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審決分類 審判 一部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C03C
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03C
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03C
審判 一部無効 特174条1項  C03C
管理番号 1282458
審判番号 無効2011-800187  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-09-30 
確定日 2013-10-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2999177号「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」の特許無効審判事件についてされた平成24年 8月 3日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において訂正後の請求項14ないし18に係る発明に対する部分の審決取消しの判決(平成24年(行ケ)第10321号、平成25年 4月16日)があったので、審決が取り消された部分の請求項に係る発明についてさらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許(特許第2999177号)は、平成10年7月17日(優先権主張平成9年7月17日、同年8月7日、同年8月20日、同年9月11日、同年9月18日、平成10年1月6日、同年2月3日、同年4月3日)に出願され、平成11年11月5日に設定登録されたものである。
その後、請求人株式会社クラレから平成23年9月30日付け審判請求書により本件発明14ないし27の特許について特許無効審判の請求がなされた。これに対し、被請求人(特許権者)積水化学工業株式会社より同年12月19日付けで訂正請求がなされるとともに答弁書が提出され、請求人から平成24年2月9日付で弁駁書が提出され、被請求人から同年5月28日付で、請求人から同年5月29日付けでそれぞれ口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人から同年6月4日付けで上申書(以下「先の上申書」という)が提出され、同年6月12日に行われた口頭審理の後、同年6月26日付で双方から上申書(以下「後の上申書」という)が提出され、同年8月3日に「訂正を認める。特許第2999177号の訂正後の請求項14ないし18に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決がなされ、同年8月16日に請求項14ないし16、18、20、22ないし25を削除する訂正は確定した。
これに対し、被請求人は、同年9月11日に知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起し、(平成24年(行ケ)第10321号)、平成25年4月16日に「特許庁が無効2011-800187号事件について平成24年8月3日にした審決を取り消す。」旨の判決が言い渡され、この判決は確定している。

第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
平成23年12月19日付けの訂正請求の趣旨は、「特許第2999177号の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求める。」というものであり、被請求人が求めた訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項(1)
請求項14、15、16、18、20、22、23、24及び25を削除する。削除に伴い、請求項17、19、21、26、27を、新請求項14、15、16、17、18とする。更に、新しい請求項番号にあわせて、従属関係を整理する。
訂正事項(2)
請求項14、15、16(訂正前の請求項17、19、21)を次のとおり訂正する。
「【請求項14】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。」
「【請求項15】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。」
「【請求項16】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。」

2 訂正請求についての当審の判断
訂正事項(1)は、請求項の削除を目的とする確定した訂正に伴い請求項17、19、21、26、27の項番を繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
訂正事項(2)は、「可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜」について、「アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する」ものに限定すると共に、「合わせガラス用中間膜」について、「飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である」ものに限定する訂正であり、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
したがって、本件訂正事項(1)及び(2)は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。また、いずれの訂正事項も、願書に添付した本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項(1)、(2)は、特許法第134条の2第1項ただし書き並びに同条第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 本件発明
以上のとおり本件訂正が認められるので、本件特許第2999177号に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?18に記載されたとおりのものであって、そのうち無効審判の請求がされた請求項に係る発明は、本件における訂正の結果、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項14?18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下「本件発明」という)。
【請求項14】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項15】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項16】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項17】アルカリ金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩であって、アルカリ土類金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ土類金属塩である請求項14、15又は16記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】少なくとも一対のガラス間に、請求項14、15、16又は17記載の合わせガラス用中間膜を介在させてなることを特徴とする合わせガラス。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、「特許第2999177号の明細書(訂正明細書)の請求項14?18に係る発明(本件発明)についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求め、以下の無効理由により、本件特許は無効とされるべきである旨を主張し、証拠方法として甲第1?18号証を提出している。
(1)無効理由1
請求項14?18に係る発明(本件発明)は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないから、本件特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、特許法123条1項4号に基づき無効である。
(2)無効理由2
請求項14?18を追加する補正は、特許査定された明細書または図面(以下「特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、新規事項の追加にあたり、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件特許は特許法123条1項1号に基づき無効である。
(3)無効理由3
訂正明細書の発明の詳細な説明には、塩の粒子径の測定について当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、形状、大きさが異なる粒子について、何をもって粒子径とし、粒子の大きさをどう表現するか(代表径の取り方)、粒子の大きさに分布がある粒子群をどう表現するか、粒子群を代表する粒子の平均的な大きさをどのように選ぶかについて、訂正明細書の発明の詳細な説明には記載がない。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載には実施可能要件違反があり、特許請求の範囲の記載には明確性要件違反がある。
また、仮にTOF-SIMS以外の方法で塩の粒子径を測定するのであれば、係る測定法は本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていないからサポート要件を欠く。
そうすると、本件特許は特許法36条4項並びに6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるので、本件特許は特許法123条1項4号に基づき無効である。
(4)証拠方法
甲第1号証:工藤正博「特許第2999177号における粒子径測定に関する意見書」
甲第2号証:青柳里果「見解書」
甲第3号証:「実験報告書」 平成24年2月8日
甲第4号証:特開平10-139496号公報
甲第5号証:特開2008-31013号公報
甲第6号証:Gopal et.al.,Solar Energy Materials and Solar Cells 45(1997)17-25
甲第7号証:東京農工大学の富永研究室のウエブサイト、研究概要、
http://www.tuat.ac.jp/~tominaga/main/introduction/top.html
甲第8号証:Deshpande et al.,J.Phys.Chem. B 2008,112,8985-8989
甲第9号証:被請求人のウエブサイト、「エスレックB・Kの製法・構造」
http://www.sekisui.co.jp/cs/product/type/slecbk/doc/1183359_4984.html
甲第10号証:特開平8-119687号公報
甲第11号証:岩波 理化学辞典 第5版、70?71頁
甲第12号証:「表面分析:SIMS」1?11頁
甲第13号証:豊田中央研究所R&DレビューVol.34,No.2(1999.6)11?18
甲第14号証:日東分析センターのウエブサイト、「技術者インタビュー」
http://www.natc.co.jp/interview/icp5.html
甲第15号証:ナノサイエンスのウエブサイト
http://www.nanoscience.co.jp/knowledge/SIMS/knowledge03.html
甲第16号証:ジャパン・リサーチ・ラボのウエブサイト、分析評価総合支援部門、アナリシスラボ「飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)の原理・特徴」
http://analysis.ikaduchi.com/tof.html
甲第17号証:乙第8号証の図1上段左の電子顕微鏡写真について、請求人が作成した、0.25μmのマス目の取り方を違えて、粒子が入ったマス目を赤枠で囲った図
甲第18号証:「実験報告書」平成24年6月25日

2 被請求人の主張
(1)被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由1?3は、いずれも理由がないと主張し、証拠方法として、乙第1?14号証及び参考資料1?11を提出している。
(2)証拠方法
乙第1号証:「実験成績証明書」(米国Evans Analytical Group の実験報告書及びその抄訳を含む)
乙第1-1号証:乙第1号証に掲載された写真の一部拡大写真
乙第2号証:1995年度質量分析連合討論会講演要旨集236-237
乙第3-1号証:製品カタログ
乙第3-2号証:「陳述書」平成23年12月16日
乙第4号証:Fresenius' Journal of Analytical Chemistry (1995),353:603-608(抄訳添付)
乙第5号証:Surface and Interface Analysis(1997)vol.25,959-965(抄訳添付)
乙第6号証:特表平9-500486号公報
乙第7号証:特開平8-222168号公報
乙第8号証:「実験成績証明書」平成24年5月18日
乙第9号証:「実験成績証明書」平成24年5月18日
乙第10号証:「りゅうけい」広辞苑第6版、2008年1月11日株式会社岩波書店
乙第11号証:「元素」エッセンシャル化学辞典、第1版、1999年3月10日株式会社東京化学同人
乙第12号証:完全図解周期表第2版、12頁、2010年4月15日株式会社ニュートンプレス
乙第13号証:「えん」化学大辞典1、1960年3月30日、共立出版株式会社
乙第14号証:斎藤一夫著「元素の話」、22?25頁、昭和57年9月20日、株式会社培風館
参考資料1:「見解書」平成24年6月26日
参考資料2:TRC News, JAN.1994 VOL.13-1,25-30
参考資料3:TRC News, JAN.1992 VOL.11-1,19-24
参考資料4:印刷局研究所報告、No.68,June,1998,13-26
参考資料5:日本電子顕微鏡学会第43回シンポジウム論文集、115-122
参考資料6:ULVAC TECHNICAL JOURNAL,March/1998,No.48,41-46
参考資料7:TRC News, OCT.2001,13-18
参考資料8:豊田中央研究所R&Dレビュー、Vol.34,No.2,1999.6,11-18
参考資料9:Journal of Surface Analysis,Vol.6,No.2,June 1999,148-154 及びその抄訳
参考資料10:日本金属学会会報、1983,VOL.22,NO.1, 42-48
参考資料11:材料と環境、Vol.42,No.5,1993,312-321

第5 当審の判断
1 無効理由1について
(1)ヘイズ要件について
ア 請求人の主張
請求人は、訂正明細書に開示された発明である合わせガラス用中間膜は、合わせガラスの基本性能を維持しつつ白化現象を抑制することを目的とし、「厚さ0.3?0.8mmの前記中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後のヘイズが50%以下である」こと(以下「ヘイズ要件」という)を必須の特定事項としているところ、本件発明は、ヘイズ要件を具備しないので、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないと主張する(弁駁書第8頁(3)(ア))。
イ 当審の判断
これに関し、特許請求の範囲の記載が第36条第6項第1号に適合するかの判断は、請求項に係る発明と発明の詳細な説明に記載された発明とを対比し、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否かを検討することにより行われる。
本件発明は、アルカリ(土類)金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜において、中間膜中のナトリウム濃度及び/又はカリウム濃度を一定値以下に規定するとともに、飛行時間型二次イオン質量分析装置(以下「TOF-SIMS」という)を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径を一定値以下に規定したことを特定事項とするものである。
そして、訂正明細書には、本件発明は「透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周縁部の白化が少ない合わせガラス用中間膜及びそれを用いた合わせガラスを提供すること」(段落【0026】)を目的とすること、その対象を「アルカリ(土類)金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜」(段落【0031】、【0089】)とすること、その手段を、(1)「中間膜中のナトリウム濃度及び/又はカリウム濃度を一定値以下に規定したこと」(段落【0045】、【0046】)、及び(2)「TOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径を一定値以下に規定したこと」(段落【0044】、【0094】)が記載されている。その効果に関しては、本件発明の実施例である実施例102及び106においては、耐湿性試験後の周縁からの白化距離が短いことが示されており、優れた耐湿性を有することを具体的に確認することができる(段落【0350】の表20、段落【0368】の表21)。
したがって、本件発明は、ヘイズ要件に関する請求人の主張に関しては、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明であるとすることができる。

(2)実施例102と106について
ア 請求人の主張
請求人は、本件発明の実施例である実施例102と106は、特定の有機酸とアミン(有機酸としてジ(2-エチルへキシル)リン酸、アミンとしてジメチルオクチルアミン)を含有しており(段落【0341】、【0334】、【0359】、【0353】)、有機酸とアミンを含有することを要件としていない本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された発明とはいえないと主張する(弁駁書第9頁(イ))。
イ 当審の判断
これに関しては、上記(1)と同様に、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるかについて検討する。
訂正明細書の記載によれば、本件発明はTOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径が3μm以下であることが、耐湿性向上という発明の目的を達成する上で必須の要件であるところ、たしかに、有機酸とアミンを含有しない比較例42?45では、これを含有する実施例と比較して明らかに耐湿性が劣る(段落【0345】、【0347】、【0350】、【0363】、【0365】、【0368】)。
また、段落【0061】、【0062】には、次の記載があり、合わせガラス用中間膜の耐湿性を向上させるためには分散剤としての有機酸及びアミンの添加が好ましいとされている。「本発明においては、合わせガラス用中間膜は、高湿度下における白化をより効果的に防ぐために、分散剤を添加してなるものであることが好ましい。・・・上記分散剤としては、・・・樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンが挙げられる。」
しかし、段落【0094】、【0095】には「アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、粒径が3μm以下であることが好ましく、・・・。上記粒径を3μm以下にするための手段としては特に限定されず、例えば、・・・及び、それらを分散させるような分散剤や相溶化剤等を併用する方法等が挙げられる。」とし、段落【0062】には、「上記分散剤としては、・・・並びに、樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンが挙げられる。」と記載されている。
すなわち、訂正明細書の記載は、アルカリ(土類)金属塩の粒子径を特定値以下にするための手段は特に限定されないとしつつ、分散剤を併用することを選択的な手段の一つとして列挙し、分散剤として有機酸やアミンを挙げている。したがって、有機酸やアミンの添加は、選択的手段に過ぎない。
また、実施例1?4においては、有機酸やアミンを配合することなくTOF-SIMSにより測定したナトリウム塩やカリウム塩の粒子径を3μm以下に調整している(段落【0144】、【0149】?【0151】、段落【0154】の表2)。
ここで、実施例1?4は、合わせガラス用中間膜の耐湿性を評価していない点で本件発明の実施例とすることはできない。しかし、有機酸とアミンを添加することなく、本件発明の必須の特定事項である「ナトリウム塩やカリウム塩の粒子径を3μm以下に調整すること」ができることを示しているので、本件発明の課題解決において、有機酸とアミンの添加は必須の要件ではないことを明らかにするものである。
したがって、これらの記載事項を考慮すれば、発明の詳細な説明には、有機酸とアミンの添加がなくとも、合わせガラス用中間膜の耐湿性向上という本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとすることができる。
このため、本件発明は、特定の有機酸とアミンに関する請求人の主張に関しては、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された発明であり、サポート要件を充足する。

(3)粒子径について
ア 請求人の主張
請求人は、本件発明の特定事項は「アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下」であるところ、本件発明の実施例である実施例102には「カリウム元素の粒子径」が3μmであったこと(段落【0342】)、同様に実施例106には「ナトリウム元素の粒子径」が2μmであったことが記載されている(段落【0360】)のみで、上記本件発明の特定事項についての記載はないので、サポート要件を充足しない旨を主張する(弁駁書第12頁(ウ))。
イ 当審の判断
サポート要件の判断における請求項に係る発明と発明の詳細な説明に記載された発明との対比は、その記載事項に基づいて実質的に行われるべきである。
本件では、本件発明は、合わせガラス用中間膜の主成分であるポリビニルアセタール樹脂の製造工程で残留するナトリウム塩等が、得られる合わせガラス用中間膜の吸湿による白化の原因であることを見いだしたものであり(段落【0024】)、該合わせガラス用中間膜の耐湿性を改善するために、中間膜中のナトリウム塩等の粒子径を特定値以下に調整するものである(段落【0041】、【0089】、【0094】)。
したがって、実施例102、106において「カリウム元素の粒子径」等と記載されていたとしても、当業者であれば、これは「カリウム塩の粒子径」を意味するものと理解すると認める。
このため、「カリウム元素の粒子径」についての請求人の主張に関しては、本件発明は発明の詳細な説明に記載されていたものである。

(4)本件発明17について
ア 請求人の主張
請求人は、請求項17に係る発明におけるアルカリ金属塩は炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩であるところ、当該アルカリ金属塩は実施例・比較例に記載されていないので、本件発明17は発明の詳細な説明に記載された発明ではない旨を主張する(弁駁書第13頁(エ))。
イ 当審の判断
しかし、上記したとおり、サポート要件の判断においては、請求項に係る発明と発明の詳細な説明に記載された発明との対比は実質的に行われるべきである。すなわち、請求項に係る発明が実施例や比較例として記載されていない場合であっても、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されていればサポート要件に適合するといえる。
本件では、段落【0091】、【0092】には次の記載がある。「上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩及び炭素数5?16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましい。・・・上記カルボン酸又はジカルボン酸のマグネシウム塩としては特に限定されず、例えば、2-エチル酪酸マグネシウム、・・・等が挙げられる。」。
このため、炭素数5?16の有機酸のアルカリ(土類)金属塩として具体的な化合物が明記されているので、当業者であれば、実施例や比較例の記載がなくとも、当該記載により当該化合物を使用して本発明の課題を解決できるように記載されていると認識することができる。
したがって、本件発明17、及び本件発明17を引用する本件発明18は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。

(5)小括
以上のとおりであるので、本件発明は本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものであるので、請求人の無効理由1についての主張は採用できない。

2 無効理由2について
請求人は、請求項14?27を追加した平成11年5月13日付け手続補正書による補正は、特許明細書等に記載されていなかった「本件ヘイズ要件を必須の要件としない発明」を追加するものであり、これは新規事項の追加にあたる旨を主張する。
しかし、無効理由1についての検討において、本件発明が訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであると認定した根拠となる記載は、特許明細書等にも存在していたから、上記手続補正による補正は新規事項の追加にあたらず、特許法第17条の2第3項に違反するものではないので、請求人の無効理由2についての主張は採用できない。

3 無効理由3について
ア 請求人の主張
請求人は、「飛行時間型二次イオン質量分析装置(以下「TOF-SIMS」という)を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径」について、具体的測定方法及び測定条件が記載されていないので実施可能要件違反(特許法第36条第4項)であり、発明の詳細な説明には、粒子径の測定についてTOF-SIMSを用いる以外の方法が記載されていないのでサポート要件違反(同条第6項第1号)であり、「粒子径」の意義が不明確であるので明確性要件違反(同条第6項第2号)である旨を主張する。
イ 被請求人の反論
これに対し被請求人は、アルカリ(土類)金属塩の粒子径をTOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージングにより測定することは、当業者であれば本件明細書の記載から実施でき、粒子径の意義も十分明確である旨を主張し、乙第1?第14号証及び参考資料1?11を提出する。

3-1 実施可能要件違反(特許法第36条第4項)について
(1)検討の観点
本件では、TOF-SIMSによるアルカリ(土類)金属塩の粒子径の測定について、発明の詳細な説明には、TOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージングにより測定することができる、という記載がされているにとどまるので(段落【0044】、【0144】)、これらの記載で当業者が実施可能であるかを(2)?(4)の観点で検討する。

(2)粒子径かイオン濃度か
ア 当事者の主張
被請求人は、乙第1?乙第14号証及び参考資料1?11を提出し、TOF-SIMSにより中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径を測定することは可能である旨主張する。特に、乙第8号証は、TOF-SIMSにより観察される凝集体が、アルカリ(土類)金属塩の粒子であることを確認する間接的証拠であるとする(被請求人の口頭審理陳述要領書第22頁の(2-6))。たしかに、乙第8号証の図1?3を参照すると、中間膜中には酢酸マグネシウム塩が存在することを確認することができる。
これに対し、請求人は、請求人の後の上申書において、TOF-SIMSの二次イオン像のイメージングで表れている輝点は、アルカリ(土類)金属塩ではなく、アルカリ(土類)金属イオンによっても検出される旨を主張する(後の上申書第2頁の(1)以降)。
請求人の主張するとおり、本件におけるTOF-SIMS分析において、中間膜中にアルカリ(土類)金属イオンが存在し、該イオンによっても輝点ができるのであれば、本件においては、必ずしもアルカリ(土類)金属塩の粒子径を測定したことにはならない。また、被請求人の提出した乙第8号証はFE-TEM(電解放射型透過電子顕微鏡)による観察であって、アルカリ(土類)金属イオンを検出することはできないので、本件発明においてTOF-SIMSにより該金属塩の粒子径のみを測定しているという証拠にはならない。
そこで、請求人の提出した後の上申書における上記主張の当否について検討する。
イ 中間膜中の金属イオンの存在
請求人が提出する甲第4、5、10号証は、被請求人の別出願に係る公開公報であり、それぞれ、次の記載がある。

(ア)甲第4号証(特開平10-139496号公報の段落【0006】)
「しかし、この合わせガラス用中間膜で用いられているポリビニルブチラール樹脂は、中和工程に用いた中和剤が金属イオンの状態で多量に存在しているので、長期の吸湿による白化を防止する観点からは、完全なものとは言えなかった。」
(イ)甲第5号証(特開2008-31013号公報の段落【0004】)
「合わせガラス用中間膜は、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂に、接着力調整剤や紫外線吸収剤等の添加剤が添加された樹脂組成物から構成されている。このような樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜は、ポリビニルブチラール樹脂や添加剤等に由来する微量成分、例えば、接着力調整剤添加による、解離した残留イオン成分等が含まれている。」
(ウ)甲第10号証(特開平8-119687号公報の段落【0031】、【0032】)
「合わせガラスのガラスと樹脂の接着力は、ガラスと樹脂の界面に存在するカルボン酸金属塩から遊離した金属イオンの存在量によって制御される。すなわち、金属イオンの存在量が多いほど金属イオンが水分子を吸着し(水和し)、この水分子がガラスと樹脂との水素結合による接着力を切断することによって接着力が低下する。よって、遊離金属イオンの量を多くすれば接着力は低下し、少なくすれば接着力は上昇する。通常はカルボン酸金属塩の添加量を増減することで遊離金属イオン量を調整しているが、高湿度下における白化、剥離やビルドアップなどの問題が発生する。よって、少ないカルボン酸金属塩の添加量で接着力調整効果を引き出す必要がある。
次に、少ないカルボン酸金属塩の添加量で接着力調整効果を引き出すための手段について、カルボン酸金属塩として酢酸カリウムを使用した場合を例にして説明する。酢酸カリウムは、樹脂中に混合された場合、樹脂中の水分と接触し、以下のように電離すると考えられる。
CH_(3)COOK + H_(2)O → CH_(3)COO^(-) + H^(+) + K^(+) + OH^(-) 」

これらの公報の記載から、合わせガラス用中間膜中には、中和工程に用いた中和剤(甲第4号証)、接着力調整剤(甲第5号証)、カルボン酸金属塩(甲第10号証)由来の金属イオンが存在していることが明らかとなる。
これに関し、たしかに、これらの公報に記載された合わせガラス用の中間膜の材質は、いずれもポリビニルブチラール樹脂であって、本件発明におけるポリビニルアセタール樹脂とは異なる。
しかし、一般にポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂を包含するものである。また、被請求人が、実験成績証明書として提出する乙第8、9号証は、いずれもポリビニルブチラール樹脂を使用している。このため、合わせガラス用中間膜の特性を検討する上で、ポリビニルブチラールとポリビニルアセタールとを区別する特段の必要性はなく、ポリビニルブチラールに発生している現象は、同じくポリビニルアセタールにも発生しているとすることができる。

ウ 本件発明における中間膜中の金属イオンの存在の評価
訂正明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。
(ア)「上記分散剤として用いられる樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンは、それぞれ、・・・アンモニウンイオン等のイオンとなり、ポリビニルアセタール樹脂中に存在する粒子状の金属塩の表面に作用して、この金属塩を構成する金属イオン及びその対イオンと結合する。そして、製膜時に樹脂を混練することにより、これらイオンが結合した金属塩が樹脂中に分散され、その結果として、粒子状の金属塩は小さくなるか又は消滅する。」(段落【0088】)
(イ)「上記粒径を3μm以下にするための手段としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤に溶解し易い化合物を接着力調整剤として用いる方法、・・・。」(段落【0095】)
上記記載事項(イ)に関し、接着力調整剤としてアルカリ(土類)金属塩が好ましいとされているので(段落【0089】)、結局記載事項(ア)及び(イ)によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、アルカリ(土類)金属塩がポリビニルアセタール樹脂中で消滅あるいは溶解することが記載されているといえる。
そして、本件発明においては、アルカリ(土類)金属塩が消滅あるいは溶解して、どのようになるかは明らかにされていない。しかし、上記イで明らかにされたように、中間膜中には、中和剤や接着力調整剤等から由来する金属イオンが存在するのであるから、本件発明において消滅あるいは溶解したアルカリ(土類)金属塩のうちの少なくとも一部は、解離してイオンの形態で存在していると理解することができ、本件発明における中間膜中には、アルカリ(土類)金属イオンが存在しているといえる。
しかしながら、本件発明のような合わせガラス用中間膜は、吸湿による白化の問題を解決するために、耐湿性を確保することが課題とされており(段落【0003】?【0019】)、含水率を小さくすることが予定されている。本件発明の中間膜も、その水分の含有率(含水率)は、ナトリウムやカリウムの含有率よりは相当大きいが、0.5重量%以下にすぎないのであって、ごく微量のものと評価することができる。したがって、製造時の含水率で考えれば、中間膜中の水分がアルカリ(土類)金属塩の電離に与える影響は必ずしも大きいものとはいえない。
本件発明の中間膜、とりわけその表面では、ポリビニルアセタール樹脂を製造するときに中和工程に用いる薬剤あるいは接着力調整剤に起因する残留アルカリ(土類)金属塩の大部分が電離せず塩の形で残っており、電離してアルカリ(土類)金属イオンとなる割合はごく小さい。そうすると、TOF-SIMSの二次イオン像のイメージングの分析において、アルカリ(土類)金属イオンの存在を考慮外としても差し支えないというべきである。
したがって、TOF-SIMSがアルカリ(土類)金属イオンをも検出していること、ないしその可能性があることを根拠に、当業者において本件発明を実施可能でないとはいえない。

エ 本件発明における測定の対象
TOF-SIMSによる二次イオン像のイメージングにおいては、「特定の微小径(目的により、最高0.1μm程度まで絞ることが可能)を有する一次イオンビームで試料表面を走査し、微小領域から放出された二次イオンの質量分析を行う。各照射点への一次イオンビーム照射で得られた質量情報は、該照射点を中心とするピクセルに帰属させ」(甲第1号証第5頁下から4?1行)、これが輝点に対応する。
このため、TOF-SIMSによる二次イオン像のイメージングにおいて輝点として検出されるのは、一次イオンの照射に対応して放出された二次イオンであるので、必ずしもアルカリ(土類)金属塩の粒子に対応するものばかりではなく、ピクセル内に存在する1個以上のアルカリ(土類)金属イオンに対応するものもありうることになる。
また、最小で0.1μm四方のピクセルごとに金属イオンの存否が判定されることになり(甲第1号証第6頁の図6)、一方、甲第12号証によればNaイオン半径は0.95Åであり、これを換算すると0.095×10^(-3)μmとなる。このため、Naイオンの大きさはピクセルの1辺の千分の1程度であるので、Naイオンが0.1μm程度の間隔をもって中間膜の表面に分布していれば、被請求人の主張するような金属イオンの凝集を伴うことなく、μmオーダーの大きさの輝点がTOF-SIMSにより検出されることになる。
しかしながら、ウで述べたようにTOF-SIMSの二次イオン像のイメージングの分析において、アルカリ(土類)金属イオンの存在を考慮外としても差し支えないというべきである。
したがって、本件発明においては、TOF-SIMS分析により、アルカリ(土類)金属塩の粒子径を測定しているとすることができ、中間膜中に存在する該金属イオンをも粒子径として検出していることにはならない。

(3)TOF-SIMS分析の定量性について
ア 輝点として検出される二次イオンとサンプル中の金属量の関係
請求人は、輝点として検出される二次イオンとサンプル中の金属量との間に、一定の比例関係が存在しないこと、その理由としてマトリックス効果(一次イオンビームの照射により放出され、検出される二次イオンの強度が、試料の材料(マトリックス)の種類や組成の違いの影響を受けて変化すること)を主張し、その根拠として甲第14、15号証を提出する(請求人の後の上申書第14頁1行以下)。そして、甲第16号証を提示し、TOF-SIMS分析においては定量分析をおこなうことができるのは、試料がほぼ同一組成である場合と、複数の標準試料を作成して複数の検量線を作成することが必要であるとする(請求人の後の上申書第15頁)。
一方、TOF-SIMSによる定量分析には検量線による必要があることは、被請求人がTOF-SIMSによっても定量分析できるとして提出する参考資料10、11においても確認することができる。
すなわち、参考資料10の第45頁右欄の「4・3 定量性と状態分析」の冒頭の5行には、「SIMS特にIMAの場合は検量線による定量分析・・・が一般の機器分析と同じく採用されている。そのためにはもちろん目的に合致した一連の標準試料群が必要となる。」と記載され、SIMSにおいては、検量線による定量分析が一般的である旨が記載されている。また、同項右欄の下から9、10行には、標準試料群を使用しない方法としてLTE法を紹介しているが、その場合にも、「しかし、2つ以上の内部標準元素が必要なこと」が指摘されている(第48頁左欄3?5行)。
同様に、参考資料11の第319、320頁のQ&AにおけるQ1に対する答えにおいては、定量分析には標準試料を用いた検量線を作成することが必要とされている。
甲第15、16号証及び参考資料10、11のこれらの記載は、請求人の主張するマトリックス効果が周知であることを裏付けるものであり、試料の材料(マトリックス)の種類や組成の違いにより、イオン化率やスパッタ收率が異なることは、当業者が広く認めるところであるとすることができる。
したがって、輝点として検出される二次イオンとサンプル中の金属量は、試料の材料の種類と組成が同じ場合を除いて、一般的には比例しないことになる。
しかしながら、本件発明においては、アルカリ(土類)金属(塩)の量(金属量)が特定事項となっているわけではなく、アルカリ(土類)金属塩の粒子の大きさが特定されているにすぎないから、存在する元素の分析に定量性がないことで、組成の合わせガラス用中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径の測定は、定量性を持たないとすることにはならず、当業者が実施できる程度に発明の詳細な説明が記載されていないとすることはできない。

(4)閾値の設定による測定値の変化
ア 当事者の主張
請求人は、甲第3号証を提出し、TOF-SIMSによる二次イオン像のイメージング条件すなわち閾値の設定を変えると、検出された輝点の大きさが変化するので、イメージング条件が明らかでなければ再現性のある粒子径の測定をすることはできない旨を主張する(弁駁書第23頁下から11行以降)。
これに対し被請求人は、閾値を変更しても測定される粒子径はほとんど変化しないと主張して乙第9号証を提出する(被請求人の口頭審理陳述要領書第24頁の(1-4))とともに、後の上申書により、ポリマーのTOF-SIMS分析では、閾値がゼロで測定することが通常である旨を主張する(後の上申書第第2頁の6-2以降)。
この点に関しては、被請求人の主張するように、本件発明のようなポリマーのTOF-SIMS分析で、閾値をゼロにすることが当業者の技術常識であれば、請求人が甲第3号証で主張する閾値の変化による粒子径の変動の問題は生じないので、被請求人の提出した後の上申書について検討する。

イ 閾値ゼロの合理性
被請求人が提出した参考資料1には、TOF-SIMS分析の専門家の見解が示されており、これによれば、TOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージング測定において、高分子フィルムの表面に存在する微量のアルカリ(土類)金属等の検出の場合、バックグラウンドは極めて低いので、閾値がゼロで測定したものであることは当然のこととしている。また、甲第12号証(甲第1号証に添付された資料1)の第5頁11?12行には、SIMSの特徴として一般にバックグランドが低いため、絶対感度が極めて高い旨が記載されている。
このため、通常のTOF-SIMS分析においては、バックグラウンドが極めて低いことについては、当業者に共通の認識があったといえる。このことは、後の上申書で被請求人が示す、TOF-SIMS分析して得られた質量スペクトルにおいて、バックグラウンドでノイズが殆ど発生していないことでよっても確認することができる。

ウ 実際のTOF-SIMS分析
次に、バックグラウンドが極めて低いとしても、当業者が実際に閾値ゼロでTOF-SIMS分析をしていたかが問題となる。
この点に関し被請求人は、参考資料2?9を提出し、TOF-SIMS分析においては閾値ゼロで測定することが通常おこなわれていたことである旨を主張する。提出された参考資料2?9は、シリコンウエハ上のイオン分析、炭素繊維-エポキシ樹脂複合材料の破断面の分析等、分析対象が多岐にわたるが、いずれの分析においても閾値がゼロでおこなわれたものであることを確認することができる。
したがって、TOF-SIMS分析において、閾値ゼロで測定することは通常おこなわれていたことであるといえる。

エ 粒子径分析での閾値
そして、本件発明の中間膜のTOF-SIMSを用いた測定では、かかる通常の取扱いと異なる取扱いを採用する理由は存しない。そうすると、本件明細書にTOF-SIMSの閾値に関する記載がないからといって、当業者が本件発明を実施することができないとすることはできず、閾値を変化させたときに2次イオンのイメージング画像が異なり得る可能性をもって実施可能要件違反があるということはできない。
このことは、被請求人が、二次イオン像のイメージング条件(閾値)によりアルカリ(土類)金属塩の粒子径が変化しないことの証拠として提出する乙第9号証からも明らかである。

オ まとめ
ポリマーのTOF-SIMS分析では閾値をゼロにすることが当業者の技術常識であり、合わせガラス用中間膜中のアルカリ(土類)金属塩の粒子径の測定において、閾値をゼロとすることは当業者にとって技術常識でないとすることはできない。
以上のとおりであるので、本件明細書に測定条件の詳細が明示されていないとしても、本件発明に実施可能要件違反があるとすることはできない。
したがって、発明の詳細な説明には、明細書及び図面に記載された発明の実施に関する教示と出願時の技術常識に基づいて、当業者が本件発明を実施できる程度に記載されており、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項に適合するものである。

3-2 明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)について
請求人は、特許請求の範囲の「粒子径」の文言について、代表径の取り方、粒子の大きさに分布がある粒子群をどのようにあらわすか、粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶかが不明であるので、その意義が不明確である旨を主張する(弁駁書第24頁下から9行以降)。
これに対して、本件訂正により、本件明細書の段落【0044】の記載内容を特許請求の範囲の記載に取り込んで発明特定事項としたから、上記段落の記載に照らせば、本件発明にいう「粒子径」も、TOF-SIMSを用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜表面の粒子(凝集物)のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径であり、実質的には最大粒子径を意味することが一義的に明らかである。
以上のとおりであるので、本件発明には明確性要件違反があるとすることはできない。
したがって、本件発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。

3-3 サポート要件違反(特許法第36条第6項第1号)について
(1)請求人の主張
請求人の主張する粒子径の意義に関するサポート要件違反は、本件訂正前の特許請求の範囲に記載された「粒子径」に関するものであり、これは本件訂正により「飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した」ものであることが明確にされた。
このため、サポート要件に関する請求人の主張は採用できない。
(2)アルカリ(土類)金属塩の粒子径
本件発明の中間膜のアルカリ(土類)金属塩のTOF-SIMSを用いた粒子径の計測において、金属塩の電離の粒子の最大径の測定への影響を考慮外として差し支えないから、TOF-SIMSによる二次イオン像のイメージングにより測定した輝点の大きさをもって粒子径とすることは、発明の詳細な説明の記載の範囲を超えるものではない。
したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。

3-4 小括
以上のとおりであるから、本件発明はアルカリ(土類)金属塩の粒子径が特定値以下であることを特定事項とし、本件明細書の発明の詳細な説明には、当該粒子径の測定はTOF-SIMSによると記載され、優先日当時の技術常識に照らして、当業者が実施できる程度にその測定方法を開示しているといえるから、特許法第36条第4項の規定に適合する。
また、TOF-SIMSにより測定した粒子径は、合わせガラス用中間膜表面のアルカリ(土類)金属塩の粒子径に対応するということができ、本件発明は、明確であるから同条第6項第2号の規定に適合し、発明の詳細な説明に記載されたものであるから同条第6項第1号の規定に適合する。
よって、請求人の無効理由3についての主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、厚さ0.3?0.8mmの前記中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後のヘイズが50%以下であることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項2】中間膜中のナトリウム塩の粒子径が10μm以下である請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】中間膜中のナトリウム塩の粒子径が5μm以下である請求項1又は2記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下である請求項1、2又は3記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】中間膜中のカリウム塩の粒子径が10μm以下である請求項1記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】中間膜中のカリウム塩の粒子径が5μm以下である請求項1又は5記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下である請求項1、5又は6記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】更に、ナトリウム塩及びカリウム塩と錯体を形成しうる化合物を含有してなるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】更に、樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸、並びに、樹脂及び可塑剤に相溶するアミンを含有してなるものである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】更に、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有してなるものである請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】アルカリ金属塩は、粒径3μm以下のものであって、アルカリ土類金属塩は、粒径3μm以下のものである請求項10記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項12】アルカリ金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩であって、アルカリ土類金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ土類金属塩である請求項10又は11記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項13】少なくとも一対のガラス間に、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載の合わせガラス用中間膜を介在させてなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項14】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項15】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項16】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、中間膜中のナトリウム濃度が50ppm以下であり、中間膜中のカリウム濃度が100ppm以下であり、飛行時間型二次イオン質量分析装置を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した中間膜中のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の粒子径が3μm以下である合わせガラス用中間膜。
【請求項17】アルカリ金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩であって、アルカリ土類金属塩は、炭素数5?16の有機酸のアルカリ土類金属塩である請求項14、15又は16記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項18】少なくとも一対のガラス間に、請求項14、15、16又は17記載の合わせガラス用中間膜を介在させてなることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合わせガラス用中間膜及び上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、少なくとも二枚のガラス板の間に可塑化ポリビニルブチラールからなる中間膜が挟着されてなる合わせガラスは、透明性、耐候性及び接着性がよく、しかも耐貫通性がよく、ガラス破片が飛散しにくい等の合わせガラスに必要な基本性能を有し、例えば、自動車や建築物の窓ガラスに広く使用されている。
【0003】この種の合わせガラスは、上記の基本性能が良好で安全性に優れているが、耐湿性が劣る。即ち、上記合わせガラスを湿度の高い雰囲気中に置いた場合、合わせガラスの周縁では中間膜が直接環境空気と接触しているため、周辺部の中間膜が白化してしまう問題が起こる。
【0004】この白化現象には、以下に述べる中間膜とガラスの接着力調整を行うための添加剤が関与している。上記合わせガラスとしての機能を充分発揮させるためには、中間膜とガラスとの接着力を適正な範囲内に収まるように調整しておくことが必要である。即ち、中間膜とガラスとの接着力が弱過ぎると、外部からの衝撃等により破損したガラス破片が中間膜から剥がれ、飛散して人体等に傷害を与える危険性が高くなり、逆に中間膜とガラスとの接着力が強過ぎると、外部からの衝撃等によりガラスと中間膜が同時に破損し、ガラスと中間膜の接着破片が飛散して人体等に障害を与える危険性が高くなる。
【0005】これに対し、中間膜とガラスとの接着力が適正な範囲内にある場合には、ガラスの破損が広範囲にわたって起こるとともに、ガラスが破損すると同時に中間膜とガラスとの部分的な界面剥離が起こり、かつ、中間膜が延伸するという現象が生じるため、衝撃吸収効果や貫通防止効果が大きくなる。
【0006】従って、自動車等の輸送機器の事故の場合は、運転者や乗客がガラスへ衝突する時の衝撃を吸収したり貫通を防止する為に、又、建築物の事故の場合は、外部からの飛来物がガラスを貫通するのを防止したりガラス破片の飛散を防止する為に、中間膜とガラスとの接着力を上述の如く適正な範囲内に収まるように調整しておくことが必要である。
【0007】上記に鑑み、従来より、中間膜とガラスとの接着力を適正な範囲内に調整するために、中間膜用の接着力調整剤が種々検討されてきた。特公昭46-4270号公報では、水分0.2?0.8重量%と、接着力調整剤として特定の金属アルキルカルボキシレートを特定量含有するポリビニルアセタール樹脂組成物よりなる合わせガラス用中間膜が提案されている。上記提案による中間膜は、中間膜表層部と中間膜内層部における金属アルキルカルボキシレートの分布量を変化させるか、又は、中間膜中の水分量を変化させることにより、中間膜とガラスとの接着力を適正な範囲に調整しようとするものである。
【0008】しかし、上記提案のような金属アルキルカルボキシレートを含有する中間膜は、耐湿性が低下し、該中間膜を用いて製造された合わせガラスを湿度の高い雰囲気下に放置しておくと、合わせガラスの周辺部では中間膜が空気と直接接触しているので、金属アルキルカルボキシレートの量が多くなるとともに中間膜の吸湿による白化現象が激しく起こるという問題点がある。上記中間膜の白化現象は、金属アルキルカルボキシレートの量を極力減らすか無くすことにより防止できるが、その場合、中間膜とガラスとの接着力が適正な範囲より強くなり過ぎ、外部からの衝撃等によりガラスと中間膜が同時に破損したり貫通し易くなるという合わせガラスとしての致命的な問題点が発生していた。
【0009】特公昭44-32185号公報では、0.1?0.8%の水分を含有し、6?22炭素原子のモノカルボン酸と、4?12炭素原子のジカルボン酸と、2?6炭素原子の脂肪族モノアミノモノカルボン酸と、4?5炭素原子の脂肪族モノアミノジカルボン酸と、クエン酸及びこれらの混合物から選んだ少なくとも一つの有機酸を樹脂100重量部につき0.01?3重量部含有せしめた、成形ポリビニルアセタール樹脂よりなる合わせガラス用中間膜が提案されている。
【0010】しかしながら、カルボン酸を添加すると、接着力が時間とともに変化するという問題がある。また、酸の影響により中間膜の耐熱性・耐候性が低下するという問題が生じる。
【0011】特公昭48-5772号公報では、少なくとも2枚のガラスを可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物で貼り合わせたガラスにおいて、該可塑化ポリビニルアセタール樹脂組成物中に炭素数10?22の脂肪族カルボン酸のナトリウム金属塩を含有せしめたことを特徴とする合わせガラスが提案されている。
【0012】更に、特公昭53-18207号公報では、合わせガラスの可塑化ポリビニルアセタール樹脂中間膜中の接着力調整剤として、モノカルボン酸又はジカルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用することが提案されている。
【0013】上記2つの提案では、いずれも接着力調整剤として、中間膜中に含有される可塑剤に溶解し易いことから比較的炭素数が大きいカルボン酸の金属塩を用いている。
【0014】しかし、接着力調整剤として炭素数の大きいカルボン酸の金属塩を用いると、中間膜とガラスとの接着力が時間経過(経時)とともに変化するという問題点がある。即ち、初期の接着力は適正であっても、経時とともに次第に接着力が低下し、衝撃を受けた時にガラスが剥離し易くなる。この接着力低下を防止するためには、中間膜を例えば40?50℃の雰囲気下で1?2ケ月間保管して熟成する必要があるが、中間膜は粘着性や自着性等を有するため、上記のような雰囲気下で長期間保管することは現実的には困難であり、又、仮に熟成を行ったとしても、接着力の経時低下を抑制することはできるが皆無にすることはできず、上記問題点は依然として残る。
【0015】特開昭60-210551号公報には、可塑化ポリビニルアセタール樹脂100重量部に、炭素数が1?6であるモノカルボン酸カリウム0.02?0.40重量部及び変性シリコーンオイル0.01?0.26重量部が含有されるか又は付着されている中間膜によって少なくとも2枚のガラスが貼り合わされてなる合わせガラスが開示されている。しかし、この合わせガラスは、用いられている金属塩の種類によっては、中間膜中でこの金属塩が粒子状に固まり白化の原因となるので、長期の吸湿による白化を防止する観点からは、完全なものとはいえなかった。
【0016】特公平2-41547号公報では、接着力調整剤にアルカリ又はアルカリ土類金属ギ酸塩を使用したポリビニルブチラールシートが提案されている。更に、特表平6-502594号公報では、実施例で接着力調整剤として酢酸カリウムを添加した中間膜が用いられている。
【0017】上記3つの提案では、接着力調整剤として、炭素数の大きいカルボン酸の金属塩を用いる場合の前記問題点を解消するため、比較的炭素数が小さいカルボン酸の金属塩を用いている。
【0018】しかし、接着力調整剤として炭素数の小さいカルボン酸の金属塊を用いると、中間膜とガラスとの経時接着力低下の問題点は解消されるものの、中間膜の耐湿性が不充分となり、その結果、合わせガラスの周縁部(端部)に吸湿による白化現象を起こし易くなるという別の問題点が発生する。
【0019】即ち、中間膜は通常の雰囲気(湿度)下においては吸湿性があるため、合わせガラスに加工する場合、例えば、25%RHの雰囲気下で含水率が0.5重量%程度以下となるように調湿して合わせ加工を行うのが一般的である。ところが、通常合わせガラスの周縁部は剥き出しの状態であるため、高湿度雰囲気下では中間膜が吸湿し、含水率が2?3重量%程度にまで上昇する。この時、中間膜中に微小な結晶として存在する酢酸カリウムや酢酸マグネシウムあるいはギ酸カリウム等のような炭素数の小さいカルボン酸の金属塩の周囲に水が集まり、白化現象を惹起する。又、白化現象を低減するために、炭素数の小さいカルボン酸又はその塩の添加量を減少させると、中間膜とガラスとの接着力が適正な範囲を逸脱し、合わせガラスの衝撃吸収性や耐貫通性等が不充分となる。
【0020】カルボン酸金属塩を含有する中間膜の白化を改善する試みとして、特開平5-186250号公報では、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤、炭素数が12以下の脂肪族モノ又はジカルボン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩及び有機酸を含有する樹脂組成物より形成されている合わせガラス用中間膜が提案されている。
【0021】また、特開平7-41340号公報には、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤、カルボン酸金属塩及び直鎖脂肪酸を含有する樹脂組成物からなる合わせガラス用中間膜が提案されている。
【0022】ところが、上記提案の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスでは、耐湿試験後の周縁部の白化は低減されているものの、依然充分ではない。しかも、白化を更に低減しようとして直鎖脂肪酸の含有量を増やすと、合わせガラスが比較的高温下に置かれた場合発泡や変色を生ずるおそれがある。
【0023】上記提案の中間膜は、接着力調整剤の改良により白化の解決を試みたものであるが、接着力調整剤を加えていない中間膜においても吸湿による白化が生じる。この原因の一つとして、以下に述べる樹脂中の不純物が関与していることが我々の最近の研究によって明らかとなった。
【0024】本発明の合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂を主成分とするものであるが、ポリビニルアセタール樹脂を製造する場合においては、中和工程が含まれており、この中和工程においては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のナトリウム塩の水溶液が使用されるため、それらのナトリウム塩が過剰に使用されたり、また中和により新たなナトリウム塩が生成したりすることにより、得られるポリビニルアセタール樹脂中にナトリウム塩が残留する。この残留したナトリウム塩は、重合時や乾燥時に粒子状となってポリビニルアセタール樹脂が吸水した際に水の凝集を促進するため、得られる合わせガラス用中間膜の吸湿による白化の大きな原因となる。また、ポリビニルアルコールにもナトリウム塩が残留している場合があり、このナトリウム塩が合わせガラス用中間膜の吸湿による白化の原因となる場合もある。
【0025】近年、合わせガラスを自動車のサイドガラスや各種建築物に使用する動きが盛んになっており、これらの用途においては、合わせガラスの周辺部を剥き出しの状態で使用する場合も増えており、白化現象防止に対する要望がますます強くなっている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を解決するもので、その目的とするところは、透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周縁部の白化が少ない合わせガラス用中間膜及びそれを用いた合わせガラスを提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明は、可塑化ポリビニルアセタール樹脂膜からなる合わせガラス用中間膜であって、厚さ0.3?0.8mmの上記中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後のヘイズが50%以下である合わせガラス用中間膜である。以下に本発明を詳述する。
【0028】本発明の合わせガラス用中間膜は、厚さ0.3?0.8mmの中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後のヘイズが50%以下である。
【0029】本発明者らは、厚さ0.3?0.8mmの中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後のヘイズが50%以下の合わせガラス用中間膜が、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周縁部の白化が少なく、耐湿性に優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0030】上記ヘイズが50%を超えると、高湿度下における白化を防ぐことが不充分となり、耐湿性に劣るので、上記範囲に限定される。本明細書において、上記ヘイズとは、厚さ0.3?0.8mmの中間膜を23℃の水に浸漬したとき、24時間後に積分式濁度計を用いて測定した値を意味するものとする。
【0031】本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑性ポリビニルアセタール樹脂膜よりなるものであり、上記可塑性ポリビニルアセタール樹脂膜は、ポリビニルアセタール樹脂を主成分とするものである。
【0032】上記ポリビニルアセタール樹脂としては、平均アセタール化度40?75モル%のものが好ましい。40モル%未満であると、可塑剤との相溶性が低下して、耐貫通性の確保に必要な量の可塑剤を混合し難くくなる場合がある。75モル%を超えると、得られる合わせガラス用中間膜の機械的強度が低下するとともに、樹脂を得るために長時間の反応時間を要し、プロセス上好ましくないことがある。より好ましくは、60?75モル%である。60モル%未満であると、吸湿性が高くなるため白化が起こりやすくなることがある。更に好ましくは、64?71モル%である。
【0033】上記可塑化ポリビニルアセタール樹脂中においては、ビニルアセテート成分が30モル%以下のものが好ましい。30モル%を超えると、樹脂の製造時にブロッキングを起こし易くなるため、製造しにくくなる。好ましくは、19モル%以下である。
【0034】上記可塑化ポリビニルアセタール樹脂は、ビニルアセタール成分、ビニルアルコール成分及びビニルアセテート成分とから構成されており、これらの各成分量は、例えば、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」や核磁気共鳴法(NMR)に基づいて測定することができる。
【0035】上記ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂以外の場合は、ビニルアルコール成分量とビニルアセテート成分量とを測定し、残りのビニルアセタール成分量は100から上記両成分量を差し引くことにより算出することができる。
【0036】上記ポリビニルアセタール樹脂は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、ポリビニルアルコールを温水に溶解し、得られた水溶液を所定の温度、例えば0?95℃、好ましくは10?20℃に保持しておいて、所要の酸触媒及びアルデヒドを加え、攪拌しながらアセタール化反応を進行させる。次いで、反応温度を70℃に上げて熟成し反応を完結させ、その後、中和、水洗及び乾燥を行ってポリビニルアセタール樹脂の粉末を得る方法等が挙げられる。
【0037】上記原料となるポリビニルアルコールとしては、平均重合度500?5000のものが好ましく、平均重合度1000?2500のものがより好ましい。500未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。5000を超えると樹脂膜の成形がし難くくなることがあり、しかも樹脂膜の強度が強くなりすぎることがある。
【0038】得られるポリビニルアセタール樹脂のビニルアセテート成分を30モル%以下に設定するのが好ましいので、そのために上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、70モル%以上のものが好ましい。70モル%未満であると、樹脂の透明性や耐熱性が低下することがあり、また反応性も低下することがある。より好ましくは、95モル%以上のものである。
【0039】上記ポリビニルアルコールの平均重合度及び鹸化度は、例えばJIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。上記アルデヒドとしては、炭素数3?10のアルデヒドが好ましい。炭素数が3未満では、充分な樹脂膜の成形性が得られないことがある。10を超えると、アセタール化の反応性が低下し、しかも反応中に樹脂のブロックが発生しやすくなり、樹脂の合成に困難を伴い易くなる。
【0040】上記アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の脂肪族、芳香族、脂環族アルデヒド等が挙げられる。好ましくは、炭素数4?8のn-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒドである。炭素数4のn-ブチルアルデヒドは、得られるポリビニルアセタール樹脂の使用により、各樹脂膜の接着強度が強くなり、また耐候性にも優れ、しかも樹脂の製造も容易となるので、より好ましい。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】本発明の中間膜においては、中間膜中のナトリウム塩の粒子径が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5μm以下である。また、中間膜中のカリウム塩の粒子径については、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは、5μm以下である。粒子径は細かいほどよく、更に好ましくは0に近い方がよい。
【0042】上記ナトリウム塩の粒子径が10μmを超えるか、又は、カリウム塩の粒子径が10μmを超えると、水の凝集を促進することがあるため、得られる中間膜の吸湿による白化の大きな原因となりうる。
【0043】上記ナトリウム塩の粒子径及びカリウム塩の粒子径は、中間膜中での粒子径を指すが、主原料であるポリビニルアセタール樹脂中のナトリウム塩の粒子径及びカリウム塩の粒子径は、製膜の過程で減少することもあるが、粒子径が保持される場合があるので、ポリビニルアセタール樹脂においてもナトリウム塩の粒子径及びカリウム塩の粒子径は上記範囲内であることが好ましい。
【0044】上記中間膜中のナトリウム塩及びカリウム塩の粒子径は、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いた二次イオン像のイメージングにより測定することができる。
【0045】本発明の中間膜においては、ナトリウム濃度が50ppm以下であることが好ましい。また、中間膜中のカリウム濃度については、100ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、ナトリウム濃度が0.5ppm以上15ppm以下、カリウム濃度が0.5ppm以上100ppm以下である。
【0046】上記中間膜中のナトリウム含量が50ppm、カリウム含量が100ppmを超えると、ナトリウム元素及びカリウム元素の周辺に集合した水分子が可視化される大きさにまで成長するため、白化が顕著になることがある。上記中間膜中のナトリウム含量及びカリウム含量のいずれの場合も0.5ppmより少ない中間膜を調製することは、樹脂の調製で残存ナトリウム元素又はカリウム元素を洗浄する工程を非常に長くしたり、使用する水や原材料等の精製度を上げたりする処置が必要となり、多大な時間と費用を要することとなり、実用上、好ましくない場合がある。
【0047】上記中間膜中のナトリウム濃度及びカリウム濃度は、ICP発光元素分析によって定量することができる。上記ICP発光元素分析は、試料を硫酸と硝酸で加熱・分解し、分解物を超純水で定容した後、ICP-AES法によって定量する方法である。
【0048】上記ナトリウム及び/又はカリウムの混入は、例えばポリビニルアセタール樹脂の調製において、反応のために使用した硫酸、塩酸等の酸触媒を中和するために、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム等のナトリウム元素又はカリウム元素を含んだ中和剤を用いたことに由来する。
【0049】上記ポリビニルアセタール樹脂の製造方法において、中和工程は、その前の工程であるポリビニルアセタール樹脂の生成反応において不可欠な塩酸(HCl)のような酸触媒が、樹脂中に残留して樹脂自身の劣化を引き起こすことを防ぐことができる。
【0050】上記中和剤としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を使用することができる。アルカリ土類金属は、アルカリ金属と異なり、中間膜中に多量に残留していても高湿度下における白化を抑制することができる点で好ましい。
【0051】上記アルカリ土類金属塩としては、例えば、炭酸水素マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩;水酸化バリウム等のバリウム塩;水酸化カルシウム等のカルシウム塩等が挙げられる。
【0052】上記ナトリウム及び/又はカリウムの混入は、接着力調整剤としてカルボン酸やオクチル酸等のナトリウム塩又はカリウム塩等を添加する場合、使用した水や原材料、特にポリビニルアルコール等にナトリウム元素又はカリウム元素が含有されており、これらが中間膜に残存する場合によっても起こる。
【0053】上記純水中に含有されるアルカリ金属は、例えば、イオン交換水を使用することによって、1ppm以下に削減することが可能である。これに対して、ポリビニルアルコール中に含有されるアルカリ金属は、ポリビニルアルコール原料の製造工程において、ポリ酢酸ビニルを鹸化する際に生成する酢酸ナトリウムに由来するものであり、含有量は、通常0.4?1.5重量%である。
【0054】従って、酢酸ナトリウムの含有量が0.4重量%以下であるポリビニルアルコール原料を使用することによって、樹脂中に含有される洗浄困難なナトリウム元素を削減でき、洗浄強化等によって安定してナトリウム元素を50ppm以下にすることができる。
【0055】上記ポリビニルアセタール樹脂の製造方法において、上記中和工程を行わずに、ポリビニルアセタール樹脂をpH5以上になるまで水洗し、更に60℃以下で乾燥することにより行うこともできる。pH5以上になるまで充分に水洗を行うことによって、得られる樹脂膜の白化の原因となるアルカリ金属含有量を所定量以下に抑えることができる。また、60℃以下という比較的低温で乾燥することにより、アルカリ金属の混入と酸触媒の残留による樹脂劣化を防止するとともに、乾燥装置の酸による腐食を防止することができる。乾燥方法は常法で良いが、特に真空乾燥法が効率的で優れている。
【0056】上記水洗工程において、40℃以上の水で洗浄することが好ましい。スラリー中の樹脂が40℃以上で膨潤することに注目し、洗浄時に用いる水の温度を40℃以上にすることにより洗浄効率を上げ、アルカリ金属の混入や酸触媒の残留による樹脂劣化を防止するためである。洗浄時に40℃以上、好ましくは40?60℃の洗浄水を用いることにより、スラリー中の樹脂が膨潤し、樹脂中に取り込まれている酸(HCl)及びその中和物(アルカリ金属含有物)が容易に洗い流され、洗浄効率を向上させることができる。洗浄水が40℃より低いと、樹脂が充分に膨潤せず、効果は上がりにくい。また、洗浄水が60℃より高い場合には、樹脂の軟化が起こり、粒子同士が合着してブロックの形成が見られ、安定した粒子径のものが得られないことがあるとともに、60℃の水と比較して大幅な効果の向上が期待できず、エネルギー的にも無駄となる。
【0057】上記ナトリウム及びカリウムの混入を防ぐために、ポリビニルアルコール、塩酸触媒及びアルデヒドをアセタール化反応させてポリビニルアセタール樹脂を合成するに際して、反応の停止剤及び塩酸除去剤としてエポキシドを使用してポリビニルアセタール樹脂を得、その後、膜形成を行う方法を挙げることもできる。上記エポキシドとしては、下記一般式(I)で表される
【0058】
【化1】

【0059】(R^(1)及びR^(2)は、水素又はアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。)
1,2-エポキシドのほか、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の1,3-エポキシド、1,4-エポキシド、1,5-エポキシド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上併用してもよい。エポキシドとしては、特に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0060】上記エポキシドの使用量としては、反応の停止及び塩酸除去を行うことができる有効量を使用することができる。上記エポキシドを使用する方法は、塩酸触媒の中和剤に代えて、エポキシドを用いてアセタール化反応を停止させ、更に塩酸を除去することにより、アルカリ金属の混入、また、酸触媒の残留による樹脂の劣化を防止することができる。
【0061】本発明においては、合わせガラス用中間膜は、高湿度下における白化をより効果的に防ぐために、分散剤を添加してなるものであることが好ましい。上記分散剤を添加することによって、ポリビニルアセタール樹脂中や可塑剤中に存在するナトリウム化合物やカリウム化合物等を分散することができ、これらの元素の粒子径を小さくすることができる。
【0062】上記分散剤としては、ナトリウム塩及びカリウム塩と錯体を形成しうる化合物、並びに、樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンが挙げられる。
【0063】上記ナトリウム塩及びカリウム塩と錯体を形成しうる化合物は、ナトリウム塩及びカリウム塩等の金属塩の周囲を疎水化することにより水を近づきにくくするため、上記ポリビニルアセタール樹脂が吸湿しても、得られる合わせガラス用中間膜の白化を抑制することができる。
【0064】上記ナトリウム及びカリウム塩と錯体を形成しうる化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸、サリチルアルデヒド、サリチル酸、サリチルアニリド、シュウ酸、1,10-フェナントロリン、アセチルアセトン、8-ヒドロキシキノリン、ジメチルグリオキシム、1,1-シクロヘキサン二酢酸、サリチルアルドキシム、グリシン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】上記ナトリウム及びカリウム塩と錯体を形成しうる化合物の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂に残留する金属塩の量によるが、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.02?2重量部であることが好ましい。0.02重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分となることがあり、2重量部を超えると、上記ポリビニルアセタール樹脂との相溶性が不良となり透明性に問題が生じる場合がある。より好ましくは、0.05?1重量部である。
【0066】上記分散剤としては、樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンを用いることもできる。上記樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸としては、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、硝酸等の単量体酸、ポリスルホン酸、ポリカルボン酸等の高分子酸等が挙げられ、なかでもスルホン酸、カルボン酸及びリン酸が好ましい。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0067】上記樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸として、より好ましくは、炭素数が2?21であるスルホン酸、炭素数が2?20であるカルボン酸、及び、下記一般式(II)で表されるリン酸からなる群より少なくとも1種を用いることである。
【0068】
【化2】

【0069】(式中、R^(3)は、炭素数が1?18である脂肪族系炭化水素基、又は、炭素数が1?18である芳香族系炭化水素基を表す。R^(4)は、水素原子、炭素数が1?18である脂肪族系炭化水素基、又は、炭素数が1?18である芳香族系炭化水素基を表す。)
【0070】上記炭素数が2?21であるスルホン酸において、炭素数が2未満であると、親水性が高くなってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなり、分散が不充分となることがあり、炭素数が21を超えると、疎水性となってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなり、相分離をおこすおそれがある。より好ましくは、炭素数が7?18のものである。
【0071】上記炭素数が2?21であるスルホン酸としては、脂肪族系のもの、芳香族系のもの等を用いることができる。上記炭素数が2?21であるスルホン酸としては特に限定されず、例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキル基の炭素数が2?21であるアルキルスルホン酸、アルキル基の炭素数が2?15であるアルキルベンゼンスルホン酸、アルキル基の炭素数が2?11であるアルキルナフタレンスルホン酸等であり、具体的には、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、樟脳スルホン酸、ヒドロキシプロパンスルホン酸、メシチレンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】上記炭素数が2?21であるスルホン酸の添加量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?2重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になる場合があり、2重量部を超えると、樹脂の劣化を促進したり、該スルホン酸自身が白化の原因となる場合がある。より好ましくは、0.03?1重量部である。
【0073】上記炭素数が2?20のカルボン酸においては、炭素数が2未満であると、親水性が高くなってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなり、分散が不充分となる場合があり、炭素数が20を超えると、疎水性となってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなり、相分離をおこすおそれがある。より好ましくは、炭素数が6?14のものである。
【0074】上記炭素数が2?20であるカルボン酸としては、脂肪族系のもの、芳香族系のもの等を用いることができる。また、ジカルボン酸であってもよい。上記炭素数が2?20であるカルボン酸としては特に限定されず、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、オクタン酸、2-エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、オレイン酸、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸、1,1-シクロヘキサン二酢酸、サリチル酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】上記炭素数が2?20であるカルボン酸の添加量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?3重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になる場合があり、3重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、透明性に問題が生じたり、樹脂の劣化を促進したりするおそれがある。より好ましくは、0.05?1重量部である。
【0076】上記一般式(II)で表されるリン酸のR^(3)及びR^(4)において、上記脂肪族系炭化水素基又は上記芳香族系炭化水素基の炭素数が18を超えると、疎水性となってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなることがある。より好ましくは、炭素数が6?12である。
【0077】上記一般式(II)で表されるリン酸としては特に限定されず、一般に用いられるリン酸が使用でき、具体的には、例えば、メチルリン酸、エチルリン酸、プロピルリン酸、イソプロピルリン酸、ブチルリン酸、ラウリルリン酸、ステアリルリン酸、2-エチルヘキシルリン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸、イソデシルリン酸、フェニルリン酸、ジメチルリン酸、ジエチルリン酸、ジイソプロピルリン酸、ジオクチルリン酸、ジフェニルリン酸、ジベンジルリン酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】上記一般式(II)で表されるリン酸の添加量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?2重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になることがあり、2重量部を超えると、樹脂の劣化を促進したり、該リン酸自身が白化の原因となる場合がある。より好ましくは、0.03?1重量部である。
【0079】上記樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸は、樹脂及び可塑剤に相溶するアミンと合わせて使用するものである。上記樹脂及び可塑剤に相溶するアミンは、下記一般式(III)で表されるものを好適に使用することができる。
【0080】
【化3】

【0081】(式中、R^(5)、R^(6)及びR^(7)は、それぞれ、水素原子、炭素数が1?20である脂肪族系炭化水素基、又は、炭素数が1?20である芳香族系炭化水素基である。R^(5)、R^(6)及びR^(7)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0082】上記脂肪族系炭化水素基又は上記芳香族系炭化水素基の炭素数が20を超えると、疎水性となってポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなることがある。R^(5)、R^(6)、R^(7)のうちいずれか1つは長鎖であることが好ましく、より好ましくは、R^(5)及びR^(6)が水素原子、炭素数1?2である炭化水素基、R^(7)が炭素数6?16の炭化水素基である。
【0083】上記一般式(III)で表されるアミンとしては、例えば、1、2及び3級のアルキルアミン、アニリン等の芳香族アミン、ピリジン等の含窒素複素環式化合物等が挙げられ、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、N-メチルアニリン等の2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N-ジメチルデシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等の3級アミン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】上記一般式(III)で表されるアミンの添加量は、樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸として炭素数が2?21であるスルホン酸を使用する場合、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?2重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になることがあり、2重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、透明性に問題が生じたり、中間膜が着色したりすることがある。より好ましくは、0.02?1重量部である。
【0085】上記樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸として炭素数が2?20であるカルボン酸を使用する場合、一般式(III)で表されるアミンの添加量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?3重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分となることがあり、3重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、透明性に問題が生じたり、中間膜が着色したりすることがある。より好ましくは、0.05?1重量部である。
【0086】上記樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸として上記一般式(II)で表されるリン酸を使用する場合、一般式(III)で表されるアミンの添加量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?2重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になることがあり、2重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、透明性に問題が生じたり、中間膜が着色したりすることがある。より好ましくは、0.05?1重量部である。
【0087】上記有機酸やアミンは、上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度や上記可塑剤の種類に応じて、分子構造や分子量を適宜選択して用いられることが好ましい。
【0088】上記分散剤として用いられる樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸及び樹脂及び可塑剤に相溶するアミンは、それぞれ、スルホニルイオン、カルボキシルイオン、リン酸イオン、及び、アンモニウンイオン等のイオンとなり、ポリビニルアセタール樹脂中に存在する粒子状の金属塩の表面に作用して、この金属塩を構成する金属イオン及びその対イオンと結合する。そして、製膜時に樹脂を混練することにより、これらイオンが結合した金属塩が樹脂中に分散され、その結果として、粒子状の金属塩は小さくなるか又は消滅する。このため、水の局所的な凝集が抑制され、ポリビニルアセタール樹脂が吸湿しても、得られる合わせガラス用中間膜の白化を抑制することができる。また、上記分散剤として用いられる樹脂及び可塑剤に相溶する有機酸のうち、特にリン酸においては、樹脂とガラスのカップリング剤の役割をも果たし、吸湿しても膜とガラスが剥離しにくい性質を持つので、合わせガラス周辺部の吸湿による剥離を抑制することができる。
【0089】本発明において、合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤として、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0090】上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。上記塩としては、オクチル酸、ヘキシル酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等の有機酸;塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0091】上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、炭素数5?16の有機酸のアルカリ金属塩及び炭素数5?16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましい。更に好ましくは、炭素数6?10のカルボン酸又はジカルボン酸のマグネシウム塩である。
【0092】上記カルボン酸又はジカルボン酸のマグネシウム塩としては特に限定されず、例えば、2-エチル酪酸マグネシウム、吉草酸マグネシウム、ヘキサン酸マグネシウム、ヘプタン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウム、ノナン酸マグネシウム、デカン酸マグネシウム、グルタル酸マグネシウム、アジピン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0093】上記炭素数6?10のカルボン酸又はジカルボン酸のマグネシウム塩は、膜中で電離せずに塩の形で存在し、水分子を引き寄せることにより、中間膜とガラスとの間の接着力を抑えることが可能になっていると考えられ、このことにより、得られる合わせガラスの耐貫通性能を良好なものとすることができる。更に、膜中で凝集することなく膜表面に高濃度に分布するため、少量で接着力調整効果を示すとともに、吸湿時の過度の白化を起こすこともないので、好ましいものである。
【0094】上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、粒径が3μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。3μmを超えると、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の周辺に集合した水分子が可視化される大きさにまで成長するため、白化が顕著になり、好ましくない場合がある。
【0095】上記粒径を3μm以下にするための手段としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤に溶解し易い化合物を接着力調整剤として用いる方法、並びに、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤に溶解し難い化合物であっても、ポリビニルアセタール樹脂中や可塑剤中で凝集し難いものを用いる方法、及び、それらを分散させるような分散剤や相溶化剤等を併用する方法等が挙げられる。
【0096】上記配合に溶解し易い化合物としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂を用い、可塑剤としてトリエチレングリコール-2-エチルブチレートを用いる配合の場合、オクタン酸マグネシウム、ネオデカン酸マグネシウム、アジピン酸マグネシウム等の有機酸塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0097】上記配合に溶解し易いカリウム化合物としては、オクタン酸カリウム、ネオデカン酸カリウム、ステアリン酸カリウム等の有機酸のカリウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0098】上記配合に溶解し易いナトリウム化合物としては、オクタン酸ナトリウム、ネオデカン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0099】上記配合に溶解し難いものの配合中で凝集し難い化合物としては、例えば、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等の無機酸のマグネシウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0100】上記配合に溶解し難い化合物を併用により分散させ得る分散剤や相溶化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、オクチルアルコール等のアルコール類やオクタン酸、ノナン酸等の長鎖系有機酸類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0101】上記各種方法のなかでも、ポリビニルアセタール樹脂や可塑剤にそれ自体が溶解し易い化合物を用いる方法が最も好ましく、次いで、ポリビニルアセタール樹脂中や可塑剤中で凝集し難い化合物を用いる方法が好ましい。
【0102】上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、可塑剤としてジエステル系化合物を使用する場合、ジエステル系化合物の酸成分と同構造を有するものであることが好ましい。可塑剤として使用されるジエステル系化合物の酸成分と類似な構造を有することにより、膜中で安定的にかつ均一に分散して存在することができるので、経時変化を起こすことがない。
【0103】上記可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(以下、「3GH」ともいう)又はジヘキシルアジペート(以下、「DHA」ともいう)を用いる場合、接着力調整剤として炭素数5又は6のカルボン酸の金属塩を含有させることにより、中間膜とガラスとの接着力の経時低下を防止することができ、白化防止と接着力の経時低下防止を両立させることができるので好ましい。また、同様の理由により、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(以下、「3GO」ともいう)を用いる場合、炭素数6?8のカルボン酸の金属塩が含有されていることが好ましい。可塑剤としてテトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(以下、「4GO」ともいう)を用いる場合、炭素数6又は7のカルボン酸の金属塩が含有されていることが好ましい。
【0104】上記可塑化されたポリビニルアセタール樹脂の製膜時の熱による加水分解を極力防止するために、トリエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート(3G7)やテトラエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート(4G7)のような可塑剤に比較し、加水分解を起こし難い3GH、3GO、4GOのような側鎖タイプの可塑剤又はDHAのようなアジペート系タイプの可塑剤を用いることが好ましい。
【0105】上記3GHは、中間膜用の可塑剤として永い実績を有するものであり、原料の有機酸成分が側鎖タイプであって、直鎖タイプである3G7や4G7等に比較し、加水分解を起こし難いという利点を有する。上記3GO又は4GOは、例えば3GHに比較し、高沸点であるので製膜時又は合わせ加工時に揮散し難いという利点を有する。
【0106】上記3GH、3GO、4GO及びDHAは、単独で使用してもよく、また、後述する他の可塑剤と併用してもよい。上記3GH、3GO、4GO及びDHAと他の可塑剤との併用割合は、特に限定されるものではないが、他の可塑剤の併用量が上記3GH、3GO、4GO及びDHAの可塑剤の50重量%未満であることが好ましい。50重量%以上であると、上記3GH、3GO、4GO及びDHAの有する特性が他の可塑剤により弱められるため、これらに対応して用いられる接着力調整剤の効果が充分に発揮されなくなることがある。
【0107】上記の中間膜中の可塑剤を特定のものに設定する際に使用される接着力調整剤としてのカルボン酸の金属塩は、特に限定されるものではないが、ペンタン酸金属塩(炭素数5)、ヘキサン酸(2-エチルブタン酸)金属塩(炭素数6)、ヘプタン酸金属塩(炭素数7)、オクタン酸金属塩(炭素数8)等が挙げられ、上記可塑剤の種類に応じて、これらの1種又は2種以上が好適に用いられる。上記カルボン酸は直鎖タイプであっても良いし、側鎖タイプであっても良い。
【0108】上記カルボン酸の炭素数が小さすぎる金属塩であると、得られる中間膜の耐湿性が不充分となって白化現象の発生が大きくなることがあり、逆に、カルボン酸の炭素数が大きすぎる金属塩であると、中間膜とガラスとの接着力の経時低下防止効果が不充分となることがある。
【0109】上記接着力調整剤としてのカルボン酸の金属塩は、それぞれ単独で用いられてもよいが、ギ酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、プロパン酸マグネシウム、ブタン酸マグネシウムのような炭素数1?4のカルボン酸の金属塩系接着力調整剤;後述する変性シリコンオイル系接着力調整剤等の他の接着力調整剤と併用されても良い。
【0110】上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を接着力調整剤として添加する場合、その添加量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.01?0.2重量部が好ましい。0.01重量部未満であると、接着力調整効果がなくなるため、得られる合わせガラスの耐貫通性能が低下することがある。0.2重量部を超えると、ブリードアウトして得られる合わせガラスの透明性を損なうとともに、中間膜とガラスとの接着力が過度に低下するおそれがある。より好ましくは、0.03?0.08重量部である。
【0111】上記アルカリ金属塩がナトリウム塩の場合、特に白化が起こりやすいため、ナトリウム濃度は50ppm以下となることが好ましい。また、上記アルカリ金属塩がカリウム塩の場合も白化が起こりやすいため、カリウム元素濃度は100ppm以下となることが好ましい。
【0112】上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、上記接着力調整剤として添加する場合のほかに、ポリビニルアセタール樹脂の反応において使用した硫酸、塩酸等の酸触媒の中和剤としてアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩を用いたことに由来する場合や、ポリビニルアセタール樹脂の反応において使用した各種原材料や水等に上記金属塩が含有されていた場合等がある。上記中和剤としてのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、接着力調整剤として転用することができる。
【0113】本発明の合わせガラス用中間膜は、上記ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤、並びに、必要により、上述の分散剤及び接着力調整剤等の添加剤からなる可塑性樹脂膜よりなるものである。
【0114】本発明において使用される可塑剤としては、この種の中間膜に用いられている公知の可塑剤、例えば、一塩基酸エステル、多塩基酸エステル等の有機エステル系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が用いられる。
【0115】上記一塩基酸エステルの中では、例えば、トリエチレングリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプタン酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等の有機酸との反応によって得られたグリコール系エステルが好ましい。その他、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールと上記有機酸とのエステルも用いられる。
【0116】上記多塩基酸エステルとしては、例えば、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸等の有機酸と、炭素数4?8の直鎖状又は分岐状アルコールとのエステルが好ましい。
【0117】上記有機エステル系可塑剤の具体例としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキソエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクトエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプトエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプトエート、その他ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペートが好適に用いられる。
【0118】その他、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ2-エチルブチレート、1,2-ブチレングリコールジ-2-エチレンブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキソエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペントエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート等も、可塑剤として用いられる。
【0119】上記リン酸系可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスファイト等が好ましい。上記可塑剤のなかで、ジカルボン酸と1価アルコールとからなるか、又は、モノカルボン酸と2価アルコールとからなるジエステル系化合物を配合することが好ましい。
【0120】上記可塑剤量としては、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して20?70重量部が好ましく、より好ましくは40?60重量部である。20重量部未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、70重量部を超えると可塑剤がブリードして、光学歪みが大きくなったり、樹脂膜の透明性や接着性が低下することがある。
【0121】本発明において、添加剤としては、分散剤及び接着力調整剤のほか、耐貫通性を制御するための変成シリコーンオイル、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤等の合わせガラス用中間膜に使用されている公知の添加剤を配合することができる。
【0122】上記変性シリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、特公昭55-29950号公報で開示されているようなエポキシ変性シリコンオイル、エーテル変性シリコンオイル、エステル変性シリコンオイル、アミン変性シリコンオイルカルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの変性シリコーンオイルは一般に、ポリシロキサンに変性すべき化合物を反応させて得られる液体である。
【0123】本発明においては、下記一般式(IV)
【0124】
【化4】

【0125】(式中、l及びmは30以下の正の整数を表す)で表されるエポキシ変性シリコーンオイル、下記一般式(V)
【0126】
【化5】

【0127】(式中、l及びmは30以下の正の整数を表す;x及びyは20以下の正の整数を表す)で表されるエーテル変性シリコーンオイル、及び、下記一般式(VI)
【0128】
【化6】

【0129】(式中、l及びmは30以下の正の整数を表す)で表されるエステル変性シリコーンオイルが特に好ましく用いられる。また、上記一般式(IV)、(V)及び(VI)によって示される各々の変性シリコーンオイルはブロック共重合体の構造式で表されたものであるが、本発明においては、ランダム共重合体の構造式で表されるものも同様に用いられる。
【0130】上記変性シリコーンオイルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記変性シリコーンオイルの分子量は、800?5000が好ましい。800未満であると、表面への局在化が低下し、5000を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下する。より好ましくは、1500?4000である。
【0131】上記変性シリコーンオイルの添加量は、上記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.01?0.2重量部が好ましい。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分になり、0.2重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下する。より好ましくは、0.03?0.1重量部である。
【0132】上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系のものとして、例えば、t-ブチルヒドロキシトルエン(BHT)(住友化学社製「スミライダーBHT(商品名)」)、テトラキス-[メチレン-3-(3′-5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010、チバガイギー社製)等が挙げられる。
【0133】上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、ベンゾトリアゾール系のものとして、例えば、2-(2′-ヒドロキシ-5′-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チヌビンP、チバガイギー社製)、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チヌビン320、チバガイギー社製)、2-(2′-ヒドロキシ-3′-t-ブチル-5′-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(チヌビン326、チバガイギー社製)、2-(2′-ヒドロキシ-3′,5′-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(チヌビン328、チバガイギー社製)等のベンゾトリアゾール系のもの;LA-57(アデカアーガス社製)等のヒンダードアミン系のもの等が挙げられる。
【0134】上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系のもの、例えば、旭電化社製「アデカスタブLA-57(商品名)」等が挙げられる。上記界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
【0135】本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は、特に限定されるものではないが、上述の各樹脂に所定量の可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、これを均一に混練りした後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等によりシート状に製膜して樹脂膜を成形し、これを中間膜とする。
【0136】本発明の合わせガラス用中間膜の全体の膜厚は、合わせガラスとして最小限必要な耐貫通性や耐候性を考慮すると、実用的には通常の合わせガラス用中間膜における膜厚と同様に、一般に0.3?1.6mmの範囲が好ましい。
【0137】上記合わせガラスに用いられるガラス板としては、無機透明ガラス板のみならず、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板等の有機透明ガラス板も使用することができる。
【0138】上記無機透明ガラス板の種類としては、特に限定されるものではなく、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、着色された板ガラス等の各種無機ガラス等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、無機透明ガラス板と有機透明ガラス板とが積層されたものであってもよい。また、ガラスの厚みは、用途によって適宜選択されればよく、特に制限されるものではない。
【0139】本発明の合わせガラスを製造するには、通常の合わせガラスの製法が採用される。例えば、2枚の透明なガラス板の間に、前述の方法で成形した樹脂膜からなる中間膜を挟み、これをゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70?110℃で予備接着し、次いで、オートクレーブを用いるか又はプレスを用い、約120?150℃で、約10?15kg/cm^(2)の圧力で本接着を行うことにより製造される。
【0140】また、合わせガラスの製造方法において、少なくとも一対のガラス板間に、可塑化されたポリビニルブチラール樹脂が製膜されてなる上記中間膜を介在させ、減圧下で吸引脱気すると同時に、温度60?100℃で加熱圧着してもよい。より具体的には、ガラス板/中間膜/ガラス板の積層体をゴムバッグに入れ、例えばオートクレーブ中で、-500?-700mmHg程度の減圧下で吸引脱気しながら約60?100℃の温度及び1?10kg/cm^(2)程度の圧力で10?30分間程度加熱圧着し、脱気と接着とを同時に行うことにより実施される。
【0141】この製造方法においては、上述のように、加熱圧着する時の温度を60?100℃の範囲に限定し、圧着圧力、圧着時間及び吸引脱気する時の減圧度等の諸条件を上記程度の範囲内で適宜設定することにより、中間膜とガラスとの接着力を所望の適性範囲内に収まるように調整することができる。
【0142】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0143】実施例1
(1)樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用の中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のビニルアセタール成分(アセタール化度)は65.0モル%、ビニルアセテート成分は1.1モル%であった。
【0144】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、これをミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、厚さ0.76mmの中間膜を得た。中間膜中のナトリウム塩及びカリウム塩の粒子径を飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置(PHIEVANS社製 TFS-2000型)を用いた二次イオン像のイメージングにより測定した結果、中間膜中のナトリウム塩の粒子径は1μm、カリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。該中間膜のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析で定量した結果、6ppmであった。なお、ICP発光元素分析は、試料を硫酸と硝酸で加熱・分解し、この分解物を超純水で定容した後、ICP-AES装置(日本ジャーレルアッシュ社製「ICAP-575型」)を用いたICP-AES法で定量する方法である。
【0145】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を用い、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したまま90℃のオーブンに移し、さらに80℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で圧力12kg/cm^(2)、温度135℃の条件で20分間本接着を行い、透明な合わせガラスを得た。得られた合わせガラスについて、以下の方法で接着性試験(パンメル試験)および耐湿白化性試験を行った。
【0146】性能評価
(1)接着性(パンメル)試験
合わせガラスを-18℃±0.6℃の温度に放置して調整し、これを頭部の重量が0.45kgのハンマーで打って、ガラスの粒径が6mm以下になるまで粉砕する。そして、ガラスが部分剥離した後の膜の露出度を、表1に示すように、あらかじめグレード付けした限度見本で判定する。これは、ガラス板と中間膜との接着力が所定の範囲にあるかどうかを判定するためのものである。
【0147】
【表1】

【0148】(2)耐湿白化性試験
樹脂膜を4×4cmのサイズにカットし、常温(23℃)のイオン交換水に浸漬し、24時間後のヘイズを、積分式濁度計(東京電色社製)を用いて測定した。結果を表2に示した。
【0149】実施例2
実施例1の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を1.5時間に変更し、それ以外は実施例1と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は13ppm、ナトリウム塩の粒子径は3μm、カリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0150】実施例3
実施例1の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を2.5時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は3ppm、ナトリウム塩の粒子径は0.5μm、カリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0151】実施例4
実施例1の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を3.5時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は0.9ppm、ナトリウム塩の粒子径は0.5未満、カリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0152】比較例1
実施例1の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を1時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は17ppm、ナトリウム塩の粒子径は6μmであった。
【0153】比較例2
実施例1の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を0.5時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は35ppm、ナトリウム塩の粒子径は13μmであった。以上の実施例1?4及び比較例1、2の評価結果を表2に示した。
【0154】
【表2】

【0155】上記結果から明らかなように、実施例1?4では優れた耐湿性を示す。
【0156】実施例5
(1)樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰(樹脂に対して30倍量)の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化カリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のビニルアセタール成分(アセタール化度)は65.0モル%、ビニルアセテート成分は1.1モル%であった。
【0157】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、これをミキシングロールで十分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、厚さ0.76mmの中間膜を得た。該中間膜のカリウム元素含有量をICP発光元素分析で定量した結果、23ppmであった。中間膜中のナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満μm、カリウム塩の粒子径は3μm未満であった。
【0158】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を用い、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したまま90℃のオーブンに移し、さらに80℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で圧力12kg/cm^(2)、温度135℃の条件で20分間本接着を行い、透明な合わせガラスを得た。
【0159】実施例6
実施例5の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を2.5時間に変更した以外は実施例5と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のカリウム元素含有量は5ppm、カリウム塩の粒子径は1μm、ナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0160】実施例7
実施例5の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を3.5時間に変更した以外は実施例5と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のカリウム元素含有量は0.7ppm、カリウム塩の粒子径は0.5μm未満、ナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0161】比較例3
実施例5の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を1時間に変更した以外は実施例5と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のカリウム元素含有量は104ppm、カリウム塩の粒子径は6μmであった。
【0162】比較例4
実施例5の樹脂の調製において、中和剤を入れてからの洗浄・水洗工程を0.5時間に変更した以外は実施例5と同様に行った。この場合、得られた中間膜中のカリウム元素含有量は220ppm、カリウム塩の粒子径は9μmであった。
【0163】以上の実施例5?8および比較例3、4で得られた合わせガラスについて、前述と同様の方法で接着性試験(パンメル試験)および耐湿性試験を行い、その評価結果を表3にまとめて示す。
【0164】
【表3】

【0165】上記結果から明らかなように、実施例5?7では優れた耐湿性を示す。
【0166】実施例8
(1)樹脂の調製純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gとを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のアセタール化度は65.0モル%であった。
【0167】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、13ppmであった。中間膜中のナトリウム塩の粒子径は、3μmであった。
【0168】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を、厚み2.5mmの2枚のフロートガラスの間に挟み、これをゴムバッグ内に入れ、オートクレーブ中で-600mmHgの減圧下で吸引脱気しつつ、同時に温度60℃、圧力5kg/cm^(2)の条件で20分間加熱圧着を行って合わせガラスを作製した。
【0169】実施例9
実施例8の合わせガラスの作製において、加熱圧着時の温度を80℃としたこと以外は実施例8と同様にして合わせガラスを作製した。中間膜中のナトリウム塩の粒子径は、3μmであった。
【0170】実施例10
実施例8の合わせガラスの作製において、加熱圧着時の温度を100℃としたこと以外は実施例8と同様にして合わせガラスを作製した。中間膜中のナトリウム塩の粒子径は、3μmであった。
【0171】比較例5
実施例8の樹脂の調製において、洗浄・水洗工程をやや短時間に変更した以外は実施例8と同様に行い、合わせガラスを作製した。この場合、得られた中間膜中のナトリウム元素含有量は30ppm、ナトリウム塩の粒子径は11μmであった。
【0172】以上の実施例8?10および比較例5で得られた合わせガラスについて、以下の方法で接着性試験(パンメル試験)及び耐熱性試験を行った。耐湿性試験については、実施例1と同様に行った。
【0173】評価方法
(1)接着性(パンメル)試験
合わせガラスを-20℃で2時間冷却した後、自動ハンマーリング装置に装着し、ハンマーヘッドで合わせガラスの全面を一様に打撃し、合わせガラスの中間膜に付着しているガラス片の面積を目視で観察し、表1に示したグレード見本と対比して接着力(パンメル値)を判定する。グレード見本は、接着力最小が1点、最大が10点の10点法である。又、用いた自動ハンマーリング装置は、底面が半径50mmの曲率にて曲面成形され、打撃有効直径が5mm、重量が240gのハンマーヘッドを有し、ハンマーヘッドの打撃力は、スプリングネジで調整できるものである。
【0174】(2)耐熱性試験
JIS R3205「合わせガラス」に基づいて、得られた合わせガラスを130℃の雰囲気下に2時間放置した後、取り出して、発泡の有無を目視で観察する。以上の実施例8?10及び比較例5の結果を表4にまとめて示した。
【0175】
【表4】

【0176】実施例11
(1)樹脂の調製純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gとを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰(樹脂に対して30倍)の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流した。このときの系のpHを測定したところ、pH値は5.1であった。更にセントル脱水機で脱水し、50%含水率の樹脂を得た。該樹脂を60℃、-700mmHgの雰囲気下での乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のアセタール化度は65.0モル%であった。
【0177】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、0.7ppmであった。また、中間膜中のナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0178】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を、厚み2.5mmの2枚のフロートガラスの間に挟み、これをゴムバッグ内に入れ、オートクレーブ中で-600mmHgの減圧下で吸引脱気しつつ、同時に温度60℃、圧力5kg/cm^(2)の条件で20分間加熱圧着を行って合わせガラスを作製した。
【0179】実施例12
(1)樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰(樹脂に対して30倍)の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和した。その後、過剰(樹脂に対して30倍)の温度50℃の水で水洗を行い、乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のアセタール化度は65.0モル%であった。
【0180】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、10ppmであった。また、中間膜中のナトリウム塩の粒子径は3μmであった。
【0181】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を、厚み2.5mmの2枚のフロートガラスの間に挟み、これをゴムバッグ内に入れ、オートクレーブ中で-600mmHgの減圧下で吸引脱気しつつ、同時に温度60℃、圧力5kg/cm^(2)の条件で20分間加熱圧着を行って合わせガラスを作製した。
【0182】実施例13
実施例12において、中和後の洗浄で温度60℃の水を用いた以外は全て実施例12と同様にして中間膜を得た。この中間膜のアセタール化度は65.0モル%であった。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、15ppmであった。また、中間膜中のナトリウム塩の粒子径は4μmであった。
【0183】実施例14
(1)樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gとを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化マグネシウムで中和し、更に過剰の水で水洗を行い、乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。
【0184】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、0.7ppmであった。また、中間膜中のナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。
【0185】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を、厚み2.5mmの2枚のフロートガラスの間に挟み、これをゴムバッグ内に入れ、オートクレーブ中で-600mmHgの減圧下で吸引脱気しつつ、同時に温度60℃、圧力5kg/cm^(2)の条件で20分間加熱圧着を行って合わせガラスを作製した。
【0186】以上の実施例11?14で得られた合わせガラスについて、以下の方法で耐熱性試験を行った。耐湿性試験については、実施例1と同様に行った。但し、実施例14は耐湿性試験のみ実施した。
【0187】評価方法
(1)耐熱性試験
通常の試験管に樹脂1gを入れ、150℃の油浴中で60分加熱し、樹脂の劣化の有無を観察した。以上の実施例11?14の結果を表5にまとめて示した。
【0188】
【表5】

【0189】実施例15
(1)樹脂の調製純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%、酢酸ナトリウム含有量0.1重量%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水(樹脂に対して30倍)で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウムを用いて中和した後、更に過剰の水で洗浄を行い、乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のアセタール化度は65モル%であった。
【0190】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、8ppmであった。
【0191】実施例16
平均重合度1700、ケン化度98.9モル%、酢酸ナトリウム含有量0.4重量%のポリビニルアルコール275gを使用したこと以外は、実施例15と同様にして中間膜を得た。この中間膜のアセタール化度は65.0モル%であった。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、13ppmであった。
【0192】実施例17
(1)樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%、酢酸ナトリウム含有量0.1重量%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gとを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水(樹脂に対して30倍)で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を中和剤であるオクタン酸マグネシウムを用いて中和した後、更に過剰の水で洗浄を行い、乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂のアセタール化度は65モル%であった。
【0193】(2)中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂100重量部と、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部とを混合し、プレス成形機でプレス成形して中間膜を得た。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、2ppmであった。
【0194】実施例18
塩酸触媒の中和剤としてエチレンオキサイドを使用したこと以外は、実施例17と同様にして中間膜を得た。この中間膜のアセタール化度は65モル%であった。該中間膜中のナトリウム元素含有量をICP発光元素分析装置で定量した結果、2ppmであった。上記実施例15?18で得られた中間膜を用いて、実施例11と同様の耐熱性試験、及び、実施例1と同様の耐湿性試験を行い、その結果を表6に示した。
【0195】
【表6】

【0196】実施例19
(1)ポリビニルアセタール樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、鹸化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35重量%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は64モル%、残存アセチル基量は1モル%であった。
【0197】(2)合わせガラス用中間膜の製造
上記で得られたポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%)100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40部及び接着性調整剤としてオクタン酸マグネシウム0.08部を添加し、ミキシングロールで十分に溶融混練した後、プレス成形機を用いて150℃で30分間プレス成形し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。得られた合わせガラス用中間膜中のナトリウム含量は10ppm、ナトリウム塩の粒子径は1μmであった。また、中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いて測定したところ、0.9μmであった。
【0198】(3)合わせガラスの製造
上記で得られた合わせガラス用中間膜を、その両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ3mm)で挟み込み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、さらに90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で温度135℃、圧力12kg/cm^(2)の条件で20分間本圧着を行い、合わせガラスを得た。
【0199】実施例20
合わせガラス用中間膜の製造において、接着性調整剤として、オクタン酸マグネシウム0.08部の代わりに、ネオデカン酸マグネシウム0.09部を添加したこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、0.5μmであった。
【0200】実施例21
合わせガラス用中間膜の製造において、接着性調整剤として、オクタン酸マグネシウム0.08部の代わりに、塩化マグネシウム0.04部を添加したこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、2μmであった。
【0201】実施例22
ポリビニルアセタール樹脂の製造において、中和剤として、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、塩基性炭酸マグネシウムを用いたこと以外は実施例19と同様にして、平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%の白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。次いで、合わせガラス用中間膜の製造において、実施例19で得られたポリビニルブチラール樹脂100部の代わりに、上記で得られたポリビニルブチラール樹脂100部を用い、接着力調整剤としてのオクタン酸マグネシウム0.08部を添加しなかったこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。中間膜中のナトリウム含量は0.7ppm、ナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、2μmであった。
【0202】実施例23
ポリビニルアセタール樹脂の製造において、中和剤として、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに、水酸化マグネシウム水溶液を用いたこと以外は実施例19と同様にして、平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%の白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。次いで、合わせガラス用中間膜の製造において、実施例19で得られたポリビニルブチラール樹脂100部の代わりに、上記で得られたポリビニルブチラール樹脂100部を用い、接着力調整剤としてのオクタン酸マグネシウム0.08部を添加しなかったこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含量は0.7ppm、ナトリウム塩の粒子径は0.5μm未満であった。中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、2.5μmであった。
【0203】比較例6
合わせガラス用中間膜の製造において、接着性調整剤として、オクタン酸マグネシウム0.08部の代わりに、ポリビニルブチラール樹脂や可塑剤に溶解し難い酢酸マグネシウム0.04部を添加したこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、10μmであった。
【0204】比較例7
合わせガラス用中間膜の製造において、接着性調整剤として、オクタン酸マグネシウム0.08部の代わりに、ポリビニルブチラール樹脂や可塑剤に溶解し難い酢酸マグネシウム0.04部及び短鎖系有機酸である酪酸0.05部を添加したこと以外は実施例19と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径を実施例19と同様にして測定したところ、4μmであった。
【0205】実施例19?23並びに比較例6及び7で得られた合わせガラス用中間膜の耐湿性試験を実施例1と同様にして行った。その結果は表7に示すとおりであった。
【0206】
【表7】

【0207】表7から明らかなように、本発明による実施例19?23の合わせガラスは優れた耐湿性を示した。これに対し、合わせガラス中間膜中に存在するマグネシウム塩の粒子径が3μmを超える比較例6及び7の合わせガラスは耐湿性が悪かった。
【0208】実施例24
合成・調製
(ポリビニルブチラール樹脂の合成)イオン交換水2900重量部、平均重合度1700でケン化度99.2モル%のポリビニルアルコール198重量部(ビニルアルコール4.5モル相当量)を撹拌装置付き反応器に供給し、撹拌しながら95℃に加熱して溶解した。この溶液を30℃に冷却し、35重量%塩酸208重量部(2.1モル)とn-ブチルアルデヒド152重量部(2.1モル)を加え、次いで液温を2℃に下げてこの温度を保持し、ポリビニルブチラール樹脂が析出した後、液温を30℃に昇温して5時間保持した。保持した後、炭酸水素ナトリウム156重量部(1.8モル)を加えて中和し、水洗及び乾燥を行いブチラール化度65モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂のナトリウム含有量をICP発光分析法により測定したところ、50ppmであった。ナトリウム塩の粒子径は、12μmであった。
【0209】(樹脂膜の作製)得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、エチレンジアミン四酢酸0.05重量部、2-エチル酪酸マグネシウム0.04重量部、及び、変性シリコーンオイル0.05重量部をミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物をプレス成形機にて150℃、120kg/cm^(2)の条件で30分間プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様の耐湿性試験を行った。なお、変性シリコーンオイルとしては、下記化学式で表されるものを用いた。
【0210】
【化7】

【0211】実施例25
エチレンジアミン四酢酸0.05重量部の代わりに、サリチルアルデヒド0.08重量部を用いたこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0212】実施例26
エチレンジアミン四酢酸0.05重量部の代わりに、シュウ酸1.0重量部を用いたこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0213】実施例27
エチレンジアミン四酢酸0.05重量部の代わりに、1,10-フェナントロリン0.03重量部を用いたこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0214】実施例28
エチレンジアミン四酢酸0.05重量部の代わりに、アセチルアセトン0.3重量部を用いたこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0215】比較例8
エチレンジアミン四酢酸0.05重量部を使用しなかったこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0216】比較例9エチレンジアミン四酢酸0.05重量部の代わりに、アセトン0.1重量部を用いたこと以外は、実施例24と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表8に示した。
【0217】
【表8】

【0218】実施例29
(1)ポリビニルアセタール樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35重量%塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒド洗い流し、塩酸触媒を汎用な中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は64モル%、残存アセチル基量は1モル%であった。
【0219】(2)合わせガラス用中間膜の製造
得られたポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%)100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40部、及び、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部とアミンとしてジメチルオクチルアミン0.13部を添加し、ミキシングロールで充分溶融混練した後、プレス成形機を用いて150℃で30分間プレス成形し、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。得られた中間膜のナトリウム含有量をICP発光分析法により測定したところ、50ppmであった。また、中間膜中に存在するナトリウム元素の粒子径を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いて測定したところ4μmであった。
【0220】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を用い、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ3mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したまま90℃のオーブンに移し、さらに80℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で温度135℃、圧力12kg/cm^(2)の条件で20分間本接着を行い、合わせガラスを得た。得られた合わせガラス中間膜について、実施例1と同様に耐湿性試験を行い、結果を表9に示した。
【0221】実施例30
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりにオクタン酸0.30部を添加し、アミンとしてジメチルオクチルアミン0.13部の代わりにデシルアミン0.35部を添加したこと以外は、実施例29と同様にして樹脂膜を得、評価した結果を表9に示した。得られた中間膜中に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例29と同様にして測定したところ5μmであった。
【0222】実施例31
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりにジ(2-エチルヘキシル)リン酸0.20部を添加したこと以外は、実施例29と同様にして樹脂膜を得、評価した結果を表9に示した。得られた中間膜中に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例29と同様にして測定したところ2μmであった。
【0223】比較例10
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったこと以外は、実施例29と同様にして樹脂膜を得、評価した結果を表9に示した。得られた中間膜中に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例29と同様にして測定したところ20μmであった。
【0224】比較例11
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったことと、洗浄時間を2時間から3時間に変更したこと以外は、実施例29と同様にして樹脂膜を得、評価した結果を表9に示した。得られた中間膜中に存在するナトリウム含有量を実施例29と同様にして測定したところ30ppmであった。ナトリウム元素の粒子径を実施例29と同様にして測定したところ13μmであった。
【0225】
【表9】

【0226】実施例32
合成・調製
(ポリビニルブチラール樹脂の合成)イオン交換水2900重量部、平均重合度1700でケン化度99.2モル%のポリビニルアルコール198重量部(ビニルアルコール4.5モル相当量)を撹拌装置付き反応器に供給し、撹拌しながら95℃に加熱して溶解した。この溶液を30℃に冷却し、35重量%塩酸196重量部(1.9モル)とn-ブチルアルデヒド152重量部(2.1モル)を加え、次いで液温を2℃に下げてこの温度を保持し、ポリビニルブチラール樹脂が析出した後、液温を30℃に昇温して5時間保持した。保持した後、炭酸水素ナトリウム147重量部(1.7モル)を加えて中和し、水洗及び乾燥を行い、ブチラール化度65モル%のポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂のナトリウム含有量をICP発光分析法により測定したところ、50ppmであった。また、ナトリウム塩の粒子径は12μmであった。
【0227】(樹脂膜の作製)得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部をミキシングロールに供給し、混練して得られた混練物をプレス成形機にて150℃、120kg/cm^(2)の条件で10分間プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を使用して、実施例1と同様にして耐湿白化性試験を行った。結果を表10に示した。
【0228】実施例33
ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、テトラデシルアミン0.49重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0229】実施例34
p-トルエンスルホン酸0.43重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0230】実施例35
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.15重量部、及び、デシルアミン0.07重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0231】実施例36
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部、及び、デシルアミン0.36重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0232】実施例37
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部、及び、ドデシルアミン0.42重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0233】実施例38
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部、及び、N,N-ジオクチルアミン0.55重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0234】実施例39
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.37重量部、及び、N,N-ジメチルオクチルアミン0.18重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0235】実施例40
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部、及び、N,N-ジメチルオクチルアミン0.36重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0236】実施例41
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.75重量部、及び、N,N-ジメチルドデシルアミン0.49重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0237】比較例12
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部を使用しなかったこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0238】比較例13
p-トルエンスルホン酸0.43重量部を使用せず、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、デシルアミン0.36重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0239】比較例14
ヘキシルアミン0.23重量部を使用しなかったこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0240】比較例15
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.80重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0241】比較例16
p-トルエンスルホン酸0.43重量部、及び、ヘキシルアミン0.23重量部の代わりに、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド0.33重量部を用いたこと以外は、実施例32と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表10に示した。
【0242】
【表10】

【0243】実施例42
(ポリビニルブチラール樹脂の調製)実施例32で合成したポリビニルブチラール樹脂を更に水洗及び乾燥し、ナトリウム塩の含有量を低減したポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂のナトリウム含有量をICP発光分析法により測定したところ、20ppmであった。また、ナトリウム塩の粒径は、3.5μmであった。
【0244】(樹脂膜の作製)得られたポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部を、実施例32と同様の条件で混練、プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様にして、耐湿白化性試験を行なった。結果を表11に示した。
【0245】実施例43
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.17重量部、及び、デシルアミン0.09重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0246】実施例44
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.03重量部、及び、デシルアミン0.02重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0247】実施例45
デシルアミン0.17重量部の代わりに、N,N-ジメチルオクチルアミン0.17重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0248】実施例46
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.17重量部、及び、N,N-ジメチルオクチルアミン0.09重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0249】実施例47
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.03重量部、及び、N,N-ジメチルオクチルアミン0.02重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0250】実施例48
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.30重量部、及び、N,N-ジメチルドデシルアミン0.20重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0251】実施例49
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.12重量部、及び、N,N-ジメチルドデシルアミン0.08重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0252】比較例17
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部を使用しなかったこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0253】比較例18
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部を使用せず、デシルアミン0.17重量部の代わりに、デシルアミン0.36重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0254】比較例19
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.30重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0255】比較例20
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.50重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0256】比較例21
ドデシルベンゼンスルホン酸0.33重量部、及び、デシルアミン0.17重量部の代わりに、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド0.50重量部を用いたこと以外は、実施例42と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表11に示した。
【0257】
【表11】

【0258】実施例50
実施例32で合成したポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、オクタン酸0.30重量部、及び、デシルアミン0.35重量部を、実施例32と同様の条件で混練、プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様にして、耐湿白化性試験を行なった。結果を表12に示した。
【0259】実施例51
デシルアミン0.35重量部の代わりに、ドデシルアミン0.40重量部を用いたこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0260】実施例52
デシルアミン0.35重量部の代わりに、テトラデシルアミン0.45重量部を用いたこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0261】実施例53
オクタン酸0.30重量部、及び、デシルアミン0.35重量部の代わりに、ミリスチン酸0.50重量部、及び、ドデシルアミン0.40重量部を用いたこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0262】実施例54
デシルアミン0.35重量部の代わりに、N,N-ジメチルドデシルアミン0.45重量部を用いたこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0263】実施例55
オクタン酸0.30重量部、及び、デシルアミン0.35重量部の代わりに、安息香酸0.30重量部、及び、ドデシルアミン0.40重量部を用いたこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0264】比較例22
デシルアミン0.35重量部を使用しなかったこと以外は、実施例50と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表12に示した。
【0265】
【表12】

【0266】実施例56
実施例42で調製したポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量部を、実施例32と同様の条件で混練、プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様にして、耐湿白化性試験を行なった。また、得られた樹脂膜を使用して実施例1と同様にして合わせガラスを製造し、50℃、95%RHの雰囲気下に4週間放置した後、実施例1にあるような接着性(パンメル)試験を実施し、吸湿したガラス周辺部分の接着性を調べた。この時、周辺部に、中央部に比べてガラスの剥離が顕著な部分(パンメル0?1)があれば、この部分の幅を測定し、剥離距離とした。結果を表13に示した。
【0267】実施例57
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジ(n-ブチル)リン酸0.17重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.13重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0268】実施例58
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジ(n-エチルヘキシル)リン酸0.19重量部、ドデシルアミン0.11重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0269】実施例59
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジ(n-エチルヘキシル)リン酸0.20重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.10重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0270】実施例60
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジ(n-ドデシル)リン酸0.20重量部、ドデシルアミン0.10重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0271】実施例61
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジ(2-ドデシル)リン酸0.21重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.09重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0272】実施例62
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ジフェニルリン酸0.17重量部、ドデシルアミン0.13重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0273】比較例23
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、モノ(n-ドデシル)リン酸ナトリウム0.30重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0274】比較例24
ジ(n-ブチル)リン酸0.16重量部、及び、ドデシルアミン0.14重量の代わりに、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド0.33重量部を用いたこと以外は、実施例56と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表13に示した。
【0275】
【表13】

【0276】実施例63
(1)ポリビニルアセタール樹脂の調製純水2890gに、平均重合度1700、鹸化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35重量%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに過剰の水で2時間水洗及び乾燥を行って、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂の平均重合度は1700、ブチラール化度は65モル%、残存アセチル基量は1モル%、残存ビニルアルコール成分量は34モル%、中和塩(NaCl)の含有量は、ナトリウム濃度で20ppm、中和塩の粒子径2μmであった。
【0277】(2)合わせガラス用中間膜の製造
上記で得られたポリビニルブチラール樹脂100部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート(3GH)40部、カルボン酸の金属塩(接着力調整剤)として2-エチルブタン酸マグネシウム(炭素数6)0.071部(2.8×10^(-4)モル)、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を添加し、均一に攪拌混合した。尚、上記3GH中の有機酸の含有量は100ppmであった。次いで、小型押出機(商品名「ラボプラストミル」、東洋精機社製)にTダイを装着し、押出温度80?180℃、金型出口温度200℃の条件で、上記で得られた混合物を押出し製膜して、厚み0.8mm程度の合わせガラス用中間膜を得た。
【0278】(3)合わせガラスの製造
上記で得られた合わせガラス用中間膜を、恒温恒湿室で含水率が0.4?0.5重量%となるように調湿した後、フロートガラス(厚み2.4mm)2枚の間に挟み込み、ロール法で予備接着した。次いで、予備接着された積層体をオートクレーブ中で温度130℃、圧力13kg/cm^(2)の条件で本接着して、合わせガラスを得た。
【0279】(4)評価
上記で得られた合わせガラスの性能のパンメル値を以下の方法で評価した。耐湿性については、実施例1に記載の方法で評価した。その結果は表14に示すとおりであった。
【0280】評価方法
(1)パンメル値
-18±0.6℃の温度下に16時間放置して調温した合わせガラスを頭部が0.45Kgのハンマーで叩いて、ガラスの粒子径が6mm以下となるまで粉砕した。次いで、ガラスが部分剥離した後の中間膜の露出度を予めグレード付けした限度見本で判定し、その結果を表1に示す判定基準に従ってパンメル値として表した。尚、パンメル値は、(イ)初期、(ロ)50℃-1ケ月後、(ハ)50℃-2ケ月後の3条件について求めた。上記パンメル値が大きいほど中間膜とガラスとの接着力も大きく、パンメル値が小さいほど中間膜とガラスとの接着力も小さい。
【0281】実施例64?69
接着力調整剤として表14に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0282】比較例25
合わせガラス用中間膜の製造において、カルボン酸の金属塩として、2-エチルブタン酸マグネシウム0.071部の代わりに、酢酸マグネシウム(炭素数2)0.04部(2.8×10^(-4)モル)を添加したこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0283】比較例26
接着力調整剤として表14に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0284】実施例64?69並びに比較例25及び26で得られた合わせガラスの性能を実施例63と同様にして評価した。その結果は表14に示すとおりであった。
【0285】
【表14】

【0286】実施例70
合わせガラス用中間膜の配合組成を、ポリビニルアセタール樹脂として実施例65の場合と同様にして調整したポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1650、ブチラール化度67モル%、残存アセチル基量1モル%、残存ビニルアルコール成分量32モル%、ナトリウム含量20ppm、中和塩の粒子径2μm)100部、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)38部、カルボン酸の金属塩として2-エチルブタン酸マグネシウム(炭素数6)0.071部(2.8×10^(-4)モル)、紫外線吸収剤及び酸化防止剤としたこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜を得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜を用い、実施例63と同様にして合わせガラスを得た。
【0287】実施例71及び72
接着力調整剤として表15に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例70と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0288】実施例73
ポリビニルアセタール樹脂として純水による洗浄により中和塩(塩化ナトリウム)のナトリウム含有量を10ppmとしたポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1650、ブチラール化度67モル%、残存アセチル基量1モル%、残存ビニルアルコール成分量32モル%)を用いたこと以外は実施例70と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0289】実施例74?78
接着力調整剤として表15に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例70と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0290】比較例27
合わせガラス用中間膜の製造において、カルボン酸の金属塩として、2-エチルブタン酸マグネシウム0.071部の代わりに、酢酸マグネシウム(炭素数2)0.04部(2.8×10^(-4)モル)を添加したこと以外は実施例70と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0291】実施例70?78及び比較例27で得られた合わせガラスの性能を実施例63と同様にして評価した。その結果は表15に示すとおりであった。
【0292】
【表15】

【0293】実施例79
合わせガラス用中間膜の配合組成を、ポリビニルアセタール樹脂としてポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1720、ブチラール化度66モル%、残存アセチル基量1モル%、残存ビニルアルコール成分量33モル%、ナトリウム含量20ppm、中和塩の粒子径2μm)100部、可塑剤としてテトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)39部、カルボン酸の金属塩として2-エチルペンタン酸マグネシウム(炭素数7)0.079部(2.8×10^(-4)モル)、紫外線吸収剤及び酸化防止剤としたこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜を得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜を用い、実施例63と同様にして、合わせガラスを得た。
【0294】実施例80?82
接着力調整剤として表16に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例79と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0295】比較例28
合わせガラス用中間膜の製造において、カルボン酸の金属塩として、2-エチルペンタン酸マグネシウム0.079部の代わりに、酢酸マグネシウム(炭素数2)0.04部(2.8×10^(-4)モル)を添加したこと以外は実施例79と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0296】実施例79?82及び比較例28で得られた合わせガラスの性能を実施例63と同様にして評価した。その結果は表16に示すとおりであった。
【0297】
【表16】

【0298】実施例83
合わせガラス用中間膜の配合組成を、ポリビニルアセタール樹脂として純水による洗浄により中和塩(塩化ナトリウム)の含有量をナトリウム濃度で20ppm、中和塩の粒子2μmとしたポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1650、ブチラール化度68モル%、残存アセチル基量1モル%、残存ビニルアルコール成分量31モル%)100部、可塑剤としてジヘキシルアジペート(DHA)36部、カルボン酸の金属塩として2-エチルブタン酸マグネシウム(炭素数6)0.071部(2.8×10^(-4)モル)、紫外線吸収剤及び酸化防止剤としたこと以外は実施例63と同様にして、合わせガラス用中間膜を得た。上記で得られた合わせガラス用中間膜を用い、実施例63と同様にして、合わせガラスを得た。
【0299】実施例84及び85
接着力調整剤として表17に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例83と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0300】比較例29
合わせガラス用中間膜の製造において、カルボン酸の金属塩として、2-エチルブタン酸マグネシウム0.071部の代わりに、酢酸マグネシウム(炭素数2)0.04部(2.8×10^(-4)モル)を添加したこと以外は実施例83と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0301】比較例30
接着力調整剤として表17に示すようなカルボン酸の金属塩を含有させたこと以外は実施例83と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。
【0302】実施例83?85並びに比較例29及び30で得られた合わせガラスの性能を実施例63と同様にして評価した。その結果は表17に示すとおりであった。
【0303】
【表17】

【0304】実施例86
実施例42で調製したポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、樟脳スルホン酸0.056重量部、及び、N,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部を、実施例42と同様の条件で混練、プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様にして、耐湿白化性試験を行なった。結果を表18に示した。
【0305】実施例87
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、ヒドロキシプロパンスルホン酸0.043重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.057重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0306】実施例88
樟脳スルホン酸0.056重量部の代わりに、メシチレンスルホン酸0.056重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0307】実施例89
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.08重量部及びピリジン0.02重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0308】実施例90
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.061重量部及びp-トルイジン0.039重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0309】実施例91
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、1,1-シクロヘキサン二酢酸0.048重量部及びドデシルアミン0.104重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0310】実施例92
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、サリチル酸0.042重量部及びドデシルアミン0.06重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0311】比較例31
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、ピリジン0.1重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0312】比較例32
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、サリチル酸0.1重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0313】比較例33
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、樟脳スルホン酸ナトリウム0.1重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0314】比較例34
樟脳スルホン酸0.056重量部及びN,N-ジメチルオクチルアミン0.044重量部の代わりに、塩化ピリジニウム0.1重量部を用いたこと以外は、実施例86と同様にして樹脂膜を得、評価した。結果を表18に示した。
【0315】
【表18】

【0316】実施例93
実施例42で調製したポリビニルブチラール樹脂100重量部、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40重量部、オクタン酸0.4重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.11重量部、及び、2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部を、実施例42と同様の条件で混練、プレス成形し、厚さ0.8mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜について、実施例1と同様にして、耐湿白化性試験を行なった。
【0317】更に、上記樹脂膜を2枚のガラス板(4×4cm)の間に挟着して合わせガラスを得、得られた合わせガラスについて下記方法にて剥離試験を行った。得られた結果を表19に示した。
【0318】(剥離試験)合わせガラスを温度60℃の水中に1週間浸漬した後、温度80℃のオーブンにて4時間乾燥した。この水中浸漬及びオーブン乾燥の工程を3回繰り返した後、合わせガラスの周辺における中間膜の剥離の有無を目視にて確認した。
【0319】実施例94
N,N-ジメチルオクチルアミンの量を0.28重量部に変更したこと以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0320】実施例95
オクタン酸の量を0.1重量部に、N,N-ジメチルオクチルアミンの量を0.06重量部にそれぞれ変更したこと以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0321】実施例96
オクタン酸の量を0.2重量部に、N,N-ジメチルオクチルアミンの量を0.09重量部にそれぞれ変更し、更に、2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりに2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0322】実施例97
オクタン酸の量を0.1重量部に、N,N-ジメチルオクチルアミンの量を0.06重量部にそれぞれ変更し、更に、2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりに2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0323】実施例98
オクタン酸の量を0.1重量部に変更し、N,N-ジメチルオクチルアミン0.11重量部及び2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりにデシルアミン0.06重量部及び2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0324】実施例99
オクタン酸0.4重量部の代わりにジ(2-エチルヘキシル)リン酸0.03重量部を用い、N,N-ジメチルオクチルアミンの量を0.02重量部に変更した以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0325】比較例35
比較例12で得られた合わせガラスを用い、実施例93と同様にして剥離試験のみ行い、得られた結果を表19に示した。
【0326】比較例36
オクタン酸及びN,N-ジメチルオクチルアミンを用いなかった以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0327】比較例37
N,N-ジメチルオクチルアミンを用いなかった以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0328】比較例38
オクタン酸を用いなかった以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0329】比較例39
オクタン酸及びN,N-ジメチルオクチルアミンを用いず、2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりに2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0330】比較例40
オクタン酸0.4重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.11重量部及び2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりに、オクタン酸0.2重量部及び2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0331】比較例41
オクタン酸0.4重量部、N,N-ジメチルオクチルアミン0.11重量部及び2-エチル酪酸マグネシウム0.037重量部の代わりに、オクタン酸0.1重量部及び2-エチルヘキサン酸マグネシウム0.045重量部を用いた以外は、実施例93と同様にして樹脂膜及び合わせガラスの作製並びに評価を行い、得られた結果を表19に示した。
【0332】
【表19】

【0333】実施例100
(1)ポリビニルアセタール樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用の中和剤である水酸化カリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は64モル%、残存アセチル基量は1モル%であった。
【0334】(2)合わせガラス用中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%)100部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40部、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部、アミンとしてジメチルオクチルアミン0.25部を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。得られた中間膜のカリウム含有量をICP発光元素分析で測定した結果、45ppmであった。
【0335】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を用いて測定した結果、5μmであった。
【0336】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を用い、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、さらに90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で圧力12kg/cm^(2)、温度135℃の条件で20分間本接着を行い、合わせガラスを得た。
【0337】(4)評価
上記で得られた合わせガラスについて、以下の方法で耐湿性試験を行った。その結果は表20に示すとおりであった。
【0338】耐湿性試験
JIS R-3212「自動車用安全ガラス試験方法」に準拠して、合わせガラスを50℃-95%RHの雰囲気下に2週間放置し、その後、白化している部分の距離(白化距離)を合わせガラスの周辺から測定した。
【0339】実施例101
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりに、オクタン酸0.30部を添加し、アミンとしてジメチルオクチルアミン0.25部の代わりにドデシルアミン0.40部を添加した以外は実施例100と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。カリウム含有量は49ppmであった。
【0340】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ4μmであった。
【0341】実施例102
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりに、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸0.20部を添加した以外は実施例100と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。カリウム含有量は55ppmであった。
【0342】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ3μmであった。
【0343】実施例103
合わせガラス用中間膜の製造において、接着剤調整剤として、ステアリン酸カリウム0.75部を添加したこと以外は実施例100と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。カリウム含有量は350ppmであった。
【0344】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ8μmであった。
【0345】比較例42
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったこと以外は実施例100と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。カリウム含有量は47ppmであった。
【0346】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ18μmであった。
【0347】比較例43
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったことと、洗浄時間を2時間から3時間に変更した以外は実施例100と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。カリウム含有量は34ppmであった。
【0348】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するカリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ12μmであった。
【0349】実施例101?103並びに比較例42及び43で得られた合わせガラスの耐湿性試験を実施例100と同様にして行った。その結果は表20に示す通りであった。
【0350】
【表20】

【0351】表20から明らかなように、本発明による実施例100?103の合わせガラスは優れた耐湿性を示した。これに対し、合わせガラス用中間膜中に存在するカリウム元素の粒子径が10μmを超える比較例42及び43の合わせガラスは耐湿性が悪かった。
【0352】実施例104
(1)ポリビニルアセタール樹脂の調製
純水2890gに、平均重合度1700、ケン化度98.9モル%のポリビニルアルコール275gを加えて加温溶解した。反応系を12℃に温度調節し、35%の塩酸触媒201gとn-ブチルアルデヒド148gを加え、この温度を保持して反応物を析出させた。その後、反応系を45℃で3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄して未反応のn-ブチルアルデヒドを洗い流し、塩酸触媒を汎用の中和剤である水酸化ナトリウム水溶液で中和し、更に過剰の水で2時間水洗及び乾燥を経て、白色粉末状のポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂の平均ブチラール化度は64モル%、残存アセチル基量は1モル%であった。
【0353】(2)合わせガラス用中間膜の製造
上記ポリビニルブチラール樹脂(平均重合度1700、平均ブチラール化度64モル%、残存アセチル基量1モル%)100部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート40部、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部、アミンとしてジメチルオクチルアミン0.13部を添加し、ミキシングロールで充分に溶融混練した後、プレス成形機で150℃、30分間プレス成形して、平均膜厚0.76mmの合わせガラス用中間膜を得た。得られた中間膜のナトリウム含有量をICP発光元素分析で測定した結果、50ppmであった。
【0354】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を用いて測定した結果、4μmであった。
【0355】(3)合わせガラスの製造
上記中間膜を用い、両側から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み、これをゴムバッグ内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、さらに90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備接着された合わせガラスを、エアー式オートクレーブ中で圧力12kg/cm^(2)、温度135℃の条件で20分間本接着を行い、合わせガラスを得た。
【0356】(4)評価
上記で得られた合わせガラスについて、実施例100と同様の方法で耐湿性試験を行った。その結果は表21に示すとおりであった。
【0357】実施例105
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりに、オクタン酸0.30部を添加し、アミンとしてジメチルオクチルアミン0.13部の代わりにデシルアミン0.35部を添加した以外は実施例104と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含有量は45ppmであった。
【0358】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例104と同様にして測定したところ5μmであった。
【0359】実施例106
合わせガラス用中間膜の製造において、有機酸としてドデシルベンゼンスルホン酸0.75部の代わりに、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸0.20部を添加した以外は実施例104と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含有量は40ppmであった。
【0360】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例100と同様にして測定したところ2μmであった。
【0361】実施例107
合わせガラス用中間膜の製造において、接着剤調整剤として、ステアリン酸ナトリウム0.50部を添加したこと以外は実施例104と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含有量は280ppmであった。
【0362】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例104と同様にして測定したところ7μmであった。
【0363】比較例44
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったこと以外は実施例104と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含有量は51ppmであった。
【0364】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例104と同様にして測定したところ20μmであった。
【0365】比較例45
合わせガラス用中間膜の製造において、分散剤の有機酸とアミンを添加しなかったことと、洗浄時間を2時間から3時間に変更した以外は実施例104と同様にして、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを得た。ナトリウム含有量は30ppmであった。
【0366】上記で得られた合わせガラス用中間膜に存在するナトリウム元素の粒子径を実施例104と同様にして測定したところ13μmであった。
【0367】実施例105?107並びに比較例44及び45で得られた合わせガラスの耐湿性試験を実施例104と同様にして行った。その結果は表21に示す通りであった。
【0368】
【表21】

【0369】表21から明らかなように、本発明による実施例104?107の合わせガラスは優れた耐湿性を示した。これに対し、合わせガラス用中間膜中に存在するナトリウム元素の粒子径が10μmを超える比較例44及び45の合わせガラスは耐湿性が悪かった。
【0370】
【発明の効果】本発明は、上述の構成よりなるので、透明性、耐候性、接着性、耐貫通性等の合わせガラスに必要な基本性能を損なうことなく、しかも、湿度の高い雰囲気中に置かれた場合でも合わせガラス周縁部の白化が少ない合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを提供することができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-08-27 
結審通知日 2013-08-29 
審決日 2013-09-11 
出願番号 特願平10-203425
審決分類 P 1 123・ 537- YA (C03C)
P 1 123・ 536- YA (C03C)
P 1 123・ 851- YA (C03C)
P 1 123・ 55- YA (C03C)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 中澤 登
豊永 茂弘
登録日 1999-11-05 
登録番号 特許第2999177号(P2999177)
発明の名称 合わせガラス用中間膜及び合わせガラス  
代理人 藤野 睦子  
代理人 辻 淳子  
代理人 北原 潤一  
代理人 特許業務法人安富国際特許事務所  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 日野 真美  
代理人 小松 陽一郎  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
代理人 辻 淳子  
代理人 藤野 睦子  
代理人 井窪 保彦  

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