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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1282670
審判番号 不服2012-25999  
総通号数 170 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-28 
確定日 2014-01-14 
事件の表示 特願2010-501225「サーキュラ・バッファ・ベースのレート・マッチング」拒絶査定不服審判事件〔平成20年10月 2日国際公開、WO2008/119048、平成22年 7月 8日国内公表、特表2010-523064、請求項の数(30)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明

1.手続の経緯
本願は,平成20年3月27日(優先権主張 2007年(平成19年)3月27日 米国,2008年(平成20年)3月25日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成23年12月22日付けで拒絶理由が通知され,平成24年4月9日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ,同年8月24日付けで拒絶査定され,同年12月28日付けで拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は,平成24年12月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により,次のとおりのものとなった(下線は請求人が付与。)。

【請求項1】
無線通信環境におけるレート・マッチングを容易にする方法であって、
エンコーダからの体系的なビット、パリティ1ビット、およびパリティ2ビットを、個別のグループへ分けることと、
それぞれ個別のグループ内で、前記体系的なビット、前記パリティ1ビット、および前記パリティ2ビットをインタリーブすることと、
前記インタリーブされたパリティ1ビットを、前記インタリーブされたパリティ2ビットとインタレースすることと、
前記インタレースされたインタリーブされたパリティ1ビットおよびパリティ2ビットの前に、前記インタリーブされた体系的なビットを、サーキュラ・バッファ内に挿入することと、
送信のために、前記サーキュラ・バッファの選択された位置で開始する、前記サーキュラ・バッファに挿入されたビットを連続して選択することと
を備える方法。

3.本件補正の概要
本件補正は,平成24年4月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項である「送信のために,サーキュラ・バッファに挿入されたビットを連続して選択すること」に「サーキュラ・バッファの選択された位置で開始する」との限定を附す事項(以下「本件補正事項」という。)を含むものであることは明白である。
そして,本件補正事項は,本願の出願当初の明細書における【0038】の記載に基づくものであって,新たな技術的事項を導入しようとするものではない。
よって,本件補正事項は,特許法第17条の2第2項の規定に適合する。

そこで,本願発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(本件補正が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。


第2 引用発明

1.引用例
原査定の理由に引用された国際公開第2005/069493号(2005年(平成17年)7月28日国際公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載(下線は当審が付与。)されている。
(なお,当審訳として,引用文献1に対応する日本語公報である特表2007-519361号公報を参考する。)

(1) 「Field of the Invention:
The present invention relates generally to an apparatus and method for generating Forward Error Correction (FEC) codes in a wireless data communication system. More particularly, the present invention relates to an apparatus and method for generating FEC codes having a variable rate.」
(第1ページ)
(当審訳
発明の技術分野:本発明は無線データ通信システムで順方向誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)符号の生成装置及び方法に関して、特に、可変符号化率のFEC符号を生成する装置及び方法に関するものである。(【0001】))

(2) 「With reference to FIG. 5, a description will now be made of an operation of QCTC selected as a standard for a CDMA2000 lx EV-DV system. When an information stream 500 is input to a turbo encoder 510 having a rate R=l/5, the turbo encoder 510 performs turbo coding on N_EP input information symbols using a mother code. As a result, the turbo encoder 510 generates 5xN_EP code symbols. The generated code symbols are demultiplexed into 5 sub-blocks by a code symbol separator 512. The separated code symbols are denoted by reference numeral 514. The code symbols 514 are divided into a systematic symbol group (or sub-block X) and a plurality of parity symbol groups (or sub-blocks Y0, Yl, Y'O and Y'l). The respective symbol groups undergo Partial Bit Reversal Order (PBRO) interleaving. Here, the respective sub-blocks undergo independent interleaving. This is called "sub-block interleaving." Reference numerals 516a, 516b, 516c, 516d and 516e denote independent devices for performing the PBRO interleaving.

Among the PBRO-interleaved symbols, systematic symbols are output intact, and the PBRO-interleaved parity symbols are interlacedly rearranged by interlacers 518a and 518b. The rearrangement is achieved in such a manner that two symbols are interlaced once. That is, the interlacer 518a forms a new group by interlacing parity symbols Y0 and Y'O. Similarly, the interlacer 518b interlacedly rearranges parity symbols Yl and Y'l generated in each sub-block, thereby forming a new group. Therefore, each group generated by interlacing has a size of 2xN_EP.

Next, the sub-block comprised of interleaved systematic symbols and the 2 interlaced parity groups are arranged in a regular order and then concatenated, thus generating one new sequence. Here, this operation is denoted by "QCTC Symbols" and reference numeral 520. Through a series of the processes described above, symbol rearrangement for generating QCTC codes is completed. Next, a QCTC symbol selector 522 generates QCTC codes having various code rates by selecting random symbols from 5xN_EP symbols. A conventional binary QCTC design criteria is to take performance improvements of a received signal in a fading channel into consideration. The QCTC design criteria are characterized by optimizing not only code performance, but also channel interleaving performance. The channel interleaving is generally achieved by sub-block interleaving and interlacing.」
(第6ページ-第7ページ)
(当審訳
図5を参照して、CDMA2000 1xEV-DVシステムの標準として採択されたQCTCの動作について説明する。情報列(information stream)500が符号化率R=1/5を有するターボエンコーダ510に入力される場合に、母符号を使用するターボエンコーダ510は、与えられたN_EP個の入力情報シンボルでターボ符号化を遂行する。その結果、ターボエンコーダ510は、5xN_EPの符号シンボルを生成する。この生成された符号シンボルは、符号シンボル分離器512によって逆多重化(demultiplexed)されて5個のサブブロックに分離される。このように分離された符号シンボルは、参照番号514で示されている。この符号シンボル514は、システマチックシンボルグループ(又はサブブロックX)と複数のパリティシンボルグループ(又はサブブロックY0,Y1,Y’0,Y’1)に分けられる。各シンボルグループは、PBRO(Partial Bit Reversal Order)インタリービングされる。このとき、それぞれのサブブロックは、独立的にインタリービングが遂行される。これは“サブブロックインタリービング”と呼ばれる。図5の参照符号516a,516b,516c,516d,516eは、RBROインタリービングを遂行するための独立的な装置である。

PBROインタリービングされたシンボルのうち、システマチックシンボルはそのまま出力され、PBROインタリービングされたパリティシンボルはインターレーサ518a,518bによってインターレースに再配列される。この再配列は、2個のシンボルが一回ずつインターレースされるように順次に遂行される。すなわち、インターレーサ518aは、パリティシンボルY0,Y’0のインターレーシングによって新たなグループを形成する。類似に、インターレーサ518bは、それぞれのサブブロックで生成されるパリティシンボY1,Y’1をインターレースに再配列され、それによって新たなグループを形成する。したがって、インターレースに生成された各グループは、2xN_EPのサイズを有する。

次に、インタリービングされたシステマチックシンボルで構成されたサブブロックと2個のインターレースされたパリティグループは、順に配列し、束ねられて一つの新たなシーケンスを生成する。これは、図5で参照番号520の“QCTCシンボル”で示す。このような一連の過程を経て、QCTC符号を生成するためのシンボルの再配列をすべて完了する。次に、QCTCシンボル選択器512は、5xN_EPのシンボルから任意のシンボルを選択して多様な符号化率を有するQCTC符号を生成する。従来のバイナリQCTCを設計する基準の一つは、フェージングチャンネルで受信信号の性能向上を考慮しなければならないということである。このQCTCの設計基準は、単純に符号性能の最適化だけでなく、チャンネルインタリービング性能の最適化を特徴とする。このようなチャンネルインタリービングは、一般的にサブブロックインタリービングとインターレーシングによって遂行される。(【0014】,【0015】))

上記記載及び引用文献1の図5の記載を技術常識に照らすと,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」)が記載されているといえる。

ターボエンコーダからのシステマチックシンボルグループ(サブブロックX)、複数のパリティシンボルグループ(サブブロックY0,Y1,Y’0,Y’1)を、個別のグループへ分けることと、
それぞれ個別のグループ内で、前記システマチックシンボルグループ、前記及び複数のパリティシンボルグループは,PBROインタリービングされ,このとき,それぞれのサブブロックは独立的にインタリービングされることと、
前記インタリーブビングされたパリティシンボルY0を、前記インタリービングされたパリティシンボルY’0とインタレースすることと、
前記インターリービングされたパリティシンボルY1を,前記インタリービングされたパリティシンボルY’1とインタレースすることと,
インタリービングされたシステマチックシンボルと,2個のインターレースされたパリティグループ(「インタリーブビングされたパリティシンボルY0とインタリービングされたパリティシンボルY’0」がインターレースされたパリティグループと,「インターリービングされたパリティシンボルY1とインタリービングされたパリティシンボルY’1」がインターレースされたパリティグループ)とが,束ねられて一の新たなシーケンスを生成し,このシーケンスは,QCTCシンボルとして示されることと,
QCTCシンボル選択器は,前記QCTCシンボルから任意のシンボルを選択し,多様な符号化率を有するQCTCシンボルを生成することと,
を備える方法。


第3 当審の判断

1.対比
・ 引用発明が,無線環境において,多様な符号化率,つまりレートマッチングを行うものであることは明らかである。

・ 引用発明においては,
(i)インタリーブビングされたパリティシンボルY0を、インタリービングされたパリティシンボルY’0とインタレースし,
及び
(ii)インターリービングされたパリティシンボルY1を,インタリービングされたパリティシンボルY’1とインタレースする。
さらに,(iii)引用発明における「システマチックシンボルグループ(サブブロックX)」は,本願発明における「体系的なビット」に相当し,インタリービングされる。
これら(i)?(iii)のことは,引用発明が,本願発明における「(a)エンコーダからの体系的なビット、パリティ1ビット、およびパリティ2ビットを、個別のグループへ分けることと、(b)それぞれ個別のグループ内で、前記体系的なビット、前記パリティ1ビット、および前記パリティ2ビットをインタリーブすることと、(c)前記インタリーブされたパリティ1ビットを、前記インタリーブされたパリティ2ビットとインタレースすることと」の構成を有していることを示している。

・ 引用発明における「多様な符号化率を有するQCTCシンボル」が,送信のため,QCTCシンボル選択器で選択されることは明かである。
また,該「多様な符号化率を有するQCTCシンボル」はシンボルを任意に選択することにより生成される。
そして,QTCTシンボルを任意に選択するためにバッファする機能が必要なことは,当然である。

以上によれば,本願発明と引用発明は次の点で一致し,相違する。

[一致点]
無線通信環境におけるレート・マッチングをする方法であって,
エンコーダからの体系的なビット,パリティ1ビット,およびパリティ2ビットを,個別のグループへ分けることと,
それぞれ個別のグループ内で,前記体系的なビット,前記パリティ1ビット,および前記パリティ2ビットをインタリーブすることと,
前記インタリーブされたパリティ1ビットを,前記インタリーブされたパリティ2ビットとインタレースすることと,
前記インタレースされたインタリーブされたパリティ1ビットおよびパリティ2ビット,前記インタリーブされた体系的なビットを,バッファ内に挿入することと,
送信のために,前記バッファの選択された位置で開始する,前記バッファに挿入されたビットを選択することと
を備える方法。

[相違点1]
本願発明は,無線通信環境におけるレート・マッチングを,「容易に」するものであるのに対して,引用発明には,そのような特定がない点。

[相違点2]
本願発明は,インタリーブされた体系的なビットを,バッファ内に挿入するのが,インタレースされたインタリーブされたパリティ1ビットおよびパリティ2ビットの「前」であるのに対して,引用発明には,そのような特定がない点。

[相違点3]
本願発明における「バッファ」は,「サーキュラ・バッファ」であって,挿入されたビットの選択が,連続するのに対して,引用発明における「QCTCシンボル選択器」であって,サーキュラ・バッファではなく,ビットの選択が連続であるとの特定もない点。

2.検討
上記相違点について検討する。

○ 相違点1について
本願発明も引用発明もともに,無線通信環境におけるレート・マッチングをする方法である点において,一致しているところ,その方法に「容易にする」との特定が附されたか否かで,両者に実質的な技術的差異を生じさせるものではない。
よって,相違点1は格別なものではない。

○ 相違点2及び3について
本願発明は,「インタレースされたインタリーブされたパリティ1ビットおよびパリティ2ビットの前に,インタリーブされた体系的なビットを、サーキュラ・バッファ内に挿入し,送信のために,前記サーキュラ・バッファの選択された位置で開始する,前記サーキュラ・バッファに挿入されたビットを連続して選択する」構成を採用したものである。
本願発明において,サーキュラ・バッファに挿入されたビットの選択を「連続して」するとは,サーキュラ・バッファにビットを順に挿入し,その順のとおりに前記ビットを選択することを意味していることは明らかである。
そして,本願発明は,体系的なビットを,重要であると考え,インタレースされたインタリーブされたパリティ1ビットおよびパリティ2ビットの前に,サーキュラ・バッファ内に挿入し,該体系的なビットを優先的に選択し,送信されうるようにするために,上記構成を採用したといえる。
他方,引用発明は,生成された新たなシーケンスから任意のシンボルを選択し,多様な符号化率を有するQCTC符号を生成する構成を採用したものである。
これは,引用発明において,システマチックシンボルグループが,重要であるとの考えも,優先的に選択され送信されるものでもないことを示し,さらに,バッファに挿入されたビットを連続して選択するとも限らないことを示している。
すなわち,仮に,(i)バッファとして,サーキュラ・バッファが周知であったとし,引用発明に周知技術を適用しても,体系的なビットを優先的に選択し,送信されるとは,限らないことを示している。また,(ii)体系的なビットが,重要であることが技術常識であって,優先的に選択され送信されることは当然であるというのならば,引用発明における多様な符号化率を有するQCTC符号の生成に制限を与えること,つまり,引用発明の作用効果を低減させることになるといわざるを得ない。
したがって,引用発明に,サーキュラ・バッファを周知技術として適用しても,また,引用発明を技術常識に照らしても,引用発明を基に,相違点2,3のように構成することが,当業者には容易になしえなかったというべきである。
そして,本願発明のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から予測することができたということはできない。
また,他に,本願発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。
したがって,本件補正事項は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。


第4 むすび

以上のとおりであって,他の請求項に係る発明についても,特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

また,本件補正を,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべき理由を発見しない。
そして,本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2013-12-20 
出願番号 特願2010-501225(P2010-501225)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中元 淳二  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 吉田 隆之
水野 恵雄
発明の名称 サーキュラ・バッファ・ベースのレート・マッチング  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 白根 俊郎  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 野河 信久  
代理人 井関 守三  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 佐藤 立志  
代理人 竹内 将訓  
代理人 井上 正  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 福原 淑弘  
代理人 峰 隆司  

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