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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1283765
審判番号 不服2012-13290  
総通号数 171 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-03-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-12 
確定日 2014-01-15 
事件の表示 特願2008-518698「汎用型スマートカード」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日国際公開、WO2007/003301、平成20年12月11日国内公表、特表2008-545186〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2006年6月27日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2005年7月1日、イタリア共和国)を国際出願日とする出願であって、平成23年10月18日付けで拒絶理由が通知(同年10月24日発送)され、これに対して、平成24年1月20日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが、同年3月2日付けで拒絶査定(同年3月12日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、本件審判請求は、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める。」ことを請求の主旨として、平成24年7月12日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、同年9月10日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年12月17日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年12月25日発送)がなされ、平成25年3月21日付けで回答書の提出があったものである。

第2.平成24年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定

【補正の却下の決定の結論】

平成24年7月12日に提出された手続補正書による補正を却下する。

【理由】

1.補正の内容

平成24年7月12日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は平成24年1月20日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載

「【請求項1】
層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)において、少なくとも、
i-スタティックメモリー(6,50)と連動するマイクロプロセッサー(2,60)と、
ii-前記マイクロプロセッサー(2,60)とスタティックメモリー(6,50)に電力を供給可能であって前記カード厚(4)内の交換可能な平坦型バッテリーと、
iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)及び/又はスタティックメモリー(6,50)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)と、
iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して種々の機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行う指紋読取り手段(80)と、
v-前記データ伝送装置(3)に接続する少なくとも一つのアンテナ(5)と、
vi-マイクロコントローラ(7)により前記スタティックメモリー(6)と一体化された前記マイクロプロセッサー(2,60)と、
vii-オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と液晶表示装置を有するスクリーン(8)と、
viii-プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)であり、及び/又は、送受信機とベースバンド(32)を備えたワイファイモジュール、
であることを特徴とし、更に動作モードとして、
a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、
b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、
c)プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、
d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、
e)受信と保存が完了すると、カードが自動的に停止してエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、
f)そうでなければ、送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始する、
g)送信の最後に、カードはエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、であることを特徴とするスマートカード。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項1」という。)

を、

「【請求項1】
層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)において、少なくとも、
i-スタティックメモリー(6,50)と連動するマイクロプロセッサー(2,60)と、
ii-前記マイクロプロセッサー(2,60)とスタティックメモリー(6,50)に電力を供給可能であって前記カード厚(4)内の交換可能な平坦型バッテリーと、
iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)及び/又はスタティックメモリー(6,50)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)と、
iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行い、メニューのナビゲーターとしてもまた働く指紋モジュール(80)と、
v-前記データ伝送装置(3)に接続する少なくとも一つのアンテナ(5)と、 vi-マイクロコントローラ(7)により前記スタティックメモリー(6)と一体化された前記マイクロプロセッサー(2,60)と、
vii-オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、
viii-プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)であり、及び/又は、送受信機とベースバンド(32)を備えたワイファイモジュール、
であることを特徴とし、更に動作モードとして、
a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、
b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、
c)プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、
d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、
e)受信と保存が完了すると、カードが自動的に停止してエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、
f)そうでなければ、送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始する、
g)送信の最後に、カードはエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、であることを特徴とするスマートカード。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項1」という。)

に補正することを含むものである。

2.補正事項の整理

本件補正における補正事項を整理すると次のとおりである。

(1)補正事項1

補正前の請求項1の「ユーザーの押印読取り処理装置に接続して種々の機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行う指紋読取り手段(80)と、」を、「ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行い、メニューのナビゲーターとしてもまた働く指紋モジュール(80)と、」と補正して、補正後の請求項1とすること。

(2)補正事項2

補正前の請求項1の「オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と液晶表示装置を有するスクリーン(8)と、」を、「オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、」と補正して、補正後の請求項1とすること。

3.新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討

(1)補正事項1について

a.補正事項1は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「種々の機能へのアクセス」を「全ての機能へのアクセス」として「アクセス」に対して技術的限定を加えると共に、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「本人認証を行う指紋読取り手段(80)」を「本人認証を行い、メニューのナビゲーターとしてもまた働く指紋モジュール(80)」として、「本人認証を行う指紋読取り手段(80)」に対して技術的限定を加えるものであるとともに、当該限定を加えることにより発明の産業上の利用分野や解決しようとする課題が格別変更されるものでもないから、補正事項1は特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(以下「限定的減縮」と記す。)を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項1の補正は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たす。

b.また、補正事項1により補正された部分は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)の0052段落に記載されているものと認められるから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものである。

したがって、補正事項1の補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)の規定に適合している。

(2)補正事項2について

補正事項2は、補正前の請求項1の「液晶表示装置を有するスクリーン(8)と、」を「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、」と補正するものである。
そして、この補正によって、補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項である「指紋読取り手段(8)」は、「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と」から構成されることになるが、当初明細書等には、「指紋読取り手段(8)」に関して、「【請求項2】前記スマートカードは、指紋読取り手段(8)を内部に一体的にさらに備え、その指紋読取り手段(8)は、ユーザーの押印読取り処理装置に接続して種々の機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行うことを特徴とする請求項1記載のスマートカード。」という記載、「【0055】新規性と独創性は、すべての前記素子と特に、追加として、照合と本人確認およびすべての機能へのアクセス許可のための指紋読取り(80)との関連性である。」という記載及び「【0060】個人用指紋読取りカードの動作は、図1Aのブロック図で図示される。」という記載がなされているだけであり、「指紋読取り手段(8)」を「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)」と、「指紋モジュール(80)」とから構成することに関しての記載は一切なされていない。また、このように構成することが、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。

したがって、補正事項2の補正は、補正前の請求項1の発明に「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、」という新規事項を追加するものであり、補正事項2は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たしていない。

(3)新規事項の追加の有無についてのまとめ

以上、検討したとおりであるから、補正事項2を含む本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。

4.独立特許要件の検討

(1)はじめに

上記「3.新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討」の「(1)補正事項1について」において検討したとおり、本件補正は限定的減縮を目的とするものでもあるので、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、本件補正が、いわゆる独立特許要件を満たすものであるか否かについて、請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)に関して、検討する。

(2)補正後の発明

本件補正による補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。

「 層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)において、少なくとも、
i-スタティックメモリー(6,50)と連動するマイクロプロセッサー(2,60)と、
ii-前記マイクロプロセッサー(2,60)とスタティックメモリー(6,50)に電力を供給可能であって前記カード厚(4)内の交換可能な平坦型バッテリーと、
iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)及び/又はスタティックメモリー(6,50)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)と、
iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行い、メニューのナビゲーターとしてもまた働く指紋モジュール(80)と、
v-前記データ伝送装置(3)に接続する少なくとも一つのアンテナ(5)と、 vi-マイクロコントローラ(7)により前記スタティックメモリー(6)と一体化された前記マイクロプロセッサー(2,60)と、
vii-オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、
viii-プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)であり、及び/又は、送受信機とベースバンド(32)を備えたワイファイモジュール、
であることを特徴とし、更に動作モードとして、
a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、
b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、
c)プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、
d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、
e)受信と保存が完了すると、カードが自動的に停止してエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、
f)そうでなければ、送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始する、
g)送信の最後に、カードはエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、であることを特徴とするスマートカード。」

(3)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原審の原査定の理由である上記平成23年10月18日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2004-164347号公報(平成16年6月10日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

A 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、本人認証のためのICカード及び、認証方法に関し、詳しくはICカードなどの表面に入力のためのキー、手順などを表示する表示部、指紋検出センサーを設け、指紋が一致して初めて目的とするステップに移行できるようにしたICカードとそれを使用する本人の認証方法に関する。」

B 「【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題の目的を達成するために本発明のICカードの請求項1に記載の発明は、表面に少なくとも表示部と、操作部と、生体情報検出部とを形成し、内部には少なくとも参照用生体情報を格納する情報格納部と、生体情報照合部と、制御部と、電力供給部と、通信部とを内蔵したことを特徴とするものである。」

C 「【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1?2何れか1項に記載の発明において、生体情報検出部は、指紋を検出するセンサーであることを特徴とするものである。」

D 「【0013】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明のICカード及びこれを使用する本人の認証方法の好適な実施形態について説明する。
また、本実施の形態の説明では生体情報検出手段として指紋検出手段の例で説明する。
【0014】
図1は、本発明のICカードの一実施形態の概略正面図、図2は、図1に示すICカードの内部構成を概略的に示すブロック図、図3は、指紋検出センサーの一実施形態の概略正面図、図4は、本発明のICカードを使用する本人の認証方法の認証フロー図、図5は、本発明のICカードの一実施形態の概略正面図、である。」

E 「【0015】
図1において、本発明のICカード1の正面には、生体情報読み取りセンサー(以下指紋センサーという。)11、表示部12、操作部13が設けられている。ICカードの中には接触型ICカードがあり、カードの表面に形成された外部端末接続端子(外部端子)と外部端末を接続させてICカードに格納されている情報を読み取り、外部端末から送信される情報を読み書きするようになっているが、本実施の形態では、非接触型ICカードでアンテナ17によって情報の受信、送信を行う。
したがって、本図では図示しないが、接触型ICカードの場合は、ICカード1の表面に外部端子が設けられている。
上記の部品以外に、図示していないが、ICカードの表面には固定情報としてICカードの名称、デザインなどが印刷されている。
また、ICカード所持者の識別情報として、ICカード所持者の顔画像、IDコードが、ICカード利用のための情報として、ICカードの利用有効期間または有効期限等が印字、または打刻されている。
【0016】
図1の操作部は、ICカードの所持者が操作部13を右手の指で操作できるように右側に配置されている。その時に左手の指は、ICカードを支え、指紋センサー11に自然に触れるように配置されている。
操作部のボタンは、図1では0?9までの数字ボタンと、クリアボタンが形成されているが、数字ボタンにアルファベットや、仮名などの機能を持たせることもできる。また、図1では、親指で操作しやすいように、数字を縦横に並べて配置しているが、例えば、図5に示すように横長に並べても良い。
指紋センサー11については、図3で詳細に説明する。
また、表示部12には、公知の液晶や、電気泳動等の表示材料が使用される。
これらの部品は、図示している大きさに拘るものではなく、ICカードのデザインや、機能に応じて各部品の大きさ、配置位置が決定される。」

F 「【0017】
図1を参照して、ICカードによる本人認証の方法について説明する。
まず、左手と右手でICカード1を支え、右手の親指、または人差指で操作部13の電源ボタン131を押す。
電源がオンになると表示部12にはパスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージが表示される。
ICカードの所持者は、10キーによってパスワード、または指紋入力要請コマンドを入力する。
ICカードは、入力されたパスワード、または指紋入力要請コマンドと参照用に格納されているパスワード、または指紋入力要請コマンドと照合して、一致している事が確認されるとICカードは、表示部に指紋検出許可メッセージを表示する。
【0018】
ICカード所持者は、指紋センサーに登録している指を押し当てて、指紋を検出する。
指紋センサーは、採取した指紋データと、ICカードに格納されている参照用指紋情報を照合する。
照合の結果一致していれば、照合一致の結果を表示部に表示する。
不一致の場合、ICカードは、理由を表示して、再度指紋を検出するよう表示部12にメッセージを送る。エラー回数が定められた回数以上になった場合は、カードを一旦ロックし、ICカード発行機関にICカードを持参するようメッセージを表示する。」

G 「【0020】
指紋照合の結果、ICカードの所持者が本人であることが証明されると、表示部12には、例えば銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう、指示メッセージが表示される。
ICカード所持者がICカードの操作部からアプリケーションコマンドを入力すると、ICカードの発信部のアンテナ17からはアプリケーション端末に対しアクセス信号が送信される。
【0021】
図2を参照してICカードの内部構成について説明する。
本発明のICカード1は、薄い金属またはプラスチックの外装部材に一体的に取りつけられた指紋センサー11、表示部12、操作部13と、内部に組み込まれた電源14、制御部材15、16、無線インターフェース部材17、18、情報格納部(メモリ)19で構成されている。
ICカード本体は、前述のようにプラスチックの成形によっても金属プレートの組み立てによっても何れでも良い。
但し、カードを外部端末に挿入して、または、カード本体を駆動させてデータ処理を行う場合は、カードの外形が国際標準を満足していることが必要である。
また、カードの外装材が金属の場合は、アンテナ周辺部に対し信号の送受信を妨げないような配慮が必要である。」

H 「【0022】
電源ボタン131によって電源14がオンになると、制御部1(15)、制御部2(16)等の制御部に電力が供給される。制御部1(15)は、通信制御部を制御し、所定の情報を送受信する。制御部2(16)は、表示部に表示電力を供給し、更に指紋センサー内の制御部に対して必要な電力を供給する。
制御部1(15)と、制御部2(16)は一体化することもできる。
また、図示していないが前記それぞれの制御部、または、何れかの制御部は、RAM、ROMを備えることができる。
無線インターフェース部材は、アンテナ17と、コントローラ18で図示されているが、1チップ型ブルートゥース集積回路のように一体化されたものや、赤外線タイプの送受信部材であっても良い。
情報格納部(メモリ)19には、表示部に表示する記号や文字のパターンデータや、駆動,表示プログラム,操作部から入力されたコマンド情報を一時保管するプログラムを格納することができる。
また、登録された参照用指紋データや、参照用パスワードや、アプリケーション毎の保管データをファイル別に格納することができる。」

I 「【0025】
図4を参照して本発明のICカードを使用する本人の認証方法の認証手順について説明する。
まず、ステップ1(以下S1という)で、ICカードの表面に形成された電源ボタンを押す。ICカードの所定の部品に電力が供給され表示部にパスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージが表示される。
ICカード所持者は、操作部の10キーによってパスワード、または指紋入力要請コマンドを入力する(S2)。ICカードは入力されたパスワード、または指紋入力要請コマンドと、参照用に格納されているパスワード、または指紋入力要請コマンドと照合して、一致している事が確認されたら、表示部に指紋検出許可メッセージを表示する。
【0026】
ICカード所持者は、指紋センサーに登録している指を押し当てて、指紋を検出する。登録する指は親指でも人差指でも、複数の指でもよい。
登録している指を指紋センサーに押し当てて指紋を検出する(S3)。指紋センサーは、検出した指紋情報とICカードのメモリ部に格納されている登録指の参照用指紋情報とを照合する(S4)。
照合の結果一致していれば、照合一致の結果を表示部に表示する。
不一致の場合、ICカードは、再度指紋を検出するよう表示部12にメッセージを送る(S8)。エラー回数が定められた回数以上になった場合は、カードを一旦ロック(S9)し、ICカード発行機関にICカードを持参するようメッセージを表示する。
【0027】
指紋照合の結果、該ICカードの所持者が本人であることが証明されたら、表示部は、例えば銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するようメッセージを表示する。
ICカード所持者は、希望するアプリケーションコマンドを入力する(S5)。ICカードのアンテナからはアプリケーション端末に対しアクセス信号を送信し交信する(S6)。
交信した結果を表示部に表示する(S7)。」

ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討するに、

(ア)上記引用文献1には、A?Eに概説される如き「ICカード」が説明されているところ、上記Gの「本発明のICカード1は、薄い金属またはプラスチックの外装部材に一体的に取りつけられた指紋センサー11、表示部12、操作部13と、内部に組み込まれた電源14、制御部材15、16、無線インターフェース部材17、18、情報格納部(メモリ)19で構成されている。」との記載から、該引用文献1に記載のICカードは、「薄い金属またはプラスチックの外装部材に一体的に取りつけられた指紋センサー11、表示部12、操作部13と、内部に組み込まれた電源14、制御部材15、16、無線インターフェース部材17、18及び情報格納部(メモリ)19」で構成されたものと認める。

(イ)上記Hの「制御部1(15)は、通信制御部を制御し、所定の情報を送受信する。制御部2(16)は、表示部に表示電力を供給し、更に指紋センサー内の制御部に対して必要な電力を供給する。」「制御部1(15)と、制御部2(16)は一体化することもできる。」「また、図示していないが前記それぞれの制御部、または、何れかの制御部は、RAM、ROMを備えることができる。」という記載から、引用文献1の「制御部1(15)と、制御部2(16)を一体化」して構成された「制御部」内は、「情報格納部(メモリ)19」の読み書きを制御するマイクロプロセッサーが備えられていることは明らかである。

(ウ)上記Hの「電源ボタン131によって電源14がオンになると、制御部1(15)、制御部2(16)等の制御部に電力が供給される。」という記載から引用文献1の「電源14」は、前記マイクロプロセッサーや「情報格納部(メモリ)19」等に「電力」を供給していることは明らかである。

(エ)上記Hの「制御部1(15)は、通信制御部を制御し、所定の情報を送受信する。」という記載及び「また、登録された参照用指紋データや、参照用パスワードや、アプリケーション毎の保管データをファイル別に格納することができる。」という記載から、引用文献1の「無線インターフェース部材」の「コントローラ18」は、前記マイクロプロセッサーの制御を受けて、「情報格納部(メモリ)19」に格納されている「データ」を送信するか受信した「データ」を「情報格納部(メモリ)19」に格納していることは明らかである。

(オ)上記Iの「ICカード所持者は、指紋センサーに登録している指を押し当てて、指紋を検出する。登録する指は親指でも人差指でも、複数の指でもよい。」「登録している指を指紋センサーに押し当てて指紋を検出する(S3)。指紋センサーは、検出した指紋情報とICカードのメモリ部に格納されている登録指の参照用指紋情報とを照合する(S4)。」という記載及び「指紋照合の結果、該ICカードの所持者が本人であることが証明されたら、表示部は、例えば銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するようメッセージを表示する。」という記載から、引用文献1には、「指紋センサー11」に接続され、「指紋センサー11」で採取した「ICカード所持者」の「指紋データ」と、「ICカード1」に格納されている「参照用指紋情報」を照合し、その結果、「ICカード1」の所持者が本人であることが証明されると、「表示部12」に「銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう」指示「メッセージを表示する」手段が指紋照合手段として設けられていることは明らかである。

(カ)上記Hの「無線インターフェース部材は、アンテナ17と、コントローラ18で図示されているが、」という記載から、引用文献1の「無線インターフェース部材」の「コントローラ18」には「アンテナ17」が接続されているものと認める。

(キ)上記Fの「まず、左手と右手でICカード1を支え、右手の親指、または人差指で操作部13の電源ボタン131を押す。電源がオンになると表示部12にはパスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージが表示される。」という記載から、引用文献1の「電源ボタン131」は、「電源14」のオンオフを制御していることは明らかであり、また、上記Iの「ICカードの所定の部品に電力が供給され表示部にパスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージが表示される。…途中省略…ICカードは入力されたパスワード、または指紋入力要請コマンドと、参照用に格納されているパスワード、または指紋入力要請コマンドと照合して、一致している事が確認されたら、表示部に指紋検出許可メッセージを表示する。」という記載及び段落【0027】の「指紋照合の結果、該ICカードの所持者が本人であることが証明されたら、表示部は、例えば銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するようメッセージを表示する。…(途中省略)…交信した結果を表示部に表示する(S7)。」という記載から、引用文献1の「表示部12」は、「パスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージ」や「銀行取引や電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう」指示する「メッセージ」及び「交信した結果を表示部に表示」していることは明らかである。

(ク)上記Gの「ICカード所持者がICカードの操作部からアプリケーションコマンドを入力すると、ICカードの発信部のアンテナ17からはアプリケーション端末に対しアクセス信号が送信される。」という記載から、引用文献1において、「アプリケーション端末」から送信されてくる「データ」を受信して「情報格納部(メモリ)19」に格納するために押下する「操作部13」における操作キーは、当該キーの押下によって受信したデータの記憶がなされるのであるから、本願発明におけるプログラミングキーと同様に働きをするものであり、これも「プログラミングキー」といえるものである。
また、引用文献1において、「情報格納部(メモリ)19」に格納されている「データ」を「アプリケーション端末」に送信するために押下する「操作部13」における操作キーは、送信キーであるといえる。

(ケ)上記Hの「無線インターフェース部材は、アンテナ17と、コントローラ18で図示されているが、1チップ型ブルートゥース集積回路のように一体化されたものや、赤外線タイプの送受信部材であっても良い。」という記載から、引用文献1の「無線インターフェース部材」の「コントローラ18」は、「1チップ型ブルートゥース集積回路」で構成されていることは明らかである。

(コ)上記Hの「電源ボタン131によって電源14がオンになると、制御部1(15)、制御部2(16)等の制御部に電力が供給される。制御部1(15)は、通信制御部を制御し、所定の情報を送受信する。制御部2(16)は、表示部に表示電力を供給し、更に指紋センサー内の制御部に対して必要な電力を供給する。」という記載から、引用文献1は動作モードとして、「電源14」が「ICカード1」内の「制御部に電力が供給される」と動作がスタートし、「ICカード1」の「電源ボタン131」がオフの時は、エネルギーを消費しないことは明らかである。
また、引用文献1において、プログラミングキーまたは送信キーが押下されるとそれぞれのモードで起動され、プログラミングキーで起動されると、「ICカード1」は、受信データが「情報格納部(メモリ)19」に保存されることを意味するプログラミングモードの状態となることは明らかであり、データの送信キーが押下されると、「情報格納部(メモリ)19」に格納されている「データ」の送信状態となることは明らかである。

以上、(ア)ないし(コ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「薄い金属またはプラスチックの外装部材に一体的に取りつけられた指紋センサー11、表示部12、操作部13と、内部に組み込まれた電源14、制御部材15、16、無線インターフェース部材17、18及び情報格納部(メモリ)19で構成されたICカード1において、
制御部1(15)と、制御部2(16)を一体化して構成された制御部内にあって、前記情報格納部(メモリ)19の読み書きを制御するマイクロプロセッサーと、
前記マイクロプロセッサーと前記情報格納部(メモリ)19等に電力を供給可能な前記電源14と、
前記マイクロプロセッサーの制御を受けて、前記情報格納部(メモリ)19に格納されているデータを送信するか受信したデータを前記情報格納部(メモリ)19に格納する無線インターフェース部材のコントローラ18と、
前記指紋センサー11に接続され、前記指紋センサー11で採取したICカード所持者の指紋データと、前記ICカード1に格納されている参照用指紋情報を照合し、その結果、前記ICカード1の所持者が本人であることが証明されると、表示部12に、銀行取引や電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を前記操作部13から入力するよう、指示メッセージを表示する指紋照合手段と、
前記無線インターフェース部材のコントローラ18に接続するアンテナ17と、
前記電源14のオンオフを制御する電源ボタン131と、パスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージや、銀行取引や電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう指示するメッセージ及び交信した結果を表示部に表示する前記表示部12と、
前記ICカード1の発信部の前記アンテナ17からアプリケーション端末に対しアクセス信号を送信するためのアプリケーションコマンドを入力する前記操作部13と、
プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
前記無線インターフェース部材のコントローラ18は、1チップ型ブルートゥース集積回路からなることを特徴とし、更に動作モードとして、
a)前記電源14が前記制御部1(15)、制御部2(16)を一体化して構成された制御部と接続されると動作がスタートし、
b)前記ICカード1の電源ボタン131がオフの時は、エネルギーを消費せず、
c)前記プログラミングキーまたは前記送信キーで起動することができ、
d)前記プログラミングキーで起動されると、前記ICカード1は、受信データが前記情報格納部(メモリ)19に保存されることを意味するプログラミングモードの状態となり、
f)前記送信キーを押下した時に、前記情報格納部(メモリ)19に格納されているデータの送信が開始される、
ことを特徴とするICカード1。」

(4)参考文献に記載されている技術事項

(4-1)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-138783号公報(平成12年5月16日出願公開。以下「参考文献1」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

J 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ICカードI/Fを有するファクシミリ装置に関する。」

K 「【0008】
【発明の実施の形態】図1は、ファクシミリ装置の概略的な構成を示すブロック図であり、ファクシミリの制御を行うFCU1と、画像データを格納するSAF2と、各種データを格納する記憶装置3と、原稿を読み取るスキャナ部4と、各種の操作処理を行う操作部5と、自動原稿読み取り装置を制御するADF制御部6と、給紙制御部7と、記録紙に印字出力する出力手段8と、網制御のNCU9とを備えて構成される。また、図2に例示されるように、記憶装置3は、基本SRAM31、拡張SRAM32により構成され、SRAMを備えたICカード10が接続されるようになっている。」

(4-2)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-313459号公報(平成16年11月11日出願公開。以下「参考文献2」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。

L 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、指紋照合方法に関わり、本人識別能力を向上させて、指紋の偽造や悪用に対する防御性を高めるための方法及びその指紋照合装置に関する。」

M 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明では、この問題を解決するために、指紋センサに指を当てた時に起こる指先の色の変動を検出して、偽造指紋に対する防御性を高める方法を提供する。また、さらに、色検出のために、自発光型のパネルに光学センサを搭載した指紋センサを用いることで、簡単な構成で、表示機能、ポインタ機能も有する偽造指紋に対する防御性の高い指紋照合装置を提供する。」

N 「【0029】
図5は、本発明の他の実施例を示す指紋照合装置内蔵のマネーカードを示す図である。マネーカード63は、CPUやメモリを内蔵し、明細などを表示するモニタ62を搭載し、また、そのカードが所持者本人のものであるかどうかの確認を、暗証番号以外に、指紋センサ61による指紋認証によっても行っている。指紋センサ61は、自発光型のモニタ62の一部を使って、フォトセンサを埋め込む形で形成されていて、指先の色検出が可能で、前述の説明同様に、指紋センサに指を当てた時に起こる指先の色変動を検出することで、手袋型の偽造指紋などに対する防御性を高め、信頼性のある指紋照合が可能である。さらに、指紋センサ61は、指の移動量や回転量を簡単に検出して、明細表示のスクロールなどをコントロールする。以上説明したように、色検出のために、自発光型のモニタに光学センサを搭載した指紋センサを用いることで、表示機能、ポインタ機能も有し、マネーカードにとって非常に重要な偽造指紋に対する防御性の高い指紋照合が可能であるという大きな効果を有する。」

(4-3)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-334788号公報(平成16年11月25日出願公開。以下「参考文献3」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。

O 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、利用者の指紋パターンを用いる個人認証システム、認証装置、個人認証方法、プログラム、および、記録媒体に関し、特に、イメージキャプチャー機能付ディスプレイにより利用者の指紋パターンと指の動作パターンとを感知する個人認証システム、認証装置、個人認証方法、プログラム、および、記録媒体に関する。」

P 「【0050】
[本システムの概要]
以下、本システムの概要について説明し、その後、本システムの構成および処理等について詳細に説明する。図1は本システムの全体構成の一例を示すブロック図であり、該システム構成のうち本発明に関係する部分のみを概念的に示している。
【0051】
本システムは、利用者が正当な利用者であることを認証する認証装置100と、上記利用者が使用する外部装置200とをネットワーク300を介して相互に接続して構成されている。
【0052】
このシステムは、概略的に、以下の基本的特徴を有する。すなわち、認証装置100は、イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40と、ネットワーク300に対して各種の無線または有線の通信手段を用いて通信を行う通信部108とを備える。
【0053】
認証装置100は、イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40にて感知した指紋パターンが予め登録された利用者の指紋パターン情報と一致するか認識し、イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40にて感知した利用者の指の動作が予め登録された動作パターン情報と一致するか認識する機能を有する。
【0054】
すなわち、当該イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40は、各種のメニューやボタンなどの表示オブジェクト30(例えば、一般的なメニュー、ボタン、バーコード表示などの他、後述するフィンガー・スポット、フィンガー・カーソルなどを含む)などの通常の表示機能に加えて、利用者の指紋パターンを感知する指紋パターン感知機能と、イメージキャプチャー機能付ディスプレイにより利用者の指の動作を感知する動作感知機能とを備える。
【0055】
また、認証装置100は、利用者の指の動作パターン情報に対応する命令情報を記憶装置に格納し、イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40により認識された動作パターン情報に対応する命令情報を検索し、検索された命令情報を実行し、また、検索された命令情報を通信部108を介して外部装置200に送信する。
【0056】
図2は、本発明のイメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40の基本原理を説明するための概念図である。図2に示すように、イメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40は、液晶中の発光画素(図2における液晶の四角で示す部分)の中に光センサーなどの受光素子(図2における液晶の丸で示す部分)を作り込むことで実現されている。
【0057】
現在、TFT液晶のディスプレイ画面上から直接画像を取り込めるイメージキャプチャー(インプット)ディスプレイ装置が開発されており、本発明のイメージキャプチャー機能付きディスプレイ部40は、例えば、現在市販されているQVGA対角8.9cm(3.5型)の低温ポリシリコンTFT-LCDで通常の液晶表示装置としての表示機能を備えたものを用いてもよい。」

Q 「【0161】
また、図22に示すように、万能キーとして機能する本認証装置を備えた遠隔操作装置は様々な媒体に組み込むことが可能であり、例えば、カード、PDA、携帯電話などに組み込むことができる。」

(4-4)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-213666号公報(平成16年7月29日出願公開。以下「参考文献4」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。

R 「【0001】
本発明は、DMAモジュールとその操作方法に関する。DMAモジュールは、定期的に反復されるデータ転送タスクをCPUから負担解除するため、マイクロコンピュータシステムやマイクロコントローラシステムで使用される。DMAモジュールとは、次のように特化されたプロセッサの一種と理解される。すなわち、アクセスしたい記憶領域の指定、たとえばスタートおよびストップアドレス、あるいはスタートアドレスおよびそれにつながるいくつかの記憶スペースの指定を受け取り、指定された領域のアドレスを順次迅速にアドレスバスにアウトプットして、記憶領域の迅速な読み出しと書き込みを可能にするプロセッサである。DMAモジュールは、2つの記憶領域の間、または1つの記憶領域と周辺装置との間のそのようなデータ転送を可能とし、そのためのCPUの処理タスクを必要としない。従ってDMAモジュールは、CPUに単純なデータ転送タスクの負担を解除し、平均的に達成可能なCPUパフォーマンスをこれにより向上する。」

S 「【0014】
本発明のそのほかの諸特徴と利点を、添付の図面の引用による下記の実施例をもとに説明する。
図1に図式的に示したマイクロコントローラシステムは、CPU1、バスコントローラ2、割り込み管理ユニット(割り込みコントローラICU)3、DMAコントローラ4、スタティック・ランダムアクセスメモリ(SRAM)5、読み出し専用メモリ(ROM)6、入/出力モジュール7を備える。これらのコンポーネント1?7は、アドレス-、データ-、制御-回線を持つ内部のバス8によって相互に結合されている。I/Oモジュール7はさらに外部の1つまたは複数のデータ端末と結合され、データ端末からデータを受け取って内部のバス8に供給するか、あるいはデータ端末に内部のバス8からデータを出力する。I/Oモジュール7、DMAコントローラ4、ICU3は、バス8から分離された多数の制御回線9?12によって相互に直接結合されているが、図2も併せて用いこれらの構造と機能をさらに詳しく説明する。」

(4-5)本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年10月18日付けの拒絶理由通知において引用された刊行物である特開平9-282430号公報(平成9年10月31日出願公開。以下「参考文献5」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。

T 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消費電力の低減を図った無線ICカードシステムに関する。」

U 「【0021】図9はデータ通信装置21の構成を示すブロック図である。この図において、23はCPU、24は本ICカード1の識別コードおよびプログラムを記憶するROM、25はRAMである。26は送受信装置、27はインターフェイス回路である。R3はリレースイッチであり、その常閉接点r3が図8に示すように、電池20の回路に挿入されている。データ記憶部28は、具体的には不揮発性メモリ(E2PROM,フラッシュメモリ等)で構成され、これまで通過した料金所の履歴を記憶している。そして、データ記憶部28の記憶内容は、出力端Tからディジタルデータとして読み書き可能である。
【0022】このような構成において、図8に示す接点r2-2がオンになると、データ通信装置21に電池20の出力電圧が電源電圧として供給され、装置21の各部が能動状態となる。これによって、ICカード1と料金徴収装置2との間における無線通信が可能となる。
【0023】すなわち、本ICカード1を有する自動車が高速道路に入る場合において、上記動作によりデータ通信装置21に電源が供給されると、送受信装置26は、料金徴収装置2が送信する料金所コードを受信する。CPU23は、送受信装置26が受信した料金所コードを読込み、インターフェイス27を介して、データ記憶部28に書き込む。以上の動作により、上記自動車が高速道路に入った始点を示す料金所の料金所コードが、履歴としてデータ記憶部28に記録される。
【0024】一方、本ICカード1を有する自動車が高速道路から出る場合において、上記動作によりデータ通信装置21に電源が供給されると、CPU23は、本ICカード1の識別コードをROM24より読込み、読み込んだ識別コードを送受信装置26へ送る。また、CPU23は、データ記憶部28に記録されている履歴(すなわち、上記自動車が高速道路に入った始点を示す料金所の料金所コード)を、インターフェイス27を介して、データ記憶部28より読込み、読み込んだ料金所コードを送受信装置26へ送る。
【0025】送信装置26は、この識別コードおよび料金所コードを搬送波に乗せ、アンテナ26aから空中へ送信する。送信された信号は、図3に示す送受信装置7によって受信され、元のコードに復調される。料金徴収装置2のCPU3は、受信した料金所コード(上記自動車が高速道路に入った始点を示す料金所の料金所コード)に基づいて、該自動車の高速道路料金を算出する。そして、CPU3は、受信した識別コード(本ICカード1の識別コード)と、算出した上記高速道路料金とを、外部インターフェイス6を介して、オンラインで各種端末装置(図示略)に送信する。各種端末装置は、受信した識別コードおよび高速道路料金に基づいて、精算処理を行う。
【0026】図9のCPU23は、送受信装置26のデータ送受信が終了した時点で、インターフェイス27を介してリレースイッチR3を駆動する。リレースイッチR3が駆動されると、接点r3(図8参照)がオフとなり、リレースイッチR2のコイル電源がオフとなる。これにより、接点r2-2がオフとなり、データ通信装置21の電源がオフとなる。」

(5)本願補正発明と引用発明との対比

(5-1)引用発明の「ICカード1」は、層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを含んで構成されていることは明らかであるから、引用発明の「薄い金属またはプラスチックの外装部材に一体的に取りつけられた指紋センサー11、表示部12、操作部13と、内部に組み込まれた電源14、制御部材15、16、無線インターフェース部材17、18及び情報格納部(メモリ)19で構成されたICカード1」は、本願補正発明の「層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)」に相当している。

(5-2)引用発明の「マイクロプロセッサー」は「制御部1(15)と、制御部2(16)を一体化して構成された制御部内にあって、前記情報格納部(メモリ)19の読み書きを制御する」のであるから「メモリーと連動する」と言うことができ、これと本願補正発明の「i-スタティックメモリー(6,50)と連動するマイクロプロセッサー(2,60)」とは、「メモリーと連動するマイクロプロセッサー」である点で共通している。

(5-3)引用発明の「電源14」は、ICカードという薄型の筐体内に組み込まれているものであるから、平坦型であることは明らかであり、また、ICカードの所持者によって交換可能とされていることは自明の事項であるから、引用発明の「前記マイクロプロセッサーと前記情報格納部(メモリ)19等に電力を供給可能な前記電源14」と、本願補正発明の「ii-前記マイクロプロセッサー(2,60)とスタティックメモリー(6,50)に電力を供給可能であって前記カード厚(4)内の交換可能な平坦型バッテリー」とは、「前記マイクロプロセッサーとメモリーに電力を供給可能であって前記カード厚内の交換可能な平坦型バッテリー」である点で共通している。

(5-4)引用発明の「前記マイクロプロセッサーの制御を受けて、前記情報格納部(メモリ)19に格納されているデータを送信するか受信したデータを前記情報格納部(メモリ)19に格納する無線インターフェース部材のコントローラ18」は、本願補正発明の「iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)及び/又はスタティックメモリー(6,50)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)」における「iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)」に相当しているものと認める。

(5-5)引用発明において「その結果、前記ICカード1の所持者が本人であることが証明されると、表示部12に、銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を前記操作部13から入力するよう、指示メッセージを表示する」ことは、全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行なっているといえるから、引用発明の「前記指紋センサー11に接続され、前記指紋センサー11で採取したICカード所持者の指紋データと、前記ICカード1に格納されている参照用指紋情報を照合し、その結果、前記ICカード1の所持者が本人であることが証明されると、表示部12に、銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を前記操作部13から入力するよう、指示メッセージを表示する指紋照合手段」と、本願補正発明の「iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行い、メニューのナビゲーターとしてもまた働く指紋モジュール(80)」とは、「ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行う指紋モジュール」である点で共通している。

(5-6)引用発明の「前記無線インターフェース部材のコントローラ18に接続するアンテナ17」は、本願補正発明の「v-前記データ伝送装置(3)に接続する少なくとも一つのアンテナ(5)」に相当している。

(5-7)引用発明の「前記電源14のオンオフを制御する電源ボタン131」は、本願補正発明の「オンオフコントロール(b)」に相当しているから、引用発明の「前記電源14のオンオフを制御する電源ボタン131」は、本願補正発明の「オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)」に相当しており、引用発明の「パスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージや銀行取引や、電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう指示するメッセージ及び交信した結果を表示部に表示する前記表示部12」は、本願補正発明の「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)」に相当し、引用発明の「指紋照合手段」は、本願補正発明の「前記指紋モジュール(80)」にそれぞれ相当しているものと認められるから、引用発明の「前記電源14のオンオフを制御する電源ボタン131と、パスワード、または指紋入力要請コマンドの入力を要請するメッセージや銀行取引や電子商取引などのアプリケーションコード(コマンド)を操作部13から入力するよう指示するメッセージ及び交信した結果を表示部に表示する前記表示部12と、前記指紋照合手段とを含み」と、本願補正発明の「vii-オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)」とは、「オンオフコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)」を含んで構成されている点で共通している。

(5-8)引用発明の「プログラミングキー及び送信キー」は、本願補正発明の「viii-プログラミングキー及び送信キー」に相当している。

(5-9)引用発明の「前記無線インターフェース部材のコントローラ18は、1チップ型ブルートゥース集積回路からなること」は、本願補正発明の「ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)であり、及び/又は、送受信機とベースバンド(32)を備えたワイファイモジュール、であること」に相当している。

(5-10)引用発明の「前記電源14が前記制御部1(15)、制御部2(16)を一体化して構成された制御部と接続されると動作がスタートし、」は、本願補正発明の「a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、」に相当している。

(5-11)引用発明の「前記ICカード1の電源ボタン131がオフの時は、エネルギーを消費しない、」は、本願補正発明の「b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、」に相当している。

(5-12)引用発明の「前記プログラミングキーまたは前記送信キーで起動することができる、」は、本願補正発明の「プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、」に相当している。

(5-13)引用発明の「前記プログラミングキーで起動されると、前記ICカード1は、受信データが前記情報格納部(メモリ)19に保存されることを意味するプログラミングモードの状態となる、」は、本願補正発明の「d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、」に相当している。

(5-14)引用発明の「前記送信キーを押下した時に、前記情報格納部(メモリ)19に格納されているデータの送信が開始される、」は、本願補正発明の「f)そうでなければ、送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始する、」に相当している。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)において、少なくとも、
i-メモリーと連動するマイクロプロセッサーと、
ii-前記マイクロプロセッサーとメモリーに電力を供給可能な前記カード厚内の交換可能な平坦型バッテリーと、
iii-前記マイクロプロセッサーに接続する少なくとも一つのデータ伝送装置と、
iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して全ての機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行う指紋モジュールと、
v-前記データ伝送装置に接続する少なくとも一つのアンテナと、
vii-オンオフコントロール(b)と、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、
viii-プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)である、
ことを特徴とし、更に動作モードとして、
a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、
b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、
c)プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、
d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、
f)送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始することを特徴とするスマートカード。

(相違点1)

「メモリー」が、本願補正発明は、「スタティックメモリー(6)」であるのに対して、引用発明は、スタティックメモリーであることが不明である点。

(相違点2)

「指紋モジュール」が、本願補正発明は、「メニューのナビゲーターとしてもまた働く」ものであるのに対して、引用発明はこのように構成されていない点。

(相違点3)

本願補正発明は、「vi-マイクロコントローラ(7)により前記スタティックメモリー(6)と一体化された前記マイクロプロセッサー(2,60)」を備えているのに対して、引用発明はこのような構成を備えることが不明である点。

(相違点4)

本願補正発明は、「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)」を備えているのに対して、引用発明はこのような構成を備えることが不明である点。

(相違点5)

本願補正発明は、「受信と保存が完了すると、カードが自動的に停止してエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る」ように構成されているのに対して、引用発明はこのような構成を備えることが不明である点。

(相違点6)

本願補正発明は、「送信の最後に、カードはエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る」ように構成されているのに対して、引用発明はこのような構成を備えることが不明である点。

(6)相違点についての当審の判断

(6-1)相違点1について

一般に、ICカード内のメモリとしてスタティックメモリーを用いることは、周知技術(必要であれば、上記参考文献1の上記K等参照)であるから、引用文献1に接した当業者が、引用発明の「情報格納部(メモリ)19」をスタティックメモリーとして本願補正発明のように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(6-2)相違点2について

一般に、ICカード等において指紋センサによって個人の指紋情報を採取すると共に、指紋センサによって、スクロールやポインタあるいはメニューの選択操作を行えるように構成することは、周知技術(必要であれば、上記参考文献2の上記N及び上記参考文献3の上記P、Q等参照)であるから、引用文献1に接した当業者が、引用発明の「指紋照合手段」をメニューのナビゲータとしても働くようにして本願補正発明のように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(6-3)相違点3について

一般に、SRAM5等とCPU1を内部バス8で電気的に接続してマイクロコントローラシステム(図1)を構成することは、周知技術(必要であれば、上記参考文献4の上記S等参照)であるから、引用文献1に接した当業者が、引用発明の「情報格納部(メモリ)19」と「マイクロプロセッサー」とでマイクロコントローラを構成して本願補正発明のように構成すること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3は格別なものではない。

(6-4)相違点4について

一般に、プリペイドカードやスマートカード63において、ポインタ機能及び表示機能を有する自発光型のモニタ62上に指紋センサ61を配置した指紋認証装置は、周知技術(必要であれば、上記参考文献2の上記M、N等参照)であり、また、カード等において、メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置40上に指紋パターン感知機能を持たせて全体として、認証装置100を構成することも、周知技術(必要であれば、上記参考文献3の上記P、Q等参照)であるから、引用文献1に接した当業者が、引用発明の「指紋センサー11」を「表示部12」上に配置して本願補正発明のように構成すること、すなわち、上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、補正後の請求項1の「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、」が「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)からなる指紋読取り手段(8)と、」の誤記であったと仮定した場合について検討すると、引用発明においても「指紋センサー11」と「表示部12」はそれぞれ別々に配置されているので、補正後の請求項1の「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)と、」が「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)からなる指紋読取り手段(8)と、」の誤記であったと仮定しても、本願補正発明は、引用発明から当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点4は格別なものではない。

(6-5)相違点5及び相違点6について

一般に、ICカード1において、消費電力の低減を図るために、ICカード1と他の装置間のデータの送受信が終了した時点で電源をオフ状態とすることは、周知技術(必要であれば、上記参考文献5の上記T、U等参照)であるから、引用文献1に接した当業者が、引用発明において、「データ」の受信と保存が完了した場合及び「データ」の送信が完了した場合に「電源14」からの電源供給を停止するようにして本願補正発明のように構成すること、すなわち、上記相違点5及び相違点6に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点5及び相違点6は格別なものではない。

(6-6)小括

上記で検討したごとく、相違点1?相違点6は格別なものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(6-7)独立特許要件についてのまとめ

以上のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項をいう。以下同じ。)の規定に適合しない。

5.平成24年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定のむすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、仮に当該要件を満たすものであったとしても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の結論の通り決定する。


第3.本願発明について

1.本願発明の認定

平成24年7月12日に提出された手続補正書による補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成24年1月20日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される、以下のとおりのものである。
「層状のカード厚に集積した集積回路素子と内部に少なくとも一つのマイクロチップを備えたプラスチックカード状のスマートカード(1)において、少なくとも、
i-スタティックメモリー(6,50)と連動するマイクロプロセッサー(2,60)と、
ii-前記マイクロプロセッサー(2,60)とスタティックメモリー(6,50)に電力を供給可能であって前記カード厚(4)内の交換可能な平坦型バッテリーと、
iii-前記マイクロプロセッサー(2,60)及び/又はスタティックメモリー(6,50)に接続する少なくとも一つのデータ伝送装置(3,30,10,20,70)と、
iv-ユーザーの押印読取り処理装置に接続して種々の機能へのアクセスを許可する前に本人認証を行う指紋読取り手段(80)と、
v-前記データ伝送装置(3)に接続する少なくとも一つのアンテナ(5)と、 vi-マイクロコントローラ(7)により前記スタティックメモリー(6)と一体化された前記マイクロプロセッサー(2,60)と、
vii-オンオフ及び/又はプログラミングコントロール(b)と液晶表示装置を有するスクリーン(8)と、
viii-プログラミングキー及び送信キーと、を備え、
ix-前記データ伝送装置は、ブルートゥースモジュール(31)であり、及び/又は、送受信機とベースバンド(32)を備えたワイファイモジュール、
であることを特徴とし、更に動作モードとして、
a)エネルギー源が回路と接続されると、スタートする、
b)カードがオフの時は、エネルギーを消費しない、
c)プログラミングキーまたは送信キーで起動することができる、
d)プログラミングキーで起動されると、カードは、受信データがメモリーに保存されることを意味するプログラミングモードの状態になる、
e)受信と保存が完了すると、カードが自動的に停止してエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、
f)そうでなければ、送信キーを押した時に、メモリーに含まれるデータの送信が開始する、
g)送信の最後に、カードはエネルギーを節約するためにオフになり、初期状態に戻る、であることを特徴とするスマートカード。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献及びその記載事項は、前記「第2.平成24年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「4.独立特許要件の検討」の「(3)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2 平成24年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「4.独立特許要件の検討」で検討した本願補正発明から「全ての機能」、「メニューのナビゲータとしてもまた働く」及び「メニューや進行中の操作状況の一見を可能にする液晶表示装置(90)と、前記指紋モジュール(80)と、からなる指紋読取り手段(8)」を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成24年7月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「4.独立特許要件の検討」の「(4)参考文献に記載されている技術事項」ないし「(6)相違点についての当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様な理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-08-12 
結審通知日 2013-08-19 
審決日 2013-08-30 
出願番号 特願2008-518698(P2008-518698)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06K)
P 1 8・ 575- Z (G06K)
P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩田 徳彦  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
仲間 晃
発明の名称 汎用型スマートカード  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  

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