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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09C
管理番号 1280931
審判番号 不服2012-17302  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-05 
確定日 2013-10-31 
事件の表示 特願2005-378802「金属酸化物誘導体、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月12日出願公開、特開2007-177137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
この出願は、平成17年12月28日の出願であって、平成23年7月12日付けの拒絶理由通知に対して平成23年9月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成24年5月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、当審において平成25年1月18日付けで審尋がされ、平成25年3月14日に回答書が提出されたものである。


第2 平成24年9月5日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成24年9月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成24年9月5日付けの、特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、その補正前の特許請求の範囲である、
「【請求項1】
その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有し、その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体である化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基構造を有し、前記化合物(C)はエポキシ基及び/又はカルボキシル基を有し、前記化合物(C)のエポキシ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記化合物(B)の末端アミノ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成し、得られた化合物は一般式(1)又は(2)で示される化学構造を有することを特徴とする金属酸化物誘導体。
【化1】

【化2】

(但し、一般式(1)及び(2)において、M_(B)は金属酸化物(A)と結合可能な3価又は4価の金属元素を、mは0又は1を、R_(B)はエーテルもしくはメチレン鎖のいずれかを含む脂肪族連結基を、R_(C)は任意の有機基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)。
【請求項2】
その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有し、その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体である化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端エポキシ基構造を有し、前記化合物(C)はアミノ基及び/又はカルボキシル基を有し、前記化合物(C)のアミノ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記末端エポキシ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成し、得られた化合物は一般式(4)及び(5)の少なくとも一方で示される化学構造を有することを特徴とする金属酸化物誘導体。
【化4】

【化5】

(但し、一般式(4)及び(5)において、M_(B)は金属酸化物(A)と結合可能な3価又は4価の金属元素を、mは0又は1を、R_(B)はエーテルもしくはメチレン鎖のいずれかを含む脂肪族連結基を、R_(C)は任意の有機基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)。
【請求項3】
前記化合物(C)の数平均分子量が400?100,000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項4】
前記化合物(B)は、3アミノプロピルトリメトキシシランであり、前記化合物(C)は、エポキシ樹脂又は片末端エポキシ基のポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項5】
前記化合物(B)は、3グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、前記化合物(C)は、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする、請求項2に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか一に記載の金属酸化物誘導体と、樹脂とを含み、
前記金属酸化物誘導体は、前記樹脂に中に分散していることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、非晶性オレフイン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の金属酸化物誘導体と、ポリカーボネート樹脂とを含み、
前記金属酸化物誘導体は、前記ポリカーボネート樹脂中に分散していることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項9】
前記金属酸化物誘導体の配合量が1?50重量%であることを特徴とする、請求項6?8のいずれか一に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項6?9のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法であって、
所定の有機溶媒中に前記金属酸化物誘導体が分散した金属酸化物誘導体分散溶液を作製する工程と、
前記金属酸化物誘導体分散溶液と、前記樹脂を含む有機溶媒とを混合攪拌し、高温減圧下において溶媒のみを留去し、前記樹脂組成物を得る工程と、
を具えることを特徴とする、樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項6?9のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む自動車用部材。
【請求項12】
請求項6?9のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む建築用部材。
【請求項13】
請求項6?9のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む光学部品。」
を、
「【請求項1】
その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有し、その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体である化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基またはエポキシ基を有し、前記化合物(C)の前記末端構造が、前記末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成し、得られた化合物は一般式(1)、(2)、(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を表面に有することを特徴とする金属酸化物誘導体。
【化1】


【化2】

【化3】

【化4】

(但し、上記一般式(1)?(2)および(4)?(5)において、M_(B)はSi、Ti、Alのいずれか一つ、mは0又は1を、R_(B)はプロピレン基を、R_(C)は化合物(C)の残基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)。
【請求項2】
前記化合物(C)の数平均分子量が400?100,000であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項3】
前記化合物(B)は、3アミノプロピルトリメトキシシラン、前記化合物(C)は、エポキシ樹脂又は片末端エポキシ基のポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項4】
前記化合物(B)は、3グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、前記化合物(C)は、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属酸化物誘導体。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一に記載の金属酸化物誘導体と、樹脂とを含み、前記金属酸化物誘導体は、前記樹脂に中に分散していることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂は、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、非晶性オレフイン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項15に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の金属酸化物誘導体と、ポリカーボネート樹脂とを含み、
前記金属酸化物誘導体は、前記ポリカーボネート樹脂中に分散していることを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項8】
前記金属酸化物誘導体の配合量が1?50重量%であることを特徴とする、請求項5?7のいずれか一に記載の樹脂組成物。
【請求項9】 請求項5?8のいずれか一に記載の樹脂組成物の製造方法であって、所定の有機溶媒中に前記金属酸化物誘導体が分散した金属酸化物誘導体分散溶液を作製する工程と、
前記金属酸化物誘導体分散溶液と、前記樹脂を含む有機溶媒とを混合攪拌し、高温減圧下において溶媒のみを留去し、前記樹脂組成物を得る工程と、
を具えることを特徴とする、樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項5?8のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む自動車用部材。
【請求項11】
請求項5?8のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む建築用部材。
【請求項12】
請求項5?8のいずれか一に記載の樹脂組成物を含む光学部品。」
とする補正である。

そして、上記補正は、以下の補正を含む。
1)請求項1につき、補正前の化合物(C)について、「その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体である」との記載を、「その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体である」とする補正(以下、「補正事項1」という。)
2)請求項1につき、補正前の化合物(B)の「末端アミノ基構造を有し」との記載を「末端アミノ基またはエポキシ基を有し」とする補正(以下、「補正事項2」という。)
3)請求項1につき、補正前の化合物(C)が、「エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有し、前記化合物(C)のエポキシ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記化合物(B)の末端アミノ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成」するものであるとの記載を「前記末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成」するものであるとする補正(以下、「補正事項3」という。)
4)請求項1につき、補正前の「得られた化合物」が、「一般式(1)又は(2)で示される化学構造を有する」との記載を、「一般式(1)、(2)、(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を有する」とし、一般式(1)、(2)、(4)、および(5)を、補正前の請求項1、2の
「 【化1】

【化2】

(但し、一般式(1)及び(2)において、M_(B)は金属酸化物(A)と結合可能な3価又は4価の金属元素を、mは0又は1を、R_(B)はエーテルもしくはメチレン鎖のいずれかを含む脂肪族連結基を、R_(C)は任意の有機基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)。」
「 【化4】


【化5】

(但し、一般式(4)及び(5)において、M_(B)は金属酸化物(A)と結合可能な3価又は4価の金属元素を、mは0又は1を、R_(B)はエーテルもしくはメチレン鎖のいずれかを含む脂肪族連結基を、R_(C)は任意の有機基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)。」
から
「【化1】


【化2】

【化3】

【化4】

(但し、上記一般式(1)?(2)および(4)?(5)において、M_(B)はSi、Ti、Alのいずれか一つ、mは0又は1を、R_(B)はプロピレン基を、R_(C)は化合物(C)の残基を、Rは水素またはアルキル基を、*1-、*2-及び*3-の少なくとも1つは金属酸化物(A)の表面と結合していることを示す。)」とする補正(以下、「補正事項4」という。)
5)請求項2を削除し、それに伴って、補正前の請求項3?13について、項番号を請求項2?12とし、各請求項中で引用する請求項の項番号を変更する補正。(以下、「補正事項5」という。)

2.新規事項の追加の有無
本願の願書に最初に添付した特許請求の範囲及び明細書(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0056】、【0057】及び【0067】には、化合物(C)として、「テレフタル酸」あるいは「ヘキサメチレンジアミン」を用いることは記載されている。
しかしながら、「テレフタル酸」の「誘導体」、あるいは、「ヘキサメチレンジアミンの誘導体」は、上記「テレフタル酸」あるいは「ヘキサメチレンジアミン」とは全く異なる化合物を包含するところ、そのようなものを用いることについて、当初明細書等には全く記載がなく、補正事項1は、当初明細書等のどの記載を根拠として補正したものか不明である。
したがって、上記補正事項1を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでない。
よって、本件補正は、願書に最初に添付した特許請求の範囲又は明細書に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3.補正の目的
上記補正事項2、3及び5は、補正前の請求項2の記載を、補正前の請求項1に繰り入れる趣旨のものであり、特許請求の範囲を実質的に変更するものではない。
そして、補正事項4は、得られた化合物の化学構造として、補正前の請求項1の一般式(1)、(2)に加えて、補正前の請求項2に記載の(4)、(5)の式を追加した上で、式中の構造部分について次のとおり限定するものである。
1)M_(B)について、当初明細書等の段落【0030】にカップリング剤の例として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、及びアルミニウムカップリング剤が記載されていることを根拠に、「金属酸化物(A)と結合可能な3価又は4価の金属元素」から「Si、Ti、Alのいずれか一つ」へと限定
2)R_(B)について、本願実施例(段落【0067】)において、化合物(B)として「3グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」および「3アミノプロピルトリメトキシシラン」を用いていることを根拠に、「エーテルもしくはメチレン鎖のいずれかを含む脂肪族連結基」から「プロピレン基」へと限定
3)R_(C)について、「任意の有機基」から「(C)の残基」へと限定
そして、補正前の請求項1及び2に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決すべき課題が同一であるから、上記補正事項4は、平成18年法律第55号に係る改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
しかしながら、補正事項1は、補正前の化合物(C)が、「その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体」であったものを、さらに、上記2.において述べたとおり、当初明細書等に記載されていない「テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体」であることを追加し、その範囲を拡張するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮とはいえない。また、その他、同法同条同項第1、3、4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないことも明らかである。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではない。

4.むすび
上記特許請求の範囲についての補正(補正事項1)は、新規事項を追加するものであり、また、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものではないので、この補正を含む本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成24年9月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1?13係る発明は、平成23年9月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13(以下、「本願発明1」?「本願発明13」という。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

第4 原査定の理由
拒絶査定における拒絶の理由(平成23年7月12日付けの拒絶理由通知の「理由2」)の概要は、本願の請求項1?22に係る発明は、その出願前に頒布された下記の引用文献A?Lに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
A.特開2002-363438号公報
B.特開平8-319400号公報
C.特開昭60-240769号公報
D.特開平8-12903号公報
E.特開平11-279435号公報
F.特開2000-129159号公報
G.特開平9-151274号公報
H.特開2003-201416号公報
I.特開2005-281644号公報
J.特開昭60-42437号公報
K.特開2000-265081号公報
L.特開平6-100313号公報

第5 当審の判断
当審は、原査定の上記理由のとおり、本願発明1及び2は、特許を受けることができないものであると判断する。
以下、詳述する。

1.刊行物等
ア.刊行物等
刊行物1:特開平6-100313号公報(原査定における「引用文献L」。)
周知例1:総説 エポキシ樹脂 基礎編I,エポキシ樹脂技術協会,2003年,P49
周知例2:プラスチック材料講座1 エポキシ樹脂,日刊工業新聞社,1969年,p69?89
周知例3:総説 エポキシ樹脂 基礎編II,エポキシ樹脂技術協会,2003年,P22?24

イ.刊行物等に記載された事項
(ア)刊行物1について
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。

1a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】 官能基を1個以上有するシランカップリング剤でシリカ粒子の表面を被覆し、更に上記官能基と反応可能な官能基を1個以上有する有機化合物で被覆してなることを特徴とする表面処理シリカ。」
1b:「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体装置封止用樹脂組成物などの複合材料に機械的強度を付与する成分として好適に使用し得る表面処理シリカ並びにその製造方法及びこの表面処理シリカからなる半導体封止樹脂組成物用充填剤に関する。」
1c:「【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、官能基を1個以上有するシランカップリング剤とシリカを混合撹拌してシリカ粒子の表面を上記シランカップリング剤で被覆し、該シランカップリング剤で被覆されたシリカ粒子を上記官能基と反応可能な官能基を1個以上有する有機化合物と混合撹拌して更に上記有機化合物で上記シリカ粒子を被覆することにより、所望の特性を有するシリカを得ることができ、また、この表面処理シリカを半導体封止用エポキシ樹脂組成物等の複合材料に無機質充填剤として配合した場合、無機質充填剤であるシリカと樹脂マトリックスの親和力が強化されるため、低応力でしかも耐衝撃信頼性、耐湿信頼性、耐クラック性に優れた硬化物を得ることができ、特に半導体封止用樹脂組成物の充填剤として非常に有用であることを知見し、本発明をなすに至った。」
1d:「【0008】上記シリカのカップリングに用いられる官能基を1個以上有するシランカップリング剤としては公知のものが使用でき、例示するとγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルシリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルナジック酸無水物等が挙げられる。」
1e:「【0009】一方、上記シランカップリング剤の官能基と反応可能な官能基を1個以上有する有機化合物としては下記に示す官能基を有するものが挙げられるが、官能基はこれらに限定されるものではない。
【0010】
【化1】

【0011】このような官能基を1個以上有する有機化合物としては、下記に示すものが例示され、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
【化2】


1f:「【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0022】[実施例1]リフラックスコンデンサー、撹拌機及び滴下ロートを具備した内容積5リットルの四口フラスコ内にシリカ(平均粒径30μm)3kgと溶媒としてトルエン2kgを入れ、2時間共沸脱水した後、撹拌機で撹拌しながら112℃の温度で滴下ロートにてエポキシ基含有シランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,信越化学工業株式会社製,KBM403)15gを20分間で滴下し、更に同温度で3時間撹拌した後、撹拌を継続しながら同温度でパラアミノフェノール7gを添加し、更に同温度で3時間撹拌を継続した。このようにして得られた反応物から溶媒を減圧下で留去した後、150℃で4時間乾燥させ、表面処理シリカ3kgを得た。」
1g:「【0025】[実施例2]ヘンシェルミキサーにシリカ(平均粒径30μm)3kgとアミノ基含有シランカップリング剤(N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,信越化学工業株式会社製,KBM603)15gを入れて15分間混合した後、120℃で4時間熱処理した。これを実施例1で用いたものと同様の四口フラスコに移し、溶媒としてトルエン1kgとメチルイソブチルケトン1kgを入れ、撹拌機で撹拌しながら112℃の温度で下記式で示す有機化合物YX4000H(油化シェルエポキシ社製)を22.4g添加し、更に同温度で3時間撹拌を継続した。このようにして得られた反応物から溶媒を減圧下で留去した後、120℃で4時間乾燥させ、表面処理シリカ3kgを得た。
【0026】
【化3】



(イ)周知例1について
上記周知例1には、以下の事項が記載されている。

S1:「2.2.4 特殊骨格2官能エポキシ樹脂
・・・
a)ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂
現在,電気・電子部品分野において,高性能エポキシ樹脂として最も知られているのは式(1)で表されるテトラメチルビフェノールのグリシジルエーテルである。

」(第49頁第4?14行)

(ウ)周知例2について
上記周知例2には,以下の事項が記載されている。

S2:「7.エポキシ樹脂使用方法の分類
エポキシ樹脂は単独で使用されることはほとんどなく,硬化剤を用いて硬化反応をさせるか,たとえば脂肪酸とエステル化反応をさせて変性して使用する.・・・ここでは大きくわけて用法の傾向と,学問的ではないが実用的な面から用法の分類とその基本的な応用法を表7・1に示すことにする.
・・・

・・・
(6)アミン予備縮合物硬化
(1),(2)の項で説明したアミンアダクトの考え方とは逆に,硬化剤の当量よりはるかに多量の樹脂を入れてみたらどうなるであろうか.有機アミンのすべての活性水素が,エポキシ化合物によってふさがれた状態が生まれるはずである.
すなわち,


このような状態の化合物をアミン予備縮合物といい,あとからアミン又はアミンアダクトなどを当量バランスに合致するように加えて硬化を完了することを予備縮合物硬化という.

・・・
(16)脂肪酸とのエステル化
エポキシ樹脂は本質的にいえば多価アルコール化合物であるから,脂肪酸と反応させてエステルをつくることができる.」(第69頁第1行?第89頁第4行)

(エ)周知例3について
上記周知例3には,以下の事項が記載されている。

S3:「フィラーの目的と効果
冒頭で述べたように,フィラーを利用した最先端の機能材料は,半導体から超LSIまでの封止材料などのエレクトロニクス関連材料である^(4))。・・・
フィラーの含有量の増加に伴って複合材料の弾性率は上昇する^(5))。・・・ただし,半導体封止材料では,流動特性(成形性)との両立が必要なために球状や不定形のシリカが用いられている^(4))。強度の向上のためには,2.3で述べるような界面の接着性の制御が重要である。
・・・
表4にシリカの諸性質を示した^(1),2))。シリカは,原材料の選択によってエレクトロニクス材料に応用可能な高純度のものが得られる。・・・非晶性シリカの熱膨張係数は,他の多くのフィラーと比較して非常に低い。これを生かして封止材料を低熱膨張化できることで,一般には非晶性シリカがフィラーとして用いられている。
・・・エポキシ樹脂の熱膨張係数は60ppm/℃であるが,0.55ppm/℃の非晶性シリカを充填することによって熱膨張係数が低減できる。ただし,弾性率は上昇する。」(第23頁第14行?24頁第5行)

2.刊行物1に記載された発明
刊行物1の特許請求の範囲(摘示1a)には、
「官能基を1個以上有するシランカップリング剤でシリカ粒子の表面を被覆し、更に上記官能基と反応可能な官能基を1個以上有する有機化合物で被覆してなることを特徴とする表面処理シリカ。」
が、記載されている。
そして、その実施例として、実施例2(摘示1g)には、「官能基を1個以上有するシランカップリング剤」として、「アミノ基含有シランカップリング剤(N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン」にてシリカ粒子の表面を被覆し、さらに、
「【化3】


にて示される化合物にて処理して反応させて被覆することが記載されている。

よって、刊行物1には、
「アミノ基含有シランカップリング剤(N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン)でシリカ粒子の表面を被覆し、下記式【化3】で示す有機化合物

で被覆してなることを特徴とする表面処理シリカ。」
の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。

また、刊行物1の実施例1(摘示1f)には、「官能基を1個以上有するシランカップリング剤」として「エポキシ基含有シランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)」にてシリカ粒子の表面を被覆し、さらに、「パラアミノフェノール」にて処理して反応させて被覆することが記載されている。

よって、刊行物1には、
「エポキシ基含有シランカップリング剤(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)でシリカ粒子の表面を被覆し、パラアミノフェノールで被覆してなることを特徴とする表面処理シリカ。」
の発明(以下、「引用発明B」という。)が記載されている。

3.検討
(1)本願発明1について
ア.対比
本願発明1と引用発明Aを対比する。
引用発明Aにおける「シリカ粒子」は、本願発明1の「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)」に相当する。
また、引用発明Aにおける「アミノ基含有シランカップリング剤(N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン」は、本願発明1の「前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)」に相当し、また、「前記化合物(B)は末端アミノ基構造を有」することにも相当することは明らかである。
さらに、引用発明Aにおける「式【化3】で示す有機化合物」は、摘示1eにおいて、「シランカップリング剤の官能基と反応可能な官能基」として挙げられている



にて示される官能基(以下、「エポキシ基」という。)を有し、また、摘示1eにおいて、「このような官能基を1個以上有する有機化合物」として挙げられている化合物であり、さらに、アミノ基とエポキシ基が反応することは明らかであるから、アミノ基含有シランカップリング剤のアミノ基と反応可能な官能基であるエポキシ基を有する化合物として用いられていることは明らかである。
よって、上記「式【化3】で示す有機化合物」は、本願発明1における「前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有」し、また、「エポキシ基及び又はカルボキシル基を有」する「化合物(C)」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明Aは、
「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有する化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基構造を有し、
前記化合物(C)はエポキシ基及び/又はカルボキシル基を有し、前記化合物(C)のエポキシ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記化合物(B)の末端アミノ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する
金属酸化物誘導体。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点A1:前記化合物(C)が、本願発明1においては、「その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体」であるのに対し、引用発明Bにおいては、そのような特定がなされていない点

相違点A2:本願発明1は、「得られた化合物」が「一般式(1)、(2)の少なくとも一つで示される化学構造を有する」のに対し、引用発明Bにおいてはそのような特定がなされていない点

イ.相違点についての判断
(ア)相違点A1について
本願発明1の化合物(C)が、「エポキシ基及び又はカルボキシル基を有し」、「末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体である」ということは、「末端構造」が、単に、エポキシ樹脂かポリカーボネート樹脂に由来するエポキシ基及び又はカルボキシル基を有し、かつ、「エポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体」であるという意味であると解される。また、本願発明1を引用する本願発明4においては、化合物(C)は、「エポキシ樹脂又は片末端エポキシ基のポリカーボネート樹脂」であることが特定されているから、「エポキシ樹脂」そのものも本願発明1の化合物(C)の範囲にあると解される。
ところで、上記【化3】に示されるエポキシ基を有する有機化合物は、周知例1の摘示S1に示されるとおり「エポキシ樹脂」として周知の化合物である。
よって、刊行物1の「式【化3】で示す有機化合物」は「エポキシ樹脂」であるから、本願発明1の「その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体」に相当する。
仮に、上記「エポキシ樹脂」「の誘導体」が、「エポキシ樹脂」から、何らかの構造の一部を変化させたものを意味するとしても、エポキシ樹脂の置換基の一部を何らかの物質にて変更したもの、あるいは、エポキシ樹脂の多量体(このようなものは、結局エポキシ樹脂となる場合も多い。)等、エポキシ樹脂の誘導体は多数のものが周知である。(例えば、エポキシ樹脂の置換基の一部を変更したものの例としては、周知例2摘示S2の「表7.1」における「アミン予備縮合物硬化(6)」及び「エポキシ樹脂脂肪酸エステル(16)」の記載、及び「(6)アミン予備縮合物硬化」、「(16)脂肪酸とのエステル化」の項の各説明を参照のこと。)
よって、引用発明Aにおいて、エポキシ基を有する化合物として、「式【化3】で示す有機化合物」であるエポキシ樹脂にかえて、単に、「末端構造がエポキシ樹脂」の「誘導体」とすることは当業者が容易になし得るものである。

(イ)相違点A2について
刊行物1には、アミノ基含有シランカップリング剤として、γ-アミノプロピルトリメトキシシランを用いることも記載されていることから、引用発明Aにおいて、アミノ基含有シランカップリング剤としてγ-アミノプロピルメトキシシランを採用することも当業者が容易になし得るものである。
また、上記(ア)においても述べたとおり、刊行物1にはエポキシ基を有する化合物として、エポキシ樹脂を用いることが記載され、また、エポキシ樹脂の誘導体を用いることも容易になし得るものである。
そして、引用発明Aにおいて、アミノ基含有シランカップリング剤としてγ-アミノプロピルメトキシシランを採用し、また、上記のとおりエポキシ基を有する化合物としてエポキシ樹脂あるいはエポキシ樹脂の誘導体を採用して得られた化合物は、本願発明1における一般式(1)に記載の構造と同様の構造となることは明らかなものと認められる。

(ウ)効果について
本願発明1の効果は、本願発明の詳細な説明の【本願発明の効果】【0021】に
「・・・本発明によれば、樹脂に対して混和性が高い金属酸化物(金属酸化物誘導体)粒子を提供することができる。したがって、前記金属酸化物粒子は、前記樹脂中に均一に分散させることができ、前記樹脂の透明性を維持しながら低い線膨張係数及び高い弾性率など機械的特性に優れた樹脂組成物を提供することができる。」
と記載されるとおりのものであると認められる。
ここで、周知例3の摘示S3には、
「フィラーの含有量の増加に伴って複合材料の弾性率は上昇する」
及び
「エポキシ樹脂の熱膨張係数は60ppm/℃であるが、0.55ppm/℃の非晶性シリカを充填することによって熱膨張係数が低減できる。ただし、弾性率は上昇する。」
と、記載されるとおり、樹脂にシリカ等のフィラー(充填剤)を混合すると膨張係数が低下し、弾性率が上昇することは周知である。また、一般に、充填剤の樹脂への親和性が上昇すると、上記の充填剤の添加効果が向上することも技術常識である。
そして、刊行物1には、シリカ粒子の表面を刊行物1の請求項1に記載のもの、すなわち、「官能基を1個以上有するシランカップリング剤でシリカ粒子の表面を被覆し、更に上記官能基と反応可能な官能基を1個以上有する有機化合物で被覆」することにより、「無機充填剤であるシリカと樹脂マトリックスの親和力が強化され」、樹脂組成物の機械強度が向上することが記載されている(摘示1c)ことから、刊行物1の請求項1に記載の発明の範囲内にあるものであれば、シリカと樹脂の親和性が向上し、より、シリカ粒子の熱膨張係数が低減し、弾性率が上昇すること、また、親和性の向上により透明性が向上することは当業者ならば予測しうるものである。
したがって、引用発明Aにおいて、アミノ基シランカップリング剤として「γ-アミノプロピルメトキシシラン」を用い、かつ、エポキシ基を有する化合物として「エポキシ樹脂の誘導体」を用いた場合についても、上記刊行物1の請求項1に記載の発明の範囲内のものであるから、上記効果を有することは当業者が予測しうるものと認められる。

(2)本願発明2について
ア.対比
本願発明2と引用発明Bを対比する。
引用発明Bにおける「シリカ粒子」は、本願発明2の「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)」に相当する。
また、引用発明Bにおける「エポキシ基含有シランカップリング剤(γ-グリシドキシトリメトキシシラン)」は、本願発明2の「末端エポキシ基構造を有」する「前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)」に相当する。
さらに、引用発明Bにおける、「パラアミノフェノール」は、摘示1eにおいて、「シランカップリング剤の官能基と反応可能な官能基」として挙げられている「-NH_(2)」にて示される官能基(以下、「アミノ基」という。)を有し、また、摘示1eにおいて、「このような官能基を1個以上有する有機化合物」として挙げられている下記式で示される化合物



であり、さらに、アミノ基とエポキシ基が反応することは明らかであるから、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基と反応可能な官能基であるアミノ基を有する化合物として用いられていることは明らかである。
よって、「前記化合物(C)」が、「アミノ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記末端エポキシ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する」点で、本願発明2の化合物(C)に相当する。
したがって、本願発明2と引用発明Bとは、
「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有する化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端エポキシ基構造を有し、
前記化合物(C)のアミノ基及びカルボキシル基の少なくとも一方が、前記末端エポキシ基構造と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する
金属酸化物誘導体。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点B1:前記化合物(C)が、本願発明2においては、「その末端構造がエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂の少なくとも一方の誘導体である化合物(C)」であるのに対し、引用発明Bにおいては、「パラアミノフェノール」である点

相違点B2:本願発明2は、「得られた化合物」が「一般式(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を表面に有する」のに対し、引用発明Bにおいてはそのような特定がなされていない点

イ.相違点の判断
(ア)相違点B1及びB2について
本願発明2を引用する本願発明5は、「化合物(C)」が「ヘキサメチレンジアミン」であることが特定されているので、本願発明2の「化合物(C)」は、「ヘキサメチレンジアミン」を包含すると解される。
そして、刊行物1の摘示1eにおいては、-NH_(2)基(アミノ基)を有する化合物として、パラアミノフェノールと同様に「NH_(2)(CH_(4))NH_(2)」すなわちテトラメチレンジアミンのようなパラフィンジアミンを用いることも開示されている。
そして、アミノ基を有する化合物として、上記テトラメチレンジアミンよりも炭素の2つ多い点のみで構造の異なるヘキサメチレンジアミンやその誘導体も周知であり、そのような周知の物質を採用することは当業者が容易になし得るものである。
仮に、本願発明2の「化合物(C)」が、ヘキサメチレンジアミン以外のものを意味するとしても、「エポキシ樹脂」の「誘導体」であって、「アミノ基」を有するような物質自体も周知であり、引用発明Bのアミノ基含有化合物として、単にそのような周知の物質を採用することも当業者にとって困難性はない。
また、引用発明Bにおいて、「化合物(B)」に相当する物質として、「3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」を用いており、上記のとおり、-NH_(2)基(アミノ基)を有する化合物としてヘキサメチレンジアミンやアミノ基を有するエポキシ樹脂の誘導体を採用して反応させたものは、本願発明2における一般式(4)に記載の構造と同様の構造となることは明らかなものと認められる。

(イ)効果について
本願発明2の効果については、上記(1)イ.(ウ)において述べたものと同様の理由により、当業者が予測しうる程度のものである。

4.まとめ
以上のとおり、本願発明1及び2は、本願出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 請求人の主張について
請求人は、審尋における
「 <特許査定できない理由>
1 審判請求時の補正は、下記の理由により、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に違反するものであるから、同法第163条第1項で読み替えられた同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

2 仮に、審判請求時の補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすとしても、審判請求時の補正は、下記の理由により、同法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第163条第1項で読み替えられた同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

3 仮に、審判請求時の補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、更に、同法第17条の2第4項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであるといえたとしても、審判請求時の補正は、下記の理由により、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。

1) 1について、少なくとも下記(a)?(c)の点は、当初明細書等に記載されていない。
(a) 化合物(C)として、テレフタル酸の誘導体を用いること
(b) 化合物(C)として、ヘキサメチレンジアミンの誘導体を用いること
(c) 化合物(C)として、エポキシ樹脂及び/又はポリカーボネート樹脂と、テレフタル酸及び/又はヘキサメチレンジアミンとで構成される混合物を用いること
(d) 得られた化合物が一般式(1)又は(2)で示される化学構造を表面に有する金属酸化物誘導体である場合において、化合物(C)がテレフタル酸であること

2) 2について、審判請求時の補正は、得られた化合物が一般式(1)又は(2)で示される化学構造を表面に有する金属酸化物誘導体である場合において、化合物(C)がテレフタル酸である金属酸化物誘導体を含むようにする補正、すなわち、補正前の請求項1において、化合物(C)としてテレフタル酸を用いる態様を追加する補正を含むものであるが、このような補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないし、請求項の削除、誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明のいずれをも目的とするものでない。

3) 3について、
審判請求時の補正は、補正前の請求項1と請求項2を1つの請求項とするとともに、(上記1及び2の点はさておき、)化合物(B)をアミノプロピルシラン又はグリシジルプロピルシランに限定し、化合物(C)を請求項1で規定されるものに特定し、請求項2の削除に伴い特許請求の範囲の記載を整えるものといえるが、拒絶査定において引用した刊行物B、C、D、G及びLには、化合物(B)としてアミノプロピルシラン又はグリシジルプロピルシランを用いる旨が記載されているから、結局、審判請求時の補正は、拒絶査定でした判断に影響を与えるものとはいえない。 」
との指摘に対して、回答書において、以下の[請求項1の補正案]を示すとともに、
1.上記補正案によれば、上記指摘事項1における拒絶理由、及び指摘事項2における補正却下理由について解消されるものである。
2.指摘事項3については、
「審判請求時の補正後の特許請求の範囲に記載された発明は、上記1および2の点を措くとしても、特許性を欠くことによっていわゆる独立特許要件を満たさないものとなることから、依然として特許を受けることはできない、というものです。審判請求人は、このご指摘事項3につきましては、承服いたしかねます・・・。」
という主張をしている。
「[請求項1の補正案]
その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有し、その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂もしくはポリカーボネート樹脂の誘導体であるか、あるいは、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンであるかのいずれかである化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基またはエポキシ基を有し、前記化合物(C)の前記末端構造が、前記末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成し、
前記化合物(C)がエポキシ樹脂もしくはポリカーボネート樹脂の誘導体である場合には、得られた化合物は一般式(1)、(2)、(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を表面に有し、前記化合物(C)がテレフタル酸である場合には、得られた化合物は一般式(5)で示される化学構造を表面に有し、前記化合物(C)がヘキサメチレンジアミンである場合には、得られた化合物は一般式(4)で示される化学構造を表面に有することを特徴とする金属酸化物誘導体。
(式は省略)」

当該補正案を踏まえて請求人の主張について検討する。

1.主張1.について
上記補正案のとおりに補正されるならば、平成24年9月5日の手続補正書による補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、あるいは平成18年改正前第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とする補正ではない旨の拒絶理由ないし補正却下の理由については、解消される。
しかしながら、以下の「2.」において述べるとおり、平成24年9月5日の手続補正書により補正された請求項1に係る発明は独立して特許を受けることができるものでなく、また、上記補正案に記載された請求項1に係る発明も、同様の理由により独立して特許を受けることができるものではない。

2.主張2.について
請求人は、審判請求時の補正後の特許請求の範囲に記載された発明は、独立特許要件を満たす旨の主張をしている。
しかしながら、審判請求時の補正後の特許請求の範囲に記載された発明、すなわち、平成24年9月5日付けの手続補正書によって補正された請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、以下のとおり上記刊行物1及び周知技術から当業者が容易になし得るものであり、特許法第29条2項の規定により、独立して特許を受けることができるものではない。

(1)刊行物等
刊行物1及び周知例、及びその記載事項は、上記第5.1.において述べたものと同様である。

(2)刊行物1に記載された発明
刊行物1に記載された発明は、上記第5.2において述べた引用発明A及びBと同じものである。

(3)検討
A.引用発明Aについて
ア.対比
本件補正発明と引用発明Aを対比する。
引用発明Aにおける「シリカ粒子」は、本件補正発明の「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)」に相当し、それから誘導された金属酸化物誘導体は「粒子状を呈する」ものと認められる。
また、引用発明Aにおける「アミノ基含有シランカップリング剤(N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン」は、本件補正発明の「前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)」に相当し、また、「前記化合物(B)は末端アミノ基・・・を有」することにも相当することは明らかである。
さらに、引用発明Aにおける「式【化3】で示す有機化合物」は、エポキシ基を有するので、上記第5 3.(1)ア.において述べたものと同様の理由により、本件補正発明における「末端構造」が、「末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する」「化合物(C)」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明Aとは、
「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有する化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基またはエポキシ基を有し、
前記化合物(C)の末端構造が、前記末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する
金属酸化物誘導体。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点A1’:前記化合物(C)が、本件補正発明においては、「その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体」であるのに対し、引用発明Aにおいては、そのような特定がなされていない点

相違点A2’:本件補正発明は、「得られた化合物」が「一般式(1)、(2)、(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を表面に有する」のに対し、引用発明Aにおいてはそのような特定がなされていない点

イ.相違点の判断
(ア)相違点A1’について
上記ア.において述べたとおり、引用発明Aおける「式【化3】で示す有機化合物」は、アミノ基含有シランカップリング剤に反応可能な官能基である、エポキシ基を有する化合物として用いられたものであることは明らかである。
ここで、本件補正発明(請求項1に係る発明)を引用する請求項3には、「化合物(C)は、エポキシ樹脂又は片末端エポキシ基のポリカーボネート樹脂である」と記載されて、エポキシ樹脂そのものでも良いことが記載されている。
そして、上記第5 3.(1)イ.(ア)において述べたとおり、刊行物1の「式【化3】で示す有機化合物」は「エポキシ樹脂」であるから、本件補正発明の「その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体」に相当する。
仮に、上記「エポキシ樹脂」「の誘導体」が、「エポキシ樹脂」から、何らかの構造の一部を変化させたものを意味するとしても、上記第5 3.(1)イ.(ア)において述べたものと同様の理由により、引用発明Aにおいて、エポキシ基を有する化合物として、「式【化3】で示す有機化合物」であるエポキシ樹脂にかえて、単に、エポキシ樹脂の誘導体とすることは当業者が容易になし得るものである。

(イ)相違点A2’について
刊行物1には、アミノ基含有シランカップリング剤として、γ-アミノプロピルトリメトキシシランを用いることも記載されている(摘示1d)ことから、引用発明Aにおいて、アミノ基含有シランカップリング剤としてγ-アミノプロピルメトキシシランを採用することも当業者が容易になし得るものである。
また、上記(ア)においても述べたとおり、刊行物1にはエポキシ基を有する化合物として、エポキシ樹脂を用いることが記載され、また、エポキシ樹脂の誘導体を用いることも容易になし得るものである。
そして、引用発明Aにおいて、アミノ基含有シランカップリング剤としてγ-アミノプロピルメトキシシランを採用し、また、上記のとおりエポキシ基を有する化合物としてエポキシ樹脂あるいはエポキシ樹脂の誘導体を採用して得られた化合物は、本件補正発明における一般式(1)に記載の構造と同様の構造となることは明らかなものと認められる。

(ウ)効果について
上記第5 3.(1)イ.(ウ)においてのべたものと同様の理由により、本件補正発明の効果は当業者が予測しうる程度のものである。

B.引用発明Bについて
ア.対比
本件補正発明と引用発明Bを対比する。
引用発明Bにおける「シリカ粒子」は、本件補正発明の「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)」に相当する。
また、引用発明Bにおける「エポキシ基含有シランカップリング剤(γ-グリシドキシトリメトキシシラン)」は、本件補正発明の「前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)」に相当し、また、「前記化合物(B)は・・・エポキシ基を有」することにも相当することは明らかである。
さらに、引用発明Bにおける、「パラアミノフェノール」は、上記第5 3.(2)ア.と同様の理由の理由により、本件補正発明における「前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有」する「化合物(C)」に相当する。
よって、本件補正発明と引用発明Bとは、
「その表面の少なくとも一部に水酸基を有し、シリカ及びアルミナの少なくとも一方である金属酸化物(A)と、
前記金属酸化物(A)の水酸基との化学反応によって第1の化学結合を形成するアルコキシ基を有する化合物(B)と、
前記化合物(B)に対して第2の化学結合能を有する化合物(C)とを具え、
粒子状を呈する金属酸化物誘導体であって、
前記化合物(B)は末端アミノ基またはエポキシ基を有し、
前記化合物(C)の末端構造が、前記末端アミノ基またはエポキシ基と化学反応することにより、前記第2の化学結合能を形成する
金属酸化物誘導体。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点B1’:前記化合物(C)が、本件補正発明においては、「その末端構造がエポキシ基、アミノ基、またはカルボキシル基であり、かつエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、テレフタル酸又はヘキサメチレンジアミンの少なくとも一つの誘導体」であるのに対し、引用発明Bにおいては、「パラアミノフェノール」である点

相違点B2’:本件補正発明は、「得られた化合物」が「一般式(1)、(2)、(4)、および(5)の少なくとも一つで示される化学構造を表面に有する」のに対し、引用発明Bにおいてはそのような特定がなされていない点

イ.相違点の判断
(ア)相違点B1’及びB2’について
刊行物1の摘示1eにおいては、-NH_(2)基を有する化合物として、パラアミノフェノールと同様に「NH_(2)(CH_(4))NH_(2)」すなわちテトラメチレンジアミンのようなパラフィンジアミンを用いることも開示されている。
そして、アミノ基を有する化合物として、上記テトラメチレンジアミンよりも炭素の2つ多いのみで構造の異なるヘキサメチレンジアミンやその誘導体も周知であり、そのような周知の物質を採用することは当業者が容易になし得るものである。
また、引用発明Bにおいて、「化合物(B)」に相当する物質として、「3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」を用いており、これに、上記のとおり、ヘキサメチレンジアミンやその誘導体を反応させて得られた化合物は、本件補正発明における一般式(4)に記載の構造と同様の構造となることは明らかなものと認められる。

(イ)効果について
上記A.イ.(ウ)において述べたものと同様の理由により、本件補正発明の効果は当業者が予測し得る程度のものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本件補正発明は、本願出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、独立して特許を受けることができるものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、本願出願日前に頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることはできないものであって、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-23 
結審通知日 2013-08-27 
審決日 2013-09-13 
出願番号 特願2005-378802(P2005-378802)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 菅野 芳男
小石 真弓
発明の名称 金属酸化物誘導体、樹脂組成物、及び樹脂組成物の製造方法  
代理人 八田国際特許業務法人  

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