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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B29C |
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管理番号 | 1283192 |
判定請求番号 | 判定2013-600028 |
総通号数 | 170 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2014-02-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2013-06-28 |
確定日 | 2014-01-09 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3262218号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号説明書及びイ号図面に示す「成形機における型締め方法」は、特許第3262218号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号説明書に示す成形機の型締め方法は、特許第3262218号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 第2 本件特許発明 本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】 A 下型を固定する下テーブルと、上型を固定する上テーブルとを機枠に昇降自在に設け、 B 該機枠の上部と下部に夫々設けたクランク腕とその下テーブル及び上テーブルとを連接杆により夫々連結すると共に、 C 該クランク腕をモータ装置の駆動クランク腕に連結されたリンクと連結し、 D かつ該リンクの少なくとも一方のリンクの自由端に設けた油圧緩衝装置を介して同リンクと前記クランク腕とを連結した昇降駆動装置を設け、 E 該油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油を空油増圧器の油圧側に連通させると共に、同空油増圧器の空気側にサージタンク、圧力調整弁及び圧縮空気源とを順に接続する F ように構成された成形機において、 G 前記モータ装置の駆動により上記下型と上型を閉じて下型と上型の間に送給されるシートを加圧成形すると同時に、 H 前記油圧緩衝装置に作用する圧力油の圧力と、その圧力調整弁にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すように構成した I ことを特徴とする成形機における型締め方法。 第3 イ号方法 イ号方法の構成は、判定請求書並びに判定請求書に添付されたイ号説明書及びイ号図面によると、以下のとおりのものである。 a 下型を固定する下テーブルと、上型を固定する上テーブルとを機枠に昇降自在に設け、 b 該機枠の上部と下部に夫々設けたクランク腕とその下テーブル及び上テーブルとを連接杆により夫々連結すると共に、 c 該クランク腕をモータ装置の駆動クランク腕に連結されたリンクと連結し、 d かつ該リンクの少なくとも一方のリンクの自由端に設けたスプリングを介して同リンクと前記クランク腕とを連結した昇降駆動装置を設けた、 e スプリングを有する f 成形機において、 g 前記モータ装置の駆動により上記下型と上型を閉じて下型と上型の間に送給されるシートを加圧成形すると同時に、 h スプリングにより、型締めを所定の圧力で施すように構成した i ことを特徴とする成形機における型締め方法。 第4 当事者の主張 1.請求人の主張 (1)判定請求書での主張 請求人は、判定請求書において、甲第1号証(特許第3262218号公報:本件特許)、甲第2号証(被請求人のホームページを印刷したもの)、甲第3号証(被請求人のホームページにおいて公開されているパンフレットを印刷したもの)、甲第4号証(甲第3号証の2頁の図をもとに作成した図面)、甲第5号証(イ号物件(連続圧空真空成形機:TFP-TY-1000)の写真)、甲第6号証(イ号物件の写真)、甲第7号証(イ号物件の写真)、甲第8号証(イ号物件の写真)、甲第9号証(イ号物件の写真)、甲第10号証(イ号物件の仕様書)、甲第11号証(特開平10-71619号公報)及び甲第12号証(「包装タイムス」(2013年4月1日、日報ビジネス株式会社発行))を提出するとともに、下記のように主張している。 「イ号方法の構成d、e及びhは、本件特許発明の構成要件D、E及びHとは差異がある。もっとも、以下に示すように均等論の5要件を充たすので、イ号方法は本件特許発明の均等の範囲に含まれる。 本件特許発明とイ号発明の差異は、端的に述べると、本件特許発明が緩衝装置として油圧緩衝装置を用いているのに対し、イ号方法が緩衝装置としてスプリングを用いている点にある。」(判定請求書8頁下から12?7行) 「(1)第1要件(非本質的部分) …本件特許発明の本質的部分は、リンクとクランク腕を連結する際に、緩衝装置を設けた点にある。 したがって、緩衝装置として、スプリングを用いたか、それとも油圧緩衝装置を用いたかは、本質的な相違部分とはならない。」(判定請求書8頁下から5?1行) 「(2)第2要件(同一目的・作用効果) …本件特許発明は、リンクとクランク腕を連結する際に、緩衝装置を設けたので、リンクがクランク腕に与える力は、被成形物の厚さ等に応じて自動的に変動し、被成形物に加わる圧力は一定となる。 このような目的及び作用・効果は、イ号方法のようにスプリングを用いた場合であっても同様である。すなわち、スプリングが存在することで、リンクがクランク腕に与える力は、被成形物の厚さ等に応じて自動的に変動し、被成形物に加わる圧力は一定となる。 したがって、イ号方法は、本件特許発明の目的を達することができ、同一の作用・効果を奏するといえる。」(判定請求書9頁1?11行) 「(3)第3要件(置換容易性) 緩衝装置として、油圧緩衝装置を用いるか、それともスプリングを用いるかは、当業者が適宜設計すべき事項であり、油圧緩衝装置の代わりにスプリングを用いることは当業者が容易に想到できる。」(判定請求書9頁12?15行) 「(4)第4要件(イ号物件の非容易推考性) イ号方法が、本件特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものであると推認させる証拠等は見つかっていない。」(判定請求書9頁16?19行) 「(5)第5要件(意識的除外の不存在) 本件特許の出願審査手続きにおいて、構成要件E及び構成要件Hの一部が補正により加えられたという事情はある。 しかしながら、当該補正は、油圧緩衝装置の構成について、他の構成のものを排除する意図でなされたものでないだけでなく、緩衝装置として油圧以外のものを排除する意図でなされた補正ではない。」(判定請求書9頁20?25行) (2)判定請求弁駁書での主張 (第1要件について) 「…判定被請求人が引用している意見書の該当部分は、引例の油圧シリンダが緩衝装置として機能しないことを説明している部分にすぎず、構成要件Hの重要性を強調していると評価できる記載はない。 …本件特許発明の効果は、…リンクとクランク腕の間に緩衝装置を設けたことによって、リンクに与えられる力が、そのままクランク腕に伝わるのではなく、被成形物の厚さ等に応じて自動的に変動する点にある。 したがって、構成要件Hがなくとも、本件特許発明の作用効果を奏することができ、例えばイ号方法のように緩衝装置としてスプリングを用いた場合であっても、本件特許発明の作用効果を奏する。」(判定請求弁駁書4頁9?21行) (第2要件について) 「スプリングによる型締め圧力は、「ばね定数」×「ばねの変位」で表されるので、「ばね定数」又は「ばねの変位」を変更することによって、型締め圧力を変更することができ、予め所望の値に設定することができる。 例えば、スプリングを交換することで「ばね定数」を変更することは可能であるし、ばねを取り付けている位置を変化させることで「ばねの変位」を変更させることは可能である。 したがって、イ号方法であっても、型締め圧力を予め設定することができるので、判定被請求人の主張には理由がなく不当である。」(判定請求弁駁書5頁下から3行?6頁5行) 2.被請求人の主張 被請求人は、判定請求答弁書において、乙第1号証(平成13年10月5日提出の意見書)を提出するとともに、下記のように主張している。 「(1-1)第1要件(非本質的部分)について 請求人は、拒絶理由通知書に示された特開平10-71619(引用文献1(当審注:甲第11号証))との差異点を明確にするために、平成13年10月5日に意見書と手続補正書とを提出しており、構成要件E、Hを追加することで特許査定を得ている。また、同意見書(乙第1号証)3頁「4.本願発明と引例との対比」には、補正後の本件特許発明の構成要件E及びHに関して以下のように主張している。 『…下テーブルと上テーブルに一端が連結された連接杆20を揺動させるレバー27の連動杆28に油圧緩衝装置40を介装し、この油圧緩衝装置40とモータ装置31の駆動クランク腕33とがリンク34により連結され(図5)、図6に示すように、油圧緩衝装置40のピストン44に作用する圧力油を空油増圧器50の油圧側に連通させると共に、同空油増圧器の空気側にサージタンク54、圧力調整弁53及び圧縮空気源55とを順に接続した構成としている。 しかして、本願発明ではその構成により、シートの加圧変形と同時に、油圧緩衝装置40内に作用する圧力油の圧力と、圧力調整弁53にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器50によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すものであります。』 一方、引用文献1では、型締め時における油圧シリンダは油圧源から送られる圧力油がロッド側に作用して収縮したままの状態とされており、請求人は、構成要件E及びHを追加することによって引用文献1との差異点を明確にしているものである。例えば、同意見書4頁(4)では、「…両者の機能は全く相違しております。その理由は、本願発明では前述した構成(e)…及び(f)…を採用しているところ、引例1には斯様な構成については明細書中に何ら記載されておらず、示唆されてもいないからです。」と主張している。 …第1要件の本質的部分とは「特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的部分、言い換えれば、右部分が他の構成に置き換えられるならば、全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分」と解されており、構成要件D、E及びHは、まさに本件特許発明の本質的部分である。」(判定請求答弁書3頁4行?4頁18行)(当審注:乙第1号証の引用部分については便宜上『』を用いた。) 「(1-2)第2要件(置換可能性)について 本件特許発明では、油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油の圧力が空油増圧器の油圧側に作用し、圧力調整弁によって予め設定された圧縮空気の圧力とのバランス作用により一定の圧力で型締めが迅速に行われるものであるが、イ号方法のように緩衝装置としてスプリングを用いた場合には型締め圧力を予め設定することができず、本件特許発明と同一の作用効果を奏するとはいえない。従って、第2要件(置換可能性)も備えていない。」(判定請求答弁書5頁下から9?3行) 第5 対比・判断 1.構成要件の充足性 (1)本件特許発明が特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、その構成が上記「第2 本件特許発明」のとおりであることについて、請求人及び被請求人の間に争いはない。 また、イ号方法について、その構成が上記「第3 イ号方法」のとおりであることについて、請求人及び被請求人の間に争いはない。 本件特許発明とイ号方法を対比すると、イ号方法の構成a?c、f、g、iは、本件特許発明の構成要件A?C、F、G、Iと文言上同一であり、イ号方法は、当該構成要件A?C、F、G、Iを充足しているといえる。 そこで、構成要件D,E及びHの充足性について、以下に検討する。 (2)構成要件Dの充足性について 本件特許発明の構成要件Dでは、リンクの自由端に設けられ、同リンクとクランク腕とを連結するものとして「油圧緩衝装置」を採用しているのに対し、イ号方法の構成dでは、「スプリング」を採用している点で相違している。両者は、「緩衝装置」として一応共通するものであるが、「スプリング」は「油圧緩衝装置」の概念に属するものではないことは明らかである。 よって、イ号方法の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。 (3)構成要件Eの充足性について 本件特許発明の構成要件Eでは、「油圧緩衝装置」と「空油増圧器」及びその他の関連装置との接続関係について、「該油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油を空油増圧器の油圧側に連通させると共に、同空油増圧器の空気側にサージタンク、圧力調整弁及び圧縮空気源とを順に接続する」ものを採用しているのに対し、イ号方法の構成eでは、「油圧緩衝装置」及びそれに関連する構成の開示はなく、「スプリング」を採用していることのみが開示されている。 よって、イ号方法の構成eは、本件特許発明の構成要件Eを充足しない。 (4)構成要件Hの充足性について 本件特許発明の構成要件Hでは、「油圧緩衝装置」を用いた圧力の調整方法について、「前記油圧緩衝装置に作用する圧力油の圧力と、その圧力調整弁にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すように構成した」ものを採用しているのに対し、イ号方法の構成hでは、「油圧緩衝装置」及びそれに関連する構成の開示はなく、「スプリング」を採用していることのみが開示されている。 よって、イ号方法の構成hは、本件特許発明の構成要件Hを充足しない。 以上のように、イ号方法は、本件特許発明の構成要件D、E及びHを充足しない。 2.均等論の適用について 請求人は、「イ号方法の構成d、e及びhは、本件特許発明の構成要件D、E及びHとは差異がある。もっとも、以下に示すように均等論の5要件を充たすので、イ号方法は本件特許発明の均等の範囲に含まれる。」(判定請求書8頁下から12?10行)と主張しているので、以下に検討する。 (1)第1要件(非本質的部分)について 本件特許発明の作用効果については、本件特許明細書に「請求項1、2の発明方法及び装置においては、昇降駆動装置の各モータ装置により駆動クランク腕が回転すると、該駆動クランク腕に連結されたリンクに押されてクランク腕と連接杆とがほぼ直線状に伸びて下型と上型とが閉じる。そして、下型と上型の間に送給されたシートを加圧成形すると同時に、前記油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油の圧力が空油増圧器の油圧側に作用し、圧力調整弁によって予め設定された圧縮空気の圧力とのバランス作用により一定の圧力で型締めが迅速に施される。また、加圧成形時に下テーブル若しくは上テーブルに偏荷重が作用する場合にも、テーブルは機枠に強固に支持されているため、テーブル(型)の平行精度が狂うことなく、型締め力を一定の値に保持することができる。」(【0008】)と記載されている。 上記記載から、本件特許発明の効果である「一定の圧力で型締めを迅速に施す」ためには、「油圧緩衝装置」が必要であり、特に、油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油の圧力が空油増圧器の油圧側に作用し、圧力調整弁によって予め設定された圧縮空気の圧力とのバランス作用により調整されることにより、型締めの圧力が一定に施されることが理解できる。 してみると、「油圧緩衝装置」に係る構成要件D(「かつ該リンクの少なくとも一方のリンクの自由端に設けた油圧緩衝装置を介して同リンクと前記クランク腕とを連結した昇降駆動装置を設け、」)、構成要件E(「該油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油を空油増圧器の油圧側に連通させると共に、同空油増圧器の空気側にサージタンク、圧力調整弁及び圧縮空気源とを順に接続する」)及び構成要件H(「前記油圧緩衝装置に作用する圧力油の圧力と、その圧力調整弁にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すように構成した」)は、いずれも本件発明の本質的部分であるということができる。 また、出願経過をみると、請求人は、平成13年10月5日付けで意見書(乙第1号証)及び補正書を提出している。補正した箇所は、本件特許公報(甲第1号証)において、アンダーラインが引かれている箇所であり、いずれも「油圧緩衝装置」の構成(油圧緩衝装置と接続する空油増圧器の構成及び作用を具体的に限定したもの)に係るものである。そして、前記意見書(乙第1号証)においては、補正された本件特許発明と引例1との比較において、「引例1では、型締め時における油圧シリンダ51は油圧源から送られる圧力油がロッド側に作用して収縮したままの状態とされており、過負荷により生ずるサージ圧力は圧力油の圧力と拮抗してしまい、そのサージ圧力を吸収するような構造を採用しておりません。その結果、仮にサージ圧力が非常に高くなった場合には、油圧配管や油圧機器を損傷する危惧を生じます。…しかし、本願発明の油圧緩衝装置40では、サージ圧力が非常に高くなった場合には、サージ圧力を受けたピストン44により押された圧縮空気の一部がサージタンク54に流入することによりサージ圧力を緩和する作用を生ずるため、そのような危惧は生じなく、安全な成形作業を行うことが可能です。従いまして、本願発明の型締め動作に必要な油圧緩衝装置40は、引例1の下テーブルをさらに下降させるための油圧シリンダ51とは、目的、構成及び作用効果において実質的に相違していることは明らかであります。」(3頁下から4行?4頁10行)との記載があり、この記載からすると「油圧緩衝装置」の構成を限定することにより引例1との差異を際立たせたことは明らかであり、この補正を踏まえて特許となった経緯をみても、「油圧緩衝装置」の構成(構成要件D、E及びH)が、本件発明の本質的部分であることは明らかである。 請求人は、本件特許発明の本質的部分は「緩衝装置」を設けた点であり、緩衝装置として、スプリングを用いたか、それとも油圧緩衝装置を用いたかは、本質的な相違部分とはならないと主張している。しかしながら、本件特許発明は、単なる緩衝装置を用いたものではなく、「該リンクの少なくとも一方のリンクの自由端に設けた油圧緩衝装置を介して同リンクと前記クランク腕とを連結した昇降駆動装置を設け」(構成要件D)、「該油圧緩衝装置のピストンに作用する圧力油を空油増圧器の油圧側に連通させると共に、同空油増圧器の空気側にサージタンク、圧力調整弁及び圧縮空気源とを順に接続」し(構成要件E)、「前記油圧緩衝装置に作用する圧力油の圧力と、その圧力調整弁にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すように構成した」(構成要件H)ものであり、これらの構成に基づいて「一定の圧力で型締めが迅速に施される」という特有の効果を奏するものである。 また、請求人が前記意見書(乙第1号証)で述べているように、「本願発明の油圧緩衝装置40では、サージ圧力が非常に高くなった場合には、サージ圧力を受けたピストン44により押された圧縮空気の一部がサージタンク54に流入することによりサージ圧力を緩和する作用を生ずるため、そのような危惧は生じなく、安全な成形作業を行うことが可能です。」(4頁4?7行)との記載からすると、本件特許発明の構成要件D、E及びHにより、サージ圧力が非常に高くなった場合に、圧縮空気の一部をサージタンクに流入させることにより、サージ圧力を緩和させ、安全な成形作業を可能とするという特有の効果を奏していることが理解される。 してみると、本件特許発明の緩衝装置は、構成要件D、E及びHに係る「油圧緩衝装置」でなければならず、「スプリング」で代替されるものではない。 したがって、本件特許発明とイ号方法との相違点に係る構成(構成要件D、E及びH)は本件特許発明の本質的部分であり、均等論における第1要件は満たされないと言わざるを得ない。 (2)第2要件(置換可能性)について 本件特許発明の「油圧緩衝装置」とイ号方法の「スプリング」は、緩衝装置として共通しているものの、本件特許発明の「油圧緩衝装置」は、油圧緩衝装置に作用する圧力油の圧力と、その圧力調整弁にて予め設定された圧縮空気の圧力とを空油増圧器によりバランスさせることにより、型締めを所定の圧力で施すように構成したものであるので、圧力調整弁を用いて任意の所定圧力を設定できるものであるが、イ号方法の「スプリング」は、固定された緩衝装置であり、所定圧力を調整するためには取り替えるか、スプリングの変位状態を変更するしかなく、本件特許発明のように簡便な手段により調整できるものではない。 また、本件特許発明では、「油圧緩衝装置」に関連して空油増圧器が設けられ、該空油増圧器には、サージ圧力の異常に対応するためにサージタンクが設けられていることからすると、安全な成形作業を行うことに対する配慮がなされていることが理解される。一方、「スプリング」は、単に、緩衝装置として設けられたものであり、それ以上の技術思想は含まれるものではない。 してみると、本件特許発明の「油圧緩衝装置」とイ号方法の「スプリング」は、緩衝装置として異なる作用効果を持つものであり、置換可能性は存在せず、均等論における第2要件は満たされないと言わざるを得ない。 (3)まとめ よって、本件特許発明の構成要件D、E及びHについては、本件特許発明の本質的部分に係る構成であり、イ号方法と同一の目的・作用効果を有するものとはいうことはできない。 したがって、最高裁判決平成6年(オ)第1083号に照らし、均等を判断するための他の要件を判断するまでもなく、イ号方法が本件特許発明に係る構成と均等なものであるということはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、判定請求書に添付されたイ号説明書及びイ号図面に示す成形機の型締め方法は、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2013-12-27 |
出願番号 | 特願平10-52860 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B29C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大島 祥吾 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 鈴木 正紀 |
登録日 | 2001-12-21 |
登録番号 | 特許第3262218号(P3262218) |
発明の名称 | 成形機における型締め方法及びその装置 |
代理人 | 豊栖 康弘 |
代理人 | 三縄 隆 |
代理人 | 堀内 正優 |
代理人 | 木谷 弘行 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 豊栖 康司 |