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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1281860
審判番号 不服2012-15883  
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-15 
確定日 2013-11-21 
事件の表示 特願2006-272027「番組情報検索システム、放送受信装置、番組情報検索装置、番組情報検索方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日出願公開、特開2008- 90678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成18年10月3日の出願であって、平成21年9月25日付けで審査請求がなされ、平成23年9月9日付けで拒絶理由通知(同年9月20日発送)がなされ、同年11月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成24年5月10日付けで拒絶査定(同年5月15日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年8月15日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年10月19日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、平成25年4月15日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年4月16日発送)がなされたが、請求人からの応答がなかったものである。


第2 平成24年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年8月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年8月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年11月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至18の記載

「【請求項1】
放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムであって、
前記放送受信端末は、
前記番組情報を記憶するローカル記憶部と、
ユーザーの嗜好情報を取得する嗜好情報取得部と、
前記嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報を要求する番組情報要求部と、
前記リゾルバサーバから送信された番組情報を受信する番組情報受信部と、を備え、
前記リゾルバサーバは、
前記番組情報を記憶するマスター記憶部と、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づく番組情報の要求を前記放送受信端末から受信する番組情報要求受信部と、
前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて前記マスター記憶部から抽出する番組情報抽出部と、
前記マスター記憶部から抽出された番組情報を前記放送受信端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする、番組情報検索システム。
【請求項2】
放送番組のメタデータとロケーション情報を対応づけて前記識別子を付与し、前記番組情報を作成する番組情報作成装置を更に備え、
前記リゾルバサーバは、前記番組情報作成装置から前記番組情報を受け取ることを特徴とする、請求項1に記載の番組情報検索システム。
【請求項3】
放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバと接続される放送受信装置であって、
前記リゾルバサーバから送信された前記番組情報を記憶する記憶部と、
ユーザーの嗜好情報を取得する嗜好情報取得部と、
前記嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報の抽出を要求する番組情報抽出要求部と、
前記リゾルバサーバから送信された番組情報を受信する番組情報受信部と、
を備えることを特徴とする、放送受信装置。
【請求項4】
前記嗜好情報取得部は、前記番組情報が利用された際の利用履歴に基づいて前記嗜好情報を取得することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶された番組情報を、当該番組情報へのアクセス状況に応じて消去する番組情報消去部を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項6】
番組が放送されるまでの期間、対象メディア、番組のキーワード、番組のジャンル、番組の出演者又は抽出の際の優先順位を含む前記所定の環境条件を設定する環境条件設定部を更に備え、
前記番組情報抽出要求部は、前記環境条件に基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報の抽出を要求することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記リゾルバサーバが保持する特定の番組情報が更新された場合は、前記記憶部に記憶された当該特定の番組情報に対応する番組情報を更新する番組情報更新部を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項8】
前記番組情報を表示する表示部を更に備え、前記表示部は、前記識別子に基づいて分類される複数の放送局の番組情報を一画面に表示することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項9】
前記リゾルバサーバが保持している番組情報が更新された場合は、前記表示部に表示された番組情報のうち、更新に関連する項目の表示状態を可変することを特徴とする、請求項8に記載の放送受信装置。
【請求項10】
前記表示部に表示された前記番組情報に関係する複数の項目を選択可能な選択部を備え、
前記嗜好情報取得部は、選択された項目に基づいてユーザーの嗜好情報を取得することを特徴とする、請求項8に記載の放送受信装置。
【請求項11】
前記番組情報検索要求部は、ユーザーが要求する番組情報が前記記憶部に存在しない場合は、前記リゾルバサーバに当該番組情報の抽出を要求することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項12】
放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を記憶する記憶部と、
ユーザーの嗜好情報と番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づく番組情報の要求を放送受信端末から受信する番組情報要求受信部と、
前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて前記記憶部から抽出する番組情報抽出部と、
前記記憶部から抽出された番組情報を前記放送受信端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする、番組情報検索装置。
【請求項13】
前記番組情報抽出部は、前記放送受信端末から送信された、番組が放送されるまでの期間、対象メディア、番組のキーワード、番組のジャンル、番組の出演者又は抽出の際の優先順位を含む前記所定の環境条件に基づいて、前記嗜好情報に適合する番組情報を抽出することを特徴とする、請求項12に記載の番組情報検索装置。
【請求項14】
放送番組のメタデータとロケーション情報を対応づけて前記識別子を付与し、前記番組情報を作成する番組情報作成装置と接続され、前記番組情報作成装置から前記番組情報を受け取ることを特徴とする、請求項12に記載の番組情報検索装置。
【請求項15】
前記送信部は、前記記憶部が保持している前記番組情報が更新された場合は、更新に関連する情報を前記放送受信端末に送信することを特徴とする、請求項12に記載の番組情報検索装置。
【請求項16】
放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法であって、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得するステップと、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップと、
前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出するステップと、
抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部に記憶するステップと、
を有することを特徴とする、番組情報検索方法。
【請求項17】
番組情報を提供するリゾルバサーバから、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を受信する手段、
前記番組情報を記憶する手段、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得する手段、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記リゾルバサーバに前記番組情報の抽出を要求する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項18】
放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を記憶する手段、
ユーザーの嗜好情報と番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づく番組情報の要求を放送受信端末から受信する手段、
前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて前記記憶部から抽出する手段、
前記記憶部から抽出された番組情報を前記放送受信端末へ送信する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。)

を、

「【請求項1】
放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムであって、
前記放送受信端末は、
前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部と、
ユーザーの嗜好情報を取得する嗜好情報取得部と、
前記嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報を要求する番組情報要求部と、
前記リゾルバサーバから送信された番組情報を受信する番組情報受信部と、を備え、
前記リゾルバサーバは、
前記番組情報を記憶するマスター記憶部と、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づく番組情報の要求を前記放送受信端末から受信する番組情報要求受信部と、
前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて前記マスター記憶部から抽出する番組情報抽出部と、
前記マスター記憶部から抽出された番組情報を前記放送受信端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする、番組情報検索システム。
【請求項2】
放送番組のメタデータとロケーション情報を対応づけて前記識別子を付与し、前記番組情報を作成する番組情報作成装置を更に備え、
前記リゾルバサーバは、前記番組情報作成装置から前記番組情報を受け取ることを特徴とする、請求項1に記載の番組情報検索システム。
【請求項3】
放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバと接続される放送受信装置であって、
前記リゾルバサーバから送信された前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する記憶部と、
ユーザーの嗜好情報を取得する嗜好情報取得部と、
前記嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とに基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報の抽出を要求する番組情報抽出要求部と、
前記リゾルバサーバから送信された番組情報を受信する番組情報受信部と、
を備えることを特徴とする、放送受信装置。
【請求項4】
前記嗜好情報取得部は、前記番組情報が利用された際の利用履歴に基づいて前記嗜好情報を取得することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記記憶部に記憶された番組情報を、当該番組情報へのアクセス状況に応じて消去する番組情報消去部を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項6】
番組が放送されるまでの期間、対象メディア、番組のキーワード、番組のジャンル、番組の出演者又は抽出の際の優先順位を含む前記所定の環境条件を設定する環境条件設定部を更に備え、
前記番組情報抽出要求部は、前記環境条件に基づいて、前記リゾルバサーバに番組情報の抽出を要求することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記リゾルバサーバが保持する特定の番組情報が更新された場合は、前記記憶部に記憶された当該特定の番組情報に対応する番組情報を更新する番組情報更新部を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項8】
前記番組情報を表示する表示部を更に備え、前記表示部は、前記識別子に基づいて分類される複数の放送局の番組情報を一画面に表示することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項9】
前記リゾルバサーバが保持している番組情報が更新された場合は、前記表示部に表示された番組情報のうち、更新に関連する項目の表示状態を可変することを特徴とする、請求項8に記載の放送受信装置。
【請求項10】
前記表示部に表示された前記番組情報に関係する複数の項目を選択可能な選択部を備え、
前記嗜好情報取得部は、選択された項目に基づいてユーザーの嗜好情報を取得することを特徴とする、請求項8に記載の放送受信装置。
【請求項11】
前記番組情報検索要求部は、ユーザーが要求する番組情報が前記記憶部に存在しない場合は、前記リゾルバサーバに当該番組情報の抽出を要求することを特徴とする、請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項12】
放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法であって、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得するステップと、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップと、
前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出するステップと、
抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップと、
を有することを特徴とする、番組情報検索方法。
【請求項13】
番組情報を提供するリゾルバサーバから、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を受信する手段、
前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する手段、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得する手段、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記リゾルバサーバに前記番組情報の抽出を要求する手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。


2.新規事項追加禁止要件

本件補正により、補正前の請求項1の「前記番組情報を記憶するローカル記憶部」は、補正後の請求項1の「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」に変更されたが、これにより本願明細書の記載と整合しなくなった。すなわち、本願明細書では、「放送受信端末」が備えた「番組情報」を記憶するための「ローカルCRIDデータベース1478」に関し、段落【0081】の「放送受信端末1400は、蓄積された嗜好情報に基づいて、嗜好情報に適合する番組のG-CRIDをマスターCRIDデータベース1310から自動で取得し、ローカルCRIDデータベース1478に蓄積する。」,段落【0086】の「次に、図10に基づいて、嗜好情報をもとにマスターCRIDデータベース1310からローカルCRIDデータベース1478へ番組情報のG-CRIDを格納する方法の一例を詳細に説明する。」,段落【0090】の「ここでは、環境設定で設定された期間を対象にして、嗜好情報ファイル、環境設定ファイルの記述に基づいて、マスターCRIDデータベース1310内のG-CRIDから100番組を取得するものとする。」との記載があり、「ローカルCRIDデータベース」に格納される「番組情報」は、「嗜好情報」または「嗜好情報と環境条件」に基づき取得される旨が記載されていると認められる。確かに、本願明細書の段落【0084】の「図9は、嗜好情報の一例を示す模式図である。図9に示す嗜好情報は、番組の利用に応じて蓄積されたユーザーの嗜好に基づいて記述される。また、嗜好情報は、ユーザーが放送受信端末1400を操作することで入力しても良い。」との記載があり、ユーザーの利用履歴から嗜好情報が生成される場合もある旨が記載されているが、その場合でも「番組情報」は「嗜好情報」に基づき取得され、「ローカルCRIDデータベース」に格納されるのであるから、「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」に変更した本件補正は本願明細書の記載に整合していない。
そもそも、補正後の請求項1には、「前記リゾルバサーバは、…(中略)…前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて前記マスター記憶部から抽出する番組情報抽出部と、前記マスター記憶部から抽出された番組情報を前記放送受信端末へ送信する送信部と、」と記載されており、「放送受信端末」が受信する「番組情報」は「前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する」ものであるから、「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」の記載は、補正後の請求項1の他の構成の記載とも整合していない。
したがって、補正後の請求項1の「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

また、補正後の請求項3の「前記リゾルバサーバから送信された前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する記憶部」,補正後の請求項12の「前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップ」,補正後の請求項13の「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する手段」についても、上記の補正後の請求項1の「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」と同様の理由により、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には記載されておらず、また当初明細書等の記載からみて自明な事項でもない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。


3.目的要件

仮に、本件補正が新規事項追加でないとして、以下、検討を続ける。

本件補正は、補正前の請求項12乃至15,18を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記番組情報を記憶するローカル記憶部」を「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶するローカル記憶部」に限定し、補正前の請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記リゾルバサーバから送信された前記番組情報を記憶する記憶部」を「前記リゾルバサーバから送信された前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する記憶部」に限定し、補正前の請求項16に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記放送受信端末のローカル記憶部に記憶するステップ」を「前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップ」に限定し、補正前の請求項17に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記番組情報を記憶する手段」を「前記番組情報をユーザーの利用履歴に応じて記憶する手段」に限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合する。


4.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項12に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、補正前の請求項16に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)本件補正発明

本件補正により、本件補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項12に記載されたとおりのものである。

「放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法であって、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得するステップと、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップと、
前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出するステップと、
抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップと、
を有することを特徴とする、番組情報検索方法。」


(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の出願前に頒布され、原審の拒絶査定の理由である上記平成23年9月9日付けの拒絶理由通知において引用された、米国特許出願公開第2003/0020744号明細書(平成15年1月30日出願公開(米国)、以下、「引用文献」という。訳には、パテントファミリーである特表2002-530969号公報を参照した。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

A 「[0039] The program guide data transmitted by main facility 12 to interactive television program guide equipment 17 may include television programming data (e.g., program identifiers, times, channels, titles, descriptions, series identifiers, etc.) and other data for services other than television program listings (e.g., help text, pay-per-view information, weather information, sports information, music channel information, associated Internet web links, associated software, etc.). There are preferably numerous pieces or installations of interactive television program guide equipment 17 , although only one is shown in FIG. 1 to avoid over-complicating the drawing.」
訳;「[0039] 主設備12によって双方向テレビ番組ガイド機器17へと伝送される番組ガイドデータは、テレビ番組データ(例えば、番組識別子、時間、チャンネル、タイトル、詳細、シリーズ識別子等)と、テレビ番組リスト項目以外のサービス用の他のデータ(例えば、ヘルプテキスト、ペイ・パー・ビュー情報、気象情報、スポーツ情報、音楽チャンネル、関連付けられたインターネットウェブリンク、関連付けられたソフトウェア等)とを含み得る。膨大な数の双方向テレビ番組ガイド機器17をインストールするのが好ましいが、図面が過度に複雑になるのを避けるため、図1中では双方向テレビ番組ガイド機器17を1つだけ図示している。」

B 「[0041] A client-server based interactive television program guide is implemented on interactive television program guide equipment 17 . Three illustrative arrangements for interactive television program guide equipment 17 are shown in FIGS. 2a - 2c . FIG. 2a shows an illustrative arrangement for interactive television program guide equipment 17 in which a program guide server obtains program guide data directly from main facility 12 . FIG. 2b shows an illustrative arrangement for interactive television program guide equipment 17 in which a program guide server obtains program guide data from main facility 12 or some other facility (e.g., local information service 15 ) via the Internet. In either of these approaches, users may be provided with opportunities to access program guide data without having to navigate the Internet, if desired. As shown in FIGS. 2a and 2b , interactive program guide television equipment 17 may include television distribution facility 16 and user television equipment 22 .
[0042] Television distribution facility 16 may have program guide distribution equipment 21 and program guide server 25 . Distribution equipment 21 is equipment suitable for providing program guide data from program guide server 25 to user television equipment 22 over communications path 20 .」
訳;「[0041] クライアント-サーバに基づいた双方向テレビ番組ガイドは、双方向テレビ番組ガイド機器17上にインプリメントされる。図2a?2cは、双方向テレビ番組ガイド機器17の3種類の例示的構成を示す。図2aは、番組ガイドサーバが主設備12から直接番組ガイドデータを取得する双方向テレビ番組ガイド機器17の例示的構成を示す。図2bは、番組ガイドサーバが主設備12または何らかの他の設備(例えば、ローカル情報サービス15)からインターネットを通じて番組ガイドデータを取得する双方向テレビ番組ガイド機器17の例示的構成を示す。これらのアプローチのいづれにおいても、所望ならば、インターネットをナビゲートしなくても番組ガイドデータにアクセスする機会がユーザに与えられ得る。図2aおよび2bにおいて、双方向テレビ番組ガイド機器17は、テレビ配信設備16およびユーザテレビ機器22を含み得る。
[0042] テレビ配信設備16は、番組ガイド配信機器21および番組ガイドサーバ25を有し得る。配信機器21は、通信経路20を通じて番組ガイドサーバ25からユーザテレビ機器22へと番組ガイドデータを提供するのに適した機器である。」

C 「[0044] Program guide server 25 may be based on any suitable combination of server software and hardware. Program guide server 25 may retrieve program guide data or video files from storage device 56 in response to program guide data or video requests generated by an interactive television program guide client implemented on user television equipment 22 . As shown in FIGS. 2a and 2b , program guide server 25 may include processing circuitry 54 and storage device 56 . Processing circuitry 54 may include any suitable processor, such as a microprocessor or group of microprocessors, and other processing circuitry such as caching circuitry, video decoding circuitry, direct memory access (DMA) circuitry, input/output (I/O) circuitry, etc.」
訳;「[0044] 番組ガイドサーバ25は、サーバソフトウェアとサーバハードウェアとの任意の適切な組み合せに基づき得る。番組ガイドサーバ25は、ユーザテレビ機器22にインプリメントされた双方向テレビ番組ガイドクライアントにより生成される番組ガイドデータリクエストまたは映像リクエストに応答して、格納デバイス56から番組ガイドデータまたは映像ファイルを取り出し得る。図2aおよび2bに示すように、番組ガイドサーバ25は、処理回路54および格納デバイス56を含み得る。処理回路54は、任意の適切なプロセッサ(例えば、1つのマイクロプロセッサまたはマイクロプロセッサ群)および他の処理回路(例えば、キャッシュ回路、映像解読回路、ダイレクトメモリアクセス(DMA)回路、入力/出力(I/O)回路等)を含み得る。」

D 「[0060] A more generalized embodiment of user television equipment 22 of FIG. 3 is shown in FIG. 4 . As shown in FIG. 4 , program guide data from television distribution facility 16 ( FIG. 1 ) and programming are received by control circuitry 42 of user television equipment 22 . The functions of control circuitry 42 may be provided using the set-top box arrangement of FIGS. 2a and 2b . Alternatively, these functions may be integrated into an advanced television receiver, personal computer television (PC/TV) such as shown in FIG. 2c , or any other suitable arrangement. If desired, a combination of such arrangements may be used.
…(中略)…
[0062] User television equipment 22 may also have memory 63 . Memory 63 may be any memory or other storage device, such as a random access memory (RAM), read only memory (ROM), flash memory, a hard disk drive, a combination of such devices, etc., that is suitable for storing program guide client instructions and program guide data for use by control circuitry 42 .」
訳;「[0060] 図4は、図3のユーザテレビ機器22の実施形態をより一般化したものである。図4に示すように、テレビ配信設備16(図1)からの番組ガイドデータおよび番組は、ユーザテレビ機器22の制御回路42により受信される。制御回路42の機能は、図2aおよび2bのセットトップボックス構成を用いて提供され得る。あるいは、制御回路42の機能は、高度なテレビ受信器、図2cに示すようなパーソナルコンピュータテレビ(PC/TV)、または他のあらゆる適切な構成に組み込まれ得る。所望ならば、このような構成の組み合せを用いてもよい。
…(中略)…
[0062] ユーザテレビ機器22はまた、メモリ63も有し得る。メモリ63は、制御回路42により用いられる番組ガイドクライアントの命令および番組ガイドデータを格納するのに適切な任意のメモリまたは他の格納デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、このようなデバイスの組み合せ等)であり得る。」

E 「[0111] The program guide may make personalized viewing recommendations based on the viewing histories, preference profiles, or any suitable combination thereof. Program guide server 25 may, for example, construct relational database expressions from the viewing histories that define expressions for the program categories and ratings for programs that users have watched, scheduled reminders for, searched for, or ordered the most. Program guide server 25 may then apply user preference profile criteria to the programs, and generate personal viewing recommendations. In still another suitable approach, program guide server 25 or the program guide client may filter viewing recommendations that are generated by main facility 12 or television distribution facility 16 based on similar expressions, profiles, viewing histories, etc.」
訳;「[0111] 番組ガイドは、視聴履歴、選好プロフィール、またはこれらの任意の適切な組み合せに基づいて、個人用にされた視聴推薦を行い得る。番組ガイドサーバ25は、例えば、番組カテゴリおよびユーザが見た番組の格付け、リマインダが予約された番組、サーチされた番組、または最も注文が多かった番組についての式を定義する視聴履歴から、リレーショナルデータベース式を構築し得る。次いで、番組ガイドサーバ25は、番組にユーザ選好プロフィール基準を適用し、個人向けの視聴推薦を生成し得る。さらに別のアプローチにおいて、番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、同様の式、プロフィール、視聴履歴等に基づいて、主設備12またはテレビ配信設備16によって生成される視聴推薦をフィルタリングし得る。」

F 「[0114] FIG. 21 shows a flowchart of illustrative steps involved in storing preference profiles on program guide server 25 . If desired, the steps shown may be performed in a client-server interactive program guide system in which users are not required to navigate the Internet. At step 2000 , the program guide client running on user television equipment 22 provides a user with an opportunity to define a preference profile. The preference profile may include user selected or defined levels of desirability of various program characteristics, such as genre and rating. Users may define preference profiles by, for example, selecting a profile (step 2002 ) and selecting criteria (step 2004 ) such as attribute types (step 2006 ) and attributes (step 2008 ). Preference profiles may, for example, be created as database files (e.g., SQL files) containing suitable database expressions that are provided to program guide server 25 . Program guide server 25 may store the preference profiles at step 2012 .
[0115] Program guide data is provided from program guide server 25 to the program guide client and is displayed by the program guide client at steps 2020 and 2030 , respectively. Program guide server 25 or the program guide client may use preference profiles to filter out undesirable program guide data. This may be accomplished using any suitable approach. Program guide server 25 may, for example, only provide program listings information or other program guide data that meets the preference profile or profiles to the program guide client (step 2025 ). Alternatively, program guide server 25 may provide program guide data, other information, or videos to the program guide client and the program guide client may filter the data, other information, or videos by displaying only those elements that meet the preference profile or profiles (step 2035 ).」
訳;「[0114] 図21は、選好プロフィールを番組ガイドサーバ25に格納する際の例示的工程のフローチャートを示す。所望ならば、図21に示す工程は、ユーザがインターネットをナビゲートする必要の無いクライアント-サーバ双方向番組ガイドシステムにおいて行われ得る。工程2000において、ユーザテレビ機器22上で動作する番組ガイドクライアントは、選好プロフィールを定義する機会をユーザに提供する。選好プロフィールは、ユーザが選択または定義した様々な番組特性(例えば、ジャンルおよび格付け等)の所望度(desirability)レベルを含み得る。ユーザは、例えばプロフィールを選択し(工程2002)、基準(例えば、属性の種類(工程2006)および属性(工程2008)等)を選択(工程2004)することにより、選好プロフィールを定義し得る。選好プロフィールは、例えば、番組ガイドサーバ25に提供される適切なデータベース式を含むデータベースファイル(例えば、SQLファイル等)として生成され得る。工程2012において、番組ガイドサーバ25は、選好プロフィールを格納し得る。
[0115] 番組ガイドデータは、工程2020において番組ガイドサーバ25から番組ガイドクライアントへと提供され、工程2030において番組ガイドクライアントによって表示される。番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、選好プロフィールを用いて、望ましくない番組ガイドデータをフィルタリング除去する。このフィルタリング除去工程は、任意の適切なアプローチを用いて達成され得る。番組ガイドサーバ25は、例えば、選好プロフィール(単数または複数)を満たす番組リスト項目情報または他の番組ガイドデータのみを番組ガイドクライアントに提供し得る(工程2025)。あるいは、番組ガイドサーバ25は、番組ガイドデータ、他の情報、または映像を番組ガイドクライアントに提供し得、番組ガイドクライアントは、選好プロフィール(単数または複数)を満たす要素のみを表示することにより、それらのデータ、他の情報、または映像をフィルタリングし得る(工程2035)。」

ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Aの「[0039] The program guide data transmitted by main facility 12 to interactive television program guide equipment 17 may include television programming data (e.g., program identifiers, times, channels, titles, descriptions, series identifiers, etc.) and other data for services other than television program listings (e.g., help text, pay-per-view information, weather information, sports information, music channel information, associated Internet web links, associated software, etc.).(訳;[0039] 主設備12によって双方向テレビ番組ガイド機器17へと伝送される番組ガイドデータは、テレビ番組データ(例えば、番組識別子、時間、チャンネル、タイトル、詳細、シリーズ識別子等)と、テレビ番組リスト項目以外のサービス用の他のデータ(例えば、ヘルプテキスト、ペイ・パー・ビュー情報、気象情報、スポーツ情報、音楽チャンネル、関連付けられたインターネットウェブリンク、関連付けられたソフトウェア等)とを含み得る。)」との記載からみて、「双方向テレビ番組ガイド機器」が利用する「番組ガイドデータ」は、テレビ番組毎の「番組識別子」を含むものである。
また、上記Bの「FIG. 2a shows an illustrative arrangement for interactive television program guide equipment 17 in which a program guide server obtains program guide data directly from main facility 12 . FIG. 2b shows an illustrative arrangement for interactive television program guide equipment 17 in which a program guide server obtains program guide data from main facility 12 or some other facility (e.g., local information service 15 ) via the Internet. In either of these approaches, users may be provided with opportunities to access program guide data without having to navigate the Internet, if desired. As shown in FIGS. 2a and 2b , interactive program guide television equipment 17 may include television distribution facility 16 and user television equipment 22 . [0042] Television distribution facility 16 may have program guide distribution equipment 21 and program guide server 25 . Distribution equipment 21 is equipment suitable for providing program guide data from program guide server 25 to user television equipment 22 over communications path 20 .(訳;図2aは、番組ガイドサーバが主設備12から直接番組ガイドデータを取得する双方向テレビ番組ガイド機器17の例示的構成を示す。図2bは、番組ガイドサーバが主設備12または何らかの他の設備(例えば、ローカル情報サービス15)からインターネットを通じて番組ガイドデータを取得する双方向テレビ番組ガイド機器17の例示的構成を示す。これらのアプローチのいづれにおいても、所望ならば、インターネットをナビゲートしなくても番組ガイドデータにアクセスする機会がユーザに与えられ得る。図2aおよび2bにおいて、双方向テレビ番組ガイド機器17は、テレビ配信設備16およびユーザテレビ機器22を含み得る。[0042] テレビ配信設備16は、番組ガイド配信機器21および番組ガイドサーバ25を有し得る。配信機器21は、通信経路20を通じて番組ガイドサーバ25からユーザテレビ機器22へと番組ガイドデータを提供するのに適した機器である。)」との記載からすると、「双方向テレビ番組ガイド機器」は「ユーザテレビ機器」および「番組ガイドサーバ」を含むことは明らかであり、「通信経路」を通じて「番組ガイドサーバ」から「ユーザテレビ機器」へと「番組ガイドデータ」が提供されることから、引用文献には、
「テレビ番組を受信するユーザテレビ機器と、番組識別子を含む番組ガイドデータを提供する番組ガイドサーバとが通信経路を通じて接続された双方向テレビ番組ガイド機器で用いられる番組ガイドデータ提供方法」
が記載されていると解される。

(イ)上記Cの「[0044] Program guide server 25 may be based on any suitable combination of server software and hardware. Program guide server 25 may retrieve program guide data or video files from storage device 56 in response to program guide data or video requests generated by an interactive television program guide client implemented on user television equipment 22 . As shown in FIGS. 2a and 2b , program guide server 25 may include processing circuitry 54 and storage device 56 .(訳;[0044] 番組ガイドサーバ25は、サーバソフトウェアとサーバハードウェアとの任意の適切な組み合せに基づき得る。番組ガイドサーバ25は、ユーザテレビ機器22にインプリメントされた双方向テレビ番組ガイドクライアントにより生成される番組ガイドデータリクエストまたは映像リクエストに応答して、格納デバイス56から番組ガイドデータまたは映像ファイルを取り出し得る。図2aおよび2bに示すように、番組ガイドサーバ25は、処理回路54および格納デバイス56を含み得る。)」との記載、上記Eの「[0111] The program guide may make personalized viewing recommendations based on the viewing histories, preference profiles, or any suitable combination thereof. Program guide server 25 may, for example, construct relational database expressions from the viewing histories that define expressions for the program categories and ratings for programs that users have watched, scheduled reminders for, searched for, or ordered the most. Program guide server 25 may then apply user preference profile criteria to the programs, and generate personal viewing recommendations. In still another suitable approach, program guide server 25 or the program guide client may filter viewing recommendations that are generated by main facility 12 or television distribution facility 16 based on similar expressions, profiles, viewing histories, etc.(訳;[0111] 番組ガイドは、視聴履歴、選好プロフィール、またはこれらの任意の適切な組み合せに基づいて、個人用にされた視聴推薦を行い得る。番組ガイドサーバ25は、例えば、番組カテゴリおよびユーザが見た番組の格付け、リマインダが予約された番組、サーチされた番組、または最も注文が多かった番組についての式を定義する視聴履歴から、リレーショナルデータベース式を構築し得る。次いで、番組ガイドサーバ25は、番組にユーザ選好プロフィール基準を適用し、個人向けの視聴推薦を生成し得る。さらに別のアプローチにおいて、番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、同様の式、プロフィール、視聴履歴等に基づいて、主設備12またはテレビ配信設備16によって生成される視聴推薦をフィルタリングし得る。)」との記載からすると、「番組ガイドサーバ」は「番組ガイドデータ」を「格納デバイス」に格納し、ユーザの「選好プロフィール」のほか、「視聴履歴」に基づき「番組ガイドデータ」を視聴推薦していることから、引用文献には、
「番組ガイドサーバが備える格納デバイスから、ユーザの選好プロフィール、視聴履歴等に基づき番組ガイドデータを抽出するステップ」
が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「[0044] Program guide server 25 may be based on any suitable combination of server software and hardware. Program guide server 25 may retrieve program guide data or video files from storage device 56 in response to program guide data or video requests generated by an interactive television program guide client implemented on user television equipment 22 .(訳;[0044] 番組ガイドサーバ25は、サーバソフトウェアとサーバハードウェアとの任意の適切な組み合せに基づき得る。番組ガイドサーバ25は、ユーザテレビ機器22にインプリメントされた双方向テレビ番組ガイドクライアントにより生成される番組ガイドデータリクエストまたは映像リクエストに応答して、格納デバイス56から番組ガイドデータまたは映像ファイルを取り出し得る。)」との記載、上記Fの「At step 2000 , the program guide client running on user television equipment 22 provides a user with an opportunity to define a preference profile. The preference profile may include user selected or defined levels of desirability of various program characteristics, such as genre and rating. Users may define preference profiles by, for example, selecting a profile (step 2002 ) and selecting criteria (step 2004 ) such as attribute types (step 2006 ) and attributes (step 2008 ). Preference profiles may, for example, be created as database files (e.g., SQL files) containing suitable database expressions that are provided to program guide server 25 . Program guide server 25 may store the preference profiles at step 2012 . [0115] Program guide data is provided from program guide server 25 to the program guide client and is displayed by the program guide client at steps 2020 and 2030 , respectively. Program guide server 25 or the program guide client may use preference profiles to filter out undesirable program guide data. This may be accomplished using any suitable approach. Program guide server 25 may, for example, only provide program listings information or other program guide data that meets the preference profile or profiles to the program guide client (step 2025 ). Alternatively, program guide server 25 may provide program guide data, other information, or videos to the program guide client and the program guide client may filter the data, other information, or videos by displaying only those elements that meet the preference profile or profiles (step 2035 ).(訳;工程2000において、ユーザテレビ機器22上で動作する番組ガイドクライアントは、選好プロフィールを定義する機会をユーザに提供する。選好プロフィールは、ユーザが選択または定義した様々な番組特性(例えば、ジャンルおよび格付け等)の所望度(desirability)レベルを含み得る。ユーザは、例えばプロフィールを選択し(工程2002)、基準(例えば、属性の種類(工程2006)および属性(工程2008)等)を選択(工程2004)することにより、選好プロフィールを定義し得る。選好プロフィールは、例えば、番組ガイドサーバ25に提供される適切なデータベース式を含むデータベースファイル(例えば、SQLファイル等)として生成され得る。工程2012において、番組ガイドサーバ25は、選好プロフィールを格納し得る。[0115] 番組ガイドデータは、工程2020において番組ガイドサーバ25から番組ガイドクライアントへと提供され、工程2030において番組ガイドクライアントによって表示される。番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、選好プロフィールを用いて、望ましくない番組ガイドデータをフィルタリング除去する。このフィルタリング除去工程は、任意の適切なアプローチを用いて達成され得る。番組ガイドサーバ25は、例えば、選好プロフィール(単数または複数)を満たす番組リスト項目情報または他の番組ガイドデータのみを番組ガイドクライアントに提供し得る(工程2025)。あるいは、番組ガイドサーバ25は、番組ガイドデータ、他の情報、または映像を番組ガイドクライアントに提供し得、番組ガイドクライアントは、選好プロフィール(単数または複数)を満たす要素のみを表示することにより、それらのデータ、他の情報、または映像をフィルタリングし得る(工程2035)。)」との記載からすると、ユーザの定義などによりユーザの「選好プロフィール」は取得され、ユーザの「選好プロフィール」に基づく「番組ガイドデータ」の抽出を「ユーザテレビ機器」から「番組ガイドサーバ」に要求しているのは自明であるから、引用文献には、
「ユーザの選好プロフィールを取得するステップと、ユーザの選好プロフィールに基づいて、ユーザテレビ機器から番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求するステップ」
が記載されていると解される。

(エ)上記Dの「[0060] A more generalized embodiment of user television equipment 22 of FIG. 3 is shown in FIG. 4 . As shown in FIG. 4 , program guide data from television distribution facility 16 ( FIG. 1 ) and programming are received by control circuitry 42 of user television equipment 22 . The functions of control circuitry 42 may be provided using the set-top box arrangement of FIGS. 2a and 2b . Alternatively, these functions may be integrated into an advanced television receiver, personal computer television (PC/TV) such as shown in FIG. 2c , or any other suitable arrangement. If desired, a combination of such arrangements may be used.
…(中略)…
[0062] User television equipment 22 may also have memory 63 . Memory 63 may be any memory or other storage device, such as a random access memory (RAM), read only memory (ROM), flash memory, a hard disk drive, a combination of such devices, etc., that is suitable for storing program guide client instructions and program guide data for use by control circuitry 42 .(訳;[0060] 図4は、図3のユーザテレビ機器22の実施形態をより一般化したものである。図4に示すように、テレビ配信設備16(図1)からの番組ガイドデータおよび番組は、ユーザテレビ機器22の制御回路42により受信される。制御回路42の機能は、図2aおよび2bのセットトップボックス構成を用いて提供され得る。あるいは、制御回路42の機能は、高度なテレビ受信器、図2cに示すようなパーソナルコンピュータテレビ(PC/TV)、または他のあらゆる適切な構成に組み込まれ得る。所望ならば、このような構成の組み合せを用いてもよい。…(中略)…[0062] ユーザテレビ機器22はまた、メモリ63も有し得る。メモリ63は、制御回路42により用いられる番組ガイドクライアントの命令および番組ガイドデータを格納するのに適切な任意のメモリまたは他の格納デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、このようなデバイスの組み合せ等)であり得る。)」との記載からすると、「ユーザテレビ機器」は受信した「番組ガイドデータ」を格納するための「メモリ」を備えていると解される。
また、上記Eの「[0111] The program guide may make personalized viewing recommendations based on the viewing histories, preference profiles, or any suitable combination thereof. …(中略)… In still another suitable approach, program guide server 25 or the program guide client may filter viewing recommendations that are generated by main facility 12 or television distribution facility 16 based on similar expressions, profiles, viewing histories, etc.(訳;[0111] 番組ガイドは、視聴履歴、選好プロフィール、またはこれらの任意の適切な組み合せに基づいて、個人用にされた視聴推薦を行い得る。…(中略)…。さらに別のアプローチにおいて、番組ガイドサーバ25または番組ガイドクライアントは、同様の式、プロフィール、視聴履歴等に基づいて、主設備12またはテレビ配信設備16によって生成される視聴推薦をフィルタリングし得る。)」との記載からすると、「番組ガイドサーバ」が提供する「番組ガイドデータ」はユーザの「選好プロフィール」のほか、「視聴履歴」に基づき抽出されるものと解されるから、引用文献には、
「抽出した番組ガイドデータを番組ガイドサーバからユーザテレビ機器に送信し、ユーザテレビ機器のメモリにユーザの選好プロフィール、視聴履歴等に基づいて格納するステップ」
が記載されていると解される。

以上、(ア)乃至(エ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「テレビ番組を受信するユーザテレビ機器と、番組識別子を含む番組ガイドデータを提供する番組ガイドサーバとが通信経路を通じて接続された双方向テレビ番組ガイド機器で用いられる番組ガイドデータ提供方法であって、
ユーザの選好プロフィールを取得するステップと、
ユーザの前記選好プロフィールに基づいて、前記ユーザテレビ機器から前記番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求するステップと、
前記番組ガイドサーバが備える格納デバイスから、ユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づき番組ガイドデータを抽出するステップと、
抽出した番組ガイドデータを前記番組ガイドサーバから前記ユーザテレビ機器に送信し、前記ユーザテレビ機器のメモリにユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づいて格納するステップと、
を有することを特徴とする、番組ガイドデータの提供方法。」


(3)参考文献

(3-1)参考文献1に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布され、上記平成24年5月10日付けの原審の拒絶査定において引用された、特開2006-80680号公報(平成18年3月23日出願公開、以下、「参考文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

G 「【0164】
〈番組検索パターンにおける動作〉
次に、図8および図9に示すフローチャートを参照して、番組検索パターンにおける動作について説明する(適宜、図1参照)。まず、図8(a)に示したフローチャートを参照して、番組検索から検索結果表示までの動作から説明する。
…(中略)…。
【0166】
ここで、ステップS105およびステップS106を実行する際に、番組の検索する時間範囲を3日/1週間のように設定することができる(RDR[Retrieve Date Rauge])。そして、デジタル放送受信装置1は、主制御手段9によって、視聴者が設定した許容待ち時間の範囲で、番組情報に含まれており、且つ、設定された時間範囲にある全番組の番組名と番組記述とを検索し、合致(一致)した番組を求める。」

(3-2)参考文献2に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布され、上記平成24年5月10日付けの原審の拒絶査定において引用された、特開2006-94018号公報(平成18年4月6日出願公開、以下、「参考文献2」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

H 「【0149】
なお、合致度を算出する上においては、キーワード種別ごとに適宜重みをかけてもよい。例えば、タイトルに重みGをつける場合は、3×G=3Gがタイトルの平均値となる。タイトルに重みをつけた場合には、ユーザが過去に視聴した番組の合致度が高くなる。一方、出演者に重みをつけた場合には、出演者に重きをおいた推薦が可能になる。
【0150】
また、この場合には、ジャンル別に重みのかけ方をかえても良い。例えば、連続ドラマの場合には、繰り返し同じタイトルの番組を視聴する可能性が高いので、タイトルに重みをつけてもよい。また、映画の場合には、タイトルがさまざまなので、出演者や単語に重みをつけた方が、ユーザがよく見る俳優が出演する映画や、よく見る内容の映画を推薦することが可能になる。」

(3-3)参考文献3に記載されている技術的事項

本願の出願前に頒布された、特開2006-50322号公報(平成18年2月16日出願公開、以下、「参考文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。

J 「【0008】
<第1の実施の形態>
図2は本発明に係るユーザ嗜好情報提供システムの第1の実施の形態の概略構成図である。同図において、操作手段としてのリモコン1は学習機能搭載VDR2を遠隔操作するもので、ユーザがリモコン1を操作することによって、自分の好む番組の選局や再生・録画の操作をすることができる。学習機能搭載VDR2は、放送局3から伝送される放送電波の間に付加されている電子的なテレビジョン番組表に相当するEPGデータ4を取得するようになっている。学習機能搭載VDR2は、ユーザが視聴する番組の選局及びリモコン1による操作の各履歴データとEPGデータ4とに基づいてユーザの嗜好を学習し、推薦番組データ(以下、単に推薦番組とも言う)5を抽出する。そして、学習機能搭載VDR2はそれ自体をインターネット6に接続し、推薦番組データ5をキーとして番組情報提供会社の番組情報提供サーバ7より、推薦番組に一致するより詳細な情報、すなわち、ユーザの嗜好に合った情報を取得する。このとき、推薦番組に付加する嗜好情報8が番組情報提供サーバ7から学習機能搭載VDR2に送られ、学習機能搭載VDR2は推薦番組及び嗜好情報8をテレビなどの表示装置9に表示する。ユーザは表示装置9の映像によって推薦番組と嗜好情報8を確認することができる。」


(4)本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「テレビ番組」、「番組識別子」、「通信経路」は、本件補正発明の「放送番組」、「放送番組毎に固有の識別子」、「通信網」に相当する。また、引用発明の「番組ガイドデータ」は放送されるテレビ番組毎の情報を含むことは自明であるから、引用発明の「番組ガイドデータ」は本件補正発明の「番組情報」に相当する。そして、引用発明の「ユーザテレビ機器」は「通信経路」を通じて「番組ガイドデータ」を提供する「番組ガイドサーバ」と接続され、「双方向テレビ番組ガイド機器」は「ユーザテレビ機器」や「番組ガイドサーバ」などから構成されている。
してみると、引用発明の「ユーザテレビ機器」、「番組ガイドサーバ」、「双方向テレビ番組ガイド機器」は、本件補正発明の「放送受信端末」、「リゾルバサーバ」、「番組情報検索システム」に相当し、引用発明では「番組ガイドデータ」を「番組ガイドサーバ」において検索し、「ユーザテレビ機器」に提供することから、引用発明の「テレビ番組を受信するユーザテレビ機器と、番組識別子を含む番組ガイドデータを提供する番組ガイドサーバとが通信経路を通じて接続された双方向テレビ番組ガイド機器で用いられる番組ガイドデータ提供方法」は、本件補正発明の「放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法」に相当する。

(4-2)引用発明の「ユーザの選好プロフィール」は、上記Fの記載からすると、ユーザが選択または定義した様々な番組特性の所望度レベルを含み得ることから、本件補正発明の「嗜好情報」に相当する。
してみると、引用発明の「ユーザの選好プロフィールを取得するステップ」と、本件補正発明の「ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得するステップ」とは、ともに、“ユーザーの嗜好情報を取得するステップ” である点で共通するといえる。
また、引用発明の「ユーザの前記選好プロフィールに基づいて、前記ユーザテレビ機器から前記番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求するステップ」と、本件補正発明の「前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップ」とは、ともに、“嗜好情報に基づいて、放送受信端末からリゾルバサーバに番組情報を要求するステップ” である点で共通するといえる。

(4-3)引用発明の「格納デバイス」は、「番組ガイドサーバ」において「番組ガイドデータ」を記憶するための手段として利用されるから、本件補正発明の「マスター記憶部」に相当する。
してみると、引用発明の「前記番組ガイドサーバが備える格納デバイスから、ユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づき番組ガイドデータを抽出するステップ」と、本件補正発明の「前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出するステップ」とは、ともに、“リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、嗜好情報等に適合する番組情報を抽出するステップ” である点で共通するといえる。

(4-4)引用発明の「ユーザテレビ機器のメモリ」に格納する「番組ガイドデータ」は、「ユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等」に基づいて抽出されたものであり、本件補正発明の「放送受信端末のローカル記憶部」に記憶する「番組情報」は、「ユーザーの利用履歴」に応じて抽出されたものであるが、「ユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等」と「ユーザーの利用履歴」はユーザ固有の“ユーザー情報”である点で共通しているといえる。
してみると、引用発明の「抽出した番組ガイドデータを前記番組ガイドサーバから前記ユーザテレビ機器に送信し、前記ユーザテレビ機器のメモリにユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づいて格納するステップ」と、本件補正発明の「抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップ」とは、ともに、“抽出した番組情報をリゾルバサーバから放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザー情報に応じて記憶するステップ” である点で共通するといえる。

以上から、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法であって、
ユーザーの嗜好情報を取得するステップと、
前記嗜好情報に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップと、
前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報等に適合する番組情報を抽出するステップと、
抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザー情報に応じて記憶するステップと、
を有することを特徴とする、番組情報検索方法。

(相違点1)

番組情報抽出のために取得する情報に関して、本件補正発明が、「ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得する」のに対し、引用発明は、「ユーザの選好プロフィールを取得する」が、「所定の環境条件」を取得することについて特には記載されていない点。

(相違点2)

ユーザー側端末からの番組情報検索の要求に関して、本件補正発明が、「前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求する」のに対し、引用発明は、「ユーザの前記選好プロフィールに基づいて、前記ユーザテレビ機器から前記番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求」しており、「環境条件」に基づいて「番組ガイドデータ」を要求することについて特には記載されていない点。

(相違点3)

番組情報の検索処理に関して、本件補正発明が、「前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出する」のに対し、引用発明は、「前記番組ガイドサーバが備える格納デバイスから、ユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づき番組ガイドデータを抽出」しており、「番組ガイドデータ」の抽出を「環境条件」に基づいて行うことについて特に記載されておらず、「番組識別子」を用いて「番組ガイドデータ」の抽出を行っているかどうかも不明である点。

(相違点4)

ユーザー側端末での番組情報の記憶に関して、本件補正発明が、「抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶する」のに対し、引用発明は、「抽出した番組ガイドデータを前記番組ガイドサーバから前記ユーザテレビ機器に送信し、前記ユーザテレビ機器のメモリにユーザの前記選好プロフィール、視聴履歴等に基づいて格納」しており、「ユーザーの利用履歴」ではなく、「選好プロフィール、視聴履歴等」に応じて「メモリ」に「番組ガイドデータ」を格納している点。


(5)当審の判断

上記相違点1乃至相違点4について検討する。

(5-1)相違点1及び相違点2について

参考文献1に、「番組の検索する時間範囲を3日/1週間のように設定することができる(RDR[Retrieve Date Rauge])。そして、デジタル放送受信装置1は、主制御手段9によって、視聴者が設定した許容待ち時間の範囲で、番組情報に含まれており、且つ、設定された時間範囲にある全番組の番組名と番組記述とを検索し、合致(一致)した番組を求める。」(上記G参照)と記載されているように、番組情報検索の技術分野において、期間を指定して番組情報を検索する旨の技術は本願出願日前には周知の技術であった。また、参考文献2に、「合致度を算出する上においては、キーワード種別ごとに適宜重みをかけてもよい。例えば、タイトルに重みGをつける場合は、3×G=3Gがタイトルの平均値となる。タイトルに重みをつけた場合には、ユーザが過去に視聴した番組の合致度が高くなる。一方、出演者に重みをつけた場合には、出演者に重きをおいた推薦が可能になる。」(上記H参照)と記載されているように、番組情報検索の技術分野において、キーワードに重みを付けて番組情報を検索する旨の技術も本願出願日前には周知の技術であった。すなわち、番組情報の検索をユーザが依頼する際に、期間やキーワード重みなどの検索の環境条件を指定し、検索を実行する旨の技術は、本願出願日(平成18年10月3日)前には周知の技術であった。
そして、番組情報の検索をユーザが依頼する際に、嗜好情報以外に、期間やキーワード重みなどの環境条件を指定するか否かは、当業者であれば適宜選択しうる事項である。
してみると、ユーザの選好プロフィールを取得して、ユーザの選好プロフィールに基づいて、番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求する引用発明においても、ユーザの選好プロフィール以外に番組情報の検索のための環境条件を取得し、ユーザの選好プロフィールに加えて環境条件に基づきユーザテレビ機器から番組ガイドサーバに番組ガイドデータを要求すること、すなわち、相違点1及び相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1及び相違点2は格別なものではない。

(5-2)相違点3について

上記(5-1)で検討した通り、番組情報の検索をユーザが依頼する際に、期間やキーワード重みなどの検索の環境条件を指定して検索を実行する旨の技術は、本願出願日(平成18年10月3日)前には周知の技術であった。
そして、番組情報の検索をする際に、嗜好情報以外に、期間やキーワード重みなどの環境条件に基づいて実行するか否かは、当業者であれば適宜選択しうる事項である。
また、引用発明における「番組識別子」は、「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」のAの記載からすると、個々のテレビ番組を識別するためのデータであると認められるから、「番組ガイドサーバ」における「番組ガイドデータ」の検索の際に用いられることは明らかである。
してみると、番組ガイドサーバが備える格納デバイスから、番組ガイドデータを抽出する引用発明において、ユーザの選好プロフィール、視聴履歴等に基づき番組ガイドデータを検索することに換えて、嗜好情報及び環境条件に基づき番組ガイドデータを番組識別子を用いて検索すること、すなわち、相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3は格別なものではない。

(5-3)相違点4について

ここで、本件補正発明の「放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶する」が特定する事項について検討すると、「ユーザーの利用履歴」を「番組情報」の検索に活用することについて、本願明細書には、以下の記載がある。
「【0079】
図8は、ローカルCRIDデータベース1478にG-CRIDが蓄積される流れを詳細に示す模式図である。図8に示すように、ローカルCRIDデータベース1478へのG-CRIDの蓄積は、嗜好情報または利用履歴に基づいて行われる。
【0080】
ユーザーが放送受信端末1400を用いて番組情報を利用すると、番組情報の利用に応じてユーザーの嗜好情報が蓄積される。また、利用したG-CRIDが既にローカルCRIDデータベース1478に存在する場合、G-CRIDの利用履歴が残される。ここで、番組情報の利用とは、例えば、番組の詳細情報の閲覧、番組情報のお気に入りリストへの追加、予約録画等の操作が挙げられる。蓄積される嗜好情報、利用履歴としては、利用された番組情報に対応するG-CRIDが該当する。これらの嗜好情報、利用履歴は、ローカルCRIDデータベース1478に蓄積される。
…(中略)…
【0103】
また、ユーザーの嗜好情報の取得は、主として嗜好分析管理部1490によって行われる。思考分析管理部1490のユーザープロファイル・操作履歴編集機能部1492は、ユーザーによる操作の履歴、利用履歴などを取得する。嗜好分析エンジン1494は、操作履歴、利用履歴に基づいてユーザーの嗜好を分析する。ユーザーの操作履歴、利用履歴は、ユーザー操作履歴ファイル1496に格納される。また、ユーザーの嗜好情報は、ユーザープロファイルに格納される。
…(中略)…
【0117】
図16及び図17は、放送受信端末1400のローカルCRIDデータベース1478におけるG-CRIDの蓄積方法を示すフローチャートである。ここで、図16は、放送受信端末1400における番組情報の利用履歴に基づいて、ユーザーの嗜好を抽出する処理を示すフローチャートである。先ずステップS21では、利用履歴のあるCRIDが存在するか否かを判定し、履歴CRIDが存在する場合はステップS22へ進む。一方、履歴CRIDが存在しない場合は、処理を終了する(END)。
【0118】
ステップS22では、利用履歴のあるCRIDと対応付けられているメタデータを収集する。次のステップS23では、メタデータに含まれるジャンル、キーワードなどの情報をもとに、ユーザーが好むと思われる、好適ジャンル、好適キーワードなどを推論し、抽出する。ステップS23の後はステップS21へ戻る。図16の処理によれば、利用履歴のあるG-CRIDに基づいて、ユーザーの嗜好を抽出することができる。」
上記の記載からすると、本件補正発明で「抽出した番組情報」を「放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶する」と特定している事項は、「番組情報」を「ユーザーの利用履歴に応じて」直接的に抽出するものではなく、「ユーザーの利用履歴」に基づいて「ユーザーの嗜好情報」を推定し、「ユーザーの嗜好情報」に応じた「番組情報」を抽出して、「放送受信端末」の「ローカル記憶部」に記憶するものであると認められる。
一方、参考文献3に、「学習機能搭載VDR2は、ユーザが視聴する番組の選局及びリモコン1による操作の各履歴データとEPGデータ4とに基づいてユーザの嗜好を学習し、推薦番組データ(以下、単に推薦番組とも言う)5を抽出する。そして、学習機能搭載VDR2はそれ自体をインターネット6に接続し、推薦番組データ5をキーとして番組情報提供会社の番組情報提供サーバ7より、推薦番組に一致するより詳細な情報、すなわち、ユーザの嗜好に合った情報を取得する。」(上記J参照)と記載されているように、番組情報の検索の技術分野において、ユーザの番組の視聴履歴データに基づいてユーザの嗜好を推定して番組を推薦する旨の技術は本願出願日(平成18年10月3日)前には周知の技術であった。
してみると、抽出した番組ガイドデータをユーザテレビ機器のメモリに格納する引用発明において、抽出した番組ガイドデータをユーザテレビ機器のメモリにユーザの選好プロフィール、視聴履歴等に基づいて格納することに換えて、ユーザテレビ機器のメモリにユーザの利用履歴に基づいて推定された選好プロフィールに応じて格納すること、すなわち、相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点4は格別なものではない。

(5-4)小括

上記で検討したごとく、相違点1乃至相違点4は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


5.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.新規事項追加禁止要件」で指摘したとおり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないものを含む補正であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「4.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項12に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年8月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正後の請求項12に対応する本件補正前の請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年11月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項16に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「放送番組を受信する放送受信端末と、放送番組毎に固有の識別子が付された番組情報を提供するリゾルバサーバとが通信網を介して接続された番組情報検索システムで用いられる番組情報検索方法であって、
ユーザーの嗜好情報と前記リゾルバサーバが番組情報を抽出する際の所定の環境条件とを取得するステップと、
前記嗜好情報及び前記環境条件に基づいて、前記放送受信端末から前記リゾルバサーバに番組情報を要求するステップと、
前記リゾルバサーバが備えるマスター記憶部から、前記嗜好情報及び前記環境条件に適合する番組情報を前記識別子を用いて抽出するステップと、
抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部に記憶するステップと、
を有することを特徴とする、番組情報検索方法。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成24年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成24年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」で検討した本件補正発明の「抽出した番組情報を前記リゾルバサーバから前記放送受信端末へ送信し、前記放送受信端末のローカル記憶部にユーザーの利用履歴に応じて記憶するステップ」から「ユーザーの利用履歴に応じて」を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記「第2 平成24年8月15日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「4.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」乃至「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項16に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-09-18 
結審通知日 2013-09-24 
審決日 2013-10-09 
出願番号 特願2006-272027(P2006-272027)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 打出 義尚  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 金子 幸一
田中 秀人
発明の名称 番組情報検索システム、放送受信装置、番組情報検索装置、番組情報検索方法及びプログラム  
代理人 亀谷 美明  

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