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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1281251
審判番号 不服2012-24201  
総通号数 168 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2013-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-06 
確定日 2013-11-06 
事件の表示 特願2009- 39666「2次電池」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月 9日出願公開、特開2009-152211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成11年3月8日(パリ条約による優先権主張:平成10年3月10日並びに10月14日 韓国)に出願した特願平11-60014号の一部を平成21年2月23日に新たな特許出願としたものであって、平成24年4月9日付けの拒絶理由が通知され、同年7月17日付けの手続補正がされたが、同年8月2日付けの拒絶査定がされたものである。
そして本件審判は、この査定を不服として、同年12月6日付けの手続補正と共に請求されたものである。

2.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年12月6日付けで手続補正された特許請求の範囲において、請求項1に記載された次の事項により特定されたとおりものと認められる。

【請求項1】
陽極板、陰極板及びセパレータの積層されている構造よりなり、形成された電流を外部に誘導するための電極タブを有する電極組立体と、
上部ケース部と下部ケース部よりなり、前記電極タブの一部を外部に露出させた状態で前記上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部とが接合されて前記電極組立体を密封するケースと、
前記電極タブの所定領域に所定の幅にコーティングされており、前記接合部位の上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部との間に介在されて有機電解液の漏れを防止するシーリング材とを含み、
2次電池を0.2気圧、90℃の条件下に放置した場合、16時間経過するまで前記有機電解液の漏れを防止し、
前記ケースは、その内部表面にコーティングされた熱接着性物質層を有し、
前記シーリング材は、前記ケースの内部表面にコーティングされた熱接着性物質層と同じ物質よりなり、
前記シーリング材及び前記熱接着性物質層は、ポリプロピレン樹脂よりなることを特徴とする2次電池。

3.原査定の理由

原審の拒絶査定の理由の一つは、
「本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特許出願、
特願平9-282086号(特開平11-121043号)
の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその優先権主張の基礎とされた先の出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」(以下、「先願同一」という。)というものであり、
また、他の一つは、
「本願発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物、
国際公開第97/8762号(以下、「引用例」という。)
に記載された発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」(以下、「容易想到性」という。)というものである。

4.先願同一について

4-1.先願明細書の記載

【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるポリマー二次電池は、内面に熱融着性樹脂フィルムが配された外装材内に正極、ポリマー固体電解質層および負極を有するポリマー素電池を前記正負極にそれぞれ電気的に接続された外部リードを前記外装材の開口縁部から延出するように収納し、前記外装材の開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着して前記素電池を密封したポリマー二次電池の製造方法において、前記外装材の開口縁部と前記外部リードとの間に樹脂被膜を配置した後、前記外装材の開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着すると共に、前記熱融着性樹脂フィルムと前記樹脂被膜及び前記樹脂被膜と前記外部リードとを互いに熱融着することを特徴とするものである。

【0023】3)ポリマー電解質層5
この電解質層5は、非水電解液及びこの電解液を保持するポリマーを含む。・・・(後略)・・・

【0025】4)樹脂被膜13a,13b,14a,14b
この樹脂被膜13a,13b,14a,14bは、前記外部リード、前記外装材の熱融着性樹脂との接着性が良好で、かつ前記ポリマー素電池の電解液に対して耐性を有すると共に、電池の使用温度を超える温度に対して耐熱性を有する樹脂からなることが好ましい。例えば、融点が50?180℃の熱可塑性樹脂および架橋可能温度が50?180℃の熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂を用いることができる。
【0026】前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、アイオノマー、エチレン塩化ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂・・・(中略)・・・等を挙げることができる。これらの樹脂に必要に応じて各種の改質剤を添加してもよい。

【0032】以上説明した本発明によれば・・・(中略)・・・、素電池の正負極にそれぞれ電気的に接続された外部リードが延出される箇所(熱シール部)の場和大きくすることなく、シール性を著しく向上することができる。その結果、前記素電池を構成する電解液の揮発、漏洩を防止して良好な電池反応を維持できる・・・(後略)・・・

【0045】得られた実施例1-4および比較例1-4の二次電池を80℃のオーブン中に2000時間放置し、その放置時における非水電解液の減量を測定した。その結果を下記表1に示す。

【0047】前記表1から明らかなように実施例1-4の二次電池は、比較例1-4に比べて高温放置時の電解液の減量が零かもしは極めて少なく良好なシール性を有することがわかる。

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマー二次電池の製造を説明するための展開斜視図。
・・・(中略)・・・
【図3】本発明により製造されたポリマー二次電池を示す平面図。
・・・(中略)・・・
【符号の説明】
4…正極、
5…ポリマー固体電解質層、
9…負極、
10…ポリマー素電池、
・・・(中略)・・・
11,12…外部リード、
13a,13b,14a,14b…樹脂被膜、
15…積層フィルム、
16a-16c…シール部、
17…外装材。

【図1】


【図3】


4-2.先願発明の認定

先願明細書には、内面に熱融着性樹脂フィルムが配された外装材内に正極、ポリマー固体電解質層および負極を有するポリマー素電池を前記正負極にそれぞれ接続された外部リードを前記外装材の開口縁部から延出するように収納し、前記外装材の開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着して前記素電池を密封したポリマー二次電池において、前記外装材の開口縁部と前記外部リードとの間に樹脂被膜を配置し、前記外装材の開口縁部で前記熱融着性樹脂フィルムを互いに熱融着すると共に、前記熱融着性樹脂フィルムと前記樹脂被膜及び前記樹脂被膜と前記外部リードとを互いに熱融着することにより、シール性を向上させ、電解液の漏洩を防止すること(段落0008,0032)が記載され、ここで、正極、ポリマー固体電解質層、負極は、板状であり積層されており(図1)、ポリマー素電池は、二つ折りされた外装材内に収納されており(図3)、ポリマー固体電解質層は、非水電解液及び非水電解液を保持するポリマーを含み(段落0023)、樹脂被膜の材質としてポリプロピレン樹脂が選択可能であること(段落0026)が記載されている。
してみると、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「正極板、負極板及び非水電解液を保持するポリマーが積層され、正負電極にそれぞれ外部リードが接続されたポリマー素電池と、
内面に熱融着性樹脂フィルムが配され、二つ折りされ、前記外部リードをその開口縁部から延出するように収納し、開口縁部が熱融着されて前記ポリマー素電池を密封する外装材を有するポリマー二次電池において、
前記外装材の開口縁部と前記外部リードとの間に、両者と熱融着することにより、シール性を向上させ、非水電解液の漏洩を防止する樹脂被膜を配置し、前記樹脂被膜が、ポリプロピレン樹脂よりなるポリマー二次電池。」

4-3.対比・判断

本願発明と先願発明を対比すると、先願発明の「正極板」「負極板」「外部リード」「ポリマー素電池」「熱融着性樹脂フィルム」「延出」「二つ折りされ開口縁部が熱融着される外装材」「非水電解液の漏洩を防止する樹脂被膜」は、それぞれ本願発明の「陽極板」「陰極板」「電極タブ」「電極組立体」「熱接着性物質層」「一部を外部に露出」「上部ケース部と下部ケース部よりなり前記上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部とが接合されるケース」「有機電解液の漏れを防止するシーリング材」に相当する。また、先願発明の「非水電解液を保持するポリマー」は、正負極を分離する部材でもあるから、本願発明の「セパレータ」に相当する。
してみると、本願発明のうち、
「陽極板、陰極板及びセパレータの積層されている構造よりなり、形成された電流を外部に誘導するための電極タブを有する電極組立体と、
上部ケース部と下部ケース部よりなり、前記電極タブの一部を外部に露出させた状態で前記上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部とが接合されて前記電極組立体を密封するケースと、
前記電極タブの所定領域に所定の幅にコーティングされており、前記接合部位の上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部との間に介在されて有機電解液の漏れを防止するシーリング材とを含み、
前記ケースは、その内部表面にコーティングされた熱接着性物質層を有し、
前記シーリング材は、ポリプロピレン樹脂よりなる2次電池。」
の点は、先願発明との差異にならず、両者は、次の点で一応相違する。

相違点1:本願発明は、「2次電池を0.2気圧、90℃の条件下に放置した場合、16時間経過するまで前記有機電解液の漏れを防止」するのに対し、先願発明は、非水電解液の漏洩をどの程度防止するのか不明である点。

相違点2:本願発明のシーリング材が、「ケースの内部表面にコーティングされた熱接着性物質層と同じ物質よりなり、熱接着性物質層が、ポリプロピレン樹脂よりなる」のに対し、先願発明の樹脂被膜が、熱融着性樹脂と同じ物質よりなるか否か、すなわち、熱融着性樹脂もポリプロピレン樹脂であるか否かが不明な点。

次にこれらの相違点について検討する。

相違点1について、シール性の向上のため樹脂被膜を配する先願発明において、非水電解液の漏洩をどの程度防止するかは、設計上、当然考慮する事項と認められ、先願明細書にも、先願発明に関連する実施例において、80℃2000時間放置時の電解液減量を零にしたこと(段落0045,0047)が記載されている。
してみると、相違点1に係る本願発明特定事項は、先願発明における単なる設計的事項であって、新たな効果を奏するものではないから、実質的な差異ではない。

相違点2について、先願明細書には、先願発明の熱融着性樹脂と樹脂被膜の接着性が良好なことが望ましい(段落0025)と記載されているから、同一の樹脂が望ましいことは当業者に自明であるところ、ポリプロピレンは、電池外装材の内面に配される熱融着樹脂として周知(要すれば、特開平2-21557号公報第2頁右上欄欄第6?7行、特開平9-63639号公報段落0008等参照)である。
してみると、相違点2に係る本願発明特定事項は、先願発明における周知技術の付加であって、新たな効果を奏するものではないから、実質的な差異ではない。

5.容易想到性について

5-1.引用例の記載

摘示1(第6頁第7?34行)
Detailed Description of the Preferred Embodiment
As used herein, the term "battery" may include a single cell, or a plurality of cells, connected in either series or parallel fashion to furnish electrical current. As illutrated in FIG. 1, a battery assembly 10 including a thin cell laminar battery 26, shown in phantom, is enveloped by a protective package layer (or multilayer) 28 impermeable to air and water. The package layer is heat-sealed around periphery 30 of the cell. The protective package layer or multilayer typically comprises one or more plastic material layers and an aluminum foil.
Referring to FIG. 2, the battery 26 of FIG. 1 is a cell laminate which includes an anode layer 12, first and second layers of an ionically conductive electrolyte 14, 16 which contact anode 12 on opposite sides respectively, first and second cathode layers 18, 20 which contact the sides of electrolyte 14 and 16 which are not in contact with anode layer 12. Current collectors 22 and 24 contact the sides of cathode layers 18 and 20 which are not in contact with electrolyte layers 14 and 16. The cell depicted in FIG. 2 is a bi- faced structure to maximize the use of anode 12. The bi-faced, bi-polar, or other cell configuration designs are known to those skilled in the art. As shown in FIG. 1, an anode tab (or terminal) 32 is electrically connected to an anode 12. A cathode tab (or terminal) 34 is electrically connected to cathodes 18 and 20.
(合議体訳)
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書で使用される用語「電池」は、単一のセル、または、電流を供給するために直列または並列のどちらかに接続された複数のセルを含むことができる。第1図に図示されるように、仮想線で示す、薄いセルを積層した電池26を含む電池アセンブリ10は、空気と水に対して不透過性の保護パッケージの層(または多層)28によって包まれている。パッケージ層は、セルの周辺部30の周りでヒートシールされる。保護パッケージの層又は多層は、通常、1つ以上のプラスチック材料層とアルミニウム箔からなる。
図2を参照すると、図1の電池26は、アノード層12と、アノード層12のそれぞれ反対側に接触した第1および第2のイオン伝導性電解質14,16と、アノード層12と接触しない側で、第1および第2のイオン伝導性電解質14,16に接触した第1および第2のカソード層18,20を含む積層セルである。集電体22および24は、電解質層14および16と接触しない側でカソード層18および20に接触する。図2に示されているセルは、アノード12を最大限に活用するために両面構造である。両面や双極、他のセル構造の設計は当業者によく知られている。図1示すように、アノードタブ(または端子)32は、アノード12に電気的に接続されている。カソードタブ(または端子)34は、カソード18と20に接続されている。

摘示2(第8頁第27行?第9頁第3行)
In lieu of or in addition to employing a tab with an uneven surface, sealability can be achieved or further enhanced by forming a strip of sealable material around a portion of the tab. Fig. 3A depicts a solid thick metal tab 112 a portion of which is covered by a strip of a sealable material 114. The width w of the strip is preferably about 125 mils and the strip preferably has a thickness of about 1-5 mils. The strip of the sealable material 114 is first connected and sealed to the thick solid metal tab 112; the strip is then connected to the protective package material to form a hermetic seal of the tab and of the electrical cell.
(合議体訳)
不均一な表面を有するタブを用いることに代えて、又は加えて、シール性は、タブの一部の周りにシール可能な材料のストリップを形成することによって達成するか、さらに向上させることができる。図3Aは、その一部がシール可能な材料114のストリップによって覆われている固体の厚い金属タブ112を示している。ストリップの幅wは、好ましくは約125ミルであり、ストリップは、好ましくは約1-5ミルの厚さを有する。シール可能な材料114のストリップは、最初に、厚い固体金属タブ112に封止接続され、それから、タブと電気セルの気密シールを形成するために、保護パッケージ材料に接続される。

摘示3(第10頁第1?10行)
The sealable material in strip 114 does not have to be the same as the package material. However, the sealable material has to be "compatible" with the package material in order for hermetic sealing to occur between them. The "compatibility" of the strip of the sealable material with the protective package material is defined as a high probability that the sealable material will sealingly attach to the protective package material to achieve hermetically sealed packages.
(合議体訳)
ストリップ114のシール可能な材料は、パッケージ材料と同じである必要はない。しかしながら、シール可能な材料は、両者間で気密封止を生じるために、パッケージ材料と「相溶性」である必要がある。シール可能な材料のストリップの保護パッケージ材料との「相溶性」は、気密シールされたパッケージを達成するために、シール可能な材料が、保護パッケージ材料に気密に接触する可能性の高さとして定義される。

摘示4(第13頁第10?15行)
FIG. 6 is a cross-sectional view of the tab 112 and the strip 114 of heat-sealable material with the gradual curvature taken along the line 6-6 in FIG. 3A and along the line 6-6 in Fig. 4A. In addition, Fig. 6 also shows the positions of the upper and lower edges 28a', 28a" relative to strip 114 and tab 112 of Fig. 4A.
(合議体訳)
図6は、タブ112と、図3Aの線6-6および図4Aの線6-6に沿った緩やかな曲率を有するヒートシール可能な材料のストリップ114の断面図である。加えて、図6はまた、図4Aのストリップ114とタブ112に関連して上側および下側の縁部28a'、28a"の位置も示す。

摘示5(図1,2)




摘示6(図3A)


摘示7(図4A,6)


5-2.引用発明の認定

引用例には、アノード層とカソード層とイオン伝導性電解質が積層され、アノード層とカソード層にそれぞれ電気的に接続されたタブを有する電池を、タブの一部を外に出して、プラスチック材料層とアルミニウム箔からなる上下一対の保護パッケージの層によって包み、周囲をヒートシールした電池アセンブリ(摘示1,5)において、シール性を向上させるために、タブの一部の周りにシール可能な材料のストリップを形成すること(摘示2,6)が記載され、該ストリップが、パッケージ材料と相溶性のある材料であって(摘示3)、タブを被覆し、上側と下側の保護パッケージ層の縁部の間に位置すること(摘示4,6)が記載されている。
してみると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「カソード層、アノード層及びイオン伝導性電解質が積層され、カソード・アノード層に電気的に接続されたタブを有する電池と、
前記タブの一部を外に出した状態で、前記電池を包み、その周囲をヒートシールした上下一対の保護パッケージ層を有する電池アセンブリにおいて、
前記タブの一部に被覆され、上側と下側の保護パッケージ層の縁部の間に位置して、シール性を向上させるストリップを有し、
前記保護パッケージ層がプラスチック材料層を有し、前記ストリップは、前記プラスチック材料層と相溶性を有する材料からなる電池アセンブリ。」

5-3.対比・判断

本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「カソード層」「アノード層」「タブ」「電池」「その周囲をヒートシールした上下一対の保護パッケージ層」「ストリップ」「プラスチック材料層」は、それぞれ本願発明の「陽極板」「陰極板」「電極タブ」「電極組立体」「上部ケース部と下部ケース部よりなり前記上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部とが接合されて密封するケース」「シーリング材」「熱接着性物質層」に相当するから、本願発明のうち、
「陽極板、陰極板の積層されている構造よりなり、形成された電流を外部に誘導するための電極タブを有する電極組立体と、
上部ケース部と下部ケース部よりなり、前記電極タブの一部を外部に露出させた状態で前記上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部とが接合されて前記電極組立体を密封するケースと、
前記電極タブの所定領域に所定の幅にコーティングされており、前記接合部位の上部ケース部の縁部と前記下部ケース部の縁部との間に介在されてシーリング材とを含み、
前記ケースは、その内部表面にコーティングされた熱接着性物質層を有する」点は、引用発明との差異にはならず、両者は次の点で相違する。

相違点1:本願発明は、「セパレータ」が積層され、「0.2気圧、90℃の条件下に放置した場合、16時間経過するまで前記有機電解液の漏れを防止する2次電池」であるのに対し、引用発明は、イオン伝導性電解質が積層され、シール性を向上させた電池アセンブリである点。

相違点2:本願発明は、「シーリング材は、前記ケースの内部表面にコーティングされた熱接着性物質層と同じ物質よりなり、前記シーリング材及び前記熱接着性物質層は、ポリプロピレン樹脂よりなる」のに対し、引用発明は、ストリップは、前記プラスチック材料層と相溶性を有する材料からなる点。

次にこれらの相違点について検討する。

相違点1について、引用発明のように、ヒートシールされたパッケージを有する電池アセンブリとして、有機電解液を含浸させたセパレータをイオン伝導性電解質とした2次電池は周知(要すれば、特開平2-21557号公報実施例、特開平9-63639号公報実施例等参照)であり、該2次電池において、シール性の向上を、有機電解液の漏れの程度で評価することは当業者にとって単なる設計的選択事項にすぎない。
してみると、引用発明において、相違点1を解消することは、周知技術に基づき、当業者が容易になし得たことである。

相違点2について、同一の材料の相溶性が高いことは、当業者に自明であるところ、電池のパッケージにおいて、ヒートシールされるプラスチック材料層にポリプロピレンを使用することは周知(要すれば、特開平2-21557号公報第2頁右上欄欄第6?7行、特開平9-63639号公報段落0008等参照)である。
してみると、引用発明において、相違点2を解消することは、周知技術に基づき、当業者が容易になし得たことである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、また、引用例に記載された発明と周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条の2並びに第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-06-05 
結審通知日 2013-06-11 
審決日 2013-06-25 
出願番号 特願2009-39666(P2009-39666)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 161- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松嶋 秀忠  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 大橋 賢一
山田 靖
発明の名称 2次電池  
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人  

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