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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A44C
管理番号 1280913
審判番号 無効2013-800035  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-28 
確定日 2013-10-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第3952250号発明「装身具用連結具」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3952250号は、平成12年11月17日(優先日 平成11年11月17日)に出願された特願2000-351903号に係り、平成19年5月11日にその請求項1?7に係る発明について特許権の設定登録が行われた。
本件無効審判は、平成25年2月28日に、無効審判請求人 LAXMI株式会社(以下、「請求人」という。)により、「本件特許第3952250号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める」として請求がなされたものであって、本件審判の手続の概要は以下のとおりである。

平成25年 2月28日 本件無効審判請求
平成25年 5月29日 答弁書
平成25年 8月14日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成25年 8月15日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成25年 8月29日 口頭審理

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「請求項1?7に係る発明」を「本件発明1?7」という。)。
「【請求項1】
先端に先細状の頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端にはネックレスなどの装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口された蓋体と、上面が開口された底体を、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより幅方向に軸支すると共に、内部には閉方向に付勢するばね部材を配設して開閉可能に形成される中空箱型からなり、前記蓋体の長手方向の一側には前記オス金具の挿入部と、前記底体の長手方向の一側には前記オス金具の係止凹部を形成し、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えたメス金具とから構成されることを特徴とする装身具用連結具。
【請求項2】
先端に先細状の頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口された蓋体と、上面が開口された底体を、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより幅方向に軸支すると共に、内部には閉方向に付勢するばね部材を配設して開閉可能に形成される中空箱型からなり、前記蓋体の長手方向の一側には前記オス金具の第一係止凹部と、前記底体の長手方向の一側には前記オス金具の第二係止凹部を形成し、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えたメス金具とから構成されることを特徴とする装身具用連結具。
【請求項3】
前記メス金具は、前記蓋体あるいは前記底体のいずれか一方の内底面から並行に突設される軸支壁部と前記蓋体あるいは前記底体のいずれか一方の両側壁部を前記支持ピンにより幅方向に軸支することで中空箱型を形成するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載された装身具用連結具。
【請求項4】
前記メス金具の前記挿入部の内側には、前記オス金具を支持する案内部が連設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載された装身具用連結具。
【請求項5】
先端に先細状の頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端には装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口され、内底面から並行に突設される軸支壁部と、長手方向一側には前記オス金具の挿入部を形成し、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えた蓋体に、長手方向一側に前記オス金具の係止凹部を形成した係止レバーを、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより、閉方向に付勢するばね部材を配設して前記蓋体の軸支壁部に軸支し、該係止レバーは前記蓋体内で枢動可能に取付けられているメス金具とから構成されることを特徴とする装身具用連結具。
【請求項6】
前記オス金具は、先端に薄幅の頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を複数備えた大径の棒体あるいは板体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の装身具用連結具。
【請求項7】
前記メス金具の前記蓋体及び底体における前記挿入部及び係止凹部は、前記支持ピンによる軸支方向と並行する位置に形成されていることを特徴とするとする請求項1乃至請求項6に記載の装身具用連結具。」

第3 請求人の主張
請求人は「本件特許第3952250号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める」ことを請求の趣旨とし、証拠方法として甲第1号証、甲第2号証を提出し、次の無効理由を主張する。

1 無効理由
本件発明1?7は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
甲第1号証:特開平9-182609号公報
甲第2号証:特開平11-266912号公報

第4 被請求人の主張
被請求人は「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める」ことを答弁の趣旨とし、次のとおり主張する。

本件発明1?7は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 当審の判断
1 刊行物
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開平9-182609号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ネックレス、ブレスレット、アンクレット等の環状装身具における留め金具に関するものである。」

イ 「【0008】本発明は上記問題点を解消するために創作されたもので、高使用頻度に耐えるコイルバネを使用した、部材点数が少なく安価に製作でき、また、部材の組み込み方法が簡単で、小型化が可能な環上装身具の留め金具を提供することを目的としている。」

ウ 「【0018】
【発明の実施の形態】本発明に係る留め金具の実施例を図面に基づいて説明する。
「請求項2に対応の形態の説明」図1は本発明に係る留め金具の第1の形態の正面図、図2は係止具が係止された状態での図1におけるA-A断面図である。図示するように留め金具1は、留め金具本体2と係止具3からなり、多数の珠玉を綴り通した連珠玉糸の両端部にそれぞれ連結してある。
【0019】上記係止具3は丸棒形状をなし、その先方に後記する係止部材6の係止部6cに係脱可能な係止溝3aを円周に沿って形成してある。この係止具3の先端部は後記する受入れ部材5に挿入しやすいように球面形状に形成してあり、他端部には取付環3bが突設され上記連珠玉糸の端部に取り付けた丸環と連結してある。
【0020】一方、留め金具本体2は以下の部材から構成されている。符号4は後記する各部材を収容するためのケースの一方であるケース本体であり、その内部は中空状に形成してある。また、ケース本体4の一側面部に設けた取付環4aを介して上記連珠玉糸の端部に取り付けた丸環と連結できるようにしてある。このケース本体4の他側面部には、係止具3の挿脱を可能にする挿入孔4bが形成されており、上側面部には後記の係脱押釦6bを挿入できるようにその形状に合わせて切欠4cが施されている。このケース本体4内には、係止具3を導入案内する受入れ部材5と、この受入れ部材5に係合して設けられ、係止具3の係止溝3aに係脱する係止部材6と、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7が収容されている。
【0021】受入れ部材5は、係止具3の挿脱が可能なように円筒形状に形成されており、ケース本体4の挿入孔4bに接続するようにケース本体4に収容されている。この受入れ部材5は図2、図3に示すように上下動する係止部材6の略U字形板6aをその内側面が案内されるように受入れ部材5の外周の両側部に平坦面5aが形成されているとともに、その平坦面5aの終端部の下側には係止部材6の係止部6cが受入れ部材5内部に突出するように切欠5bが形成されている。
【0022】係止部材6は、作動体としての略U字形板6aと、その上部に設けられたケース本体4の表面から突出する態様の係脱押釦6bとからなり、略U字形板6a内側の底部を係止具3の係止溝3aに係脱可能な係止部6cとしている。略U字形板6aと係脱押釦6bはロー付け等で固着されている。また、係脱押釦6bはコイルバネ7を収容できるように中空状に形成されている。
【0023】次に、ケース本体4と受入れ部材5と係止部材6の位置関係は以下のようになっている。係脱押釦6bを押圧し、係止部材6の係止部6cの下端が本体ケース4の下面に当接したときに、係止部6c上端が切欠5bからはずれないように配置されている。つまり、係脱押釦6bを押しきったとき、係止部6cの上端部が受入れ部材5の肉厚部範囲内に位置することになるわけである。(図2の仮想線に示す。)
なお、係止部材が受入れ部材に当接したときに、係止部の上端が受入れ部材の肉厚範囲内に位置する構造の態様としては、後記する図5に示される留め金具で実現される。
【0024】したがって、通常はコイルバネ7の弾性力で係止部材6を押し上げて、その係止部6cが受入れ部材5の切欠5bに嵌入した状態で規制され、受入れ部材5内に突出した状態にある。また、係止部材6に押し下げ力が作用すると、コイルバネ7の弾性力に抗して略U字形板6aが下がり、係止部6cが受入れ部材5の切欠5bから下降する。
【0025】この留め金具本体2の組立順序は以下の通りである。(図3参照)
▼1▲コイルバネ7を係止部材6の係脱押釦6b内部に挿入する。
▼2▲コイルバネ7を圧縮させて係止部材6を受入れ部材5に、平坦面5aが形成されている側から通し、平坦面5aの終了部まで嵌着させる。平坦面5aの終了部まで来ると、係止部材6の係止部6cがコイルバネ7の弾性力により切欠5bに嵌合し、受入れ部材5内部に突出する。
▼3▲一体となった上記部材をケース本体4に嵌着させる。従来は、受入れ部材とコイル収容部材を指先又はピンセットで圧接挟持しながら嵌着させていたので、互いに外れやすく作業が極めて困難であったのに対し、本構造によれば簡単に嵌着が可能となり作業効率が飛躍的に向上する。またケース本体4の長手方向における内寸法は受入れ部材5を適宣嵌合させうる寸法であり、また、ケース本体4の両内側面部(挿入孔4bと取付環4aが形成されている面)の幅寸法は受入れ部材5の両切り口面を位置決めさせるような寸法となっているので、受入れ部材5はケース本体4内部で振れることがない。
▼4▲ケース蓋8をケース本体4と嵌合させる。ケース蓋8には、係脱押釦6bおよび受入れ部材5の緩衝を防ぐために切欠が設けられている。なお、ケース本体4とケース蓋8との嵌合方法は、それぞれに幾つかの凹凸状ダボ加工を施した嵌合方法等が用いられる。」(「▼1▲」は丸付き数字1、「▼2▲」は丸付き数字2、「▼3▲」は丸付き数字3、「▼4▲」は丸付き数字4。)

以上のア?ウの記載及び【図1】?【図3】から、甲第1号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。

「先端に頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係止溝3aを設け、後端にはネックレスなどの環状装身具との取付環3bを備えた棒状の係止具3と、一方の面が開口されたケース本体4と、他方の面が開口されたケース蓋8を嵌合すると共に、内部には、係止具3を導入案内する受入れ部材5と、この受入れ部材5に係合して設けられ、係止具3の案内方向と交差する方向に摺動して、係止具3の係止溝3aに係脱可能な係止部6cを有する係止部材6と、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7が収容される中空箱型からなり、前記ケース本体4の他側面部には前記係止具3の挿入孔4bと、一側面部にはネックレスなど装身具との取付環4aを備えた留め金具本体2とから構成される留め金具1。」

(2)甲第2号証
甲第2号証(特開平11-266912号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腕時計バンドやブレスレット等の装身具の中留構造に関する。」

イ 「【0031】本発明による腕時計バンド用の中留機構1は、一方のバンド9が挿通される本体部2と、該本体部2と他方のバンド10との間に連結され、本体部2に対して折り畳み可能な折り畳み部5とを備える。そして、該折り畳み部5が本体部2に対して折り畳まれた状態で、折り畳部5と本体部2との施錠と解錠とを行うロック機構3とを備えて大略構成される。
【0032】図2に示すように、本体部2は枠体20を有する。該枠体20は、底板21の両側に、バンドの幅方向に対向する一対の側壁22が一体に立設されて成る。故に、バンドの幅方向に沿った枠体20の断面は、略コ字形状とされる。また、底板21の表側を向く面、すなわち、図2における上を向く底面に、2つの凸部21aがバンドの幅方向に沿って並列して突設される。かかる凸部21aは、後述で明らかになるように、一方のバンド9の裏面に凹設した複数の溝9aに咬合して、本体部2に対する一方のバンド9の位置決めを行う。また、一対の側壁22それぞれに、窓孔23、係止孔24、および連結孔25それぞれが対向して穿設される。さらに図3においても明示されるように、一対の側壁22の内壁それぞれには、半球状の窪みである凹部26が対向して凹設される。
【0033】押さえ板4は、撥ね上げ手段を担うバネ板40と、一方のバンド9を押圧固定する押圧板43を、バンドの表裏方向に沿って重ねて構成される。バネ板40は、挿入部40Aと板バネ41を備える。挿入部40Aは、バンドの長手方向の一端を表側に折り曲げて形成される。板バネ41は、バンドの幅方向に沿って板40に穿設される2条のスリットの間の部分を、表側に湾曲して形成される。結果、板バネ41は、板40より半円状に突出されて表裏方向に弾性的に撓む。さらに、板40は、バンド幅方向に沿って互いに逆向きに突出する一対の係止突起42を備える。また、押圧板43は、上記したバネ板40と平面視でほぼ同一形状を有する板である。バネ板40と同じく、表側に折り曲げて形成した挿入部43Aと、一対の係止突起44を一体に備える。
【0034】バネ板40の裏側に押圧板43が重ねられる。バネ板40の一対の係止突起42と、押圧板43の一対の係止突起44も、表裏方向に沿って重なる。かかる係止突起42、43それぞれが、枠体20の一対の係止孔24に挿入される。係止突起42、43は、係止孔24の内部を表裏方向に沿って移動可能とされる。かくして、押さえ板4は、バンド厚み方向に沿って移動可能に枠体20に配置される。押さえ板4と枠体20の底板21との間には、一方のバンド9が押さえ板4を表側に押し上げつつ挿通可能な空間が形成される。係止突起42、43を係止孔24から抜脱すれば、押さえ板4は、枠体20より容易に取り外すことができる。押圧板43を取り付けたままに、バネ板40のみを取り外すこともできる。
【0035】一方、図1、および図5に示すように、畳み可能な折り畳み部5は、表カバー8、中板6、および外板7とより成る。外板7におけるバンド長手方向に沿った一端寄りに、表裏方向に沿って裏側に屈曲した屈曲部74が形成される。かかる屈曲部74から外板7の一端までの間に、一方のバンド9を押圧する手段である押圧部70が備えられる。また、押圧部70における外板7の一端寄りに、両端に段部14aを設けた連結ピン14を挿通する挿通部73が一体に形成される。連結ピン14を挿通部73にバンド幅方向に沿って挿通した状態で、枠体20の側壁22間に押圧部70を押し込み、段部14aそれぞれを連結孔25それぞれに嵌合させる。よって、外板7が枠体20に回動自在に取り付けられる。ことき、押圧部70は押さえ板4の表側に位置する。
【0036】挿通部73の先端は、外板7よりほぼ垂直に裏面に向けて突出する係止突起72を備える。外板7の回動と共に、係止突起72は連結ピン14を回転軸として回動する。そして、回動する係止突起72は、押さえ板4の表側の面に当接し、押さえ板4を裏側方向に移動させ得る。
【0037】中板6と外板7は、それぞれの他端に設けた連結部を連結ピン11により連結することにより、互いに回動自在に連結される。また、中板6の一端に、バンド幅方向に対向する一対の連結部61が形成される。表カバー8の連結部81が連結部61間に配置され、連結軸であるバネ棒12がバンド幅方向に沿って連結部81、61を連通する。よって、表カバー8と中板6がバネ棒12を回転軸として回動自在に連結される。このとき、バネ棒12の両端に配置されるピボット部12aが、中板6の連結部61よりバンド幅方向に沿って突出する。ピボット部12aは、バネ棒12内部に収納されたスプリングコイルによって、バネ棒12より弾性的に出没する。
【0038】図2に示すように、表カバー8の裏面に、裏側方向に向けて突出する略T字形状を成すフック部80が備えられる。フック部80の先端には、バンド幅方向に沿って互いに逆向きに突出する係止部80aが形成される。係止部80aの先端には、フック部80の先端に向かうにつれて幅が狭くなるように形成された傾斜面80bが備えられる。かかるフック部80は、後述の中留機構30と係脱可能に係合し、施錠と解錠を繰り返すロック機構3の一部を構成する。
【0039】また、中板6の連結部61に近接して、中板6の縁辺より表側に立ち上がり、バンド幅方向に対向する一対の連結片62が中板6に形成される。他方のバンド10の一端を連結片62の間に配置し、連結片62それぞれに穿設された連結孔63と、他方のバンド10の連結孔10aに連結ピン13を連通させる。よって、折り畳み部5の中板6と他方のバンド10が回動自在に連結される。
【0040】図1乃至図3に示すように、ロック機構3は、本体部2に設けた中留機構30と、折り畳部5の一端に設けた表カバー8のフック部80との施錠と解錠をする機構である。中留機構30は、一対のプッシュボタン35、該プッシュボタン35を付勢する弾性手段である一対のスプリング19、および該プッシュボタン35とスプリング19を収納する収納部材であるガイドハウジング31を備える。ガイドハウジング31は、枠体20の一対の窓孔23に臨んで開口し、バンド幅方向に貫通する略矩形の箱体である。ガイドハウジング31は表裏方向に貫通される孔を備える。かかる孔の開口が、フック挿通孔31a、31bとして図示される。」

ウ 「【0043】以上のように構成された本発明による腕時計バンド用の中留構造の使用方法について、図3乃至図7を用いて説明する。
(操作1)まず、図5に示すように、外板7を図中矢印ホ方向に回動させる。すると、係止突起72の先端は押さえ板4より離間し、押さえ板4の表裏方向の移動が許される。次いで、一方のバンド9の先端部を押さえ板4の挿入部43Aに案内させながら、枠体20の底板21と押さえ板4の間に差し込む。一方のバンド9の通過により、押さえ板4は表側に押し上げられる。一方のバンド9に形成された複数の溝9aの中から、使用者の手首の太さに適する適宜な溝を選択し、凸部21aと咬合させる。よって、枠体20に対する一方のバンド9の位置決めが成される。
【0044】(操作2)ここで、連結ピン14を支軸として、テコのように外板7を矢印イ方向に回動させる。すると、図6に見るように、押圧部70の係止突起72がガイドハウジング31に当接する。詳しくは、係止突起72における、ガイドハウジング31寄りの側面部71がガイドハウジング31に当接する。よって外板7の回動が停止する。かかる外板7の停止位置において、係止突起72の先端は、表裏方向に沿って底板21に向けて沈めるように、押さえ板4を押圧する。よって、押さえ板4を介して、一方のバンド9がバンド厚み方向に押圧される。かくして、一方のバンド9が枠体20に押圧固定される。
【0045】外板7は、連結ピン14の回転中心から押圧部70の外端までの半径が連結ピン14の回転中心から側壁33までの距離と同寸か寸小の範囲で回動可能となり、寸大部は、回動が規制される。外板7の停止位置において、係止突起72は、押さえ板4の表側の面に対してほぼ垂直となるように位置する。これは、係止突起72の描く回動軌跡の中で、押さえ板4を最も強く押圧する位置である。すなわち、かかる外板7の停止位置において、一方のバンド9は枠体20に最も堅固に押圧固定される。
【0046】また、このとき、係止突起72が押さえ板4と一方のバンド9から離間する位置に向かう2方向の回動、すなわち、図5における矢印イ方向とホ方向の回動のうち、イ方向への外板7の回動は、中留機構30との当接により完全に止められる。よって、停止位置より外れる外板7の回動は、ホ方向のみの限定される。これは、外板7の不用意な回動に起因して、一方のバンド9の押圧固定が解除され、一方のバンド9が枠体20より抜脱する危険性を半減する。また、外板7の不用意な回動を規制するに、係止突起72を中留機構30に当接させたので、従来に比べて加工負荷が削減されると同時に、外板7本体には傷や変形を発生させない利点がある。さらに、係止突起72はガイドハウジング31に当接するため、プッシュボタン35の滑動を決して妨げない。
【0047】(操作3)次に、図6に示すように、中板6を連結ピン11を支軸に矢印ロ方向に折り畳むように回動させる。すると、バネ棒12のピボット部12aが、枠体20の一対の側壁22の内壁によって、バネ棒12内部に没入される。そして、ピボット部12aが凹部26に位置した時、バネ棒12内部に収められた弾性手段(スプリングコイル)の付勢により、ピボット部12aは凹部26内に突出する。よって、ピボット部12aと凹部26とが嵌合されて、図1及び図7に示す状態となる。もちろん、凹部26は、側壁22を貫通する孔であっても良い。
【0048】このように、連結軸であるバネ棒12を枠体20に弾性的に係合させたので、少ない部品点数で板6、7を枠体20に係合させることができる。かつ、中板6と外板7を枠体20に折り畳んだ状態に維持するために、板6、7を強く押さえ込む必要が無い。これは、折り畳み部5を折り畳む操作を容易にする。また、折り畳み部5に備えられる連結軸を係合させたので、折り畳み部5が傷ついたり、変形することが無い。
【0049】(操作4)次に、折り畳み部5とロック機構3との施錠と解錠の方法を述べる。図7に示すように表カバー8は、バネ棒12を支軸にして、矢印ハ方向に回動させる。図4(a)に示すように、フック部80は、ガイドハウジング31のフック挿通孔31aに挿通され、一対の傾斜面80bが互いに対向する一対の案内傾斜面37aに当接して係合突起37を外方へ押し開く。さらに表カバー8を回動させると、フック部80が案内傾斜面37aを通過し、フック挿通孔31bから突出する。そして図4(b)及び図3(a)に示すようにプッシュボタン35は、スプリング19に付勢により戻ったフック部80の係合部80aと係合突起37は互いに係合する。よって、図7に示すように折り畳部5とロック機構3とは施錠され、錠止が完了する。」

以上のア?ウの記載及び【図1】?【図7】から、甲第2号証には、次の発明が記載されている(以下、「甲2発明」という。)。

「腕時計バンドやブレスレット等の装身具の中留構造であって、一方のバンドが挿通される本体部2と、本体部2に設けられたロック機構3と、本体部2と他方のバンド10との間に連結され、本体部に対して折り畳み可能な折り畳み部5とを備える中留機構1において、折り畳み部5が、表カバー8、中板6、外板7とより成り、中板6と外板7とが連結ピン11で回動自在に連結され、中板6と表カバー8とが、バネ棒12を回転軸として回動自在に連結され、表カバー8の裏面にフック部80が備えられ、フック部80は、本体部2に設けた中留機構30と係脱可能に係合してロック機構3を構成し、バネ棒12は、バネ棒12の両端に配置されるピボット部12aが、バネ棒12内部に収納されたスプリングコイルによって、バネ棒12より弾性的に突出するよう構成され、また、本体部2は枠体20を有し、枠体20は底板21と側壁22とを有し、上記折り畳み部5が折り畳まれた時、バネ棒12のピボット部12aが、側壁22の凹部26と嵌合され、中板6と外板7とを枠体20に係合させるとともに、枠体20の底板21には2つの凸部21aがバンドの幅方向に沿って並列に突設され、該凸部21aは、バンド9の裏面に凹設された複数の溝9aに咬合され、本体部2に設けられた押さえ板4が、上記折り畳み部5が折り畳まれた時、外板7の押圧部70の係止突起72により押さえ板4を介してバンド9が底板21方向に押圧されて、バンド9と枠体20とを堅固に押圧固定する、中留機構1。」

2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「係止溝3a」は、その構造または機能からみて、本件発明1の「係合溝部」に相当し、以下同様に、「ネックレスなどの環状装身具」は「ネックレスなどの装身具」に、「取付環3b」は「接続環部」に、「一方の面が開口されたケース本体4」は「下面が開口された蓋体」に、「他方の面が開口されたケース蓋8」は「上面が開口された底体」に、「ケース本体4の他側面部」は「蓋体の長手方向の一側」に、「係止具3の挿入孔4b」は「オス金具の挿入部」に、「一側面部」は「後端」に、「取付環4a」は「接続環部」に、「留め金具本体2」は「メス金具」に、「留め金具1」は「装身具用連結具」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「棒状の係止具3」は、本件発明1の「棒体あるいは板体からなるオス金具」を充足するものである。
してみると、両者は、
「先端に頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端にはネックレスなどの装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口された蓋体と、上面が開口された底体から形成される中空箱型からなり、蓋体の長手方向の一側にはオス金具の挿入部を形成し、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えたメス金具とから構成される装身具用連結具。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
オス金具の先端に形成される頭部が、本件発明1は先細状であるのに対し、甲1発明はそのような構成を有さない点。

(相違点2)
オス金具の係合溝部と係合する係止構造が、本件発明1は、蓋体と底体とを、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより幅方向に軸支すると共に、内部には閉方向に付勢するばね部材を配設して開閉可能に形成され、底体の長手方向の一側にはオス金具の係止凹部を形成して、オス金具との係止構造が形成されているのに対し、甲1発明は、ケース本体4(蓋体)とケース蓋8(底体)とが嵌合され、その内部に係止具3(オス金具)を導入案内する受入れ部材5と、この受入れ部材5に係合して設けられ、係止具3の案内方向と交差する方向に摺動して、係止具3の係止溝3a(係合溝部)に係脱可能な係止部6cを有する係止部材6と、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7が収容されて、係止具3(オス金具)との係止構造が形成されている点。

(2)判断
ア 相違点1について
甲1発明の係止具3もケース本体4に形成された挿入孔4bに係止具3の頭部を挿入して、係止具3と留め金具本体2とを係止させるものであり、その挿入孔4bへの係止具3の挿入が容易になされるようすべく、係止具3の頭部の先端を先細状とする程度のことは当業者が容易に想到し得ることにすぎない。

イ 相違点2について
甲1発明における、係止具3の係止構造は、ケース本体4とケース蓋8とは別部材である係止部材6が、ケース本体4とケース蓋8とが嵌合して構成される留め金具本体2内部に、係止具3の案内方向と交差する方向に摺動摺動するよう設けられ、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7の付勢力によって、係止部材6の係止部6cが係止具3の係止溝3aに嵌合して係止されるものであり、本件発明1と甲1発明とでは、係合溝部に係合する部材が、メス金具本体を構成する部材であるか、それとは別部材であるかという点、またその動作が、摺動か回動かという点で相違しており、さらに、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とは嵌合固定されているのであって、これらが相互に可動となることは想定されておらず、本件発明1のように、蓋体と底体とを開閉可能に軸支し、底体にオス金具の係止凹部を形成して係止部とすることは記載も示唆もされていない。
また、甲2発明は、上記のように、折り畳み部5を有する腕時計バンドやブレスレット等の装身具の中留機構であり、この折り畳み部5を構成する、表カバー8、中板6、外板7と、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とは、その機能も形状も全く異なるものであり、また、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とは嵌合されているのであるから、甲2発明の表カバー8と中板6と外板7とが、相互に連結ピン11やバネ棒12で回動自在に連結されているからといって、甲1発明のケース本体4とケース蓋8との連結構造に、甲2発明を適用させる余地はない。
したがって、甲2発明が、腕時計バンドやブレスレット等の装身具の中留機構の、折り畳み部5を構成する、表カバー8と中板6と外板7とが回動可能に軸支される構成を有していたとしても、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とを開閉可能に軸支させること、さらには、そのケース蓋8にオス金具の係止凹部を形成して係止部として用いることまでは、たとえ当業者といえども、甲1発明及び甲2発明から容易に想到し得るものとはいえない。

また、甲第2号証に記載されてるような「ばね部材(スプリングコイル)を装填した筒部(バネ棒12)の両端に係止部(ピボット部12a)を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピン(バネ棒12)」が、たとえ本件優先日前に公知であったとしても、上記のように、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とは嵌合されているのであって、開閉可能に軸支されるものではないから、甲1発明に甲第2号証に記載されたようなバネ棒12を適用することは困難である。

審判請求人は、「支持ピンを軸支させて開閉可能とする構成は周知の技術」と主張するが、甲1発明のような装身用連結具のケース本体4(蓋体)とケース蓋8(底体)とが、支持ピンを軸支させて開閉可能とすることまで周知の技術であるとは、請求人の提出する証拠からは認められず、また、たとえ「支持ピンを軸支させて開閉可能とする構成は周知の技術」であったとしても、上記のように、甲1発明のケース本体4とケース蓋8とは嵌合固定されており開閉可能な構成とすることは想定されていないのであるから、甲1発明に請求人の主張する周知の技術を適用する必要性も動機付けも認められない。

そして、本件発明1は、上記相違点2に係る本件発明1の構成により、メス金具の底面を指で押圧するだけで、オス金具を離脱でき、双方の着脱が、従来の連結具に比し、非常に容易となり、又、複雑な多数の部品を要しないので、組み立てが簡単で、コスト的にも低価格であり、さらに、支持ピンを外すことで、蓋体と底体の交換ができ、修理なども容易となるという、本件明細書に記載された(段落【0061】参照。)格別な効果を奏するものである。

(3)小括
よって、本件発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
本件発明2と甲1発明とは、上記2(1)の本件発明1と甲1発明と同様の相当関係を有するから、両者は、
「先端に頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端にはネックレスなどの装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口された蓋体と、上面が開口された底体から形成される中空箱型からなり、蓋体の後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えたメス金具とから構成される装身具用連結具。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)
オス金具の先端に形成される頭部が、本件発明2は先細状であるのに対し、甲1発明はそのような構成を有さない点。

(相違点4)
オス金具の係合溝部と係合する係止構造が、本件発明2は、蓋体と底体とを、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより幅方向に軸支すると共に、内部には閉方向に付勢するばね部材を配設して開閉可能に形成され、蓋体の長手方向の一側にはオス金具の第一係止凹部を形成し、底体の長手方向の一側にはオス金具の第二係止凹部を形成して、オス金具との係止構造が形成されているのに対し、甲1発明は、ケース本体4(蓋体)とケース蓋8(底体)とは嵌合され、その内部に係止具3(オス金具)を導入案内する受入れ部材5と、この受入れ部材5に係合して設けられ、係止具3の案内方向と交差する方向に摺動して、係止具3の係止溝3a(係合溝部)に係脱可能な係止部6cを有する係止部材6と、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7が収容されて、係止具3(オス金具)との係止構造が形成されている点。

(2)判断
ア 相違点3について
相違点3は、上記2(1)の相違点1と実質的に同一であり、上記2(2)で判断したとおり、相違点3に係る本件発明2の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

イ 相違点4について
相違点4は、上記2(1)の相違点2に加え、本件発明2が、蓋体の長手方向の一側にはオス金具の第一係止凹部を形成する点でも甲1発明と相違している。
そして、上記2(2)で検討したとおり、相違点2に係る本件発明1の構成が、甲1発明及び甲2発明並びに周知の技術から容易に想到し得るものとはいえないから、相違点2を全て含み、さらに他の相違点を有する相違点4に係る本件発明2の構成は、甲1発明及び甲2発明並びに周知の技術から容易に想到し得るものとはいえない。

(3)小括
よって、本件発明2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲1発明とを対比する。
本件発明5と甲1発明とは、上記2(1)の本件発明1と甲1発明と同様の相当関係を有する。
また、甲1発明の「係止部材6」と本件発明5の「係止レバー」とは、「蓋体(ケース本体4)内に可動に取付けられた係止部材」という限りにおいて一致している。
さらに、甲1発明の「係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7」と本件発明5の「閉方向に付勢するばね部材」とは、「係合溝部に係止する方向に付勢するばね部材」という限りにおいて一致している。
したがって、両者は、
「先端に頭部を形成し、該頭部の後方における周面には係合溝部を設け、後端には装身具との接続環部を備えた棒体あるいは板体からなるオス金具と、下面が開口され、長手方向一側にはオス金具の挿入部を形成し、後端にはネックレスなど装身具との接続環部を備えた蓋体に、係合溝部に係止する方向に付勢するばね部材を配設し、蓋体内に係止部材が可動に取付けられたメス金具とから構成される装身具用連結具。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点5)
オス金具の先端に形成される頭部が、本件発明5は先細状であるのに対し、甲1発明はそのような構成を有さない点。

(相違点6)
オス金具の係合溝部と係合する係止構造が、本件発明5は、蓋体の内底面から並行に突設される軸支壁部が形成され、長手方向一側に前記オス金具の係止凹部を形成した係止レバーを、ばね部材を装填した筒部の両端に係止部を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピンにより、閉方向に付勢するばね部材を配設して蓋体の軸支壁部に軸支し、係止レバーは蓋体内で枢動可能に取付けられて、オス金具との係止構造が形成されているのに対し、甲1発明は、ケース本体4(蓋体)とケース蓋8(底体)とが嵌合され、その内部に係止具3(オス金具)を導入案内する受入れ部材5と、この受入れ部材5に係合して設けられ、係止具3の案内方向と交差する方向に摺動して、係止具3の係止溝3a(係合溝部)に係脱可能な係止部6cを有する係止部材6と、係止部材6を常時上方に付勢するコイルバネ7が収容されて、係止具3(オス金具)との係止構造が形成されている点。

(2)判断
ア 相違点5について
相違点5は、上記2(1)の相違点1と実質的に同一であり、上記2(2)で判断したとおり、相違点5に係る本件発明5の構成は、当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。

イ 相違点6について
甲1発明における、係止部材6は、ケース本体4とケース蓋8とが嵌合して構成される留め金具本体2内部に摺動するよう設けられており、蓋体の内底面から並行に突設される軸支壁部に伸縮可能に形成した支持ピンにより軸支される本件発明5の係止レバーとは、支持形態も相違し、またその動作形態、すなわち、摺動か回動かでも相違している。
甲2発明は、腕時計バンドやブレスレット等の装身具の中留構造において、本体部2の枠体20に突設された凸部21aと、バンド9の裏面に凹設された複数の溝9aとの咬合を、軸支された外板7が回動することで、その押圧部70の係止突起72が押さえ板4を介してバンド9を押圧してバンド9と枠体20とを堅固に押圧固定する構成を有するが、甲1発明と甲2発明との係止機構は全く相違しており、甲1発明と甲2発明とに接した当業者といえども、甲1発明の係止部材6を回動するよう軸支する構成、また、その支持構造を蓋体の内底面から並行に突設される軸支壁部に伸縮可能に形成した支持ピンにより軸支させることが容易に想到し得るものとはいえない。

甲第2号証に記載されてるような「ばね部材(スプリングコイル)を装填した筒部(バネ棒12)の両端に係止部(ピボット部12a)を有した可動軸を取り付けて伸縮可能に形成した支持ピン(バネ棒12)」が、たとえ本件優先日前に公知であり、また、請求人が主張するような「支持ピンを軸支させて開閉可能とする構成は周知の技術」であったとしても、上記のように、甲1発明と甲2発明との係止機構は全く相違しており、甲1発明に甲第2号証に記載されたようなバネ棒を適用することは困難である。

そして、本件発明5は、上記相違点6に係る本件発明5の構成により、メス金具の底面を指で押圧するだけで、オス金具を離脱でき、双方の着脱が、従来の連結具に比し、非常に容易となり、又、複雑な多数の部品を要しないので、組み立てが簡単で、コスト的にも低価格であり、さらに、支持ピンを外すことで、修理なども容易となるという、本件明細書に記載された(段落【0061】参照。)格別な効果を奏するものである。
加えて、段落【0053】に記載されているように、「メス金具が中空箱型を構成しないため、メス金具の形状に制約がなくなる。したがって、種々の装飾的な形状をメス金具に採用することもでき、美的効果に優れた連結具が提供できる」効果も奏する。

(3)小括
よって、本件発明5は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5 本件発明3、4、6、7について
本件発明3、4は、本件発明1または本件発明2のいずれかの発明特定事項のすべてをその構成の一部とし、本件発明6、7は、本件発明1、本件発明2または本件発明5のいずれかの発明特定事項の全てをその構成の一部とするものであるから、上記2?4の理由と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては本件発明1?7についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-02 
結審通知日 2013-09-04 
審決日 2013-09-18 
出願番号 特願2000-351903(P2000-351903)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之  
特許庁審判長 山口 直
特許庁審判官 原 泰造
小関 峰夫
登録日 2007-05-11 
登録番号 特許第3952250号(P3952250)
発明の名称 装身具用連結具  
代理人 伊丹 勝  
代理人 磯野 富彦  
代理人 丸山 真幸  
代理人 佐藤 雄哉  

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