したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また,仮に,本件補正が限定的減縮を目的とする補正を含むものであるとしても,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから,本件補正は,同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであって,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 特許請求の範囲の記載
平成24年10月12日付けの手続補正は上記のとおり却下され,また,平成21年8月27日付けの手続補正及び平成22年1月5日付けの手続補正もそれぞれ却下されているので,平成21年5月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
地盤中に削孔した注入孔から注入材を注入する地盤注入材であって、注入材が時間とともに、或いは脱水によって可塑状ゲルを経て固化し、
(1)フライアッシュ(F材)
(2)カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
の三成分を有効成分として含む地盤注入材において、硬化発現材比C/(F+C)×100(%)が1?40重量%であり、水粉体比W/(F+C)×100(%)が20?150重量%であり、スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmであることを特徴とする可塑性地盤注入材。」

第4 審判合議体の拒絶理由の概要
審判合議体が平成24年8月7日付けで通知した拒絶理由は,以下の「理由1」,「理由3」を含むものである。
「理由1」として,「この出願の特許請求の範囲の記載は,下記の点で不備であるから,特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく,この出願は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」というものであって,
請求項1の「スランプ(cm)が4?26cm」,「フロー(cm)が13?30cmであること」の記載に関し,「地盤注入材」は,経時的に当該スランプ値,フロー地がが減少すると考えられる中,いかなる時点での測定値を特定した地盤注入材を用いるのか不明であるから,当該記載は,本願発明1を不明確にするものであると指摘している。
そうすると,「理由1」は,「請求項1の「スランプ(cm)が4?26cm」,「フロー(cm)が13?30cmであること」との記載は,経時的に変化するものであって,これらの測定時が特定されていない「地盤注入材」は明確でなく,請求項1の特許を受けようとする発明が明確でないから,特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく,この出願は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。」という理由を含むものである。

また,「理由3」として,「本願の請求項1?4に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。」というものであって,「理由3」の指摘には,刊行物1として,「特開平01-234491号公報」が記載されているから,
「理由3」は,「本願の請求項1に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1(特開平01-234491号公報)に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。」という理由を含むものである。

第5 当審の判断
1 特許法第36条第6項第2号について
特許請求の範囲の請求項1には,「地盤注入材」において,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmであること」が記載されている。
本願明細書には,配合例?12,15?18において,5分後と30分後のフロー値が記載されており(【表4】,【表5】,【表8】?【表11】参照),これによれば,5分後よりも30分後のフロー値が必ず下がっている。また,可塑性地盤注入材は時間の経過とともに可塑状ゲル,更に非可塑状ゲルになることが記載されている(【0029】参照)ことからすれば,「地盤注入材」は製造時から時間の経過ととも流動性が小さくなり,流動性を示す指標であるスランプ,フローの値は経時的に減少していくものと理解できる。
そうすると,請求項1における「地盤注入材」とは,製造時には,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmであること」との範囲を満たさないものが,経時的にスランプ値,フロー値が減少して,この範囲を満たすものになり得るのであるから,測定時を特定していない「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである」「地盤注入材」とは,製造時には,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cm」でなくても,経時的に変化してこの範囲になり得る「地盤注入材」までも含むのか不明である。
したがって,請求項1の「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである」「地盤注入材」は明確でなく,請求項1の特許を受けようとする発明が明確でない。
よって,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく,この出願は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

2 特許法第29条第1項第3号について
上記1で述べたように,本願の特許請求の範囲の記載は明確であるとはいえないが,請求項1の「地盤注入材」が製造時には,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmであること」との範囲を満たさなくても,経時的にスランプ値,フロー値が減少して,この範囲を満たすものも含むと解する余地があるので,特許請求の範囲の記載を,いずれかの時点では,「スランプ(cm)が4?26cmであり、フロー(cm)が13?30cmである」状態の「地盤注入材」であると解し,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)を,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認めて,以下,判断する。

(1)刊行物に記載された事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。
(1a)「この発明は、地盤などに注入される急結性グラウト材に関するものである。」(第1頁左下欄第13?14行)
(1b)「従来,このような条件を満足するフライアッシュを使用した急結性グラウト材としては、表Iに示すものが知られている。但し、この表中の配合割合の欄において、”FA”はフライアッシュ、”PC”はポルトランドセメント、”Be”はベントナイト、”WG”は水ガラスを示す。
・・・

この表の物性の欄において、”流”、”ゲ”、”1h”、”1d”は、それぞれ急結性グラウト材として必要な条件を示すものであって、”流”は水ガラス添加前のスラリーの流動性がP-ロートで20秒以下であること、”ゲ”はゲルタイムが20秒以下であること、”1h”は、1時間で1?2kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現すること、”1d”は1日で、8kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現することを示している。・・・
この表1によると、急結性グラウト材として必要な物性を全て満足する配合割合は、D-21およびD-27で表されるものだけとなっている。」(第1頁右下欄第6行?第2頁左下欄第9行)
(1c)「D-21では、ゲルタイムを低下させるために消石灰を添加している・・・D-21では、単位面積当たりのフライアッシュ使用量が大きいため、グラウト材の密度が大きくなるが、グラウト材の密度が大きいと、注入後の土圧が大きくなり、周囲の地盤への影響が大きくなる問題もある。」(第2頁左下欄第11?19行)

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1には,「地盤などに注入される急結性グラウト材」(摘示1a参照)に関する従来技術として,表1に各種配合例が記載されている。当該表1には,配合No.D-21として,その配合割合が,フライアッシュ(FA)=970kg/m^(3),ポルトランドセメント(PC)=117kg/m^(3),水ガラス(WG)=70kg/m^(3),水=464kg/m^(3),及び消石灰=18kg/m^(3)であって,ゲルタイムが20秒以下であるものが記載されている(摘示1b参照)。
すると,刊行物1には,
「地盤などに注入される急結性グラウト材であって、
・フライアッシュ 970kg/m^(3)
・ポルトランドセメント 117kg/m^(3)
・水ガラス 70kg/m^(3)
・水 464kg/m^(3)
・消石灰 18kg/m^(3)
を配合し,ゲルタイムが20秒以下である急結性グラウト材。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・検討
ア 対比
本願発明と引用発明を対比する。
グラウト材を地盤に注入する際,あらかじめ地盤を削孔して注入することが一般的であるから,引用発明の「地盤などに注入される急結性グラウト材」は,本願発明の「地盤中に削孔した注入孔から注入材を注入する地盤注入材」に相当する。
また,引用発明の「フライアッシュ」,「ポルトランドセメント」,「水」は,それぞれ,本願発明の「フライアッシュ(F材)」,「カルシウム系粉状硬化発現材(C材)」,「水(W材)」に相当し,引用発明の配合割合によって,「硬化発現材比((C/F+C)×100)」,及び「水粉体比((W/F+C)×100)」を計算すると,それぞれ順に,10.8重量%,42.7重量%となる。

そうすると,本願発明と引用発明とは,
「地盤中に削孔した注入孔から注入材を注入する地盤注入材であって、注入材が時間とともに、固化し、
(1)フライアッシュ(F材)
(2)カルシウム系粉状硬化発現材(C材)
(3)水(W材)
の三成分を有効成分として含む地盤注入材において、硬化発現材比C/(F+C)×100(%)が1?40重量%であり、水粉体比W/(F+C)×100(%)が20?150重量%である地盤注入材。」である点で一致し,以下の点で,一応相違する。

相違点1:本願発明においては,有効成分として,さらに「水ガラス」と「消石灰」を含むことが特定されていないのに対して,引用発明はこれらを成分として含む点
相違点2:本願発明1においては,「スランプ(cm)が4?26cmであり,フロー(cm)が13?30cmである」のに対して,引用発明には,スランプとフローに関して特定されていない点
相違点3:本願発明は,「注入材が時間とともに、或いは脱水によって可塑状ゲルを経て固化」する「可塑性」地盤注入材であるのに対して,引用発明では,「ゲルタイムが20秒以下である」「急結性グラウト材」である点

イ 相違点についての検討
(ア)相違点1について
本願発明は,特許請求の範囲の記載では,地盤注入材に「(1)フライアッシュ…(2)カルシウム系粉状硬化発現材…(3)水(W材)の三成分を有効成分として含む。」としか記載されておらず,その他の成分の含有しない場合のみに限定されるものではない。
そして,「水ガラス」に関しては,本願明細書の段落【0043】に,「本発明におけるフライアッシュモルタル比の配合と流動特性の関係を示すと次のとおりである。
硬化発現材比 C/F+C×100(%) :・・・
水粉体比 W/F+C×100(%) :・・・
アルミニウム比 アルミニウム/F+C×100:・・・
水ガラス :シリカ分で0?7.0重量%」
と記載され,F材,C材,W材と別に,任意に水ガラスを含有し得ることが記載されている。
一方,「消石灰」についても,本願明細書の段落【0165】に,「消石灰はゲル化促進剤であり、セメントと同様フライアッシュと混ぜるとポラゾン反応を起す。ただしセメントほど固結強度は得られない。ここでは可塑状とするため、またその保持時間を有するためのゲル化促進剤として用いた。その範囲はセメント添加量にもよるが3?15%とする。」と記載され,任意に「消石灰」を含有し得ることが記載されているといえる。
また,本願明細書の段落【0163】,【0164】に,フライアッシュ,セメント,水とともに,水ガラス,消石灰が配合された配合例9?11も具体的に記載されている。
そうすると,本願発明には,特許請求の範囲の記載のみならず,発明の詳細な説明の記載を参酌しても,「水ガラス」,「消石灰」を包含する態様が含まれているといえる。
よって,相違点1,すなわち引用発明が「水ガラス」及び「消石灰」を含有することについては,実質的な相違点とはいえない。

(イ)相違点2について
本願明細書には,各成分の配合割合まで一致するものではないが,引用発明と同様に,フライアッシュ,セメント,水とともに,水ガラス,消石灰が配合された配合例9?11は,いずれも30分後のフロー値が15?22cmの値となることが記載されている(段落【0164】参照)。
そして,本願明細書の配合例11の物性値の一つであるゲル化時間をみると,17秒となっており,この値は,引用発明のゲルタイムが20秒以下であるという物性と一致しているものと解される。
また,配合例11では5分後のフロー値が16cmであるから,ゲル化する前にはこれよりやや高い値となっていることは明らかであり,配合例10では,ゲル化時間1800秒(30分)であるときのフロー値が20cmとなっていることからすると,ゲル化したときのフロー値は20cmであると解され,ゲル化前の段階にある引用発明は,20cmからやや高い範囲のフロー値をもつと推認することができる。
さらに,上記1でも指摘したとおり,本願発明の「可塑性地盤注入材」のフローの値は経時的に減少するものであって,これは引用発明も同様であるから,引用発明がゲル化するものである以上,フロー値が20cmからその上の範囲(20?30cmの範囲)をとる時点が必ず存在するといえる。

引用発明のスランプの値については,刊行物1に記載されていないが,スランプ値は,高さ30cmのスランプコーンに生コンクリートを入れ,突棒で撹拌したあとでスランプコーンを垂直上に抜き取った場合のコンクリート頂部の高さが何cm下がったかを測定するものであるから,0?30cmの値にしかなり得ないものであり,スランプが4?26cmとの範囲は,ほぼ固化しているかきわめて高い流動性を示す範囲以外の,ほぼすべての流動性を示す範囲を含んでいると解される。
そして,スランプ値は,同じく流動性の指標であるフロー値と相関関係があると解されるから,フロー値がゲル化前からゲル化する範囲の流動性に対応する20?30cmの範囲をとる引用発明においては,同様のゲル化前からゲル化するまでの流動性を有する範囲を含むスランプ値4?26cmの範囲内にも含まれるものと推認することができる。
よって,相違点2も,実質的な相違点とはいえない。

(ウ)相違点3について
引用発明においても,「ゲルタイムが20秒以下」のものであるから,本願発明と同様に,「注入材が時間とともに、・・・ゲル」となっていることは明らかである。
また,上記(イ)で述べたように,ゲル化した時点では,フロー値が20cmであり,本願明細書の「このような配合液は混合すれば、水粉体比が小さければそのままで、水粉体比が大きい場合は地盤中で脱水することにより遅かれ早かれフローが15?25cmの可塑状ゲルになる。」との記載(段落【0073】参照)に照らせば,可塑状ゲルとなっていると推認できる。
してみると,引用発明は,刊行物1に明記されていないとしても,「注入材が時間とともに、可塑状ゲルを経て固化」するものということができる。
また,引用発明のグラウト材は,上記(イ)で述べたように,ゲル化する前の時点で,フロー値が20cmよりやや高い値になっており,上記本願明細書中の記載に照らせば,これも「可塑状」になっているものと推認できる。
よって,相違点3も実質的な相違点とはいえない。

(4)小括
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

第6 請求人の主張
審判合議体は,平成24年8月7日付けで通知した拒絶理由に対する同年10月12日付けの手続補正が適法であることを釈明するように,平成25年1月18日付けの審尋で求めたが,請求人は,平成25年3月29日付けの回答書において,この点について何ら回答することなく,新たな補正の機会を求める旨のみ述べている。
しかしながら,請求人は,平成24年8月7日付けで通知した拒絶理由に対して,補正の機会があったのに,適法な補正をしなかったものであり,また,上記手続補正が適法であることを意見書において釈明すべきところ,それをせず,さらに審尋でその釈明の機会を与えられたにもかかわらず,しなかったのであるから,これ以上,補正の機会を請求人に与える必要はない。
また,意見書における請求人の主張は,補正後の請求項1を前提としたものであるから,いずれも採用することができない。

第7 むすび
以上のとおり,本願の特許請求の範囲の記載は,請求項1の特許を受けようとする発明が明確でないから,特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく,本願は,特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
仮に,そうでないとしても,本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-31 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-21 
出願番号 特願2005-77208(P2005-77208)
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (C09K)
P 1 8・ 575- WZ (C09K)
P 1 8・ 537- WZ (C09K)
P 1 8・ 113- WZ (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 宏樹中島 庸子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 武重 竜男
木村 敏康
発明の名称 可塑性注入材および地盤強化方法  
代理人 染谷 仁  

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