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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1283553
審判番号 不服2011-26047  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-02 
確定日 2014-01-06 
事件の表示 特願2001-505221「高解像度表面下画像作成用開口数増加レンズ(NAIL)技術」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月28日国際公開、WO00/79313、平成15年 1月21日国内公表、特表2003-502705〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2000年6月20日(優先権主張1999年6月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月20日及び平成22年10月8日に手続補正がなされたが、平成23年7月25日付けで上記平成22年10月8日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年12月2日に、拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成24年9月18日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成25年3月22日に回答書が提出された。
さらに、当審において同年7月3日に合議体との面接が行われ、同年7月17日にファクシミリによる釈明が行われた。

第2 平成23年12月2日付けの手続補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成23年12月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成23年12月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1は、補正前の以下のもの

「材料の基板の表面を通過して材料に入射し又は材料から発する光を結合するためのシステムに使用されるレンズであって、
前記基板は黒体輻射を放射する面の下方に加工構造体を含み、これにより熱画像作成ができて、
前記レンズが前記基板の面に適合する第1面と凸型形状の第2面を有し、
又、前記レンズは、前記レンズの第1面が前記基板面に接するとき、前記加工構造体が含まれる焦点領域を有し、
前記光が、前記凸型表面形状とは形状的に異なる位相前面を通って前記凸型表面を通過することを特徴とするレンズ。」(以下「本願発明」という。下線は当審で付与。)

から、次のとおりのものに補正された。

「光が貫通する材料から製造され、平坦な面を有する基板に入射し又は基板から発する光を結合するためのレンズを含む光学システムであって、
前記基板の前記平坦な面の下に熱放散半導体を含み、これにより熱画像が作成され、前記レンズが以下からなる:
前記基板の平坦な面に合致する平坦な第1面と凸型球面形状の第2面;
ここで、前記第1の面および前記平坦な面が接するときに、前記凸型球面を通過する光が、対象の加工構造体の少なくとも1つが配置される実質的に無収差の横方向に広がる焦点領域に渡って、実質的に無収差で焦点を結ぶように、前記レンズは組み立てられて配置され、
前記凸型球面形状は、前記レンズおよび基板が接するときに、前記横方向に広がる焦点領域(54)の上にある点の周囲に曲率半径(R)を有する。」(以下「補正発明」という。)

2.判断
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するための事項である「前記光が、前記凸型表面形状とは形状的に異なる位相前面を通って前記凸型表面を通過すること」という事項を削除する補正を含むものである。
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、上記補正が請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでないことは明らかである。

3.結論
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

[付言]
補正発明は、以下のとおり、引用文献1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.引用文献

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平5-157701号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】この特性により比較的大多数のコンデンサが集積回路上に製造できることは望ましいことであるが、この特性のために強力な顕微鏡を用いてさえコンデンサの可視検査をすることがほとんどできない。これはシリコン及びガリユウム・ヒ素化合物がトレンチ構造を分解するのに十分高い光学的周波数において極端に減衰させるからである。現在、この型式の構成要素を検査する主要な方法は走査電子顕微鏡を用いて側面から構成要素を観察するようにウエハを切ることである。この技術は時間を浪費しかつウエハを破壊する。従つて観察された構造の電子的特性を判別することが難しくなる。
【0005】シリコン及びガリユウム・ヒ素化合物は1.2?15〔μm〕の間の波長を有する赤外線放射に対して透明である。赤外線顕微鏡検査法を用いる裏側検査はフリツプチツプボンデイングパツドの検査、ピコセコンドの電圧の測定並びに種々の光熱及び光音響測定のために一定の手順により実行される。しかしながら、現在利用されているすべての赤外線顕微鏡の開口数は0.5?0.8の間に制限される。これによりラテラル方向の分解能はサブミクロンのトレンチを分解するのに不十分な1.5?2.5〔μm〕になる。」
(2)「【0017】(概要)以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。本発明は半導体ウエハを裏面から結像して計測するために用いられる光学装置を提案する。光学装置の主要な構成部品はレンズすなわちプリズムであり、プリズムは半導体材料の屈折率に近い屈折率を有する材料により形成される。この装置は高い角度から光線を入射できる手法により半導体ウエハに結合され、この高い角度からの光線(これを高角度光線又は高角度光波と呼ぶ)は通常半導体及び空気の境界面において反射され、空間に光線を射出するとき半導体ウエハから離れる。ある結合方法を用いると、レンズすなわちプリズムは当該ウエハ上の固定位置に保持される。・・・」
(3)「【0031】図1及び図2に示すように、プリズムすなわち平凸レンズはウエハの裏面と密接なコンタクトを保持するとき、許容離間距離(すなわち50〔nm〕未満)を得ることができる。許容離間距離が得られるのは、製造時に用いられる半導体ウエハが非常に平滑だからである。図1に示す構成において使用されるプリズムを詳細に述べる。平凸レンズはいくつかの構成においては赤外線顕微鏡の対物レンズとして用いられる。光学装置をウエハに結合することに関する以下の記述は図2のレンズを適用した場合について述べるが、これは図1のプリズムを適用した場合にも同様に適用できる。
【0032】コンタクトレンズは、高角度光波がウエハから空気中に伝播するために比較的高い解像度を達成すること以外にも、次の利点を有する。レンズ及びウエハ間のコンタクトを緊密にすることにより干渉測定の際にノイズを加える振動を抑制する。さらにこのようにコンタクトを緊密にすることによりレンズ及びサンプル間の機械的なクリープ及びドリフトを十分に除去する。ほとんどのウエハの厚さを正確に知ることができるので、コンタクトレンズは当該ウエハから得た像の焦点合わせを容易にする。これに加えてこうした解決策は、屈折流体によつてウエハが汚染されるおそれをコンタクトレンズが除去するので、レンズ及びウエハ間の屈折率整合流体を用いること以上の利点を有する。」
(4)「【0051】図2はシリコンウエハと密接にコンタクトするシリコン対物レンズ112の基本的な概念を示す。光線118はプリズム119を介して当該ウエハ内に結合され、臨界角以上の角度でウエハに入る光は完全に内部に反射する。例えばコーナレフレクタの働きをするトレンチ114によつて反射された高角度光線はウエハ110から伝播することはできない。しかしながら、光線120がレンズ112に隣接して配置されるシリコンプリズム121によつてウエハ内に結合されるとき、トレンチ114からの光線120の反射はレンズ112によつて空気中に伝播する光線に変換される。
【0052】図2に示す構造は高い開口数NAをもつ赤外線顕微鏡の基礎として扱われる。しかしながら、この構造にはいくつかの欠点がある。第1の欠点は、レンズがウエハとコンタクトしているので、上述のように顕微鏡を操作することが難しいことである。第2の欠点は、レンズが望ましい状態で当該ウエハ表面に極く近接しているので、その焦点をほとんど変更することができないことである。」
(5)「・・・半球のシリコンレンズ112・・・」
(6)「【図2】



これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「半導体シリコンウエハを裏面から結像して計測するために用いられる赤外線顕微鏡であって、
レンズは半導体材料の屈折率に近い屈折率を有する材料により形成される半球のシリコンレンズ112であって、
レンズはウエハの裏面と密接なコンタクトを保持する、
高い開口数NAをもつ赤外線顕微鏡。」(以下「引用発明」という。)

3.対比
補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「半導体シリコンウエハ」がシリコン基板を有することは明らかであり、該基板は補正発明の「光が貫通する材料から製造され、平坦な面を有する基板」に相当する。
(2)引用発明の「半導体シリコンウエハを裏面から結像して計測するために用いられる赤外線顕微鏡」は、補正発明の「基板から発する光を結合するためのレンズを含む光学システム」に相当する。
(3)引用発明は赤外線顕微鏡であるから、引用発明の「半導体シリコンウエハ」は、補正発明の「基板の前記平坦な面の下」の「熱放散半導体」に相当する構成を含む。
同様に、引用発明が補正発明の「基板の前記平坦な面の下に熱放散半導体を含み、これにより熱画像が作成され」る構成に相当する構成を有する。
(4)引用発明の「半球のシリコンレンズ」の「半球」は、補正発明の「凸型球面形状の第2面」に相当し、該レンズは「ウエハの裏面と密接なコンタクトを保持する」から補正発明の「基板の平坦な面に合致する平坦な第1面」に相当する構成を有する。
(5)引用発明のレンズが「半球」であること、引用文献1の図2から光が半球表面で屈折しているようすが見て取れること、及び引用発明の焦点はその観察すべき領域である半導体シリコンウエハの表面付近であること、等を考慮すれば、引用発明のレンズが「焦点領域の上にある点の周囲に曲率半径を有する」ことがわかる。

してみると両者は、
「光が貫通する材料から製造され、平坦な面を有する基板に入射し又は基板から発する光を結合するためのレンズを含む光学システムであって、
前記基板の前記平坦な面の下に熱放散半導体を含み、これにより熱画像が作成され、前記レンズが前記基板の平坦な面に合致する平坦な第1面と凸型球面形状の第2面を有し、
焦点領域の上にある点の周囲に曲率半径を有する、
光学システム。」
の点で一致し、次の点で相違している。

(相違点)
補正発明が「第1の面および平坦な面が接するときに、凸型球面を通過する光が、対象の加工構造体の少なくとも1つが配置される実質的に無収差の横方向に広がる焦点領域に渡って、実質的に無収差で焦点を結ぶように、レンズは組み立てられて配置され」るのに対して、引用発明がそのような構成を有しているかどうか不明な点。

4.判断
上記相違点について検討する。
均一媒体に囲まれた個体均一球において、「球面を通過する光が、実質的に無収差の焦点を結ぶような球面状の領域を有すること」は、光学原理としてよく知られた事実である。
また、補正発明や引用発明の属する顕微鏡の分野において、なるべく収差のない像を得ようとすることは、当業者が普通に考慮する事項である。
そして、引用発明の焦点として、上記の周知の無収差領域を設定することに格別の技術的困難性も阻害要因もない。
してみると、引用発明に上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。

さらに、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第3 本願発明
平成23年12月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成21年4月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」の本願発明参照)。

1.引用刊行物
原査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「[付言]」の「1.」に記載したとおりである。

2.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「半導体シリコンウエハ」は本願発明の「材料」に相当し、シリコンウエハが基板を有することは明らかである。
また、引用発明の「レンズ」が「材料から発する光を結合するためのシステムに使用されるレンズ」であることも明らかである。
(2)引用発明は赤外線顕微鏡であるから、引用発明の「半導体シリコンウエハ」は本願発明の「基板は黒体輻射を放射する面の下方に加工構造体」に相当する構成を含む。
同様に、引用発明は本願発明の「熱画像作成ができ」る構成に相当する構成を有する。
(3)引用発明の「半球のシリコンレンズ」の「半球」は、本願発明の「凸型形状の第2面」に相当し、該レンズは「ウエハの裏面と密接なコンタクトを保持する」から補正発明の「基板の面に適合する第1面」に相当する構成を有する。
(4)引用発明が半導体シリコンウエハの観察すべき領域に焦点を有することは明らかであるから、引用発明のレンズは本願発明の「レンズの第1面が前記基板面に接するとき、前記加工構造体が含まれる焦点領域を有」する構成に相当する構成を有する。
(5)引用発明のレンズが「半球」であること、及び、引用文献1の図2から光が半球表面で屈折しているようすが見て取れることから、引用発明のレンズ表面を通過する際に光の波面が変化している、すなわち半導体シリコンウエハの観察領域からの光の波面の形状が半球レンズの表面のそれとは異なることがわかる。
したがって、引用発明は本願発明の「光が、前記凸型表面形状とは形状的に異なる位相前面を通って前記凸型表面を通過すること」に相当する構成を有する。

してみると両者は、
「材料の基板の表面を通過して材料に入射し又は材料から発する光を結合するためのシステムに使用されるレンズであって、
前記基板は黒体輻射を放射する面の下方に加工構造体を含み、これにより熱画像作成ができて、
前記レンズが前記基板の面に適合する第1面と凸型形状の第2面を有し、
又、前記レンズは、前記レンズの第1面が前記基板面に接するとき、前記加工構造体が含まれる焦点領域を有し、
前記光が、前記凸型表面形状とは形状的に異なる位相前面を通って前記凸型表面を通過するレンズ。」
の点で一致し、相違点はない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であり、特許法第29条第1項3号に規定する発明に該当し特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-01 
結審通知日 2013-08-06 
審決日 2013-08-20 
出願番号 特願2001-505221(P2001-505221)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 113- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森内 正明  
特許庁審判長 神 悦彦
特許庁審判官 伊藤 昌哉
吉野 公夫
発明の名称 高解像度表面下画像作成用開口数増加レンズ(NAIL)技術  
代理人 秋元 輝雄  

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