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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1283750
審判番号 不服2010-22189  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2002-539538「DNA発現ベクター」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月10日国際公開、WO02/36792、平成16年 4月30日国内公表、特表2004-512837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年(2001年)11月2日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年11月6日 英国)とする国際出願であって、その請求項1に記載された発明は、平成20年12月5日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の記載からみて、以下のとおりのものである。

「【請求項1】プロモーター、およびエキソン1のすべてを含み、イントロンAの50以下の連続する塩基を含むHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片を含むDNA配列、ならびに、該プロモーター、およびHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片に操作可能にリンクしたポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクターの使用であって、該ポリペプチドに拮抗して免疫応答を誘発するためのワクチン組成物の製造における該ベクターの使用。」(以下、「本願発明」という。)

2.先願明細書
原査定の拒絶の理由で先願1として引用され、本願優先日前の2000年10月13日を優先日とし、本願出願前の2001年10月12日を国際出願日とする国際特許出願であって(PCT/US2001/032050)、本願出願日後の2002年4月18日に国際公開され(国際公開第2002/031137号)、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願(以下、「先願」という。)の国際出願日における明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている(以下、上記先願の翻訳文が記載されている特表2004-511229号公報における記載箇所で示す。下線は当審による。)。
そして、以下の(ア)?(オ)の事項はいずれも、この先願の優先権基礎出願である2000年10月13日付米国出願60/240,502号の明細書に記載されている。

(ア)「「イントロンAフラグメント」は、CMV最初期エンハンサー/プロモーター領域のイントロンA配列から誘導されるフラグメントを意味し、これは、完全なイントロンA配列を含まない。代表的なhCMVエンハンサー/プロモーター領域が、図2に示される。インタクトなイントロンA配列は、図2の位置1265?2088にわたる小文字のヌクレオチドおよび図1Aのヌクレオチド1?820によって表わされる。本発明のイントロンAフラグメントは、全長配列からの欠失を含み、この領域が、イントロンAフラグメントを含む一次転写物の核において忠実なスプライシングを可能にするように機能する限りは、この欠失は、イントロンA領域の内部あるいは5’末端および/または3’末端で生じ得る。好ましくは、「イントロンAフラグメント」は、イントロンA配列を完全に欠失する対応する構築物で達成される発現レベルを超える発現レベルを達成するのに必要な、最小数の塩基またはエレメントを含む。 …途中省略…
従って、本発明の「イントロンAフラグメントは、一般的に、少なくとも5’スプライス連結配列(図1Aに示されるようなヌクレオチド1?7)、通常は、イントロンA領域の5’ヌクレオチドの少なくとも最初の25まで(図1Aのヌクレオチド1?25)、さらに好ましくは、少なくともイントロンA領域の最初の30ヌクレオチドまで(図1Aのヌクレオチド1?30)、さらにより好ましくは、イントロンA領域の最初の少なくとも40ヌクレオチドまで(図1Aのヌクレオチド1?40)、さらに好ましくは、イントロンA領域の少なくとも最初の51ヌクレオチドまで(図1Aのヌクレオチド1?51)、そしてイントロンA領域の最初の75以上のヌクレオチドまで、そしてこれらの値の間の任意の整数、あるいはイントロンAの5’領域のさらにそれ以上を含む。」(段落【0023】?【0024】)
(イ)「従って、本発明のイントロンAフラグメントは、広範な種々の物質(抗生物質および抗ウイルス剤として作用するペプチド(例えば、ワクチンおよび診断薬において使用するための免疫原性ペプチド);組換え抗体;抗腫瘍剤;免疫調節剤(例えば、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4およびγインターフェロンを含む、種々のサイトカインのいずれか);ペプチドホルモン
…途中省略… :および増殖因子(例えば、PDGF、EGF、KGF、IGF-1およびIGF-2、FGFなど)を含む)を発現するための発現構築物において用途を見出す。」(段落【0061】)
(ウ)「12のさらなるイントロンA欠失構築物を、プラスミドpCMVII(米国特許第6,096,505号)中での漸進的欠失(固有のNsiI部位から固有のHpaI部位の方へ5’→3’方向にかまたは、固有のHpaI部位からNsiI部位の方へ3’→5’方向へのいずれか)により作製した(図3および表1を参照のこと)。制限酵素消化後、プラスミドをT4 DNAポリメラーゼおよび過剰のdNTPで処理した。得られた平滑末端ベクターフラグメントを、ゲル精製および自己連結した。図3に示されるように、これらの構築物は、54?663塩基長の範囲のイントロン内での欠失を含んだ。得られたイントロン改変を保有する発現ベクターを生成するために、短縮プラスミド由来のNdeI-SalIフラグメントを、NdeIおよびSalIで消化したプラスミドpCMVkmLucに置換した。プラスミドpCMVkm2.GAGmod.SF2の消化により獲得されたコドン最適化HIV p55gag遺伝子の挿入のために、これらの構築物の中から選択された構築物をSalI-XbaIで消化して、レシピエントベクターフラグメントを生成した(Zur Megedeら、J.Virol.(2000)74:2628-2635。」(段落【0099】)
そして、「CMV IE1のイントロンA内でなされる欠失」という説明のある図3には、「CMVプロモーター」、「エキソン1 5’UTR」、「イントロンA」、「エキソン2 5’UTR」がこの順に並んでいる親ベクター構築物が示され、その下に、該構築物から「イントロンA」内のそれぞれ異なる部分、長さを欠失した12種類の構築物が示されている。
(エ)「293細胞の一過性トランスフェクションおよびルシフェラーゼ発現の評価によって、これらの誘導体ほぼ全てが親ベクター(全長イントロンA配列を含むpCMVkm-ルシフェラーゼ)と同様かまたは親ベクターよりも良好に発現されたことが、示された。2つの最も大きいイントロン欠失を含む構築物(pCon3、ΔHpaI-CelII)は、最も大きい増強(おおよそ、親ベクターよりも2倍大きい)を示した(図4)。
より小さいイントロンの発現に対する効果をさらに評価するために、イントロンAの全長配列を、ウサギβ-グロビン遺伝子由来の126塩基対のイントロンI(RβG-IVSI)と置換した。図5Aは、使用した野生型ウサギβ-グロビン遺伝子配列を示す。p55gag発現のインビトロ分析によって、野生型構築物が親ベクター(pCMVkm-ルシフェラーゼ)よりも約1.8倍まで発現したことが示された(図6)。」(段落【0101】?【0102】の一部)
(オ)「(イントロンAフラグメントを用いた核酸免疫)
イントロンAフラグメントがインビボにおいて転写を指向する能力を試験するために、Balb/Cマウス(6匹の群)(Charles River Co.,Willmington,MA)を、1箇所の注射あたり5μgの裸のベクターDNA(エンドトキシン不含で調製され[Qiagen,Inc.,Valencia,CA]、そして通常の生理食塩水中に処方した)を用いて前脛骨筋に、一回左右相称に(bilaterally)免疫した。免疫の3週間後および6週間後に採取した血液を、Zur Megedeら、J.Virol.(2000)74:2628-2635に記載されるように、抗HIV p55gag抗体についてELISAによって分析した。
評価した構築物を、図7に示す。変動性の免疫原性が、単回免疫の後に見出された(図7を参照のこと)。重要なことに、イントロンAの約85%を欠失しているpCON3ベクターは、親pCMVkm2.GAGmod.SF2ベクターよりも高い幾何平均力価を生じた(図7)。免疫の3週間後、この力価は、親ベクターの約2倍であったが、これは、免疫の6週間後までに低下した。」(段落【0104】?【0105】)
そして、「改変されたイントロンを含むプラスミドベクターのインビボ免疫原性」という説明のある図7には、図6でルシフェラーゼ遺伝子の発現が増強された、イントロンAの全長配列をウサギβ-グロビン遺伝子由来の126塩基対のイントロンI(RβG-IVSI)と置換したプラスミドの、ルシフェラーゼ遺伝子の代わりにp55gag遺伝子を用いてマウスを免疫すると、その免疫原性により免疫応答を誘発したことが示されている。

上記先願明細書記載事項(ウ)には、「CMVプロモーター」、「エキソン1 5’UTR」、「イントロンA」、「エキソン2 5’UTR」が連結している構築物に、発現量を測定するためのルシフェラーゼ遺伝子を連結した親ベクターが記載され、上記先願明細書記載事項(エ)には、親ベクターのイントロンA内の54?663塩基長の範囲を欠失した12の欠失構築物のほぼ全てが、イントロンA全長を有する親ベクターと同様か又は親ベクターよりも良好なルシフェラーゼ発現を呈したこと、及び、より小さいイントロンAの効果をさらに評価するために、イントロンAの全長配列を欠失させてウサギβ-グロビン遺伝子由来の126塩基対のイントロンI(RβG-IVSI)と置換した、「野生型構築物」を作製し、該構築物を使用してルシフェラーゼ遺伝子をインビトロ発現させると、親ベクターの約1.8倍発現したことが記載されている。
そして、上記先願明細書記載事項(イ)には、イントロンAフラグメントが、例えばワクチンに使用するための免疫原性ペプチドを発現するための発現構築物に用いられることが記載されているところ、上記先願明細書記載事項(オ)には、RβG-IVSIにルシフェラーゼに代えて、p55gag遺伝子を連結したベクターを含む生理食塩水処方物でマウスを免疫すると、免疫応答を誘発したことが記載されている。
また、本願明細書の段落【0015】によれば、「「操作可能にリンクした」とは、ポリペプチドをコードするDNA配列が、プロモーターおよび5’UTRの下流に位置し、プロモーターに付随する転写開始部位における転写開始の結果、HCMV IE1の5’UTR断片(あらゆる異種のイントロンを含む)および組換えポリペプチドをコードする配列を組み込んだmRNAの転写が起こるような並び方をいう。」とあり、先願明細書においても、p55gagは転写され、発現されているから、p55gagをコードするDNA配列は、プロモーター、およびエキソン1のすべてを含み、イントロンAの全長をウサギβ-グロビン遺伝子由来のイントロンIで置換したHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片に操作可能にリンクしているといえる。

そうすると、先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「プロモーター、およびエキソン1のすべてを含み、イントロンAの全長をウサギβ-グロビン遺伝子由来のイントロンIで置換したHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片を含むDNA配列、ならびに、該プロモーター、およびHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片に操作可能にリンクしたp55gagをコードするDNA配列を含むベクターであって、p55gagに対する免疫応答を誘発できるベクターを含む、ワクチン組成物。」

3.対比・判断
本願発明と先願発明とを比較すると、先願発明の「p55gag」は、本願発明の「ポリペプチド」に相当し、先願発明における「p55gagをコードするDNA配列を含むベクターであって、p55gagに対する免疫応答を誘発できるベクターを含む、ワクチン組成物」は、本願発明における「ポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクターの使用であって、該ポリペプチドに拮抗して免疫応答を誘発するためのワクチン組成物の製造における該ベクターの使用」と同義である。
また、先願発明では、イントロンAの全長をウサギβ-グロビン遺伝子由来のイントロンIで置換しているから、イントロンAの全長を欠失させた5’非翻訳領域の断片に、異種のイントロンを含むものであるということができるところ、本願発明においても、本願請求項1を間接的に引用する本願請求項5に、「【請求項5】5’非翻訳領域中にHCMV IE1エキソン1の下流に隣接してHCMV IE1遺伝子のイントロンA以外の異種イントロン配列をさらに含む、請求項4に記載のベクターの使用。」と記載されていることから、異種イントロンを含むことを排除していない。
そうすると、本願発明と先願発明とは、「プロモーター、およびエキソン1のすべてを含む、HCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片を含むDNA配列、ならびに、該プロモーター、およびHCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片に操作可能にリンクしたポリペプチドをコードするDNA配列を含むベクターの使用であって、該ポリペプチドに拮抗して免疫応答を誘発するためのワクチン組成物の製造における該ベクターの使用」である点で一致し、HCMV IE1遺伝子の5’非翻訳領域の断片が、本願発明では、イントロンAの50以下の連続する塩基を含むのに対して、先願発明では、イントロンAの全長を欠失している点で、一応相違する。
しかしながら、「イントロンAの50以下の連続する塩基を含む」点に関しては、本願明細書の段落【0010】に、「イントロンAについて、実質的にすべてという語はコンストラクトにおいて50以下の連続する塩基、好ましくは25塩基未満、好ましくは10塩基未満が存在するか、最も好ましくは塩基がなく、および残りの配列が間違ったスプライシングを起こさず、不適切な翻訳開始を引き起こさないことを意味する。」と記載されているだけであり、本願明細書の実施例においても、イントロンAの全長を含むベクターと、全長を欠失したベクターでのペプチドの発現量が比較されているにすぎず、50塩基以下かつ有意な長さのイントロンAを含むベクターは記載されていない。
このように、本願明細書には、50以下の連続する塩基を含む技術的な意味は、残りの配列が間違ったスプライシングを起こさず、不適切な翻訳開始を引き起こさないことであり、「最も好ましくは塩基がなく」と記載され、実施例においてもイントロンAの全長を欠失させたベクターが記載されているから、本願発明の「イントロンAの50以下の連続する塩基を含む」ことが、「実質的にイントロンAを含まない」態様を包含することは明らかである。よって、上記相違点は、実質的な相違ではない。
また、先願明細書記載事項(ア)には、「本発明の「イントロンAフラグメントは、一般的に、少なくとも5’スプライス連結配列(図1Aに示されるようなヌクレオチド1?7)、通常は、イントロンA領域の5’ヌクレオチドの少なくとも最初の25まで(図1Aのヌクレオチド1?25)、さらに好ましくは、少なくともイントロンA領域の最初の30ヌクレオチドまで」と記載されており、先願発明のベクターに、さらにイントロンA領域の5’ヌクレオチドの少なくとも最初の複数塩基を含ませることは、当業者が必要に応じて適宜なし得た課題解決のための具体的手段における微差である。したがって、この観点からも、上記相違点は実質的な相違ではない。
以上の理由により、本願発明は先願発明と同一であるから、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

4.審判請求人の主張
審判請求人は、平成22年11月18日付審判請求書の手続補正書において、
(i)「審査官殿は、『先願1のFig.3から明らかなように、先願1にはHCMV IE1のエキソン1およびイントロンAフラグメントを含む構築物が記載されている』としているが、文献1は、何ら本願発明のDNA配列を開示するものではない。
先願1のFig.3に示される構築物は、CMVプロモーター、エキソン1、イントロンAおよびエキソン2の並びとなっており、さらに、全長イントロンAおよびイントロンA領域の間に欠失を含むものが列挙されている。一方、本願発明は、イントロンA領域には50以下の連続する塩基のみが存在し、その下流にポリペプチドをコードするDNA配列が位置している。」
(ii)「先願1には、イントロンA領域において、少なくとも最初の51ヌクレオチドまで保持されることが開示されているが(明細書段落[0053]を参照のこと)、それ以外のイントロンA領域においてもヌクレオチドが保持されることが示されており(Fig.3を参照のこと)、イントロンA領域には連続するヌクレオチドが2箇所に存在することになる。してみると、先願1に記載の構築物は、50以下の連続する塩基を含むものであるが、欠失の後にもさらにヌクレオチドが存在するため、本願発明のDNA配列とは異なるものである。」と主張している。

しかしながら、上記3.で述べたとおり、先願明細書には、全長イントロンAを欠失させたベクターが記載されており、一方、本願発明の「イントロンAの50以下の連続する塩基を含む」ことは、実質的にイントロンAを含まない態様を含むから、審判請求人の上記(i)、(ii)の主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前の優先日を有する国際特許出願であって(PCT/US2001/032050)、本願出願日後に国際公開され(国際公開第2002/031137号)、その後、特許法第184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願の国際出願日における明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも、この出願の発明者が上記国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一であるとも、またこの出願の時において、その出願人が上記国際特許出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第184条の13で読み替えて適用する特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-14 
結審通知日 2013-08-20 
審決日 2013-09-02 
出願番号 特願2002-539538(P2002-539538)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱田 光浩  
特許庁審判長 鈴木 恵理子
特許庁審判官 冨永 みどり
今村 玲英子
発明の名称 DNA発現ベクター  
代理人 松谷 道子  
代理人 西野 満  
代理人 山田 卓二  
代理人 水原 正弘  
代理人 青山 葆  
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