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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1283599 |
審判番号 | 不服2012-24938 |
総通号数 | 171 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-03-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-17 |
確定日 | 2014-01-06 |
事件の表示 | 特願2010- 51289「複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器及び電子機器制御プログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月 3日出願公開、特開2010-123147〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成11年12月28日に出願した特願平11-374617号(以下、「原願」という。)の一部を平成22年2月10日に新たな特許出願とした特願2010-27075号の一部をさらに、平成22年3月9日に新たな特許出願としたものであって、同日付けで審査請求がなされ、平成23年2月4日付けで拒絶理由通知(同年3月1日発送)がなされ、同年4月18日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成24年2月27日付けで拒絶理由通知(同年3月27日発送)がなされ、同年5月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年8月24日付けで拒絶査定(同年9月18日謄本送達)がなされたものである。 これに対して、「原査定を取り消す、この出願の発明は、特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年12月17日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 そして、平成25年2月25日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年5月16日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年6月11日発送)がなされ、同年8月9日付けで回答書の提出があったものである。 第2 平成24年12月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年12月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成24年12月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成24年5月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3の記載 「 【請求項1】 複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器であって、 前記複数の辞書端末それぞれから、当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別を受信する複数端末辞書受信手段と、 この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段と、 ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段と、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段と、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段と、 前記検索対象の辞書を搭載している辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段と、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段と、 を備えたことを特徴とする辞書端末との通信機能を有する電子機器。 【請求項2】 前記複数端末辞書受信手段は、前記複数の辞書端末それぞれから、当該各辞書端末の端末情報と搭載されている辞書の種別とを受信する端末情報辞書種別受信手段を備え、 前記複数端末辞書一覧表示手段は、前記端末情報辞書種別受信手段により受信したいずれかの辞書端末の端末情報と対応する辞書の種別とを表示する端末情報辞書種別表示手段を備え、 前記辞書検索依頼送信手段は、前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書の種別に対応する端末情報の辞書端末に、検索の依頼を送信する対応端末依頼送信手段を備える、 ことを特徴とする請求項1に記載の辞書端末との通信機能を有する電子機器。 【請求項3】 複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器のコンピュータを制御するための電子機器制御プログラムを記録した記録媒体であって、前記コンピュータを、 前記複数の辞書端末それぞれから、当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別を受信する複数端末辞書受信手段、 この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段、 ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段、 前記検索対象の辞書を搭載している辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段、 として機能させるようにしたコンピュータ読み込み可能な電子機器制御プログラムを記録した記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) を、 「 【請求項1】 複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器であって、 当該電子機器で利用しようとする複数の辞書端末の端末情報と当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録するための初期設定を行なう辞書初期設定手段を備え、 当該辞書初期設定手段は、 前記複数の辞書端末それぞれから、辞書端末の端末情報と当該辞書端末に搭載されている辞書の種別とを受信する複数端末辞書受信手段と、 この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書端末の端末情報と当該辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録する端末情報辞書種別登録手段と、 前記端末情報辞書種別登録手段により前記末情報辞書種別記憶手段に登録された複数の辞書端末にそれぞれ搭載されている辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段と、 を有し、 ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段と、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段と、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該指定された検索対象の辞書の種別に対応する端末情報の辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段と、 前記指定された検索対象の辞書の種別に対応する端末情報の辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段と、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段と、 を備えたことを特徴とする辞書端末との通信機能を有する電子機器。 【請求項2】 複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器のコンピュータを制御するための電子機器制御プログラムを記録した記録媒体であって、前記コンピュータを、 当該電子機器で利用しようとする複数の辞書端末の端末情報と当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録するための初期設定を行なう辞書初期設定手段、 として機能させ、 当該辞書初期設定手段は、 前記複数の辞書端末それぞれから、辞書端末の端末情報と当該辞書端末に搭載されている辞書の種別とを受信する複数端末辞書受信手段と、 この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書端末の端末情報と当該辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録する端末情報辞書種別登録手段と、 前記端末情報辞書種別登録手段により前記末情報辞書種別記憶手段に登録された複数の辞書端末にそれぞれ搭載されている辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段と、 を有するように機能させ、 さらに、 ユーザ操作により、前記複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末のそれぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該指定された検索対象の辞書の種別に対応する端末情報の辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段、 前記指定された検索対象の辞書の種別に対応する端末情報の辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段、 として機能させるようにしたコンピュータ読み込み可能な電子機器制御プログラムを記録した記録媒体。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) に補正することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件 (1)特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討 本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされており、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。 (2)特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 次に、本件補正が、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定を満たすものであるか否か、すなわち、本件補正が、特許法第17条の2第4項に規定する請求項の削除、特許請求の範囲の減縮(特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る)、誤記の訂正、或いは、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)の何れかを目的としたものであるかについて、以下に検討する。 補正後の請求項1及び請求項2は、その記載からして、次の事項(a)及び(b)を含んでいる。 (a)「当該電子機器で利用しようとする複数の辞書端末の端末情報と当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録するための初期設定を行なう辞書初期設定手段」 (b)「この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書端末の端末情報と当該辞書端末に搭載されている辞書の種別とを登録する端末情報辞書種別登録手段」 しかしながら、前記(a)及び(b)を追加する本件補正は、補正前の請求項1及び請求項3における「複数端末辞書受信手段」、「複数端末辞書一覧表示手段」、「検索辞書指定手段」、「単語指定手段」、「辞書検索依頼送信手段」、「辞書内容受信手段」、「受信情報表示手段」のいずれかを限定した下位概念の補正ではなく、新たな構成を追加した補正であるものと認められる。 したがって、本件補正は、補正前の請求項1及び請求項3に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものとは認められない。 なお、前記補正前の請求項1及び請求項3についてする補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明瞭でない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)に該当するものではない。 3.まとめ 以上のように、本件補正は、上記「2.新規事項の有無、補正の目的要件」の「(2)特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、補正後の請求項1及び請求項2に記載された発明は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求の成否について 1.本願発明の認定 平成24年12月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年5月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器であって、 前記複数の辞書端末それぞれから、当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別を受信する複数端末辞書受信手段と、 この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段と、 ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段と、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段と、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段と、 前記検索対象の辞書を搭載している辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段と、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段と、 を備えたことを特徴とする辞書端末との通信機能を有する電子機器。」 2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原審の拒絶の査定の理由である上記平成24年2月27日付けの拒絶理由通知において引用され、原願の出願日前に頒布された刊行物である、特開昭62-287336号公報(昭和62年12月14日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) A 「2.特許請求の範囲 1.それぞれ異なった情報源から構成された複数の辞書と、これらの辞書の中から所望の1または2以上の辞書を選択する辞書選択手段と、文字等の情報を表示するための情報表示手段と、この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段とを具備することを特徴とする電子辞書。」(1頁下左欄4行目?同頁同欄13行目) B 「「実施例」 以下実施例につき本発明を詳細に説明する。 第1図は本発明の電子辞書のシステム構成の概要を表わしたものである。この電子辞書は、使用者の机ごとに備えられた個人用装置と、各人がシステムとして共用する共用装置とから構成されている。個人用装置は、ディスプレイ11と、ディスク装置12、およびこれらを操作するためのキーボード13またはディスプレイ上の仮想キーボードとマウス14から構成されている。これらは、使用者の机単位で用意されている。この第1図では図示していないが、必要によりプリンタやイメージ入力装置を個人用装置に付け加えてもよい。 共用装置として、本実施例では辞書情報サーバ15を用意している。辞書情報サーバ15はシステム共通として利用する辞書を格納したものである。辞書サーバ15に格納されている辞書は、例えば岩波書店の“広辞苑”や共立出版株式会社の“数学小辞典”等がそのまま電子的にファイルされている。これらは、各出版会社から電子的なファイルとして購入したものである。 これに対して、前記したディスク装置12には、各個人が個人的に使用する辞書や、辞書情報サーバ15に格納された辞書を個人用に改造したものが格納される。もちろん、1つの辞書をオフィス内で順次改定していき、これを辞書サーバ15に共通の辞書として蓄えることも有効である。 個人用装置と共用装置の間は、光ケーブル等のケーブル16で結ばれており、これにより各個人装置が共用装置を自由にアクセスできるようになっている。」(2頁下左欄17行目?3頁上左欄7行目) C 「第4図は、英文の作成を行う際の最も普通の使用態様を表わしたものである。電子辞書の電源を投入すると、表示装置の表示画面25Aに記述情報入力用の第1のウィンドウ41が設定される。この第1のウィンドウ41の更に上の方の表示部分42には、第1図に示したディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている辞書の種類が表示される。オペレータは、マウス14を操作して使用したい辞書の種類の表示されている場所にカーソルを移動し、例えばその左側のボタンを押して、辞書の選択を行う。この電子辞書では、複数の選択が可能である。第4図では、英和辞典と和英辞典が選択された状態を表している。この状態で、オペレータは第1のウィンドウ41内に例えば英文を入力していく。この入力には、キーボード13が用いられる。 ところで日本語から英文に変換する際、「最近」という文字(記述情報)の英語を確認する必要が生じたとする。この場合、オペレータはキーボード13を和文入力モードにして「最近」という文字の入力を行い、この状態で“語義”キー31を押す。すると、この場合には和英辞典が選択され、「最近」という用語についての辞書の内容が第2のウィンドウ43に表示される。第2のウィンドウ43は第1のウィンドウ41の右側の上部に割り当てられている。オペレータは第2のウィンドウの内容を見て、最適の用語を探し、また用例を文章の作成に役立てることができる。」(3頁下左欄4行目?同頁下右欄11行目) D 「「発明の効果」 以上説明した本発明の電子辞書は、次のような効果を有する。 (1)本発明では、種々の辞書とそれらを共通して利用できる検索手段とが層構造となっているので、利用者は辞書の所在を知ることなく、これを自由に利用することができる。また検索手段を他の検索手段と交換したり、他の電子辞書に移植することができ、システム内の構成辞書自体を変更せずに異なった言語を用いた計算機同士で電子辞書の改良や変更を行うことが可能となる。」(5頁下左欄11行目?同頁下右欄1行目) E 第4図は、「英文の作成を行う際の最も普通の使用態様を表わした」画面例であるが、該画面の上部には、“ディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている複数の辞書の一覧(「国語辞典」、「現代用語辞典」、「英和辞典」、「和英辞典」、「英英辞典」、「社内経理用語」、「システム関連専門用語」)が表示される”態様が読み取れる。 ここで、上記引用文献に記載されている事項を検討する。 (ア)上記Aの記載からすると、引用文献には、 「それぞれ異なった情報源から構成された複数の辞書と、 これらの辞書の中から所望の1または2以上の辞書を選択する辞書選択手段と、 文字等の情報を表示するための情報表示手段と、 この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段 とを具備することを特徴とする電子辞書。」 が記載されている。 (イ)上記Bの「第1図は本発明の電子辞書のシステム構成の概要を表わしたもの・・・電子辞書は、使用者の机ごとに備えられた個人用装置と・・・から構成されている・・・共用装置として、本実施例では辞書情報サーバ15を用意している・・・個人用装置と共用装置の間は、光ケーブル等のケーブル16で結ばれており」との記載からすると、引用文献には、 “辞書情報サーバとケーブルで結ばれた電子辞書” が記載されている。 (ウ)上記Cの「電子辞書の電源を投入すると、表示装置の・・・上の方の表示部分42には・・・ディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている辞書の種類が表示される」との記載、上記Eの“ディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている複数の辞書の一覧(「国語辞典」、「現代用語辞典」、「英和辞典」、「和英辞典」、「英英辞典」、「社内経理用語」、「システム関連専門用語」)が表示される”態様からすると、引用文献には、 “複数の辞書を一覧表示する手段(以下、「複数辞書一覧表示手段」という。)” が記載されていると解される。 (エ)上記(イ)の検討内容、上記Cの「オペレータは、マウス14を操作して使用したい辞書の種類の表示されている場所にカーソルを移動し、例えばその左側のボタンを押して、辞書の選択を行う」との記載からすると、上記(ア)の「これらの辞書の中から所望の1または2以上の辞書を選択する辞書選択手段」は、 “オペレータ操作により、複数辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書のうちから使用したい辞書を選択する辞書選択手段” であると解される。 (オ)上記Cに記載の「オペレータは・・・「最近」という文字の入力・・・すると、この場合には和英辞典が選択され、「最近」という用語についての辞書の内容が第2のウィンドウ43に表示される」とは、「最近」という用語について和英辞典に記載されている内容を検索して検索結果を表示していることに他ならない。 してみると、引用文献には、 “辞書検索手段により検索された辞書内容を表示する手段(以下、「辞書内容表示手段」という。)” が記載されていると解される。 以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「辞書情報サーバとケーブルで結ばれた電子辞書であって、 それぞれ異なった情報源から構成された複数の辞書と、 この複数の辞書を一覧表示する複数辞書一覧表示手段と、 オペレータ操作により、この複数辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書のうちから使用したい辞書を選択する辞書選択手段と、 文字等の情報を表示するための情報表示手段と、 この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段と、 前記辞書検索手段により検索された辞書内容を表示する辞書内容表示手段と、 を具備することを特徴とする電子辞書。」 3.参考文献に記載されている技術的事項 原願の出願日前に頒布された刊行物である、特開平9-81580号公報(平成9年3月28日出願公開。以下、「参考文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。) F 「【0111】また、辞書サーバー102は1個に限らず、例えば複数存在してもよい。また、英語サーバー、フランス語サーバーのように各言語毎の辞書サーバー102を設けるようにしてもよい。この場合、情報変換手段2は検索情報106がどの言語で記述されているかを識別して、適切な辞書サーバー102から辞書情報109を取得する。また、1個の辞書サーバー102が、英語に限らず、複数の言語を統一的に取り扱うようにしてもよい。この場合、情報変換手段2の言語を識別する処理の負担が軽減される。」 4.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「辞書情報サーバ」は、本願発明の「辞書端末」に相当する。また、引用発明の「電子辞書」は、指定された文字を選択された辞書の中から検索して表示するものであることから、本願発明の「電子機器」に相当するといえる。 そして、引用発明の「辞書情報サーバとケーブルで結ばれた電子辞書」との記載からすると、電子辞書が辞書情報サーバと通信を行うための通信機能を有していることは、当業者にとって自明の事項である。 してみると、引用発明の「辞書情報サーバとケーブルで結ばれた電子辞書」と、本願発明の「複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器」とは、“辞書端末との通信機能を有する電子機器”である点で共通する。 (2)引用発明の「複数辞書一覧表示手段」は、本願発明の「複数端末辞書一覧表示手段」に対応する。 そして、上記Eから“ディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている複数の辞書の一覧(「国語辞典」、「現代用語辞典」、「英和辞典」、「和英辞典」、「英英辞典」、「社内経理用語」、「システム関連専門用語」)が表示される”態様が読み取れるように、引用発明の「複数辞書一覧表示手段」も、複数の辞書の種別を一覧表示しているものである。 してみると、引用発明の「この複数の辞書を一覧表示する複数辞書一覧表示手段」と、本願発明の「この複数端末辞書受信手段により受信した複数の辞書端末それぞれの辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段」とは、“複数の辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段”である点で共通する。 (3)引用発明の「オペレータ」、「複数の辞書」、「使用したい辞書」、「選択する」、及び「辞書選択手段」は、それぞれ、本願発明の「ユーザ」、「複数の辞書端末それぞれの辞書の種別」、「検索対象の辞書」、「指定する」、及び「検索辞書指定手段」に相当する。 してみると、引用発明の「オペレータ操作により、この複数辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書のうちから使用したい辞書を選択する辞書選択手段」は、本願発明の「ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段」に相当する。 (4)引用発明の「この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段」とは、オペレータの操作により、表示されたテキスト中の検索対象の文字を指定し(以下、「検索対象文字指定手段」という。)、指定された検索対象の辞書に対する指定された文字の検索依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書情報サーバに送信し(以下、「辞書検索依頼送信手段」という。)、前記検索対象の辞書を搭載している辞書情報サーバより、前記指定された文字を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する(以下、「検索結果受信手段」という。)ことに他ならない。 そして、引用発明の「指定された文字」は、本願発明の「検索対象の単語」又は「指定単語」に相当する。 してみると、引用発明の「この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段」は、「オペレータの操作により、表示されたテキスト中の検索対象の文字を指定する検索対象文字指定手段」、「指定された検索対象の辞書に対する指定された文字の検索依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書情報サーバに送信する辞書検索依頼送信手段」、「前記検索対象の辞書を搭載している辞書情報サーバより、前記指定された文字を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する検索結果受信手段」を有すると解される。 したがって、引用発明の「この情報表示手段に表示された情報のうち指定されたものについてこれと関連する情報を前記辞書選択手段によって選択された辞書の中から検索する辞書検索手段」は、本願発明の「ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段」、「前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段」、「前記検索対象の辞書を搭載している辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段」に相当するといえる。 (5)引用発明の「辞書内容表示手段」は、本願発明の「受信情報表示手段」に相当する。そして、引用発明の「辞書検索手段により検索された辞書内容を表示する」とは、受信された検索結果を表示していることに他ならない。 してみると、引用発明の「前記辞書検索手段により検索された辞書内容を表示する辞書内容表示手段」は、本願発明の「この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段」に相当するといえる。 以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 辞書端末との通信機能を有する電子機器であって、 複数の辞書の種別を一覧表示する複数端末辞書一覧表示手段と、 ユーザ操作により、この複数端末辞書一覧表示手段により表示された複数の辞書端末それぞれの辞書の種別のうちから検索対象の辞書の種別を指定する検索辞書指定手段と、 ユーザ操作により、表示されたテキスト中の検索対象の単語を指定する単語指定手段と、 前記検索辞書指定手段により指定された検索対象の辞書に対する前記単語指定手段による指定単語の検索の依頼を、当該検索対象の辞書を搭載している辞書端末に送信する辞書検索依頼送信手段と、 前記検索対象の辞書を搭載している辞書端末より、前記指定単語を前記検索対象の辞書で検索した結果の辞書内容を受信する辞書内容受信手段と、 この辞書内容受信手段により受信された辞書内容を表示する受信情報表示手段と、 を備えたことを特徴とする辞書端末との通信機能を有する電子機器。 (相違点1) 辞書端末に関して、本願発明が、「複数の辞書端末」を備えるのに対して、引用発明は、複数の辞書情報サーバを備えるとは明記されていない点。 (相違点2) 本願発明が、「前記複数の辞書端末それぞれから、当該各辞書端末に搭載されている辞書の種別を受信する複数端末辞書受信手段」を備えるのに対して、引用発明は、辞書情報サーバから、当該辞書サーバに格納されている辞書に関する情報を受信することは明記されていない点。 5.当審の判断 上記相違点1及び相違点2について検討する。 (1)相違点1について 辞書サーバを複数備える構成は、当該技術分野において慣用的に用いられている技術に過ぎず、当該構成を採用することは、必要に応じて当業者が適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。(必要であれば、上記参考文献の上記F等参照。) してみると、引用発明においても、辞書情報サーバに格納されている複数の辞書を複数のサーバに分散させるように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜採用し得る設計的事項に過ぎない。 よって、相違点1は格別なものではない。 (2)相違点2について 一般に、共用装置であるサーバに格納された情報を端末装置で受信して表示するようにすることは、当該技術分野において、通常行われていることである。 そして、上記Cに「電子辞書の電源を投入すると、表示装置の・・・上の方の表示部分42には・・・ディスク装置12および辞書サーバ15に格納されている辞書の種類が表示される」と記載され、上記Dに「本発明では・・・利用者は辞書の所在を知ることなく、これを自由に利用することができる・・・電子辞書の改良や変更を行うことが可能となる」と記載されるように、引用発明においても、ディスク装置および辞書サーバ15に格納されている複数の辞書の種別を受信して一覧を表示しているものであることは、当業者にとって自明の事項である。 してみると、引用発明においても、辞書情報サーバから、当該辞書情報サーバに格納されている辞書の種別を受信する手段を備えるように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、相違点2は格別なものではない。 (3)小括 上記で検討したごとく、相違点1及び相違点2は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-09-24 |
結審通知日 | 2013-10-15 |
審決日 | 2013-10-28 |
出願番号 | 特願2010-51289(P2010-51289) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長 由紀子 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
仲間 晃 田中 秀人 |
発明の名称 | 複数の辞書端末との通信機能を有する電子機器及び電子機器制御プログラムを記録した記録媒体 |