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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1282507
審判番号 不服2013-801  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-16 
確定日 2013-12-05 
事件の表示 特願2008-539885「含フッ素共重合体、電線及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月24日国際公開、WO2008/047906〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成19年10月19日(先の出願に基づく優先権主張 平成18年10月20日)を国際出願日とする特許出願であって、平成24年7月9日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年3月19日付けで前置報告がなされ、それに基いて当審において同年6月3日付けで審尋がなされ、これに対して同年8月2日に回答書が提出されたものである。

第2.平成25年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年1月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成25年1月16日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる場合の補正であって、特許請求の範囲について、本件補正前の

「【請求項1】
テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体であって、
該含フッ素共重合体は、下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。
【請求項2】
メルトフローレートが25g/10分以上、48g/10分未満である請求項1記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
テトラフルオロエチレン単位90?80質量%とヘキサフルオロプロピレン単位10?20質量%とからなる共重合体、
テトラフルオロエチレン単位97?90質量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位3?10質量%とからなる共重合体、又は、
テトラフルオロエチレン単位92?75質量%とヘキサフルオロプロピレン単位7?20質量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位0.1?5質量%とからなる共重合体である請求項1又は2記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
-CF_(3)基以外の末端基が炭素数106個当たり50個以下である請求項1、2又は3記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下である請求項1、2、3又は4記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)がパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)である請求項1、2、3、4又は5記載の含フッ素共重合体。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の含フッ素共重合体をケーブル導体上に押出成形することを特徴とする電線の製造方法。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の含フッ素共重合体による被覆を有することを特徴とする電線。
【請求項9】
アメリカン・ワイヤー・ゲージ規格が20以上である請求項8記載の電線。
【請求項10】
アメリカン・ワイヤー・ゲージ規格が40以上である請求項8記載の電線。」

を、

「【請求項1】
テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体からなる溶融ペレットであって、
該含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン単位90?80質量%とヘキサフルオロプロピレン単位10?20質量%とからなる共重合体、テトラフルオロエチレン単位97?90質量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位3?10質量%とからなる共重合体、又は、テトラフルオロエチレン単位92?75質量%とヘキサフルオロプロピレン単位7?20質量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位0.1?5質量%とからなる共重合体であり、
-CF_(3)基以外の末端基が炭素数10^(6)個当たり50個以下であり、
下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であることを特徴とする溶融ペレット。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体は、メルトフローレートが25g/10分以上、48g/10分未満である請求項1記載の溶融ペレット。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体は、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下である請求項1又は2記載の溶融ペレット。
【請求項4】
パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)がパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)である請求項1、2又は3記載の溶融ペレット。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の溶融ペレットをケーブル導体上に押出成形することを特徴とする電線の製造方法。
【請求項6】
請求項1、2、3又は4記載の溶融ペレットによる被覆を有することを特徴とする電線。
【請求項7】
アメリカン・ワイヤー・ゲージ規格が20以上である請求項6記載の電線。
【請求項8】
アメリカン・ワイヤー・ゲージ規格が40以上である請求項6記載の電線。」

と補正するものである。

2.補正の適否について
(1)新規事項の追加の有無について
本件補正は、特許法第184条の6第2項の規定により、同法第17条の2第3項における願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲とみなす国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文及び国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(以下、「当初明細書等」という。)の発明の詳細な説明の記載からみて、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものではないことから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。

(2)補正の目的について
本件補正は、補正前の請求項1が「含フッ素共重合体」の発明であったものを、「含フッ素共重合体からなる」「溶融ペレット」の発明とする補正(以下、「補正事項1」という。)及び補正前の請求項1に補正前の請求項3において規定されていた「-CF_(3)基以外の末端基が炭素数10^(6)個当たり50個以下であり」との事項を追加する補正(以下、「補正事項2」という。)を含む補正である。
当該補正事項1は、本件補正前は、「含フッ素共重合体」という、いわゆる化合物の発明であったものを、「含フッ素共重合体からなる溶融ペレット」に係る発明に補正しようとするものであり、本件補正後の「溶融ペレット」の発明は、共重合体の発明とその対象が変わってしまっていることから、補正前の含フッ素共重合体を限定的に減縮したものとはいえないし、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)のいずれを目的としたものでないことは明らかである。

そうすると、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。

3.補正の却下の決定のむすび
したがって、補正事項1を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明
平成25年1月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成24年9月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであり、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体であって、
該含フッ素共重合体は、下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。」

第4.原査定の理由の概要
原査定の理由とされた、平成24年7月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び3は、以下のとおりである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・
3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
理由1.、2.について
・・・
・請求項 1,2,5,6
・引用文献 3
・備考
引用文献3には、テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体について記載があり、該共重合体からフィルムを製造する場合にフィッシュアイの大きさと数が0.05mm^(2)以上0.1mm^(2)未満のものが50個/m^(2)以下であり、0.1mm^(2)以上のものが15個/m^(2)以下である旨の記載がある(特許請求の範囲、【0015】、【0020】、実施例)。
・・・
理由3.について
[1]
・請求項 1-6
請求項1-6に係る発明は、「重合体」に関する発明であり、請求項1,5には、該重合体について、フィルムを成形したときのフィッシュアイの個数が規定されている。
ところで、例えば参考文献4には、フィッシュアイ発生の原因として樹脂温度が不適切であることや他の樹脂の混入、不十分なパージング、押出機におけるレジンの練り不足、押出機、Tダイ内のレジンの部分滞留物の押出、スクリーンパック異常、原料のグレード、ロットの変更、スクリュー形状、運転条件、熱履歴、押出機、アダプタ、フィルタ、ダイ内での樹脂劣化などが挙げられており、フィッシュアイの発生が、原料や配合物、製造装置、製造条件等、「重合体」自身とは直接関係のない様々な要因に影響を受けることが記載されている。
そうすると、たとえ全く同じ「重合体」を用いてフィルムを製造する場合であっても、ペレットやフィルムの製造条件や製造装置、「重合体」とともに使用される配合剤の有無やその種類、配合割合に依存して、フィッシュアイの発生数は変化すると解されることから、フィルムを製造したときのフィッシュアイの有無や数により「重合体」自身が明確に規定し得るとは認めることができず、よって、請求項1-6において「重合体」が明確に定義されているとは認めることができない。
・・・
引 用 文 献 等 一 覧
1.略
2.略
3.特開2006-45515号公報
4.フィルム成形・加工とハンドリングのトラブル実例と解決手法,技術情報協会,2002年 9月20日,第1刷,9,34,42-44,111-113頁
以下略」

第5.当審の判断
1.理由3(特許法第36条第6項第2号)について
本願発明の発明を特定するための事項である「下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下であることを特徴とする含フッ素共重合体。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。」について、当該規定により、含フッ素共重合体が、明確に規定されることになるか否かについて以下検討する。

当該規定は、含フッ素共重合体という化合物を、当該化合物から作られたフィルムの物性(特定のフィッシュアイ数)でさらに特定しようとするものであるので、当該物性が明確でなければならないところ、当該物性が明確であるといえるためには、本願発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、当該物性を再現性良く測定できることを要するといえる。
当該物性は、具体的にはフィッシュアイの数であり、フィッシュアイの数は、共重合体のみでは決まらず、その測定用の試料(フィルム)の製造条件(フィルムの成形条件を含む)に応じて異なる数値が得られることが周知である。(例えば、本願明細書の「溶融ペレットの製造時に細かいフィルタの使用・・・フィッシュアイを低減することができる」、特開2005-271420号公報、特開2004-99875号公報、特開2004-224976号公報、フィルム成形・加工とハンドリングのトラブル実例と解決手法,技術情報協会,2002年 9月20日,第1刷,9,34,42-44,111-113頁参照)
そこで、当該物性についての請求項1の記載をみると、試料の製造条件のうちフィルムの成形条件の一部のみが規定されており、その他の製造条件(例えば、溶融ペレット化工程のフィルタの種類等)が何ら規定されていない。
一方、本願明細書に具体的に記載されている実施例1と2を比較してみると、同一の重合装置で同一の製造過程を経て得られた同じ含フッ素共重合体を利用しているにもかかわらず、溶融ペレット製造時の2軸押出機の焼結フィルタが異なるだけで、フィルムに出現するフィッシュアイ数(44μm以上178μm未満)が「1052」と「9250」であって、大きく異なっている。
また、本願明細書に記載の比較例2と比較例3とを比較してみると、同一の重合装置で同一の製造過程を経て得られた同じ含フッ素共重合体を利用しているにもかかわらず、溶融ペレット製造時の2軸押出機の焼結フィルタが異なるだけで、フィルムに出現するフィッシュアイ数(44μm以上178μm未満)が「11926」と「21395」となっていて、大きく異なっている。
そうすると、少なくとも、溶融ペレット化工程の条件についてなんら規定を有していない請求項1の物性は、当業者が、当該物性を再現性良く測定できるものとはいえない。

したがって、本願発明は、明確でないので、特許法第36条第6項第2号の規定に違反し、特許を受けることができない。

2.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(1)刊行物の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物であることが明らかな特開2006-45515号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】
エチレンに基づく繰り返し単位、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位及びCF_(2)=CFOR^(f)(R^(f)は炭素数1?10のフルオロアルキル基を示す。)で表されるフルオロアルキルビニルエーテルに基づく繰り返し単位からなり、エチレンに基づく繰り返し単位/テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位のモル比が10/90?60/40であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して0.1?20モル%、前記フルオロアルキルビニルエーテルの含有量が全繰り返し単位に対して0.1?10モル%であり、297℃における容量流速が0.1?30mm^(3)/秒である含フッ素共重合体が、320℃以下の成形温度で成形されてなることを特徴とする含フッ素共重合体のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムに含有されるフィッシュアイの大きさと数が0.05mm^(2)以上0.1mm^(2)未満のものが50個/m^(2)以下であり、0.1mm^(2)以上のものが15個/m^(2)以下である請求項1、2又は3に記載の含フッ素共重合体のフィルム。」(特許請求の範囲の請求項1、4)

イ.「【技術分野】
本発明は、外観に優れる含フッ素共重合体フィルム及びその用途に関する。
【背景技術】
・・・
機械的強度に優れるETFEとして、エチレンの40?60モル%、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)の30?55モル%、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)の1.5?10モル%及び第4成分であるコモノマーの0.05?2.5モル%を共重合した4元共重合体系ETFEが提案されている。前記4元共重合体系ETFEは、第4成分のコモノマーを共重合しない3元共重合体系ETFEと比較して機械的強度に優れる(特許文献3を参照。)。
しかし、このような4元共重合体系ETFEは、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のパーフルオロ系含フッ素共重合体と比較して、熱安定性が低い。前記4元共重合体系ETFEは、成形時にフィッシュアイ(以下、F-Eという。)と呼ばれる欠点が発生する場合がある。F-Eが発生した場合、フィルムの外観は損なわれる。また、該F-Eが起点となりフィルムが破断する可能性があった。」(段落 【0001】?【0005】)

ウ.「【発明の効果】
本発明の含フッ素共重合体のフィルムはF-Eが少なく、透明性、外観に優れる。また、引裂強度、引張破断強度等の機械的強度にも優れる。」(段落 【0009】?【0010】)

エ.「本発明の含フッ素共重合体のフィルムは、320℃以下の成形温度で成形されてなる。通常、含フッ素共重合体を押出し機で溶融させてペレットを成形し、ついでフィルムを成形することが好ましい。前記フィルムを成形するとき、予め、含フッ素共重合体はペレット化されることが好ましい。成形時、ペレット化された含フッ素共重合体は、円滑に供給されうる。さらに、フィルム中での気泡の発生が抑制されうるので好ましい。含フッ素共重合体がペレットに成形される温度としては320℃以下が好ましく、280?315℃がより好ましく、301?315℃が最も好ましい。フィルムの成形方法としては、次に記載の方法が好ましく挙げられる。含フッ素共重合体のペレットが押出し機中で溶融されて、Tダイから吐出される。Tダイから吐出され、成形されたフィルムは、ロールで巻き取られる。押出し条件としては、スクリュウ及びTダイの温度(以下、併せて成形温度ともいう。)は320℃以下である。280?315℃が好ましく、305?315℃がより好ましい。成形温度がこの範囲にあるとフィルムにF-Eの発生が少ない。押出し機としては、単軸又は二軸の押出機が好ましい。
本発明の含フッ素共重合体のフィルムに含有されるF-Eの大きさと数は、0.05mm^(2)以上0.1mm^(2)未満のものが50個/m^(2)以下であり、0.1mm^(2)以上のものが15個/m^(2)以下であることが好ましい。0.05mm^(2)以上0.1mm^(2)未満のものが30個/m^(2)以下であり、0.1mm^(2)以上のものが10個/m^(2)以下であることがより好ましい。F-Eの大きさと数がこの範囲にあると、含フッ素共重合体のフィルムは、外観に優れ、透明性に優れ、機械的強度に優れる。
・・・
本発明の含フッ素共重合体のフィルムにおいて、F-Eが著しく少ない理由は、必ずしも明確でないが以下のように考えられる。成形時に熱分解された含フッ素共重合体が残渣としてフィルム中に含まれると考えられる。前記残渣がフィルム中に含まれるため、F-Eが発生すると考えられる。したがって、F-Eを少なくするためには、本発明における含フッ素共重合体が熱分解しない温度で成形されることが重要である。該含フッ素共重合体において、成形温度は、320℃以下が適切であることがわかった。特に、280?315℃の範囲が好ましく、さらに305?310℃の範囲が好ましい。したがって、この温度範囲で成形することにより、F-Eが少なく、外観に優れるフィルムが得られたものと考えられる。」(段落 【0019】?【0022】)

2.引用文献に記載された発明の認定
引用文献には、摘示事項アの記載からみて、
「エチレンに基づく繰り返し単位、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位及びCF_(2)=CFOR^(f)(R^(f)は炭素数1?10のフルオロアルキル基を示す。)で表されるフルオロアルキルビニルエーテルに基づく繰り返し単位からなり、エチレンに基づく繰り返し単位/テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位のモル比が10/90?60/40であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して0.1?20モル%、前記フルオロアルキルビニルエーテルの含有量が全繰り返し単位に対して0.1?10モル%であり、297℃における容量流速が0.1?30mm^(3)/秒である含フッ素共重合体であって、320℃以下の成形温度で成形されてなる当該含フッ素共重合体のフィルムに含有されるフィッシュアイの大きさと数が0.05mm^(2)以上0.1mm^(2)未満のものが50個/m^(2)以下であり、0.1mm^(2)以上のものが15個/m^(2)以下である、含フッ素共重合体。」に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「エチレンに基づく繰り返し単位、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位及びCF_(2)=CFOR^(f)(R^(f)は炭素数1?10のフルオロアルキル基を示す。)で表されるフルオロアルキルビニルエーテルに基づく繰り返し単位からなり、エチレンに基づく繰り返し単位/テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位のモル比が10/90?60/40であり、ヘキサフルオロプロピレンに基づく繰り返し単位の含有量が全繰り返し単位に対して0.1?20モル%、前記フルオロアルキルビニルエーテルの含有量が全繰り返し単位に対して0.1?10モル%であり、297℃における容量流速が0.1?30mm^(3)/秒である含フッ素共重合体」は、本願発明における「テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体」に相当することは明らかである。

そうすると、両者は、

「テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体。」

で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願発明の含フッ素共重合体は、「下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下である。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。」と特定されているのに対して、引用発明の含フッ素共重合体は、本願発明で規定するフィッシュアイの数が不明である点。

以下、相違点について検討する。
上記第5.1.で検討したとおり、当該物性が不明瞭であって、相違点に係るフィルム成形条件でフィルムの成形を行ったとしても、出現するフィッシュアイの数は、例えば、ペレット製造時のフィルタの種類により増減するものであることから、当該相違点に係る出現するフィッシュアイの数の差異によって規定される含フッ素共重合体は差異があるとはいえない。
したがって、上記相違点は、実質上の相違点ではない。

よって、本願発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第5.審判請求人の主張について
審判請求人は、平成25年8月2日付け回答書において、下記の補正案を提示して特許性を有している旨主張しているので、当該補正案について、以下検討する。

1.補正案の発明
平成25年8月2日付け回答書において、提示されている補正案の請求項1に係る発明(以下、「補正案発明」という。)は、以下のとおりである。

「テトラフルオロエチレン由来の構成単位を必須とし、ヘキサフルオロプロピレン、及び/又は、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)由来の構成単位を有する含フッ素共重合体であって、
該含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン単位90?80質量%とヘキサフルオロプロピレン単位10?20質量%とからなる共重合体、又は、テトラフルオロエチレン単位92?75質量%とヘキサフルオロプロピレン単位7?20質量%とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位0.1?5質量%とからなる共重合体であり、
-CF3基以外の末端基が炭素数106個当たり50個以下であり、
下記フィルム成形条件にてフィルムに成形したとき、一辺が44μmの正方形を含むことができ一辺が178μmの正方形を含むことができない大きさのフィッシュアイが10000個/100g以下であり、かつ一辺が178μmの正方形を含むことができる大きさのフィッシュアイが1000個/100g以下である
ことを特徴とする含フッ素共重合体。
フィルム成形条件:
φ20mm押出機(田辺プラスチックス機械社製)にてTダイを用い、設定温度をそれぞれC1:350℃、C2:390℃、C3:390℃、D:390℃とし、スクリュー回転数を15rpm、引き取り速度を約3m/minに設定して、含フッ素共重合体の成形を行う。フィルムの幅が70mm、厚みが0.05?0.06mm(中央部)となるよう引き取り速度を微調整する。成形開始の30分後からサンプリングを開始し、長さ5mのフィルムをサンプリングする。」

2.補正案発明の検討
補正案発明については、上記第5.1.で検討した特許法第36条第6項第2号の規定に違反する記載が存在していることから、当該補正案発明は特許することができないものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由1及び理由3は妥当なものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願はこの理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-10-01 
結審通知日 2013-10-08 
審決日 2013-10-21 
出願番号 特願2008-539885(P2008-539885)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 美穂大久保 智之  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 大島 祥吾
塩見 篤史
発明の名称 含フッ素共重合体、電線及びその製造方法  
代理人 特許業務法人 安富国際特許事務所  
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